説明

感熱記録体及びその製造方法

【課題】帯電防止性と表面の面質が良好で、且つ生産性に優れた感熱記録体及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】支持体の片面上に、少なくとも電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を備えた感熱記録体において、同時多層塗布する複数の塗液の最下層用塗液が前記電子伝導性帯電防止剤を含有し、少なくとも前記最下層用塗液と感熱記録層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層が形成されたものであることを特徴とする感熱記録体及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体は、よく知られている。かかる感熱記録体は、比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種ラベル、その他の出力用記録媒体としてのみならず、超音波画像診断やX線画像診断等の医療診断装置のプリンターに使用される記録媒体としても広く使用されている。
【0003】
これらの記録媒体の中で、記録画像の均一性、高解像度が求められる医療診断装置のプリンターでは、複層構造を有する合成紙や、必要に応じて無機顔料を含有する二軸延伸した熱可塑性樹脂フィルムを支持体とする感熱記録体が使用されている。しかしながら、合成紙やフィルムを支持体とした感熱記録体では、特に、低湿度環境下で記録すると、プリンターと感熱記録体との摩擦帯電によって、サーマルヘッドや他の回路の破損、異常、誤動作の発生等の問題を引き起こす恐れがある。
【0004】
一方、低湿環境下でも良好な導電特性を示す電子伝導性帯電防止剤は、塗膜中において、帯電防止剤同士が接触し、連続性を持つことによって、その効果を発揮できる。その導電層は、厚さ1μm以下の薄膜でも十分な効果を発揮するが、塗液中の帯電防止剤の配合率を高くする必要があり、感熱記録層や保護層中へ配合しても、十分な導電性を示さなかったり、感熱記録層や保護層の本来の機能を阻害したりする恐れがある。
【0005】
こうした問題を解決するため、特に低湿度環境下でも良好な導電性を示す電子伝導性帯電防止剤として、ヘクトライト粘土やスメクタイト粘土を裏面層に含有させることが提案されている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、塗液の分散不良や粘度上昇から筋状の塗布欠陥を生じ易く、濃度を下げて低粘度化すると泳ぎムラが生じて、塗布適性に劣る問題がある。また、裏面層を設ける工程を必要とするため、その生産性について更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2610682号公報
【特許文献2】特許第2676711号公報
【特許文献3】特許第2815954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、帯電防止性と表面の面質が良好で、且つ生産性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、上記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は下記の感熱記録体及びその製造方法に係る。
【0009】
項1:支持体の片面上に、少なくとも電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を備えた感熱記録体において、同時多層塗布する複数の塗液の最下層用塗液が前記電子伝導性帯電防止剤を含有し、少なくとも前記最下層用塗液と感熱記録層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層が形成されたものであることを特徴とする感熱記録体。
【0010】
項2:前記電子伝導性帯電防止剤がヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土から選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の感熱記録体。
【0011】
項3:前記支持体が熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂からなる合成紙または熱可塑性樹脂被覆紙である、項1または2に記載の感熱記録体。
【0012】
項4:前記電子伝導性帯電防止剤を含有する塗液の粘度が30mPa・s以下である、項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【0013】
項5:前記感熱記録層上に、更に保護層を備え、前記最下層用塗液、感熱記録層用塗液及び保護層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層、感熱記録層及び保護層が形成されたものである、項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【0014】
項6:支持体の片面上に、少なくとも電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を備えた感熱記録体の製造方法において、同時多層塗布する複数の塗液の最下層用塗液が前記電子伝導性帯電防止剤を含有し、少なくとも前記最下層用塗液と感熱記録層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を形成することを特徴とする、項1〜5のいずれか1項に記載の感熱記録体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感熱記録体及びその製造方法は、帯電防止性と表面の面質が良好で、且つ生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における支持体には、例えば、ポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料を加熱混練してダイから押し出し、縦方向に延伸したものの両面にポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料からなるフィルムを片面当たり1〜2層積層し、横方向に延伸して半透明化、あるいは不透明化して製造される合成紙、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂単独または混合物を加熱混練してダイから押し出し、2軸延伸して得られたフィルム、これらの樹脂に白色無機顔料を混合し、2軸延伸した不透明フィルムのほか、前記パルプ繊維から製造された紙の、片面あるいは両面に、熱可塑性樹脂を被覆した熱可塑性樹脂被覆紙等を使用することができる。支持体として熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂から得られる合成紙または熱可塑性樹脂被覆紙を使用する場合、本発明の効果を遺憾なく発揮できるため、好ましい。その他に使用できる支持体には、前記パルプ繊維から製造された紙が挙げられる。かかる支持体の坪量としては、30〜200g/m程度が好ましい。支持体表面には、塗布適性や密着性を向上させるため、アンカー層が設けられていても良く、コロナ放電処理等の表面処理が施されていても良い。
【0017】
本発明における電子伝導性帯電防止剤(以下、単に帯電防止剤ともいう)は、着色性、価格、感熱記録層の不要な発色(カブリ)等を抑える観点から、ヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。その他に使用できる帯電防止剤には、金属酸化物やポリアニリン等の導電性ポリマー、その他の公知なものが挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
ヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土は、水に濃度10%程度まで均質なゾル状の塗液として調製でき、支持体に塗布及び乾燥すると優れた導電性を示す。
【0019】
ヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土は、結晶質のクレー鉱物で、3層構造を有し無制限膨張グループに属し、それぞれ天然品及び合成品があり、いずれも本発明に好ましく適用できる。
【0020】
スメクタイト粘土は、例えば次式、〔(Si8−aAl)(Mg6−bAl)・O20(OH)・Ma−b(備考;Mは殆どすべてNaであり、a−b>0である。)で表示される。
【0021】
ヘクトライト粘土は、例えば次式、〔(Si(Mg5.34Li0.66)O20(OH,F))〕M0.66(備考;Mは殆どすべてNaである。)で表示されるものがあり、市販のものでは、ロックウッド社製のラポナイトB、ラポナイトSが知られている。
【0022】
また、中央層が全て水酸基となった次式、〔(Si(Mg5.34Li0.66)O20(OH))〕M0.66(備考;Mは常にNaである。)で表示されるヘクトライト粘土の例としては、ロックウッド社製のラポナイトRD、ラポナイトRDS、ラポナイトXLG、ラポナイトXLS等がある。
【0023】
上記の如きラポナイトは白色粉末で、水に加えるとラポナイトB、ラポナイトRD、ラポナイトXLGはゲルを、またラポナイトS、ラポナイトRDS、ラポナイトXLSはゾルをそれぞれ容易に形成する。例えばラポナイトは、結晶構造の各層の厚さは約1nmで2次元に延長して小板を形成する。この小板ユニットに存在するマグネシウム原子が、より低原子価陽イオンのリチウム原子と同形置換しており、小板ユニットは負に帯電しているが、乾燥状態ではこの負電荷はプレート面の格子構造外側にある置換可能陽イオン(普通はナトリウムイオン)と釣り合っている。このラポナイトを脱イオン水中に1.5〜2.0質量%の濃度で分散させると格子構造外側にある置換可能陽イオンがイオン化して、小板面から拡散し、小板面は負の電荷を得て相互に反発して小板ユニットがバラバラに分散したコロイド状分散液、即ちゾルを形成する。分散された小板には全体に固有の負電荷が存在し、小板の端部には周囲媒体からのイオン吸着により、わずかな局部電荷を帯びる。これは、溶液中のイオンの種類と濃度及び媒体のpHに依存するが、通常は陽イオンのみが吸着され、端部は正電荷を帯びることになる。結果として、端−面結合が生じて代表的な「カードハウス」構造が形成され、ゲルが形成される。このゲルの強度はラポナイトの濃度に依存し、低濃度の場合、比較的緩やかな粒子連鎖の網目が形成されゲル強度は低いが、濃度が増加すれば粒子連鎖の網目が充填されるため、強度が急速に増す。
【0024】
感熱記録層用塗液と同時多層塗布する最下層用塗液に、帯電防止剤としてヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土から選ばれる1種を使用することにより、塗液が上記の如く好適な粘性と流動性を有するため、支持体の表面粗さによらず均一な塗膜を得ることができる。しかも複数の塗液を重畳するので、低濃度の最下層用塗液において泳ぎムラを抑制でき、表面の乱れの少ない良好な面質を得ることができる。特に、熱可塑性樹脂を含む支持体を使用する場合、塗液の泳ぎムラやハジキを効果的に抑制できる。また、最下層用塗液中にゾル・ゲルが形成されると、最下層用塗液と同時多層塗布する塗液との層間混合を顕著に抑えて、感熱記録体を構成する層の本来の機能が帯電防止剤によって阻害されることなく、面質をより一層高めることができる。更に、支持体との接着性を向上することもできる。また、置換可能イオンを有するため、常湿度環境下では勿論、低湿度環境下においても優れた導電性を得ることができる。かかるヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土から選ばれる1種を使用する場合、本発明の効果を損なわない範囲でその他の帯電防止剤を併用することもできる。
【0025】
一方、生産性に優れた感熱記録体の製造方法として、例えばカーテン塗工、スライドダイ塗工、マルチスロットダイ塗工等の同時多層塗布法が挙げられる。これらの塗布法において、より高速での塗布を可能にするため、最下層用塗液を低粘度化することが望ましく、本発明における最下層用塗液は、B型粘度計で測定される液温25℃の粘度を30mPa・s以下に低粘度化することにより、同時多層塗布において好適な流動性を有するキャリア層として、より一層優れた高速塗布適性を発揮することができる。
【0026】
帯電防止剤の使用量は、支持体の種類や感熱記録体の層構成等に応じて適宜調節されるものであり、特に限定されないが、一般に乾燥後の塗布量で0.1〜5g/m程度、より好ましくは0.2〜2g/m程度含有される。
【0027】
電子伝導性帯電防止剤を含有する層は、例えば水を分散媒体とし、電子伝導性帯電防止剤を含有する塗液を用いて、同時多層塗布する複数の塗液の最下層用塗液として塗布及び乾燥して形成される。必要により最下層用塗液には、接着剤、ピロリン酸ナトリウム等の分散剤、助剤等を混合することもできる。
【0028】
接着剤としては、水溶性接着剤及び水分散性接着剤のいずれの水性接着剤も使用できる。水溶性接着剤としては、例えば、澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビヤゴム、完全(または部分)鹸化ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体塩、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体塩、ポリアクリルアマイド等が挙げられる。水分散性接着剤としては、例えば、酢酸ビニル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ウレタン系ラテックス等が挙げられる。
【0029】
助剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルエチレンオキサイド等の界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルキルリン酸塩、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤類、カルナウバロウ、パラフィンワックス等のワックス類、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、焼成クレー、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、無定形シリカ、硫酸バリウム、タルク等の無機顔料、スチレン樹脂フィラー、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等、硼酸、硼砂、グリオキザール、ジアルデヒド澱粉等のジアルデヒド系化合物、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジピン酸ジヒドラジド等の架橋剤類、消泡剤、蛍光増白剤、着色染料等が挙げられる。
【0030】
本発明における感熱記録層は、加熱により記録画像を形成できるものであればいかなるものでもよく、発色成分として各種公知の電子供与性化合物と電子受容性化合物を含有することができる。また、必要に応じて、保存性改良剤、増感剤等を含有していてもよい。発色成分としては、例えば、ロイコ染料と呈色剤との組合せ、イミノ化合物とイソシアナート化合物との組合せ、長鎖脂肪酸金属塩と多価フェノールとの組合せ、鉄、コバルト、銅など遷移元素とキレート化合物との組合せ等が挙げられる。以下、記録感度及び記録濃度に優れた特性を有するロイコ染料と呈色剤との組合せについて詳細に述べる。
【0031】
ロイコ染料としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチル)アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものでなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。ロイコ染料の含有量は特に限定されないが、感熱記録層の全固形量に対して5〜40質量%程度が好ましい。
【0032】
呈色剤としては、例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、2,2’−〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル等のフェノール性化合物、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(p−トリルスルホニル)−N’−p−ブトキシフェニルウレア等の分子内にスルホニル基とウレイド基を有する化合物、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−(p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩化合物等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものでなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。呈色剤の含有量は特に限定されず、使用するロイコ染料及び呈色剤の種類に応じて適宜選択すればよく、通常はロイコ染料1質量部に対して1〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部程度である。
【0033】
感熱記録層は、保存性改良剤を含有していてもよい。これにより、記録部の保存性を高めることができる。保存性改良剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,3−ビス[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール類;4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチル−グリシジルオキシ)ジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系エポキシ化合物類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0034】
また、感熱記録層は、増感剤を含有していてもよい。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤としては、例えばステアリン酸アミド、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、パラベンジルビフェニル、ナフチルベンジルエーテル、ベンジル−4−メチルチオフェニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、テレフタル酸ジブチルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル、イソフタル酸ジブチルエステル等が挙げられる。
【0035】
感熱記録層は、水を媒体とし、例えばサンドミル、アトライター、ボールミル等の撹拌・粉砕機によりロイコ染料、呈色剤、必要により保存性改良剤、増感剤、顔料、助剤等を一緒に、または別々に微粉砕して得られた分散液を用いて、接着剤を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を、乾燥後の塗布量が3〜20g/m2程度となるように、最下層用塗液と共に同時多層塗布及び乾燥して形成される。接着剤と助剤は、電子伝導性帯電防止剤を含有する層に使用できるものの中から適宜選択できる。
【0036】
感熱記録層用塗液中の接着剤の使用量は、特に限定するものではないが、感熱記録層の全固形量に対して8〜35質量%程度が好ましい。
【0037】
本発明の感熱記録体は、感熱記録層上に、更に保護層を備え、電子伝導性帯電防止剤を含有する塗液を最下層用塗液とし、最下層用塗液、感熱記録層用塗液及び保護層用塗液を同時多層塗布及び乾燥することにより、電子伝導性帯電防止剤を含有する層、感熱記録層及び保護層が形成されたものであることが好ましい。これにより、記録像の保存性、サーマルヘッドとのマッチング性を向上できる。
【0038】
保護層は、接着剤を含有する保護層用塗液を用いて形成することができる。接着剤は、感熱記録層用塗液で使用できるものの中から適宜選択できる。これらの接着剤の中でも、バリア性を向上する観点から、変性ポリビニルアルコールが好ましく、例えば、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。更に、保護層用塗液中には必要により、顔料、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤、耐水化剤、分散剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料、紫外線吸収剤等の助剤を添加することもできる。
【0039】
かかる保護層は、水を媒体とし、水性接着剤の溶解液あるいは分散液、必要により顔料等の助剤を混合することにより調製された保護層用塗液を乾燥後の塗布量が1〜7g/m程度、好ましくは2〜4g/m程度となるように、最下層用塗液及び感熱記録層用塗液と共に同時多層塗布及び乾燥して形成される。1g/m以上とすることにより塗膜が均一に形成され、バリア性を向上できる。一方、7g/m以下とすることにより記録感度を向上し、記録濃度を向上できる。
【0040】
保護層用塗液中の接着剤の使用量は、特に限定するものではないが、バリア性と共に記録感度に優れる点で、保護層の全固形量に対して20〜80質量%程度が好ましい。
【0041】
ここで、同時多層塗布法とは、例えばカーテン塗工、スライドダイ塗工、マルチスロットダイ塗工等における各ビード塗布方式、あるいはカーテン塗布方式を挙げることができ、2層以上の層を塗布して形成するに際し、上下層を同時に塗布する方法であり、下層を塗布した後に乾燥することなく上層を塗布する方法を含むものである。
【0042】
感熱記録体には、感熱記録体の記録走行性を改良するために、支持体の感熱記録層とは反対面の裏面側に、顔料と接着剤を含む裏面層用塗布液を用いて形成された裏面層を備えることもできる。更に、感熱記録層を多色感熱記録層としたり、保護層上に紫外線または電子線を照射して硬化された光沢層を設けたりすることもできる。また、各層を形成し終えた後、また全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダー等による平滑化処理を施すこともできる。本発明の感熱記録体には、その他、感熱記録体製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0044】
実施例1
・電子伝導性帯電防止剤分散液の調製
水446部中に、ピロリン酸ナトリウム4部、合成ヘクトライト(商品名:ラポナイトB、ロックウッド社製)50部を混合・撹拌することにより合成ヘクトライト10%分散液を得た。
【0045】
・電子伝導性帯電防止剤を含有する塗液(最下層用塗液)の調製
上記の合成ヘクトライト分散液50部、水性ポリウレタン樹脂(商品名:ハイドランAP−40、固形分濃度22.5%、大日本インキ化学工業社製)22部、界面活性剤(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)の10%水溶液0.5部、及び水95部からなる組成物を混合・撹拌して、電子伝導性帯電防止剤を含有する塗液を得た。
【0046】
・ロイコ染料分散液(A液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液10部、及び水10部からなる組成物をサンドミルで体積平均粒子径が1.0μmとなるように分散してA液を得た。体積平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0047】
・呈色剤分散液(B液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン10部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液4部、ヒドロキプロピルメチルセルロース5%水溶液8部、及び水8部からなる組成物をサンドミルで体積平均粒子径が1.2μmとなるように分散してB液を得た。体積平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0048】
・感熱記録層用塗液の調製
A液50部、B液50部、シリカ(商品名:ニップシールE−743、日本シリカ社製)の25%スラリー20部、部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−105、クラレ社製)の10%水溶液30部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1537、固形分濃度50%、旭化成社製)30部、ステアリン酸アミド(商品名:ハイミクロンL−271、固形分濃度25%、中京油脂社製)20部、フッ素系界面活性剤(商品名:メガファックF−445、大日本インキ化学工業社製)の10%水溶液1部からなる組成物を混合・撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0049】
・保護層用塗液の調製
カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)の60%スラリー70部、ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイドリンZ−8−36、固形分濃度36%、中京油脂社製)13部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業社製)の10%水溶液180部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の10%水溶液2部、及び水120部からなる組成物を混合・撹拌して保護層用塗液を得た。
【0050】
・感熱記録体の作製
支持体として、合成紙(商品名:ユポFPG−80、厚さ80μm、ユポ・コーポレーション社製)の片面上に、支持体側から最下層用塗液、感熱記録層用塗液及び保護層用塗液の順に、乾燥後の塗布量がそれぞれ、0.7g/m、5.0g/m及び3.0g/mとなるように、スライドダイ塗工のビード塗布方式で3層を同時多層塗布及び乾燥して、最下層、感熱記録層及び保護層を形成して感熱記録体を得た。支持体表面の中心線平均粗さ(Ra値)は、0.53μmであった。
【0051】
実施例2
実施例1の電子伝導性帯電防止剤分散液の調製において、水の量を446部に代えて450部とし、合成ヘクトライトに代えて合成スメクタイト(商品名:スメクトンSA−1、クニミネ工業社製)を用いて、ピロリン酸ナトリウムを用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0052】
実施例3
実施例1の最下層用塗液の調製において、水の量を95部に代えて25部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0053】
実施例4
実施例1の感熱記録体の作製において、支持体として合成紙に代えて青色透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:メリネックス912、厚さ175μm、帝人デュポン社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。支持体表面の中心線平均粗さ(Ra値)は、0.04μmであった。
【0054】
比較例1
実施例1の感熱記録体の作製において、最下層用塗液を用いず、最下層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0055】
比較例2
実施例1の最下層用塗液の調製において、合成ヘクトライト10%分散液に代えて、イオン伝導性帯電防止剤であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム(商品名:ケミスタットSA−9、サンノプコ社製)の10%水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0056】
比較例3
実施例1の感熱記録体の作製において、スライドダイ塗工のビード塗布方式で3層を同時多層塗布及び乾燥する代わりに、1層ずつ遂次塗布及び乾燥した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0057】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
(面質)
速度150m/分の高速塗工にて、スライドダイ塗工のビード塗布方式による塗布適性を検討し、面質を評価した。
◎:均一な塗膜が形成された。
○:リビングライン、泳ぎムラ等の塗布欠陥がほとんど発生しなかった。
△:リビングライン、泳ぎムラ等の塗布欠陥が部分的に発生した。
×:リビングライン、泳ぎムラ等の塗布欠陥が全面に発生し、塗膜割れが頻発し、均一な塗膜を形成できなかった。
【0059】
(印画帯電量)
常湿(23℃,50%RH)及び低湿(23℃,10%RH)環境下で、画像用感熱プリンター(ソニー社製、UP−897MD)にて印画中の記録面の帯電量を、帯電量測定器(SHINKO社製、SSS−1)を用いて測定した。帯電量が20kV以下であると、放電によるヘッド破壊の可能性が非常に低くなり、好ましい。
【0060】
(中心線平均粗さ(Ra値)の測定)
白色光干渉顕微鏡(型式:New View 200、ザイゴ社製)により、以下の条件で測定した。
・倍率:50倍×25画面(オーバーラップ率25%)
・測定面積:10.99mm×8.25mm
・カメラモード:320×240、50Hz
・Advanced Textureソフトによる波長分割解析(逆フーリエ変換)
・Filter:Low pass
・Remove:plane
・解析面積:9×7mm
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面上に、少なくとも電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を備えた感熱記録体において、同時多層塗布する複数の塗液の最下層用塗液が前記電子伝導性帯電防止剤を含有し、少なくとも前記最下層用塗液と感熱記録層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層が形成されたものであることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記電子伝導性帯電防止剤がヘクトライト粘土及びスメクタイト粘土から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記支持体が熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂からなる合成紙または熱可塑性樹脂被覆紙である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記電子伝導性帯電防止剤を含有する塗液の粘度が30mPa・s以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記感熱記録層上に、更に保護層を備え、前記最下層用塗液、感熱記録層用塗液及び保護層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層、感熱記録層及び保護層が形成されたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項6】
支持体の片面上に、少なくとも電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を備えた感熱記録体の製造方法において、同時多層塗布する複数の塗液の最下層用塗液が前記電子伝導性帯電防止剤を含有し、少なくとも前記最下層用塗液と感熱記録層用塗液を同時多層塗布及び乾燥し、前記電子伝導性帯電防止剤を含有する層と感熱記録層を形成することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感熱記録体の製造方法。

【公開番号】特開2011−251487(P2011−251487A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127616(P2010−127616)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】