説明

感熱記録体

【課題】本発明は、感熱記録体の地肌部の耐熱性、記録部の耐水性、耐光性、及び記録感度に優れた感熱記録体に関するものである。
【解決手段】支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層が呈色剤として2種類の特定の化合物を併用し、且つ保存性向上剤として加熱処理された4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを含有することを特徴とする感熱記録体。
前記2種類の特定の化合物が、2−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール及び2,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノールであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性無色染料と有機顕色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に無色または淡色の染料前駆体と染料前駆体と熱時反応して発色させる顕色剤とを主成分とする感熱記録層を有する感熱記録体は、広く実用化されている。この感熱記録体に記録を行うには、サーマルヘッドを内蔵したサーマルプリンター等が用いられるが、このような感熱記録法は、従来実用化された他の記録法に比べて、記録時に騒音がない、現像定着の必要がない、メンテナンスフリーである、機器が比較的安価でありコンパクトである、得られた発色が非常に鮮明であるといった特徴から、情報産業の発展に伴い、ファクシミリやコンピューター分野、各種計測器、ラベル用等に広く使用されている。
そして、これらの記録装置の多様化、高性能化が進められるに伴い、感熱記録体に対する要求品質もより高度なものになってきている。発色感度については装置の小型化、記録の高速化が進められるに従って、微小な熱エネルギーでも高濃度で鮮明な発色画像が得られることが要求されている。この要求を満たすために、新規な顕色剤を用いることによって発色感度を高める方法(特許文献1参照)が記載されている。
【0003】
また、一方、感熱記録体には、使用用途の広がりに伴い、熱や水、光等の様々な自然環境の中で使用される機会が増加してきた。しかしながら、ロイコ染料と呈色剤を用いた感熱記録体は、用いる材料によっては使用される環境によって地肌部が発色したり、印字部が退色するという欠点があり、その改善が強く要請されている。
【0004】
また、感熱記録体の呈色剤として、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールを用いることで耐油性、耐指紋性、耐熱性に優れた感熱記録体を得る方法(特許文献2)、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールと2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−tert−ブチルフェノールとを併用することで白色度、耐水性、経時安定性に優れた感熱記録体を得る方法(特許文献3)等も提案されている。
【0005】
呈色剤として、4,4’‐ビス[(4−メチル‐3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンと珪酸マグネシウム等の無機化合物を含有して熱処理した化合物を使用する方法(特許文献4を参照)が提案されているが、いずれの方法においても感熱記録体において、地肌部の耐熱性、記録部の耐水性、耐光性、及び記録感度について更に改善することが要求されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−301873号公報
【特許文献2】特開平6−115255号公報(実施例6、9)
【特許文献3】特開2001−96926号公報(請求項2)
【特許文献4】WO 2005/042263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、感熱記録体の地肌部の耐熱性、記録部の耐水性、耐光性、及び記録感度に優れた感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層が呈色剤として下記一般式(1)及び(2)で表される化合物を併用し、且つ保存性向上剤として、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを含有し、上記4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタニウム化合物、及びタルクから選ばれる少なくとも1種の塩基性無機顔料と同一液体中において、50〜90℃の温度で加熱処理された分散液の形態で使用することにより、上記課題を解決することが可能になった。
【0009】
即ち、本発明は、以下の感熱記録体を提供するものである。
【0010】
項1:支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層が、呈色剤として下記一般式(1)及び(2)で表される化合物を併用し、且つ保存性向上剤として、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを含有し、上記4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタニウム化合物、及びタルクから選ばれる少なくとも1種の塩基性無機顔料と同一液体中において、50〜90℃の温度で加熱処理された分散液の形態で使用することを特徴とする感熱記録体。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

[式中、R1、R2はそれぞれn−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を表す。]
項2:前記一般式(1)及び(2)で表される化合物が、2−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール及び2,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノールである項1に記載の感熱記録体。
項3:前記一般式(1)及び(2)の併用比率が70:30〜30:70である項1または2に記載の感熱記録体。
項4:感熱記録層中に、増感剤として1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、及びシュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を、感熱記録層の全固形分に対して3〜23質量%含有する項1〜3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感熱記録体は、地肌部の耐熱性、記録部の耐水性、耐光性、及び記録感度に優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、感熱記録層中に、呈色剤として下記一般式(1)及び(2)で表される化合物(以下、特定の呈色剤と称す)を併用し、且つ保存性向上剤として、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを含有し、上記4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタニウム化合物、及びタルクから選ばれる少なくとも1種の塩基性無機顔料と同一液体中において、50〜90℃の温度で加熱処理された分散液の形態で使用することを特徴とする。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

[式中、R1、R2はそれぞれn−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を表す。]
【0017】
本発明は、各種の呈色剤と保存性向上剤のうち、特定の呈色剤及び保存性向上剤を含有させることで、地肌部の耐熱性、記録部の保存性、記録感度に優れた効果を見出してなされたものである。
【0018】
前記一般式(1)及び(2)で表される化合物として、特に2−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール及び2,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノールを併用するのがより好ましい。
【0019】
前記一般式(1)及び(2)の併用比率は特に限定するものではないが、質量比で70:30〜30:70程度が好ましく、範囲をはずれると記録感度が低下する恐れがある。
【0020】
尚、本発明の呈色剤として、前記の特定の3核体化合物以外に合成時の副生成物として生成される多核体の混合物が含有されていてもよい。
【0021】
本発明で使用する保存性向上剤4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、予め塩基性無機顔料と同一液中において50〜90℃、好ましくは60〜80℃の温度範囲で加熱処理された分散液として感熱記録層用塗液に配合することによって、感熱記録層用塗液の塗工及び乾燥後、感熱記録体としての余計な発色(地肌カブリ)が生じるのを抑制できる。処理時間は、加熱温度により適宜調整されるが、一般に2〜24時間加熱処理することが好ましい。加熱処理する前の分散液は、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを所定の粒子径に分散してから塩基性無機顔料を混合して得ることもできるし、各々を混ぜ合わせてから所定の粒子径に分散して得ることもできる。
【0022】
塩基性無機顔料としては、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタニウム化合物、及びタルクから選ばれる少なくとも1種が用いられるが、なかでもケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、タルクが感熱記録層用塗液の安定性や塗工適性の面からも好ましく使用される。
【0023】
塩基性無機顔料の使用量は、特に限定されないが、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンに対して、0.5〜20質量%程度、好ましくは1〜10質量%程度である。
【0024】
本発明は、呈色剤として特定の呈色剤及び保存性向上剤を選択的に使用するものであるが、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で目的に応じ、他の呈色剤を併用することもできる。かかる他の呈色剤としては、例えば4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4’−メチルフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル等のフェノール化合物、N−(p−トルエンスルホニル)カルバモイル酸−p−クミルフェニルエステル、4,4’−ビス(N−p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(o−トリル)−p−トルエンスルホアミド、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア等の分子内に−SONHCO−結合を有する化合物、p−クロロ安息香酸亜鉛、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩等が挙げられる。
【0025】
呈色剤の使用比率は特に限定されないが、感熱記録層の全固形分に対して10〜60質量%程度が好ましい。呈色剤の使用比率が10質量%未満になると記録感度が低下する恐れがあり、また60質量%を超えるとロイコ染料の比率低下により、最高記録濃度が低下する恐れがある。
【0026】
本発明で使用する4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンの含有量は、感熱記録層の全固形分に対して0.5〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましく、3〜18質量%が最も好ましい。0.5質量%未満では、記録感度に劣る恐れがあり、25質量%を超えると、地肌部の耐熱性に劣る恐れがある。
【0027】
また他の保存性改良剤としては、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で使用することができる。例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,4−ビス[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−ビス[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
【0028】
本発明では、増感剤も使用することができる。増感剤としては1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステルの少なくとも1種が挙げられ、上記の増感剤は、本発明で使用する下記一般式(1)、(2)で表される化合物、及び4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンに対して、耐熱性と記録感度とのバランスが特に優れており、好ましく用いられ、感熱記録層の全固形分に対して3〜23質量%含有するものである。3質量%未満では、記録感度が劣る恐れがあり、23質量%を超えると、地肌部の耐熱性に劣る恐れがある。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

[式中、R1、R2はそれぞれn−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を表す。]
【0031】
また、本発明の効果を阻害しない範囲において他の増感剤を併用することができる。増感剤の具体例として例えば、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、2−ナフチルベンジルエーテル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル、m−ターフェニル、ジフェニルスルホン、1,2−ジフェノキシメチルベンゼン、p−ベンジルビフェニル、p−アセチルビフェニル、p−アセトトルイジド、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、ベンジル−4−メチルチオフェニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、テレフタル酸ジブチルエステル、イソフタル酸ジブチルエステル、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0032】
また、感熱記録層中にアミド誘導体を含有することもできる。アミド誘導体の具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−メチロールステアリン酸アミド、N−メチロールベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、ブチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、1,3−キシリレンビスステアリン酸アミド、N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N,N’−ジステアリル尿素等を挙げることができる。
【0033】
上記のアミド誘導体の中でも、特にパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、N−メチロールステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが熱応答性に優れ好ましく用いられる。
【0034】
ロイコ染料の具体例としては、例えば3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス[1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−[1,1−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)]−3−p−ジエチルアミノフェニルフタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等が挙げられる。
【0035】
感熱記録層は、一般に水を媒体とし、ロイコ染料、特定の呈色剤及び保存性向上剤、増感剤、接着剤、及び助剤とを混合攪拌して調製された感熱記録層用塗液を、支持体上に乾燥後の塗布量が3〜10g/m程度となるように塗布乾燥して形成される。
【0036】
感熱記録層は、複数のロイコ染料を各々異なる層に配する多層発色層の構成であってもよいし、複数のロイコ染料を同一の層に含有させる単層発色層の構成であってもよい。
【0037】
感熱記録層の形成方法については特に限定されず、例えばエアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等の公知の適当な塗布方法により形成される。
【0038】
感熱記録層用塗液に配合する接着剤としては、例えば、部分鹸化または完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン等の水溶性接着剤、並びに酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス等が挙げられる。
【0039】
また、助剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステル・ナトリウム塩、脂肪酸金属塩等の界面活性剤、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム等の顔料、グリオキザール、ホルマリン、グリシン、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、ジメチロール尿素、ケテンダイマー、ジアルデヒド澱粉、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ケトン−アルデヒド樹脂、アジピン酸ジヒドラジド、硼砂、硼酸、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系化合物等の耐水化剤、その他消泡剤、蛍光染料、着色染料等が挙げられる。
【0040】
感熱記録層が設けられる支持体としては、特に限定はなく、紙、合成紙、及びポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルム基材が挙げられる。なお、支持体の厚みとしては20〜200μm程度であり、合成紙やフィルムの場合、感熱記録層との密着性を高めるのに表面にアンカーコート層を設けたり、コロナ放電処理したりすることもできる。更に導電剤による導電処理を施してもよい。
【0041】
なお、本発明の感熱記録体においては、記録感度をより高めるために支持体と感熱記録層との間に、吸油量が70ml/100g以上の顔料、或いは有機中空粒子と接着剤とを主成分とする下塗り層を設けたり、記録走行性と耐薬品性を高めるために成膜性を有する接着剤を主成分とする保護層を感熱記録層上または支持体の裏面側に設けたり、或いは各層を塗布形成した後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理をしたり、支持体の裏面側に磁気記録層や粘着剤層を設けたりする等の各種公知の感熱記録体製造技術を付加することもできる。
【実施例】
【0042】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0043】
実施例1
・ロイコ染料分散液(A液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.7μmとなるまで粉砕してロイコ染料分散液(A液)を得た。
【0044】
・呈色剤分散液(B液)の調製
2−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール10部、2,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水15部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.7μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液(B液)を得た。
【0045】
・保存性向上剤分散液(C液)の調製
4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン10部、ケイ酸マグネシウム0.5部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水15部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.9μmとなるまで粉砕し、その後70℃で5時間加熱処理を行い、保存性向上剤分散液(C液)を得た。
【0046】
・増感剤分散液(D液)の調製
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が1.0μmとなるまで粉砕して増感剤分散液(D液)を得た。
【0047】
・増感剤分散液(E液)の調製
シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が1.0μmとなるまで粉砕して増感剤分散液(E液)を得た。
【0048】
・増感剤分散液(F液)の調製
シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が1.0μmとなるまで粉砕して増感剤分散液(F液)を得た。
【0049】
・呈色剤分散液(G液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.7μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液(G液)を得た。
【0050】
・保存性向上剤分散液(H液)の調製
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水7.8部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.9μmとなるまで粉砕して保存性向上剤分散液(H液)を得た。
【0051】
・保存性向上剤分散液(I液)の調製
4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水15部からなる組成物を、サンドミルで平均粒子径が0.9μmとなるまで粉砕して保存性向上剤分散液(I液)を得た。
【0052】
・下塗り層用塗液の調製
焼成カオリン(商品名:アンシレックス、エンゲルハード社製)85部を水320部に分散して得られた分散物に、スチレン−ブタジエン共重合物エマルジョン(固形分濃度50%)40部と、酸化澱粉の10%水溶液50部とを混合攪拌して下塗り層用塗液を得た。
【0053】
・感熱記録層用塗液の調製
A液25部、B液50部、C液25部、D液25部、軽質炭酸カルシウム10部、無定形シリカ15部、ポリビニルアルコールと(アクリルアミド・アクリル酸誘導体・アクリロニトリル)共重合物とのグラフト共重合体(商品名:ポリマロン−1560、固形分濃度15%、荒川化学社製)67部、ポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA−235、クラレ社製)の10%水溶液50部、ステアリン酸亜鉛の水分散液(商品名:ハイドリンZ−8−36、固形分濃度36%、中京油脂社製)8部、及び水110部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0054】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、重合度1000、日本合成化学工業社製)の10%水溶液100部、アクリル樹脂(商品名:バリアスターOT−1035−1、固形分濃度25%、三井化学社製)40部、40%水酸化アルミニウム分散液40部、ステアリン酸亜鉛の30%分散液2部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0055】
・感熱記録体の作製
48g/mの原紙の片面上に、乾燥後の塗布量が9.0g/mになるように下塗り層用塗液を塗布乾燥して下塗り層を形成し、該下塗り層上に乾燥後の塗布量が感熱記録層用塗液を塗布乾燥して感熱記録層を形成した。更に該感熱記録層上に乾燥後の塗布量が2.0g/mとなるように保護層用塗液を塗布乾燥して保護層を形成した。その後スーパーカレンダーによって平滑化処理し、その表面の平滑度が王研式平滑度計で1000〜4000秒程度の感熱記録体を得た。
【0056】
実施例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、D液25部の代わりにE液25部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0057】
実施例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、D液25部の代わりにF液25部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0058】
実施例4
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、D液25部の代わりにE液15部及びF液10部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0059】
比較例1
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液50部の代わりにG液50部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0060】
比較例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液25部の代わりにH液25部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0061】
比較例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液25部の代わりにI液25部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0062】
かくして得られた7種類の感熱記録体について以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0063】
・記録感度
感熱評価機(商品名:バーラベ300、サトー社製)を用い、印字速度4インチ、印字エネルギー0.13mJ/dot、0.15mJ/dot、0.20mJ/dotで各感熱記録体をベタ発色させ、記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0064】
・地肌部の耐熱性
各感熱記録体を90℃の乾燥機に24時間放置後、白紙部分の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0065】
・記録部の耐水性
記録感度で評価した印字物を水中に24時間浸漬し、その後水中より取り出し自然乾燥させた後、0.20mJ/dotの記録部をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0066】
・記録部の耐光性
記録感度で評価した0.20mJ/dotの記録部を耐光性試験機(商品名:キセノンウェザーメータXL−75、スガ試験社製)の63℃−40%RHの条件下で24時間放置後、記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、感熱記録層が呈色剤として下記一般式(1)及び(2)で表される化合物を併用し、且つ保存性向上剤として、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンを含有し、上記4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホンは、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタニウム化合物、及びタルクから選ばれる少なくとも1種の塩基性無機顔料と同一液体中において、50〜90℃の温度で加熱処理された分散液の形態で使用することを特徴とする感熱記録体。
【化1】

【化2】

[式中、R1、R2はそれぞれn−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)及び(2)で表される化合物が、2−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール及び2,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノールである請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記一般式(1)及び(2)の併用比率が70:30〜30:70である請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
感熱記録層中に、増感剤として1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、及びシュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を、感熱記録層の全固形分に対して3〜23質量%含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の感熱記録体。