説明

感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法

【課題】 メインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させず、しかも記録シートの管理を容易にすることができる記録シート等を提供する。
【解決手段】 記録シート10内に高温発色カプセル23、低温発色カプセル27およびカプラー内包カプセル28を内包する。プリンタでは、高温発色カプセル23を高温加熱により発色させる。この際低温発色カプセル27は発色しない。その後常温にて加圧してカプラー内包カプセル28を破壊する。これにより低温発色カプセル27が発色可能状態となる。その後、プリンタは低温発色カプセル27を低温加熱により発色させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱式の感熱記録媒体、並びに当該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているプリンタには、インクジェット方式や感熱転写方式、複写機を電子化したレーザ方式等がある。これらは、いずれもインクやインクリボン、トナーなどを紙(シート)に転写している。従って、プリントが終わると、インクやインクリボン、そしてそれらを内包した専用カートリッジ等が廃棄物となる。また、写真画質を実現するには、結局は専用紙を使う必要がある。
一方、専用の記録シートを必要とするが、インクやインクリボン、並びに専用カートリッジを廃棄しないプリンタとして、ファクシミリやバーコード印刷に用いられている感熱方式のプリンタがある。このような感熱方式で写真画質のカラー印刷を実現するためには多くの技術的困難があり、なかなか実用化されていない。
その最大の技術的障壁としては、3色3層の各発色層をサーマルヘッドの熱制御だけで独立に制御して発色させ、しかも発色する各色に濃淡を付けて濃度階調した制御が困難なためにカラー写真の画質の印刷が実現できなかった。このような中で、富士写真フィルム株式会社の特許文献1の技術的思想を基に、1996年に発売を開始した直接感熱記録方式(TA方式)が唯一の実用化例である。
【0003】
このTA方式は、シアン、マゼンダ、イエローの順に感熱発色層を基板上に積層し、最上層には耐熱性保護層を配置している。イエローとマゼンタの発色層は、ジアゾニウム塩化合物とカプラーを発色素材とし、紫外線で画像の定着が可能である。また、シアン発色層は定着の必要がないので、染料前駆体と有機酸を発色素材としている。各層のマイクロカプセルは異なる熱感度と紫外線感度を持っており、異なる熱エネルギと異なる波長の紫外線を、5回のステップに分けて与えることによって発色と定着を繰り返しながら、フルカラーのプリントを作成する。
具体的には、TA方式は、(1)イエロー画像情報で、低熱エネルギでイエロー画像を形成し、(2)波長が419nmの紫外線を全面照射し、(3)イエロー画像を定着し、(4)マゼンタ画像を中熱エネルギで形成する(このときイエロー発色層は加熱しても発色しないため、影響を受けない)、(4)波長が365nmの紫外線を全面照射し、マゼンタ画像を定着し、(5)シアン画像を高熱エネルギで形成する。
【0004】
また、上記TA方式とは別に、3段階の圧力と3段階の温度とを組み合わせて、カプセル内のジアゾ化合物とカプセル外のカプラーとを化学反応させて発色させるシステムが特許文献2に提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−40192号公報
【特許文献2】特開平11−170692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記TA方式では、感熱発色層が紫外線で定着されるため、記録シートの保管が難しいという問題がある。
また、上述した特許文献2のシステムでは、3段階の圧力を記録シートに適切に加えて発色させる制御が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも感熱記録媒体を容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するため、請求項1の発明の感熱記録媒体は、第1の発色温度で加熱されて発色する第1の発色要素と、顕色剤を含む雰囲気である発色可能状態において、前記第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されると前記顕色剤と反応して発色する、前記発色可能状態にない第2の発色要素と、前記顕色剤を内包し、予め決められた圧力を受けると、前記内包されている顕色剤を放出して、前記第2の発色要素を前記発色可能状態にする発色制御要素とを有する。
このように、請求項1の発明では、発色制御要素が、予め決められた圧力を受けると、内包されている顕色剤を放出して第2の発色要素を発色可能状態にして、その発色可能状態で第2の発色温度で加熱されて発色するので、例えば発色要素を定着させるための定着剤を使用することなく、発色要素の発色を高精度に制御して発色させることができる。また、感熱記録媒体の管理が容易になる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記発色制御要素は、前記顕色剤として少なくともカプラーおよび塩基性物質の一方を内包し、予め決められた圧力を受けると、前記内包されている前記顕色剤を放出して、前記第2の発色要素を前記発色可能状態にし、前記第2の発色要素は、塩基性且つ前記カプラーを含む雰囲気である前記発色可能状態において、前記第1の発色温度より低い前記第2の発色温度で加熱されると前記カプラーと反応して発色することを特徴とする。
このように、請求項2の発明では、予め決められた圧力が感熱記録媒体に加圧されると、発色制御要素に内包されている前記顕色剤が放出して、第2の発色要素を塩基性且つカプラーを含む雰囲気である発色可能状態にして、第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されるとカプラーと反応して発色する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記第1の発色要素を内包する第1の発色層と、前記第2の発色要素を内包する第2の発色層と、前記発色制御要素を内包し、前記第2の発色層に隣接する発色制御層とを有することを特徴とする。
このように請求項3の発明では、第2の発色要素と発色制御要素それぞれが別の層に設けられており、発色制御層内に発色制御要素を均一に配置することができ、加圧時に発色制御要素から内包している顕色剤を容易に放出させて、第2の発色層内の第2の発色要素を発色状態にする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記第1の発色要素を内包する第1の発色層と、前記第2の発色要素と前記発色制御要素とを混在させて内包する第2の発色層とを有することを特徴とする。
このように請求項4の発明では、第2の発色層内に第2の発色要素と発色制御要素とを混在させて内包しているので、例えば第2の発色要素と発色制御要素それぞれを別の層に内包させた場合と比べて、感熱記録媒体の厚みを薄くすることが容易である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記第1の発色要素および第2の発色要素を含むN(Nは3以上の整数)種類の発色要素を内包し、前記発色制御要素は、少なくとも前記N種類の発色要素のうち一番低い発色温度の発色要素に対して発色制御を行うことを特徴とする。
請求項5の発明では、3色以上の発色が可能である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1または5の発明において、前記第1の発色要素を含む第1の発色層と、前記第1の発色温度と前記第2の発色温度の間の第3の発色温度で、前記第1の時間より長い第2の時間だけ加熱されて発色する第3の発色要素を含む第3の発色層と、前記第1の発色層と前記第3の発色層の間に位置し、前記第2の発色要素および前記発色制御要素を含む第2の発色層とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかの発明において、前記発色要素は、当該発色要素が内在する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは、前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素であることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明の画像形成装置は、感熱記録媒体に対して、画像を熱記録するサーマルヘッドと、前記感熱記録媒体に予め決められた圧力を加える加圧手段と、第1の発色温度で加熱して、前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理と、前記感熱記録媒体に前記予め決められた圧力を加えて、前記第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されると発色可能状態となる発色要素を、前記第2の発色温度より低い温度にて当該発色可能状態となるように前記加圧手段を制御する処理と、前記第2の発色温度で加熱して前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理とを順に行う制御手段とを有することを特徴とする。
このように、請求項8の発明では、制御手段の制御に従って、サーマルヘッドが、第1の発色温度で加熱して、感熱記録媒体に熱記録を行う。
次に、加圧手段が、第2の発色温度より低い温度にて、感熱記録媒体に予め決められた圧力を加える。これにより感熱記録媒体の第2の発色要素が発色可能状態となる。
次に、サーマルヘッドが、その発色可能状態で、第2の発色温度で加熱して、感熱記録媒体に画像を記録する。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記制御手段は、前記第1の発色温度で前記第1の時間だけ加熱して、前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理と、前記第1の発色温度と該第1の発色温度より低い第2の発色温度との間の第3の発色温度で、前記第1の時間より長い第2の時間だけ加熱して、前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理と、前記感熱記録媒体に前記予め決められた圧力を加えて、前記第2の発色温度で加熱されると発色可能状態となる発色要素を、前記第2の発色温度より低い温度にて当該発色可能状態となるように前記加圧手段を制御する処理と、前記第2の発色温度で加熱して前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理とを順に行うことを特徴とする。
このように、請求項9の発明では、制御手段の制御に従って、サーマルヘッドが、第1の発色温度で第1の時間だけ加熱して、感熱記録媒体に画像を記録する。
次に、サーマルヘッドが、第3の発色温度で第2の時間だけ加熱して、感熱記録媒体に画像を記録する。
次に、加圧手段が、第2の発色温度より低い温度にて、感熱記録媒体に予め決められた圧力を加える。これにより感熱記録媒体の第2の発色要素が発色可能状態となる。
次に、サーマルヘッドが、その発色可能状態で、第2の発色温度で加熱して、感熱記録媒体に画像を記録する。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8または9に記載の発明において、前記サーマルヘッドと前記加圧手段とが隣接して位置することを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項8または9に記載の発明において、前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって、前記圧力を加えることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明の画像形成方法は、第1の発色温度で感熱記録媒体を加熱する第1の工程と、前記第1の工程の後、前記感熱記録媒体に前記予め決められた圧力を加えて、前記第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されると発色可能状態となる発色要素を、前記第2の発色温度より低い温度にて当該発色可能状態とする第2の工程と、前記第2の工程の後、前記第2の発色温度で前記感熱記録媒体を加熱して、当該感熱記録媒体に画像を形成する第3の工程とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも感熱記録媒体を容易に管理することが可能であり、かつ例えば発色要素の発色を定着させるための定着剤を使用することなく、発色要素の発色を高精度に制御して発色させることができる感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係わる記録シート、並びに当該記録シートに画像を形成するプリンタについて、図1〜図25を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
[本発明の構成との対応関係]
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
本実施形態の図1に示す記録シート10は、請求項1の発明に係る感熱記録媒体の一例である。
また、図1に示す高温発色カプセル23は、請求項1の発明に係る感熱記録媒体の第1の発色要素の一例であり、低温発色カプセル27は、請求項1の発明に係る感熱記録媒体の第2の発色要素の一例であり、カプラー(顕色剤)内包カプセル28は、請求項1の発明に係る発色制御要素の一例である。
また、カプラー8は本発明に係る顕色剤の一例であり、塩基性化合物9は本発明に係る塩基性物質の一例である。
また、図5に示すプリンタ40が請求項8の発明に係る画像形成装置の一例である。
また、図5に示すサーマルヘッド45が請求項8の発明に係る画像形成装置のサーマルヘッドの一例であり、加圧ローラ49a,49bが請求項8の発明に係る画像形成装置の加圧手段の一例である。
また、図5に示す制御部51が、請求項8の発明に係る画像形成装置の制御手段の一例である。
【0021】
[記録シート]
先ず、本実施形態で用いられる記録シートを説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る記録シート10の断面構成図である。
図1に示すように、記録シート10は、例えば基材11に、カプラー内包層60、低温発色層17、混防止層15、高温発色層13、および保護層19を順に積層して構成される。
【0022】
記録シート10は、カプラー内包層60内に、カプラー内包カプセル28を内包している。
本実施形態に係る低温発色層17は、低温発色カプセル27を内包している。また、低温発色層17には、塩基性化合物9が含まれており、その塩基性雰囲気中に、低温発色カプセル27が内包されている。低温発色層17には、カプラー8は存在しない。
高温発色層13は、高温発色カプセル23を内包しており、カプラーを含む塩基性雰囲気となっている。
【0023】
本実施形態に係る記録シート10において、画像形成時に、高温発色層13が高温(第1の発色温度)で加熱されて発色した後に、所定温度(低温発色温度より低い温度、例えば常温)に冷却された後、加圧されてカプラー内包層60内のカプラー内包カプセル28が破壊されて、そのカプセル28内から、カプラー(顕色剤)8が低温発色層17に放出される。すると、低温発色層17では、塩基性且つカプラー8を含む雰囲気である発色可能状態となり、低温発色温度(第2の発色温度)で加熱されると低温発色カプセル27の発色剤とカプラー8とが反応して発色する。
以下、記録シート10の各構成要素を詳細に説明する。
【0024】
基材11は、例えば、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)等によって構成される。基材11は、例えば白色あるいは透明である。
高温発色層13は、高温発色カプセル23、カプラーおよび必要に応じて塩基性物質または酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。高温発色カプセル23は、例えば発色剤を内包する。
【0025】
図2は、図1に示す記録シート10内の高温発色カプセル23,低温発色カプセル27,カプラー内包カプセル28の特性を説明するための図である。
高温発色層13は、例えば発色剤、カプラー、塩基性化合物等を内包する。図2に示すように、高温発色層13は、温度T1(例えば、330℃)以上の高温状態となると、高温発色カプセル23が内包する発色剤と高温発色層13内のカプラーとが反応して発色する。
【0026】
高温発色カプセル23は、いわゆるマイクロカプセルであり、例えば、その壁が約300〜350℃のガラス転移点を持つポリウレアあるいはポリウレタンからなる。高温発色カプセル23は、ガラス転移点前後で物質浸透(透過)性が大きくなる特性を持つ。
【0027】
図3は、図1に示す高温発色カプセル23の発色原理を説明するための図である。詳細には図3(A)は非発色温度での高温発色カプセル23の状態を説明するための図であり、図3(B)は発色温度での高温発色カプセル23の状態を説明するための図である。
図3(A)に示すように、温度T1未満(非高温)においては、高温発色カプセル23内にカプラー8Aは浸透せず、高温発色カプセル23内の発色剤は発色しない。一方、図3(B)に示すように、温度T1以上(上記高温状態)になると、高温発色層13内のカプラー8Aが高温発色カプセル23内に浸透し、当該カプラー8Aと高温発色カプセル23内の発色剤とが反応して色素が形成されて発色する。
【0028】
高温発色カプセル23等の本実施形態におけるマイクロカプセルの壁は、例えば、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の合成樹脂で形成される。具体的には、高温発色カプセル23の壁として、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、尿素−ホルムアルデヒドポリマー等が用いられる。
また、マイクロカプセルの平均粒径は、例えば約3〜4μmであり、そのガラス転移点は壁の材質によって規定される。マイクロカプセルは、反応する物質を多層構造の状態で隔離しておくだけでなく、マイクロカプセルの壁を隔ててミクロンに分散して共存させることにより、数μの薄い塗布膜の中で、常温では十分に隔離性を保ちながら、加熱時に瞬時に十分な物質浸透性を持たせる機能を持つ。
【0029】
本実施形態において、発色剤と、それに反応する顕色剤との組み合わせは、例えば、ジアゾ化合物(発色剤)とカプラーとの組み合わせである。
【0030】
なお、上記ジアゾ化合物は、例えば、リン酸トリクレジル等である。ジアゾ化合物は、電子供与性染色前駆体(染料前駆体)であり、塩基性雰囲気でカプラーと反応して発色する。カプラーは、例えば、レゾルシルやフロログルシンであり、塩基性雰囲気中でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成する。塩基性雰囲気は、水難溶性又は水不溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質(例えば、有機アンモニウム塩)によって作られる。
【0031】
また、上記カプラーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3ナフトエ酸アニリド等が用いられる。
【0032】
混防止層15は、高温発色層13と低温発色層17との間でカプセル等が混ざり合うことを防止するための層である。
【0033】
低温発色層17は、低温発色カプセル27、塩基性化合物9をバインダ材中に分散させて構成される。低温発色カプセル27は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、90〜140℃の低温である。
この低温発色層17には、カプラー8は存在しない。低温発色層17は、低温発色カプセル27の周囲にカプラー8が存在しない状態で加熱されたとしても、低温発色カプセル27の発色反応が生じないので発色しない。
また、低温発色層17は、例えば図2に示すように、塩基性且つカプラー8を含む雰囲気である発色可能状態においては、温度T2(例えば、110℃程度)の低温状態となると、低温発色カプセル27が内包する発色剤と低温発色層17内のカプラー8とが塩基性雰囲気中にて反応して発色する。
【0034】
カプラー内包層60は、カプラー8を含有したカプラー内包カプセル28を内包する。
このカプラー内包カプセル28は、通常圧力(非破壊圧力)状態でカプラー8を内包し、破壊圧力以上の圧力が加わるとカプセルが破壊状態(あるいは浸透状態)となり、カプラー8をカプラー内包カプセル28外に流出させる。
【0035】
本実施形態において、高温発色カプセル23が内包する発色剤と、その外部の高温発色層13内のカプラー8Aとが反応する条件として、圧力は不要である。
また、低温発色カプセル27が内包する発色剤と、その外部の低温発色層17内のカプラー8とが反応する条件としては、加圧によりカプラー内包カプセル28内のカプラー8がカプセル外に放出されて、そのカプラー8と塩基性化合物9を含む塩基性雰囲気中で反応可能状態となり、その状態で低温で加熱されることを要する。
【0036】
図4は、図1に示す低温発色カプセルの発色原理を説明するための図である。詳細には図4(A)は、非破壊圧力時のカプラー内包カプセル28と低温発色カプセル27を説明するための図であり、図4(B)は、破壊圧力時のカプラー内包カプセル28と低温発色カプセル27を説明するための図であり、図4(C)は、低温加熱時の低温発色カプセル27を説明するための図である。
【0037】
カプラー内包カプセル28は、図4(A)に示すように、通常圧力(非破壊圧力)状態で、カプラー8を内包する。
カプラー内包カプセル28は、図2に示す破壊圧力P1以上の圧力が加わると、図4(B)に示すように、カプセルが破壊状態(あるいは浸透状態)となり、カプラー8をカプラー内包カプセル28外に流出させる。このカプラー8が流出した状態で、低温発色カプセル27の周囲は、塩基性且つカプラー8を含む雰囲気となり、低温発色カプセル27が発色可能状態となる。そして図4(C)に示すように、発色可能状態で、低温加熱されると低温発色カプセル27の内包する発色剤と、カプラー8とが塩基性雰囲気中で反応して発色する。
カプラー内包カプセル28等のマイクロカプセルの破壊(浸透)圧力は、マイクロカプセルの径と壁厚との関係、並びに壁の材質によって規定される。
なお、本実施形態において、カプラー内包カプセル28が内包するカプラー8がカプセル外部に流出する条件としては、破壊圧力P1以上の圧力が加わることである。
【0038】
保護層19は、低温発色層17を保護するための層である。保護層19は、例えば、耐熱機能を有する。
【0039】
本実施形態において、高温発色層13および低温発色層17の厚みは、例えば1〜4μmである。
【0040】
[プリンタ40]
次に、本実施形態で用いられる記録シート10に画像を形成するプリンタを説明する。
なお、本実施形態で以下に説明するプリンタは一例であり、後述する変形例等に記載するプリンタを用いて記録シート10に画像を形成してもよい。
【0041】
図5,図6は、図1に示す記録シート10に画像を記録(印刷)するプリンタ40を説明するための図である。図5,図6を参照しながら、プリンタ40の構成およびプリンタ40の動作を説明する。
プリンタ40は、例えば図5に示すように、シート収容ケース41、シート送りローラ43、サーマルヘッド45、プラテンローラ47、加圧ローラ49a,49b、シート搬出部50および制御部51を有する。
シート収容ケース41は、複数の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53等の付勢手段によってシート送りローラ43に向けて押されている。
【0042】
シート送りローラ43は、シート収容ケース41の最上段の記録シート10に接触して位置する。シート送りローラ43は、制御部51からの制御信号に基づいてモータ(図示せず)によって回転駆動される。シート送りローラ43が回転すると、バネ53の付勢力により記録シート10とシート送りローラ43との間に生じた摩擦力によって、シート送りローラ43の回転に連動してシート収容ケース41の最上段の記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。なお、制御部51は、上記制御信号に基づいて、モータ(シート送りローラ43)の回転量を制御することで、記録シート10の位置や送り量を制御する。
【0043】
記録シート10の搬送経路におけるシート送りローラ43の下流側には、サーマルヘッド45が設けられている。
サーマルヘッド45は、例えば、複数の発熱素子を主走査方向にライン状に並べた発熱素子アレイを備えている。サーマルヘッド45は、発熱素子アレイを記録シート10に接触した状態で、形成する画像に応じたパターンで各発熱素子を発熱させる。本実施形態では、各発熱素子は、少なくとも、非発熱状態、低温発熱状態、および高温発熱状態の3状態を有し、これら3状態のうち一つが制御部51によって選択される。
各発熱素子の発熱温度は、その発熱素子に接続された抵抗に電流を流す時間によって制御される。制御部51は、加熱時間に応じて、サーマルヘッド45の各発熱素子に電流を流す時間を規定するストローブ信号のパルス幅を制御する。
なお、サーマルヘッド45は、低温発色状態および高温発色状態の各々において、画像データの階調に応じた複数の発熱温度を調整可能にしてもよい。
【0044】
プラテンローラ47は、記録シート10の搬送経路を挟んで反対側には、サーマルヘッド45が設けられている。プラテンローラ47は、記録シート10の搬送に応じて回転し、記録シート10とサーマルヘッド45の発熱素子との接触状態を安定にする。
【0045】
記録シート10の搬送経路におけるサーマルヘッド45の下流側には、1対の加圧ローラ49a,49bが設けられている。
加圧ローラ49a,49bは、サーマルヘッド45で加熱して発色した記録シート10を挟み込んで加圧し、図1に示す記録シート10のカプラー内包層60内のカプラー内包カプセル28に圧力を加えて、カプラー内包カプセル28内のカプラー8をカプラー内包カプセル28外に流出させる。
加圧ローラ49a,49bは、加圧後の記録シート10を、再度、サーマルヘッド45に向けて送り出すシート送りローラとしての機能も併せ持つ。
【0046】
シート搬出部50は、発色を終えた記録シート10を搬出口(図5中左側)に向けて搬出する際の経路となる。
【0047】
制御部51は、例えば、マイクロコンピュータ等の電子回路であり、プリンタ40の動作を統括的に制御する。
【0048】
図7は、本発明の第1実施形態に係るプリンタ40の画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
以下、図5〜図7を参照しながら、プリンタ40の動作例を説明する。
なお、記録シート10の低温発色層17では、画像記録前では、低温発色カプセル27が、発色可能状態にない。詳細には、低温発色層17は、例えば塩基性化合物9を含み塩基性状態となっており、カプラー8が含まれていない。
【0049】
ステップST0:
先ず、プリンタ40のシート収容ケース41に、複数枚の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53の付勢力によって紙送りローラ43に向けて押され、最上段の記録シート10と紙送りローラ43との間に摩擦力が生じている。
【0050】
ステップST1:
制御部51からの制御に基づいてシート送りローラ43が回転し、シート収容ケース41の最上段に収容された記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。
【0051】
ステップST2:
制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を高温(第1の温度T1)に発熱させる。これにより、記録シート10の高温発色層13が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図2に示すように温度T1で高温加熱され、高温加熱された位置の高温発色カプセル23内の発色剤とその周囲のカプラーとが塩基性雰囲気中にて反応して発色(高温発色)する。
なお、制御部51は、各発色において、加熱時間によって発色の階調を制御する。
また、上記高温発色時には、低温発色層17の低温発色カプセル27は、周囲が塩基性雰囲気であるがカプラー8が存在しないので発色可能状態でなく、発色しない。
【0052】
ステップST3:
ステップST2に続いて、制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47が記録シート10を加圧ローラ49a,49bに向けて搬送する。記録シート10は、加圧ローラ49a,49bにおいて図2に示すように、例えば温度T2より低い温度Taになってから、破壊圧力P1で加圧される。温度Taは加熱によって実現してもよいし、非加熱により実現してもよい。また温度Taは常温であってもよい。これにより、図1に示すカプラー内包層60内のカプラー内包カプセル28が破壊され、カプラー内包カプセル28内のカプラー8がカプセル外部に流出する。さらに、このカプラー8は、低温発色層17内に流出する。つまり、低温発色層17には、塩基性化合物9による塩基性雰囲気中にカプラー8が存在することとなり、低温発色層17が発色可能状態となる。
【0053】
ステップST4:
制御部51からの制御に基づいて、加圧ローラ49a,49bがステップST3とは逆向きに回転し、記録シート10をサーマルヘッド45に向けて再び搬送する。
【0054】
ステップST5:
制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を低温(第2の温度T2)に発熱させる。これにより、記録シート10の低温発色層17が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図2に示すように、第2の温度T2で低温加熱され、低温加熱された位置の低温発色カプセル27内の発色剤とカプラー8とが塩基性雰囲気中にて反応して発色(低温発色)する。
【0055】
ステップST6:
制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47および加圧ローラ49a,49bが回転し、記録シート10がシート搬出部50を介して図6中左側の搬出口に向けて搬送される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の記録シート10では、高温発色カプセル23が発色した後、カプラー内包カプセル28に予め規定された圧力を加圧することにより低温発色カプセル27が発色可能状態となり、その発色可能状態で低温発色カプセル27が発色するので、例えば従来技術のように紫外線によっては定着されないために、記録シート10の管理が容易になる。
また、本実施形態に係る記録シート10では、例えば発色を定着させる定着剤を使用することなく、複数色を発色させることができる。また、記録シート10では、低温発色層17の低温発色カプセル27内にて発色剤とカプラー8とが反応して発色するので、高精度に発色位置を制御することができ、高精度に画像を記録することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る記録シート10では、カプラー内包カプセル28と低温発色カプセル27それぞれが、カプラー内包層60と低温発色層17内に分離して設けられており、カプラー内包層60にカプラー内包カプセル28を均一に配置することができ、加圧時にカプラー内包カプセル28内のカプラー8を容易に放出させて、低温発色カプセル27を発色可能状態にすることができる。
【0058】
また、記録シート10によれば、色素が各層に内包されるマイクロカプセル内に含まれるため、薬品や物理的なダメージに対しても強い。すなわち、画像安定性に優れている。
また、本実施形態の記録シート10およびプリンタ40によれば、インクカートリッジやインクリボン等の消耗品が不要となる。そのため、従来のインクカートリッジ等を必要とするプリンタに比べて、インクカートリッジの交換が不要で、メインテナンスが容易になり、ランニングコストを安くできる。また、本実施形態によれば、使用済みのインクリボンやカセットといった廃棄物をなくすことができる。なお、本実施形態の記録シート10およびプリンタ40によれば、インクリボンを使用する方式のように、プリント内容がシート側に残ることも無いので、機密保持性に優れている。
【0059】
なお、上述した高温発色カプセル23は、上記高温状態になると、その壁が溶けて、カプセル内の発色剤がカプセル外に流出して、カプセル外のカプラーと反応して発色するように構成してもよい。
【0060】
<第1実施形態の第1変形例>
図8は、本発明の第1実施形態の第1変形例に係る記録シート10Aの断面構成図である。上記実施形態と同一の構成や機能については説明を省略する。
図8に示すように、記録シート10Aは、低温発色層17A内に、低温発色カプセル27、塩基性化合物9、およびカプラー内包カプセル28が内包されている。また、低温発色層17Aには、カプラー内包カプセル28内のみにカプラー8が存在し、カプセル外にはカプラー8は存在しない。この記録シート10Aには、カプラー内包層を設けなくてもよい。
低温発色層17Aは、カプラー8がカプラー内包カプセル28内にある状態で、加熱されたとしても、低温発色カプセル27の発色反応が生じないので、発色しない。
記録シート10Aが規定の圧力P1以上で加圧されると、カプラー内包カプセル28のカプセルが破壊されて、低温発色層17A内にカプラー8が流出し、低温発色カプセル27が発色可能状態となる。低温発色カプセル27は、この発色可能状態で低温加熱されると、カプラー8と反応して発色する。
【0061】
上記構成の記録シート10Aでは、カプラー内包層を設けることなく、低温発色層17A内にカプラー内包カプセル28が設けられているので、例えば記録シート10と比べて厚みを薄くすることができる。
【0062】
<第1実施形態の第2変形例>
図9は、本発明の第1実施形態の第2変形例に係る記録シート10Bの断面構成図である。上記実施形態や変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
図9に示すように、記録シート10Bは、基材11に、塩基性化合物内包層61、低温発色層17B、混防止層15、高温発色層13、および保護層19を順に積層して構成される。
低温発色層17Bは、低温発色カプセル27、およびカプラー8を内包する。また、低温発色層17Bには、塩基性化合物9が存在しない。この状態では、低温発色層17Bは、塩基性雰囲気中でないので、加熱されたとしても発色しない(非発色可能状態)。
【0063】
塩基性化合物内包層61は、塩基性化合物内包カプセル28Bを内包している。塩基性化合物内包カプセル28Bは、内部に塩基性化合物9が内包されており、破壊圧力P1以上の圧力が加わると、カプセルが破壊状態(あるいは浸透状態)となり、塩基性化合物9を塩基性化合物内包カプセル28B外に流出させる。
この塩基性化合物9が流出した状態で、低温発色カプセル27の周囲は、塩基性且つカプラー8を含む雰囲気となり、低温発色カプセル27が発色可能状態となる。
記録シート10Bの他の構成や機能については、記録シート10と略同様であるので説明を省略する。
つまり、図1に示した記録シート10ではカプラー8をカプセル化していたが、記録シート10Bでは、図9に示すように塩基性化合物9をカプセル化している。
【0064】
また、本実施形態に係る記録シート10Bでは、塩基性化合物内包カプセル28Bと低温発色カプセル27それぞれが、塩基性化合物内包層61と低温発色層17内に分離して設けられており、塩基性化合物内包層61に塩基性化合物内包カプセル28Bを均一に配置することができ、加圧時に塩基性化合物内包カプセル28B内の塩基性化合物9を容易に放出させて、低温発色カプセル27を発色可能状態にすることができる。
【0065】
<第1実施形態の第3変形例>
図10は、本発明の第1実施形態の第3変形例に係る記録シート10Cの断面構成図である。第1実施形態の第2変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
図10に示すように、記録シート10Cは、低温発色層17C内に塩基性化合物内包カプセル28B、およびカプラー8が内包されている。また、記録シート10Cには、塩基性化合物内包カプセル28B内のみに塩基性化合物9が存在するが、塩基性化合物内包カプセル28B外には塩基性化合物9は存在しない。この際、記録シート10Cには塩基性化合物内包層を設けなくてもよい。
上記構成の記録シート10Cでは、塩基性化合物内包層を設けることなく、低温発色層17C内に塩基性化合物内包カプセル28Bが設けられているので、例えば記録シート10Bと比べて厚みを薄くすることができる。
【0066】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、発色カプセルとして低温と高温の2種類を用いる場合を例示したが、第2実施形態では、発色カプセルとして低温、中温および高温の3種類を用いることでカラー印刷を可能とする。
【0067】
また、第2実施形態では、第1の発色要素および第2の発色要素を含むN(Nは3以上の整数)種類の発色要素を内包し、発色制御要素としては、少なくともN種類の発色要素のうち一番低い発色温度の発色要素に対して発色制御を行う。
第2実施形態は、請求項5に記載の発明の一例である。また本実施形態は、請求項5のN=3の一例である。
【0068】
[記録シート110]
図11は、本発明の第2実施形態の記録シート110の断面構成図である。
図11に示すように、記録シート110は、例えば、基材11に、中温発色層113、混防止層115、カプラー内包層60、低温発色層17、混防止層15、高温発色層13、および保護層19を順に積層して構成される。
【0069】
図11において、図1と同じ符号を付した基材11、高温発色層13、混防止層15、低温発色層17、およびカプラー内包層60は第1実施形態で説明したものと同じであるので、説明を省略する。
【0070】
つまり、図11に示すように、記録シート110は、中温発色層113と高温発色層13との間に、混防止層115、カプラー内包層60、低温発色層17、混防止層15を順に積層したことを特徴とする。
混防止層115は、中温発色層113とカプラー内包層60との間でカプセル等が混ざり合うことを防止するための層である。
【0071】
中温発色層113は、中温発色カプセル121、カプラー、塩基性化合物をバインダ材中に分散させて構成される。
【0072】
図12は、図11に示す記録シート110内の高温発色カプセル23,中温発色カプセル121,低温発色カプセル27,カプラー内包カプセル28の特性を説明するための図である。
中温発色カプセル121は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、150〜280℃の中温であり、低温発色カプセル27より高く、高温発色カプセル23より低い。
【0073】
詳細には、図12に示すように、中温発色カプセル121は、第1の発色温度T1と第2の発色温度T2の間の第3の発色温度T3で(例えば、150℃以上の中温状態で)、第1の時間(短時間)より長い第2の時間(長時間)だけ加熱されると、中温発色カプセル121が内包する発色剤と中温発色層113内のカプラーとが塩基性雰囲気中で反応して発色する。この中温発色カプセル121は、上記以外の条件では発色しない。
【0074】
本実施形態では、低温発色層17において、イエロー色を発色するように、低温発色カプセル27内の発色剤と低温発色層17内のカプラーとが選択されている。また、中温発色層113においてマゼンダ色を発色するように、中温発色カプセル121内の発色剤と中温発色層113内のカプラーとが選択されている。また、高温発色層13において、シアン色を発色するように、高温発色カプセル23内の発色剤と高温発色層13内のカプラーとが選択されている。なお、これらの各層への発色の割り当ては任意である。
【0075】
図13は、本発明の第2実施形態に係るプリンタの画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
本実施形態に係るプリンタ140は、動作の一部を除いて、第1実施形態で説明した図5,6に示すプリンタ40と同じ構成および動作である。
【0076】
以下、図11〜13を参照しながら、図11に示す記録シート110に記録を行うプリンタ140の動作例を説明する。
ステップST20:
プリンタ140のシート収容ケース41に、複数枚の記録シート110を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート110は、バネ53の付勢力によって紙送りローラ43に向けて押され、最上段の記録シート110と紙送りローラ43との間に摩擦力が生じている。
【0077】
ステップST21:
制御部51からの制御に基づいてシート送りローラ43が回転し、シート収容ケース41の最上段に収容された記録シート110がサーマルヘッド45に向けて搬送される。
【0078】
ステップST22:
制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート110に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を高温(第1の温度T1)に発熱させる。これにより、記録シート110の高温発色層13が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図12に示すように第1の時間(短時間)で温度T1で高温加熱され、高温短時間加熱された位置の高温発色カプセル23内の発色剤とその周囲のカプラー8とが塩基性雰囲気中にて発色(高温発色)する。
また、上記高温発色時には、低温発色層17の低温発色カプセル27は、周囲が塩基性雰囲気であるがカプラー8が存在しないので発色可能状態でなく、発色しない。また、中温発色層113の中温発色カプセル121は、発色条件が満たされないので発色しない。
【0079】
ステップST23:
ステップST22に続いて、制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47が駆動する。
【0080】
ステップST24:
ステップST23に続いて、制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート110に形成する画像の中温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を中温(第3の温度T3)に発熱させる。これにより、記録シート110の中温発色層113が、画像情報に対応した中温発色成分の画素パターンで、図12に示すように第2の時間(長時間)で温度T3で中温加熱され、中温加熱された位置の中温発色カプセル121内の発色剤とその周囲のカプラー8とが塩基性雰囲気中にて発色(中温発色)する。
また、上記中温発色時には、低温発色層17の低温発色カプセル27は、周囲が塩基性雰囲気であるがカプラー8が存在しないので発色可能状態でなく、発色しない。
【0081】
ステップST25:
ステップST24に続いて、制御部51からの制御に基づいて、プラテンローラ47が記録シート110を加圧ローラ49a,49bに向けて搬送する。この際、記録シート110は、図12に示すように、温度Ta(例えば非加熱、常温)にて破壊圧力P1で加圧される。これにより、図11に示すカプラー内包層60内のカプラー内包カプセル28が破壊され、カプラー内包カプセル28内のカプラー8がカプセル外部に流出する。さらに、このカプラー8は、低温発色層17内に流出する。つまり、低温発色層17には、塩基性化合物9による塩基性雰囲気中にカプラー8が存在することとなり、低温発色層17が発色可能状態となる。
【0082】
なお、加圧ローラ49a,49bは、一方のローラを金属で形成し、ニクロム線等を内蔵することで加熱してもよい。温度Taが常温である場合には、ステップ25における加熱は不要である。
【0083】
ステップST26:
制御部51からの制御に基づいて、加圧ローラ49a,49bがステップST21とは逆向きに回転し、記録シート110をサーマルヘッド45に向けて再び搬送する。
【0084】
ステップST27:
ステップST26に続いて、制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を低温(第2の温度T2)に発熱させる。これにより、記録シート10の低温発色層17が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図12に示すように、第2の温度T2で低温加熱され、低温加熱された位置の低温発色カプセル27内の発色剤とカプラー8とが塩基性雰囲気中にて反応して発色(低温発色)する。
【0085】
ステップST28:
ステップST27に続いて、制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47および加圧ローラ49a,49bが回転し、記録シート10がシート搬出部50を介して搬出口に向けて搬送される。
【0086】
以上説明したように、記録シート110およびプリンタ140によれば、多色、例えばシアン、マゼンダおよびイエローの3色によるカラー印刷が可能になる。
また、本実施形態の記録シート110およびプリンタ140によれば、第1実施形態で説明した効果も同様に得ることができる。
【0087】
<第2実施形態の第1変形例>
図14は、本発明の第2実施形態の第1変形例に係る記録シート110Aの断面構成図である。上記実施形態と同一の構成や機能については説明を省略する。
図14に示すように、記録シート110Aは、低温発色層17A内にカプラー内包カプセル28、および塩基性化合物9が内包されている。この際、記録シート110Aには、カプラー内包層を設けなくてもよい。
上記構成の記録シート110Aでは、カプラー内包層を設けることなく、低温発色層17A内にカプラー内包カプセル28が設けられているので、例えば記録シート110と比べて厚みを薄くすることができる。
【0088】
<第2実施形態の第2変形例>
図15は、本発明の第2実施形態の第2変形例に係る記録シート110Bの断面構成図である。上記実施形態や変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
図15に示すように、記録シート110Bは、基材11に、中温発色層113、混防止層115、塩基性化合物内包層61、低温発色層17B、混防止層15、高温発色層13、および保護層19を順に積層して構成される。図9に示す記録シート10Aとの相違点は、基板11と塩基性化合物内包層61の間に、中温発色層113および混防止層115が設けられている点である。
【0089】
低温発色層17Bは、低温発色カプセル27およびカプラー8を内包する。また、低温発色層17Bには、塩基性化合物9は存在しない。この状態では、低温発色カプセル27は、塩基性雰囲気中にないので、加熱されたとしても発色しない(非発色可能状態)。
【0090】
塩基性化合物内包層61は、塩基性化合物内包カプセル28Bが内包されている。塩基性化合物内包カプセル28B内には、塩基性化合物9が内包されており、破壊圧力P1以上の圧力が加わると、カプセルが破壊状態(あるいは浸透状態)となり、塩基性化合物9を塩基性化合物内包カプセル28B外に流出させる。また、この塩基性化合物9は、低温発色層17Bにまで流出する。この塩基性化合物9が流出した状態で、低温発色カプセル27の周囲は、塩基性且つカプラー8を含む雰囲気となり、低温発色カプセル27が発色可能状態となる。
つまり、本実施形態に係る記録シート110Bでは、カプラー8をカプセル化する替わりに、塩基性化合物9をカプセル化している。
【0091】
また、本実施形態に係る記録シート110Bでは、塩基性化合物内包カプセル28Bと低温発色カプセル27それぞれが、塩基性化合物内包層61と低温発色層17内に分離して設けられており、塩基性化合物内包層61に塩基性化合物内包カプセル28Bを均一に配置することができ、加圧時に塩基性化合物内包カプセル28B内の塩基性化合物9を容易に放出させて、低温発色カプセル27を発色可能状態にすることができる。
【0092】
<第2実施形態の第3変形例>
図16は、本発明の第2実施形態の第3変形例に係る記録シート110Cの断面構成図である。上記実施形態や変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
記録シート110Cは、例えば図16に示すように、低温発色層17C内に、低温発色カプセル27、塩基性化合物内包カプセル28Bおよびカプラー8が内包されている。この際、記録シート110Cには塩基性化合物内包層を設けなくてもよい。
上記構成の記録シート110Cでは、塩基性化合物内包層を設けることなく、低温発色層17C内に塩基性化合物内包カプセル28Bが内包されているので、例えば記録シート110Bと比べて厚みを薄くすることができる。
【0093】
<第3実施形態>
図17は、本発明の第3実施形態に係る記録シート110Dの断面構成図である。図18は、図17に示す記録シート110D内の高温発色ロイコ色素231,低温発色ロイコ色素271,顕色剤カプラー内包カプセル281の特性を説明するための図である。
第1,第2実施形態と同一の構成や機能については説明を省略する。
【0094】
第3実施形態に係る記録シート110Dでは、無色のロイコ色素が、顕色剤の雰囲気中で有色のロイコ色素に変化して発色する特性を利用する。
詳細には、記録シート110Dに、顕色剤を内包する感圧カプセルを設ける。画像形成時には、その感圧カプセルを破壊圧力で破壊して、ロイコ色素を発色可能状態にした後、規定の温度に加熱して固形状のロイコ色素を溶融することにより、ロイコ色素と顕色剤とが反応して発色する。
顕色剤は、例えば塩基性物質、酸化剤、還元剤、金属イオン等の各種材料である。
以下、本実施形態を図17,18を参照しながら詳細に説明する。
【0095】
本実施形態に係る記録シート110Dは、例えば基材11に、顕色剤内包層601、低温発色層17D、混防止層15、高温発色層13D、および保護層19を順に積層して構成される。
記録シート110Dは、顕色剤内包層601内に、顕色剤内包カプセル281を内包している。
顕色剤内包カプセル281は、顕色剤81を内包している。顕色剤内包カプセル281は、図18に示す破壊圧力P1以上の圧力が加わると、カプセルが破壊状態(あるいは浸透状態)となり、顕色剤81を顕色剤内包カプセル281外に流出させる。この顕色剤81は低温発色層17Dにまで流出する。この顕色剤81が流出した状態で、低温発色ロイコ色素271の周囲は、顕色剤を含む雰囲気となり、低温発色ロイコ色素271が発色可能状態となる。
【0096】
低温発色層17Dは、低温発色ロイコ色素271を内包している。また、低温発色層17Dには、顕色剤81が存在しない。この状態では、低温発色ロイコ色素271は、周囲に顕色剤81が存在しないので発色しない(非発色可能状態)。つまり、高温加熱されたとしても、中温加熱されたとしても、低温発色ロイコ色素271は、周囲に顕色剤81がない状態では発色しない。
詳細には、低温発色ロイコ色素271は、例えば予め規定された温度T2(低温)より低い温度では固形状態であり、温度T2以上で溶融状態となりかつ周囲に顕色剤81が存在している場合に、顕色剤81と反応して発色する。
【0097】
高温発色層13Dは、高温発色ロイコ色素231、および顕色剤をバインダ材中に分散させて構成される。高温発色ロイコ色素231は、例えば予め規定された温度T1(高温)より低い温度では固形状態であり、温度T1以上では溶融状態となり、周囲の顕色剤と反応して発色する。
【0098】
次に、図17,18を参照しながら、本実施形態に係る記録シート110Dの発色原理を説明する。
図18に示すように、温度T1未満(非高温)においては、高温発色ロイコ色素231は発色していない。高温発色ロイコ色素231は、高温発色温度T1以上(高温状態)になると、溶融して高温発色層13D内の顕色剤81と反応して色素が形成されて発色する。
【0099】
上記高温発色時には、低温発色層17Dの低温発色ロイコ色素271は、周囲に顕色剤81が存在しないので発色可能状態でなく、発色しない。
【0100】
次に、記録シート110Dが、低温発色温度T2(第2の温度)より低い温度Ta(例えば常温)になってから、破壊圧力P1で加圧すると、顕色剤内包層601内の顕色剤内包カプセル281が破壊され、顕色剤内包カプセル281内の顕色剤81がカプセル外部に流出する。さらに、この顕色剤81は、低温発色層17Dに流出する。つまり、低温発色層17Dでは、顕色剤81を含む雰囲気中に、低温発色ロイコ色素271が存在することとなり、低温発色ロイコ色素271が発色可能状態となる。
【0101】
次に、記録シート110Dを、低温(第2の温度T2)で加熱する。これにより、記録シート110Dの低温発色層17D内の低温発色ロイコ色素271が溶融して、顕色剤81と反応して発色する。
【0102】
以上説明したように、本実施形態に係る記録シート110Dでは、顕色剤81を内包する顕色剤内包カプセル281を、低温発色層17に隣接する顕色剤内包層601に設けて、先ず高温加熱により、高温発色層13D内の高温発色ロイコ色素231を発色させた後(この状態では低温発色層17Dは非発色状態)、顕色剤内包カプセル281を破壊圧力P1で破壊して、低温発色ロイコ色素271を発色可能状態にした後、規定の温度T2に加熱して固形状の低温発色ロイコ色素271を溶融することにより、低温発色ロイコ色素271と顕色剤81とが反応して発色するので、この記録シート110Dをロイコ色素系の感熱記録シートに簡単に適用することができる。
【0103】
<第3実施形態の第1変形例>
図19は、本発明の第3実施形態に係る記録シート110Eの断面構成図である。上記実施形態や変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
記録シート110Eは、図19に示すように、例えば基材11に、低温発色層17E、混防止層15、高温発色層13D、および保護層19を順に積層して構成される。
低温発色層17Eは、低温発色ロイコ色素271を内包するとともに、顕色剤内包カプセル281を内包している。この際、記録シート110Eには、顕色剤内包層601を設けなくてもよい。
上記構成の記録シート110Eでは、顕色剤内包層601を設けることなく、低温発色層17E内に、顕色剤内包カプセル281が設けられているので、例えば記録シート110Dと比べて厚みを薄くすることができる。
【0104】
<第3実施形態の第2変形例>
上述した形態では、ロイコ色素として低温発色用と高温発色用の2種類を用いる場合を例示したが、第3実施形態の第2変形例では、ロイコ色素として低温発色用、中温発色用および高温発色用の3種類を用いることでカラー印刷を可能とする。
【0105】
図20は、本発明の第3実施形態の第2変形例に係る記録シート110Fの断面構成図である。上記実施形態や変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
図20に示すように、記録シート110Fは、基材11に、中温発色層113D、混防止層115、顕色剤内包層601、低温発色層17D、混防止層115、高温発色層13D、および保護層19を順に積層して構成される。
【0106】
中温発色層113Dは、中温発色ロイコ色素122、顕色剤をバインダ材中に分散させて構成される。中温発色ロイコ色素122の特性等については後述する。
混防止層115は、中温発色層113と顕色剤内包層601との間でロイコ色素やカプセル、顕色剤等が混ざり合うことを防止するための層である。
【0107】
本実施形態に係る低温発色層17Dでは、高温加熱および中温加熱された場合であっても、低温発色ロイコ色素271は、低温発色ロイコ色素271の周囲に顕色剤81が存在しない状態(非発色可能状態)では発色しない。しかし、低温発色ロイコ色素271は、周囲に顕色剤81が存在する状態で低温加熱されると、その顕色剤81と反応して発色する。
【0108】
図21は、図20に示す記録シート110F内の高温発色カプセル231,中温発色カプセル121,低温発色カプセル271,顕色剤内包カプセル281の特性を説明するための図である。
図21に示すように、本実施形態に係る高温発色ロイコ色素231は、第1の発色温度T1で(高温状態)、第1の時間(短時間)だけ加熱されると溶融して、周囲の顕色剤と反応して発色する。この際、中温発色ロイコ色素122、低温発色層17Dは発色しない。
【0109】
また、図21に示すように、中温発色ロイコ色素122は、第1の発色温度T1と第2の発色温度の間の第3の発色温度T3で(例えば、150℃以上の中温状態)、第1の時間(短時間)より長い第2の時間(長時間)だけ加熱されると溶融して、周囲の顕色剤と反応して発色する。この際、低温発色層17Dは発色しない。
【0110】
図21に示すように、温度T2(低温)より低い温度Ta(例えば常温、非加熱)で、記録シート110Fが破壊圧力P1にて加圧されると、顕色剤内包カプセル281内の顕色剤81が流出する。顕色剤81は低温発色層17内にも流出する。この状態では、低温発色ロイコ色素271の周囲に顕色剤81が存在することになり、低温発色ロイコ色素271が発色可能状態となる。
低温発色ロイコ色素271は、上記発色可能状態で、低温加熱されると溶融して、周囲の顕色剤81と反応して発色する。
【0111】
本実施形態では、低温発色層17Eにおいて、イエロー色を発色するように、低温発色ロイコ色素271内の発色剤と低温発色層17E内の顕色剤81とが選択されている。また、中温発色層113Dにおいてマゼンダ色を発色するように、中温発色ロイコ色素122と中温発色層113D内の顕色剤とが選択されている。また、高温発色層13Dにおいて、シアン色を発色するように、高温発色ロイコ色素231内の発色剤と高温発色層13D内の顕色剤とが選択されている。なお、これらの各層への発色の割り当ては任意である。
【0112】
次に、上記構成の記録シート110Fに係る発色原理を図20,21を参照しながら説明する。
【0113】
先ず、図21に示すように、高温画像パターンに応じて、第1の発色温度T1(高温)で第1の時間(短時間)だけ加熱して、高温発色層13Dに高温画像パターンを記録する。この際、中温発色ロイコ色素122、低温発色ロイコ色素271は発色条件が満たされていないので発色しない。
【0114】
次に、中温画像パターンに応じて、中温温度T3(中温)で第1の時間より長い第2の時間(長時間)だけ加熱して、中温発色層113に中温画像パターンを記録する。この際、低温発色ロイコ色素271は発色条件が満たされていないので発色しない。
【0115】
次に、第2の発色温度T2より低い温度Ta(例えば常温)にて、記録シート110Fに破壊圧力P1で加圧して、顕色剤内包カプセル281のカプセルを破壊して、内包する顕色剤81を流出させて、低温発色ロイコ色素271を発色可能状態にする。
その状態で、低温画像パターンに応じて、第2の発色温度T2(低温)で記録シート110Fを加熱して、低温発色層17Dに低温画像パターンを記録する。
その結果、高温画像パターン、中温画像パターンおよび低温画像パターンにより、記録シート110Fには所望の画像が形成される。
【0116】
以上説明したように、ロイコ色素を採用した記録シート110Fによれば、多色、例えばシアン、マゼンダおよびイエローの3色によるカラー印刷が可能になる。
【0117】
<第3実施形態の第3変形例>
図22は、本発明の第3実施形態の第3変形例に係る記録シート110Gの断面構成図である。上記実施形態や変形例と同一の構成や機能については説明を省略する。
記録シート110Gは、例えば図22に示すように、低温発色層17E内に低温発色ロイコ色素271と、顕色剤内包カプセル281が内包されている。この際、記録シート110Gには顕色剤内包層601を設けなくてもよい。
上記構成の記録シート110Gでは、顕色剤内包層601を設けることなく、低温発色層17D内に顕色剤内包カプセル281が設けられているので、例えば記録シート110Fと比べて厚みを薄くすることができる。
【0118】
[プリンタの第1変形例]
図23は、本発明の実施形態のプリンタの第1の変形例を説明するための図である。
上述した実施形態では、図5等に示すように、加圧ローラ49a,49bをサーマルヘッド45とそれぞれ個別に設ける場合を例示したが、例えば、図23に示す構成により、サーマルヘッド545の加熱面で記録シート10等を加圧してもよい。
図23に示す構成では、継ぎ手520の一端にサーマルヘッド545が固定されている。継ぎ手520は、中心軸520aを中心に回転する。継ぎ手520の他端付近は、バネ540によって、回転軸520aを中心に継ぎ手520を反時計回りに回転する向きに付勢されている。バネ540よる付勢力は、サーマルヘッド545の加熱面によって記録シート10等を押す力として作用する。
【0119】
図23に示した構成を用いたプリンタでは、制御部が、カム530の回転を制御することで、サーマルヘッド545の加熱面を介して記録シート10等に加える圧力を制御できる。
【0120】
[プリンタの第2変形例]
図24は、本発明の実施形態のプリンタの第2の変形例を説明するための図である。
本発明の実施形態のプリンタは、例えば、図24に示すように、記録シート10等の搬送方向における、サーマルヘッド45およびプラテンローラ47の下流側に、加圧ローラ49a,49b、およびサーマルヘッド145およびプラテンローラ147をさらに配置してもよい。
このようにすることで、記録シート10等を、高温加熱して発色させた後、順に加圧して低温発色可能な状態にした後、低温加熱して発色させることができ、図5に示す構成に比べて画像形成時間を短縮できる。
【0121】
[プリンタの第3変形例]
図25は、本発明の実施形態のプリンタの第3の変形例を説明するための図である。
本発明の実施形態のプリンタは、例えば、図25に示すように、図24の構成において、サーマルヘッド45およびプラテンローラ47と、加圧ローラ49a,49bの間に、サーマルヘッド245およびプラテンローラ247を配置したものである。
このようにすることで、記録シート110等を下流側に搬送する過程で、高温短時間加熱処理、中温長時間加熱処理、加圧処理、低温加熱処理を順にシリアルに行うことができる。
【0122】
本発明は上述した実施形態に限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態では、記録シートを2色および3色に発色させて記録を行う場合を例示したが、記録シートに4色以上に発色させて記録を行ってもよい。例えば、イエロー、シアンおよびマゼンダの3色に、ブラックを加えて4色で記録シートを発色させてもよいし、ライトシアンおよびライトマゼンダを加えて5色で記録シートを発色させてもよい。
【0123】
また、上述した実施形態では、本発明の感熱記録媒体として記録シートを例示したが、本発明の感熱記録媒体の形状はシート状以外でもよい。
【0124】
また、記録シートは、上述した実施形態に限られるものではない。例えば、ジアゾ化合物の化学構造とカプラーの化学構造との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料の化学構造と電子受容性化合物の化学構造との組み合わせによって任意の色相を発色してもよい。
また、記録シートとしては、電子供与性無色染料(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)との組み合わせ等を採用してもよい。詳細には、上記電子供与性無色染料は例えばロイコ染料であり、電子受容性化合物は例えばフェノール系酸性物質である。この組み合わせでは、ロイコ染料が酸性物質である顕色剤に吸着して酸化されて発色する。
また、上記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が用いられる。
【0125】
また、低温発色層、高温発色層、中温発色層は、ロイコ色素発色系またはジアゾニウム塩化合物発色系により形成されていてもよいし、低温発色層、高温発色層、中温発色層は、ジアゾニウム塩化合物発色系、ロイコ色素発色系の組み合わせにより形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、感熱シートに記録を行うシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る記録シートの断面構成図である。
【図2】図2は、図1に示す記録シート内の高温発色カプセル,低温発色カプセル,カプラー内包カプセルの特性を説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示す高温発色カプセルの発色原理を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示す低温発色カプセルの発色原理を説明するための図である。
【図5】図5は、図1に示す記録シートに画像を記録(印刷)するプリンタを説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態のプリンタの画像形成動作を説明ための図5の続きの図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態に係るプリンタの画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態の第1変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図9】図9は、本発明の第1実施形態の第2変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図10】図10は、本発明の第1実施形態の第3変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施形態の記録シート110の断面構成図である。
【図12】図11に示す記録シート内の高温発色カプセル,中温発色カプセル,低温発色カプセル,カプラー内包カプセルの特性を説明するための図である。
【図13】図13は、本発明の第2実施形態に係るプリンタの画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の第2実施形態の第1変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図15】図15は、本発明の第2実施形態の第2変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図16】図16は、本発明の第2実施形態の第3変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図17】図17は、本発明の第3実施形態に係る記録シートの断面構成図である。
【図18】図18は、図17に示す記録シート内の高温発色ロイコ色素,低温発色ロイコ色素,顕色剤カプラー内包カプセルの特性を説明するための図である。
【図19】図19は、本発明の第3実施形態に係る記録シートの断面構成図である。
【図20】図20は、本発明の第3実施形態の第2変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図21】図21は、図20に示す記録シート内の高温発色カプセル,中温発色カプセル,低温発色カプセル,顕色剤内包カプセルの特性を説明するための図である。
【図22】図22は、本発明の第3実施形態の第3変形例に係る記録シートの断面構成図である。
【図23】図23は、本発明の実施形態のプリンタの第1の変形例を説明するための図である。
【図24】図24は、本発明の実施形態のプリンタの第2の変形例を説明するための図である。
【図25】図25は、本発明の実施形態のプリンタの第3の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0128】
8‥カプラー(顕色剤)、9‥塩基性化合物、10,10A〜10C,110,110A〜110G‥記録シート、11‥基材、13‥高温発色層、15‥混防止層、17‥低温発色層、23‥高温発色カプセル、27‥低温発色カプセル、28‥カプラー(顕色剤)内包カプセル、28B‥塩基性化合物内包カプセル、40‥プリンタ、41‥シート収容ケース、43‥シート送りローラ、45‥サーマルヘッド、47‥プラテンローラ、49a,49b‥加圧ローラ、50‥シート搬出部、51‥制御部、53‥バネ、60‥カプラー(顕色剤)内包層、61‥塩基性化合物内包層、81‥顕色剤、113‥中温発色層、121‥中温発色カプセル、122‥中温発色ロイコ色素、231‥高温発色ロイコ色素、271‥低温発色ロイコ色素、281‥顕色剤内包カプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発色温度で加熱されて発色する第1の発色要素と、
顕色剤を含む雰囲気である発色可能状態において、前記第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されると前記顕色剤と反応して発色する、前記発色可能状態にない第2の発色要素と、
前記顕色剤を内包し、予め決められた圧力を受けると、前記内包されている顕色剤を放出して、前記第2の発色要素を前記発色可能状態にする発色制御要素と
を有する感熱記録媒体。
【請求項2】
前記発色制御要素は、前記顕色剤として少なくともカプラーおよび塩基性物質の一方を内包し、予め決められた圧力を受けると、前記内包されている前記顕色剤を放出して、前記第2の発色要素を前記発色可能状態にし、
前記第2の発色要素は、塩基性且つ前記カプラーを含む雰囲気である前記発色可能状態において、前記第1の発色温度より低い前記第2の発色温度で加熱されると前記カプラーと反応して発色することを特徴とする
請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
前記第1の発色要素を内包する第1の発色層と、
前記第2の発色要素を内包する第2の発色層と、
前記発色制御要素を内包し、前記第2の発色層に隣接する発色制御層と
を有する請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
前記第1の発色要素を内包する第1の発色層と、
前記第2の発色要素と前記発色制御要素とを混在させて内包する第2の発色層と
を有する請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
前記第1の発色要素および第2の発色要素を含むN(Nは3以上の整数)種類の発色要素を内包し、
前記発色制御要素は、少なくとも前記N種類の発色要素のうち一番低い発色温度の発色要素に対して発色制御を行う
請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
前記第1の発色要素を含む第1の発色層と、
前記第1の発色温度と前記第2の発色温度の間の第3の発色温度で、前記第1の時間より長い第2の時間だけ加熱されて発色する第3の発色要素を含む第3の発色層と、
前記第1の発色層と前記第3の発色層の間に位置し、前記第2の発色要素および前記発色制御要素を含む第2の発色層と
を有する請求項1または5に記載の感熱記録媒体。
【請求項7】
前記発色要素は、当該発色要素が内在する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは、
前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素
である請求項1〜6のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項8】
感熱記録媒体に対して、画像を熱記録するサーマルヘッドと、
前記感熱記録媒体に予め決められた圧力を加える加圧手段と、
第1の発色温度で加熱して、前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理と、前記感熱記録媒体に前記予め決められた圧力を加えて、前記第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されると発色可能状態となる発色要素を、前記第2の発色温度より低い温度にて当該発色可能状態となるように前記加圧手段を制御する処理と、前記第2の発色温度で加熱して前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理とを順に行う制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1の発色温度で前記第1の時間だけ加熱して、前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理と、前記第1の発色温度と該第1の発色温度より低い第2の発色温度との間の第3の発色温度で、前記第1の時間より長い第2の時間だけ加熱して、前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理と、前記感熱記録媒体に前記予め決められた圧力を加えて、前記第2の発色温度で加熱されると発色可能状態となる発色要素を、前記第2の発色温度より低い温度にて当該発色可能状態となるように前記加圧手段を制御する処理と、前記第2の発色温度で加熱して前記感熱記録媒体に画像を記録するように前記サーマルヘッドを制御する処理とを順に行う
請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記サーマルヘッドと前記加圧手段とが隣接して位置する
請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって、前記圧力を加える
請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
第1の発色温度で感熱記録媒体を加熱する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記感熱記録媒体に前記予め決められた圧力を加えて、前記第1の発色温度より低い第2の発色温度で加熱されると発色可能状態となる発色要素を、前記第2の発色温度より低い温度にて当該発色可能状態とする第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記第2の発色温度で前記感熱記録媒体を加熱して、当該感熱記録媒体に画像を形成する第3の工程と
を有する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−132661(P2008−132661A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320242(P2006−320242)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(503118332)IPトレーディング・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】