説明

感熱記録媒体及び画像形成方法

【課題】 画像濃度と色調の経時変化を抑制し、高濃度、高画質な画像を形成することが可能であり、特にシャウカステン法によるバックライトによって目視診断し及び参照する場合に好適である感熱記録媒体及び該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成方法を提供すること。
【解決手段】 支持体と前記支持体に形成される感熱記録層と前記感熱記録層に形成される保護層を有する感熱記録媒体において、前記感熱記録層が樹脂とロイコ染料と顕色剤と酸化防止剤とを備え、前記顕色剤は下記一般式(1)
【化1】


(1)
(式中、R1は炭素数4〜16の直鎖のアルキル基又はアルキルアミノ基を表す。)
を含み、前記酸化防止剤は3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートで表される置換基を含むことを特徴とする感熱記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に医療分野において好適な感熱記録媒体、及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから医療分野において、X線、MRIやCT等でみられる体内の状況を銀塩フィルムに顕像化し、その画像をシャウカステン法によるバックライトによって目視診断し及び参照することが行われてきた。しかしながら、銀塩フィルムの湿式プロセスは、廃液処理の問題があり、さらに近年の画像のデジタル化の流れから、それに代わるドライプロセスの出現が求められ、光露光熱定着システム、熱転写システム、感熱記録システムの3種類が既に商品化されている。このうち、感熱記録システムに用いられる記録材料は、ロイコ染料と顕色剤とが反応して発色体を形成し画像を得ると言う意味で、従来からあるロイコ型感熱記録材料が応用されたものである。
【0003】
従来からあるロイコ型感熱記録材料は、一般的に紙の上に無色又は淡色のロイコ染料及び顕色剤を含む記録層を設けたものを基本構成とするものであり、サーマルヘッド等の加熱手段によって記録層を画像様に加熱することにより、ロイコ染料と顕色剤とが反応して発色体を形成し画像を得るものである。このロイコ型感熱記録材料は、現像、定着等の頻雑な処理を施す必要がなく、比較的簡単な構造でコンパクトな装置で短時間に記録できること、騒音の発生が少ないこと、さらにコストが安いこと等の利点があるため、電子計算機、ファクシミリ、券売機、ラベルプリンター、レコーダー等の種々の用途に広く使用されているが、記録の対象は主に文字情報である。
【0004】
一方、一般に医療用の感熱記録材料には、記録材料全体の透光性が非常に低いかあるいは全くなく、形成した画像を光の反射で観る反射型と、記録材料全体の透光性があってその透光性を利用する透過型があるが、後者に要求される画像特性レベルは、透過型であるがために、前者よりはるかに高いものである。この透過型感熱記録材料の用途には、形成した画像をシャウカステン法によるバックライトによって診る医療以外に、画像が形成された感熱記録材料を版下にした平版印刷用の製版の作成用にあるいは画像が形成された透過型感熱記録材料をOHP用として用いることができる。特に透光性が高くほぼ透明な透過型感熱記録材料を用いた、画像をシャウカステン法によるバックライトによって診る医療用途においては、診断用であるため、記録の対象は人体の内蔵とか骨のような形状情報が主体であり、バックライトで認識される画像は、濃淡とかコントラスト等の点で優れ、かつ元の形状情報が精確に映りだされることが重要であり、しかも高温高湿な環境下に置かれてもその画像が10年以上保持されるよう期待されるものである。従って、透過型感熱記録材料、中でも特に医療用途においては、従来のロイコ型感熱記録材料に比してはるかにレベルの高い性能が要求されるため、従来のロイコ型感熱記録材料に適用された各種技術を応用することは不可能である。
【0005】
透過型感熱記録材料および特に医療用途に要求される特性について、さらに詳述する。第一に要求される特性として、得られる画像が、遮光性が高く、あるいはバックライトで照射されても認識精度の高いことであり、そのために発色画像濃度が高く、広い濃度範囲での再現性がすぐれ、コントラストと認識性が高く、しかも高湿度環境における画像保存性がそれぞれ高いことである。この画像濃度特性に対して透過型に要求されるレベルは、画像部にカブリがなく、最大発色濃度が2.5以上、好ましくは3.0以上であることが必要とされている。高濃度を達成するために単に層の厚みを増すだけでは、地肌濃度が上がり、透明性も悪化するために好ましくない。
【0006】
第二に必要な特性は、シャウカステン法に適用し得るためには、低濃度域から高濃度域まで単一の色調で発色することである。反射型の場合は一種のロイコ染料を用いて比較的容易にこの特性を得ることができる。一方、透過型の場合には、支持体が透光性で発色体による吸収以外の要因の寄与が少ないために、感熱層の吸光度曲線の凹凸が激しく、濃度による色調の変動が大きく、その対策として通常、ロイコ染料を複数混合して色調を調整することが行われている。しかしながら、この複数のロイコ染料各々が顕色剤との間で形成する発色体の濃度の保存性が異なると、特に高温高湿の環境においては、画像形成直後の記録材料と一定期間保管後の記録材料を比べると、両者の色調は大きく異なったものとなる。特に低濃度域における保存性が悪いものが多い。従って、色調が変わらないようにするには、異なる色調に発色するロイコ染料それぞれが等しく、特に高温高湿保存において、高い濃度保存性を有することが必要であり、そのような複数の染料を組み合わせて記録材料を形成することが重要になってくる。
【0007】
さらに、第三に要求される特性は、高い透明性を有するものであることが必要である。透明性が低いと、光線が拡散されるために画像認識性が低下する。透明度として非画像部のヘーズ値が70%以下であることが好ましく、さらに50%以下、またさらに銀塩フィルムと同等の20〜40%であることがより好ましい。透明性を高めるために、記録層や保護層等に添加される粒子状の材料を微粒子化したり、あるいは接着剤の割合を増加したりする方法があるが、それだけでは透明性が充分ではなく、材料への依存性が高いのが現状である。
【0008】
感熱発色プロセスを利用した記録材料には種々のものが提案されているが、一般的には、紙の上に無色又は淡色のロイコ染料及び顕色剤を溶解又は分散した塗布液を塗布して製造される。特に近年、医療分野を中心に、銀塩X線フィルムの湿式プロセスに起因する廃液処理問題及び画像のデジタル化の動向から、簡易にアウトプットできる透明なドライフィルムのシステムが求められている。現在の医療用のドライプロセスとしては、光露光熱定着システム、熱転写システム、直接感熱記録システムの3つのシステムが挙げられる。
【0009】
そのうちの1つである感熱記録材料は、従来より、電子計算機、ファクシミリ、券売機、ラベルプリンター、レコーダー等の種々の記録材料として使用されており、現像、定着等の頻雑な処理を施す必要がなく、比較的簡単な構造でコンパクトな装置により短時間に記録できること、騒音の発生が少ないこと、さらにコストが安いこと等の利点により、近年、急速に市場が拡大しつつある。
【0010】
特許文献1(特開平10−211767号公報)では、加熱により該色素前駆体を発色させ、これを再加熱して消色させる可逆顕色剤を含有する可逆性感熱記録層を設けた可逆性感熱記録材料において、該可逆性感熱記録層中に3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートまたは、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネートで表される置換基を含む酸化防止剤を含有することを提案している。この可逆性感熱記録材料は、発色画像を消色した後、光暴露による消色部の濃度変化を小さくし消去跡として目立ちにくくなる良好な耐光性が得られるが、透明性が得られない問題がある。
【0011】
特許文献2(特開平11−58959号公報)では、ロイコ染料、顕色剤、結着剤としてのバインダー樹脂からなる感熱記録材料に有機アミンと酸化防止剤を含有することを提案している。この感熱記録材料は透明性の高い感熱記録材料が得られ良好な耐光性が得られるが、黒画像の色調が緑味で良好な黒色画像が得られず発色濃度も低い問題がある。
【特許文献1】特開平10−211767号公報
【特許文献2】特開平11−58959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、画像濃度と色調の経時変化を抑制し、高濃度、高画質な画像を形成することが可能であり、特にシャウカステン法によるバックライトによって目視診断し及び参照する場合に好適である感熱記録媒体及び該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討した結果、感熱記録媒体の感熱記録層に使用する顕色剤及び酸化防止剤にそれぞれ特定の化合物を選択することが有効であることを知見し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
[1] 支持体と前記支持体に形成される感熱記録層と前記感熱記録層に形成される保護層を有する感熱記録媒体において、前記感熱記録層が樹脂とロイコ染料と顕色剤と酸化防止剤とを備え、前記顕色剤は下記一般式(1)
【化3】

(1)

(式中、R1は炭素数4〜16の直鎖のアルキル基又はアルキルアミノ基を表す。)
を含み、前記酸化防止剤は3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートで表される置換基を含むことを特徴とする感熱記録媒体。
[2] 前記3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートで表される置換基を含む酸化防止剤の融点が、110℃以上であることを特徴とする[1]に記載の感熱記録媒体。
[3] 前記酸化防止剤が、該ロイコ染料に対して5重量%以上80重量%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の感熱記録媒体。
[4] 前記記録層樹脂が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の感熱記録媒体。
[5] 前記ロイコ染料は、赤発色染料及び橙発色染料の少なくとも一方、近赤外発色染料並びに一般式(2)
【化4】

(2)
(式中、R2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基又は炭素数が1以上4以下のアルコキシ基であり、R3は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。)
で示される染料を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の感熱記録媒体。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の感熱記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャウカステン法によるバックライトによって目視診断し及び参照する場合に画像濃度と色調の経時変化を抑制し、高濃度、高画質な画像を形成することが可能な感熱記録媒体及び該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の感熱記録媒体は、支持体上に感熱記録層が設けられ、感熱記録層は、ロイコ染料、顕色剤及び酸化防止剤を含有し、顕色剤は、一般式(1)
【化5】

(1)
で示される化合物を含有する。ここで、R1は、炭素数が4以上16以下の直鎖アルキル基又は炭素数が4以上16以下の直鎖アルキルアミノ基である。これにより、画像濃度の経時変化を抑制し、高濃度、高画質で、耐湿保存性に優れる画像を形成することができる。
【0016】
このような顕色剤の具体例としては、4−(n−ペンタノイルアミノ)サリチル酸、4−(n−ヘキサノイルアミノ)サリチル酸、4−(n−オクタノイルアミノ)サリチル酸、4−(ヘキサデカノイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−ブチルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−ヘキシルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−オクチルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−ヘキサデシルカルバモイルアミノ)サリチル酸等が挙げられる。
【0017】
特に、一般式(3)
【化6】

(3)
で示される顕色剤を用いると、地肌カブリの発生が少なく、画像保存性が優れる透過型感熱記録媒体が得られる。ここで、R4は、炭素数が6以上12以下の直鎖アルキル基である。なお、顕色剤は、単独又は2種以上混合して用いることができ、従来公知の顕色剤を混合することもできる。
【0018】
本発明で用いられる3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートで表される置換基を含む酸化防止剤の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジメチルエステル等が挙げられる。
【0019】
酸化防止剤の添加量は、通常ロイコ染料に対して5重量%以上80重量%以下であり好ましくは20重量%以上50重量%以下が好ましい。5重量%より少ない場合は、酸化防止剤の効果が不十分となり80重量%より多い場合は、画像濃度の低下等の副作用が発生しやすくなる。
通常、感熱記録層中に分散されている顕色剤が加熱により溶融し、樹脂中に溶解したロイコ染料と反応することにより発色し画像が形成されるが、酸化防止剤の融点が低いと発色後の酸化防止剤の効果が不十分となる。酸化防止剤の融点は110℃以上が好ましい。
【0020】
本発明で感熱記録層に使用するバインダー樹脂としては公知の種々の有機溶剤可溶樹脂を使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びそのエステル、ポリメタクリル酸及びそのエステル類、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリアミド、等を使用できる。これら樹脂は単独もしくは二種以上混合して使用することができる。
【0021】
感熱記録層におけるバインダー樹脂の使用量としては特に限定するものではないが、階調性や透明性を確保するためには、塗工液の全固形量に対して15重量%以上であることが好ましく、支持体との接着性や発色性等を考慮したより好ましい範囲としては30〜60重量%の範囲で調節すると良い。
本発明においては、感熱記録層のバインダー樹脂中にガラス転移温度(Tg)が50℃以上の樹脂を全樹脂の20%以上使用することが好ましい。より好ましくはガラス転移温度(Tg)が50℃から90℃のものを使用する。ガラス転移点が50℃未満であると経時濃度変化が大きくなり、90℃を超えると、支持体との接着性が悪くなる。含有量については20%未満であると、経時濃度変化が大きくなる。
【0022】
ガラス転移点が50℃以上のバインダー樹脂としてはポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル樹脂等が好んで用いられるが、ポリエステル樹脂が支持体との接着性及び経時濃度変化において好ましく、中でも骨格中にビスフェノールAを含んでいるポリエステル樹脂が、経時濃度変化の中でも、シャウカステンに曝して画像が加温された状態での濃度変化においてより好ましい。
また、感熱記録層のバインダー樹脂中に水酸基価30以上のアクリルポリオール樹脂または水酸基価30以上のポリエステルポリオール樹脂とイソシアネート系架橋剤を含むことも、経時濃度変化の中でも、シャウカステンに曝して画像が加温された状態での濃度変化においてより好ましい。
【0023】
本発明で用いられるロイコ染料は、無色又は淡色の染料前駆体であり、従来公知のトリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ染料が好ましく、フルオラン系及びフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。
【0024】
このようなロイコ染料の具体例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。なお、ロイコ染料は、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0025】
本発明において、ロイコ染料の総重量に対する顕色剤の重量の比は、0.5以上2.5以下であることが好ましく、1.0以上2.0以下が特に好ましい。顕色剤の重量がこの範囲内であると、ハーフトーンの画像保存性が特に向上する。また、このとき、発色効率が向上するため、薄膜で高濃度の画像を形成することができる。階調メディアにおいて、薄膜化することの利点は、塗工時の膜厚制御や乾燥工程における残留水分及び残留溶剤の低減にある。さらに、塗布量を減少させることができるため、コスト削減にもつながる。
【0026】
また、有機溶剤を用いて塗工する場合の分散成分は、顕色剤のみであるため、顕色剤の含有量が少ない方が塗布層の光透過性に対しても有利となり、透過型感熱記録媒体ではコントラストの向上や画像認識性の改善の効果がある。なお、一般式(1)で示される顕色剤を使用するときには、水素結合を介して形成されている顕色剤のネットワークにロイコ染料が入り込むことによって画像に堅牢性が付与されるが、上記の重量比が2.5より大きい場合には、ネットワークの中にロイコ染料が入り込みにくくなり、0.5より小さい場合には、適正なネットワークを構築することができなくなるために、発色効率が低下すると考えられる。
【0027】
本発明の感熱記録媒体を透明型感熱記録媒体として用いる場合、ロイコ染料は、赤発色染料及び橙発色染料の少なくとも一方、近赤外発色染料並びに一般式(2)
【化7】

(2)
で示される染料(以下、黒発色染料という)を含有することが好ましい。ここで、R2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基又は炭素数が1以上4以下のアルコキシ基であり、R3は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
これにより、低濃度部分及び高濃度部分のいずれにおいても、黒色画像を得ることができる。
【0028】
黒発色染料の具体例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トリルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トリルアミノ)フルオランが挙げられる。なお、黒発色染料と一般式(1)で示される顕色剤との反応によって得られる発色色調は、反射型感熱記録媒体の場合であれば、低濃度部が緑黒で高濃度部が黒に見えるが、透過型感熱記録媒体の場合には、低濃度部から高濃度部の全域で緑に見える。すなわち、黒発色染料を用いて得られる透過型感熱記録媒体は、可視域において、450nm以上600nm以下付近と650nm以上700nm以下付近の光を反射又は透過する。このため、赤発色染料及び橙発色染料の少なくとも一方並びに近赤外発色染料を添加することにより、可視域の吸収スペクトルを銀塩のようにフラットにすることができる。これは、赤発色染料及び橙発色染料は、450nm以上600nm以下付近の吸収を有し、近赤外発色染料は、650nm以上700nm以下付近に吸収を有するためである。すなわち、ロイコ染料を3種以上混合することが好ましく、必要であれば、4種類以上6種類以下混合してもよい。なお、赤発色染料、橙発色染料及び近赤外発色染料とは、加熱して発色する色調が、それぞれ赤、橙及び近赤外であるロイコ染料を意味する。
【0029】
画像の黒色化の目安として、吸収スペクトルの430nm以上650nm以下の領域における最大吸光度に対する最小吸光度の比を用いることができ、この比が0.65以上であると、少なくともシャウカステン上での実用的な黒色を満足することができる。また、0.75以上であれば、昼光色、昼白色等のシャウカステンに装着する蛍光灯の種類による影響も減少させることができる。上記の染料の混合比率としては、高濃度、色調調整、保存性の観点から、吸収の大きい黒発色染料を多くすることが好ましい。黒発色染料の含有量は、全染料の40重量%以上80重量%以下の範囲であることが好ましく、赤発色染料及び橙発色染料の少なくとも一方並びに近赤外発色染料の含有量は、それぞれ10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。黒発色染料の含有量が80重量%より多いと、画像の黒色化が難しくなり、40重量%より少ないと、高濃度の画像を形成することが難しくなる。
【0030】
本発明で用いられる赤発色染料及び橙発色染料の具体例としては、ローダミンB−o−クロロアニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロ)アニリノラクタム、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−N−シクロヘキシルアミノフルオラン、6−ジエチルアミノベンゾ[α]フルオラン、6−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)ベンゾ[α]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、スピロ{クロメノ[2,3C]ピラゾール−4(H)−1’−フタラン}−7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニル−3’−オン等が挙げられる。
【0031】
この中で、黒発色染料を用いる場合に、吸収スペクトルを調節するのに好適な橙発色染料としては、一般式(4)
【化8】

(4)
で示される橙発色染料が挙げられる。ここで、R5及びR6は、それぞれ炭素数が1以上5以下のアルキル基、フェニル基、トリル基、シクロヘキシル基及びエトシキプロピル基からなる群より選ばれる官能基である。このような橙発色染料としては、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジブチルアミノフルオランが挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる近赤外発色染料の具体例としては、6−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフダリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−{1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。この中で、黒発色染料の吸収スペクトルを調節するのに好適な近赤外発色染料としては、構造式(5)
【化9】

(5)
で示される3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリドが挙げられる。
【0033】
本発明においては、黒発色染料を赤発色染料及び橙発色染料の少なくとも一方並びに近赤外発色染料と組み合わせることにより、銀塩と同様に、フラットな吸収スペクトルを形成することができる。このとき、黒発色染料の代わりに、一般式(3)の6位のアミノ基がアルキル置換アミノ基である通常よく用いられるロイコ染料を用いると、このロイコ染料が低濃度部で優先的に発色するため、低濃度部を黒色にすることができない。このため、一般式(1)で示される顕色剤及び黒発色染料を用いた場合に、特異的に画像の黒色化が達成できる。これは、黒発色染料と顕色剤との親和性に起因しているものと考えられる。
【0034】
本発明において、上記の通常よく用いられるロイコ染料も色調調整に影響のない範囲であれば、混合することができる。このようなロイコ染料の具体例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン等が挙げられる。また、従来公知のトリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ染料を混合することもできる。
【0035】
本発明で用いられる支持体としては、従来のロイコ型感熱記録媒体に用いられる支持体を適用することができるが、透過型感熱記録媒体の場合には、透明支持体を用いる必要がある。透明支持体の具体例としては、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、これらを貼り合わせたフィルム等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選択される樹脂を含有することが好ましい。また、透明性が高い感熱記録媒体を得るためには、支持体のJISK7105で規定される曇り度(ヘーズ)は、10%以下(0%を含む)であることが好ましく、支持体としては、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。なお、感熱記録層の接着性向上のために、支持体の少なくとも片面をコロナ放電処理、クロム酸等による酸化反応処理、エッチング処理等で表面改質をしてもよい。
【0036】
本発明においては、感熱記録層上に保護層が設けられていることが好ましい。これにより、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性及びヘッドマッチング性を向上させることができる。透明性の観点から考えると、保護層は、樹脂単独の層であることが好ましいが、平滑性が高すぎて、スティッキング及びゴミの引きずりによる印字欠陥が発生しやすくなる。特に、支持体として、プラスチックフィルムを用いた場合は、紙を支持体とした場合と比較して、平滑になりやすいことからヘッドマッチング性が低下し、ゴミを引きずりやすくなる傾向がある。また、一般的な熱可塑性樹脂の場合、ガラス転移温度がサーマルヘッドによる加熱温度よりも低いため、樹脂単独の保護層では表面の変質、記録層の露出等が起きてしまう場合がある。ヘッドマッチング性を向上させる方法としては、保護層にフィラーを添加する方法が一般的である。しかし、透明性の高い感熱記録媒体の場合、保護層に従来の反射記録材料に使用されるようなフィラーを添加すると、透明性が低下する場合が多い。このため、フィラーを添加して透明性を維持するためには、粒子径の小さいフィラーを添加する方法、粒子径の大きいフィラーを少量添加する方法等がある。本発明においては、必要に応じて、これらの方法を組み合わせて保護層を形成することができる。なお、保護層の表面の摩擦係数は、0.07以上0.14以下であることが好ましい。
【0037】
本発明において、保護層に用いられる樹脂としては、感熱記録層のバインダー樹脂として用いられるものと同様の水溶性樹脂の他、水性エマルジョン、疎水性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることができ、これらを必要に応じて併用することもできる。また、透明性の観点から、支持体の屈折率に対する記録層及び保護層に用いられる樹脂の屈折率の比は、0.8以上1.2以下であることが好ましい。樹脂の具体例としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。また、樹脂と共に架橋剤を用いることができ、架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等、公知の化合物を使用することができる。イソシアネート化合物の具体例としては、トルイレンジイソシアネート、その2量体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート及びこれらの誘導体等、分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物が挙げられる。また、エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0038】
また、フィラーの具体例としては、ホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、板状水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、焼成クレー、カオリン、ハイドロタルサイト等の無機フィラー及び架橋ポリスチレン粒子、尿素−ホルマリン共重合体粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粒子、グアナミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子、メラミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子等の有機フィラーが挙げられる。本発明においては、ヘッド摩耗の観点から、有機フィラーでは、架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子が、無機フィラーでは、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、水酸化アルミニウムが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、数々の特性を付与するために複数のフィラーを同時に用いてもよい。
【0039】
さらに、ヘッドマッチング性を向上させるために、保護層にワックス類やオイル類を添加したり、シリコーンで変性された樹脂を混合して用いたり、樹脂と充填剤の比を調節したりすることにより、摩擦係数を調節することができる。ここで用いることができるワックス類としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチロールステアリルアミド、パラフィンワックス、ポリエチレン、カルナバワックス、酸化パラフィン、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。オイル類としては、シリコーンオイル等を用いることができる。
【0040】
保護層は、従来公知の方法で塗工することができる。保護層の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下がさらに好ましい。保護層の厚さが0.1μmより薄いと、記録材料の保存性、ヘッドマッチング性等の保護層としての機能が不十分となり、20μmより厚いと、記録材料の熱感度が低下するのに加え、コスト的にも不利である。
【0041】
本発明の感熱記録媒体は、支持体、感熱記録層及び保護層の少なくとも一つは、青色に着色されていることが好ましい。これにより、防眩効果を有し、画像認識性を向上させることができる。青色に着色する方法としては、支持体に青顔料を混練する方法、感熱記録層又は保護層に青染料又は青顔料を添加する方法等が挙げられ、青顔料及び青染料は、特に限定されず、公知の材料を使用することができる。青色の濃度レベルとしては、透過濃度で0.15以上0.25以下であることが好ましく、色調としては、CIE−LAB表色系のa*が−15以上−4以下であり、b*が−15以上−5以下であることが好ましい。なお、色調の測定は、d/0(拡散照明垂直受光方式)で、視野を10度にし、光源D65を用いて10nm毎に吸光度を測定することにより行った。
【0042】
本発明の感熱記録媒体は、製造直後は、通常長尺状物であるが、商品としての形態は、ロール状に巻き固められたものと、所定の大きさに裁断し所定の枚数を袋に入れたものとがある。双方とも商品の性質上、通常遮光性の包装材料に包んで保管し、流通することが好ましい。使用時に開封し、袋から取り出した透過型の感熱記録媒体を画像形成装置に搭載する。
【0043】
本発明の画像形成方法は、本発明の感熱記録媒体に画像を形成する。これにより、シャウカステン法によるバックライトによって目視診断し及び参照する場合に画像濃度と色調の経時変化を抑制し、高濃度、高画質な画像を形成することができ、画像保存性に優れる画像形成方法が得られる。なお、画像を形成する際には、文字及び形状情報に基づいて、加熱手段により画像様に感熱記録媒体が加熱される。加熱手段としては、使用目的によって、熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱等が挙げられるが、装置のコスト、出力スピード、コンパクト化等の観点からもサーマルヘッドを用いることが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例によって、本発明はなんら制限されるものではない。なお、以下における部及び%はいずれも重量基準である。
実施例1
下記組成物をボールミルで体積平均粒径0.5μm以下になるまで粉砕、分散し、固形分20%の[A液]を調製した。粒径は、堀場製作所社製レーザー回折式粒径測定装置LA−700により測定した。
[A液]
MEK 28部
トルエン 24部
4−(N’−n−ヘキシルウレイド)サリチル酸 15部
15%ポリビニルブチラールMEK溶解液 33部
(積水化学社製BM-1、Tg=62℃)
【0045】
次に、下記組成を充分に攪拌し、固形分18%の記録層塗布液[B液]を調製した。
[B液]
1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキ シフェニル)プロピオネート〕(融点94〜108℃)
0.1部
顕色剤分散液[A液] 40部
下記ロイコ染料A 3部
下記ロイコ染料B 0.2部
下記ロイコ染料C 0.8部
15%ポリビニルブチラールMEK溶解液 40部
(積水化学社製BM-1、Tg=62℃)
MEK 1部
TOL 14.9部
【0046】
ロイコ染料A:ETAC
【化10】

ロイコ染料B:GN2
【化11】

ロイコ染料C:Orange100
【化12】

【0047】
下記組成物をボールミルで体積平均粒径0.3μmまで粉砕、分散し固形分18%のフィラー分散液[C液]を調製した。
[C液]
シリカ 15部
10%ポリビニルアセタールMEK溶解液
(積水化学社製KS−1) 30部
MEK 55部
下記組成物をボールミルで体積平均粒径0.3μmまで粉砕、分散し固形分18%の滑剤分散液[D液]を調製した。
[D液]
ステアリン酸亜鉛 15部
10%ポリビニルアセタールMEK溶解液
(積水化学社製KS−1) 30部
MEK 55部
次に、下記組成を充分に攪拌し、固形分18%の保護層塗布液[E液]を調製した。
[E液]
フィラー分散液[C液] 60部
滑剤分散液[D液] 6部
10%ポリビニルアセタールMEK溶解液
(積水化学社製KS−1) 30部
75%ヘキサメチレンイソシアナート酢酸エチル溶解液 4部
(日本ポリウレタン コロネートHL)
【0048】
このようにして調製した記録層塗布液[B液]を、厚さ175μmの透明ポリエステルフィルム(ヘーズ値3%)上にワイヤーバーを用いて塗工し、100℃の温度に保持したドライヤーで1分間乾燥して厚さ15μmの感熱記録層を形成したその上に保護層塗布液[E液]をワイヤーバーを用いて塗工し、80℃の温度に保持したドライヤーで1分間乾燥して厚さ3μmの保護層を形成し、感熱記録媒体を作製した。
【0049】
実施例2
実施例1[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.4部とした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
【0050】
実施例3
実施例1[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を1部とした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
【0051】
実施例4
実施例1[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を4部とした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
【0052】
実施例5
実施例1[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.1部をペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(融点110〜125℃)1部とした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
【0053】
実施例6
下記組成物をボールミルで体積平均粒径0.5μm以下になるまで粉砕、分散し、固形分20%の[F液]を調製した。粒径は、堀場製作所社製レーザー回折式粒径測定装置LA−700により測定した。
[F液]
MEK 32.5部
トルエン 32.5部
4−(N’−n−ヘキシルウレイド)サリチル酸 15部
25%ポリエステル溶解液(MEK/TOL=1/1) 20部
(ユニチカ製UE−3600、Tg=75℃ )
次に、下記組成を充分に攪拌し、固形分18%の記録層塗布液[G液]を調製した。
【0054】
[G液]
ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ フェニル)プロピオネート〕
1部
顕色剤分散液[F液] 32部
下記ロイコ染料A 3部
下記ロイコ染料B 0.2部
下記ロイコ染料C 0.8部
25%ポリエステル溶解液(MEK/TOL=1/1) 24部
(ユニチカ製UE−3600、Tg=75℃)
MEK 20部
TOL 20部
【0055】
下記組成を充分に攪拌し、固形分16%のバック層塗布液[H液]を調製した。
[H液]
20%ポリエステルMEK溶解液 74.5部
(東洋紡社製GK880)
シリコーンフィラー(東芝シリコーン社製トスパール2000B、平均粒径6μm)
0.1部
MEK 25.4部
地肌透過濃度0.22、a*=−7、b*=−9(CIE−LAB表色系)に青み付けした厚さ175μmの透明ポリエステルフィルム上に実施例1と同様に記録層液[G液]、保護層液[E液]を用いて記録層、保護層を形成した後、裏面にバック層塗布液H液]をワイヤーバーを用いて塗工し、80℃の温度に保持したドライヤーで1分間乾燥して厚さ4μmのバック層を形成した。
【0056】
比較例1
実施例5[A液]の4−(N’−n−ヘキシルウレイド)サリチル酸をオクタデシルホスホン酸とした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
比較例2
実施例1[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を除いた以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
比較例3
実施例2[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕をトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトとした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
比較例4
実施例2[B液]の1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕をジステアリル−3,3−チオジプロピオネートとした以外は同様にして感熱記録媒体を作製した。
【0057】
以上のようにして作製した実施例及び比較例の感熱記録材料に対し、解像度300dpiの階調ヘッドを搭載したエネルギー可変プリンター(オークス社製)にて、グレースケールを印字して透過濃度、発色色調、耐光性について評価した。
評価方法、評価基準を下記に示す。
透過濃度
X-Rite社製309TRにて測定した。
○:透過濃度 3.0以上
△:透過濃度 2.0以上
×:透過濃度 2.0より低い
【0058】
発色色調
X線写真観察器ICH−3K(森山X線用品社製)に装着して、昼光色蛍光灯をつけた状態で目視することにより評価した。
耐光性
印画直後に透過濃度と色彩値を測定し、測定直後にX線写真観察器ICH−3K(森山X線用品社製)に装着して、昼光色蛍光灯をつけた状態で72時間連続で装着した後の画像の画像の透過濃度と色彩値を測定し、経時で濃度変化量・色差を評価した。判定は各階調の中で最も大きな変化の部分から実施した。
透過濃度はX-Rite社製309TRを用いて測定した。
○:透過濃度変化量0.2以下
△:透過濃度変化量0.40以下
×:透過濃度変化量0.40より高い
【0059】
色彩値(L*a*b*表色系)測定はミノルタ社製測色計CM−3700dを用いた。色差は下記数式により算出した。
発色色差=[(印画直後a*−保管後a*)2+(印画直後b*−保管後b*)2]1/2
○:色差 2以下
△:色差 3以下
×:色差 3より大きい
地肌色差=[(印画直後L*−保管後L*)2+(印画直後a*−保管後a*)2+(印画直後b*−保管後b*)2]1/2
○:色差 1以下
△:色差 1.5以下
×:色差 1.5より大きい
評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と前記支持体に形成される感熱記録層と前記感熱記録層に形成される保護層を有する感熱記録媒体において、前記感熱記録層が樹脂とロイコ染料と顕色剤と酸化防止剤とを備え、前記顕色剤は下記一般式(1)
【化1】

(1)

(式中、R1は炭素数4〜16の直鎖のアルキル基又はアルキルアミノ基を表す。)
を含み、前記酸化防止剤は3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートで表される置換基を含むことを特徴とする感熱記録媒体。
【請求項2】
前記3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートで表される置換基を含む酸化防止剤の融点が、110℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、該ロイコ染料に対して5重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
前記記録層樹脂が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
前記ロイコ染料は、赤発色染料及び橙発色染料の少なくとも一方、近赤外発色染料並びに一般式(2)
【化2】

(2)
(式中、R2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基又は炭素数が1以上4以下のアルコキシ基であり、R3は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。)
で示される染料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の感熱記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2006−239971(P2006−239971A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56876(P2005−56876)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】