説明

感熱記録材料

【課題】分散工程において体積平均粒子径0.3μm以下まで微粒子化しても分散液の著しい粘度上昇や液の経時安定性が低下することのないロイコ染料分散液を用いることにより、地肌の白色度が高い感熱記録材料の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に、ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱発色層、及び保護層を有してなり、前記ロイコ染料の分散剤として、質量平均重合度が100〜400で変性度が0.2モル%〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを用いたことを特徴とする感熱記録材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱発色層に使用されるロイコ染料の分散品質に優れ、かつ地肌の白色度に優れた感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の多様化やニーズの拡大に伴い、情報記録分野に於いて各種の記録材料が研究・開発され実用化されている。中でも感熱記録材料は、(1)加熱プロセスのみによる簡易な画像の記録が可能なこと、(2)必要な装置のメカニズムが簡単でコンパクト化が容易であり記録材料が取扱い易く安価であることなどの利点を有するため、情報処理分野(卓上計算機、コンピュータ等のアウトプット)、医療計測用レコーダー分野、低、高速ファクシミリ分野、自動券売機分野(乗車券、入場券等)、感熱複写機分野、POSシステムのラベル分野等、多岐にわたり用いられている。
このような感熱記録材料に各種の情報を記録するためには通常サーマルプリンターが使用されるが、感熱記録材料の需要増加に伴いサーマルプリンターが高速化している。サーマルプリンター内部にはサーマルヘッドがあり、このサーマルヘッドが感熱記録材料表面に接して熱エネルギーを感熱記録材料に与えることにより画像情報が形成される。よって高速で印字を行うためには感熱記録材料の発色感度が高いことが重要となる。
発色感度を上げる方法としては、これまで多様な技術が提案されているが、その一つとして、発色体であるロイコ染料の粒子径を細かくし、サーマルヘッドからの熱に対して容易に溶融発色するようにする方法がある。
【0003】
前記ロイコ染料は感熱記録材料の感熱発色層に含まれているが、ロイコ染料を、感熱発色層を形成するための塗布液中に均一に存在させるためには、元々粉末状の固体であるロイコ染料を分散機で細かく砕いて分散液の状態とすることが必要となる。このロイコ染料の分散工程において、より大きなせん断力を与えたり、あるいは分散時間を長くすることによって粒子をできる限り小さくすることで発色感度を上げることが可能となる。
ロイコ染料の分散においては、分散効率を高めるため、あるいは液中に安定して粒子を存在させるために、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂を添加することが提案されている。
例えば特許文献1では、ロイコ染料として少なくとも3位と7位に置換又は未置換のアミノ基を有するフルオラン化合物を用いるとともに、該フルオラン化合物の分散剤としてカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを用いることにより、スティッキングやカス付着がなく、サーマルヘッドとの適合性に優れた感熱記録材料が得られるとしている。
また、特許文献2では、ロイコ染料の分散剤としてポリビニルアルコールとイソブチレン無水マレイン酸アンモニウムを用い、粒子径0.7μmまで分散することにより、発色感度に優れた感熱記録材料が得られるとしている。
更に、特許文献3では、ロイコ染料の分散剤としてアイオノマー型と共にカルボキシ変性ンポリビニルアルコール又はスルホン酸変性ポリビニルアルコールを用いることにより、発色感度が高く発色画像の耐湿保存性に優れた感熱記録材料が得られるとしている。
【0004】
しかしながら、近年発色感度の向上の要求が高まる中で、更なる改善を目標として上記の技術で染料の微粒子化(平均粒子径0.3μm以下)を行った場合、発色感度が向上する一方で背反特性として地肌白色度の低下が顕著となる。そのメカニズムは、ロイコ染料の微粒子化が進むにつれて、感熱液(ロイコ染料分散液と顕色剤分散液を混合したもの)を調製した場合に顕色剤の分散体との接触面積が大きくなり、弱い発色体構造を形成することになって、感熱記録材料として地肌の白色度が低下するというものである。
また他の先行技術として、特許文献4では、ロイコ染料を分散剤としてアニオン系界面活性剤を含有させて分散し、該ロイコ染料の体積平均粒子径を0.10〜0.30μmとし、更に高分子分散剤としてポリビニルアルコール、ポリアクリルスルホン酸金属塩又は部分ケン化ポリビニルアルコールを用いることにより、液かぶり(染料分散体と顕色剤分散体の接触による弱い発色)がなく、地肌の白色度が高く、かつ発色画像及び地肌の安定性に優れた感熱記録材料が得られるとしている。しかし、この技術では地肌の白色度はまだ不十分であり、かつロイコ染料の分散液の粘度が著しく上昇するため分散液中の気泡が抜けにくくなり、塗布欠陥につながること、生産工程での送液が困難になること、液の経時安定性が低下する(時間の経過と共に粒子径が大きくなってしまい、発色感度が低下する)ことなどの不具合が発生するという欠点がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−159394号公報
【特許文献2】特開平3−173680号公報
【特許文献3】特開2000−6520号公報
【特許文献4】特開2003−266950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、分散工程において体積平均粒子径を0.3μm以下まで微粒子化しても分散液の著しい粘度上昇や液の経時安定性が低下することのないロイコ染料分散液を用いることにより、地肌の白色度が高い感熱記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ロイコ染料の分散剤として、質量平均重合度が100〜400で変性度が0.2〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを用いればよいことを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱発色層、及び保護層を有してなり、前記ロイコ染料の分散剤として、質量平均重合度が100〜400であり、かつ変性度が0.2モル%〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを用いたことを特徴とする感熱記録材料である。
<2> カルボン酸変性ポリビニルアルコールの含有量が、ロイコ染料1質量部に対して0.1質量部〜0.4質量部である前記<1>に記載の感熱記録材料である。
<3> 感熱発色層が、フィラーとして炭酸カルシウムを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の感熱記録材料である。
<4> 顕色剤が、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、及び、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の感熱記録材料である。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖状でも分枝を有してもよく、飽和又は不飽和エーテル結合を有してもよい炭素数1〜12の炭化水素基、あるいは、下記式(2)又は下記式(3)で表される基を表す。aは0〜10の整数を表す。R1〜R6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルケニル基を表す。m、n、p、q、r、及びtは、いずれも0〜4の整数を表し、該整数が2以上のとき、対応する2以上のR1同士〜R6同士は互いに異なっていてもよい。
【化2】

ただし、前記式(2)中、Rは、メチレン基、又はエチレン基を表す。
【化3】

ただし、前記式(3)中、Tは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
<5> 保護層が、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びヒドラジド化合物を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の感熱記録材料である。
<6> 支持体と感熱発色層との間に、少なくとも中空粒子を含む中間層を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の感熱記録材料である。
<7> 中空粒子の中空率が80%以上である前記<6>に記載の感熱記録材料である。
<8> 中間層が、質量平均重合度が100〜400であり、かつ変性度が0.2モル%〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを含有する前記<6>から<7>のいずれかに記載の感熱記録材料である。
<9> カルボン酸変性ポリビニルアルコールの中間層における含有量が、中空粒子1.0質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である前記<8>に記載の感熱記録材料である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に、接着剤層と剥離台紙を順次積層してなることを特徴とする感熱記録ラベルである。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に、常温では、粘着性を有しないが、加熱時に粘着力を発現する熱活性型粘着層を有することを特徴とする感熱記録ラベルである。
<12> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に、磁気記録層を有することを特徴とする感熱記録型磁気材料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、分散工程において体積平均粒子径を0.3μm以下まで微粒子化しても分散液の著しい粘度上昇や液の経時安定性が低下することのないロイコ染料分散液を用いることにより、地肌の白色度が高い感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の感熱記録材料は、支持体と、該支持体上にロイコ染料と顕色剤を含有する感熱発色層、及び保護層を有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0011】
−感熱発色層−
本発明においては、前記ロイコ染料の分散剤として、質量平均重合度が100〜400であり、かつ変性度が0.2モル%〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを用いる。
ポリビニルアルコールの性質を規定する主な物性としては、鹸化度、重合度、変性度が挙げられる。このうち、本発明で規定している質量平均重合度とは、重合体分子を構成する繰り返し単位の平均的な数のことであり、前記変性度とは、ポリビニルアルコールに溶解性、反応性などの機能を付与するために置換した水酸基部分の割合(モル%)である。
【0012】
前記カルボン酸変性ポリビニルアルコールの質量平均重合度は100〜400の範囲にあることが必要である。前記質量平均重合度が100未満であると、ロイコ染料分散液の粘度上昇は見られないものの、ロイコ染料に対する保護コロイド効果が十分でないために、分散された粒子の安定性が悪く、地肌の白色度が不十分となってしまう。一方、前記質量平均重合度が400を超えると、分散が進行して粒子が微細化するに従い急激な粘度上昇が発生する。また、カルボン酸変性ポリビニルアルコールのカルボン酸変性度が0.2モル%〜1.0モル%の範囲であれば地肌の白色度が著しく高くなる。
前記質量平均重合度及びカルボン酸変性度が前記範囲にある場合には、ロイコ染料の分散粒子が電気化学的に最も安定しており、また、分散粒子表面に形成される適度な保護コロイド状態が、分散液中での顕色剤との反応を抑えるものと推定される。
前記カルボン酸変性ポリビニルアルコールの含有量は、ロイコ染料1質量部に対して、0.1質量部〜0.4質量部が好ましく、0.2質量部〜0.3質量部がより好ましい。
【0013】
前記ロイコ染料としては、特に制限は無く、この種の感熱記録材料において公知のものを単独で又は2種以上混合して任意に用いることができる。
前記ロイコ染料の好ましい例としては、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フエノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が挙げられる。
前記ロイコ染料としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチル−アミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−1−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)}−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノスピロピラン、6’−ブロモ−3’−メトキシ−ベンゾインドリノースピロピラン、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−クロルフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−ニトロフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジエチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−メチルフェニル)フタリド、3−(2’−メトキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−4’−クロル−5’−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピルトリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジルトリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチル−7−(3−メチルアニリノ)フルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニルエチレン−2−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−p−クロロフェニルエチレン−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−メトキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−p−クロロフェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−ベンジルオキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノ−フェニル−1”−フェニル−1”,3”−ブタジエン)イル}ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノフルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,3−ビス−12−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル1−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−ビス{1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル}−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−4−p−トリルスルホニルメタン、などが挙げられる。
【0014】
本発明では、ロイコ染料に対して界面活性剤を5質量%〜20質量%含有させることが可能である。前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオクチルスルホコハク酸水溶液等が挙げられる。
前記ロイコ染料の分散方法としては、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ジェットミルなどを用いることができるが、メディアを用いた分散方式が好ましく、直径が0.5mm以下のジルコニアメディアを用いるか、又は、直径が0.5mm〜1.0mmのジルコニアメディアを用いて粗粉砕し、次いで直径が0.5mm以下のジルコニアメディアを用いて分散することにより微粒子化が達成される。前記ロイコ染料分散液の平均粒子径は、0.3μm以下が好ましい。
前記ロイコ染料分散粒子の粒子径は、例えばレーザー解析・散乱法(マイクロトラックHRA9320−X100型、堀場製作所製LA920型、レーゼンテックFBRM装置)や遠心沈降方式、コールターカウンター、電子顕微鏡等の通常用いられている方法で測定することができる。前記ロイコ染料分散液の粘度は、20℃で10cps〜800cpsが好ましい。
【0015】
前記顕色剤としては、加熱時に前記ロイコ染料と反応して発色させる種々の電子受容性物質を用いることができ、以下に示すようなフェノール性化合物、有機又は無機の酸性化合物、あるいはそれらのエステルや塩などが挙げられる。
具体的には、没食子酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4’−イソプロピリンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−キシレノール、チモール、メチル−4−ヒドエロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2’−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4−ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−プロピル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−プロピル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−sec−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−tert−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(m−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(p−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(o−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(p−クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホン、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホンと下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体を併用することが特に好ましい。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖状でも分枝を有してもよく、飽和又は不飽和エーテル結合を有してもよい炭素数1〜12の炭化水素基、あるいは、下記式(2)又は下記式(3)で表される基を表す。aは0〜10の整数を表す。R1〜R6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルケニル基を表す。m、n、p、q、r、及びtは、いずれも0〜4の整数を表し、該整数が2以上のとき、対応する2以上のR1同士〜R6同士は互いに異なっていてもよい。
【化2】

ただし、前記式(2)中、Rは、メチレン基、又はエチレン基を表す。
【化3】

ただし、前記式(3)中、Tは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、市販の顕色剤D−90(商品名、日本曹達株式会社製)が好適に用いられる。顕色剤D−90は、前記一般式(1)において、p、q、r及びtが全て0、即ち、R3、R4、R5、R6の置換基が無く、ベンゼン環における置換の対象となる置換位置は全て水素原子である。X及びYは、化学構造式(−CHCHOCHCH−)で表される両末端に結合手を持つジエチルエーテルの二価基である。
【0017】
前記感熱発色層には印字した時のマッチング特性を維持するなどの目的で種々のフィラーを用いてもよい。
前記フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレーカオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の有機系の微粉末を挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムを用いると、更に地肌の白色度が向上するし、耐熱環境下での地肌かぶりが低減するので好ましい。
【0018】
また、本発明においては、目的に応じて(例えば感度向上剤として)感熱発色層に種々の熱可融性物質を添加してもよいが、惣菜用などで耐熱性が要求される場合には、熱可融性物質を出来るだけ添加しないようにするか、又は融点が100℃以上の化合物を選択して使用する必要がある。
前記融点が100℃以上の化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばステアリン酸、べヘン酸等の脂肪酸類;ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類;p−ベンジルビフェニル、m−ターフェニル、p−アセチルビフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフト酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、グレヤコールカーボネート、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジロキシナフタレン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ジフェノキシ−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ジフェニルチオブタン、1,4−ジフェニルチオ−2−ブテン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3−フェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2−ビス(4−メトキシフェノキシ)プロパン、1,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロロベンジル)、などが挙げられる。
【0019】
本発明の感熱記録材料を製造するに際しては、ロイコ染料、顕色剤及び添加剤を支持体上に結合支持させるために、慣用の種々の結合剤を適宜用いることができ、その具体例としては、ポリビニルアルコール、澱粉又はその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子の他に;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン;スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス、などが挙げられる。
【0020】
−保護層−
前記保護層は、結合剤樹脂、及びフィラーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記結合剤樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉又はその誘導体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はその誘導体、スチレン/アクリル酸共重合体又はその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミド又はそれらの誘導体、スチレン/アクリル酸アクリル/アミド共重合体、アミノ基変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、水性ポリエステル、水性ポリウレタン、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体又はその誘導体等の水溶性樹脂;ポリエステル、ポリウレタン、アクリル酸エステル系(共)重合体、スチレン/アクリル系共重合体、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール水溶性樹脂が好ましく、結合剤樹脂としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを用い、かつ、該樹脂の耐水化剤としてヒドラジド化合物を用いると、保護層材料と感熱発色層の染料や顕色剤との反応が抑制されるため、地肌の白色度が更に上昇する。
【0021】
前記ヒドラジド化合物としては、ヒドラジド基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドラジン、カルボヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,7−ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性及び安全性の面からアジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。
前記ヒドラジド化合物の添加量は、ヒドラジド化合物の官能基の変性量、種類によっても異なるが、結合剤樹脂100質量部に対して0.1質量部〜20質量部が好ましく、1質量部〜10質量部がより好ましい。
また、保護層に用いるフィラーとしては、前述した感熱発色層の場合と同様なものが適用可能であるが、水酸化アルミニウムやシリカなどが特に有用である。フィラーの量は、保護層全体の30質量%〜80質量%が好ましく、40質量%〜70質量%がより好ましい。
前記保護層の付着量は3.0g/m以下であり、これより多いと保護層の下側の感熱発色層への熱の移動に支障をきたすことがある。
【0022】
−中間層−
本発明の感熱記録材料においては、支持体と感熱発色層との間に中間層を設けてもよい。前記中間層は、結合剤樹脂、及びフィラーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記結合剤樹脂やフィラーとしては感熱発色層や保護層の説明で示したのと同様のものを用いることができるが、フィラーとして、中空構造を有する有機フィラーなどの中空粒子を含む場合には、断熱性及びヘッドとの密着性の向上により発色感度が高くなるので好ましい。
特に熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気その他の気体を含有し、既に発泡状態となっている微小中空粒子が好ましく、平均粒子径(粒子外径)は3μm前後のものが好ましい。
平均粒子径が0.4μmより小さいものは、任意の中空率にすることが難しい等の生産上の問題があり、逆に10μmより大きいものは、原紙上に塗布時スクラッチ状のスジを形成し易く、塗布乾燥後の表面の平滑性が低下するため、サーマルヘッドとの密着性が低下し、感度向上効果が低下する。従って、0.4μm〜10μmの範囲にあると同時に、バラツキの少ない分布ピークの均一なものが好ましい。
【0023】
前記微小中空粒子の中空率は80%以上が好ましく、90%〜98%の範囲が特に好ましい。なお、ここで言う中空率とは、中空粒子の外径と内径(中空部の直径)の比であり、下記式で表わされるものである。
中空率=(中空粒子の内径/中空粒子の外径)×100
殻となる熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエンあるいはそれらの共重合体樹脂が挙げられるが、上記したような中空率を得るには、塩化ビニリデンとアクリロニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
更に中間層に、感熱発色層でロイコ染料の分散剤として用いたカルボン酸変性ポリビニルアルコールを含有させると、感熱発色層に含まれるカルボン酸変性ポリビニルアルコールとの間で化学的結合力を増し、感熱記録材料としての層間結着力が大きくなるため表面強度が高くなる。この場合のカルボン酸変性ポリビニルアルコールの添加量は、背反特性である発色特性と層間結着力のバランスという点で、中空粒子1.0質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部であることが望ましい。
支持体としては、上質紙、古紙パルプからなる支持体(古紙パルプを50%以上使用)、合成紙、ラミネート紙等の何れも用いることができる。
【0024】
前記支持体上に感熱発色層、保護層、中間層を形成するには従来公知の方法を用いればよく、支持体上に感熱発色層塗布液、保護層塗布液、及び中間層塗布液を塗布して乾燥させればよい。
これらの塗布液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法、エクストルージョン塗布法などが挙げられる。
また、本発明においては、前記界面活性剤、フィラー、熱可融性物質の他に、必要に応じて、この種の感熱記録材料で慣用されている補助添加成分である滑剤、圧力発色防止剤等を併用することができる。
前記滑剤としては、例えば高級脂肪酸又はその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類等が挙げられる。
【0025】
本発明の感熱記録材料は、裏面に接着剤層と剥離台紙を順次積層して感圧型感熱記録ラベルとして用いたり、裏面に常温(10℃〜30℃)では粘着性を有しないが加熱時に粘着力を発現する熱活性型粘着層を設けて剥離台紙を必要としない熱活性型感熱記録ラベルとして用いることができる。
【0026】
<感熱記録磁気紙>
前記感熱記録材料としての感熱記録磁気紙は、支持体の感熱発色層を有する側の面の反対側のうら面上に、磁気記録層を有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。なお、うら面上には、バック層面も含まれる。
前記磁気記録層としては、例えば、酸化鉄、バリウムフェライト等と、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂等とを用い支持体上に塗工形成されるか、又は蒸着、スパッタリング等の方法により樹脂を用いず形成される。
前記磁気記録層は支持体における該感熱発色層とは反対側の面に設けることが好ましいが、支持体と該感熱発色層との間、該感熱発色層上の一部に設けてもよい。
【0027】
本発明の感熱記録材料の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ラベル状、シート状、ロール状、などが好適に挙げられる。
【0028】
本発明の感熱記録材料を用いた記録方法は、使用目的によって、熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱等で行われるが、特に限定されない。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」及び「%」のうち、単位の記載が無いものは全て「質量部」及び「質量%」である。また、ポリビニルアルコールは表中などにおいて適宜PVAと略称した。
【0030】
(1)感熱発色層を構成する各成分の調製
下記組成の〔A液〕、〔B液〕、〔C液〕、〔D液〕、及び〔E液〕を、サンドグラインダーを用いて分散させて作製した。
【0031】
〔A液〕ロイコ染料分散液
・3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン・・・20部
・表2に記載の質量平均重合度及び変性度を有するカルボン酸変性ポリビニルアルコールの10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
なお、上記ロイコ染料分散液の平均粒子径は0.3μm以下になるように調整した。
【0032】
〔B液〕顕色剤分散液(i)
・4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン・・・20部
・ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレKポリマーKL−318)の10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
【0033】
〔C液〕顕色剤分散液(ii)
・4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシシジフェニルスルホン・・・10部
・顕色剤(日本曹達株式会社製、D−90)・・・10部
・ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、クラレKポリマーKL−318)の10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
【0034】
〔D液〕
・非晶質シリカ(水澤化学工業株式会社製、ミズカシル P−527)・・・20部
・ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、クラレKポリマーKL−318)の10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
【0035】
〔E液〕
・炭酸カルシウム(白石工業株式会社製、CALSHITEC Brilliant−15)・・・20部
・ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、クラレKポリマーKL−318)の10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
【0036】
(2)感熱発色層塗布液の調製
上記のようにして作製した〔A液〕〜〔E液〕を表1に記載の割合で混合して、実施例1〜15及び比較例1〜5で用いる感熱発色層塗布液を作製した。
【0037】
(3)中間層塗布液の調製
下記組成の材料を混合撹拌し分散して調製した。ただし、樹脂中空粒子は、実施例7では平均粒子径0.4μm、中空率55%のもの、実施例8〜13では平均粒子径3μm、中空率90%のものを用いた。また、表1の中間層塗布液に用いたカルボン酸変性PVAは、実施例1で分散剤として用いたものと同じであり、その添加量は、中空粒子1.0部に対するものである。
・樹脂中空粒子・・・25部
・スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス(固形分濃度47.5%、日本エイアンドエル社製、スマーテックスPA−9159)・・・15部
・水・・・60部
【0038】
(4)保護層塗布液の調製
下記組成の〔F液〕を、サンドミルを用いて24時間分散して調製した。
〔F液〕
・水酸化アルミニウム(平均粒径0.6μm、昭和電工株式会社製、ハイジライトH−43M)・・・20部
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセランL−3266)・・・20部
・水・・・60部
続いて、下記組成の材料を攪拌混合して、保護層塗布液を調製した。ただし、表1に記載の水溶性樹脂の完全鹸化PVA(固形分10%)は、株式会社クラレ製、クラレポバールPVA−11、ジアセトン変性PVA(固形分10%)は、日本酢ビ・ポバール社製、D−700VHであり、耐水化剤のポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(固形分25%)は星光PMC社製、紙力剤WS−525である。
・〔F液〕・・・75部
・表1に記載の水溶性樹脂・・・100部
・表1に記載の耐水化剤・・・15部
・45%室温硬化型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、SE−1980CLEAR)・・・0.05部
・水・・・90部
【0039】
(5)感熱記録材料(紙)の作製
表1及び表2に基づき、坪量60g/mの紙上に、上記感熱発色層塗布液を染料付着量が0.50g/mになるように塗布乾燥して感熱発色層を設け、その上に、上記保護層塗布液を乾燥塗布量が3.0g/mになるように塗布乾燥した後、スーパーキャレンダー処理して、実施例1〜6、及び比較例1〜5の感熱記録材料を得た。
また、表1及び表2に基づき、坪量60g/mの紙上に、上記中間層塗布液を乾燥塗布量が3.0g/mになるように塗布乾燥し、その上に、上記感熱発色層塗布液を染料付着量が0.50g/mになるように塗布乾燥して感熱発色層を設け、その上に、上記保護層塗布液を乾燥塗布量が3.0g/mになるように塗布乾燥した後、スーパーキャレンダー処理して、実施例7〜15の感熱記録材料を作製した。
【0040】
【表1−1】

*中間層のPVAは、重合度100、カルボン酸変性度0.2のものを使用、添加量の質量部は中空フィラー1.0質量部に対する比
【0041】
【表1−2】

【0042】
【表2−1】

【0043】
【表2−2】

【0044】
(6)評価試験
以上のようにして作製した各感熱記録材料について、下記試験を実施した。結果を表3に示す。
【0045】
<染料分散液の粘度>
E型粘度計(東京計器社製)を用いて20℃で測定した。
【0046】
<染料分散液安定性>
染料分散液の平均粒子径を粒子径分布測定器(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
分散液を、分散直後から48時間、30℃の条件下で保存し、分散直後の平均粒子径を基準として、平均粒子径の変化を調べた。
◎:平均粒子径の変化10%未満
○:平均粒子径の変化10%以上20%未満
△:平均粒子径の変化20%以上30%未満
×:平均粒子径の変化30%以上
【0047】
<地肌反射率試験>
液かぶりに起因する白色度の違いを定量化するため、フォトボルト社製地肌反射率計モデル577を用いて地肌反射率を測定した(フィルター:グリーン使用)。
【0048】
<発色特性試験>
大倉電機株式会社製感熱記録材料の印字シミュレーターにより、0.27mj/dot、0.36mj/dot、0.45mj/dotでエネルギーを印加して印字し、それぞれの発色濃度をマクベス濃度計RD−914で測定した。
【0049】
<層間接着力>
感熱記録材料の発色面に、NICHIBAN社製のセロハンテープを貼り付け、テスター産業社製:オムニエースRT3300を用いて、70m/分の速度で引っ張ることにより、層の剥離力を測定した。
【0050】
【表3】

表3の結果から、実施例1〜3では、カルボン酸変性PVAの質量平均重合度が100〜400でカルボン酸変性度が0.2〜1.0モル%の範囲では、染料分散液の粘度特性や安定性に優れ、また地肌反射率が90%以上と高い(=白色度が高い)ことが分かった。これに対し、上記範囲を外れる比較例1〜5の場合には、分散安定性が低く、地肌反射率も低い(白色度が低い)結果となっており、比較例2〜3では、分散液の粘度も高くなっている。
また、実施例5〜6に示すように、染料1.0質量部に対するPVAの添加量が0.1〜0.4質量部の範囲にある場合、染料分散液の安定性が更に増す。
また、実施例7では、炭酸カルシウムの作用により地肌反射率が更に改善されている。また、実施例8では、特定の顕色剤の組み合わせ(4−ヒドロキシ−4′−アリルオキシジフェニルスルホン+架橋型ジフェニルスルホン型化合物:D90)により更に地肌の改善が見られる。
また、実施例9では、保護層にジアセトン変性PVA及びヒドラジド化合物を使用することによっても地肌品質の改善が見られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の感熱記録材料は、感熱記録紙、感熱記録ラベル、感熱磁気記録紙、感熱記録フィルムなどに好適であり、例えば、図書、文書などの複写、電子計算機、ファクシミリ、発券機、ラベルプリンター、レコーダー、ハンディターミナル用などの記録材料、衣類等の表示ラベル、部品管理用ラベル、物流ラベルなどに幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱発色層、及び保護層を有してなり、前記ロイコ染料の分散剤として、質量平均重合度が100〜400であり、かつ変性度が0.2モル%〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを用いたことを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
カルボン酸変性ポリビニルアルコールの含有量が、ロイコ染料1質量部に対して0.1質量部〜0.4質量部である請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
感熱発色層が、フィラーとして炭酸カルシウムを含む請求項1から2のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項4】
顕色剤が、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、及び、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン誘導体を含有する請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖状でも分枝を有してもよく、飽和又は不飽和エーテル結合を有してもよい炭素数1〜12の炭化水素基、あるいは、下記式(2)又は下記式(3)で表される基を表す。aは0〜10の整数を表す。R1〜R6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルケニル基を表す。m、n、p、q、r、及びtは、いずれも0〜4の整数を表し、該整数が2以上のとき、対応する2以上のR1同士〜R6同士は互いに異なっていてもよい。
【化2】

ただし、前記式(2)中、Rは、メチレン基、又はエチレン基を表す。
【化3】

ただし、前記式(3)中、Tは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【請求項5】
保護層が、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びヒドラジド化合物を含有する請求項1から4のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項6】
支持体と感熱発色層との間に、少なくとも中空粒子を含む中間層を有する請求項1から5のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項7】
中空粒子の中空率が80%以上である請求項6に記載の感熱記録材料。
【請求項8】
中間層が、質量平均重合度が100〜400であり、かつ変性度が0.2モル%〜1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールを含有する請求項6から7のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項9】
カルボン酸変性ポリビニルアルコールの中間層における含有量が、中空粒子1.0質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である請求項8に記載の感熱記録材料。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に、接着剤層と剥離台紙を順次積層してなることを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に、常温では、粘着性を有しないが、加熱時に粘着力を発現する熱活性型粘着層を有することを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に、磁気記録層を有することを特徴とする感熱記録型磁気材料。

【公開番号】特開2008−254436(P2008−254436A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60470(P2008−60470)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】