説明

感熱記録材料

【課題】本発明は、発色感度が高く、厳しい条件下でも熱や湿度、光、可塑剤による記録濃度の低下が極めて少ない感熱記録材料に関するものである。
【解決手段】本発明は、支持体上に、加熱により呈色し得る無色乃至淡色の染料前駆体化合物を含有する感熱記録層を設けた感熱記録材料において、前記染料前駆体化合物として特定の染料前駆体化合物の少なくとも1種が含有され、さらに感熱記録層に酸化剤が含有されることを特徴とする感熱記録材料。前記酸化剤として、有機酸化剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録感度が高く、熱や湿度、光、可塑剤による印字濃度の低下が極めて少ない感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に紙、合成紙、またはプラスチックフィルム等からなる支持体上に、発色性物質、顕色剤、及び接着剤等を主成分として含む感熱記録層を設けたものであって、これらの発色性物質と顕色剤とを熱エネルギーによって反応させて発色記録画像を得ることができる。このような感熱記録方法は、記録装置がコンパクトでしかも安価であり、且つ保守が容易であること等の利点を有し、ファクシミリや自動券売機、科学計測機器の記録用媒体としてだけでなく、POSラベル、CAD、CRT医療画像用等の各種プリンター、プロッターの出力媒体としても広く使用されている。
【0003】
これらの感熱記録層に用いられる発色性物質と顕色剤との組み合わせとしては、電子供与性染料前駆体と電子受容性物質との組み合わせが、最も広範囲に用いられているが、この発色反応は可逆反応であるため、熱、湿度、光、可塑剤等の影響で逆反応を起こし、消色するという欠点がある。このため、保存性を必要とするような証拠書類への適用が困難であった。こうした欠点を改良するために感熱記録紙に、ロイコインジゴイド化合物を用いて画像の保存性の高い感熱記録材料を得る技術が記載されている(特許文献1を参照)が、発色感度は十分とはいえず、また、非常に厳しい熱、湿度、光、可塑剤等の条件下では消色するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−124175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の感熱記録材料の有する上記問題点を解消し、発色感度が高く、熱や湿度、光、可塑剤による記録濃度の低下が極めて少ない感熱記録材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体上に、加熱により呈色し得る無色乃至淡色の染料前駆体化合物を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、染料前駆体化合物として下記一般式(1)で表される染料前駆体化合物の少なくとも1種が含有され、さらに感熱記録層に酸化剤が含有されることを特徴とする感熱記録材料に関する。
【0007】
【化1】

[一般式(1)中、X及びYは互いに独立して硫黄原子またはNR9を表すが、XとYはN−A−Nの形で結合していてもよい。ここで、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、COR10またはCOOR11を表し、Aは炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキレン基を表し、R10およびR11は互いに独立して炭素数1〜12のアルキル基;ベンジル基;ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を表す。RおよびR’は互いに独立して炭素数4〜12の第三級アルキル基を表す。また、R〜Rは互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ニトロ基、NR1213またはSR14を表す。ここで、R12及びR13は互いに独立して水素原子;炭素数1〜12のアルキル基;炭素数4〜12のシクロアルキル基;ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよいアルアルキル基;ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を表すが、R12とR13は隣接する窒素原子と共にピロリジノ基、ピペリジノ基またはヘキサメチレンイミノ基を形成してもよい。また、R14は炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7及びR7とR8は互いに独立してベンゼン環を形成していてもよい。]
前記酸化剤として、有機酸化剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記酸化剤として、クロラニル、ブロマニル、1,8−ジクロロアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン、及び2−tert−ブチルアントラキノンから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記酸化剤として、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン、及び2−tert−ブチルアントラキノンから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記感熱記録層中に、更に酸性物質を含有することが好ましい。
前記酸性物質として、安息香酸亜鉛塩、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛塩、トリクロル安息香酸亜鉛塩、テレフタル酸亜鉛塩、サリチル酸亜鉛塩、3−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩、3−イソプロピルサリチル酸亜鉛塩、3−ベンジルサリチル酸亜鉛塩、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩、及び3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記染料前駆体化合物として、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイト、及びO,O’−ジ(1,1−ジメチルプロポキシカルボニル)インジゴホワイトから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感熱記録材料は、記録感度が高く、熱や湿度、光、可塑剤による印字濃度の低下が極めて少ないものであり、実用上極めて有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、前記一般式(1)で表される染料前駆体化合物及び酸化剤を含有する感熱記録層を有する。この感熱記録材料を加熱すると、染料前駆体に含まれる3級アルコキシカルボキシ基が脱炭酸分解し、無色または淡色のインジゴホワイト化合物が形成され、それに続く酸化反応により、熱、湿度、光、可塑剤等に高い堅牢性を示す濃色のインジゴ系染料に変化する。記録感度を向上させるためには、(I)3級アルコキシカルボキシ基の分解によるインジゴホワイトの生成を促進することと、(II)これに続くインジゴホワイトの酸化反応を円滑に進めることが有用であると考えられ、本発明の酸化剤はインジゴホワイト化合物の酸化反応を促進し、結果として記録感度が向上するものと推察される。
【0010】
また、本発明で用いる酸性物質は、3級アルコキシカルボキシ基の分解を促進する働きがあると考えられ、酸化剤のない系でもある程度記録感度を高める効果があるが、酸性物質と酸化剤と組み合わせることにより飛躍的に高い増感効果が発現される。これは、酸性物質が3級アルコキシカルボキシ基の分解反応を促進するだけでなく、酸化剤の酸化能力を高める働きがあるためと考えている。
【0011】
本発明で用いる染料前駆体化合物は、通常は無色または淡色の化合物であり、加熱により3級アルコキシカルボキシ基が分解し、発色体を形成する染料前駆体化合物である。これらの化合物は、例えば特開平4−124175号公報、特開2008−201112号公報等に記載されている方法で容易に合成することができる。
【0012】
その具体例としては、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5−ブロモインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジブロモインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’,7−トリブロモインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’,7,7’−テトラブロモインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’,5,5’,7,7’−ヘキサブロモインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジクロロインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’,5,5’−テトラクロロインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジメチルインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジフルオロインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジクロロ−5,5’−ジブロモインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジメチルインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジメチル−7,7’−ジクロロインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジエチルインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエトキシインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジメトキシインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエチルメルカプトインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)チオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジクロロチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジクロロチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジアミノチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジクロロ−7,7’−ジアミノチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジブロモ−6,6’−ジアミノチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジブロモチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエトキシチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジブロモ−6,6’−ジエトキシチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエチルメルカプトチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4−メチル−6,6’−ジクロロチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4−メチル−6−クロロ−6’−メトキシチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジメチル−6,6’−ジクロロチオインジゴホワイト、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’,7,7’−テトラメチル−5,5’−ジクロロチオインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5−ブロモインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジブロモインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’,7−トリブロモインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’,7,7’−テトラブロモインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’,5,5’,7,7’−ヘキサブロモインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジクロロインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’,5,5’−テトラクロロインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジメチルインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジフルオロインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジクロロ−5,5’−ジブロモインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジメチルインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジメチル−7,7’−ジクロロインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジエチルインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエトキシインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジメトキシインジゴホワイト、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエチルメルカプトインジゴホワイト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0013】
本発明で用いられる酸化剤は、加熱による染料前駆体化合物の3級アルコキシカルボキシ基の分解によるインジゴホワイトの生成段階に続く酸化の段階を促進し、発色感度を増大する効果があると考えられる。
【0014】
本発明で用いられる酸化剤は、特に限定されないが記録感度が高いことから有機の酸化剤が望ましく、トリアリールメチル化合物やキノン化合物等が挙げられる。トリアリールメチル化合物としては、例えば、トリフェニルメチルクロライド、トリフェニルメチルブロマイド等が挙げられる。またキノン化合物としては、2,5−ジブロモ−1,4−ベンゾキノン−3,6−ジカルボン酸−ジ−n−ヘキシルエステル、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン−3,6−ジカルボン酸−ジイソブチルエステル等の2,5−ジハロゲン−1,4−ベンゾキノン−3,6−ジカルボン酸エステル類、2−p−トルエンスルホニル−1,4−ベンゾキノン等のモノスルホニルキノン類、2,5−ジベンゾイル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ベンゾキノン−2,5−ジカルボン酸ジシクロヘキシルエステル、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン等の2置換キノン類、o−クロラニル、クロラニル、ブロマニル、1,4−ベンゾキノンテトラカルボン酸エチル等の4置換キノン類、2,5−ジ−p−トルエンスルホニル−1,4−ベンゾキノン−3,6−ジカルボン酸ジイソブチルエステル、2,5−ジブチルスルホニル−1,4−ベンゾキノン−3,6−ジカルボン酸ジエチルエステル等のジスルホニルキノンジカルボン酸エステル、2−p−トルエンスルホニル−1,4−ベンゾキノン−3,6−ジカルボン酸ジシクロヘキシルエステル等のモノスルホニルキノンジカルボン酸ジエステル、1,4−ナフトキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン等のナフトキノン類、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アントラキノンカルボン酸、1,8−ジクロロアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、必要に応じて1種、または2種以上の化合物を併用することができる。使用される酸化剤の量は、特に限定されないが、前記染料前駆体化合物100質量部に対して、酸化剤は1〜500質量部程度の割合で使用することが好ましい。なお、より好ましくは5〜200質量部程度の割合で使用する。
【0015】
なかでもクロラニル、ブロマニル、1,8−ジクロロアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン、2−tert−ブチルアントラキノンは増感の効果が高く好ましく用いられる。特に2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン、2−tert−ブチルアントラキノンは耐光性が高いため、とりわけ好ましく用いられる。
【0016】
本発明では、発色感度を向上させる目的で、感熱記録層に、更に酸性物質を含有することができる。酸性物質は3級アルコキシカルボキシ基の分解を促進すると共に、酸化剤の酸化能を増大させる働きがあると考えられる。
【0017】
本発明において、酸性物質として使用できる化合物としては、4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、およびビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のフェノール性化合物、4,4’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、またはN−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニル尿素、更に4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール性化合物、または、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質が挙げられる。
【0018】
特に、安息香酸亜鉛塩、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛塩、トリクロル安息香酸亜鉛塩、テレフタル酸亜鉛塩、サリチル酸亜鉛塩、3−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩、3−イソプロピルサリチル酸亜鉛塩、3−ベンジルサリチル酸亜鉛塩、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩は酸化剤と共存させることで特に高い増感効果を現すため好ましい。
【0019】
本発明の感熱記録材料において、酸性物質は、通常、染料前駆体の合計質量に対し、10〜500質量%程度の割合で用いることが好ましく、より好ましくは30〜200質量%程度の割合で使用される。勿論、必要に応じて、2種以上の酸性物質を併用することもできる。
【0020】
本発明に用いられる酸化剤及び酸性物質は、アクリル樹脂等の適当な非水溶性樹脂と共に非水性媒体中に溶解して用いることも出来る。この場合、用いられる好ましい非水性媒体としては、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。
【0021】
本発明の感熱記録材料は、互いに異なる色調に発色する多色感熱記録材料に応用することができる。上記染料前駆体化合物を含有する本発明の感熱記録層とは異なる発色系の感熱記録層を積層することもできるし、また、上記染料前駆体化合物を含有する感熱記録層中に、他の発色系感熱記録材料を有してもよい。このような他の発色系としては、従来の感熱記録材料に用いられている電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組み合わせ、またはジアゾ化合物とカップリング成分の組み合わせ等から選ぶことができる。
【0022】
本発明において、感熱記録層に含まれる接着剤は水溶性樹脂、水分散性樹脂、及び非水溶性樹脂のいずれも使用可能である。例えば、ポリビニルアルコ−ル、澱粉、変性澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン、キトサン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアマイド、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合樹脂、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合樹脂等の水溶性樹脂及びポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンブタジエン、ポリメチルメタクリレートブタジエン等の非水溶性樹脂の水性媒体での乳化分散物、及びこれら非水溶性樹脂の非水性媒体溶解物を挙げることができる。また、これら接着剤は2種以上併用することもできる。
【0023】
しかし、こうした接着剤は前記染料前駆体化合物、及び酸性物質または酸化剤成分の各分散液、溶液と混合した時に混合液が発色したり、凝集したり、或いは高粘度になったりしないことが必要であり、また形成された感熱記録層塗膜が強靱であることが必要である。感熱記録層中の接着剤の配合量は感熱記録層の全固形分100質量部に対し5〜80質量部が望ましく、5質量部未満では塗膜強度が弱い欠点があるし、80質量部を超えると記録感度が低下する問題がある。
【0024】
また、感熱記録層の耐水性を向上させるために、感熱記録層に含まれる樹脂成分を硬化させる架橋剤を使用することができる。例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネ−ト化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物、または硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマーを感熱記録層の全固形分100質量部に対し1〜10質量部程度の範囲で用いることが望ましい。
【0025】
本発明においては、感熱記録層の白色度向上、画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒子径が10μm以下の微粒子顔料を使用することができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレ−、タルク、焼成クレ−、シリカ、珪藻土、合成珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。顔料の配合量は、発色濃度を低下させないため、感熱記録層の全固形分に対して40質量%以下が望ましい。
【0026】
本発明においては、種々の熱可融性物質を用いることができる。熱可融性物質としては、例えば、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ビスアミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド、ベヘン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類(または滑剤)、テレフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジブチルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル、イソフタル酸ジブチルエステル、1−ヒドロキシナフトエ酸フェニルエステル、蓚酸ジベンジルエステル、蓚酸ジ−p−メチルベンジルエステル、蓚酸ジ−p−クロロベンジルエステル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−フェノキシ−2−(4−メチルフェノキシ)エタン、炭酸ジフェニル、p−ベンジルビフェニル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノ−ル)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノ−ル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)等のヒンダ−ドフェノ−ル類、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾ−ル、及び2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン等の増感剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等がある。
【0027】
これら熱可融性物質は、一般に染料前駆体化合物100質量部に対して400質量部以下の割合で感熱記録層に含まれていることが好ましい。更に、感熱記録層用塗液の濡れ性を良くし、ハジキをなくすため、アセチレングリコール、ジアルキルスルホコハク酸塩等の濡れ性向上剤や顔料の分散剤、消泡剤、蛍光染料等を必要に応じて添加することができる。
【0028】
本発明で使用する支持体は、ポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料を加熱混練し、ダイから押し出し、縦方向に延伸したものの両面にポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料からなるフィルムを片面当たり1〜2層積層し、横方向に延伸して半透明化、或いは不透明化して製造される合成紙、及びポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂単独または混合物を加熱混練し、ダイから押し出し2軸延伸して得られたフィルムや、これらの樹脂に白色無機顔料を混合し、2軸延伸した不透明フィルムのほか、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、再生紙、塗工紙等のパルプ繊維から製造されたもの等が使用できる。パルプ繊維からなる支持体は画像の均一性を良くするため、予め下塗層として塗工層を設けた後、感熱記録層を塗工することが望ましい。この場合、吸油量の大きい、或いは見掛け比重の小さい無機または有機の顔料を下塗層に含有させることで高感度化することもできる。また、感熱記録層上に従来より公知の保護層を設け、サーマルヘッドに対するスティッキングや粕付着等を改善することもできる。
【0029】
感熱記録層の塗工量は、発色感度、発色濃度の点で一般に2〜15g/m2が好ましい。塗工方法はエアナイフ方式、メイヤーバー方式、ブレード方式、リバースロール方式、スリットダイ方式、マルチスライド方式、カーテン塗工方式等の従来から当業者で使用されている方式を利用することができる。また、感熱記録層の表面をスーパーカレンダー、グロスカレンダー、マシンカレンダー等により平滑化処理を行うことにより表面性を高め、記録濃度、感度を向上させることができる。
【0030】
本発明では、支持体の感熱記録層とは反対側の面には、粘着剤層を介して剥離紙を設ける剥離ラベル加工、加熱により粘着性を発現する接着剤層を設けるディレードタック加工等の所謂タック加工を施すこともできる。更にこの裏面を利用して磁気記録紙、熱転写用紙、インクジェット用紙、ゼログラフィ用紙、ノーカーボン用紙、静電記録紙としての機能を持たせ、表裏両面に記録することが可能な両面記録紙とすることもできる。勿論、両面感熱記録材料とすることもできる。本発明の感熱記録材料を光定着させる場合の光還元剤の活性化用の光源としては、希望する波長の光を発する種々の光源を用いることができ、例えば蛍光灯、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀灯、写真用フラッシュ、ストロボ等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0032】
実施例1
〔染料前駆体固体分散液の調製〕
O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイト40部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液20部、及び水40部からなる組成物を、ウルトラビスコミルにて平均粒子径が0.3μmとなるまで粉砕して染料前駆体固体分散液を得た。
【0033】
〔酸化剤分散液の調製〕
2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン40部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液20部、及び水40部からなる組成物をウルトラビスコミルにて平均粒子径が0.3μmとなるまで粉砕して酸化剤分散液を得た。
【0034】
〔酸性物質分散液の調製〕
3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛40部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液20部、及び水40部からなる組成物をウルトラビスコミルにて平均粒子径が0.3μmとなるまで粉砕して酸性物質分散液を得た。
【0035】
〔顔料分散液の調製〕
無定形シリカ(ミズカシルP527、吸油量190ml/100g、水沢化学工業(株)製)30部を、ポリアクリル酸ソーダ0.7%水溶液120部中に混合し、この混合物をカウレス分散機で分散した。
【0036】
[感熱記録材料の作成]
上記の染料前駆体固体分散液、酸化剤分散液、酸性物質分散液、顔料分散液、及び5%のポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNH−17、日本合成化学工業製)水溶液を、固形分比率が30:15:15:20:20となるように混合攪拌し、感熱記録層用塗液とした。この塗液をメイヤーバーを用いて、上質紙(坪量100g/m2)上に乾燥重量で3g/m2となるように塗工し、感熱記録材料を作製した。
【0037】
実施例2
実施例1の酸化剤分散液の調製において、酸化剤として2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンの代わりに、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0038】
実施例3
実施例1の酸化剤分散液の調製において、酸化剤として2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンの代わりに、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0039】
実施例4
実施例1の酸化剤分散液の調製において、酸化剤として2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンの代わりに、クロラニルを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0040】
実施例5
実施例1の感熱記録材料の作成において、酸性物質分散液を用いずに、染料前駆体固体分散液、酸化剤分散液、顔料分散液、及び5%のポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNH−17、日本合成化学工業製)水溶液を、固形分比率が30:15:35:20となるように混合攪拌し、感熱記録層用塗液とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0041】
実施例6
実施例1の染料前駆体固体分散液の調製において、染料前駆体化合物としてO,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトの代わりに、O,O’−ジ(1,1−ジメチルプロポキシカルボニル)インジゴホワイトを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0042】
実施例7
実施例1の染料前駆体固体分散液の調製において、染料前駆体化合物としてO,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトの代わりに、O,O’,N,N’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0043】
実施例8
実施例1の染料前駆体固体分散液の調製において、染料前駆体化合物としてO,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトの代わりに、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)チオインジゴホワイトを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0044】
実施例9
実施例1の酸性物質分散液の調製において、酸性物質として3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛の代わりに、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0045】
実施例10
実施例1の酸性物質分散液の調製において、酸性物質として3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛の代わりに、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0046】
比較例1
実施例5の感熱記録材料の作成において、酸化剤分散液を用いずに、染料前駆体固体分散液、顔料分散液、及び5%のポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNH−17、日本合成化学工業製)水溶液を、固形分比率が30:50:20となるように混合攪拌し、感熱記録層用塗液とした以外は、実施例5と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0047】
比較例2
実施例1の感熱記録材料の作成において、酸化剤分散液を用いずに、染料前駆体固体分散液、酸性物質分散液、顔料分散液、及び5%のポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールNH−17、日本合成化学工業製)水溶液を、固形分比率が30:15:35:20となるように混合攪拌し、感熱記録層用塗液とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0048】
上記の方法で作製された感熱記録材料について、以下の評価をおこない、結果を表1に示した。
【0049】
(発色性)
前記感熱記録材料を、サーマルヘッド(京セラ社製)を用いて印加電圧、パルス幅を調節し、30mJ/mm2のエネルギーで画像記録を行ない、発色部の濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型番:RD−914)にて測定した。
なお、発色性テストにおいては発色濃度1.00以上であれば問題のないレベルであり、1.20以上であれば極めて優れたレベルである。
【0050】
(耐熱湿性)
上記発色性を評価した画像記録後の感熱記録材料を60℃−90%RHの条件に100時間放置した後、発色部の濃度を測定し、その残存率(%);(耐熱湿性試験後の発色部の濃度/耐熱湿性試験前の発色部の濃度)×100を求めた。
【0051】
(耐光性)
上記発色性を評価した画像記録後の感熱記録材料を直射日光下に200時間放置した後、発色部の濃度を測定し、その残存率(%);(耐光性試験後の発色部の濃度/耐光性試験前の発色部の濃度)×100を求めた。
【0052】
(耐可塑剤性)
上記発色性を評価した画像記録後の感熱記録材料を塩化ビニルフィルムに重ね70℃の条件で200時間放置した後、発色部の濃度を測定し、その残存率(%);(耐可塑剤保存性試験後の発色部の濃度/耐可塑剤保存性試験前の発色部の濃度)×100を求めた。
【0053】
耐熱湿性、耐光性、耐可塑剤性での残存率が80%以上であれば問題のないレベルであり、90%以上であれば極めて優れたレベルである。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、加熱により呈色し得る無色乃至淡色の染料前駆体化合物を含有する感熱記録層を設けた感熱記録材料において、前記染料前駆体化合物として下記一般式(1)で表される染料前駆体化合物の少なくとも1種が含有され、さらに感熱記録層に酸化剤が含有されることを特徴とする感熱記録体。
【化1】

[一般式(1)中、X及びYは互いに独立して硫黄原子またはNR9を表すが、XとYはN−A−Nの形で結合していてもよい。ここで、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、COR10またはCOOR11を表し、Aは炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキレン基を表し、R10およびR11は互いに独立して炭素数1〜12のアルキル基;ベンジル基;ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を表す。RおよびR’は互いに独立して炭素数4〜12の第三級アルキル基を表す。また、R〜Rは互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ニトロ基、NR1213またはSR14を表す。ここで、R12及びR13は互いに独立して水素原子;炭素数1〜12のアルキル基;炭素数4〜12のシクロアルキル基;ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよいアルアルキル基;ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を表すが、R12とR13は隣接する窒素原子と共にピロリジノ基、ピペリジノ基またはヘキサメチレンイミノ基を形成してもよい。また、R14は炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7及びR7とR8は互いに独立してベンゼン環を形成していてもよい。]
【請求項2】
前記酸化剤として、有機酸化剤の少なくとも1種を含有する請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記酸化剤として、クロラニル、ブロマニル、1,8−ジクロロアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン、及び2−tert−ブチルアントラキノンから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記酸化剤として、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−1,4−ベンゾキノン、及び2−tert−ブチルアントラキノンから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項5】
前記感熱記録層中に、更に酸性物質を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項6】
酸性物質として、安息香酸亜鉛塩、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛塩、トリクロル安息香酸亜鉛塩、テレフタル酸亜鉛塩、サリチル酸亜鉛塩、3−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩、3−イソプロピルサリチル酸亜鉛塩、3−ベンジルサリチル酸亜鉛塩、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩、及び3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の感熱記録材料
【請求項7】
染料前駆体化合物として、O,O’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイト、及びO,O’−ジ(1,1−ジメチルプロポキシカルボニル)インジゴホワイトから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の感熱記録材料。