説明

慢性心不全および/または上昇したコレステロールレベルを処置するための方法

本発明は、うっ血性心不全および/または上昇したコレステロールの血液レベルを有する患者のための処置に関する。治療的有効量の3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸(TRIPROP)または3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸(TETRAPROP)を投与することによってうっ血性心不全を有する患者を処置するための方法が記載される。治療的有効量のTRIPROPまたはTETRAPROPを投与することによって、患者のコレステロールの血液レベルを低下させるための方法もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うっ血性心不全および/または上昇したコレステロールの血液レベルを有する患者のための処置に関する。
【背景技術】
【0002】
うっ血性心不全は、主要な健康上の問題であり続けており、米国において、約460万の人々が罹患している。そしてその有病率は、今後数十年にわたって増加すると予測される。臨床上の問題としての心不全の規模により、新たな処置戦略を開発する必要性が重視されてきた。
【0003】
浮上した一つのアプローチは、甲状腺ホルモンの使用である。甲状腺ホルモンは、固有の生理学的作用および生化学的作用を有し、これらの作用は、甲状腺ホルモンを、心不全の処置のための新規かつ潜在的に有用な薬剤とする。甲状腺ホルモンは、転写レベルで、心筋のカルシウム循環タンパク質の含量に作用して、筋小胞体によるカルシウム取り込みを刺激することを示した。さらに、甲状腺ホルモンは、心臓のミオシン重鎖(MHC)アイソフォーム発現の相互転換を引き起こし、これは高活性のVアイソフォームの発現を増加させ、低活性のV形態を減少させる。これらの生化学的変化は、甲状腺ホルモンの心室圧の発生および緩和の速度を増加させる能力の基礎をなし得る。
【0004】
甲状腺ホルモンとしては、サイロキシンのL−形態(3,5,3’5’−L−サイロニン;本明細書において、以後サイロキシンまたはTと呼ぶ)およびトリヨードサイロニンのL−形態(3’,3,5−L−トリヨードサイロニン(triiodothyrone);本明細書において、以後トリヨードサイロニンまたはTと呼ぶ)が挙げられ得る。3’,5’,3−L−トリヨードサイロニン(本明細書において、以後リバースTまたはrTと呼ぶ)は、Tの正常な代謝産物である。Tは、甲状腺において合成され、そして血漿中に見出されるホルモンの循環形態である。少量のTが甲状腺によって合成されるが、大部分は、末梢組織において酵素5’−モノデヨージナーゼによって、サイロキシンの代謝から形成される。甲状腺ホルモンの作用の分子的基礎は、クロマチン結合核レセプターへのTの結合を通じて媒介されると考えられる。甲状腺ホルモンレセプターには、2つの主なサブタイプ、TRαおよびTRβが存在し、これらは、2つの異なる遺伝子の産物である。これらの遺伝子は、c−erbAプロトオンコジーンファミリーの一員であり、集合的にステロイド−甲状腺ホルモンスーパーファミリーとして公知の、多数のステロイドホルモンレセプターおよびペプチドホルモンレセプターに関する。TRαサブタイプおよびTRβサブタイプは、種々の組織で差次的に発現される。
【0005】
サイロキシン(米国特許第2,803,654号に記載されるような方法によって合成される)は、現在臨床で使用する主な甲状腺ホルモンである。これは、主に、その6〜7日という長い半減期のためである。トリヨードサイロニン(血漿タンパク質により弱く結合し、より迅速に作用を開始する)は、静脈内投与に利用可能である。しかし、Tは、2日以下という比較的短い半減期を有する。
【0006】
天然のホルモンの作用を模倣する甲状腺ホルモンアナログを合成するために、多数の研究が行われてきた。これらの努力のほとんどの目的は、有害な心臓作用なしに血漿コレステロールを低下させる甲状腺模倣物(thyromimetic)を開発することであった。一連のサイロキシンアナログおよび合成法は、米国特許第3,109,023号に記載される。
【0007】
甲状腺ホルモンレセプターβサブタイプに高度に選択的な甲状腺ホルモンアゴニストは、米国特許第5,883,294号に記載される。米国特許第5,284,971号は、甲状腺模倣物の一つの分類を記載する。これは、ジフェニル核中のスルホニル架橋の際立った特徴を有する。
【0008】
より近年の発展は、心血管系障害の処置のための甲状腺ホルモンの使用であった。甲状腺ホルモンの投与による突発性(急性)心血管系障害を有する患者の処置のための方法は、米国特許第5,158,978号に記載される。この方法は、静脈内への注入、肺循環もしくは直接的に心臓への中心静脈カテーテルによる、心停止後のTおよびTの投与を教示する。
【0009】
進行型うっ血性不全を有する患者へのTの短期静脈内投与は、心拍出の改善および動脈の血管抵抗の減少を示した。L−サイロキシンの経口投与もまた、2週間および3ヶ月の間与えられた場合、特発性拡張型心筋症を有する患者における心臓の性能および運動能力の改善を示した。これらの研究における患者の数は少ないが、その結果は、一般的に好適であり、甲状腺ホルモンまたは甲状腺ホルモンアナログによる心不全の処置の安全性および潜在的な利益に対するさらなる調査の根拠を確立した。
【0010】
心臓におけるその周知の変時性作用および変力性作用に加えて、甲状腺ホルモンは、動脈抵抗、静脈抵抗、および静脈コンプライアンスを減少させる。これらの変化の正味の効果は、心拍出を、動脈圧よりも増加させて、計算される動静脈抵抗を減少させることである。
【0011】
甲状腺ホルモンの潜在的な有害効果(例えば、代謝刺激および頻拍)のため、望ましくない副作用のより少ない甲状腺ホルモンアナログが要求される。本発明者らの上記に同定した同時継続中の出願番号09/774,994において、本発明者らは、うっ血性心不全を有する患者を処置するための3,5−ジヨードサイロプロピオン酸(DITPA)(甲状腺ホルモンアナログ)の使用を記載する。甲状腺ホルモンと同様に、DITPAは、c−erbAプロトオンコジーンファミリーの、核のTレセプターに結合する。DITPAは、単独またはアンギオテンシンI変換酵素インヒビターと組み合わせて投与された場合、心不全の梗塞後実験モデルにおいて、およそ半分の変時性効果およびL−サイロキシンよりも低い代謝刺激で、左心室(LV)の性能を改善することを示した。
【0012】
上記の出願において報告したように、心不全の実験モデルにおいて使用される場合、DITPAは、甲状腺ホルモンと同様に作用し、心臓および末梢循環の両方に影響を及ぼす。心拍による収縮性の正常な増加の損失は、正の力−頻度関係と称され、ヒト心筋不全および心不全の動物モデルの両方において報告されている。DITPA投与は、梗塞性のウサギ心臓由来の単一の筋細胞において、収縮−頻度関係の平坦化を防止する。DITPAは、ウサギにおいて、筋細胞機能を改善し、筋小胞体(SR)におけるカルシウム輸送を増強し、そして梗塞後心不全に関連するSRタンパク質のダウンレギュレーションを防止する。正常な霊長類では、DITPAは、甲状腺ホルモンと同様の様式で、インビボでの力−頻度関係および緩和−頻度関係を増強する。DITPAは、心臓の質量を大きく増加させることも心室の大きさに有害な影響を及ぼすこともなく、これらの血流力学的変化を引き起し得る。形態計測分析は、DITPAで処置された梗塞後のラットにおいて、梗塞の周りの境界領域で毛細管増殖の増加があることを示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
うっ血性心不全を有する患者を処置するためのDITPAの有用性を示してきたが、本発明者らは、同様の有用性を有する他のDITPA様化合物の同定に着手した。本発明者らは、さらに二つのヨウ素化プロピオン酸誘導体を見出した。すなわち、トリヨード誘導体3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸(triiodothyropropionic acid)(または「TRIPROP」)、およびテトラヨード誘導体3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸(tetraiodothyropropionic acid)(または「TETRAPROP」)が、実験的研究において甲状腺模倣効果を有すると同定され、そして基礎代謝率(BMR)を上昇させることなく血清コレステロールを減少させることにおいて、臨床的に有効であった。これらの特性により、これらの誘導体は、うっ血性心不全を処置する能力に関してDITPAと同様である。
【0014】
まとめると、TRIPROPおよびTETRAPROPは、TomitaおよびLardyの教示に従って、以下のように、ジヨードサイロプロピオン酸(DITPA)のヨウ素化によって合成され得る。TRIPROPの場合、150mlのメタノールおよび70mlの濃縮水性水酸化アンモニウム中の、150mgのDITPAの溶液を、4.3mlの1Nヨウ素によって、氷浴(0℃〜2℃)中で攪拌しながらヨウ素化した。ヨウ素の色は、約15分以内に消えた。無色の反応混合液を減圧中で蒸発させた後、酢酸で酸性化した水で残留物を洗浄し、無水エタノールから再結晶させた;m.p.200℃、収量50mg。
【0015】
TETRAPROPは、化学量論的に過剰のヨウ素を用いて同様に調製され得る。DITPAを、Wawzonekら、(1950)の方法によって合成した。3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンズアルデヒドを、ピリジンおよびピペリジンの存在下でマロン酸と縮合することによって、3,5ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)フェニルアクリル酸を調製した。次いで、DITPAを、無水酢酸中でヨウ化水素酸および赤燐によって処理することにより、3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)フェニルアクリル酸から調製した。TETRAPROPおよびTRIPROPはまた、Matsuuraの教示に従って、エチル−3−(3,5−ジヨード−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとジアニソールヨードニウムブロミドとを反応させて、酸生成物、DITPAを得ることによって調製され得る。次いで、DITPAが、上記に報告したようにTomitaおよびLardyによって記載されるように、ヨウ素化され得る。
【0016】
【化1】

次いで、ヒト患者または動物のいずれかへの投与の前に、TRIPROPまたはTETRAPROPは、場合によって、薬学的に受容可能なキャリアに分散または溶解され、そして所望される場合、安定剤、賦形剤、可溶化剤、抗酸化剤、鎮痛剤、等張化剤およびそれらの組み合わせより選択される一種以上の成分とさらに混合される。
【0017】
本発明のTRIPROPおよびTETRAPROPは、液体調製物(例えば、静脈内、皮下もしくは筋肉内への非経口投与用、または経鼻投与用もしくは経口投与用)、経口投与用の固体調製物(例えば、丸剤、錠剤、散剤もしくはカプセル)、埋め込み調製物、あるいは直腸投与のための坐剤として処方され得る。例えば、注入用の非経口投与のための処方物は、当業者に公知の従来法によって(例えば、滅菌水、緩衝溶液、等張塩化ナトリウム溶液などのような適切な溶剤またはキャリアにTRIPROPまたはTETRAPROPを溶解することによって)調製され得、そして溶液、エマルジョンまたは懸濁液として処方され得る。直腸投与のためには、TRIPROPまたはTETRAPROPの単位投与は、ココアバターまたはグリセリドと一緒に処方され得る。
【0018】
TRIPROPまたはTETRAPROPはまた、吸入(inhalation)または吸入(insufflation)の形態として投与され得る。吸入(inhalation)または吸入(insufflation)による投与のために、TRIPROPまたはTETRAPROPの溶液は、加圧されたパックまたは噴霧器から、適切な高圧ガス(例えば、二酸化炭素または他の適切なガス)の使用によって、エアロゾルスプレー提示形態で都合よく送達される。さらに、TRIPROPまたはTETRAPROPは、当業者に周知の他の従来の薬物送達システムを用いて投与され得る。薬物送達システムのための調製物の例は、ミクロスフェア(ナノ粒子、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ビーズ、リポソーム、複数のエマルジョン等)などである。
【0019】
安定剤は、処方物に添加され得、そして安定剤の例としては、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。本発明の処方物は、必要な添加剤(例えば、賦形剤、安定剤、抗酸化剤、鎮痛剤、等張化剤など)を含み得る。液体処方物は、凍結状態で、または凍結乾燥のようなプロセスによる水の除去の後に、保存され得る。凍結乾燥調製物は、注入などのために使用前に純粋に溶解されることによって使用される。
【0020】
うっ血性心不全を処置するため、本発明に従うTRIPROPは、70kgの人に対して、0.014mg/kgと0.056mg/kgとの間の用量で、または1〜4mg/日の用量で投与され得る。TETRAPROPの用量は、70kgの人に対して、0.171mg/kgまたは12mg/日で投与され得る。
【0021】
TRIPROPまたはTETRAPROPの投与についての有効な投薬量およびスケジュールは、血清サイロトロピンレベルを測定すること、ならびに甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症の徴候および症状をモニタリングすることによって、経験的に決定され得る。調製物の投与経路は、調製物の形態に依存して変動し得る。例えば、非経口調製物は、静脈内、動脈内、皮下または筋肉内に投与され得る。
【0022】
さらに、TRIPROPまたはTETRAPROPはまた、経皮投与または埋め込み投与のために処方され得る。このような長期作用性埋め込み投与としては、皮下埋め込みまたは筋肉内埋め込みが挙げられる。したがって、例えば、TRIPROPまたはTETRAPROPは、適切な高分子材料もしくは疎水性材料(例えば、受容可能な油中のエマルジョンなど)と一緒に処方され得るか、またはイオン交換樹脂またはやや溶けにくい誘導体(例えば、やや溶けにくい塩など)などと一緒に処方され得る。
【0023】
適切な経皮送達システムとしては、TRIPROPまたはTETRAPROPが組み込まれたキャリア(例えば、液体、ゲル、固形基質)、または圧力感受性添加剤が挙げられる。一実施形態では、裏装(backing)材料は存在しない。代替的実施形態では、裏装は、キャリアと組み合わせて使用され得る。この後者の実施形態では、皮膚または粘膜に物理的に接触しないキャリアの部分は、裏装に覆われ得、これは、キャリアおよびキャリアに含まれる成分(送達されるTRIPROPまたはTETRAPROPを含む)を、環境から保護するように働く。このような使用に適切な裏装としては、金属箔、金属被膜加工されたプラスチックフィルム、および単層および多層の高分子フィルムが挙げられる。
【0024】
TRIPROPまたはTETRAPROPの経皮送達のため、TRIPROPまたはTETRAPROPは、溶媒系に溶解される。適切な溶媒系としては、水、および必要に応じて一種以上の低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコールなど)が挙げられる。好ましくは、このようなアルコールは、2個と約6個との間の炭素含量を有する。この溶媒系としては、さらに、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなど)が挙げられ得る。この溶媒系としてはまた、一種以上のジアルキルスルホキシドおよび/もしくはジアルキルスルホン、ならびに/または一種以上のケトン、エーテルおよびエステル(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、およびアルキルアセテート、アルキルプロピオネート、アルキルブチレートなど)が挙げられ得る。
【0025】
TRIPROPおよびTETRAPROPの溶液が好ましいが、エマルジョンが使用され得る。このようなエマルジョンは、水性(この水性エマルジョンにおいては、水相が主であり、かつ連続層である)、または非水性(この非水性エマルジョンにおいては、非水溶性溶媒系が連続層を含む)であり得る。
【0026】
本発明者らの親出願に記載のDITPAによるように、TRIPROPまたはTETRAPROPの経皮送達は、アデノシン3’,5’−環状一リン酸のインビボ刺激が可能な物質を含むことがなくとも、そしてグアノシン3’,5’−環状一リン酸のインビボ刺激が可能な物質を含むことがなくとも、慢性心不全の処置および/またはLDL−コレステロールレベルの低下に有効である。所望される場合、Coleus Forskholiの抽出物のような物質が、必要に応じて、この経皮送達TRIPROP処方物および経皮送達TETRAPROP処方物に、約0.0001重量%〜約1.0重量%の間のレベルで含まれ得る。
【0027】
この経皮送達TRIPROP処方物および経皮送達TETRAPROP処方物はまた、動物(ヒトを含む)の皮膚または粘膜を通じて医薬の送達を促進することが公知の薬剤を含有し得る。これらの薬剤は、ときには、浸透増強剤、促進剤、アジュバント、および吸収促進剤として公知であり、そして本明細書において、集合的に「増強剤」と称される。増強剤のいくつかの例としては、以下が挙げられる:多価アルコール(例えば、ジプロピレングリコール);油(例えば、オリーブオイル、スクアレンおよびラノリン);ポリエチレングリコールエーテルおよび脂肪酸エーテル(例えば、セチルエーテルおよびオレイルエーテル);脂肪酸エステル(例えば、イソプロピルミリスタート);脂肪酸アルコール(例えば、オレイルアルコール);尿素および尿素誘導体(例えば、アラントイン);極性溶媒(例えば、ジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルアセトニド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、デシルメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミド);サリチル酸;ベンジルニコチネート;胆汁酸塩;高分子量脂肪族界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸塩)。他の薬剤としては、以下が挙げられる:オレイン酸およびリノール酸、アスコルビン酸、パンテノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、トコフェロールアセテート、トコフェロールリノレアート、プロピルオレアート、イソプロピルパルミテート、オレアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレリル(olelyl)エーテルおよびポリオキシエチレンオレイルエーテル。この実施形態において、これらの皮膚浸透増強剤は、約0.01重量%〜約5重量%で存在する。
【0028】
本発明の経皮TRIPROP処方物送達システムおよび経皮TETRAPROP処方物送達システムは、適切な裏装に適切なキャリアを適用するための従来の方法を用いて調製され得る。例えば、接着デバイス中のTRIPROPまたはTETRAPROPは、以下によって調製され得る:TRIPROPもしくはTETRAPROPおよび他の所望される成分を含有する溶媒系中で接着剤の溶液を混合することによって被覆製剤を調製して、均一な溶液または懸濁液を形成する工程;この製剤を、裏装または放出ライナーのような基材に適用する工程;周知のナイフもしくはバーもしくは押出しダイ被覆法を用いる工程;この被覆された基材を乾燥させて、溶媒を除去する工程;ならびに、この露出表面を放出ライナーまたは裏装に積層する工程。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は、本発明に従う薬学的組成物を説明する。
【0030】
(実施例1)
DITPAのヨウ素化に関して上記で報告したTomitaおよびLardyによって記載された手順に従って、以下のように、TRIPROPの溶液を調製する。150mlのメタノールおよび70mlの濃縮水性水酸化アンモニウム中の150mgのDITPAの溶液を、4.3mlの1Nヨウ素によって、氷浴(0℃〜2℃)中で攪拌しながらヨウ素化した。ヨウ素の色は、約15分以内に消えた。無色の反応混合物を減圧中で蒸発させた後、残留物を酢酸で酸性化した水で洗浄し、無水エタノールから再結晶させた;m.p.200℃、収量50mg。
【0031】
得られたTRIPROPの溶液をラクトースと一緒に混合し、カプセル当たり1〜2mgの活性成分を含有するゼラチンカプセルに充填した。
【0032】
(実施例2)
実施例1のようにTRIPROPを調製した。しかし、得られた溶液を凍結乾燥し、そしてカプセル当たり1〜2mgの活性成分を含有する個々のアンプルに充填した。
【0033】
(実施例3)
実施例1のようにTRIPROPを調製した。活性化合物を単離し、そしてゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、滑石および安息香酸ナトリウムにブレンドし、TRIPROPの吸収を緩徐化させる蝋様の基質を形成した。得られたブレンドを分割し、そしてゼラチンカプセルにロードした。各カプセルは、カプセル当たり1〜4mgの活性成分を含有した。
【0034】
(実施例4)
実施例1のようにTRIPROPを調製した。活性化合物を単離し、メタノール中に可溶化した。得られたブレンドを多孔性パッチ上で被覆し(各パッチは、パッチ当たり1〜4mgの活性成分を含有した)、そして乾燥させた。
【0035】
(実施例5〜8)
TomitaおよびLardyまたはMatsuuraに記載の方法のいずれかによって調製したTETRAPROPを用いて、実施例1〜4を繰り返した。
【0036】
本発明は、本明細書において、それらの特定の好ましい実施形態に従って詳細に記載されたが、それらの実施形態における多くの改変および変更が当業者によって達成され得る。したがって、全てのこのような改変および変更が、本発明の真の精神および範囲に含まれるように、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
うっ血性心不全を有する患者の処置のための方法であって、該患者に、治療的有効量の3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、液体調製物、固体調製物、カプセル調製物、および埋め込み調製物からなる群より選択される処方物として投与される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記処方物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記処方物が、安定剤、賦形剤、可溶化剤、抗酸化剤、鎮痛剤、および等張化剤のうちの少なくとも一つをさらに含有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、非経口注入によって投与される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、非経口静脈内注入によって投与される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、経口投与される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、前記患者の肺動脈系に直接的に投与される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、経皮投与される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、埋め込みによって投与される、方法。
【請求項11】
患者のコレステロールの血液レベルを低下させるための方法であって、該患者に、治療的有効量の3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸を投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、液体調製物、固体調製物、カプセル調製物、および埋め込み調製物からなる群より選択される処方物として投与される、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記処方物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記処方物が、安定剤、賦形剤、可溶化剤、抗酸化剤、鎮痛剤、および等張化剤のうちの少なくとも一つをさらに含有する、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、非経口注入によって投与される、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、非経口静脈内注入によって投与される、方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、経口投与される、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、前記患者の肺動脈系に直接的に投与される、方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、経皮投与される、方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法であって、前記3’,3,5−トリヨードサイロプロピオン酸または前記3,5,3’,5’−テトラヨードサイロプロピオン酸が、埋め込みによって投与される、方法。

【公表番号】特表2006−514665(P2006−514665A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568567(P2004−568567)
【出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/033333
【国際公開番号】WO2004/073694
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505303244)ザ アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (1)
【Fターム(参考)】