説明

慢性腎臓病の遺伝的リスク検出法

【課題】 慢性腎臓病の遺伝的リスクを判断するための一材料を得るための遺伝子検出法等を提供すること。
【解決手段】 4,587人の日本人について、176個の候補遺伝子に関し222個の遺伝子多型をPCR、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ、およびサスペンション・アレイ・テクノロジー(SAT)を用いて検出し、慢性腎臓病に有意に関連する遺伝子多型を検出した。本発明のリスク検出法は、慢性腎臓病の発症予測およびその予防に有用であることが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性腎臓病の遺伝的リスク検出法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
慢性腎臓病(chronic kidney disease(CKD))は、糸球体腎炎に加え、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常(高脂血症)、肥満、喫煙などが危険因子であり、生活習慣病の一つとなっている。日本の高齢者人口比率は、今後20年、増え続けるといわれており、加齢と共に衰える腎機能により、慢性腎臓病および末期腎不全(end-stage renal disease(ESRD))の発生率は増え続けることが予想される(非特許文献1)。慢性腎臓病は、末期腎不全のみならず、心血管障害の危険因子であり(非特許文献2-3)、心筋梗塞、心不全、脳梗塞および死亡の原因になっている。したがって、慢性腎臓病の危険因子を特定することは、慢性腎臓病や末期腎不全の発症を予防し、透析患者数を減少させるのみならず、心血管障害を減少させるために重要である(非特許文献4)。
連鎖解析(非特許文献5ー6)および候補遺伝子関連解析(非特許文献7−9)によって、慢性腎臓病との関連が示唆されるいくつかの染色体領域および遺伝子が特定されている。しかしながら、慢性腎臓病の遺伝要因については、未だ十分に解明されていない。更に、人種間におけるライフスタイルや環境要因ならびに遺伝要因の違いを考慮し、各人種において、慢性腎臓病に関連する遺伝子多型を検討することが重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、慢性腎臓病について、遺伝的リスクを判断するための一材料を得るための遺伝子検出法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、慢性腎臓病に関し、4,587人の日本人について、176遺伝子中の222カ所の遺伝子多型に関する大規模研究である。
我々は、慢性腎臓病と遺伝子多型との関係を調査した。本研究の目的は、慢性腎臓病に関与する遺伝子多型を同定し、この知見に基づいて、ある者に対して慢性腎臓病を予防するための有用な情報を与えることである。
【0005】
上記課題を解決するための慢性腎臓病のリスク検出法は、UCP3の−35位C/T、PECAM1の36222位A/G、HMOX1の98位G/C、APOEの−203位T/G、AGTR1の43651位G/A、PIK3R1の75686位G/A、TNFRSF13Bの23375位A/C、ABCA1の−14位C/T、IRS1の3931位G/A、ROS1の124785位G/A、BCHEの63973位G/A、ANXA5の431位C/T、MMP1の−1602位2G/1G、PALLDの259175位A/G、KCNJ11の634位A/G、CXCL16の4660位C/T、FOXC2の−512位C/T、MMP3の722位A/G、COMTの21962位G/A、PDE4Dの919475位TAAA/−、GCKの−30位G/A、APOA5の−1123位C/Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、年齢、性別とを評価因子とし、各評価因子より発症リスク値を推算し、この発症リスク値を平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群に分け、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記22個には限られず、これら22個の多型のうちの任意の1個−21個、或いは本明細書中で示される上記22個の他の多型を含む23個以上で実施することもできる。
【0006】
本明細書中において、多型の記載方法は、次の通りである。原則として、各遺伝子について、「多型が生じている位置(位)、データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)/多型塩基」と記載した。例えば、「UCP3の−35位C/T」は、UCP3の遺伝子について、5’上流35位のCがTとなっている多型を意味している。各遺伝子の多型が生じている位置の情報は、NCBI遺伝子データベースの参照配列(contig reference)に基づいた。なお、PDE4Dの919475位TAAA/−多型、およびMMP3の−1610位5A/6A多型については、データベースの遺伝子方向からは、TTTA/−多型、および5T/6T多型との表記となるが、多くの論文で逆方向より読んだTAAA/−多型、および5A/6A多型として記載されているため、本明細書においても上記の通り記載した。
【0007】
一般に多型は、集団(例えば、日本人集団、西洋人集団など)が異なると、その種類・頻度が異なることが知られている。このため、日本人以外の集団において、慢性腎臓病との関係が指摘されている多型であっても、必ずしも日本人集団においてそのような関連が認められるわけではない。このため、従来の報告については、国または疾患が異なる場合には、必ずしも日本人における多型および慢性腎臓病との関連が裏付けられるわけではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、慢性腎臓病について、遺伝的リスクおよび発症リスクを予測するための検出法等が提供される。この発明を用いることにより、慢性腎臓病に対する予防が可能となり、透析患者数の減少、慢性腎臓病が危険因子となる心血管障害の減少、さらに、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・寝たきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0010】
<試験方法>
研究対象
研究対象は、2つの集団からなる4,587名(男性2,532名、女性2,055名)であった。1つは、研究参加施設(岐阜県総合医療センター、岐阜県立多治見病院、弘前大学病院、黎明郷リハビリテーション病院、弘前脳卒中センター)に、2002年10月から2008年3月までに、様々な症状または毎年の健康診断のために来院した者であった。また、もう1つの集団は、群馬県と東京都における老化・老年病の疫学研究に参加した高齢者であった。
研究プロトコールはヘルシンキ宣言に従い、三重大学医学部、弘前大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、東京都老人総合研究、および参加病院の倫理委員会によって承認された。各参加者に対しては書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0011】
慢性腎臓病は、IgA腎症、糖尿病性腎症、腎硬化症など原疾患に関わらず、微量アルブミン尿を含むたんぱく尿などの尿異常、片腎や多発性嚢胞腎などの画像異常、血液、病理で腎障害の存在を示す所見がある、または、推算糸球体濾過量(eGFR(estimated glomerular filtration rate))数値で、中等度以上の腎機能低下(eGFR<60mL/min/1.73m)が3ケ月以上持続する場合に診断される。また、NKF−KDOQITM(National Kidney Foundation-Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)では、eGFR値が60mL/min/1.73m未満で慢性腎臓病と診断することを提唱している(非特許文献4)。
【0012】
慢性腎臓病の診断基準となるeGFRは、日本腎臓学会が提唱した、下記の改訂版MDRD(the Modification of Diet in Renal Disease)式により血清クレアチニン値より推算した。
eGFR(mL/min/1.73m
=194×[年齢]−0.287×[血清クレアチニン値 (mg/dL)]−1.094
×[0.739 女性の場合].
【0013】
eGFR値と心血管障害や入院必要性との関連は、eGFR値が60mL/min/1.73m未満で増大し、45mL/min/1.73m以下ではその危険性が顕著となる(非特許文献10)。さらに、日本人では、70歳以下でeGFR値が50mL/min/1.73m未満になると、その後のeGFR値の低下率が増大するため、予後が悪いことが明らかになっている(非特許文献11)。
したがって、本研究では、50mL/min/1.73m未満を慢性腎臓病の診断基準とし、714名(男性430名、女性284名)を慢性腎臓病群として解析した。また、3,873名(男性2,102名、女性1,771名)のコントロール群は、eGFR値が60mL/min/1.73m以上の者とした。ただし、慢性腎臓病群、コントロール群共に、高血圧(最大血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上の者、或いは降圧剤を服用している者)、高脂血症(血清総コレステロール値が5.72mmol/L以上、または脂質降下薬を服用している者)、糖尿病(空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはヘモグロビンAlcが6.5%以上の者、或いは糖尿病治療薬を服用している者)に罹患している者を含む。
【0014】
多型の選択
公開データベースの使用、および本発明者の鋭意検討により、176個の候補遺伝子を選択した。本発明者は、従来の知見およびデータベースに基づき、これら176個の遺伝子について、222個の多型を選択した。これらの多型の多くは、プロモーター領域、エクソン、イントロンのスプライシングの供与部位或いは受容部位に多く位置しており、多型の結果として、コードされたタンパク質の機能または発現に変化を与える可能性があるものであった。これら222個の多型は、下記表1−表6に示した。表は、左欄から順に、座位(Locus)、遺伝子名(Gene)、簡易記載(Symbol)、多型(Polymorphism)、多型データベース登録番号(dbSNP rs No.)を示している。なお、多型データベース登録番号が無い場合には、NCBI遺伝子バンクに登録されている番号およびその登録配列での多型の位置を示した。また、この表中での多型の表記に関しては、本研究での遺伝子多型検出および解析の便宜上、各対立遺伝子をアリル1,アリル2と設定し、「アリル1の塩基配列/アリル2の塩基配列」と記載した。このアリル1,アリル2への振り分けは、必ずしもデータベースの参照配列の塩基配列をアリル1としたものではなく、候補遺伝子を選択する際の情報源に基づいた。よって、多型データベース登録のSNP表記が、例えばA/Gのものでも、情報源での記載に基づき、A/G、G/A、T/C、C/Tのいずれかに設定している。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

【0019】
【表5】

【0020】
【表6】

【0021】
遺伝子多型の検出方法
7mLの静脈血を50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含むチューブに採取し、ゲノムDNAをキット(ゲノミックス社製)によって分離した。222個の多型の遺伝子型は、PCRと配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをサスペンジョン・アレイ・テクノロジー(SAT:Luminex 100)と組み合わせて使用する方法によって決定した(G&Gサイエンス株式会社)。プライマー、プローブの配列は、下表7に示した。表7は左から順に、遺伝子(Gene Symbol)、多型(Polymorphism)、検出アリル(allele 1、allele 2)、センスプライマー(Sense primer)、アンチセンスプライマー(Anti-sense primer)、プローブ1(Probe 1)、プローブ2(Probe 2)を示した。遺伝子多型検出の詳細な方法については、既報のもの(非特許文献12)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、慢性腎臓病との関連が認められなかった多型を検出するための条件については記載を省略した。
【0022】
【表7】

【0023】
PCR−SSOP−Luminex法
方法の詳細については、非特許文献12に記載の通りである。以下には、この方法の概要について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面には、特異的な塩基配列を認識するプローブが結合されている。各ビーズには、一種類のプローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との割合を変化させることにより、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。複数種類のプローブを備えたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類のプローブのみ)を適当な割合で混合し、100ビーズ/μLとなるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
【0024】
図2には、PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示した。
<増幅反応(Amplification)>
目的とするDNAを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチンでラベルしたプライマーを用いた。1.5mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH8.3)、2%DMSO、0.2mM dNTPs、及び0.1μM−10μMプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(50U/mL)と50ng−100ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
【0025】
<ハイブリダイゼーション(Hybridization)>
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(3.75M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
【0026】
<ストレプトアビジン−フィコエリスリン反応(SA−PE Reaction)>
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリダイゼーション反応の後、各ウエルに100μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
【0027】
<測定(Measurement)>
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを判定した。測定は2種類のレーザを使用して行い、ビーズの種類は635nmレーザにより同定し、PE蛍光は532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)−(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
【0028】
統計解析
臨床データは、慢性腎臓病の患者群とコントロール群との間で、対応のないスチューデントt検定により比較した。カテゴリーデータは、カイ二乗検定によって比較した。対立遺伝子頻度は遺伝子カウント法によって概算し、ハーディ・ワインベルク平衡にあてはまるかどうかを判断するためにカイ二乗検定を行った(X染色体上の遺伝子の場合は、女性の遺伝子型分布で検定した)。遺伝子型分布は、2つの群から構成される遺伝モデルを用い慢性腎臓病の患者群とコントロール群との間でカイ二乗検定(2x2)によって比較した。遺伝モデルは、優性モデル(dominant)が「アリル2のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」対「アリル1のホモ接合体」(22+12対11)、劣性モデル(recessive)が「アリル2のホモ接合体」対「アリル1のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」(22対11+12)である。各遺伝子型は、優性、劣性遺伝モデルに従って解析し、危険率(p値)を計算した。
【0029】
カイ二乗検定でp値が5%未満(p<0.05)で慢性腎臓病と関連した多型の遺伝モデルについては、慢性腎臓病の発症に関連する他の要因(交絡因子)の影響を含め検討するため、遺伝子モデル(優性モデルは、1=「アリル2のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」、0=「アリル1のホモ接合体」、劣性モデルは1=「アリル2のホモ接合体」、0=「アリル1のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」)と交絡因子(年齢(age:連続値)、性別(sex:1=男性、0=女性))を、ステップワイズ変数増加法によるロジスティック回帰分析により解析した。このとき、慢性腎臓病(1=疾患群、0=コントロール群)を従属変数とし、各遺伝子型および交絡因子を独立変数とした。同じ多型で優性モデル(22+12対11)と劣性モデル(22対11+12)の両者のp値が5%未満であった場合は、低いp値の遺伝子型モデルを採用した。対象の選択基準は組み入れ規準(entering significance level)を0.15とし、除外規準(removing significance level)を0.2とした。統計的有意性は、両側検定によって行った。
【0030】
<試験結果>
4,587名の研究対象に関する背景データを表8に示した。表には、左欄より順に、特徴(Characteristic)、疾患群(CKD)、および対照群(Controls)を示している。また、特徴欄は、上より順に、症例数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(男性/女性)(Sex(male/female))を示している。年齢(Age)データは、平均±SDで示した。
【0031】
【表8】

【0032】
検査した各遺伝子型について、コントロール群の遺伝子型を遺伝子カウント法によって概算し、カイ二乗検定をしたところ、ハーディ・ワインベルク平衡の法則にあてはまっていた。
【0033】
前記対象集団において検査した遺伝子多型の、慢性腎臓病のリスク予測因子としての有意性を確認するために、遺伝子多型を優性、劣性モデルとしてカイ二乗検定により評価し、さらに年齢、性別を含むステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った。
【0034】
表9には、対象集団において検査した遺伝子多型を優性、劣性モデルとしてカイ二乗検定により評価し、危険率5%未満(p<0.05)であった遺伝子多型モデルを示した。表には、左欄より順に、遺伝子表記(Gene Symbol)、多型(Polymorphism)、SNPのデータベース番号(dbSNP rs No.)、遺伝子モデル(dominant/ recessive)、その遺伝子モデルの多型(Polymorphism)、その多型のCKD群とコントロール群における症例数、および群における比率(CKD(%)、control(%))、p値(p-value)を示した。
【0035】
【表9】

【0036】
カイ二乗検定で出現頻度が危険率5%未満(p<0.05)であった遺伝子多型を、他の背景因子(年齢、性別)とともに、独立変数の交絡因子として、ステップワイズ変数増加法でロジスティック回帰解析を実施した結果を表10に示した。これら交絡因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により、総合的な慢性腎臓病に関するリスクを予測できることが分かった。また、解析によって得られたロジスティック回帰モデルにより、リスク値の推定が可能となる。表には、左欄より順に、因子(Variable)、p値(p-value)、回帰モデルの偏回帰係数(β)、オッズ比(Odds-ratio)、オッズ比の95%信頼区間(OR-95%CI)を示した。また、この解析で得られた回帰モデル式の定数は、−6.19991であった。
【0037】
【表10】

【0038】
このステップワイズ変数増加法によるロジスティック回帰解析の結果、遺伝因子としては、UCP3、PECAM1、HMOX1、APOE、AGTR1、PIK3R1、TNFRSF13B、ABCA1、IRS1、ROS1、BCHE、ANXA5、MMP1、PALLD、KCNJ11、CXCL16、FOXC2、MMP3、COMT、PDE4D、GCK、APOA5の各遺伝子多型が、慢性腎臓病に有意に関連した。また、これら遺伝因子を組み合わせると、最小オッズ比が0.01で最大オッズ比が98.46となった。これは、従来の危険因子である、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、年齢、性別のみで予測するオッズ比と比べて、幅広く評価することが可能であった(参考文献13)。
【0039】
<慢性腎臓病のリスク予測システム>
リスク予測システムを開発するに至った統計解析の手法と、実際の臨床的活用の例として、リスクを5段階(A−E)に判断した方法および結果を説明する。
【0040】
統計解析で慢性腎臓病と有意に関連した遺伝因子および交絡因子のロジスティック回帰解析によって、各因子の偏回帰係数からなるロジスティック回帰モデルが得られ、そこで算出されるロジット値より、対象者における疾患発症確率のリスク値が推算される。受診者ごとに予測されたリスク値を低い順に並べた場合、値が大きいほど対象者における発症リスクは高くなる。したがって、疾患との関連が示された遺伝因子および交絡因子の検査結果から、本モデルにより慢性腎臓病の発症リスクを推定することが可能となる。
【0041】
このリスク値を推定するロジスティック回帰モデルを得るため、カイ二乗検定でp値が5%未満(p<0.05)で慢性腎臓病と関連した多型の遺伝モデルを、交絡因子である年齢、性別と共に、ステップワイズ変数増加法によるロジスティック回帰分析を実施した。実際のリスク予測に使用する遺伝子多型は20個以内であるほうが運用しやすいため、ロジスティック回帰モデルに含まれる遺伝子多型の個数が最大で20個となるように制限を加えたステップワイズ変数増加法を用いることにより、交絡因子として利用する遺伝子多型を絞り込んだ。
【0042】
上記ステップワイズ変数増加法によるロジスティック回帰分析により選抜した遺伝子多型をリスク予測のための最終的な因子として採用した。また、リスク予測システムに必要な数値を決定した。結果を表11に示す。表中には、左欄より順に、因子(Variable)、p値(p-value)、回帰モデルの偏回帰係数(β)、オッズ比(Odds-ratio)、オッズ比の95%信頼区間(OR-95%CI)を示した。また、この解析で得られた回帰モデル式の定数は、−6.02111であった。
【0043】
【表11】

【0044】
慢性腎臓病の罹患に対し、統計的有意性が高い順に、UCP3の−35位C/T(劣性モデル)、PIK3R1の75686位G/A(劣性モデル)、PECAM1の36222位A/G(優性モデル)、HMOX1の98位G/C(優性モデル)、APOEの−203位T/G(優性モデル)、AGTR1の43651位G/A(優性モデル)、IRS1の3931位G/A(優性モデル)、TNFRSF13Bの23375位A/C(劣性モデル)、ABCA1の−14位C/T(劣性モデル)、ROS1の124785位G/A(優性モデル)、ANXA5の431位C/T(劣性モデル)、BCHEの63973位G/A(優性モデル)、KCNJ11の634位A/G(優性モデル)、MMP1の−1602位2G/1G(優性モデル)、PALLDの259175位A/G(優性モデル)、CXCL16の4660位C/T(優性モデル)、FOXC2の−512位C/T(劣性モデル)、MMP3の722位A/G(優性モデル)、COMTの21962位G/A(優性モデル)、PDE4Dの919475位TAAA/−(劣性モデル)が有意であり、各要因が独立して慢性腎臓病に関連することが分かった。
【0045】
本研究成果の臨床的な意義について述べる。病院、クリニックまたは健診センターにおいて、希望者に対して従来の危険因子と今回の遺伝因子に関する検査を行い、慢性腎臓病の発症リスクの予測を行う。これは、本研究で疾患の発症に関連が認められた遺伝因子および交絡因子(年齢、性別)により、受診者のリスク値を推定し、その分布からリスクの程度を3段階以上(例えば、5段階)に分けることによって、実施することができる。
【0046】
慢性腎臓病のリスクを5段階に判断する例を説明する。上記ロジスティック回帰分析によって得られた、ロジスティック回帰式でリスク値を推定する。コントロール群のリスク値を、大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、順に、リスクが高い群、やや高い群、平均的な群、やや低い群、低い群と区分できる。しかし、本研究のコントロール群が、日本人全体の遺伝子型分布とかけ離れている可能性もある。したがって、それを検証するため、群を任意に1対9にわけ、コントロール群と疾患群の分布を確認し、各群がそのリスク値分布区分に過剰適合していないか確認することを10回繰り返し行った。このクロスバリデーションにより、リスク値の分布区分の境界値(閾値)の補正を行った。クロスバリデーションによるリスク値分布区分の閾値補正によって、実際に本研究における慢性腎臓病群の分布は、リスクが高い群は17.4%(コントロール群は4.4%)、リスクがやや高い群は34.0%(コントロール群は18.4%)、平均的リスクの群は40.6%(コントロール群は50.5%)、リスクがやや低い群は7.3%(コントロール群は21.2%)、リスクが低い群は0.7%(コントロール群は5.5%)であった。
【0047】
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけ高リスク群またはやや高リスク群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・飲酒の減量・食事療法即ち塩分摂取の制限や低タンパク食など)または早期の薬物治療を行うことにより慢性腎臓病の一次・二次予防を積極的に推進する。特に慢性腎臓病の家族歴のある人への適用が有効である。本システムにより慢性腎臓病のオーダーメイド予防が可能になり、慢性腎臓病に起因する種々の疾患、即ち末期腎不全、心筋梗塞、脳梗塞などの予防につながる。ひいては、透析患者数の減少、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止や今後の医療費削減などにつながり、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0048】
<考察>
本発明者は、4,587名の日本人からなる集団において、176個の候補遺伝子中の222個の多型と、慢性腎臓病との関連を調べた。今回の大規模研究によって、UCP3の−35位C/T多型、PECAM1の36222位A/G多型、HMOX1の98位G/C多型、APOEの−203位T/G多型、AGTR1の43651位G/A多型、PIK3R1の75686位G/A多型、TNFRSF13Bの23375位A/C多型、ABCA1の−14位C/T多型、IRS1の3931位G/A多型、ROS1の124785位G/A多型、BCHEの63973位G/A多型、ANXA5の431位C/T多型、MMP1の−1602位2G/1G多型、PALLDの259175位A/G多型、KCNJ11の634位A/G多型、CXCL16の4660位C/T多型、FOXC2の−512位C/T多型、MMP3の722位A/G多型、COMTの21962位G/A多型、PDE4Dの919475位TAAA/−多型、GCKの−30位G/A多型、APOA5の−1123位C/T多型が慢性腎臓病と有意に関連することが明らかになった。
【0049】
最後に、慢性腎臓病では上記22個の多型のうち、統計解析により特に疾患との関連が強い20個の多型と年齢・性別の情報をロジスティック回帰式に投入し、これらの遺伝子型の組み合わせにより遺伝的リスクをA−Eの5段階で評価した。結果を表12に示す。表中においては、左より順に、因子(Variable)として各多型の遺伝子表記(Gene Symbol)と遺伝子型(polymorphism)、年齢(Age)、性別(Sex)、ロジット値(logit)、リスク値(Pseudo Probability)、オッズ比(Odds-ratio)、5段階評価(estimate A,B,C,D,E)を示す。5段階評価は、受診者の発症確率のリスク値を推定し、コントロール群のリスク値分布を、研究対象群のクロスバリデーションにより補正した閾値で区分したところ、リスク値の大きい順に4.4%がリスクの高い群、次の18.4%がリスクのやや高い群、次の50.5%が平均的リスクの群、次の21.2%がリスクのやや高い群、リスク値の最も小さい5.5%がリスクの低い群に評価された。本発明においては、遺伝的リスクを5段階評価で提示することにより、発症リスクが容易に推定可能となる。
【0050】
【表12】

【0051】
MMP1(Matrix metallopeptidase 1)
マトリックス金属結合タンパク分解酵素1(MMP1)は、ほとんどのタンパク質分解酵素に抵抗性をもつタンパク質である原繊維コラーゲン(特にタイプIとIII)を分解する(非特許文献14)。アテローム動脈硬化性プラークのマクロファージで発現し、破裂しやすいと思われるプラークの片鱗部に、分解される原繊維コラーゲンと共に存在している(非特許文献15、16)。MMP1の発現の増加は、アテローム動脈硬化性プラークの破裂を促進する(非特許文献17)。MMP1の−1602位2G/1G多型は、プロモーター領域に位置し、MMP1の他の多型も含めて心筋梗塞のリスクに関与している(非特許文献18)。アテローム性動脈硬化に対するこの多型の影響が、慢性腎臓病にも関連する理由であると推測される。
【0052】
APOE(Apolipoprotein E)
アポリポタンパク質E(APOE)はカイロミクロンと超低密度リポタンパク質残差の構成要素であり、低密度リポプロテイン(LDL)レセプターとLDL受容体様タンパク質を介したこれらの粒子の結合と取り込みに関わっている(非特許文献19、20)。APOEの−203位T/G多型は、フランスと北アイルランドで、男性の心筋梗塞と関係したと報告された(非特許文献21)。この多型のTアリルは、日本人の低リスク男性において冠動脈疾患(coronary heart disease)の危険因子であると報告された(非特許文献22)。本研究において、APOEの−203位T/G多型は、Tアリルにおいて、慢性腎臓病に関連が示された。この多型は、APOEのプロモーター領域にあり、APOEの血漿内濃度(TアリルでAPOE濃度が減少)との関連が示されている(非特許文献21)。リポタンパク質の代謝異常は、アテローム性動脈硬化症の進展および糸球体硬化症の進展に重要な役割を果たすが(非特許文献23、24)、慢性腎臓病におけるAPOEの−203位T/G多型の役割は不明である。
【0053】
MMP3(Matrix metallopeptidase 3)
マトリックス金属結合タンパク分解酵素3は、アテローム(動脈内膜の脂肪沈着)で発現し、広い基質特異性をもち、コラーゲン分解酵素やゼラチン分解酵素といった他のMMP(マトリックス金属結合タンパク分解酵素)を活性化させる(非特許文献25)。アポリポタンパク質E欠損マウスでのMMP3の不活化は、損傷マトリックスタンパク質の量も、アテローム動脈硬化性プラークのサイズも増大させる(非特許文献26)。冠状動脈アテローム性動脈硬化症のプラークでは、破裂しやすいと思われる場所で最も顕著に、MMP3のmRNAの存在がin situハイブリダイゼーションで確認されている(非特許文献27)。MMP3の発現は主に転写のレベルで調節されており、この遺伝子のプロモーターは様々な刺激に反応する(非特許文献28)。われわれは、以前、日本人女性における心筋梗塞の罹患率と、MMP3の−1610位5A/6A多型に関連があることを示した(非特許文献29)。また、重篤な狭窄となるアテローム動脈硬化性プラークは、このMMP遺伝子多型と関連があることも報告された(非特許文献30、31)。これらの知見より、MMP3はアテローム性動脈硬化に関与する候補遺伝子であることが示唆される。今回、我々は、慢性腎臓病疾患発症とMMP3の722位A/G(Lys45Glu)多型の関連を示したが、そのメカニズムは不明である。
【0054】
UCP3(Uncoupling protein 3)
ミトコンドリア脱共役タンパク質3(UCP3)はミトコンドリア膜輸送タンパク質で、主に骨格筋で発現しており、エネルギー代謝調節の役割をしている(非特許文献32)。UCP3の−35位C/Tは、この遺伝子のプロモーター領域に位置しており、肥満(非特許文献33)、心筋梗塞(非特許文献34)との関連が示されている。この多型のTアリルは2型糖尿病の進行のリスクを増大させた(非特許文献35)。本研究では、UCP3の−35位C/T多型のTアリルが慢性腎臓病の疾患リスクと関わっていることを示した。この多型の、肥満と2型糖尿病の進行に対する影響が、慢性腎臓病と関連する可能性がある。
【0055】
PECAM1(Platelet-endothelial cell adhesion molecule 1)
PECAM1は、130kDのイムノグロブリンスーパーファミリーであり、内皮細胞表面、血小板、白血球と血液前駆細胞で発現しているタンパク質である(非特許文献36)。PECAM1は、インテグリンの親和性を調節することによる白血球の接着(非特許文献37)、刺激分子に反応した内皮透過輸送(非特許文献38)の両方に重要な役割を果たす。PECAM1の36222位A/G(Gln668Arg)多型は、このタンパク質の、シグナル伝達の主要な役割を果たす細胞質ドメインをコードしているエクソン12に位置している(非特許文献36)。Aアリル(Gln)の多型は、日本人において、心筋梗塞のリスクを増大させる因子として関与が示されている(非特許文献39)。今回我々は、PECAM1の36222位A/G多型のAアリル(Gln)が、慢性腎臓病のリスクに抑制因子として関わっていることを示した。この多型のAアリル(Gln)が、心筋梗塞の危険因子、慢性腎臓病の抑制因子の両方に関与しているメカニズムは明らかではない。
【0056】
<結論>
我々の研究によれば、日本人においては、UCP3、PECAM1、HMOX1、APOE、AGTR1、PIK3R1、TNFRSF13B、ABCA1、IRS1、ROS1、BCHE、ANXA5、MMP1、PALLD、KCNJ11、CXCL16、FOXC2、MMP3、COMT、PDE4D、GCK、APOA5の多型が慢性腎臓病に関連した。この結果に基づき、遺伝子多型を調べることにより、慢性腎臓病発症の危険性を知ることができる。
このように本実施形態によれば、慢性腎臓病について、遺伝的リスクを予測するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、慢性腎臓病の予防が可能となり、透析患者数の減少、心血管障害の減少、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0057】
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【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示す図である。
【図2】PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UCP3の−35位C/T、PECAM1の36222位A/G、HMOX1の98位G/C、APOEの−203位T/G、AGTR1の43651位G/A、PIK3R1の75686位G/A、TNFRSF13Bの23375位A/C、ABCA1の−14位C/T、IRS1の3931位G/A、ROS1の124785位G/A、BCHEの63973位G/A、ANXA5の431位C/T、MMP1の−1602位2G/1G、PALLDの259175位A/G、KCNJ11の634位A/G、CXCL16の4660位C/T、FOXC2の−512位C/T、MMP3の722位A/G、COMTの21962位G/A、PDE4Dの919475位TAAA/−、GCKの−30位G/A、APOA5の−1123位C/Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性別、年齢とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする慢性腎臓病のリスク検出法。
【請求項2】
UCP3の−35位C/T、PECAM1の36222位A/G、HMOX1の98位G/C、APOEの−203位T/G、AGTR1の43651位G/A、PIK3R1の75686位G/A、TNFRSF13Bの23375位A/C、ABCA1の−14位C/T、IRS1の3931位G/A、ROS1の124785位G/A、BCHEの63973位G/A、ANXA5の431位C/T、MMP1の−1602位2G/1G、PALLDの259175位A/G、KCNJ11の634位A/G、CXCL16の4660位C/T、FOXC2の−512位C/T、MMP3の722位A/G、COMTの21962位G/A、PDE4Dの919475位TAAA/−、GCKの−30位G/A、APOA5の−1123位C/Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする慢性腎臓病のリスク検出法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−142187(P2010−142187A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324995(P2008−324995)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年12月5日 インターネットアドレス「http://www.elsevier.com/locate/ygeno」に発表
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(399077674)G&Gサイエンス株式会社 (21)
【Fターム(参考)】