慢性閉塞性肺疾患改善剤
【課題】 PC−SODを有効成分とする安全で、効果的なCOPD改善剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 下記一般式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを有効成分とすることを特徴とするCOPD改善剤であり、静脈投与或いは吸入投与されるCOPD改善剤である。
【解決手段】 下記一般式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを有効成分とすることを特徴とするCOPD改善剤であり、静脈投与或いは吸入投与されるCOPD改善剤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は慢性閉塞性肺疾患改善剤に係わり、詳細には、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(以下、単にPC−SODと記載する場合もある)を有効成分として含有する慢性閉塞性肺疾患改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーオキサイドジスムターゼ(以下、単にSODと記載する場合もある)は、1965年Huberらによって牛の血液から抗炎症蛋白質として抽出され、活性酸素の一つであるスーパーオキサイドアニオン(O2−)を特異的に消去することが明らかにされた生理活性蛋白質である。生体内においては、活性酸素は主に好中球、マクロファージ等の食細胞から殺菌のために放出されるが、通常余剰の活性酸素に対してはSODをはじめとする種々の抗酸化物質が存在し、活性酸素による正常細胞への傷害を防御している。
【0003】
しかしながら、SOD等の抗酸化物質による抗酸化能力を超えて活性酸素が過剰に存在すると、その近くに存在する物質、特に細胞膜が活性酸素により攻撃され、種々の病態が発現してくる。事実、活性酸素はその強力な組織障害性が証明されて以来、炎症、アレルギー、虚血再灌流による組織障害、抗癌剤による肺線維症など多くの病態の発生・増悪因子になることが明らかにされてきた。
【0004】
このような状況の中、活性酸素を特異的に消去するSODが見出され、その臨床的応用の可能性について広く検討されている。本発明者らもSODの臨床的活用性について鋭意検討してきたなかで、SODの臨床的効果を高めるためには、腎臓からの排泄を抑えて血中濃度を維持すること、さらに細胞膜への親和性を高めて細胞膜上に存在する過剰の活性酸素を消去することが重要であると考え、種々の修飾型SODを検討し、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)を提案してきている(特許文献1、特許文献9)。
【0005】
このPC−SODは、遺伝子組み換え技術によりCu/Zn−ヒトスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)を調製した後、化学的にレシチン誘導体(フォスファチジルコリン誘導体:PC)をSOD1分子(2量体)あたり平均4分子結合させたレシチン化SODである。PC−SODは、細胞膜に対して高い親和性を有し、病変部位において発症因子である虚血・再灌流障害やアントラサイクリン系抗癌剤誘発心筋症等の活性酸素が関与する疾患に対する高い治療効果が認められており、既にこのPC−SODを有効成分とする急性心不全治療剤(特許文献2)、抗ウイルス剤(特許文献3)、ループス腎炎治療剤(特許文献4)、脳血管障害に伴う機能障害改善剤(特許文献5)、抗線維化剤(特許文献6)あるいは抗アレルギー疾患処置剤(特許文献7)、熱傷治療剤(特許文献8)、間質性肺炎治療剤(特許文献10)等を種々提案してきている。
【0006】
ところで、慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、様々な原因、特に喫煙により肺に慢性の炎症が生じ、これにより、肺胞の破壊や気管支粘液線の肥大が起き、その結果息切れを生じたり、咳嗽や喀痰が増加したりする疾患である。以前において、肺気腫(PE:pulmonary emphysema)と呼ばれていた疾患と慢性気管支炎(CB:chronic bronchitis)と呼ばれていた疾患は、両者が種々の割合で合併することが多く、この二つによる閉塞性肺疾患を会わせて、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPDと記す)と呼ぶようになった。
【0007】
世界保健機構(WHO)の試算では、2005年に世界中で年間300万人がCOPDで命を落とし、死亡原因の第4位を占めているが、今後10年間でさらに30%増加すると予測している。日本では、厚生労働省の統計によると、2005年には日本人の全死亡数の1.3%がCOPDにより死亡しており、死亡原因の10位であり、男性に限れば7位を占めている。
【0008】
COPDの最大の原因は喫煙である。COPD患者の90%は喫煙者であり(非特許文献1)、非喫煙者に比べて喫煙者ではCOPDの発症のリスクは6倍以上となる。喫煙者の約10〜15%がCOPDを発症するが、高齢者に限るとその50%近くがCOPDである。その他の原因として、室内空気汚染や、大気汚染、化学物質や粉塵の吸入、遺伝によるもの、小児期の肺炎・気管支炎などが挙げられている。
【0009】
その病態としては、気流制限、すなわち息が吐きづらいことを特徴とする疾患であるが、病態の本質は、気道の慢性炎症である。喫煙や吸入物質により中枢気道から末梢気管支まで肺のさまざまなレベルで炎症が惹起される。その結果、プロテアーゼ・アンチプロテアーゼの不均等や、オキシダント・アンチオキシダントの不均等などにより、肺胞の破壊や、気管支粘液腺の肥大が起きると考えられている。
【0010】
このCOPDは、不可逆的な気道の破壊が生じているために、治癒しない疾患である。禁煙や、気管支拡張剤、去痰剤、鎮咳剤などの投与による薬物療法、酸素療法等により症状緩和を行うにすぎず、極めてやっかいな疾患である。
【0011】
かかる観点から、これまでに種々のCOPD改善剤、或いは改善方法が提案されているが(例えば、特許文献11、12)、さらに優れたCOPD改善剤の登場が期待されているのが現状である。
【特許文献1】特開平9−117279号公報
【特許文献2】特開平9−52843号公報
【特許文献3】特開平9−59178号公報
【特許文献4】特開平9−110717号公報
【特許文献5】特開平10−338645号公報
【特許文献6】特開2001−2585号公報
【特許文献7】特開2001−151695号公報
【特許文献8】特開2006−169128号公報
【特許文献9】特開2001−64199号公報
【特許文献10】特願2007−099201
【特許文献11】特開2006−56890号公報
【特許文献12】特開2008−189667号公報
【非特許文献1】Annual Review of Medicine, 40:1989, pp411-429
【0012】
COPDの発症に肺組織における炎症が関与しているとすれば、その誘発には、スーパーオキサイドアニオンなどの活性酸素や鉄錯体が関与していることから、SOD等によりかかる活性酸素を消去させることでこれらの誘導を抑制させ、結果的にCOPD症状の改善を行うことができるものと考えられる。
そこで本発明者は、かかる考え方に立脚して、先に提案している細胞親和性の高いレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)についてCOPDへの適用を検討した結果、このPC−SODがCOPDの症状改善に極めて効果的であることを確認して、本発明を完成させるに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明は、上記の現状に鑑み、PC−SODを有効成分とする安全で、効果的なCOPD改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、
下記一般式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを有効成分とすることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0015】
より好ましくは、本発明で使用する式(I)で示されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼにおいて、Qが−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)であることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0016】
さらに本発明は、より具体的には、SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼの残基であり、具体的には、SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼのアミノ酸配列における111位のアミノ酸がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったスーパーオキサイドジスムターゼ修飾体の残基であることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0017】
最も具体的には、本発明はスーパーオキサイドジスムターゼが、活性中心に銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドジスムターゼであることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0018】
さらに本発明は、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼと共にその安定化剤を含有するCOPD改善剤であり、安定化剤として糖成分、特にシュークロースを含有させたCOPD改善剤である。
【0019】
より具体的には、本発明は注射剤の形態、或いは吸入剤の形態にあることを特徴とするCOPD改善剤である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、COPDの発症として、中枢気管支から末梢軌道に至る気道に慢性炎症が生じる疾患であり、その誘発には、スーパーオキシドアニオンなどの活性酸素や鉄錯体が関与していることから、SOD等によりかかる活性酸素を消去させることでこれらの誘導を効果的に抑制させ、その結果、COPDの有効な改善治療を行えるものである。
これまで効果的なCOPD改善剤が存在しなかった状況下において、特異的なPC−SODを投与することにより、その症状の改善を行える点で、その医療上の効果は極めて特異的なものである。
【0021】
また、本発明に使用するPC−SODは、従来のSODに比較して細胞膜への親和性に優れたものであり、病変部位におけるスーパーオキサイドアニオンを消去する能力が高いものである。その上安定化剤として糖成分、特にシュークロースを一緒に含有させることにより、PC−SOD自体の安定性に優れたものとなり、半減期の短いSODの効果を持続的に発揮し、COPDの改善を行い得る点で、特に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明が提供するCOPD改善剤において使用されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)において、「レシチン」とはフォスファチジルコリンを意味する通常のレシチンをいい、「リゾレシチン」とはレシチンのグリセロールの2位に結合している脂肪酸1分子がとれて、2位の炭素原子に水酸基が結合した化合物をいう。
【0023】
本発明で使用するPC−SODは、通常リゾレシチンの2位の水酸基に化学的架橋剤を結合させたレシチン誘導体を、SODに1個以上結合させて得ることができる。このPC−SODは、次式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表すことができる。
【0024】
ここで使用するSOD’は、生体内の活性酸素(O2−)の分解というその本来の機能を発揮し得る限りにおいて、その起源は特に限定されるものではなく、各種の動植物または微生物に由来するSOD残基を広く用いることができる。しかしながら、医薬品としての用途を考慮した場合には生体内での抗原性を可能な限り減らすことが好ましい。したがって、使用するSOD’としては、本発明のCOPD改善剤を投与する対象に応じて適宜適切なSOD残基を選択することが好ましい。
【0025】
例えば、現実のCOPD患者を対象に投与しようとするものであるから、投与による生体内における抗原性をできるだけ減らすために、ヒト由来のSOD残基を用いることが好ましい。したがって、本発明のCOPD改善剤としては、抗原性を考慮し、ヒト由来のSODを使用するのがよい。
【0026】
ヒト由来のSODとしては、ヒト由来のCu/Zn SOD(活性中心に銅と亜鉛を含むヒト由来のSOD;以下、ヒトCu/Zn SODと略記する場合もある)が、細胞内における発現量が多く、また遺伝子工学的手法による生産技術が既に確立しており、大量に調製することが可能であるために、特に好ましく使用される。
【0027】
このヒトCu/Zn SODには、ヒト組織または培養細胞から製造される天然のヒトCu/Zn SOD;遺伝子工学的手法により製造されるヒトCu/Zn SOD;天然のヒトCu/Zn SODと実質上同一のアミノ酸配列を有する組み換えヒトCu/Zn SOD;これらのヒトCu/Zn SODにおけるアミノ酸配列式中の一部のアミノ酸を欠失、付加、置換、あるいは化学的に修飾若しくは改変したSOD等があり、いずれのヒトCu/Zn SODであってもよい。
【0028】
そのなかでも、天然のヒトCu/Zn SODのアミノ酸配列式における111位のアミノ酸(システイン:Cys)がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったヒトCu/Zn SODが好ましい。かかるヒトCu/Zn SODは、例えば特開平9−117279号公報にその詳細が記載されており、その方法に従って得ることができる。
したがって、特開平9−117279号公報に記載されるヒトCu/Zn SODの調製は、本明細書の一部を構成し、本発明で使用するPC−SODは、これらのヒトCu/Zn SODを素材として得ることができる。
【0029】
本発明で使用する式(I)で表されるPC−SODにおいて、Bで示される「グリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基」は、具体的には次式(II):
−O−CH(CH2OR)[CH2OP(O)(O−)(OCH2CH2N+(CH3)3)]
(II)
(式中、Rは脂肪酸残基(アシル基)である)
で表される。
【0030】
Rで示される脂肪酸残基(アシル基)としては、炭素数10〜28の飽和または不飽和脂肪酸残基が好ましく、より好ましくは、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イコサノイル基、ドコサノイル基、その他の炭素数14〜22の飽和脂肪酸残基であり、特に好ましくは炭素数16を有する飽和脂肪酸残基であるパルミトイル基である。
【0031】
また、一般式(I)においてQで示される化学的架橋は、SODとレシチンとを架橋して化学的に結合(共有結合)させ得るものであれば特に限定されない。そのような化学的架橋としては、残基:−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)が特に好ましい。この残基は、式:HO−C(O)−(CH2)n−C(O)−OHで表される直鎖状のジカルボン酸、その無水物、エステル、ハロゲン化物等の両端に存在する水酸基(但し、無水物、エステル、ハロゲン化物の場合には、両端に存在する水酸基に該当する部分)を除いた残基である。
【0032】
一般式(I)においてQが上記の直鎖状のジカルボン酸残基である場合には、Qはその一端において前記した式(II)のリゾレシチン残基の水酸基由来の酸素とエステル結合により結合している。また、エステル結合をしたQの他端は、SODのアミノ基とアミド結合などにより直接結合している。
なお、上記化学的架橋の残基においてnとしては2以上の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。
【0033】
また、式(I)においてmとしてはSOD1分子に対するリゾレシチンの平均結合数を表している。したがって、mは1以上の整数であり、1〜12、特に4であることが好ましい。
【0034】
本発明で使用するPC−SODの製造方法、すなわちレシチン誘導体とSOD、好ましくはヒトCu/Zn SODの結合方法は、例えば、特開平9−117279号公報に記載の方法により行うことができる。
【0035】
その好ましいPC−SODの化学構造を模式的に示すと、以下のPC−SODが特に好ましい。
【0036】
【化1】
(mは、結合したレシチン誘導体数)
【0037】
すなわち、E. coliを宿主として遺伝子組み換えにより製造したヒトCu/Zn SODの遊離アミノ基に、レシチン誘導体を平均4分子共有結合させたものである。
【0038】
本発明のCOPD改善剤において用いるPC−SODは、医薬として使用できる程度に精製され、かつ、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものであることが好ましい。例えば、PC−SODは、2,500U/mg以上の比SOD活性を有する精製されたものを用いるのが好ましく、3,000U/mg以上の比SOD活性を有する精製されたものがより好ましい。
なお、本発明において1U(ユニット)とは、pH7.8/30℃の条件下でNBT(ニトロブルーテトラゾリウム)を用いてJ. Biol. Chem., vol.244, No.22 6049-6055 (1969) に記載の方法に準じて測定し、NBTの還元速度を50%阻害するPC−SODの酵素量を表す。
【0039】
本発明が提供するCOPD改善剤は、かくして調製されたPC−SODを有効成分とするCOPD改善剤であるが、好ましくはPC−SODと共に安定化剤を含有するものがよい。そのような安定化剤としては、例えば糖成分をあげることができる。糖成分としては医薬的に使用される糖成分であれば特に限定されないが、なかでもシュークロースが好ましい。したがって、本発明が提供する最も好ましいCOPD改善剤は、PC−SODと共にシュークロースを含有する組成物である。シュークロースとしては医薬品として使用できる程度に精製されたものが好ましく、特に活性炭で処理されたシュークロースを用いるのがよい。かかるシュークロースをPC−SODと共に使用することにより、長期間保存によるPC−SODの活性低下を防ぐことができ、安定性が高く、凍結乾燥した場合であっても、その性状が特に良好な組成物として調製することができる。
【0040】
本発明のCOPD改善剤におけるPC−SODとシュークロースの配合比率は、投与量、製剤の形態等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものでない。しかしながら、PC−SODとシュークロースの重量比として、0.1/100〜80/100程度の範囲内にあることが好ましく、0.4/100〜60/100程度がより好ましい。
【0041】
本発明のCOPD改善剤には、PC−SODの活性に影響を与えず、且つ製剤の効果に影響を与えない限り、他の医薬活性成分や、慣用されている製剤成分、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等を添加することができる。
【0042】
本発明が提供するCOPD改善剤の調製は、PC−SODおよびシュークロースを用いて、製剤学的に公知であり、慣用されている方法により行うことができる。なお、本発明の製剤組成物に使用するPC−SODは、溶液状、凍結状、または凍結乾燥状の形態が好ましい。
【0043】
本発明が提供するCOPD改善剤は、その一つの態様として、好ましくは注射剤の形態で投与することができる。注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解型固形製剤等の形態であることが好ましく、これらの製剤は、日本薬局方の製剤総則に記載の方法に準じ調製することができる。
【0044】
また、本発明が提供するCOPD改善剤は、また別の態様として、好ましくは吸入剤の形態で投与することができる。
かかる吸入剤とは、気管、気管支、肺等へ到達させるための医薬組成物を意味し、好適には、点鼻剤又は経鼻若しくは経肺投与に適した組成物であり、特に経肺投与に適した組成物である。
【0045】
吸入剤としては、上記したPC−SODを有効成分として用いて、粉末、溶液又は懸濁液の形態として製造することができる。
【0046】
吸入剤を粉末として製造する場合には、有効成分である上記したPC−SODをそのまま、若しくは賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味・矯臭剤などの添加剤を加えて微細化することにより製造することができる。
【0047】
また、吸入剤を溶液または懸濁剤として製造する場合には、例えば、PC−SODを水または水と補助溶媒、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなアルコール系の補助溶媒の混合物に溶解又は懸濁させることにより製造することができる。そのような溶液又は懸濁液は、さらに防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、等張化剤、吸収促進剤、増粘剤等を含有することができる。
【0048】
上記のようにして製造した吸入剤は、吸入剤の分野での一般的な手段、例えば、スポイト、ピペット、カニューレ又はアトマイザーやネブライザーなどの噴霧器を用いて霧状をして鼻腔内又は口腔内に、或いは気管、気管支、肺等へ直接投与される。噴霧器を用いる場合には、適当な噴射剤(例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタンのようなクロロフルオロカーボン、または二酸化炭素等のガス等)と共に加圧バッグの形にされたエアゾールとして噴霧するか、ネブライザーを用いて投与することができる。
【0049】
本発明のCOPD改善剤における有効成分であるPC−SODの量および製剤の投与量は、製剤調製の方法、剤形、対象疾患の程度、患者の年齢、体重によって異なり、一概に限定できないが、例えば臨床量として成人1人1日当たり0.5〜100mg(1500〜30万U)を例示することができる。また投与回数についても一概に限定できないが、1日1回ないし1日数回の投与を行うことも可能である。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を、具体的試験例、実施例を説明することにより、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0051】
試験例1:ブタ膵臓エラスターゼ誘発COPDモデルマウスに対するPC−SODの効果(静脈内投与)
[方法]
6〜8週齢のBALB/cマウスに、ブタ脾臓エステラーゼを、マウス1匹あたり50μg経気道投与し、肺傷害を作成させた。
各濃度(1.5及び3.0kU/kg)のPC−SODを一日一回静脈内投与し、3日後に肺胞洗浄液を回収し、全細胞数をカウントした。
また、細胞をディフクイック法により染色し、各炎症性細胞数をカウントした。
更に、マウスを安楽死させ、肺組織の切片を作成し、H&E染色を行い、電子顕微鏡撮影により染色像(×40)を得た。
そのH&E染色像より、平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)を測定した。
【0052】
[結果]
1.肺胞洗浄液中の全細胞数を図1に示した。
図中の結果から判明するように、ブタ脾臓エステラーゼ投与により、全細胞数は上昇し、炎症性細胞の増加が予測された。また、この上昇はPC−SODにより減弱したことから、PC−SODが抗炎症作用を発揮することが予測された。
2.各炎症性細胞数を図2〜図4に示した。
図2は肺胞マクロファージの結果を、図3は好中球の結果を、図4はリンパ球の結果を示した。
図中の結果からも判明するように、PC−SODの1.5及び3.0kU/kg静脈投与で、炎症性細胞の減少が見られ、有意に抗炎症作用を示していることが判明する。
【0053】
3.図5にH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真の結果を示し、図6に平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した。
各図中に示した結果からも判明するように、PC−SODの1.5及び3.0kU/kg静脈投与は、エラスターゼ依存の平均肺胞径の延長を抑制し、肺傷害を抑制していることが判明する。
【0054】
試験例2:ブタ膵臓エラスターゼ誘発COPDモデルマウスに対するPC−SODの効果(吸入投与)
[方法]
6〜8週齢のBALB/cマウスに、ブタ脾臓エステラーゼを、マウスあたり50μg経気道投与し、肺傷害を作成させた。
各濃度(30及び60kU/Chamber)のPC−SODを含有する吸入剤を一日一回吸入投与し、3日後に肺胞洗浄液を回収し、全細胞数をカウントした。
また、細胞をディフクイック法により染色し、各炎症性細胞数をカウントした。
更に、マウスを安楽死させ、肺組織の切片を作成し、H&E染色を行い、電子顕微鏡撮影により染色像(×40)を得た。
そのH&E染色像より、平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)を測定した。
【0055】
[結果]
1.肺胞洗浄液中の全細胞数を図7に示した。
図中の結果から判明するように、ブタ脾臓エステラーゼ投与依存によって上昇した全細胞数はPC−SODにより減弱したことから、PC−SODが抗炎症作用を発揮したことが予測された。
2.各炎症性細胞数を図8〜図10に示した。
図8は肺胞マクロファージの結果を、図9は好中球の結果を、図10はリンパ球の結果を示した。
図中の結果からも判明するように、PC−SODの30及び50kU/Chamber)のPC−SODを含有する吸入剤の吸入投与(経肺投与)は、有意に抗炎症作用を示していることが判明する。
【0056】
3.図11にH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真の結果を示し、図12に平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した。
各図中に示した結果からも判明するように、PC−SODの30及び50kU/Chamber)のPC−SODを含有する吸入剤の吸入(経肺)投与は、エラスターゼ依存の平均肺胞径の延長を抑制し、肺傷害を抑制していることが判明する。
【0057】
製剤例1:静脈注射剤
PC−SOD1%(w/w)、シュークロース10%(w/w)、塩化ベンザルコニウム0.05%(w/w)を5%キシリトール水溶液に溶解した後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥剤に、別にバイアル充填した0.5%カルメロースあるいは注射用水を加えることにより静脈注射用剤を得た。
【0058】
実施例2:吸入剤
吸入用液剤(1)
PC−SOD1%(w/w)、シュークロース10%(w/w)、塩化ベンザルコニウム0.05%(w/w)を5%キシリトール水溶液に溶解し、吸入用液剤を調製する。
【0059】
吸入用液剤(2)
PC−SOD1%(w/w)、シュークロース10%(w/w)、塩化ベンザルコニウム0.05%(w/w)、ポリエチレングリコール10%(w/w)、プロピレングリコール20%(w/w)、残部精製水で吸入用液剤を調製する。
【0060】
吸入用散剤
PC−SODが5%(w/w)、残部シュークロース(微細粉末状)で吸入用散剤を調製する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上記載したように、本発明が提供するCOPD改善剤は、特異的なPC−SODを有効成分とするものであり、従来のSODに比較して細胞膜等への親和性に優れたものであり、病変部位におけるスーパーオキサイドアニオンを消去する能力が高いものである。その上シュークロースと共に含有させることによりその安定性に優れたものであり、半減期の短いSODの効果を持続的に発揮する。このSODの効果により、細胞障害を誘導するスーパーオキシドアニオンなどの活性酸素を消去することにより、これらの誘導を効果的に抑制させ、その結果、COPDの有効な改善を行えるものであり、医療上の価値は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】試験例1における肺胞洗浄液中の全細胞数を示した図である。
【図2】試験例1における炎症性細胞数として、肺胞マクロファージの結果を示した図である。
【図3】試験例1における炎症性細胞数として、好中球の結果を示した図である。
【図4】試験例1における炎症性細胞数として、リンパ球の結果を示した図である。
【図5】試験例1におけるH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真である。
【図6】試験例1における平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した図である。
【0063】
【図7】試験例2における肺胞洗浄液中の全細胞数を示した図である。
【図8】試験例2における炎症性細胞数として、肺胞マクロファージの結果を示した図である。
【図9】試験例2における炎症性細胞数として、好中球の結果を示した図である。
【図10】試験例2における炎症性細胞数として、リンパ球の結果を示した図である。
【図11】試験例2におけるH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真である。
【図12】試験例2における平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は慢性閉塞性肺疾患改善剤に係わり、詳細には、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(以下、単にPC−SODと記載する場合もある)を有効成分として含有する慢性閉塞性肺疾患改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーオキサイドジスムターゼ(以下、単にSODと記載する場合もある)は、1965年Huberらによって牛の血液から抗炎症蛋白質として抽出され、活性酸素の一つであるスーパーオキサイドアニオン(O2−)を特異的に消去することが明らかにされた生理活性蛋白質である。生体内においては、活性酸素は主に好中球、マクロファージ等の食細胞から殺菌のために放出されるが、通常余剰の活性酸素に対してはSODをはじめとする種々の抗酸化物質が存在し、活性酸素による正常細胞への傷害を防御している。
【0003】
しかしながら、SOD等の抗酸化物質による抗酸化能力を超えて活性酸素が過剰に存在すると、その近くに存在する物質、特に細胞膜が活性酸素により攻撃され、種々の病態が発現してくる。事実、活性酸素はその強力な組織障害性が証明されて以来、炎症、アレルギー、虚血再灌流による組織障害、抗癌剤による肺線維症など多くの病態の発生・増悪因子になることが明らかにされてきた。
【0004】
このような状況の中、活性酸素を特異的に消去するSODが見出され、その臨床的応用の可能性について広く検討されている。本発明者らもSODの臨床的活用性について鋭意検討してきたなかで、SODの臨床的効果を高めるためには、腎臓からの排泄を抑えて血中濃度を維持すること、さらに細胞膜への親和性を高めて細胞膜上に存在する過剰の活性酸素を消去することが重要であると考え、種々の修飾型SODを検討し、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)を提案してきている(特許文献1、特許文献9)。
【0005】
このPC−SODは、遺伝子組み換え技術によりCu/Zn−ヒトスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)を調製した後、化学的にレシチン誘導体(フォスファチジルコリン誘導体:PC)をSOD1分子(2量体)あたり平均4分子結合させたレシチン化SODである。PC−SODは、細胞膜に対して高い親和性を有し、病変部位において発症因子である虚血・再灌流障害やアントラサイクリン系抗癌剤誘発心筋症等の活性酸素が関与する疾患に対する高い治療効果が認められており、既にこのPC−SODを有効成分とする急性心不全治療剤(特許文献2)、抗ウイルス剤(特許文献3)、ループス腎炎治療剤(特許文献4)、脳血管障害に伴う機能障害改善剤(特許文献5)、抗線維化剤(特許文献6)あるいは抗アレルギー疾患処置剤(特許文献7)、熱傷治療剤(特許文献8)、間質性肺炎治療剤(特許文献10)等を種々提案してきている。
【0006】
ところで、慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、様々な原因、特に喫煙により肺に慢性の炎症が生じ、これにより、肺胞の破壊や気管支粘液線の肥大が起き、その結果息切れを生じたり、咳嗽や喀痰が増加したりする疾患である。以前において、肺気腫(PE:pulmonary emphysema)と呼ばれていた疾患と慢性気管支炎(CB:chronic bronchitis)と呼ばれていた疾患は、両者が種々の割合で合併することが多く、この二つによる閉塞性肺疾患を会わせて、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPDと記す)と呼ぶようになった。
【0007】
世界保健機構(WHO)の試算では、2005年に世界中で年間300万人がCOPDで命を落とし、死亡原因の第4位を占めているが、今後10年間でさらに30%増加すると予測している。日本では、厚生労働省の統計によると、2005年には日本人の全死亡数の1.3%がCOPDにより死亡しており、死亡原因の10位であり、男性に限れば7位を占めている。
【0008】
COPDの最大の原因は喫煙である。COPD患者の90%は喫煙者であり(非特許文献1)、非喫煙者に比べて喫煙者ではCOPDの発症のリスクは6倍以上となる。喫煙者の約10〜15%がCOPDを発症するが、高齢者に限るとその50%近くがCOPDである。その他の原因として、室内空気汚染や、大気汚染、化学物質や粉塵の吸入、遺伝によるもの、小児期の肺炎・気管支炎などが挙げられている。
【0009】
その病態としては、気流制限、すなわち息が吐きづらいことを特徴とする疾患であるが、病態の本質は、気道の慢性炎症である。喫煙や吸入物質により中枢気道から末梢気管支まで肺のさまざまなレベルで炎症が惹起される。その結果、プロテアーゼ・アンチプロテアーゼの不均等や、オキシダント・アンチオキシダントの不均等などにより、肺胞の破壊や、気管支粘液腺の肥大が起きると考えられている。
【0010】
このCOPDは、不可逆的な気道の破壊が生じているために、治癒しない疾患である。禁煙や、気管支拡張剤、去痰剤、鎮咳剤などの投与による薬物療法、酸素療法等により症状緩和を行うにすぎず、極めてやっかいな疾患である。
【0011】
かかる観点から、これまでに種々のCOPD改善剤、或いは改善方法が提案されているが(例えば、特許文献11、12)、さらに優れたCOPD改善剤の登場が期待されているのが現状である。
【特許文献1】特開平9−117279号公報
【特許文献2】特開平9−52843号公報
【特許文献3】特開平9−59178号公報
【特許文献4】特開平9−110717号公報
【特許文献5】特開平10−338645号公報
【特許文献6】特開2001−2585号公報
【特許文献7】特開2001−151695号公報
【特許文献8】特開2006−169128号公報
【特許文献9】特開2001−64199号公報
【特許文献10】特願2007−099201
【特許文献11】特開2006−56890号公報
【特許文献12】特開2008−189667号公報
【非特許文献1】Annual Review of Medicine, 40:1989, pp411-429
【0012】
COPDの発症に肺組織における炎症が関与しているとすれば、その誘発には、スーパーオキサイドアニオンなどの活性酸素や鉄錯体が関与していることから、SOD等によりかかる活性酸素を消去させることでこれらの誘導を抑制させ、結果的にCOPD症状の改善を行うことができるものと考えられる。
そこで本発明者は、かかる考え方に立脚して、先に提案している細胞親和性の高いレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)についてCOPDへの適用を検討した結果、このPC−SODがCOPDの症状改善に極めて効果的であることを確認して、本発明を完成させるに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明は、上記の現状に鑑み、PC−SODを有効成分とする安全で、効果的なCOPD改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、
下記一般式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを有効成分とすることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0015】
より好ましくは、本発明で使用する式(I)で示されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼにおいて、Qが−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)であることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0016】
さらに本発明は、より具体的には、SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼの残基であり、具体的には、SOD’がヒトのスーパーオキサイドジスムターゼのアミノ酸配列における111位のアミノ酸がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったスーパーオキサイドジスムターゼ修飾体の残基であることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0017】
最も具体的には、本発明はスーパーオキサイドジスムターゼが、活性中心に銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドジスムターゼであることを特徴とするCOPD改善剤である。
【0018】
さらに本発明は、レシチン化スーパーオキサイドジスムターゼと共にその安定化剤を含有するCOPD改善剤であり、安定化剤として糖成分、特にシュークロースを含有させたCOPD改善剤である。
【0019】
より具体的には、本発明は注射剤の形態、或いは吸入剤の形態にあることを特徴とするCOPD改善剤である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、COPDの発症として、中枢気管支から末梢軌道に至る気道に慢性炎症が生じる疾患であり、その誘発には、スーパーオキシドアニオンなどの活性酸素や鉄錯体が関与していることから、SOD等によりかかる活性酸素を消去させることでこれらの誘導を効果的に抑制させ、その結果、COPDの有効な改善治療を行えるものである。
これまで効果的なCOPD改善剤が存在しなかった状況下において、特異的なPC−SODを投与することにより、その症状の改善を行える点で、その医療上の効果は極めて特異的なものである。
【0021】
また、本発明に使用するPC−SODは、従来のSODに比較して細胞膜への親和性に優れたものであり、病変部位におけるスーパーオキサイドアニオンを消去する能力が高いものである。その上安定化剤として糖成分、特にシュークロースを一緒に含有させることにより、PC−SOD自体の安定性に優れたものとなり、半減期の短いSODの効果を持続的に発揮し、COPDの改善を行い得る点で、特に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明が提供するCOPD改善剤において使用されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼ(PC−SOD)において、「レシチン」とはフォスファチジルコリンを意味する通常のレシチンをいい、「リゾレシチン」とはレシチンのグリセロールの2位に結合している脂肪酸1分子がとれて、2位の炭素原子に水酸基が結合した化合物をいう。
【0023】
本発明で使用するPC−SODは、通常リゾレシチンの2位の水酸基に化学的架橋剤を結合させたレシチン誘導体を、SODに1個以上結合させて得ることができる。このPC−SODは、次式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表すことができる。
【0024】
ここで使用するSOD’は、生体内の活性酸素(O2−)の分解というその本来の機能を発揮し得る限りにおいて、その起源は特に限定されるものではなく、各種の動植物または微生物に由来するSOD残基を広く用いることができる。しかしながら、医薬品としての用途を考慮した場合には生体内での抗原性を可能な限り減らすことが好ましい。したがって、使用するSOD’としては、本発明のCOPD改善剤を投与する対象に応じて適宜適切なSOD残基を選択することが好ましい。
【0025】
例えば、現実のCOPD患者を対象に投与しようとするものであるから、投与による生体内における抗原性をできるだけ減らすために、ヒト由来のSOD残基を用いることが好ましい。したがって、本発明のCOPD改善剤としては、抗原性を考慮し、ヒト由来のSODを使用するのがよい。
【0026】
ヒト由来のSODとしては、ヒト由来のCu/Zn SOD(活性中心に銅と亜鉛を含むヒト由来のSOD;以下、ヒトCu/Zn SODと略記する場合もある)が、細胞内における発現量が多く、また遺伝子工学的手法による生産技術が既に確立しており、大量に調製することが可能であるために、特に好ましく使用される。
【0027】
このヒトCu/Zn SODには、ヒト組織または培養細胞から製造される天然のヒトCu/Zn SOD;遺伝子工学的手法により製造されるヒトCu/Zn SOD;天然のヒトCu/Zn SODと実質上同一のアミノ酸配列を有する組み換えヒトCu/Zn SOD;これらのヒトCu/Zn SODにおけるアミノ酸配列式中の一部のアミノ酸を欠失、付加、置換、あるいは化学的に修飾若しくは改変したSOD等があり、いずれのヒトCu/Zn SODであってもよい。
【0028】
そのなかでも、天然のヒトCu/Zn SODのアミノ酸配列式における111位のアミノ酸(システイン:Cys)がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったヒトCu/Zn SODが好ましい。かかるヒトCu/Zn SODは、例えば特開平9−117279号公報にその詳細が記載されており、その方法に従って得ることができる。
したがって、特開平9−117279号公報に記載されるヒトCu/Zn SODの調製は、本明細書の一部を構成し、本発明で使用するPC−SODは、これらのヒトCu/Zn SODを素材として得ることができる。
【0029】
本発明で使用する式(I)で表されるPC−SODにおいて、Bで示される「グリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基」は、具体的には次式(II):
−O−CH(CH2OR)[CH2OP(O)(O−)(OCH2CH2N+(CH3)3)]
(II)
(式中、Rは脂肪酸残基(アシル基)である)
で表される。
【0030】
Rで示される脂肪酸残基(アシル基)としては、炭素数10〜28の飽和または不飽和脂肪酸残基が好ましく、より好ましくは、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イコサノイル基、ドコサノイル基、その他の炭素数14〜22の飽和脂肪酸残基であり、特に好ましくは炭素数16を有する飽和脂肪酸残基であるパルミトイル基である。
【0031】
また、一般式(I)においてQで示される化学的架橋は、SODとレシチンとを架橋して化学的に結合(共有結合)させ得るものであれば特に限定されない。そのような化学的架橋としては、残基:−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)が特に好ましい。この残基は、式:HO−C(O)−(CH2)n−C(O)−OHで表される直鎖状のジカルボン酸、その無水物、エステル、ハロゲン化物等の両端に存在する水酸基(但し、無水物、エステル、ハロゲン化物の場合には、両端に存在する水酸基に該当する部分)を除いた残基である。
【0032】
一般式(I)においてQが上記の直鎖状のジカルボン酸残基である場合には、Qはその一端において前記した式(II)のリゾレシチン残基の水酸基由来の酸素とエステル結合により結合している。また、エステル結合をしたQの他端は、SODのアミノ基とアミド結合などにより直接結合している。
なお、上記化学的架橋の残基においてnとしては2以上の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。
【0033】
また、式(I)においてmとしてはSOD1分子に対するリゾレシチンの平均結合数を表している。したがって、mは1以上の整数であり、1〜12、特に4であることが好ましい。
【0034】
本発明で使用するPC−SODの製造方法、すなわちレシチン誘導体とSOD、好ましくはヒトCu/Zn SODの結合方法は、例えば、特開平9−117279号公報に記載の方法により行うことができる。
【0035】
その好ましいPC−SODの化学構造を模式的に示すと、以下のPC−SODが特に好ましい。
【0036】
【化1】
(mは、結合したレシチン誘導体数)
【0037】
すなわち、E. coliを宿主として遺伝子組み換えにより製造したヒトCu/Zn SODの遊離アミノ基に、レシチン誘導体を平均4分子共有結合させたものである。
【0038】
本発明のCOPD改善剤において用いるPC−SODは、医薬として使用できる程度に精製され、かつ、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものであることが好ましい。例えば、PC−SODは、2,500U/mg以上の比SOD活性を有する精製されたものを用いるのが好ましく、3,000U/mg以上の比SOD活性を有する精製されたものがより好ましい。
なお、本発明において1U(ユニット)とは、pH7.8/30℃の条件下でNBT(ニトロブルーテトラゾリウム)を用いてJ. Biol. Chem., vol.244, No.22 6049-6055 (1969) に記載の方法に準じて測定し、NBTの還元速度を50%阻害するPC−SODの酵素量を表す。
【0039】
本発明が提供するCOPD改善剤は、かくして調製されたPC−SODを有効成分とするCOPD改善剤であるが、好ましくはPC−SODと共に安定化剤を含有するものがよい。そのような安定化剤としては、例えば糖成分をあげることができる。糖成分としては医薬的に使用される糖成分であれば特に限定されないが、なかでもシュークロースが好ましい。したがって、本発明が提供する最も好ましいCOPD改善剤は、PC−SODと共にシュークロースを含有する組成物である。シュークロースとしては医薬品として使用できる程度に精製されたものが好ましく、特に活性炭で処理されたシュークロースを用いるのがよい。かかるシュークロースをPC−SODと共に使用することにより、長期間保存によるPC−SODの活性低下を防ぐことができ、安定性が高く、凍結乾燥した場合であっても、その性状が特に良好な組成物として調製することができる。
【0040】
本発明のCOPD改善剤におけるPC−SODとシュークロースの配合比率は、投与量、製剤の形態等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものでない。しかしながら、PC−SODとシュークロースの重量比として、0.1/100〜80/100程度の範囲内にあることが好ましく、0.4/100〜60/100程度がより好ましい。
【0041】
本発明のCOPD改善剤には、PC−SODの活性に影響を与えず、且つ製剤の効果に影響を与えない限り、他の医薬活性成分や、慣用されている製剤成分、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等を添加することができる。
【0042】
本発明が提供するCOPD改善剤の調製は、PC−SODおよびシュークロースを用いて、製剤学的に公知であり、慣用されている方法により行うことができる。なお、本発明の製剤組成物に使用するPC−SODは、溶液状、凍結状、または凍結乾燥状の形態が好ましい。
【0043】
本発明が提供するCOPD改善剤は、その一つの態様として、好ましくは注射剤の形態で投与することができる。注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解型固形製剤等の形態であることが好ましく、これらの製剤は、日本薬局方の製剤総則に記載の方法に準じ調製することができる。
【0044】
また、本発明が提供するCOPD改善剤は、また別の態様として、好ましくは吸入剤の形態で投与することができる。
かかる吸入剤とは、気管、気管支、肺等へ到達させるための医薬組成物を意味し、好適には、点鼻剤又は経鼻若しくは経肺投与に適した組成物であり、特に経肺投与に適した組成物である。
【0045】
吸入剤としては、上記したPC−SODを有効成分として用いて、粉末、溶液又は懸濁液の形態として製造することができる。
【0046】
吸入剤を粉末として製造する場合には、有効成分である上記したPC−SODをそのまま、若しくは賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味・矯臭剤などの添加剤を加えて微細化することにより製造することができる。
【0047】
また、吸入剤を溶液または懸濁剤として製造する場合には、例えば、PC−SODを水または水と補助溶媒、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのようなアルコール系の補助溶媒の混合物に溶解又は懸濁させることにより製造することができる。そのような溶液又は懸濁液は、さらに防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、等張化剤、吸収促進剤、増粘剤等を含有することができる。
【0048】
上記のようにして製造した吸入剤は、吸入剤の分野での一般的な手段、例えば、スポイト、ピペット、カニューレ又はアトマイザーやネブライザーなどの噴霧器を用いて霧状をして鼻腔内又は口腔内に、或いは気管、気管支、肺等へ直接投与される。噴霧器を用いる場合には、適当な噴射剤(例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタンのようなクロロフルオロカーボン、または二酸化炭素等のガス等)と共に加圧バッグの形にされたエアゾールとして噴霧するか、ネブライザーを用いて投与することができる。
【0049】
本発明のCOPD改善剤における有効成分であるPC−SODの量および製剤の投与量は、製剤調製の方法、剤形、対象疾患の程度、患者の年齢、体重によって異なり、一概に限定できないが、例えば臨床量として成人1人1日当たり0.5〜100mg(1500〜30万U)を例示することができる。また投与回数についても一概に限定できないが、1日1回ないし1日数回の投与を行うことも可能である。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を、具体的試験例、実施例を説明することにより、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0051】
試験例1:ブタ膵臓エラスターゼ誘発COPDモデルマウスに対するPC−SODの効果(静脈内投与)
[方法]
6〜8週齢のBALB/cマウスに、ブタ脾臓エステラーゼを、マウス1匹あたり50μg経気道投与し、肺傷害を作成させた。
各濃度(1.5及び3.0kU/kg)のPC−SODを一日一回静脈内投与し、3日後に肺胞洗浄液を回収し、全細胞数をカウントした。
また、細胞をディフクイック法により染色し、各炎症性細胞数をカウントした。
更に、マウスを安楽死させ、肺組織の切片を作成し、H&E染色を行い、電子顕微鏡撮影により染色像(×40)を得た。
そのH&E染色像より、平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)を測定した。
【0052】
[結果]
1.肺胞洗浄液中の全細胞数を図1に示した。
図中の結果から判明するように、ブタ脾臓エステラーゼ投与により、全細胞数は上昇し、炎症性細胞の増加が予測された。また、この上昇はPC−SODにより減弱したことから、PC−SODが抗炎症作用を発揮することが予測された。
2.各炎症性細胞数を図2〜図4に示した。
図2は肺胞マクロファージの結果を、図3は好中球の結果を、図4はリンパ球の結果を示した。
図中の結果からも判明するように、PC−SODの1.5及び3.0kU/kg静脈投与で、炎症性細胞の減少が見られ、有意に抗炎症作用を示していることが判明する。
【0053】
3.図5にH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真の結果を示し、図6に平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した。
各図中に示した結果からも判明するように、PC−SODの1.5及び3.0kU/kg静脈投与は、エラスターゼ依存の平均肺胞径の延長を抑制し、肺傷害を抑制していることが判明する。
【0054】
試験例2:ブタ膵臓エラスターゼ誘発COPDモデルマウスに対するPC−SODの効果(吸入投与)
[方法]
6〜8週齢のBALB/cマウスに、ブタ脾臓エステラーゼを、マウスあたり50μg経気道投与し、肺傷害を作成させた。
各濃度(30及び60kU/Chamber)のPC−SODを含有する吸入剤を一日一回吸入投与し、3日後に肺胞洗浄液を回収し、全細胞数をカウントした。
また、細胞をディフクイック法により染色し、各炎症性細胞数をカウントした。
更に、マウスを安楽死させ、肺組織の切片を作成し、H&E染色を行い、電子顕微鏡撮影により染色像(×40)を得た。
そのH&E染色像より、平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)を測定した。
【0055】
[結果]
1.肺胞洗浄液中の全細胞数を図7に示した。
図中の結果から判明するように、ブタ脾臓エステラーゼ投与依存によって上昇した全細胞数はPC−SODにより減弱したことから、PC−SODが抗炎症作用を発揮したことが予測された。
2.各炎症性細胞数を図8〜図10に示した。
図8は肺胞マクロファージの結果を、図9は好中球の結果を、図10はリンパ球の結果を示した。
図中の結果からも判明するように、PC−SODの30及び50kU/Chamber)のPC−SODを含有する吸入剤の吸入投与(経肺投与)は、有意に抗炎症作用を示していることが判明する。
【0056】
3.図11にH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真の結果を示し、図12に平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した。
各図中に示した結果からも判明するように、PC−SODの30及び50kU/Chamber)のPC−SODを含有する吸入剤の吸入(経肺)投与は、エラスターゼ依存の平均肺胞径の延長を抑制し、肺傷害を抑制していることが判明する。
【0057】
製剤例1:静脈注射剤
PC−SOD1%(w/w)、シュークロース10%(w/w)、塩化ベンザルコニウム0.05%(w/w)を5%キシリトール水溶液に溶解した後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥剤に、別にバイアル充填した0.5%カルメロースあるいは注射用水を加えることにより静脈注射用剤を得た。
【0058】
実施例2:吸入剤
吸入用液剤(1)
PC−SOD1%(w/w)、シュークロース10%(w/w)、塩化ベンザルコニウム0.05%(w/w)を5%キシリトール水溶液に溶解し、吸入用液剤を調製する。
【0059】
吸入用液剤(2)
PC−SOD1%(w/w)、シュークロース10%(w/w)、塩化ベンザルコニウム0.05%(w/w)、ポリエチレングリコール10%(w/w)、プロピレングリコール20%(w/w)、残部精製水で吸入用液剤を調製する。
【0060】
吸入用散剤
PC−SODが5%(w/w)、残部シュークロース(微細粉末状)で吸入用散剤を調製する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上記載したように、本発明が提供するCOPD改善剤は、特異的なPC−SODを有効成分とするものであり、従来のSODに比較して細胞膜等への親和性に優れたものであり、病変部位におけるスーパーオキサイドアニオンを消去する能力が高いものである。その上シュークロースと共に含有させることによりその安定性に優れたものであり、半減期の短いSODの効果を持続的に発揮する。このSODの効果により、細胞障害を誘導するスーパーオキシドアニオンなどの活性酸素を消去することにより、これらの誘導を効果的に抑制させ、その結果、COPDの有効な改善を行えるものであり、医療上の価値は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】試験例1における肺胞洗浄液中の全細胞数を示した図である。
【図2】試験例1における炎症性細胞数として、肺胞マクロファージの結果を示した図である。
【図3】試験例1における炎症性細胞数として、好中球の結果を示した図である。
【図4】試験例1における炎症性細胞数として、リンパ球の結果を示した図である。
【図5】試験例1におけるH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真である。
【図6】試験例1における平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した図である。
【0063】
【図7】試験例2における肺胞洗浄液中の全細胞数を示した図である。
【図8】試験例2における炎症性細胞数として、肺胞マクロファージの結果を示した図である。
【図9】試験例2における炎症性細胞数として、好中球の結果を示した図である。
【図10】試験例2における炎症性細胞数として、リンパ球の結果を示した図である。
【図11】試験例2におけるH&E染色した肺組織の電子顕微鏡写真である。
【図12】試験例2における平均肺胞径(Mean Linear Intercept:μm)の結果を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを有効成分とすることを特徴とする慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項2】
式(I)において、Qが−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)であることを特徴とする請求項1に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項3】
SOD’が、ヒトのスーパーオキサイドジスムターゼの残基であることを特徴とする請求項1または2に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項4】
SOD’が、ヒトのスーパーオキサイドジスムターゼのアミノ酸配列における111位のアミノ酸がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったスーパーオキサイドジスムターゼ修飾体の残基であることを特徴とする請求項1または2に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項5】
スーパーオキサイドジスムターゼが、活性中心に銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドジスムターゼであることを特徴とする請求項3または4に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項6】
nが2〜10の整数である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項7】
mが1〜12の整数である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項8】
さらに安定化剤を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項9】
安定化剤が、糖であることを特徴とする請求項8に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項10】
糖が、シュークロースであることを特徴とする請求項9に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項11】
シュークロースが、活性炭処理されたシュークロースであることを特徴とする請求項10に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項12】
注射剤の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項13】
吸入剤の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項1】
下記一般式(I):
SOD’(Q−B)m (I)
(式中、SOD’はスーパーオキサイドジスムターゼの残基を表し、Qは化学的架橋を表し、Bはグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンにおけるその水酸基の水素原子を除いた残基を表し、mはスーパーオキサイドジスムターゼ1分子に対するリゾレシチンの平均結合数であって、1以上の整数を表す)
で表されるレシチン化スーパーオキサイドジスムターゼを有効成分とすることを特徴とする慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項2】
式(I)において、Qが−C(O)−(CH2)n−C(O)−(式中、nは2以上の整数を表す)であることを特徴とする請求項1に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項3】
SOD’が、ヒトのスーパーオキサイドジスムターゼの残基であることを特徴とする請求項1または2に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項4】
SOD’が、ヒトのスーパーオキサイドジスムターゼのアミノ酸配列における111位のアミノ酸がS−(2−ヒドロキシエチルチオ)システインとなったスーパーオキサイドジスムターゼ修飾体の残基であることを特徴とする請求項1または2に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項5】
スーパーオキサイドジスムターゼが、活性中心に銅と亜鉛を含むスーパーオキサイドジスムターゼであることを特徴とする請求項3または4に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項6】
nが2〜10の整数である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項7】
mが1〜12の整数である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項8】
さらに安定化剤を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項9】
安定化剤が、糖であることを特徴とする請求項8に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項10】
糖が、シュークロースであることを特徴とする請求項9に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項11】
シュークロースが、活性炭処理されたシュークロースであることを特徴とする請求項10に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項12】
注射剤の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【請求項13】
吸入剤の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の慢性閉塞性肺疾患改善剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−215527(P2010−215527A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61075(P2009−61075)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】
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