説明

慣性駆動アクチュエータ

【課題】構造を複雑化させることなく、XY平面内の所望の方向へ移動体を移動させることができる慣性駆動アクチュエータを提供する。
【解決手段】一端が固定部材に隣接し、他端に変位が発生する変位発生手段と、変位発生手段を変位させるための電圧を印加する駆動手段と、変位発生手段の他端に接し、変位方向へ変位可能な振動基板と、振動基板に設けられた振動基板電極と対向するように配置され、慣性により振動基板に対して移動する移動体と、移動体と振動基板との間の摩擦力を変化させる摩擦制御手段と、を備え、移動体が振動基板の変位方向、又は、この変位方向とは異なる方向へ移動するように、固定部材及び振動基板の少なくとも一方に移動体の移動を規制する規制部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性駆動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機械変換素子を用いた駆動機構によって物体の移動を可能としたアクチュエータの従来例として、特許文献1記載の移動テーブル200がある。この移動テーブル200について、図11を参照して説明する。図11は、従来のアクチュエータの構成を示す分解斜視図である。
【0003】
移動テーブル200は、X軸方向のアクチユエ−タ210とY軸方向のアクチュエータ220とを備える。X軸方向のアクチユエ−タ210は、それぞれフレ−ム201の部材201a、201bの上に摺動自在且つ緩み無く嵌合した、支持ブロック213、214と、圧電素子215と、駆動軸216と、スライダブロック212と、パッド218と、板ばね219と、から構成される。駆動軸216は支持ブロック213と一体に形成された軸受213aと、支持ブロック214と、により軸方向に移動自在に支持されている。また、圧電素子215の一端は、支持ブロック213に接着固定され、他端は駆動軸216の一端に接着固定され、圧電素子215の厚み方向の変位により駆動軸216はX軸方向に変位可能に構成されている。
【0004】
また、Y軸方向のアクチユエ−タ220は、それぞれフレ−ム201の部材201c、201dの上に、摺動自在且つ緩み無く嵌合した、支持ブロック223、224と、圧電素子225と、駆動軸226と、スライダブロック212と、パッド228と、板ばね229と、から構成される。駆動軸226は、支持ブロック223と一体に形成された軸受223aと、支持ブロック224と、により軸方向に移動自在に支持されている。また、圧電素子225の一端は、支持ブロック223に接着固定され、他端は駆動軸226の一端に接着固定され、圧電素子225の厚み方向の変位により駆動軸226はY軸方向に変位可能に構成されている。以上の構成においては、圧電素子215又は圧電素子225を駆動することにより、駆動軸216又は駆動軸226を通じてスライダ212を変位させ、これにより、スライダブロック212上に配置されたテーブルTをXY軸方向に移動させる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−340682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図11の移動テーブル200では、212は、圧電素子215、225の伸縮方向のみにしか移動しないため、XY平面内で任意の方向へ移動を行うためには、構造が複雑化せざるを得ない。また、所望の軌跡を移動するためには、高度な位置検出機構が必要となり、コストダウンが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造を複雑化させることなく、XY平面内の所望の方向へ移動体を移動させることができる慣性駆動アクチュエータを提供することを目的とする。また、本発明の目的は、移動体を所望の軌跡上で移動することのできる慣性駆動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る慣性駆動アクチュエータは、固定部材と、その一端が固定部材に隣接し、他端に変位が発生する変位発生手段と、変位発生手段を変位させるための電圧を印加する駆動手段と、変位発生手段の他端に接し、変位方向へ変位可能な振動基板と、振動基板に設けられた振動基板電極と、振動基板電極と対向するように配置され、慣性により振動基板に対して移動する移動体と、移動体と振動基板との間の摩擦力を変化させる摩擦制御手段と、を備える慣性駆動アクチュエータであって、移動体が振動基板の変位方向、又は、この変位方向とは異なる方向へ移動するように、固定部材及び振動基板の少なくとも一方に、移動体の移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータにおいて、移動体は、振動基板電極と対向する位置に移動体電極を有し、振動基板電極と移動体電極との間に絶縁層が配置され、摩擦手段は、移動体電極と振動基板電極との間に電位差を発生させ、この電位差に基づく静電引力により、振動基板と移動体との間の摩擦力を変化させることが好ましい。
【0010】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータにおいて、規制部材は、相互に間隔を空けて設けられ、規制部材の間に移動体を配置され、移動体が規制部材に沿って移動することが好ましい。
【0011】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータにおいて、移動体は、規制部材との摩擦力と、振動基板の変位により、回転することができる。
【0012】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータにおいて、移動体は導電材料にて形成されるとよい。
【0013】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータは、振動基板の移動体とは反対に配置された永久磁石を備え、移動体が磁性材料にて形成されることが好ましい。
【0014】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータにおいて、移動体は複数であって、複数の移動体を独立制御可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る慣性駆動アクチュエータは、構造を複雑化させることなく、XY平面内の所望の方向へ移動体を移動させることができ、移動体を所望の軌跡上で移動させることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る慣性駆動アクチュエータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1実施形態)
【0017】
第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10について、図1から図3を参照しつつ説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のIB−IB線における断面図、(c)は(a)の移動体31及び振動基板12の一部拡大図である。
【0018】
図1(a)、(b)に示すように、慣性駆動アクチュエータ10は、固定部材11と、変位発生手段としての圧電素子21と、固定部材11の中板11e上に変位可能に載置された振動基板12と、移動体31と、振動基板12上に形成されたガイド35と、を備える。また、固定部材11の中板11eの下側には永久磁石13が配置されている。矩形枠状の固定部材11の内側面11aには、圧電素子21の一端が隣接している。この圧電素子21の他端は、平面視矩形状の振動基板12の左側面12aに隣接している。なお、移動体31は、磁性材料又は導電材料で形成することが好ましい。
【0019】
振動基板12を介して圧電素子21と対向するように、バネ27が配置されている。すなわち、バネ27は、一端が固定部材11の内側面11dに隣接するとともに、他端が振動基板12の右側面12dに隣接している。慣性駆動アクチュエータ10においては、圧電素子21が伸張して振動基板12が変位したときにバネ27が振動基板12を支持し、圧電素子21が収縮すると、振動基板12はバネ27の弾性力によってもとの位置へ変位する。すなわち、バネ27は、圧電素子21の伸縮を振動基板12へ伝達する補助を行っている。なお、圧電素子21の両端及びバネ27の両端は、固定部材11及び/又は振動基板12に固定されていてもよい。
【0020】
ガイド35(規制部材)は、振動基板12上において上方に突出するように形成された、4つのガイド部材35a、35b、35c、35dを備える。振動基板12上には、これらによって囲まれ、移動体31の移動を規制する閉じた領域が形成される。また、互いに対向するガイド部材35aとガイド部材35cの間隔は、移動体31の幅と略同一であり、これによって、移動体31は、ガイド部材35a及びガイド部材35cと摺動しつつ、ガイド35の領域内を移動可能である。
【0021】
図1(c)に示すように、振動基板12の上面には振動基板電極14が形成され、振動基板電極14の上面には絶縁層15が形成されている。一方、振動基板12に対向する、移動体31の下面には移動体電極32が形成されている。また、図示しないが、圧電素子21には、これを変位させるための駆動電圧を印加するための駆動回路(駆動手段)が接続されている。さらに、移動体電極32及び振動基板電極14には、移動体31と振動基板12との間の電位差を発生させ、この電位差に基づく静電引力により、振動基板12と移動体31との間の摩擦力を変化させるための電圧を印加する摩擦制御回路(摩擦制御手段)(不図示)が接続されている。また、上述の摩擦制御手段は、電位差に基づく静電引力により移動体31と振動基板12との摩擦力を変化させるものであるが、これに限らず摩擦制御手段は、例えば、ほかに磁気吸着力を利用したものでもよく、移動体31と振動基板12との摩擦力を変化させるものであればよい。
【0022】
以上の構成により、圧電素子21に駆動電圧を印加すると、振動基板12は、圧電素子21の変位の方向に変位する。このように振動基板12が変位すると、振動基板12上の移動体31は、ガイド35内において、慣性により移動可能である。
【0023】
次に、図2と図3を参照して、以上の構成の慣性駆動アクチュエータ10の動作を説明する。
【0024】
まず、移動体31を左上に移動させる場合について、図2を参照しつつ説明する。ここで、図2は、移動体31を図1(a)における左上方向に移動させる場合の駆動波形を示すグラフであって、(a)は圧電素子21への印加電圧、(b)は振動基板電極14への印加電圧、(c)は移動体電極32への印加電圧、をそれぞれ示すグラフである。なお、以下の説明では、初期状態において、移動体31がガイド35によって定まる領域の略中央に配置されているものとする。
【0025】
図2に示された時点Aから時点Bまでの間で、図示しない駆動回路から圧電素子21への印加波形は急峻に立ち下がり(図2(a))、振動基板12の12aに隣接した圧電素子21が急激に縮むとともに振動基板12は急激に左方向へと移動する。一方、時点Aから時点Bまでの間、図示しない電位差発生手段によって、振動基板12に設けられた振動基板電極14への印加電圧(図2(b))と、移動体31に設けられた移動体電極32への印加電圧(図2(c))と、の間には電位差を生じさせている。このため、振動基板12と移動体31との間に、静電吸着力が作用し、この間の摩擦力が増大する。従って、振動基板12の変位とともに移動体31も左方向へ移動する。
【0026】
これに対して、図2の時点Cから時点Dの間では、逆に圧電素子21への印加波形は急峻に立ち上がり、圧電素子21が急激に右方向へ変位するのに伴い、振動基板12も急激に右方向へ変位する。このとき、振動基板12の振動基板電極14への印加電圧と、移動体31の移動体電極32への印加電圧と、を同電位にしている。このため、振動基板12と移動体31との間に静電吸着力が発生しない。従って、移動体31の慣性により、移動体31はその位置に留まろうとする。しかしながら、ガイド35によって定まる空間の略中央に配置された移動体31は、圧電素子21の変位に伴って変位した振動基板12上のガイド部材35a、35cに沿って左上方向に移動する。
【0027】
以上のような、時点Aから時点Bまでの動作と、時点Cから時点Dまでの動作と、を繰り返すことにより、移動体31が振動基板12に対して左上方向へ移動することになる。
【0028】
次に、図3を参照して、移動体31を右下方向に移動させる場合について説明する。ここで、図3は、移動体31を図1(a)における右下方向に移動させる場合の駆動波形を示す波形図であって、(a)は圧電素子21への印加電圧、(b)は振動基板電極14への印加電圧、(c)は移動体電極32への印加電圧、をそれぞれ示すグラフである。なお、以下の説明では、初期状態において、移動体31がガイド35によって定まる領域の略中央に配置されているものとする。
【0029】
図3に示された時点Eから時点Fまでの間で、図示しない駆動回路から圧電素子21への印加波形は急峻に立ち下がり(図3(a))、振動基板12の12aに隣接した圧電素子21が急激に縮むとともに振動基板12は急激に左方向へと移動する。一方、時点Eから時点Fまでの間、図示しない電位差発生手段によって、振動基板12に設けられた振動基板電極14への印加電圧(図3(b))と、移動体31に設けられた移動体電極32への印加電圧(図3(c))と、を同電位としている。このため、振動基板12と移動体31との間には静電吸着力が発生しない。従って、移動体31の慣性により、移動体31はその位置に留まろうとする。しかしながら、ガイド35によって定まる空間の略中央に配置された移動体31は、圧電素子21の変位に伴って変位した振動基板12上のガイド部材35a、35cに沿って右下方向に移動する。
【0030】
これに対して、図3の時点Gから時点Hの間では、逆に圧電素子21への印加波形は急峻に立ち上がり、圧電素子21が急激に右方向へ変位するのに伴い、振動基板12も急激に右方向へ変位する。このとき、振動基板12の振動基板電極14への印加電圧と、移動体31の移動体電極32への印加電圧と、の間には電位差を生じさせている。このため、振動基板12と移動体31との間に、静電吸着力が作用し、この間の摩擦力が増大する。従って、振動基板12の変位とともに移動体31も右方向へ移動する。
【0031】
以上のような、時点Eから時点Fまでの動作と、時点Gから時点Hまでの動作と、を繰り返すことにより、移動体31が振動基板12に対して右下方向へ移動することになる。
【0032】
以上説明したように、振動基板12が圧電素子21の変位方向にのみ変位するにも拘わらず、移動体31は振動基板12の変位方向、又は、この変位方向とは異なる方向へ、すなわち、これらの方向を含む平面内を移動することができる。また、移動体31の移動は、ガイド35によって規制されているため、位置検出機構を有さなくても所望の軌跡を移動することが可能となりコストダウンが可能となる。
【0033】
尚、ガイド35と移動体31の摩擦力を設定することにより、移動体31を自転させつつ移動させることも可能となる。具体的には、例えば、次のような構成によって、ガイド35と移動体31の摩擦力を設定することができる。
(1)ガイド35の側面のうち移動体31に接する面に凹凸を形成する。
(2)ガイド35の各部材の延びる方向と振動基板12の振動方向とがなす角度を直角に近づける。
(3)移動体31の平面形状を多角形又は円とする。
(4)移動体31の側面に凹凸を形成する。
【0034】
なお、第1の実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10では、ガイド35を振動基板12上に設けていたが、図4に示す慣性駆動アクチュエータ110のように、振動基板12上ではなく、固定部材11上にガイド135を設けても良い。この場合、圧電素子21の伸縮と同期するように振動基板12と移動体31との間に静電吸着力を発生させることで、ガイド部材135に当接しながら、そのガイド部材135に沿って移動体31を移動させることができる。ここで、図4(a)は、第1実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータ110の構成を示す平面図、(b)は(a)のIVB−IVB線における断面図である。
【0035】
(第2実施形態)
次に、図5を参照しつつ、第2実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ40について説明する。図5は、第2実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ40の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のVB−VB線における断面図である。
【0036】
図5(a)に示すように、慣性駆動アクチュエータ40は二つの移動体51、52を備える。また、慣性駆動アクチュエータ40は、振動基板12上において上方に突出するように形成された複数のガイド部材を備えたガイド55(規制部材)を備える。これらのガイド部材のうち、4つのガイド部材56a、56b、56c、56dによって領域56が形成される。また、領域56のガイド部材56aと、3つのガイド部材57b、57c、57dと、によって領域57が形成される。その他の構成は第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用する。
【0037】
領域56において、互いに対向するガイド部材56aとガイド部材56cの間隔は、移動体51の幅と略同一であり、これによって、移動体51は、ガイド部材56a及びガイド部材56cと摺動しつつ、領域56内を移動可能である。また、領域57において、互いに対向するガイド部材56cとガイド部材57cの間隔は、移動体52の幅と略同一であり、これによって、移動体52は、ガイド部材56c及びガイド部材57cと摺動しつつ、領域57内を移動可能である。
【0038】
慣性駆動アクチュエータ40においては、慣性駆動アクチュエータ10と同様に、圧電素子21を変位させることによって振動基板12を変位させる。さらに、慣性駆動アクチュエータ10の移動体31に対するのと同様に、移動体51、52がそれぞれ備える移動体電極(不図示)に電圧を印加することにより、移動体51、52と、振動基板12と、の間の静電吸引力を制御することができる。これにより、移動体51、52を領域56内及び領域57内で、それぞれ所望の方向へ移動させることができる。
【0039】
なお、移動体51、52への電圧印加は互いに独立して制御することができる。したがって、移動体51と移動体52を独立して移動させることが可能となる。尚、領域56及び/又は領域57内に、それぞれ複数の移動体を配置することも可能である。また、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0040】
また、第2実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ40においては、ガイド55を振動基板12上に設けていたが、図6に示す慣性駆動アクチュエータ140のように、振動基板12上ではなく、固定部材11上にガイド155を設けても良い。この場合、圧電素子21の伸縮と同期するように振動基板12と移動体51、52との間に静電吸着力を発生させることで、ガイド部材155に当接しながら、そのガイド部材155に沿って移動体51、52を移動させることができる。ここで、図6(a)は、第2実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータ140の構成を示す平面図、(b)は(a)のVIB−VIB線における断面図である。
【0041】
(第3実施形態)
つづいて、図7を参照して、第3実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ60について説明する。図7は、第3実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ60の構成を示す平面図である。
【0042】
図7に示すように、慣性駆動アクチュエータ60は、振動基板12上において上方に突出するように形成された複数のガイド部材からなるガイド75(規制部材)を備える。ガイド75は、互いに対向する円弧状のガイド部材75a、75cと、これらとそれぞれ接続したガイド部材75b、75dと、を備え、これらのガイド部材によって閉じた領域を形成している。ガイド部材75aとガイド部材75cの間隔は、円柱状の移動体71の外径と略同一であり、これによって、移動体71は、ガイド部材75a及びガイド部材75cと摺動しつつ、ガイド75の領域内を移動可能である。その他の構成は第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用する。
【0043】
慣性駆動アクチュエータ60においては、慣性駆動アクチュエータ10と同様に、圧電素子21を変位させることによって振動基板12を変位させる。さらに、慣性駆動アクチュエータ10の移動体31に対するのと同様に、移動体71が備える移動体電極(不図示)に電圧を印加することにより、移動体71と振動基板12との間の静電吸引力を制御することができる。これにより、移動体71をガイド75の領域内で所望の方向へ移動させることができる。
【0044】
ガイド5は、第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10や第2実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ40のような直線に限らず、また、ガイド部材75a、75cのような円弧状のほかに、任意の曲線とすることもできる。さらに、直線と曲線の複合も可能である。このようにガイド形状を任意に選択して、ガイドを構成するガイド部材に沿って移動体を移動させることができるため、移動体4は所望の軌跡を移動することが可能となる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0045】
また、第3実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ60においては、ガイド75を振動基板12上に設けていたが、図8に示す慣性駆動アクチュエータ160のように、振動基板12上ではなく、固定部材11上にガイド175を設けても良い。ここで、図8は、第3実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータ160の構成を示す平面図である。
【0046】
(第4実施形態)
次に、図9を参照して、第4実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ80について説明する。ここで、図9は、第4実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ80の構成を示す平面図である。
【0047】
図9に示すように、慣性駆動アクチュエータ80は、移動体91と、振動基板12上において上方に突出するように形成された複数のガイド部材からなるガイド95(規制部材)と、を備える。ガイド95は、4つのガイド部材95a、95b、95c、95dを備え、これらのガイド部材によって閉じた領域を形成している。その他の構成は第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ10と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用する。
【0048】
ガイド95において、対向するガイド部材95aとガイド部材95cとの間隔は、移動体91の外径より大きくなっている。
【0049】
慣性駆動アクチュエータ80においては、慣性駆動アクチュエータ10と同様に、圧電素子21を変位させることによって振動基板12を変位させる。また、慣性駆動アクチュエータ10の移動体31に対するのと同様に、移動体91が備える移動体電極(不図示)に電圧を印加することにより、移動体91と、振動基板12との間の静電吸引力を制御することができる。これにより、移動体91をガイド95の領域内で所望の方向へ移動させることができる。さらに、移動体91は、ガイド95の各ガイド部材に沿わずに移動させることもできるため、図9中の矢印で例示するようなヒステリシスを持つ移動が可能となる。
【0050】
尚、ガイド5の1つの間隔内に、複数の移動体を配置することも可能である。この場合は、各移動体への電圧印加は互いに独立して制御することができる。したがって、各移動体を互いに独立して移動させることが可能となる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0051】
また、第4実施形態に係る慣性駆動アクチュエータ80においては、ガイド95を振動基板12上に設けていたが、これに加えて、図10に示す慣性駆動アクチュエータ180のように、振動基板12上ではなく、固定部材11上に、ガイド95と交差するようにガイド195を設けても良い。また、振動基板12上に設けたガイド95に代えて、固定部材11上に設けたガイド195を用いても良い。ここで、図10は、第4実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータ180の構成を示す平面図である。
【0052】
図10のような構成により、移動体91をガイド95及びガイド195に当接させて移動させることが可能となり、ガイド95及びガイド195によって囲まれる領域内を任意に移動体91を移動させることができる。
【0053】
なお、以上の実施形態では、移動体に移動体電極を形成していたが、これに限らず、移動体を導電材料にすることにより、移動体電極を形成しなくても良い。更に、移動体を磁性材料にし、振動基板の移動体とは反対方向に永久磁石を配置することにより、移動体電極と振動基板電極の電位差を無くした場合でも移動体の位置を保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係る慣性駆動アクチュエータは、移動体を微小に変位させることが必要な小型機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は第1実施形態に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図、(b)は(a)のIB−IB線における断面図、(c)は移動体と振動基板の構成を示す(b)の一部拡大図である。
【図2】第1実施形態に係る移動体を図1(a)における左上方向に移動させる場合の駆動波形を示すグラフである。
【図3】第1実施形態に係る移動体を図1(a)における右下方向に移動させる場合の駆動波形を示すグラフである。
【図4】(a)は第1実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図、(b)は(a)のIVB−IVB線における断面図である。
【図5】(a)は第2実施形態に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図、(b)は(a)のVB−VB線における断面図である。
【図6】(a)は第2実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図、(b)は(a)のVIB−VIB線における断面図である。
【図7】第3実施形態に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図である。
【図8】第3実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図である。
【図9】第4実施形態に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図である。
【図10】第4実施形態の変形例に係る慣性駆動アクチュエータの構成を示す平面図である。
【図11】従来のアクチュエータの構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10 慣性駆動アクチュエータ
11 固定部材
12 振動基板
13 永久磁石
14 振動基板電極
15 絶縁層
21 圧電素子
27 バネ
31 移動体
32 移動体電極
35 ガイド(規制部材)
35a ガイド部材
35b ガイド部材
35c ガイド部材
35d ガイド部材
40 慣性駆動アクチュエータ
51 移動体
52 移動体
55 ガイド(規制部材)
56 領域
56a ガイド部材
56b ガイド部材
56c ガイド部材
56d ガイド部材
57 領域
57b ガイド部材
57c ガイド部材
57d ガイド部材
60 慣性駆動アクチュエータ
71 移動体
75 ガイド(規制部材)
75a ガイド部材
75b ガイド部材
75c ガイド部材
75d ガイド部材
80 慣性駆動アクチュエータ
91 移動体
92 移動体
95 ガイド(規制部材)
95a ガイド部材
95b ガイド部材
95c ガイド部材
95d ガイド部材
110 慣性駆動アクチュエータ
140 慣性駆動アクチュエータ
155 ガイド(規制部材)
160 慣性駆動アクチュエータ
175 ガイド(規制部材)
180 慣性駆動アクチュエータ
195 ガイド(規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
その一端が前記固定部材に隣接し、他端に変位が発生する変位発生手段と、
前記変位発生手段を変位させるための電圧を印加する駆動手段と、
前記変位発生手段の他端に接し、前記変位方向へ変位可能な振動基板と、
前記振動基板と対向するように配置され、慣性により前記振動基板に対して移動する移動体と、
前記移動体と前記振動基板との間の摩擦力を変化させる摩擦制御手段と、を備える慣性駆動アクチュエータにおいて、
前記移動体が前記振動基板の変位方向又は前記変位方向とは異なる方向へ移動するように、
前記固定部材及び前記振動基板の少なくとも一方に、前記移動体の移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とした慣性駆動アクチュエータ。
【請求項2】
前記振動基板は、振動基板電極を有し、
前記移動体は、前記振動基板電極と対向する位置に移動体電極を有し、
前記振動基板電極と前記移動体電極との間に絶縁層が配置され、
前記摩擦手段は、前記移動体電極と前記振動基板電極との間に電位差を発生させ、この電位差に基づく静電引力により、前記振動基板と前記移動体との間の摩擦力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の慣性駆動アクチュエータ。
【請求項3】
前記規制部材は、相互に間隔を空けて設けられ、前記規制部材の間に前記移動体を配置され、前記移動体が前記規制部材に沿って移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の慣性駆動アクチュエータ。
【請求項4】
前記移動体は、前記規制部材との摩擦力と、前記振動基板の変位により、回転することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の慣性駆動アクチュエータ。
【請求項5】
前記移動体は導電材料にて形成されたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の慣性駆動アクチュエータ。
【請求項6】
前記振動基板の前記移動体とは反対に配置された永久磁石を備え、前記移動体が磁性材料にて形成されたことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の慣性駆動アクチュエータ。
【請求項7】
移動体は複数であって、前記複数の移動体を独立制御可能なことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の慣性駆動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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