説明

成分分布分析方法、成分分布分析装置、および、プログラム

【課題】得られた蛍光指紋から対象成分の分布を可視化する成分分布分析において、更に、目的とする成分の同定を行うことができ、かつ、成分を定量的に評価することができる成分分布分析方法、成分分布分析装置、および、プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得し、各測定箇所ごとに取得した測定対象物の蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して類似度指標を計算し、類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定し、各測定箇所に彩色すべき色をカラーマッピングし、測定対象物に含まれる成分を可視化した画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分分布分析方法、成分分布分析装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
成分の分布状態は試料である測定対象物の性質に大きく関わっているため、従来から、目的とする成分分布を可視化する技術が多数開発されている。例えば、一般的に、測定対象物中の特定成分の分布の可視化には、染色を行い光学顕微鏡で観察する方法、または、凍結および乾燥を経て電子顕微鏡で観察する方法が用いられている。
【0003】
しかし、従来の目的とする成分分布を可視化する技術においては、測定対象物の染色、凍結、乾燥などの前処理を行う必要があった。これらの前処理の操作は、測定対象物に影響を与えてしまうため、測定のためのサンプリングが必要となり、また、前処理においては、多くの時間や熟練した技術を要し、更に、測定対象物を変質させてしまう可能性を有していた。加えて、前処理において測定対象物を均一に染色することは非常に難しいため、定量性を得ることが非常に困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、近年、前処理を行わずにより簡便に、非破壊で目的とする成分分布を可視化する手法の開発が望まれていた。
【0005】
例えば、本出願人による特許文献1に記載の成分分布可視化方法においては、測定対象物を染色することなく、測定対象物に対して照射する励起波長、および、測定対象物から観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定することにより取得した励起・蛍光マトリクス(Excitation Emission Matrix:EEM)(別名、「蛍光指紋」)を統計解析処理で情報圧縮して特徴的な蛍光特性を抽出し、抽出した蛍光特性に対応する色を用いてカラーマッピングすることにより測定対象物の複数成分を同時に画像表示している。
【0006】
ここで、上記特許文献1および非特許文献1に記載される「蛍光指紋」とは、励起・蛍光マトリクス(Excitation−Emission Matrix: EEM)ともよばれ、測定対象物に照射する励起光の波長を連続的に変化させながら蛍光スペクトルを測定することによって得られる3次元データを意味する。蛍光指紋の形状は指紋のように成分特異的に決定されるため、測定者は、蛍光指紋に基づいて通常の単一波長での蛍光測定だけでは判別できない微妙な成分の差異を検出することができる。更に、測定者は、この蛍光指紋情報に加えて、位置情報(すなわち、画像における各画素の位置を示す空間情報)を伴って、各画素ごと、あるいは画素ブロックごとに蛍光指紋を測定する蛍光指紋イメージングを用いることで、測定対象物中の特定成分の分布を可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3706914号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】下山進、野田裕子著、「三次元蛍光スペクトルにおける古代染織遺物に使用された染料の非破壊計測的計測」、分析化学、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の成分分布可視化方法(例えば、特許文献1および非特許文献1等)においては、前処理を行わずにより簡便に、非破壊で目的とする成分分布を可視化することができるものの、可視化した成分分布が目的とする成分であるかを確認するために、成分の同定を行うことについては考慮していないという問題点を有していた。また、目的とする成分の量がどれくらいの量であるかなど成分を定量的に評価することまでは保証されていないという問題点を有していた。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、得られた蛍光指紋から対象成分の分布を可視化する成分分布分析において、更に、目的とする成分の同定を行うことができ、かつ、成分を定量的に評価することができる成分分布分析方法、成分分布分析装置、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するため、本発明の成分分布分析方法は、測定対象物を分析する成分分布分析方法であって、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、前記測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、前記蛍光指紋情報取得工程にて各測定箇所ごとに取得した前記測定対象物の前記蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する類似度指標計算工程、前記類似度指標計算工程にて計算された前記類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定工程、および、前記各測定箇所に前記色決定工程にて決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、前記測定対象物に含まれる前記成分を可視化した画像を取得する成分分布可視化工程、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の成分分布分析方法は、上記記載の成分分布分析方法において、前記成分分布可視化工程にて取得された、前記画像と、当該画像の前記成分とは別の成分を可視化した別の画像と、を合成して、前記測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する合成画像作成工程、を更に含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の成分分布分析方法は、上記記載の成分分布分析方法において、前記類似度指標は、コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の成分分布分析方法は、上記記載の成分分布分析方法において、前記成分は、生体由来の成分であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の成分分布分析方法は、上記記載の成分分布分析方法において、前記生体由来の成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の成分分布分析装置は、測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を観察する分光撮影装置とを備えた、前記測定対象物の成分分布を分析する成分分布分析装置であって、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、前記測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得部、前記蛍光指紋情報取得部により各測定箇所ごとに取得した前記測定対象物の前記蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する類似度指標計算部、前記類似度指標計算部により計算された前記類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定部、および、前記各測定箇所に前記色決定部により決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、前記測定対象物に含まれる前記成分を可視化した画像を取得する成分分布可視化部、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の成分分布分析装置は、上記記載の成分分布分析装置において、前記成分分布可視化部により取得された、前記画像と、当該画像の前記成分とは別の成分を可視化した別の画像と、を合成して、前記測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する合成画像作成部、を更に備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の成分分布分析装置は、上記記載の成分分布分析装置において、前記類似度指標は、コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の成分分布分析装置は、上記記載の成分分布分析装置において、前記成分は、生体由来の成分であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の成分分布分析装置は、上記記載の成分分布分析装置において、前記生体由来の成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のプログラムは、測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を観察する分光撮影装置とを備えた、前記測定対象物の成分分布を分析する成分分布分析装置に実行させるためのプログラムであって、上記成分分布分析装置において、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、前記測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、前記蛍光指紋情報取得工程にて各測定箇所ごとに取得した前記測定対象物の前記蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する類似度指標計算工程、前記類似度指標計算工程にて計算された前記類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定工程、および、前記各測定箇所に前記色決定工程にて決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、前記測定対象物に含まれる前記成分を可視化した画像を取得する成分分布可視化工程、を実行させることを特徴とする。
【0022】
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記成分分布可視化工程にて取得された、前記画像と、当該画像の前記成分とは別の成分を可視化した別の画像と、を合成して、前記測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する合成画像作成工程、を更に実行させることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記類似度指標は、コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記成分は、生体由来の成分であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記生体由来の成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0026】
このように、本発明は、蛍光指紋とイメージング手法を組み合わせた蛍光指紋イメージングを用いて測定対象物の各画素単位で蛍光指紋を測定し、目的とする成分単品の蛍光指紋との類似度を調べ、その類似度を色に変換することによって、目的とする成分である目的成分の分布を定量的に可視化し、評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物の蛍光画像を構成する各画素単位、あるいは画素ブロック単位を測定箇所として蛍光強度を測定することにより、測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得し、各測定箇所ごとに取得した測定対象物の蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分(目的成分)の蛍光指紋情報とを比較して、両者間の類似度に相当する指標(すなわち、類似度指標)を計算し、計算された類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定し、各測定箇所に決定された彩色すべき色をカラーマッピングすることにより、類似度指標を色で可視化した画像が取得される。その結果、各測定箇所において目的とする成分の同定を行うことができ、かつ、成分を定量的に評価することができるという効果を奏する。これにより、本発明は、予め特定した目的成分の分布を定量性をもって可視化することができるという効果を奏する。また、本発明は、目的とする成分が複数であっても、予め取得された複数の目的成分の蛍光指紋が既知であれば、測定対象物の蛍光指紋イメージングを計測することで、類似度は成分毎に計算されるため、複数の目的成分の分布を定量的に別々に可視化することができるという効果を奏する。
【0028】
また、この発明によれば、取得されたある目的成分の可視化画像と当該画像の成分とは別の成分を異なった色で可視化した別の画像とを合成して、測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成するので、可視化された各成分の分布を重ね合わせた状態で評価することになり、各成分の関係性を調べることができるという効果を奏する。
【0029】
また、この発明によれば、類似度指標は、コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つを用いることができる。これにより、本発明は、多変量パラメータからなる蛍光指紋の比較を類似度指標という一つの連続した指標に置換することにより、目的とする成分の同定をより正確に行うことができ、かつ、成分の定量性をより正確に得ることができるという効果を奏する。
【0030】
また、この発明によれば、蛍光指紋が取得できる成分であれば原理的には可視化ができる。蛍光指紋を有する成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、脂質あるいは、これらの複合物、およびその他の生体由来の成分が考えられ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つを含めば、成分分布分析を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。
【図2】図2は、図1の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。
【図3】図3は、本発明の成分分布分析方法の処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、蛍光画像の一例を示す図である。
【図5】図5は、測定対象物の蛍光画像の各画素における蛍光指紋の一例を示す図である。
【図6】図6は、予め取得された目的成分の蛍光指紋の一例を示す図である。
【図7】図7は、コサイン類似度の一例を示す図である。
【図8】図8は、コサイン類似度の一例を示す図である。
【図9】図9は、コサイン類似度の一例を示す図である。
【図10】図10は、異なる類似度指標の蛍光指紋と色軸の一例を示す図である。
【図11】図11は、測定対象物グルテンに対して、目的成分グルテンの蛍光指紋との類似度指標を求め、グルテンを可視化した画像の一例を示す図である。
【図12】図12は、測定対象物パン生地に対して、目的成分グルテンの蛍光指紋との類似度指標を求め、パン生地中のグルテンを可視化した画像の一例を示す図である。
【図13】図13は、測定対象物デンプンに対して、目的成分グルテンの蛍光指紋との類似度指標を求め、デンプン中のグルテンを可視化した画像の一例を示す図である。
【図14】図14は、測定対象物グルテンに対して、目的成分デンプンの蛍光指紋との類似度指標を求め、グルテン中のデンプンを可視化した画像の別の一例を示す図である。
【図15】図15は、測定対象物パン生地に対して、目的成分デンプンの蛍光指紋との類似度指標を求め、パン生地中のデンプンを可視化した画像の別の一例を示す図である。
【図16】図16は、測定対象物デンプンに対して、目的成分デンプンの蛍光指紋との類似度指標を求め、デンプンを可視化した画像の別の一例を示す図である。
【図17】図17は、図12のグルテンを可視化したパン生地の画像と、図15のデンプンを可視化したパン生地の画像とを合成した合成画像の一例を示す図である。
【図18】図18は、本実施形態の成分分布分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図19】図19は、蛍光画像撮影装置の一例を示すブロック図である。
【図20】図20は、蛍光画像撮影装置の一例を示す斜視図である。
【図21】図21は、ローダミンBによりグルテンを赤色に染色したグルテンの染色画像の一例を示す図である。
【図22】図22は、FITCによりデンプンを緑色に染色したデンプンの染色画像の一例を示す図である。
【図23】図23は、図21のグルテンの染色画像と、図22のデンプンの染色画像とを合成した合成染色画像の一例を示す図である。
【図24】図24は、図17の合成画像について、デンプンとのコサイン類似度とグルテンとのコサイン類似度との補完関係を示す図である。
【図25】図25は、図23の合成染色画像について、デンプンの蛍光強度とグルテンの蛍光強度との補完関係を示す図である。
【図26】図26は、ミキシング不足段階のパン生地の合成画像の一例を示す図である。
【図27】図27は、最適ミキシング段階のパン生地の合成画像の一例を示す図である。
【図28】図28は、ミキシング過剰段階のパン生地の合成画像の一例を示す図である。
【図29】図29は、成分分布が不均一の場合における成分分布定量化処理の一例を示す図である。
【図30】図30は、成分分布が不均一の場合における成分分布定量化処理の別の一例を示す図である。
【図31】図31は、成分分布が均一の場合における成分分布定量化処理の一例を示す図である。
【図32】図32は、成分分布が均一の場合における成分分布定量化処理の別の一例を示す図である。
【図33】図33は、成分分布の定量化結果の一例を示す図である。
【図34】図34は、各ミキシング段階における成分分布の均一さの一例を示す図である。
【図35】図35は、各ミキシング段階における気泡面積割合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の形態にかかる〔I〕成分分布分析方法および〔II〕成分分布分析システム並びにプログラムの好適な実施の形態の例を、図1〜図20を参照し詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0033】
〔I〕成分分布分析方法
まず、図1および図2を参照し、蛍光指紋について説明する。ここで、図1は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。また、図2は、図1の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。
【0034】
本実施形態において、「蛍光指紋」とは、図1に示すように、測定対象物に照射する励起波長λEx、測定対象物から発する発光の蛍光波長λEm、測定対象物の蛍光強度IEx,Emの3軸からなる3次元データの等高線状のグラフである。
【0035】
また、図2に示すように、「蛍光指紋」は、横軸を蛍光波長、縦軸を励起波長として各ポイントの蛍光強度を等高線プロットすることにより平面的に表すことができる。蛍光指紋は、測定対象物に対し蛍光染色等の前処理をせずにキャラクタリゼーションが可能であること、操作が容易で短時間で測定できること、さらに紫外部吸光度に比べ感度が高いなどの長所を有することから、食品等の内部構造の分析や、大気中の浮遊物の測定や、染料の原料特定などに汎用されている手法である。
【0036】
本実施形態において、本成分分布分析方法は、この蛍光指紋を利用して、3次元の膨大な情報量(データ量)から目的とする成分固有の蛍光情報のみを非破壊で計測して抽出し、物質の内部の成分分布を可視化するものであり、更に、成分の同定(識別)を行い、成分を定量的に評価する(例えば、成分の定量性を得る)ものである。
【0037】
以下、一例として、測定対象物としてパン生地を蛍光指紋に基づいて計測・解析することによりパン生地中のグルテンおよび/またはデンプンの分布を可視化する処理について、図3のフローチャートに沿って適宜図4〜図17を参照しつつ説明する。
【0038】
図3に示すように、本成分分布分析方法において、まず前提として成分分布を分析する測定対象物が測定者により準備される(ステップS1)。
【0039】
ここで、本実施形態において、「測定対象物」とは、蛍光指紋を用いて成分分布を分析する際の測定対象である試料を意味する。一例として、測定対象物は、例えば、穀粉製品(例えば、パン生地、うどんやそば等の麺類、クッキーやケーキ等の菓子類など)を少なくとも含んでもよい。なお、本実施形態において、測定対象物は、これらに限定されず、蛍光指紋を用いて成分分布を分析可能なその他の試料であってもよい。
【0040】
また、本実施形態において、「成分」は、測定対象物に含まれる成分を意味する。一例として、成分は、例えば、生体由来の成分であってもよい。また、生体由来の成分は、例えば、タンパク質(例えば、グルテン等)、澱粉(デンプン)、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。なお、本実施形態において、成分は、これらに限定されず、これらの成分の複合物、および/または、その他の生体由来の成分であってもよい。
【0041】
そして、本成分分布分析方法では、次に蛍光指紋情報取得工程において、ステップS1にて準備された測定対象物の蛍光指紋を各画素ごとに測定する(ステップS2)。すなわち、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物上の複数の測定箇所(すなわち、測定対象物の蛍光画像を構成する各画素単位あるいは画素ブロック単位)における蛍光強度を測定して、測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する。
【0042】
ここで、図4を参照し、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程の一例について説明する。ここで、図4は、蛍光画像の一例を示す図である。
【0043】
例えば、図4に示すように、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、撮影された例えば63枚の蛍光画像の測定範囲内における例えば1344×1024の画素(ピクセル)1つずつについて蛍光指紋を測定する。この際、測定者は、励起波長(例えば、260〜320nmの範囲内で10nm間隔ごとの7波長)と蛍光波長(例えば、370〜450nmの範囲において10nm間隔で9波長)の組み合わせを変えながら、合計63通りの波長条件で、測定対象物(例えば、パン生地)の蛍光画像を撮影する。ここで、1画素について撮影画像方向に串刺しにして63個の輝度値を抽出し、励起波長軸と蛍光波長軸にプロットすれば、その画素における蛍光指紋を図5に示すように描画することができる。
【0044】
すなわち、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、測定対象物について、照射する励起波長および観測する蛍光波長の組み合わせが異なる63波長条件で蛍光画像を撮影し、それぞれの蛍光画像における各画素の蛍光強度から、測定対象物上の各測定箇所における蛍光指紋情報を取得する。
【0045】
図3に戻り、本成分分布分析方法では、次に類似度指標計算工程において、ステップS2にて蛍光指紋情報取得工程にて各測定箇所ごとに取得した測定対象物(例えば、パン生地)の蛍光指紋情報と、予め取得された目的成分(例えば、グルテン、デンプン等)の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する(ステップS3)。
【0046】
ここで、本実施形態において、「類似度指標」とは、測定対象である試料(例えば、測定対象物としてのパン生地)の蛍光指紋と、目的成分(例えば、グルテン、デンプン等)の蛍光指紋との指紋パターンの類似度を示す縮尺を意味する。例えば、類似度指標は、コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであってもよい。なお、本実施形態において、類似度指標は、これらに限定されず、蛍光指紋のパターンの類似度を示すその他の指標であってもよい。
【0047】
ここで、図5および図6を参照し、ステップS3の類似度指標計算工程において、類似度指標としてコサイン類似度を計算する場合の一例について説明する。ここで、図5は、測定対象物の蛍光画像の各画素における蛍光指紋の一例を示す図である。また、図6は、予め取得された目的成分の蛍光指紋の一例を示す図である。
【0048】
例えば、ステップS3の類似度指標計算工程においては、蛍光指紋の各画素から成分の特定を行うために、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得された成分が未知である測定対象物の蛍光指紋(図5参照)と、予め取得された目的成分(ターゲット成分)の蛍光指紋(図6参照)との類似度に着目して解析する。ここで、一例として、測定対象物はパン生地の1つ1つの画素とし、目的成分はグルテンとデンプンとする。つまり、ステップS3の類似度指標計算工程において、測定対象物(例えば、パン生地)に含まれる目的成分(例えば、グルテン、デンプン等)の量または存在確率と、測定対象物と目的成分との間の蛍光指紋の類似度には相関があるという前提の下、蛍光指紋の類似度(例えば、コサイン類似度)を計算する。
【0049】
ここで、本実施形態において、「コサイン類似度」とは、以下に示すように、2つのベクトル(例えば、ベクトルx、ベクトルy)がなす角度の余弦に基づく類似度であり、ベクトルの内積を、2つのベクトルの長さの積で割った値である。
【0050】
コサイン類似度=ベクトルxとベクトルyのCosθ
=ベクトルの内積/ベクトルの長さ
=x・y/(|x|*|y|)
=(x+x+…+x)/((x+x+…+x)*(y+y+…+y))1/2
【0051】
ここで、図7〜図9を参照し、コサイン類似度の一例について説明する。図7の「Cosθ=−1」に示すように、最小値の−1では2つのベクトル(例えば、ベクトルx、ベクトルy)方向が逆になり類似度が低いことを示す。逆に、図8の「Cosθ=1/2」および図9の「Cosθ=1」に示すように、最大値1に近いほど、2つのベクトル(ベクトルx、ベクトルy)の向きが一致しており類似度が高いことを示す。なお、図7〜図9では、説明のため、n=2の場合の2次元ベクトルの場合を例示しているが、本実施形態では、63通りの波長条件であることから、n=63として同じ計算方法で測定した63次元の蛍光指紋情報の類似度を計算することができる。
【0052】
図3に戻り、本成分分布分析方法では、次に色決定工程において、ステップS3における類似度(例えば、コサイン類似度)から各画素の色を決定する(ステップS4)。すなわち、ステップS4の色決定工程において、ステップS3の類似度指標計算工程にて計算された類似度指標(例えば、図7〜図9に示すコサイン類似度)に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する。
【0053】
ここで、図10を参照し、ステップS3にて類似度指標計算工程にて類似度指標としてコサイン類似度を計算した場合における、ステップS4の色決定工程の一例について説明する。ここで、図10は、異なる類似度指標の蛍光指紋と色軸の一例を示す図である。
【0054】
例えば、図10に示すように、ステップS4の色決定工程において、ステップS3の類似度指標計算工程にて計算されたコサイン類似度(例えば、図7〜図9に対応するCosθ〜Cosθ)の値を視覚的に表現するために、図10に示すような色軸を用いて、コサイン類似度の大小(図10において、Cosθ<Cosθ<Cosθ)と、色軸の明暗とを対応させて、色スケールへの変換を行う。なお、本実施形態においては、一例として、グルテンとのコサイン類似度は赤色の明暗の色で対応させ、デンプンとのコサイン類似度は緑色の明暗の色で対応させている。
【0055】
図3に戻り、本成分分布分析方法では、次に成分分布可視化工程において、ステップS4の色決定工程にて決定された色に従って色づけを行うことにより、画像を作成する(ステップS5)。すなわち、ステップS5の成分分布可視化工程において、各測定箇所にステップS4の色決定工程にて決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、測定対象物に含まれる成分(例えば、グルテン、デンプン等)を可視化した画像を取得する。ここで、本実施形態において、成分分布可視化工程において取得された画像は、カラー画像であってもよく、モノクロ画像であってもよい。
【0056】
ここで、図11〜図16を参照し、ステップS5の成分分布可視化工程において、ステップS4の色決定工程にて色決定された色に従って色づけした画像の一例ついて説明する。
【0057】
ここで、図11は、測定対象物グルテンに対して、目的成分グルテンの蛍光指紋との類似度指標を求め、グルテンを可視化した画像の一例を示す図である。また、図12は、測定対象物パン生地に対して、目的成分グルテンの蛍光指紋との類似度指標を求め、パン生地中のグルテンを可視化した画像の一例を示す図である。また、図13は、測定対象物デンプンに対して、目的成分グルテンの蛍光指紋との類似度指標を求め、デンプン中のグルテンを可視化した画像の一例を示す図である。また、図14は、測定対象物グルテンに対して、目的成分デンプンの蛍光指紋との類似度指標を求め、グルテン中のデンプンを可視化した画像の別の一例を示す図である。また、図15は、測定対象物パン生地に対して、目的成分デンプンの蛍光指紋との類似度指標を求め、パン生地中のデンプンを可視化した画像の別の一例を示す図である。また、図16は、測定対象物デンプンに対して、目的成分デンプンの蛍光指紋との類似度指標を求め、デンプンを可視化した画像の別の一例を示す図である。
【0058】
例えば、ステップS5の成分分布可視化工程において、ステップS4の色決定工程にて図10に示すような色軸に基づいて各画素に当てはめられた色を用い、図11〜図16に示すような測定対象物(例えば、パン生地)に含まれる成分(例えば、グルテン、デンプン等)を可視化した画像を取得する。
【0059】
一例として、図11〜図13に示す画像は、目的成分であるグルテンの蛍光指紋とのコサイン類似度の値に色を対応させて描画した画像を示す。ここで、図11のグルテンの画像内の(i)が示す部分は、気泡を示す。また、図12のパン生地の画像において、(ii)が示す赤色部分は、グルテンの成分を示す。また、図13のデンプンの画像は、目的成分であるグルテンの蛍光指紋とのコサイン類似度の色に対応させて描画した画像であるため、デンプンとグルテンとの類似度が低いことを示す暗色(例えば、黒色)(iii)で表されている。
【0060】
また、別の一例として、図14〜図16に示す画像は、目的成分であるデンプンの蛍光指紋とのコサイン類似度の値に色を対応させて描画した画像を示す。ここで、また、図14のグルテンの画像は、目的成分であるデンプンの蛍光指紋とのコサイン類似度の色に対応させて描画した画像であるため、グルテンとデンプンとの類似度が低いことを示す暗色(例えば、黒色)(iv)で表されている。また、図15のパン生地の画像において、(v)が示す緑色部分は、デンプンの成分を示す。また、図16のデンプンの画像内の(vi)が示す部分は、気泡を示す。
【0061】
このように、本実施形態では、ステップS4の色決定工程およびステップS5の成分分布可視化工程において、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得された63波長条件(7波長の励起波長×9波長の蛍光波長の条件)における測定対象物(例えば、パン生地)の蛍光画像の各画素について、ステップS3の類似度指標計算工程にて計算された測定対象物と目的成分(例えば、グルテン、デンプン等)との類似度(例えば、コサイン類似度)に基づき、当該類似度に対応した色を画素に当てはめることにより、蛍光指紋の擬似画像(図11〜図16参照)を作成する。
【0062】
ここで、本実施形態において、図11〜図16に示す画像に用いるカラースケール(色軸)は、任意の色の組み合わせであってもよい。例えば、図11〜図13に示すような画像においては、グルテンの色を赤色として、類似度指標が低い部分を黒色とし、類似度指標が高い部分を赤色(図12(ii)参照)で表しているが、これは、グルテンの染色画像(例えば、ローダミンBによりグルテンを赤色に染色した画像(後述の図21を参照)との類似性を持たせるために黒色と赤色の組み合わせを用いたものであり、実際には任意の色の組み合わせであってもよい。同様に、図14〜図16に示すような画像においては、デンプンの色を緑色として、類似度指標が低い部分を黒色とし、類似度指標が高い部分を緑色(図15(v)参照)で表しているが、これは、デンプンの染色画像(例えば、FITCによりデンプンを緑色に染色した画像(後述の図22を参照))との類似性を持たせるために黒色と緑色の組み合わせを用いたものであり、実際には任意の色の組み合わせであってもよい。
【0063】
図3に戻り、本成分分布分析方法では、次に合成画像作成工程において、ステップS5にて成分分布可視化工程にて取得された、画像(例えば、図12に示す、グルテンを可視化したパン生地の画像)と、当該画像の成分(例えば、グルテン)とは別の成分(例えば、デンプン)を可視化した別の画像(例えば、図15に示す、デンプンを可視化したパン生地の画像)と、を合成して、測定対象物(例えば、パン生地)に含まれる複数の成分(例えば、グルテン、デンプン等)を同時に可視化した合成画像を作成する(ステップS6)。ここで、本実施形態において、合成画像作成工程において作成された合成画像は、カラー画像であってもよく、モノクロ画像であってもよい。
【0064】
ここで、図17を参照し、ステップS6の合成画像作成工程において作成された合成画像の一例について説明する。ここで、図17は、図12のグルテンを可視化したパン生地の画像と、図15のデンプンを可視化したパン生地の画像とを合成した合成画像の一例を示す図である。なお、本実施形態において、グルテンを可視化したパン生地の画像(図12参照)とデンプンを可視化したパン生地の画像(図15参照)について合成画像作成工程の処理を説明するが、当該合成画像作成工程の処理において、2種類の成分(例えば、グルテン、デンプン等)に限られず、2種類以上の複数の成分について可視化した2枚以上の画像についても同様に合成することができる。
【0065】
例えば、ステップS6の合成画像作成工程において、ステップS5にて成分分布可視工程にて取得したグルテンとデンプンの蛍光指紋とのコサイン類似度から求めた画像を合成して、図17に示すような、測定対象物(例えば、パン生地)に含まれる複数の成分(例えば、グルテン、デンプン等)を同時に可視化した合成画像を取得する。ここで、図17の合成画像において、(i)が示す赤色部分のグルテンの分布と(ii)が示す緑色部分のデンプンの分布とが相補的である。つまり、図17の合成画像は、グルテンが多い部分(すなわち、(i)が示す赤色部分)にはデンプンが少なく、デンプンが多い部分(すなわち、(ii)が示す緑色部分)にはグルテンが少ないことを示しているため、実際の分布の状態を適切に反映している。ここで、図17中の(iii)が示す部分は、気泡を示す。
【0066】
なお、本実施形態において、測定対象物としてパン生地の成分分布の可視化を例に、本成分分布分析方法について説明したが、測定対象物、蛍光指紋の測定条件、類似度指標の計算方法、カラーマッピング等の各種条件については、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜選択できる。
【0067】
〔II〕成分分布分析システム
次に、本発明の成分分布分析システムの構成について図18〜図20を参照し実施形態を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施の形態における成分分布分析システム(蛍光指紋イメージングシステム)が備える蛍光画像撮影装置および成分分布分析装置は、前述の本成分分布分析方法に好適に使用できるものであるが、本成分分布分析方法に用いる測定装置はこれに限定されるものではない。
【0068】
ここで、図18は、本実施形態の成分分布分析システムの構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0069】
図18に示すように、成分分布分析システムは、蛍光画像撮影装置10および成分分布分析装置20を備えている。蛍光画像撮影装置10は、蛍光指紋情報を取得する装置であり、分光照明装置11および分光撮影装置12を備えている。また、成分分布分析装置20は、蛍光画像撮影装置10で取得した蛍光指紋情報から、測定対象物13の成分分布を分析し可視化する装置であり、メモリ21、制御部23、計算処理部24を備えており、測定者はキーボード・マウス22により、成分分布分析装置20に測定条件等を入力する。
【0070】
すなわち、本発明において、分光照明装置11は、測定対象物13に所定の励起波長を照射し、分光撮影装置12は、所定の蛍光波長で測定対象物13を観察する。また、成分分布分析装置20は、分光照明装置11および分光撮影装置12を備えて構成され、測定対象物13の成分分布を分析する。
【0071】
ここで、図19は、蛍光画像撮影装置10の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0072】
図19に示すように、蛍光画像撮影装置10は、分光照明装置11および分光撮影装置12を備えている。分光照明装置11は、測定対象物13に、所定の波長の励起光を照射して測定対象物13の成分から蛍光を生じさせる装置である。分光照明装置11は、照射する励起波長を任意に変える励起波長可変手段を有する。
【0073】
分光撮影装置12は、所定の蛍光波長において、測定対象物13の蛍光画像を撮影し、画像情報を成分分布分析装置20に送信する装置である。分光撮影装置12は、測定対象物13が発した蛍光のうち、特定の蛍光波長を選択的に捕えて、蛍光画像を撮影する。分光撮影装置12は、観察する蛍光波長を任意に変える蛍光波長可変手段を有する。
【0074】
ここで、図20の蛍光画像撮影装置10の一例を示す斜視図を説明する。
【0075】
図20の例において、分光照明装置11は、光源110、分光装置112、励起波長調節部114、光ファイバー116、励起光照射部118を備えている。また、分光撮影装置12は、光学部120、分光装置122、画像撮影装置124を備えている。
【0076】
分光照明装置11の光源110としては、白色光を発するキセノンランプ、タングステンランプ、波長可変レーザー等を用いることができる。光源110から発した光は、例えば、紫外から可視領域までの広い波長帯からなり、分光装置112において、所定の波長を有する励起光に分光される。測定者は、励起波長調節部114を調節することにより、励起光を任意の波長に設定することができる。光源110として波長可変レーザーを用いる場合、直接光源100から所望の波長を有する励起光が得られるので、分光装置112は不要である。
【0077】
分光装置112としては、例えば、バンドパスフィルタ(BPF)、AOTF(Acoustic Optical Tunable Filter)、液晶チューナブルフィルタ、干渉フィルタ、回折格子などを用いることができる。また、光源110と分光装置112とを一体化したLED光源、DLP光源等を用いてもよい。
【0078】
分光装置112において所定の波長を有する励起光に変換された光は、光ファイバー116を経由して励起光照射部118に送られ、励起光照射部118から測定対象物13に均一に照射される。所定の励起波長を有する励起光を照射することにより、測定対象物13は、成分特有のパターンの蛍光を発する。ここで、励起光照射部118としては、例えば、ロッドレンズ等を用いることができる。
【0079】
光学部120により、測定対象物13を画像撮影に適した大きさに拡大する。光学部120は、例えば、対物レンズ、顕微鏡、ズームレンズ、マクロレンズ、広角レンズ等である。測定対象物13が画像を撮影するために十分な大きさを有する場合は、光学部120を使用しなくても撮影可能である。
【0080】
励起光を照射することにより、測定対象物13が発した蛍光は、分光装置122により所定の波長を有する光に分光される。分光装置122は、観測する蛍光波長を任意に設定する手段を有する。分光装置122としては、例えば、バンドパスフィルタ(BPF)、AOTF(Acoustic Optical Tunable Filter)、液晶チューナブルフィルタ、PGP(プリズム・グレーティング・プリズム)、干渉フィルタ、回折格子などを用いることができる。
【0081】
分光装置122を通過することにより、測定対象物13が発した蛍光のうち所定の波長を有する光のみが画像撮影装置124によって画像として撮影される。画像撮影装置124としては、モノクロ画像および/またはカラー画像を撮影可能なCCDカメラ、走査型画像カメラ等を用いることができる。
【0082】
画像撮影装置124により得られた画像の各画素の明度から、測定対象物13上の各測定箇所における蛍光強度が判明する。すなわち、測定対象物13上の各測定箇所について、各測定箇所の対応する位置の画素の明度から、特定の励起波長λEx(照射波長)および特定の蛍光波長λEm(観測波長)における蛍光強度IEx,Emの情報が得られる。したがって、蛍光画像撮影装置10を用いることにより、測定対象物13上の全ての点(画素)において、特定の励起波長および蛍光波長における蛍光強度を、一度に測定することが可能となる。
【0083】
測定対象物13上の各点においてn次元の蛍光指紋情報を取得する場合は、励起波長および蛍光波長の組み合わせを変えながらn枚の蛍光画像を撮影する。画像撮影装置124によって撮影されたn枚の蛍光画像の画像情報は、成分分布分析装置20に転送される。
【0084】
照射する励起波長および観測する蛍光波長は、手動または自動で、測定者が任意に変えることができる。好ましくは、蛍光画像撮影装置10は、励起波長、蛍光波長を自動的に変更する手段を有する。
【0085】
ここで、図18に戻り、成分分布分析装置20について説明する。
【0086】
図18に示すように、成分分布分析装置20は、分光撮影装置12の画像撮影装置124によって撮影されたn枚の蛍光画像の画像情報から、各画素ごとに蛍光指紋情報を取得する(図18において、蛍光指紋情報取得部24−1による処理)。次いで、各測定箇所ごとに取得した測定対象物13の蛍光指紋情報と、メモリ21に記憶される予め取得された目的成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する(図18において、類似度指標計算部24−2による処理)。次いで、計算された類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する(図18において、色決定部24−3による処理)。次いで、各測定箇所に決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、測定対象物13に含まれる成分を可視化した画像を取得する(図18において、成分分布可視化部24−4による処理)。次いで、取得された画像と当該画像の成分とは別の成分を可視化した別の画像とを合成して、測定対象物13に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する(図18において、合成画像作成部24−5による処理)。
【0087】
メモリ21は、画像撮影装置124から成分分布分析装置20へ転送され、計算処理部24の蛍光指紋情報取得部24−1により取得された画像情報や、計算処理部24の類似度指標計算部24−2により類似度指標を計算する際にコントロール(比較対照)として参照される、予め取得された目的成分の蛍光指紋情報等を格納する。
【0088】
制御部23は、測定者の入力した励起波長範囲、蛍光波長範囲、波長ピッチで測定対象物13の蛍光画像を撮影するように、分光照明装置11が照射する励起波長、および、分光撮影装置12が観測する蛍光波長を調整する指示を行い、また、計算処理部24に処理を行うよう命令する。
【0089】
計算処理部24の蛍光指紋情報取得部24−1により、測定対象物13上の複数の測定箇所において、取得された蛍光指紋情報(すなわち、蛍光画像撮影装置10から転送されたn枚の蛍光画像の画像情報)は、成分分布分析装置20のメモリ21に格納される。測定者がキーボード・マウス22を通じて、計算処理部24に対して処理を行うよう命令すると、まず、計算処理部24の類似度指標計算部24−2が、メモリ21に格納されたn枚の蛍光画像の画像情報から、各画素ごとにn次元の蛍光指紋情報を抽出する。次に、計算処理部24の類似度指標計算部24−2は、各画素ごとに得られたn次元の蛍光指紋情報と、メモリ21に予め取得された測定対象物13の成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する。計算された類似度指標は、メモリ21に格納される。
【0090】
測定者がキーボード・マウス22を通じて制御部23にカラーマッピングするよう指示を入力すると、制御部23は、計算処理部24の色決定部24−3に、メモリ21に格納されている類似度指標を読み出し、測定者が指定したカラーインデックスに基づいて、各画素に彩色すべき色を指定するよう命令する。すなわち、色決定部24−3は、類似度指標計算部24−2により計算された類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する。
【0091】
計算処理部24の色決定部24−3は、各画素に彩色すべき色が決定されると、ディスプレイ30に各画素に彩色すべき色の情報を送信する。ディスプレイ30上で各画素をカラーマッピングすることにより、測定対象物13の成分分布が可視化される。なお、成分分布の可視化は、必ずしもディスプレイ30上で行う必要はなく、プリンターで成分分布可視化画像を印刷する等、測定対象物13の成分分布を可視化できるいかなる手法を用いてもよい。
【0092】
すなわち、計算処理部24の成分分布可視化部24−4は、各測定箇所に色決定部24−3により決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、測定対象物13に含まれる成分を可視化した画像を取得する。
【0093】
更に、計算処理部24において、測定者がキーボード・マウス22を通じて、計算処理部24に対して処理(例えば、類似度指標計算部24−2から合成画像作成部24−5の処理)を行うよう命令すると、計算処理部24の合成画像作成部24−5は、成分分布可視化部24−4により取得された、画像と、当該画像の成分とは別の成分を可視化した別の画像とを合成して、測定対象物13に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
[実施例1]
(1.本実施例1の目的)
パン生地のミキシング段階によって変化するグルテンとデンプンの分布はパンの食感を左右する重要な要素であるが、分布の様子を可視化するためには染色などの前処理を行う必要があった。一方、試料平面上の空間情報と各点での光学的情報を同時に可視化するハイパースペクトルイメージングは試料の前処理を必要とせず、非破壊での可視化を可能とする手法として注目されている。中でも、光学的情報として、複数の励起波長における蛍光スペクトルを3次元的に配列させた蛍光指紋を用いた蛍光指紋イメージングは、特定成分の判別を可能とする蛍光指紋の優位性を生かした可視化手法といえる。本実施例1の目的は、蛍光指紋イメージングを用いて、測定対象物13であるパン生地中の成分であるグルテンとデンプンの分布を可視化し、同一試料の染色画像と比較することによって、蛍光指紋イメージング手法の妥当性の検証を行うことにある。
【0096】
(2.実験手法)
(2−1.蛍光指紋画像データの取得)
ピックアップ段階のパン生地と純粋なグルテンとデンプンは冷凍した状態で凍結ミクロトームを用いて薄片試料を作成し、スライドガラス上で解凍・乾燥させた。蛍光指紋画像データ取得に用いた蛍光画像撮影装置10は、分光照明装置11と分光撮影装置12からなる。分光照明装置11では、分光装置112のバンドパスフィルタを通した光源110のキセノン光源(MAX−302(商品名)、朝日分光(会社名))からの単一波長の励起光を薄片試料に照射した。分光撮影装置12では、光学部120として対物レンズ(M Plan Apo(商品名)、Mitsutoyo(会社名))から取り込んだ試料の画像のうち、特定波長の蛍光画像のみを分光装置122のバンドパスフィルタを用いることによって画像撮影装置124の冷却CCDカメラ(ORCA−ER−1394(商品名)、浜松フォトニクス(会社名))で撮影した。光源側とカメラ側のバンドパスフィルタをそれぞれ変えながら同一試料を撮影することにより、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により、各画素の蛍光指紋データが再構成できる蛍光指紋画像データを取得した。
【0097】
(2−2.コサイン類似度による可視化)
類似度指標計算部24−2の処理により、パン生地画像の各画素について、その画像の蛍光指紋と純粋なグルテンまたはデンプンの蛍光指紋との類似度の比較によりグルテンおよびデンプンの判別を行った。類似度には、コサイン類似度を採用した。さらに、色決定部24−3および成分分布可視化部24−4の処理により、グルテンおよびデンプンとのコサイン類似度の値に比例した色を各画素にマッピングすることによって、各成分の存在量を視覚的に表現した擬似画像(例えば、上述の図11〜図16の画像)を構築した。
【0098】
(2−3.試料の染色と染色画像の取得)
成分分布可視化部24−4および/または合成画像作成部24−5の処理により蛍光指紋画像データである画像および/または合成画像(例えば、上述の図17の合成画像)を取得後、同一試料をローダミンBおよびFITCの二重染色で両成分を可視化して合成染色画像(後述の図23を参照)を取得し、例えば前述の擬似画像の合成画像(図17参照)と比較することによって、本発明の成分分布分析方法(蛍光指紋イメージング手法)の検証を行った。
【0099】
(3.実験結果)
本成分分布分析方法の合成画像作成部24−5を用いて可視化したパン生地の合成画像を図17に示し、同一試料の合成染色画像を図23に示す。図17および図23において、(i)が示す赤い領域がグルテン、(ii)が示す緑の領域がデンプンを表す。図17および図23の両画像に示されるグルテンとデンプンの分布は一致するため、本成分分布分析方法の妥当性が示された。
【0100】
ここで、図21〜図23および上述の図17を参照して、合成画像作成部24−5の処理により作成された合成画像(例えば、上述の図17に示す合成画像)の妥当性の検証結果についてより詳細に説明する。ここで、図21は、ローダミンBによりグルテンを赤色に染色したグルテンの染色画像の一例を示す図である。また、図22は、FITCによりデンプンを緑色に染色したデンプンの染色画像の一例を示す図である。また、図23は、図21のグルテンの染色画像と、図22のデンプンの染色画像とを合成した合成染色画像の一例を示す図である。
【0101】
具体的には、図21および図22の染色画像は、成分分布可視化部24−4の処理による蛍光指紋測定を終了した測定対象物13を用いて、グルテン・デンプンの可視化に一般的に用いられているローダミンB(RhodamineB)とFITCを使って二重染色して撮像した染色画像である。一例として、ローダミンBを用いてグルテンを赤色に染色した図21の染色画像の観察条件は、観察波長:励起波長540nm、蛍光波長:605nmである。また、FITCを用いてデンプンを緑色に染色した図22の染色画像の観察条件は、観察波長:励起波長470nm、蛍光波長:535nmである。
【0102】
また、図23の合成染色画像は、合成画像作成部24−5の処理により取得された合成画像(例えば、図17の合成画像)の妥当性の検証を行うために、ローダミンBを用いてグルテンを染色した図21の染色画像と、FITCを用いてデンプンを緑色に染色した図22の染色画像とを合成したものである。図23の合成染色画像において、図21の(i)が示すグルテンに対応する赤色部分と、図22の(ii)が示すデンプンに対応する緑色部分とが含まれている。
【0103】
そして、図17の合成画像と図23の合成染色画像とを比較すると、上述の図17の合成画像の(i)が示すグルテンに対応する赤色部分の分布と、図23の合成染色画像の(i)が示すグルテンに対応する赤色部分の分布とは類似している。同様に、上述の図17の合成画像の(ii)が示すデンプンに対応する緑色部分の分布と、図23の合成染色画像(ii)が示すデンプンに対応する緑色部分の分布とは類似している。これは、図17の合成画像が、実際の成分分布を適切に可視化していることを意味する。
【0104】
ここで、更に、図24および図25を参照して、合成画像作成部24−5の処理により作成された合成画像(例えば、図17の合成画像)と、実際に染色操作を行って撮影された染色画像を合成した合成染色画像(例えば、図23の合成染色画像)について、グルテンとデンプン分布の補完関係について説明する。ここで、図24は、図17の合成画像について、デンプンとのコサイン類似度とグルテンとのコサイン類似度との補完関係を示す図である。また、図25は、図23の合成染色画像について、デンプンの蛍光強度とグルテンの蛍光強度との補完関係を示す図である。
【0105】
具体的には、図24に示すように、デンプンとのコサイン類似度およびグルテンとのコサイン類似度を標準化(すなわち、スケールを変更)した値をプロットしたところ、これらのプロット群が一直線上に並んだ状態となった。これは、プロット群が一直線上に並んでいるため、デンプンとのコサイン類似度の値とグルテンとのコサイン類似度との間に補完関係があり、図17の合成画像がグルテンとデンプンの成分分布を定量的に表していることを意味する。つまり、上述したように、図17の合成画像は、図17の(i)が示す赤色部分のグルテンの分布と図17の(ii)が示す緑色部分のデンプンの分布とが相補的であることを示してる。つまり、図17は、グルテンが多い部分(すなわち、図17の(i)が示す赤色部分)にはデンプンが少なく、デンプンが多い部分(すなわち、図17の(ii)が示す緑色部分)にはグルテンが少ないことを示しているため、実際の分布の状態を適切に反映していることを示している。
【0106】
一方、図25に示すように、FITC染色したデンプンについて測定された535nmにおける蛍光強度およびローダミンB染色したグルテンについて測定された605nmにおける蛍光強度の値をプロットしたところ、プロット群が一直線上に並ばずに分散された状態となった。これは、プロット群が一直線上に並んでおらず分散しているため、デンプンの蛍光強度とグルテンの蛍光強度との間に補完関係がない(すなわち、定量性がない)ことを意味する。
【0107】
[実施例2]
続いて、本実施例2において、測定対象物13がパン生地である場合を一例として、最適ミキシング度を判定するために、測定対象物13に含まれる成分(例えば、グルテン、デンプン等)の分布を定量化し、更に、測定対象物13に含まれる気泡の比率(気泡面積割合)を計算した一例について説明する。
【0108】
具体的には、本実施例においては、合成画像作成部24−5の処理により作成された合成画像を所定の大きさの正方形に分割し、当該画像または当該合成画像の各正方形内における成分の比率の標準偏差を計算することにより、成分分布を定量化した。
【0109】
ここで、図26〜図33を参照して、合成画像作成部24−5の処理により作成された合成画像に対して行う成分分布を定量化する一例について説明する。なお、本実施例において、合成画像(後述の図26〜図28に示す合成画像)について成分分布を定量化した例を説明するが、当該成分分布定量化処理は、成分分布可視化部24−4の処理により取得された画像(例えば、図11および図12、図15および図16に示す画像等)に対しても同様に行うことができる。
【0110】
ここで、図26は、ミキシング不足段階のパン生地の合成画像の一例を示す図である。また、図27は、最適ミキシング段階のパン生地の合成画像の一例を示す図である。また、図28は、ミキシング過剰段階のパン生地の合成画像の一例を示す図である。また、図29は、成分分布が不均一の場合における成分分布定量化処理の一例を示す図である。また、図30は、成分分布が不均一の場合における成分分布定量化処理の別の一例を示す図である。また、図31は、成分分布が均一の場合における成分分布定量化処理の一例を示す図である。また、図32は、成分分布が均一の場合における成分分布定量化処理の別の一例を示す図である。また、図33は、成分分布の定量化結果の一例を示す図である。
【0111】
なお、本実施例において、パン生地を単純化したモデルサンプルを用いた。下記に示す分量および時間に従ってミキシングし、ミキシング不足生地、最適ミキシング生地、ミキシング過剰生地を作製し、各段階につき6サンプルを測定した。
【0112】
具体的には、例えば以下の条件に従って、パン生地モデルサンプルを作製した。
・強力粉(日清製粉カメリア(商品名)) 3000g
・水 2040g(強力粉100%に対して水68%)
【0113】
この強力粉と水の混合物から、20Lのミキサーを使用して3つのミキシング段階の生地を作製した。
・ミキシング不足生地 低速1分
・最適ミキシング生地 低速1分+低速1分+中速4分+高速2分30秒
・ミキシング過剰生地 低速1分+低速1分+中速4分+高速2分30秒+高速7分
【0114】
また、純粋なグルテンとデンプンを作るために、上記の最適ミキシング段階に捏ね上げた生地を水の中で揉み、水とともに流れ出るデンプンと塊として残るグルテンとに分けた。なお、本実施例において、これらデンプンおよびグルテンから取得される蛍光指紋情報は、パン生地のデータを解析する際の教師データ(すなわち、コントロールとして機能する予め取得された目的成分の蛍光指紋情報)として利用できる。
【0115】
例えば、本実施例では、合成画像作成部24−5の処理により3段階(例えば、ミキシング不足段階、最適ミキシング段階、ミキシング過剰段階等)のパン生地の合成画像(例えば、図26〜図28に示す合成画像)を作成した場合を想定している。図26に示すように、ミキシング不足段階のパン生地の合成画像では、(i)の赤色部分に対応するグルテンと、(ii)の緑色部分に対応するデンプンとの混合具合が不均一である。また、図27に示すように、最適ミキシング段階のパン生地の合成画像では、(iii)の赤色部分に対応するグルテンと、(iv)の緑色部分に対応するデンプンとの混合具合は均一である。ここで、図27の(v)の部分は気泡を示す。また、図28に示すように、ミキシング過剰段階のパン生地の合成画像では、図27と同様に、(vi)の赤色部分に対応するグルテンと、(vii)の緑色部分に対応するデンプンとの混合具合は均一であるが、図27の(v)の部分が示す気泡に比べ大きな気泡(図28の(viii)が示す部分)を含んでいる。これは、過剰にミキシングしたことによりパン生地中のグルテン等が分断され、物性が変化した状態を示している。つまり、図26の合成画像と図27の合成画像との間では、分布の均一さの差がみられ、図27の合成画像と図28の合成画像との間では、気泡量に差がみられる。
【0116】
具体的には、成分分布の均一さの差を定量化するために、図29に示すように、例えば図26のミキシング不足段階のパン生地の合成画像を、所定の大きさの正方形(例えば、(i)および(ii)が示す10×10ピクセルの小さい正方形)に分割した。また、図30に示すように、所定の大きさの正方形として、例えば(vi)および(vii)が示す40×40ピクセルの大きい正方形に分割してもよい。ここで、図29および図30において、(iii)はグルテンを示し、(iv)はデンプンを示し、(v)は気泡を示すものとする。つまり、図29は、成分(グルテン、デンプン等)の割合が場所により(例えば、(i)および(ii)が示す小さい正方形ごとに)異なる状態であるので、グルテンやデンプン等の成分の分散が大きいことを示している。一方、図30は、(vi)および(vii)が示す正方形のように、正方形を大きく分割すれば、場所による差が小さくなることを示している。
【0117】
さらに、図31に示すように、例えば図27の最適ミキシング段階のパン生地や図28のミキシング過剰段階のパン生地の合成画像を、所定の大きさの正方形(例えば、(i)および(ii)が示す小さい正方形)に分割した。また、図32に示すように、所定の大きさの正方形として、例えば(vi)および(vii)が示す大きい正方形に分割してもよい。ここで、図31および図32において、(iii)はグルテンを示し、(iv)はデンプンを示し、(v)は気泡を示すものとする。つまり、図31は、成分(グルテン、デンプン等)の割合が、異なる場所(例えば、(i)および(ii)が示す小さい正方形)であってもほぼ均一である状態を表しているので、グルテンやデンプン等の成分の分散が小さいことを示している。また、図32は、(vi)および(vii)が示す正方形のように、正方形を大きく分割すれば、場所による差がより小さくなることを示している。
【0118】
続いて、例えば図26〜図28の合成画像の各正方形内における成分の比率Rの標準偏差を計算し、成分分布を定量化した。ここで、比率Rは、以下の式に従って計算した。なお、本実施例においては、一例として、成分Aはデンプンとし、成分Bはグルテンとし、類似度指標はコサイン類似度とした。
比率R=Σ成分Aの類似度指標/Σ成分Bの類似度指標
【0119】
ここで、図33を参照して、成分分布の定量化結果の一例について説明する。図33に示すように、本実施例において定量化された成分分布は、正方形の一辺の長さ(ピクセル数)ごとに標準偏差の値で表される。ここで、図33において、○印は、図26のミキシング不足段階のパン生地の合成画像について計算された標準偏差の値を示す。また、×印は、図27の最適ミキシング段階のパン生地の合成画像について計算された標準偏差の値を示す。また、+印は、図28のミキシング過剰段階のパン生地の合成画像について計算された標準偏差の値を示す。つまり、図33は、○印が示すミキシング不足段階では、パン生地の成分(グルテン、デンプン等)の分散が大きく、×印が示す最適ミキシング段階のパン生地の成分と、+印が示すミキシング過剰段階のパン生地の成分の分散が小さいことを示しているので、成分分布を定量的に表している。
【0120】
続いて、本実施例において、更に測定対象物13に含まれる気泡を定量的に把握するために、気泡面積割合を計算した。
【0121】
具体的には、本実施例において、成分分布可視化部24−4の処理により取得された画像または合成画像作成部24−5の処理により作成された合成画像における気泡の比率を示す気泡面積割合を、当該画像または当該合成画像の全体の画素数(ピクセル数)および気泡が含まれる画素数に基づいて計算した。ここで、気泡面積割合は、以下の式に従って計算した。
気泡面積割合=気泡の画素数/全体の画素数
【0122】
続いて、本実施例において、成分分布定量化処理により定量化された成分分布、および、気泡面積割合計算処理により計算された気泡面積割合に基づいて、測定対象物13の最適ミキシング度を判定した。以下にその詳細を示す。
【0123】
ここで、図34および図35を参照して、本実施例における最適ミキシング度判定処理の一例について説明する。ここで、図34は、各ミキシング段階における成分分布の均一さの一例を示す図である。また、図35は、各ミキシング段階における気泡面積割合の一例を示す図である。
【0124】
具体的には、本実施例において、成分分布定量化処理により定量化された成分分布(図33参照)に基づいて、図34に示すような各ミキシング段階(例えば、ミキシング不足段階、最適ミキシング段階、ミキシング過剰段階等)における分布の均一さを示す変動係数(標準偏差/平均)を計算し、測定対象物の最適ミキシング度を判定した。ここで、図34において、ミキシング不足段階と最適ミキシング段階(またはミキシング過剰段階)とを比較すると、成分分布の均一さが有意に増加していた(p<0.01)。一方、最適ミキシング段階とミキシング過剰段階との間には成分分布の均一さにおける有意な差は見られなかった。このように、本実施例における最適ミキシング度判定処理において、ミキシング不足段階から最適ミキシング段階に移行する際に、グルテンとデンプンの分布が均一になることから、最適ミキシング段階のパン生地(図27参照)が最適ミキシング度の状態にあると判定した。
【0125】
更に、本実施例において、気泡面積割合計算処理により計算された気泡面積割合に基づいて、図35に示すような各ミキシング段階(例えば、ミキシング不足段階、最適ミキシング段階、ミキシング過剰段階等)における測定対象物の最適ミキシング度を判定した。ここで、図35において、ミキシング不足段階(または最適ミキシング段階)とミキシング過剰段階とを比較すると、気泡面積割合が有意に増加していた(p<0.05)。一方、ミキシング不足段階と最適ミキシング段階との間には気泡面積割合における有意な差は見られなかった。このように、本実施例における最適ミキシング度判定処理において、最適ミキシング段階からミキシング過剰段階に移行する際に、気泡面積割合が増加することから、最適ミキシング段階のパン生地(図27参照)が最適ミキシング度の状態にあると判定した。
【0126】
このように、従来の染色画像等では最適なミキシング状態を定量的に把握することは困難であったが、本発明によれば、成分分布を定量的に可視化することができ、最適ミキシング段階の把握が容易になり、製品の品質安定性を向上させることができる。
【0127】
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
【0128】
また、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0129】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0130】
また、成分分布分析システムに関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0131】
例えば、成分分布分析装置20の各装置が備える処理機能、特に計算処理部24にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて成分分布分析装置20に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDなどのメモリ21などは、OS(Operating System)として協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0132】
また、このコンピュータプログラムは、成分分布分析装置20に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0133】
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD、および、Blu−ray Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0134】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0135】
メモリ21に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラムやテーブルやデータベースやウェブページ用ファイル等を格納する。
【0136】
また、成分分布分析装置20は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、成分分布分析装置20は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0137】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上詳述に説明したように、本発明によれば、得られた蛍光指紋から対象成分の分布を可視化する成分分布分析において、更に、目的とする成分の同定を行うことができ、かつ、成分を定量的に評価することができる成分分布分析方法、成分分布分析装置、および、プログラムを提供することができるので、食品等の内部の構造の分析など様々な用途に好適に利用できる。
【0139】
また、本発明は、様々な物質の内部構造を調べるような基礎研究領域から、食品製造現場での検査など応用的な分野にまで使用することができる、非常に汎用性の高い手法である。測定のスケールは光学顕微鏡を用いて観察されるミクロスケールから、通常のカメラで撮像可能なマクロスケールにまで及び、食品分野にとどまらず、農業から生体・医療分野まで幅広い応用が期待できる。本発明では非破壊での測定が可能なため、測定条件の絞込みによる測定時間短縮を行うことができれば、工場等での全数検査やリアルタイムでのモニタリングに応用することも可能である。
【符号の説明】
【0140】
10 蛍光画像撮影装置
11 分光照明装置
110 光源
112 分光装置
114 励起波長調節部
116 光ファイバー
118 励起光照射部
12 分光撮影装置
120 光学部
122 分光装置
124 画像撮影装置
13 測定対象物
20 成分分布分析装置
21 メモリ
22 キーボード・マウス
23 制御部
24 計算処理部
24−1 蛍光指紋情報取得部
24−2 類似度指標計算部
24−3 色決定部
24−4 成分分布可視化部
24−5 合成画像作成部
30 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を分析する成分分布分析方法であって、
所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、前記測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、
前記蛍光指紋情報取得工程にて各測定箇所ごとに取得した前記測定対象物の前記蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する類似度指標計算工程、
前記類似度指標計算工程にて計算された前記類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定工程、および、
前記各測定箇所に前記色決定工程にて決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、前記測定対象物に含まれる前記成分を可視化した画像を取得する成分分布可視化工程、
を含むことを特徴とする、成分分布分析方法。
【請求項2】
前記成分分布可視化工程にて取得された、前記画像と、当該画像の前記成分とは別の成分を可視化した別の画像と、を合成して、前記測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する合成画像作成工程、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の成分分布分析方法。
【請求項3】
前記類似度指標は、
コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の成分分布分析方法。
【請求項4】
前記成分は、生体由来の成分であることを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか一つに記載の成分分布分析方法。
【請求項5】
前記生体由来の成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項4に記載の成分分布分析方法。
【請求項6】
測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を観察する分光撮影装置とを備えた、前記測定対象物の成分分布を分析する成分分布分析装置であって、
所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、前記測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得部、
前記蛍光指紋情報取得部により各測定箇所ごとに取得した前記測定対象物の前記蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する類似度指標計算部、
前記類似度指標計算部により計算された前記類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定部、および、
前記各測定箇所に前記色決定部により決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、前記測定対象物に含まれる前記成分を可視化した画像を取得する成分分布可視化部、
を備えたことを特徴とする、成分分布分析装置。
【請求項7】
前記成分分布可視化部により取得された、前記画像と、当該画像の前記成分とは別の成分を可視化した別の画像と、を合成して、前記測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する合成画像作成部、
を更に備えたことを特徴とする、請求項6に記載の成分分布分析装置。
【請求項8】
前記類似度指標は、
コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6または7に記載の成分分布分析装置。
【請求項9】
前記成分は、生体由来の成分であることを特徴とする、請求項6から8のうちいずれか一つに記載の成分分布分析装置。
【請求項10】
前記生体由来の成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項9に記載の成分分布分析装置。
【請求項11】
測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を観察する分光撮影装置とを備えた、前記測定対象物の成分分布を分析する成分分布分析装置に実行させるためのプログラムであって、
前記成分分布分析装置において、
所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定して、前記測定対象物上の各測定箇所の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、
前記蛍光指紋情報取得工程にて各測定箇所ごとに取得した前記測定対象物の前記蛍光指紋情報と、予め取得された目的とする成分の蛍光指紋情報とを比較して、類似度指標を計算する類似度指標計算工程、
前記類似度指標計算工程にて計算された前記類似度指標に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定工程、および、
前記各測定箇所に前記色決定工程にて決定された彩色すべき色をカラーマッピングし、前記測定対象物に含まれる前記成分を可視化した画像を取得する成分分布可視化工程、
を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
前記成分分布可視化工程にて取得された、前記画像と、当該画像の前記成分とは別の成分を可視化した別の画像と、を合成して、前記測定対象物に含まれる複数の成分を同時に可視化した合成画像を作成する合成画像作成工程、
を更に実行させることを特徴とする、請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記類似度指標は、
コサイン類似度、ピアソンの相関係数、偏差パターン類似度、ユークリッド距離類似度、Morisitaの類似度指数、標準ユークリッド距離類似度、マハラノビス距離類似度、マンハッタン距離類似度、チェビシェフ距離類似度、ミンコフスキー距離類似度、ジャッカード係数類似度、ダイス係数類似度、および、シンプソン係数類似度のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項11または12のうちいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項14】
前記成分は、生体由来の成分であることを特徴とする、請求項11から13のうちいずれか一つに記載のプログラム。
【請求項15】
前記生体由来の成分は、タンパク質、澱粉、多糖類、ミネラル、および、脂質からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項14に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−98244(P2012−98244A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248326(P2010−248326)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本食品科学工学会 第57回大会講演集,発行日 平成22年9月1日
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】