説明

成型用二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、成型性、寸法安定性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材への加飾に使用することができる。
【解決手段】
150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の200%伸長時応力(F200値)がそれぞれ3MPa以上60MPa未満であり、
80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ2500MPa以上5000MPa未満である成型用二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸配向ポリエステルフィルムに関し、高温領域での成型応力が低いため成型性に優れ、また、低温領域での貯蔵弾性率が特定の範囲であるため、寸法安定性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することのできる成型用二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりにより、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品などで、溶剤レス塗装、メッキ代替などの要望が高まり、フィルムを使用した加飾方法の導入が進んでいる。
【0003】
そのような中、成型用ポリエステルフィルムとして、いくつかの提案がされている。例えば、常温での特定の成型応力を規定した成型用ポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この提案では成型性が必ずしも十分ではなく、また寸法安定性に関しても考慮されているフィルムに設計されてはいなかった。
【0004】
また、特定温度での成型応力、貯蔵弾性率を規定した成型用ポリエステルフィルムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案では、フィルムの加工温度である80℃付近での寸法安定性が十分でなく、加工適正に劣るフィルムであった。
【0005】
さらに、広い温度範囲での貯蔵弾性率を規定した成型用ポリエステルフィルムも提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この提案では、広い温度範囲で低い貯蔵弾性率を示すため、成型性には優れるものの、やはり寸法安定性に関しては十分な特性を示すものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−347565号公報
【特許文献2】特開2005−290354号公報
【特許文献3】特開2008-162220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、成型性、寸法安定性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することのできる成型用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の200%伸長時応力(F200値)がそれぞれ3MPa以上60MPa未満であり、
80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ2500MPa以上5000MPa未満である成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、高温領域での成型応力が低いため、真空成型、圧空成型、真空圧空成型や、射出樹脂圧で成型されるインモールド成形などといった様々な成型方法で成型が可能であり、また、低温領域での貯蔵弾性率が特定の範囲であるため、コーティング、ラミネート、印刷、蒸着といった加工工程での寸法安定性に優れていることから、印刷、蒸着等により加飾を施し、例えば、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品、遊技機部品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリエステルフィルム]
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を用いてなるフィルムである。
【0011】
また、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂とは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル樹脂は、通常ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得るところ、重合後のポリエステルはジカルボン酸残基成分とグリコール残基成分から構成される。本発明において「残基成分」とは、かかる残基成分をいう。また、重合に際しては、ジカルボン酸に代えてジカルボン酸エステルを用いることがあるところ、本発明において「ジカルボン酸」とはジカルボン酸エステルをも含む概念で用いられるものである。それに伴い、ジカルボン酸残基成分とはジカルボン酸エステル残基成分をも含む概念で用いられるものである。なお、本明細書では、「残基成分」を単に「成分」と言うこともある。
【0012】
本発明では、成型性、外観、耐熱性、寸法安定性、経済性の点から、ポリエステルフィルムを構成するグリコール成分の60モル%以上がエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の60モル%以上がテレフタル酸成分であることが好ましい。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムに含まれるグリコール成分としては、エチレングリコール成分以外に、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物など各成分が挙げられる。中でも、成型性、取り扱い性の点で、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの各成分が好ましく用いられる。
【0014】
また、本発明のポリエステルフィルムに用いられる好ましいジカルボン酸成分としては、テレフタル酸成分以外には、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などの各成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどの各成分を挙げることができる。中でも、成型性、取り扱い性の点で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の各成分が好ましく用いられる。
【0015】
[150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の200%伸長時応力(F200値)]
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型加工性の点から150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の200%伸長時応力(F200値)がそれぞれ3MPa以上60MPa未満であることが必要である。成型部材の成型方法としては、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成型といった加熱成型方法が挙げられるが、何れの成型法も赤外線ヒーターなどによる予熱工程でフィルムの温度を高い状態とした後に成型される工程を有する。このため、高温での成型応力を低くすることで、複雑な形状に成型することが可能となる。このため、150℃における200%伸長時応力(F200値)が3MPa以上60MPa未満とすることが重要である。F200値が3MPa未満であると、成型加工での予熱工程でフィルム移送のための張力に耐えることができず、フィルムが変形、場合によっては破断してしまう場合があり、成型用途への使用に耐えないフィルムとなってしまう。逆に60MPa以上になると、熱成型時に変形が不十分であり、複雑な形状への成型が困難となってしまう。取扱い性、成型性の点で、150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の200%伸長時応力(F200値)は3MPa以上55MPa未満であれば好ましく、5MPa以上40MPa未満であれば最も好ましい。
【0016】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、より複雑な形状へ成型するために、150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度がそれぞれ250%以上700%未満であることが好ましい。
【0017】
破断伸度が250%未満であると、複雑な形状に成型する場合、成型加工倍率に耐えきれずに、フィルムが破断してしまう場合がある。また、700%以上とするフィルムの設計は、経済的ではなく、また耐熱性に劣る場合もあるため好ましくない。成型性、耐熱性、経済性の点で、フィルム長手方向および幅方向の伸度は250%以上600%未満であれば好ましく、300%以上500%未満であれば最も好ましい。
【0018】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、150℃におけるフィルムの200%伸長時応力、破断伸度を上記の範囲とする方法としては、特に限定されないが、例えば下記の方法を挙げることができる。
【0019】
方法1:ポリエステルフィルム中に、グリコール成分として、1,3−プロパンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、ネオペンチルグリコール成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含有せしめる方法が好ましく用いられる。また、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有せしめることが好ましい。中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有させることが特に好ましい。特に、フィルム中のグリコール成分に対する1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量をx(モル%)、フィルム中のジカルボン酸成分に対する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分の含有量をy(モル%)としたとき、x+yは5(モル%)以上であることが好ましく、7(モル%)以上であることがより好ましく、10(モル%)以上であることが特に好ましい。
【0020】
フィルム中に、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を上記範囲で含有させることによって、成型時のフィルムの配向結晶化が抑制されるため、150℃におけるフィルムの200%伸長時応力(F200値)を低く抑えることができ、さらに、破断伸度も向上させることができる。併せて、200%伸長時応力(F200値)もより低く抑えることができ、さらに破断伸度も向上させることができる。
【0021】
なお、フィルム中に、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分や、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有させる方法は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレートといったホモポリエステルに1,4−シクロヘキサンジメタノール成分や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を共重合し、該共重合ポリエステルを用いてフィルムを作成することにより、フィルム中にこれら成分を含有させる方法(方法1−1)や、上記したホモポリエステルと1,4−シクロヘキサンジメタノール成分や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有しているポリエステルとをブレンドした原料を用いてフィルムを作成する方法(方法1−2)などが挙げられる。中でも、方法1−2は、ポリエステル(フィルム)の融点の降下を抑制させることができ、耐熱性の点で有利になるため、好ましく用いられる。
【0022】
また、本発明では、フィルム中に、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が含有されていることが好ましい。テレフタル酸成分の含有率は、フィルム中のジカルボン酸成分に対して75モル%以上が好ましい。また、フィルム中に、グリコール成分としてエチレングリコール成分が含有されていることが好ましい。エチレングリコール成分の含有率は、フィルム中のグリコール成分に対して75モル%以上が好ましい。テレフタル酸成分およびエチレングリコール成分の含有率を上記範囲とすることにより、フィルムに優れた機械特性や熱特性を付与しつつ、F200値や80℃における貯蔵弾性率を本願発明の範囲とすることができる。
【0023】
方法2:フィルムの面配向係数を0.13未満とする方法も非常に好ましい。ここで面配向係数(fn)とは、アッベ屈折率計等で測定されるフィルムの屈折率により定義される数値であり、フィルムの長手方向の屈折率をnMD、幅方向の屈折率をnTD 、厚み方向の屈折率をnZDとすると、fn=(nMD+nTD)/2−nZDの関係式で表される。面配向係数が0.13未満であれば、フィルムの面方向の配向が低い状態で保たれているため、成型性に優れる。より好ましくは、面配向係数が0.125未満、さらに好ましくは、0.12未満である。
【0024】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、耐熱性、耐溶剤性、耐傷性の点で、二軸延伸させることが必要であるが、面配向係数を0.13未満にするために延伸倍率としては、長手方向、幅方向ともに、4.2倍未満、さらに好ましくは4倍未満、最も好ましくは3.8倍未満とすることが好ましい。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また、長手方向の好ましい延伸温度としては、70℃以上120℃以下、幅方向の延伸温度は、80℃℃以上120℃以下である。
【0025】
延伸方法は特に限定されないが、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などが挙げられる。
【0026】
また、面配向係数の調整には二軸延伸の後にフィルムの熱処理条件も重要である。熱処理はオーブン中、加熱したロール上などの方法により行うことができるが、熱処理温度としては、高温で行うことで、配向が緩和され、上記のような面配向係数を達成することができる。好ましい熱処理温度としては、200℃以上250℃以下であり、より好ましくは、210℃以上245℃以下である。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。
【0027】
フィルムの成型性を向上させるために、上記方法(1)と方法(2)を併用することは非常に好ましいことである。
【0028】
[80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率]
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、成型性の点から80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ2500MPa以上5000MPa未満であることが必要である。80℃における貯蔵弾性率が、2500MPa未満であれば、印刷、蒸着、コーティング、ラミネートといった加工工程での寸法安定性が低下してしまう。逆に、貯蔵弾性率が5000MPa以上とすると、寸法安定性には優れるが、成型性が悪化する場合があるので好ましくない。
【0029】
すなわち寸法安定性の点から、80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率は、2500MPa以上であることが必要であり、2700MPa以上であればより好ましく、3000MPa以上であれば最も好ましい。また、成型性を低下させないためには、80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率は、5000MPa未満であることが必要であり、4800MPa未満であればより好ましく、4500MPa未満であれば最も好ましい。
【0030】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、80℃における貯蔵弾性率を上記の範囲とする方法としては、特に限定されないが、例えば、下記の方法を挙げることができる。
【0031】
方法3:上記方法1を採用する場合は、x+yを20モル(%)以下とする方法が挙げられる。より好ましくは17モル%以下であり、さらに好ましくは15モル%以下である。x+yを上記範囲内とすることにより、貯蔵弾性率を上記した範囲内とすることができる。
【0032】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性を維持したまま80℃の貯蔵弾性率を上記の範囲とすることが重要であるため、x+yの範囲は、5モル%以上20モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、7モル%以上17モル%以下であり、10モル%以上15モル%以下であれば最も好ましい。
【0033】
すなわち、本発明のフィルムは、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有することが好ましく、その含有量は(1)式を満たすことが好ましい。より好ましくは(1)’を満たすことであり、特に好ましくは(1)’’を満たすことである。
5(モル%)≦x+y≦20(モル%) (1)
7(モル%)≦x+y≦17(モル%) (1)’
10(モル%)≦x+y≦15(モル%) (1)’’
但し、xはフィルム中のグリコール成分に対する1,4−シクロヘキサンジメタノール成分のモル分率(モル%)であり、yはフィルム中のジカルボン酸成分に対する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分のモル分率(モル%)である。
【0034】
方法4:フィルムの面配向係数を0.07以上とする方法が挙げられる。より好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.09以上である。また、特に寸法安定性が必要な用途では、0.095以上であることが好ましい。面配向係数を上記範囲内とすることにより、貯蔵弾性率を上記した範囲内とすることができる。
【0035】
面配向係数が0.07未満であると、フィルムの配向結晶化が不充分であるため、80℃での貯蔵弾性率が2500MPa未満になる場合がある。
【0036】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型性を維持したまま80℃の貯蔵弾性率を上記の範囲とすることが重要であるため、面配向係数は、0.07以上0.13未満とすることが好ましく、0.08以上0.125未満であればさらに好ましく、最も好ましくは0.09以上0.12未満である。また、特に寸法安定性が必要な用途では、0.095以上0.12未満とすることが望ましい。
【0037】
面配向係数を上記範囲とするためには、延伸倍率として、長手方向、幅方向ともに3.0倍以上4.2倍以下、さらに好ましくは3.2倍以上4倍以下、最も好ましくは3.4倍以上3.8倍以下とすることが好ましい。
【0038】
また、本発明のフィルムを得るために、上記方法(3)と方法(4)を併用することは非常に好ましいことである。
【0039】
方法5:フィルムのガラス転移温度を65℃以上とする方法が挙げられる。ガラス転移温度以上に加熱すると、弾性率は低下するためである。さらに好ましくは75℃以上である。成型性と寸法安定性を両立させるために、ガラス転移温度は77℃以上85℃以下とすることが最も好ましい。
【0040】
[25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率]
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、耐傷性が求められる用途へ使用される場合、25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ4000MPa以上10000MPa未満であることが好ましい。25℃における貯蔵弾性率が4000MPa未満であれば、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムを成型部材とした際に、表面硬度が不充分となり、耐傷性に劣る場合があるため好ましくない。逆に、25℃における貯蔵弾性率を10000MPa以上にすると、成型性が低下してしまう場合があるので好ましくない。
【0041】
すなわち、表面硬度の点から、25℃における貯蔵弾性率は、4000MPa以上であることが好ましく、4500MPa以上であればさらに好ましく、5000MPa以上であれば最も好ましい。また、成型性を低下させないためには、25℃における貯蔵弾性率は、10000MPa未満であることが好ましく、9500MPa未満であればさらに好ましく、9000MPa未満であれば最も好ましい。
【0042】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、25℃における貯蔵弾性率を上記の範囲とする方法としては、80℃における貯蔵弾性率を2500MPa以上5000MPa未満とする方法と同様に、上記した方法3や方法5などが挙げられる。特に、方法5を採用することは、効果が大きいため好ましい。また、成型用二軸配向ポリエステルフィルムの結晶性を向上させる方法(下記に述べる方法6)も有効である。
【0043】
方法6:結晶性を向上させる方法としては、結晶核剤を添加する方法が挙げられる。好ましい濃度としては、ポリエステルフィルム全体を100質量%として、0.01質量以上5質量%以下である。さらに好ましくは0.05質量%以上3質量%以下であり、0.1質量%以上2質量%以下であれば最も好ましい。結晶核剤を添加することによって、フィルム中の結晶化度が向上させることができる。また、結晶核剤を添加することで、結晶を形成する核が増加し、球晶が微細化させるため、球晶をつなぐ分子鎖が増加し、弾性率をより効率的に向上させることができる。
【0044】
ここでいう結晶核剤とは、ポリエステルに添加することで、結晶化速度を向上させる結晶性物質のことを指し、例えば、タルク、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ソルビトール系化合物、有機リン酸化合物などが、好ましく用いられる。中でも、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩およびソルビトール系化合物が特に好ましく用いられる。ここで、脂肪族カルボン酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミドのようなN−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N´−ジステアリルテレフタル酸アミドのようなN−置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類、N−ブチル−N´−ステアリル尿素、N−プロピル−N´−ステアリル尿素、N−ステアリル−N´−ステアリル尿素、N−フェニル−N´−ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN−置換尿素類を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でも、脂肪族モノカルボン酸アミド類、N−置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、脂肪族ビスカルボン酸アミド類が好適に用いられ、特に、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドが好適に用いられる。
【0045】
脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸水素カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀等のラウリン酸塩、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸水素カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀等のミリスチン酸塩、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸鉛、パルミチン酸タリウム、パルミチン酸コバルト等のパルミチン酸塩、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル等のオレイン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベリリウム等のステアリン酸塩、イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル等のイソステアリン酸塩、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、ベヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル等のベヘニン酸塩、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル等のモンタン酸塩等を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に、ステアリン酸の塩類やモンタン酸の塩類が好適に用いられ、特に、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウムなどが好適に用いられる。
【0046】
脂肪族アルコールの具体例としては、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の脂肪族モノアルコール類、1,6−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族多価アルコール類、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の環状アルコール類等を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。特に脂肪族モノアルコール類が好適に用いられ、特にステアリルアルコールが好適に用いられる。
【0047】
また、かかる脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ラウリン酸セチルエステル、ラウリン酸フェナシルエステル、ミリスチン酸セチルエステル、ミリスチン酸フェナシルエステル、パルミチン酸イソプロピリデンエステル、パルミチン酸ドデシルエステル、パルミチン酸テトラドデシルエステル、パルミチン酸ペンタデシルエステル、パルミチン酸オクタデシルエステル、パルミチン酸セチルエステル、パルミチン酸フェニルエステル、パルミチン酸フェナシルエステル、ステアリン酸セチルエステル、べヘニン酸エチルエステル等の脂肪族モノカルボン酸エステル類、モノラウリン酸グリコール、モノパルミチン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのモノエステル類、ジラウリン酸グリコール、ジパルミチン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール等のエチレングリコールのジエステル類、モノラウリン酸グリセリンエステル、モノミリスチン酸グリセリンエステル、モノパルミチン酸グリセリンエステル、モノステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのモノエステル類、ジラウリン酸グリセリンエステル、ジミリスチン酸グリセリンエステル、ジパルミチン酸グリセリンエステル、ジステアリン酸グリセリンエステル等のグリセリンのジエステル類、トリラウリン酸グリセリンエステル、トリミリスチン酸グリセリンエステル、トリパルミチン酸グリセリンエステル、トリステアリン酸グリセリンエステル、パルミトジオレイン、パルミトジステアリン、オレオジステアリン等のグリセリンのトリエステル類等を使用することができる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。この中でもエチレングリコールのジエステル類が好適であり、特にエチレングリコールジステアレートが好適に用いられる。
【0048】
また、かかる脂肪族/芳香族カルボン酸ヒドラジドの具体例としては、セバシン酸ジ安息香酸ヒドラジド、メラミン系化合物の具体例としては、メラミンシアヌレート、ポリビン酸メラミン、フェニルホスホン酸金属塩の具体例としては、フェニルホスホン酸亜鉛塩、フェニルホスホン酸カルシウム塩、フェニルホスホン酸マグネシウム塩、フェニルホスホン酸マグネシウム塩等を使用することができる。
【0049】
ソルビトール系化合物としては、1,3−ジ(P−メチルベンジリデン)ソルビトール、2,4−ジ(P−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−ジベンジリデンソルビトール、2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ジ(P−エチルジベンジリデン)ソルビトール、2,4−ジ(P−エチルジベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられる。
【0050】
リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩とアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩有機カルボン酸金属塩の1種とから選ばれる混合物などが挙げられる。
【0051】
上記した中でも、透明性、耐熱性の点から、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、ソルビトール系化合物が、好ましく用いられる。
【0052】
また、成型性を損なわない程度に、ガラス繊維、炭素繊維などで繊維強化する方法なども挙げられる。また、ジカルボン酸成分の種類は、2種類以下とすることも有効である。
【0053】
[150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率]
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型部材の品位を向上させる点から、150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ100MPa以上1500MPa未満であることが好ましい。150℃における貯蔵弾性率が100MPa未満の場合、高温で成型を行う際に、フィルムの偏変形が発生しやすく、不均一な成型となり、成型後の品位が低下してしまう場合がある。逆に、1500MPa以上であると、成型性が低下してしまう場合があるので好ましくない。
【0054】
すなわち、均一成型性の点から、150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率は、100MPa以上であることが好ましく、120MPa以上であればさらに好ましく、150MPa以上であれば最も好ましい。また、成型性を低下させないためには、150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率は、1500MPa未満であることが好ましく、700MPa未満であればさらに好ましく、500MPa未満であれば最も好ましい。
【0055】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、150℃における貯蔵弾性率を上記の範囲とする方法としては、特に限定されないが、上記した方法3、方法5などが挙げられる。また、ポリエステルフィルムの融点を220℃以上260℃以下とする方法(下記に述べる方法7)も好ましい方法の一つである。
【0056】
方法7:ポリエステルフィルムの融点は、150℃のフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率を100MPa以上とするためには、220℃以上であることが好ましく、230℃以上であればより好ましく、240℃以上であれば最も好ましい。また、150℃の貯蔵弾性率を1500MPa未満とするためには、融点を260℃以下とすることが好ましく、255℃以下であることがより好ましく、250℃以下であれば最も好ましい。ここで、ポリエステルフィルムの融点としては示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピーク温度である(詳しくは後述する)。異なる組成のポリエステル樹脂をブレンドして使用し、フィルムとした場合には複数の融解に伴う吸熱ピークが現れる場合があるが、その場合、最も高温に現われる吸熱ピーク温度を本発明のポリエステルフィルムの融点とする。
【0057】
ポリエステルフィルムの融点を掛かる温度範囲とする方法としては、フィルム製膜時に使用するポリエステル樹脂段階において、融点を220〜260℃の範囲としておくことが好ましく、また、異なる組成のポリエステル樹脂を用いる場合でも、融点が220℃以上であるポリエステル樹脂を使用し、また、融点が低いポリエステル樹脂をブレンドして使用する場合においても、溶融混練時の樹脂間でのエステル交換反応による融点降下を抑制するために、予め樹脂中に残存している触媒を失活させたり、触媒能を低減させるためにリン化合物を添加する。また、残存触媒量の低いポリエステル樹脂を準備するなどをすることで、融点を220〜260℃の範囲にすることができる。
【0058】
また、成型性を損なわずに、150℃での貯蔵弾性率を上記の範囲とする方法としては、融点の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を併用する方法(下記に述べる方法8)も非常に有効である。融点の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を併用することで、成型性を保持したまま、150℃での貯蔵弾性率を特定の範囲に制御することが可能となる。
【0059】
方法8:例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートや、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレートといった共重合ポリエチレンテレフタレートと、ホモポリエチレンテレフタレートとの併用、ポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートと、ポリエチレンテレフタレートとの併用などが挙げられる。
【0060】
[温度80℃、荷重19.6mNで3分間保持した際のフィルム長手方向および幅方向の熱変形率]
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性が厳しい用途で用いられる場合、温度80℃、荷重19.6mNで3分間保持した際のフィルム長手方向および幅方向の熱変形率がそれぞれ−1.5%以上+1.5%以下であることが好ましい。例えば、加工工程で、保護フィルムとラミネートしたり、厚膜コートする場合、寸法安定性が非常に厳しく、ラミネート時、コート時のカール性を抑制することが重要となる。温度80℃、荷重19.6mNで3分間保持した際のフィルム長手方向および幅方向の熱変形率を−1.5%以上+1.5%以下とすることで、耐カール性に優れたフィルムとなる。フィルムの熱変形率は、−0.75%以上+0.75%以下であればさらに好ましく、−0.5以上+0.5以下であれば最も好ましい。
【0061】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムを、温度80℃、荷重19.6mNで3分間保持した際のフィルム長手方向および幅方向の熱変形率を−1.5%以上+1.5%以下とする方法としては特に限定されないが、二軸延伸の後のフィルムの熱処理温度の高温化する方法(方法9)が有効である。高温で熱処理を行うことで、フィルム中の歪みが緩和するため熱変形率を低くすることができる。好ましい熱処理温度は、200℃以上250℃以下であり、より好ましくは、210℃以上245℃以下である。また、熱処理時に、フィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行う方法も好ましく用いられる。熱処理時に弛緩させることによって、フィルム中の残存歪みが開放されるため、熱変形率が低くなる。熱処理時の好ましい弛緩率(リラックス率)は、3%以上である。また、高温熱処理後に、熱処理温度より低い温度で弛緩させる方法も好ましい方法である。
【0062】
[粒子の含有とフィルムヘイズ]
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、搬送性、外観の点でフィルム中に粒子が含有されていることが好ましい。フィルムの取り扱い性を向上させる方法として、コーティング層中に粒子を含有させる方法も挙げられるが、加工時、成型時にコーティング層から粒子が脱落して、ロール汚れ、金型汚れなどが発生する場合がある。また、複雑な形状に成型される場合に、コーティング層に層中の粒子を起点にしてクラックが発生してしまうこともある。さらに、コーティングは製膜工程中のインラインで行われる場合も、長手方向−幅方向の逐次二軸延伸方法では、長手方向にロールの速度差を利用して延伸する工程を経た後、コーティングを施し、幅方向へ延伸する方法が通常行われるが、長手方向の延伸時のロールとの滑り性が悪いため、キズが発生しやすくなってしまい、キズにより外観が低下してしまう傾向にある。これらの課題は、粒子をフィルム中に含有させることによって解決される。
【0063】
ここで、使用する粒子としては特に限定されないが、搬送性、外観の点で、外部添加粒子が好ましく用いられる。外部添加粒子としては、たとえば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミなど、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの外部添加粒子は二種以上を併用してもよい。搬送性、外観の点からフィルム中の粒子含有量はフィルム全体を100質量%として、0.001〜0.2質量%であれば好ましく、0.0015〜0.18質量%であればさらに好ましく、0.002〜0.15質量%であれば最も好ましい。
【0064】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは外観、意匠性の点からヘイズが0.1%以上3%未満であることが好ましい。ヘイズが3%以上となると、フィルムの外観が白濁しているように見え、外観、意匠性に劣る場合がある。一方、ヘイズが0.1%未満に使用とすると、フィルムの滑りが悪く、取扱い性が困難となり、フィルム表面に擦り傷などが発生したり、フィルムをロール形状に巻き取る際に、シワが発生しやすくなるなど、成型部材としての外観に悪影響を及ぼすだけでなく、フィルム自体の取扱い性が悪くなる。ヘイズのより好ましい範囲としては、0.2%以上2.5%未満であり、0.3%以上2%未満であれば最も好ましい。
【0065】
ヘイズを0.1%以上3%未満とする方法としては、例えば少なくともA層とB層を有する2層以上の積層フィルムとし、A層またはB層のみに粒子を添加する方法が挙げられる。A層またはB層のみに粒子を添加することで、粒子の添加量を少なくでき、取扱い性を悪化させることなく、ヘイズを低減させることができる。取扱い性をさらに向上させるために、A層/B層/C層の3層構成として、A層およびC層のみに粒子を含有させる態様は非常に好ましい。
【0066】
A層の積層比としては、(A層の厚み)/(フィルム全体の厚み)が0.01以上0.3以下であることが好ましい。積層比を0.01未満にしようとすると、A層の厚みが薄くなりすぎて、積層むらが生じる場合があるため好ましくない。また、積層比が0.3より大きい場合は、粒子の含有量が増えるため、ヘイズが高くなってしまう場合がある。積層比は0.02以上0.2以下であれば好ましく、0.03以上0.1以下であれば最も好ましい。また、A/B/Cの3層構成の場合、C層の積層比は、(C層の厚み)/(フィルム全体の厚み)も同様に0.01以上0.5以下であることが好ましい。製膜性の点からは、A層とC層の積層厚みは同等であることが好ましい。上記の積層厚み比は、A層を構成するポリエステルAと、B層を構成するポリエステルBを押出すときの吐出量を調整することにより達成することができる。吐出量は押出機のスクリューの回転数、ギヤポンプを使用する場合はギヤポンプの回転数、押出温度、ポリエステル原料の粘度などにより適宜調整できる。
【0067】
フィルムの積層比は、フィルムの断面を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、光学顕微鏡などで500倍以上10000倍以下の倍率で観察することによって、積層各層の厚みを測定し、積層比を求めることができる。
【0068】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型部材の深み性、形状保持性の点から、フィルム厚みは50μm以上500μm以下であることが好ましく、75μm以上300μm以下であればさらに好ましく、150μm以上250μm以下であれば最も好ましい。
【0069】
[酸化防止剤]
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの品位の点から酸化防止剤を含有していることが好ましい。酸化防止剤を含有することで、ポリエステル樹脂の乾燥工程、押出工程での酸化分解を抑制することができ、ゲル状異物による品位の低下を防ぐことができる。酸化防止剤の種類としては特に限定されないが、例えばヒンダードフェノール類、ヒドラジン類、フォスファイト類などに分類される酸化防止剤を好適に使用することができる。なかでもペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトなどが好ましく用いられる。
【0070】
[製造方法]
次に本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムの具体的な製造方法について記載する。
【0071】
まず、使用するポリエチレンテレフタレート系の樹脂(a)と1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(b)を必要に応じて、所定の割合で計量し、混合する前もしくは混合した後に窒素雰囲気もしくは真空雰囲気で乾燥を行う。乾燥は乾燥後の樹脂中の水分率が50ppm以下とすることが好ましい。そして、混合したポリエステル樹脂を単軸もしくは二軸押出機に供給し溶融押出する。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0072】
本発明のフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムとすることが必要である。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0073】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.0倍以上4.2倍、さらに好ましくは3.2倍以上4.0倍以下、特に好ましくは3.4倍以上3.8倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また延伸温度は、長手方向は70℃以上120℃以下、幅方向は、80℃以上120℃以下とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行っても良い。
【0074】
さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの融点以下の温度で行われるが、好ましくは200℃以上250℃以下であり、より好ましくは、210℃以上245℃以下である。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは1秒以上60秒以下、より好ましくは1秒以上30秒以下行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。さらに、印刷層や接着剤、蒸着層、ハードコート層、耐候層といった各種加工層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、易接着層をコーティングさせることもできる。コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際易接着層厚みとしては0.01μm以上1μm以下とすることが好ましい。また、易接着層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。易接着層に好ましく用いられる樹脂としては、接着性、取扱い性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。中でもアクリル樹脂は、耐候性、耐熱・耐湿性に優れるため好ましい。
【0075】
[用途] また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、屋外で使用させる場合、耐候層を積層することができる。耐候層とは、少なくとも波長350nm以上360nm以下の光エネルギーを吸収し、非常に速いエネルギー変換により無害な熱エネルギー、燐光や蛍光を放射し、ポリマー中の不純物の光励起、光化学反応を抑制し、白化、脆化、亀裂、黄変などを防止する機能を有する層のことであり、例えば耐候性樹脂層や、各種樹脂層に紫外線吸収剤を含有させた層などから構成される。特に積層したあとの、フィルムの波長範囲350nm以上360nm以下の平均透過率が45%以下、好ましくは30%以下となることが好ましい。耐候層の好ましい厚みの範囲としては0.5μm以上20μm以下であり、1μm以上15μm以下であればさらに好ましく、2μm以上10μm以下であれば最も好ましい。
【0076】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、耐傷性が特に厳しい用途に用いられる場合は、ハードコート層を積層することができる。ハードコート層とは、硬度が高く、耐傷性、耐摩耗性に優れたものであれば良く、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、有機シリケート化合物、シリコーン系、金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度と耐久性、更に、硬化性、生産性の点でアクリル系、特に活性線硬化型のアクリル系組成物、または熱硬化型のアクリル系組成物からなるものが好ましく用いられる。また、本発明ではハードコート層積層後のフィルムの鉛筆硬度がHB以上であることが好ましく、より好ましくはH以上であり、2H以上であれば最も好ましい。
【0077】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、金属調加飾に用いられる場合、フィルムの少なくとも片面に金属化合物を蒸着して使用することが好ましい。金属化合物を蒸着して使用することで、外観が金属調となり、現在メッキした樹脂が用いられている成型部品の代替品としても使用することができる。中でも、融点が150℃以上400℃以下である金属化合物を蒸着して使用することがより好ましい。掛かる融点範囲の金属を使用することで、ポリエステルフィルムが成型可能温度領域で、蒸着した金属層も成形加工が可能であり、成型による蒸着層欠点の発生を抑制しやすくなるので好ましい。特に好ましい金属化合物の融点としては150℃以上300℃以下である。融点が150℃以上400℃以下である金属化合物としては特に限定されるものではないが、インジウム(157℃)やスズ(232℃)が好ましく、特に金属調光沢、色調の点でインジウムを好ましく用いることができる。また、蒸着簿膜の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。なお、ポリエステルフィルムと蒸着層との密着性をより向上させるために、フィルムの表面をあらかじめコロナ放電処理やアンカーコート剤を塗布するなどの方法により前処理しておいても良い。また、蒸着膜の厚みとしては、1nm以上500nm以下であれば好ましく、3n以上300nm以下であればより好ましい。生産性の点からは3nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0078】
また、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、印刷を施すことによって、成型部材の表面に用いられた場合、外観、意匠性を付与することができる。印刷方法は特に限定されないが、グラビヤ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などが好ましく用いられる。また、印刷層の厚みは好ましくは、1nm以上20μm以下である。
【0079】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、成型部材の加飾用途に好ましく用いられるが、成型加飾方法として、例えばインモールド成形用途、インサート成形用途に好ましく使用される。ここで言うインモールド成形とは、金型内にフィルムそのものを設置して、インジェクションする樹脂圧で所望の形状に成形して成形加飾体を得る成形方法である。また、インサート成形とは、金型内に設置するフィルム成型体を真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成型などで作成しておき、その形状に樹脂を充填することで、成形加飾体を得る成形方法である。より複雑な形状を出すことができることから、本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムはインサート成形用途に特に好ましく用いられる。
【0080】
本発明の成型用二軸配向ポリエステルフィルムは、高温領域での成型応力が低いため、真空成型、圧空成型、真空圧空成型や、射出樹脂圧で成型されるインモールド成形などといった様々な成型方法で成型が可能であり、また、低温領域での貯蔵弾性率が特定の範囲であるため、コーティング、ラミネート印刷、蒸着といった加工工程での寸法安定性に優れていることから、印刷、蒸着等により加飾を施し、例えば、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
【0081】
[各種特性とその測定方法等]
(1)融点、ガラス転移温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルム5mgをサンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側の吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。また、ガラス状態からゴム状態への転移に基づく比熱変化を読み取り、各ベースラインの延長した直線から縦軸(熱流を示す軸)方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の中間点ガラス転移温度を求め、ガラス転移温度とした。
【0082】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0083】
(3)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0084】
(4)フィルム中の含有粒子濃度
ポリエステルフィルム10gをオルトクロロフェノール100g中に溶解させ、粒子をポリエステルから遠心分離することによってフィルム中に粒子を含有しているか評価することができる。また、粒子濃度は下記より求められる。
(粒子濃度)=(粒子の質量)/(フィルム全体の質量)×100
なお、本発明のフィルムについては、重合時に粒子を添加して作製した粒子マスター中の粒子濃度と、フィルム中のその粒子マスター濃度から計算により算出した。
【0085】
(5)ヘイズ
JIS K 7105(1985年)に基づいて、ヘーズメーター(スガ試験器社製HGM−2GP)を用いてフィルムヘイズの測定を行った。測定は任意の3ヶ所で行い、その平均値を採用した。
【0086】
(6)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。求めたフィルム厚みと層厚みからTB/TFおよび積層比を算出した。
【0087】
(7)面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(nMD)、幅方向の屈折率(nTD)、厚み方向の屈折率(nZD)を測定し、下記式から面配向係数(fn)を算出した。
fn=(nMD+nTD)/2−nZD
【0088】
(8)150℃での200%伸長時応力(F200値)
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。測定は予め150℃に設定した恒温層中にフィルムサンプルをセットし、90秒間の予熱の後で引張試験を行った。サンプルが200%伸長したとき(チャック間距離が150mmとなったとき)のフィルムにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を200%伸長時応力(F200値)とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0089】
(9)150℃での破断伸度
(8)と同様の方法で、フィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行い、フィルムが破断したときの伸度をそれぞれの伸度とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0090】
(10)貯蔵粘弾性率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ60mm×幅5mmの矩形に切り出しサンプルとした。動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ製、DMS6100)を用い、下記の条件下で、25℃、80℃および150℃での貯蔵弾性率(E‘)を求めた。
【0091】
周波数:10Hz、試長:20mm、最小荷重:約100mN、振幅:10μm、
測定温度範囲:−50℃〜200℃、昇温速度:5℃/分。
【0092】
(11)熱変形率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ50mm×幅4mmの矩形に切り出しサンプルとした。熱機械分析装置(セイコ−インスツルメンツ製、TMA EXSTAR6000)を使用して、下記の条件下で保持した際のフィルム長の変形率を求めた。
【0093】
試長:15mm、荷重:19.6mN、保持温度:80℃、保持時間:3分。
フィルム変形率(%)=
{|試長(mm)−保持後のフィルム長(mm)|/試長(mm)}×100。
【0094】
(12)フィルム外観
A4サイズにサンプリングしたフィルムを、3波長蛍光灯下で透過にて目視で観察を行い、長さが0.5mm以上の傷をカウントし、A4サイズ当たりの傷の個数を以下の基準にて評価を行った。
S:傷が全くカウントされなかった。
A:傷の個数が1個以上5個未満であった。
B:傷の個数が5個以上10個未満であった。
C:傷の個数が10個以上であった。
成型用フィルムとして用いるためには、B以上であることが好ましいが、品位が厳しくない用途ではCでも使用することができる。
【0095】
(13)成型性
本発明のポリエステルフィルムを、450℃の遠赤外線ヒーターを用いて、表面温度が150℃の温度になるように加熱し、70℃に加熱した円筒形金型(底面直径50mm、高さ20mm)に沿って真空成型を行った。円筒形金型は、エッジ部分のRを1mm、2mm、3mmの3種類準備して真空成型を行った。金型に沿って成型できた状態を以下の基準で評価した。
S:R1mmで成型できた(R1mmを再現できた)。
A:R2mmで成型できた(R2mmを再現できた)が、R1mmでは成型できなかった。
B:R3mmで成型できた(R3mmを再現できた)が、R2mmは成型できなかった。
C:R3mmで成型できなかった。
成型用フィルムとして好適に用いるためには、B以上であることが必要である。
【0096】
(14)均一成型性
(13)で成型した底面の中心を基準として、中心を通る任意の直線および、その直線に直交する直線を2本ひき、中心および、中心からそれぞれ4方向に5mm、15mm、25mm、35mm、45mmの点(合計:21点)の厚みを測定し、フィルム厚みの最大値と最小値の差から下記の基準で成型ムラを評価した。
成型ムラ=(厚みの最大値−厚みの最小値)/厚みの平均値
S:成型ムラが0.05未満
A:成型ムラが0.05以上0.1未満
B:成型ムラが0.1以上0.15未満
C:成型ムラが0.15以上。
成型用フィルムとして用いるためには、B以上であることが好ましいが、品位が厳しくない用途ではCでも使用することができる。
【0097】
(15)寸法安定性1
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、80℃に加熱した熱風オーブン内に60分間垂直に吊して加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプルの計10サンプル実施して、その平均値を熱収縮率として採用した。得られた熱収縮率について、下記の基準で評価を行った。
S:熱収縮率0.2%未満
A:熱収縮率0.2%以上0.4%未満
B:熱収縮率0.4%以上0.6%未満
C:熱収縮率0.6%以上。
成型用フィルムとして好適に用いるためには、B以上であることが必要である。
【0098】
(16)寸法安定性2
フィルムをA4サイズにサンプリングし、フィルム表面にコロナ処理を行い、塗れ張力を55mN/mとした後に、東洋モートン(株)製の接着剤AD503と硬化剤CAT10と酢酸エチルを20:1:20(重量比)で混合した接着剤を塗布した。この上にフィルム厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製ルミラーS10)をラミネートし、(80℃、0.1MPa、2m/min)フィルム積層体を作製した。この積層体を、80℃の熱風オーブン中で60分保管した後、水平台の上に取り出し、A4フィルムの4つ端部の水平台からの高さを測定し、その平均値を端部高さとして、下記の基準で評価を行った。
S:水平台からの端部高さが5mm未満
A:水平台からの端部高さが5mm以上10mm未満
B:水平台からの端部高さが10mm以上30mm未満
C:水平台からの端部高さが30mm以上。
成型用フィルムとして用いるためには、B以上であることが好ましいが、印刷、ラミネートなどを施さない用途ではCでも使用することができる。
【0099】
(17)耐傷性
フィルムをA4サイズにサンプリングし、フィルム表面にコロナ処理を行い、塗れ張力を55mN/mとした後に、日本合成化学工業(株)製のハードコート剤「紫光UV−7640B」と酢酸エチルを質量比1:1で混合し、#4メタリングバーにて均一に塗布した。塗布後、60℃の熱風オーブン中で3分間保管し、UV照射装置(アイグラフィックス製、ECS−401GX)にて、積算光量が450mJ/cm2となるようにUV照射を行った。得られたハードコート層積層フィルム表面を、スチールウール#0000で荷重を変更し、一定荷重下で10往復(速度10cm/s)摩擦し、傷がつかなかった最大荷重を測定し、以下の基準で評価を行った。
S:最大荷重が2kg/cm以上
A:最大荷重が1以上2kg/cm未満
B:最大荷重が0.5以上1kg/cm未満
C:最大荷重が0.5kg/cm未満。
成型用フィルムとして用いるためには、B以上であることが好ましいが、品位の厳しくない用途、成型部材として使用中に表面が擦れることのない用途では、Cでも使用することができる。
【実施例】
【0100】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0101】
(ポリエステルA)
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行した。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、固有粘度0.65,副生したジエチレングリコール成分が、樹脂中のグリコール成分に対して、2モル%共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0102】
(ポリエステルB)
1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が、グリコール成分に対して、33mol%共重合された共重合ポリエステル(イーストマン・ケミカル社製 EatsterPETG6763)と、ポリエステルAとを質量比76:24で混合し、ベント式二軸押出機を用いて、280℃で溶融混練し、副生したジエチレングリコールが、樹脂中のグリコール成分に対して、2モル%共重合された、1,4−シクロヘキサンジメタノール25mol%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(ジエチレングリコール共重合率2モル%)を得た。
【0103】
(ポリエステルC)
テレフタル酸ジメチルを67.6重量部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを17.4 重量部、エチレングリコールを54重量部、スピログリコールを20重量部、酢酸マンガン四水塩を0.04重量部、三酸化アンチモンを0.02重量部それぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。内容物を150℃で溶解させて撹拌し、温度230℃までゆっくり昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールが留出したのち、トリメチルリン酸を0.02重量部含んだエチレングリコール溶液を添加した。トリメチルリン酸を添加した後10分間撹拌してエステル交換反応を終了し、エステル交換反応物を重合装置に移行した。
【0104】
次いで重合装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、エチレングリコールを留出させながら重合を行った。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃ から285℃ まで昇温した。
【0105】
重合装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重合装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重
合装置下部のバルブを開けてガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポ
リエステルガットはカッターにてカッティングし、チップとし、固有粘度は0.78、副生したジエチレングリコール成分が樹脂中のグリコール成分に対して2モル%、スピログリコール成分が樹脂中のグリコール成分に対して15モル%、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸成分が樹脂中のジカルボン酸成分に対して20モル%共重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0106】
(ポリエステルD)
テレフタル酸ジメチル80質量部、イソフタル酸ジメチル20質量部、エチレングリコール67質量部の混合物に、酢酸マグネシウムを0.08質量部、三酸化アンチモン0.022質量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃メタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。ついで、該エステル交換反応生成物に0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行した。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧し、最終的に280℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.7となるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングしてイソフタル酸成分を樹脂中のジカルボン酸成分に対して20モル%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂(副生したジエチレングリコール成分の共重合率は1.8モル%)を得た。
【0107】
(ポリエステルE)
テレフタル酸100質量部、および1,4−ブタンジオール110質量部の混合物を、窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.054質量部、モノヒドロキシブチルスズオキサイド0.054質量部を添加し、エステル化反応を行った。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.066質量部を添加して、減圧下で重縮合反応を行い、固有粘度0.88のポリブチレンテレフタレート樹脂を作製した。その後、140℃、窒素雰囲気下で結晶化を行い、ついで窒素雰囲気下で200℃、6時間の固相重合を行い、固有粘度1.22のポリブチレンテレフタレート樹脂とした。
【0108】
(ポリエステルF)
テレフタル酸ジメチル100質量部、1,3−プロパンジオール80質量部を窒素雰囲気下でテトラブチルチタネートを触媒として用い、140℃から230℃まで徐々に昇温し、メタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。さらに、250℃温度一定の条件下で3時間重縮合反応を行い、固有粘度が0.86のポリトリメチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0109】
(粒子マスターA)
上記ポリエステルAを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、ポリマー中の粒子濃度2質量%の粒子マスターを作製した。
【0110】
(粒子マスターB)
ポリエステルAを製造する際、エステル交換反応後に平均粒子径0.5μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、ポリマー中の粒子濃度2質量%の粒子マスターを作製した。
【0111】
(核剤マスターA)
上記のように作成したポリエステルAと、ステアリン酸バリウムを、質量比95:5で混合し、ベント式二軸押出機を用いて、280℃で混練し、ステアリン酸バリウム5質量%の核剤マスターを作製した。
【0112】
(核剤マスターB)
上記のように作成したポリエステルAと、エチレンビスラウリン酸アミドを、質量比95:5で混合し、ベント式二軸押出機を用いて、270℃で混練し、エチレンビスラウリン酸アミド5質量%の核剤マスターを作製した。
【0113】
また、下記の(実施例1)〜(比較例5)にて用いられているxはフィルム中のグリコール成分に対する1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量(モル%)を、yはフィルム中のジカルボン酸成分に対する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分の含有量(モル%)を、それぞれ指す。
【0114】
(実施例1)
ポリエステルAとポリエステルBとを質量比70:30で混合し、真空乾燥機にて180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、単軸押出機に供給、275℃で溶融し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。
【0115】
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を90℃、延伸温度を95℃で長手方向に3.2倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。
【0116】
その後、コロナ放電処理を施し、基材フィルムの両面の濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に、以下の塗剤A、B、C、Dを超音波分散させながら混合し、#4メタリングバーにて均一に塗布した。
【0117】
塗剤A:水分散アクリル樹脂
塗剤B:メチロール化メラミン(希釈剤:イソプロパノール/水)
塗剤C:コロイダルシリカ(平均粒径:80nm)
塗剤D:フッ素系界面活性剤(希釈剤:水)。
【0118】
次いでテンター式横延伸機にて予熱温度90℃、延伸温度100℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度210℃で5秒間の熱処理を行い、フィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0119】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値未満であり、面配向係数が僅かに高いため、150℃でのF200値が僅かに高くなり、成型性がAであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ガラス転移温度が最適範囲内であり、ジカルボン酸成分数が2種類以下のため、25℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、耐傷性がSであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有していないため、外観がCであった。
【0120】
すなわち、得られたフィルムは、成型性が僅かに低かったが、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性および耐傷性にも優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして優れるフィルムであった。
【0121】
(実施例2)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルCと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比68.4:30:1.2:0.4で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルCとを質量比70:30の割合で混合して使用した。
【0122】
各々混合したポリエステル樹脂を個別に真空乾燥機にて180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、別々の単軸押出機に供給、275℃で溶融し、別々の経路にてフィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイの上部に設置したフィードブロック内にてA層/B層/A層(積層厚み比は表参照)となるように積層した後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。
【0123】
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度90℃、延伸温度を95℃で長手方向に3.3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度95℃、延伸温度100℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度220℃で5秒間の熱処理を行いフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’の式の下限値未満であり、面配向係数が若干高いため、150℃でのF200値が若干高くなり、成型性がBであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲内となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ガラス転移温度が最適範囲内であり、ジカルボン酸成分数が2種類以下のため、25℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、耐傷性がSであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0125】
すなわち、得られたフィルムは、成型性が若干低かったが、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性および耐傷性、外観にも優れるところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題ないフィルムであった。
【0126】
(実施例3)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルCと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比48.4:50:1.2:0.4で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルCとを質量比50:50の割合で混合して使用した。
【0127】
その後は、横延伸倍率を3.7倍、熱処理温度を225℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み150μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0128】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値未満であり、面配向係数が僅かに高いため、150℃でのF200値が僅かに高くなり、成型性がAであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲内となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ガラス転移温度が最適範囲内であり、ジカルボン酸成分数が2種類以下のため、25℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、耐傷性がSであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0129】
すなわち、得られたフィルムは、成型性が僅かに低かったが、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性および耐傷性、外観にも優れるところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして優れるフィルムであった。
【0130】
(実施例4)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比53.5:45:1:0.5で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比55:45の割合で混合して使用した。
【0131】
その後は、縦延伸を3.4倍とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み170μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0132】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ガラス転移温度が最適範囲内であり、ジカルボン酸成分数が2種類以下のため、25℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、耐傷性がSであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0133】
すなわち、得られたフィルムは、成型性、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性および耐傷性、外観にも優れるところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして極めて優れるフィルムであった。
【0134】
(実施例5)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比24.7:75:0.2:0.1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比25:75の割合で混合して使用した。
【0135】
その後は、縦延伸温度を100℃、熱処理温度を225℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0136】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・融点は最適範囲の下限値以上であるが、x+yが(1)’の式の上限値より大きいため、150℃貯蔵弾性率が若干低くなり、均一成型性がBであった。
・ガラス転移温度は最適範囲内、ジカルボン酸成分数は2種類以下であるが、x+yが(1)’の式の上限値以上であるため、25℃貯蔵弾性率が僅かに低くなり、耐傷性がAであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているものの濃度が若干低いため、外観がBであった。
【0137】
すなわち、得られたフィルムは、成型性、寸法安定性に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題のないフィルムであった。
【0138】
(実施例6)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比14.7:85:0.2:0.1で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比15:85の割合で混合して使用した。
【0139】
その後は、縦予熱温度80℃、縦延伸温度を90℃、横予熱温度85℃、横延伸温度95℃、熱処理温度を225℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0140】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・融点は最適範囲の下限値以上であるが、x+yが(1)の式の上限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が低くなり、均一成型性がCであった。
・ガラス転移温度は最適範囲内、ジカルボン酸成分数は2種類以下であるが、x+yが(1)’’の式の上限値以上であるため、25℃貯蔵弾性率が若干低くなり、耐傷性がBであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているものの濃度が僅かに低いため、外観がAであった。
【0141】
すなわち、得られたフィルムは、成型性、寸法安定性に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題のないフィルムであった。
【0142】
(実施例7)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比38:5:60:1.2:0.3で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとを質量比55:30:15の割合で混合して使用した。
【0143】
その後は、縦予熱温度85℃、縦延伸温度を90℃、熱処理温度を200℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0144】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値未満であり、面配向係数が僅かに高いため、150℃でのF200値が僅かに高くなり、成型性がAであった。
・ガラス転移温度が若干低かったため、80℃貯蔵弾性率が若干低くなり、寸法安定性1がBであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、均一成型性がSであった。
・x+yは(1)’’の式の上限値未満であり、ジカルボン酸成分数は2種類以下であるが、ガラス転移温度が若干低かったため、25℃貯蔵弾性率が若干低くなり、耐傷性がBであった。
・リラックス率は最適範囲内であるが、熱処理温度が僅かに低かったため、寸法安定性2がAであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0145】
すなわち、得られたフィルムは、成型性が僅かに低かったが、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性、外観に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題ないフィルムであった。
【0146】
(実施例8)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比24:70:5:0.8:0.2で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBと核剤マスターAとを質量比25:70:5の割合で混合して使用した。
【0147】
その後は、縦延伸倍率を3.5倍、横延伸倍率を3.6倍、熱処理温度を225℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み180μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0148】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・融点は最適範囲であるが、x+yが(1)’’の式の上限より大きいため、150℃貯蔵弾性率が僅かに低くなり、均一成型性がAであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内、ジカルボン酸成分が2種類以下であるが、x+yが(1)’’の式の上限値より大きいため、25℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、耐傷性がAであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0149】
すなわち、得られたフィルムは、成型性、寸法安定性に優れ、かつ耐傷性に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして優れたフィルムであった。
【0150】
(実施例9)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルCとポリエステルDと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比57.5:30:10:2:0.5で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルCとポリエステルDとを質量比60:30:10の割合で混合して使用した。
【0151】
その後は、縦予熱温度85℃、縦延伸温度を90℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0152】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’の式の下限値未満であり、面配向係数が若干高いため、150℃でのF200値が若干高くなり、成型性がBであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲内となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ガラス転移温度が最適範囲内であるが、ジカルボン酸成分が3種類含まれているため、25℃貯蔵弾性率が僅かに低くなり、耐傷性がAであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0153】
すなわち、得られたフィルムは、成型性が若干低かったが、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性、外観に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題ないフィルムであった。
【0154】
(実施例10)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比38.5:60:1:0.5で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとを質量比30:50:20の割合で混合して使用した。
【0155】
その後は、縦予熱温度85℃、縦延伸温度を95℃、横予熱温度85℃、横延伸温度95℃、熱処理温度190℃とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0156】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が若干低かったため、80℃貯蔵弾性率が若干低くなり、寸法安定性1がBであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ジカルボン酸成分が2種類以下であるが、ガラス転移温度が若干低かったため、25℃貯蔵弾性率が若干低くなり、耐傷性がBであった。
・リラックス率は最適範囲内であるが、熱処理温度が若干低かったため、寸法安定性2がBであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0157】
すなわち、得られたフィルムは、寸法安定性が若干低かったが、成型性に優れ、かつ均一成型性、外観に優れるところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題ないフィルムであった。
【0158】
(実施例11)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比9:90:0.5:0.5で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとを質量比10:80:10の割合で混合して使用した。
【0159】
その後は、縦予熱温度90℃、縦延伸温度を95℃、横予熱温度85℃、横延伸温度95℃、熱処理温度190℃、熱処理時の幅方向のリラックスを2%とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0160】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が若干低かったため、80℃貯蔵弾性率が若干低くなり、寸法安定性1がBであった。
・x+yが(1)の式の上限値より大きく、融点が僅かに低いため、150℃貯蔵弾性率が低くなり、均一成型性がCであった。
・ジカルボン酸成分が2種類以下であるが、x+yが(1)の式の上限値より大きく、ガラス転移温度が若干低かったため、25℃貯蔵弾性率が低くなり、耐傷性がCであった。
・熱処理温度、リラックス率が若干低かったため、寸法安定性2がBであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0161】
すなわち、得られたフィルムは、寸法安定性が若干低かったが、成型性に優れ、かつ外観に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題ないフィルムであった。
【0162】
(実施例12)
ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルFと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比43.8:45:10:1:0.2の割合で混合して使用した。
【0163】
その後は、縦延伸倍率3.5倍、横延伸倍率3.8倍、熱処理温度を180℃、熱処理時のリラックスを0%とした以外は実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0164】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が僅かに低かったため、80℃貯蔵弾性率が僅かに低くなり、寸法安定性1がAであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ジカルボン酸成分が2種類以下であるが、ガラス転移温度が僅かに低かったため、25℃貯蔵弾性率が僅かに低くなり、耐傷性がBであった。
・熱処理温度が若干低く、リラックス処理を施さなかったため、寸法安定性2がCであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0165】
すなわち、得られたフィルムは、寸法安定性が僅かに低かったが、成型性に優れ、かつ均一成型性、外観に優れるため、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして問題ないフィルムであった。
【0166】
(実施例13)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCと核剤マスターBと粒子マスターAとを質量比29.5:30:30:10:0.5で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとポリエステルCと核剤マスターBとを質量比30:30:30:10の割合で混合して使用した。
【0167】
その後は、実施例2と同様にしてフィルム厚み125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0168】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)’’の式の下限値以上であり、面配向係数が最適範囲の上限値未満であるため、150℃でのF200値が最適範囲内となり、成型性がSであった。
・ガラス転移温度が最適範囲内であるため、80℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、寸法安定性1がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、融点が最適範囲の下限値以上であるため、150℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、均一成型性がSであった。
・x+yが(1)’’の式の上限値未満であり、ガラス転移温度が最適範囲内、ジカルボン酸成分が2種類以下であるため、25℃貯蔵弾性率が最適範囲の下限値以上となり、耐傷性がSであった。
・熱処理温度、リラックス率が最適範囲内であるため、寸法安定性2がSであった。
・フィルム中に粒子を含有しているため、外観がSであった。
【0169】
すなわち、得られたフィルムは、成型性、寸法安定性に優れ、かつ均一成型性および耐傷性、外観にも優れるところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして極めて優れるフィルムであった。
【0170】
(比較例1)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルDと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比68.5:30:1:0.5の割合で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルDとを質量比70:30の割合で混合して使用した。
【0171】
その後は、実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0172】
得られたフィルムは、
・1,4−シクロヘキサンジメタノール成分および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有せず、x+yが(1)式の下限値未満であり、面配向係数が高いため、F200値が極めて高くなり、成形性がCであった。
【0173】
すなわち、得られたフィルムは、寸法安定性に優れるものの成型性に劣るところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして使用に耐えられないフィルムであった。
【0174】
(比較例2)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比59:40:0.5:0.5の割合で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルEとを質量比60:40の割合で混合して使用した。
【0175】
その後は、縦予熱温度90℃、縦延伸温度を95℃、横予熱温度85℃、横延伸温度90℃、熱処理温度190℃とした以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0176】
得られたフィルムは、
・ガラス転移温度が極めて低いため、寸法安定性が1がCであった。
【0177】
すなわち、得られたフィルムは、成型性に優れるものの、寸法安定性に劣るところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして使用に耐えられないフィルムであった。
【0178】
(比較例3)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比89:10:0.5:0.5の割合で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルBとを質量比90:10の割合で混合して使用した。
【0179】
その後は、縦延伸倍率3.7倍、横延伸倍率4倍とした以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0180】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)式の下限値未満であり、面配向係数が高いため、F200値が極めて高くなり、成形性がCであった。
【0181】
すなわち、得られたフィルムは、寸法安定性に優れるものの、成型性に劣るところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして使用に耐えられないフィルムであった。
【0182】
(比較例4)
A/Bの2層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルCと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比78:20:1.5:0.5の割合で混合して使用した。B層としては、ポリエステルAとポリエステルCとを質量比80:20の割合で混合して使用した。
【0183】
その後は、縦延伸倍率3.6倍、横延伸倍率3.9倍とした以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み200μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0184】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)式の下限値未満であり、面配向係数が高いため、F200値が極めて高くなり、成形性がCであった。
【0185】
すなわち、得られたフィルムは、寸法安定性に優れるものの、成型性に劣るところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして使用に耐えられないフィルムであった。
【0186】
(比較例5)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。A層として、ポリエステルAとポリエステルBと粒子マスターAと粒子マスターBとを質量比3.5:95:1.2:0.3の割合で混合して使用した。B層としては、ポリエステルBとポリエステルEとを質量比77:23の割合で混合して使用した。
【0187】
その後は、熱処理温度を180℃、熱処理時のリラックスを0%とした以外は、実施例2と同様にしてフィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0188】
得られたフィルムは、
・x+yが(1)式の上限値より大きく、ガラス転移温度が低いため、寸法安定性がCであった。
【0189】
すなわち、得られたフィルムは、成型性に優れるものの、寸法安定性に劣るところ、成型用二軸配向ポリエステルフィルムとして使用に耐えられないフィルムであった。
【0190】
【表1】

【0191】
【表2】

【0192】
【表3】

【0193】
【表4】

【0194】
【表5】

【0195】
【表6】

【0196】
【表7】

【0197】
【表8】

【0198】
【表9】

【0199】
【表10】

【0200】
【表11】

【0201】
【表12】

【0202】
【表13】

【0203】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は二軸配向ポリエステルフィルムに関し、高温領域での成型応力が低いため成型性に優れ、また、低温領域での貯蔵弾性率が特定の範囲であるため、寸法安定性に優れており、成型加工を施して、様々な成型部材へ好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の200%伸長時応力(F200値)がそれぞれ3MPa以上60MPa未満であり、
80℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ2500MPa以上5000MPa未満である成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を含有し、その含有量が(1)式を満たし、
かつ、面配向係数が0.07以上0.13未満である請求項1に記載の成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
5(モル%)≦x+y≦20(モル%) (1)
x:フィルム中のグリコール成分に対する1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量(モル%)
y:フィルム中のジカルボン酸成分に対する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分の含有量(モル%)
【請求項3】
25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ4000MPa以上10000MPa未満である請求項1または2に記載の成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
150℃におけるフィルム長手方向および幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ100MPa以上1500MPa未満である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
温度80℃、荷重19.6mNで3分間保持した際のフィルム長手方向および幅方向の熱変形率がそれぞれ−1.5%以上+1.5%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の成型用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
フィルム中に粒子を含有し、
ヘイズが0.1%以上3%未満である請求項1〜5のいずれかに記載の成型用二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2010−189593(P2010−189593A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37640(P2009−37640)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】