説明

成形プラスチック部品の一部に対するめっきを防ぐプロセス

【課題】表面処理後、成形部品の一部のみが無電解めっきを受容可能になるが、他の部分は受容可能にならない。
【解決手段】本発明は、二重ショット成形プラスチック部品の非めっき等級樹脂部分に触媒毒を組み込み、触媒毒を含有している該部分上に任意の無電解めっき化学物質が析出する傾向を遅延させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形体を選択的にめっきする改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一体成形物体は、例えばプリント回路及び配線板の形成に用いられている。多くの場合、2つの別個の成型工程を用いて成形体の2つの部分が形成される。例えば2ショット成形は、2種の射出成形ポリマーの組み合わせにより、2つの部分を有するデバイス、例えば成形相互接続デバイス(プリント基板を含む)などを製造する手段である。またプロセスは、2色プラスチック成形体の製造、及び1つの成形部品中で硬質プラスチックと軟質プラスチックとを組み合わせるためにも用いられている。
【0003】
典型的な2ショット成形プロセスは、以下の工程を含む:
1.第1のショットを成形する;
2.第1のショットを第2のポリマーで外層成形(overmold)する;
3.露出領域をエッチング及び活性化する;
4.無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっきを施し、めっき材料を析出させる。
【0004】
製品が最終用途に必要な性質を有していることに加えて、使用するために選択される2種のポリマーは、2ショット成形プロセスにおいて適合性でなければならず、まためっきに好適な組み合わせを提供しなければならない。ポリマーのうちの一方をめっきし、他方はめっきしないために、一般に成形プロセス後めっきすべきポリマーを選択的に活性化すること、又はポリマー中に触媒が配置されているポリマー、即ち特定の割合のパラジウムを含有しているポリマーを使用することが必要であることが見出されている。これらは例えば特許文献1に記載されており、その主題を参照することにより全体を本願に援用する。他の2ショット(又は多ショット)成形プロセスは、特許文献2及び特許文献3に記載されており、その主題を参照することにより全体を本願に援用する。
【0005】
しかしこれらプロセスは、依然として非めっき性ポリマー(non−plateable polymer)の少なくとも一部、特に2種のポリマーが接触する箇所に隣接する箇所に不要なめっきを施してしてしまう場合があり、これは成形した相互接続デバイスの性能に影響を及ぼす恐れがある。したがって成形した相互接続デバイスのめっき部(plateable portion)と非めっき部(non−plateable portion)との間に明確な境界線を提供する2ショット射出成形プロセスを開発することが望ましい。
【0006】
本発明は一般に、第1の部分上に無電解めっきを受容することができる第1の部分と、第2の部分上への無電解めっきを実質的に阻止する第2の部分とを有する成形体に関する。より具体的には本発明は、プリント基板用成形ブランク及び成形体、並びに該ブランクを形成するプロセス及び該成形体の一部を形成するための2つの別個の成形工程を含む成形体の一部をめっきするプロセスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,189,120号明細書(Zaderej)
【特許文献2】米国特許第5,407,622号明細書(Cleveland等)
【特許文献3】米国特許第6,601,296号明細書(Dailey等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、第1のショットが回路パターンを形成し、第2のショットが前記回路パターンの周囲に支持構造を形成する2ショット射出成形プロセスにより、付着性金属被覆を施すための成形体、例えば回路パターンを有するプリント基板などを形成することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、選択的に金属被覆を施すための成形体を形成して、成形体のめっき部と非めっき部との間に明確な境界線を提供することにある。
【0010】
本発明の更に別の目的は、成形体の非めっき部に付着する金属を最小限に抑える、又は付着させない、成形体の選択的金属被覆プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は一般に、
選択的にめっきが施されているめっき体であって、
a)第1プラスチック部であって、該プラスチック部中に触媒毒が実質的に均一に分布しており、該触媒毒が該プラスチック部上への無電解めっきを阻止する第1プラスチック部と、
b)第2プラスチック部であって、該プラスチック部上に無電解めっきを受容可能であり、該プラスチック部上に析出している無電解金属めっき層を有する第2プラスチック部と、
を含み、
前記第1プラスチック部が無電解金属めっきを少なくとも実質的に含まない、選択的にめっきが施されているめっき体に関する。
【0012】
また本発明は一般に、プラスチック部品にめっきを施す方法であって、
a)プラスチック部品を提供する工程であって、
i)第1プラスチック部であって、該プラスチック部中に触媒毒が実質的に均一に分布しており、該触媒毒が該プラスチック部上への無電解めっきを阻止する第1プラスチック部と、
ii)第2プラスチック部であって、該プラスチック部上に無電解めっきを受容可能である第2プラスチック部と、
を含むプラスチック部品を提供する工程と、
b)無電解めっきを受容可能な前記第2プラスチック部上において無電解めっきを受容するよう前記プラスチック部品を調製する工程と、
c)無電解めっき浴中で前記プラスチック部品にめっきを施す工程と、
を含み、
前記第1プラスチック部は無電解めっきを少なくとも実質的に含まないが、前記第2プラスチック部は少なくとも部分的にめっきされる、プラスチック部品にめっきを施す方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の通り二重ショット射出成形プロセスは、共にプラスチック部品を構成している非めっき性ポリマー及びめっき性ポリマーの一方、次いで他方からそれぞれ第1の「ショット」及び第2の「ショット」を形成する。2つの部分は密閉型(1又は複数)に圧入され、該2つの部分の材料が型穴内で固化する。成形された該材料は型の形状を保持しており、次いで完成成形部品は型穴から取り出される。
【0014】
無電解金属が非めっき部上にめっきされるのを阻止するために、本発明は二重ショット成形プラスチック部品の一部に触媒毒を組み込み、その後供される無電解めっき化学反応によって該触媒毒化合物を含有している部分上にめっき析出物が生じる傾向を遅延させる方法に関する。次いで二重ショット成形プラスチック部品は、クロム酸/硫酸エッチング、又はアルカリ性過マンガン酸塩溶液、中和剤、コロイド活性化、アクセラレーション(acceleration)を利用する標準的なプラスチックめっき(plating−on−plastic)プロセスラインを介して処理され、次いで無電解銅又は無電解ニッケルめっき化学反応に供される。当該技術分野において既知である他のプラスチックめっきプロセスを本発明の実施において用いてもよい。これに代えて、めっきされるプラスチック又は樹脂はパラジウムなどのめっき触媒が樹脂に組み込まれていてもよく、めっきされないプラスチック又は樹脂部分には触媒毒又はめっき毒が組み込まれていてもよい。したがって、意図的にめっきしないプラスチック又は樹脂は、触媒毒又はめっき毒を有し、成形体の他の部分は触媒めっき毒を有しないことが重要である。これにより成形体全体を活性化する、又は一部のみを活性化することが可能になるが、いずれの場合も触媒毒又はめっき毒を含む領域はめっきされない(たとえ活性化されたとしても)。
【0015】
プラスチックめっきラインの工程を介して処理された後、成形部品の一部のみが無電解めっきを受容可能になるが、他の部分は受容可能にならない。また本明細書に記載される革新的なプロセスは、無電解銅又は無電解ニッケルめっき化学物質が部品全体に亘って境界を超えてつながり、2種の異なる種類の樹脂にまたがる不要なめっき(extraneous plate)が生じない。
【0016】
本発明は、硫黄含有化合物などの触媒毒を二重ショット樹脂マトリクスの特定の部分に組み込む。結果としてめっき品質の高い成型プラスチック部品が得られ、めっき廃棄物が減少し、また二重ショット成形片の不要なめっきに関する悩ましい工業的問題が解決する。プラスチック表面が硫黄を多く含むと、めっき化学反応によって後に金属化され所望の効果が得られる潜在的接着部位を形成する効果がなくなる。触媒毒がポリマーマトリクス内に均一に分布できるよう、触媒毒はポリマーマトリクスに対して適合性を有さなければならない。
【0017】
触媒毒は、第1プラスチック部のポリマーマトリクスに対して適合性があり、該第1プラスチック部中に触媒毒を均一に分布させることができるよう選択される。任意的に、しかし好ましくは、硫黄含有化合物は非分極性種である。硫黄含有化合物はパラジウム毒として機能して触媒作用を停止させ、また過安定剤(overstabilizer)として機能して部品の第1プラスチック部上への無電解めっきを阻止する。また触媒毒は、エッチング/中和後表面濃度最大化剤として作用する。最後に触媒毒は、表面濃度を最大化させること以外は、エッチング工程及び中和工程により影響を受けない。本発明の利点の1つは、基材のめっき部と該基材の非めっき部との間に明確な境界線が存在することであり、これは先行技術のプロセスではみられないものである。
【0018】
1つの実施形態では非めっき部には、例えばR−SH又はR=S結合を有する硫黄含有化合物が分散しており、めっき部にはパラジウム触媒が分散している。
【0019】
1つの実施形態における触媒毒は、構造R−SH又はR=Sを有し、式中Rはアルキル基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、他の有機環構造、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
好適な物質の例としては、以下の式を有する物質が挙げられる。
【化1】

【0021】
別の実施形態では、触媒毒は、無電解銅めっきにおいて安定剤として用いられている2−メルカプトベンゾチアゾール、及び無電解ニッケルめっきにおいて安定剤として用いられているチオ尿素などの無電解めっきにおいて安定剤として用いられている硫黄含有化合物である。他の安定剤も当業者に知られている。更に、硫黄種が一般に好ましいが、無電解銅プロセス及び無電解ニッケルプロセスの少なくともいずれかの場合、適合性ヨード化合物も非めっき部における触媒毒として有用でもある。好適なヨード化合物の例はヨード安息香酸である。他の好適なヨード化合物も当業者に一般的に知られている。セレン化合物を用いてもよい。しかし触媒毒は鉛、アンチモン、又はビスマスなどの金属安定剤をいずれも含有しないことが好ましく、その理由はこれら金属が環境的にあまり好ましくないためである。
【0022】
幾つかの好適な安定剤は、R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,CT)から商品名VANAX(登録商標)として入手可能である。これら化合物としては特に、VANAX(登録商標)882A、チアジアゾール誘導体、VANAX(登録商標)829、置換1,3,4−チアジアゾール、VANAX(登録商標)196固体、アルキルジチオリン酸塩、VANAX(登録商標)189固体、不活性担体上の1,3,4−チアジアゾール誘導体、VANAX(登録商標)189、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのエーテル誘導体、及びVANAX(登録商標)DTDM、4,4’−ジチオジモルホリンが挙げられる。他の類似硫黄含有物質も本発明の実施において有用である。
【0023】
1つの実施形態では本発明のプロセスは、プラスチック部品にめっきを施す方法であって、
a)第1プラスチック部であって、該プラスチック部中に材料が実質的に均一に分布しており、該材料が該プラスチック部上への無電解めっきを阻止する第1プラスチック部と、第2プラスチック部であって、該ブラスチック部上に無電解めっきを受容可能である第2プラスチック部と、を含むプラスチック部品を提供する工程と、
b)無電解めっきを受容可能な前記第2プラスチック部上において無電解めっきを受容するよう前記プラスチック部品を調製する工程と、
c)無電解めっき浴中で前記プラスチック部品にめっきを施す工程と、
を含み、
前記第1プラスチック部が、少なくとも実質的に無電解めっきを施されないまま残る方法に関する。
【0024】
めっきを阻止するために第1プラスチック部に添加される触媒毒の量は、触媒毒が用いられている部分、及び用いられている具体的なプラスチックに依存する。触媒毒の量は、めっきが停止するまで触媒毒をプラスチック部分に徐々に添加することにより決定することができる。触媒毒の量は、触媒毒の硫黄含量に基づいて測定される。硫黄として測定される触媒毒の濃度は典型的には、少なくとも約0.015mg/L、より好ましくは約0.025mg/L〜約2.5mg/L、最も好ましくは約0.05mg/L〜約5.0mg/Lである。
【0025】
上述の通り二重ショット成形片は、めっき部と非めっき部とを含む。それぞれの部分に様々なポリマーを用いてもよく、好適な材料及び材料の好適な組み合わせの例を以下の表1に示す。めっき部及び非めっき部における樹脂の他の好適な組み合わせも当業者に知られている。
【表1】

ABS−アクリロニトリルブタジエンスチレン
PC−ポリカーボネート
PPO−ポリフェニレンオキシド
LCP−液晶ポリマー
SPS−シンジオタクチックポリスチレン
【0026】
非めっき部は、実質的に100%樹脂であり、触媒毒物質以外の充填材を全く含まないことが一般に好ましい。これが好ましい理由は、該部分が処理中エッチングされるとき、除去される充填材が存在せず、したがって接着部位が生じないためである。非めっき部に用いることができる充填材が幾つか存在する場合もあるが、これら材料の供給は非常に限られている。充填材は、エッチング化学反応により生じる接着部位として、部品の境界線にまたがる過剰な不要なめっきを生じさせる場合がある。掻き傷(scratch)、欠け目(nick)、刻み目(knurl)なども不所望のめっきを生じさせる場合があるが、本発明に従って触媒毒を含むことによりこの問題は解決される。
【0027】
めっき性プラスチック部上に無電解めっきを施すよう該プラスチック部を調製するために、幾つかの典型的な無電解めっきサイクルのうちの1つを介して該プラスチック部を処理する。各種無電解めっきサイクルが知られており、本発明で用いることができる。これらサイクルの幾つかを以下に記載するが、ほんの1例として提供するものであって限定するものではない。
【0028】
1つの実施形態では、無電解めっきサイクルは以下の工程を含む:
1)クロム酸/硫酸又はアルカリ性過マンガン酸塩/腐食剤混合物、
2)中和、
3)コロイド活性化、
4)アクセラレーション、及び
5)無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっき。
典型的にはプロセスの各工程の間に冷水によるすすぎ工程が介在する。
【0029】
別の実施形態では、無電解めっきサイクルは以下の工程を含む:
1)クロム酸/硫酸、
2)中和、
3)イオン性パラジウム活性化(酸又はアルカリ)、
4)イオン性還元剤、次亜リン酸塩、又はジメチルアミノボラン(DMAB)混合物、
5)無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっき。
【0030】
更に別の実施形態では、無電解めっきサイクルは以下の工程を含む:
1)アルカリ性過マンガン酸塩/腐食剤混合物、
2)中和、
3)イオン性パラジウム活性化、
4)イオン性還元剤、及び
5)無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっき。
【0031】
更に別の実施形態では、プラスチック部品がパラジウム粒子などのパラジウム触媒を含んでいる場合、無電解めっきサイクルは以下の工程を含む:
1)イオン性還元剤、及び
2)無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっき。
【0032】
最後にプラスチック部品のめっき部に液晶ポリマーが用いられる場合、無電解めっきサイクルは以下の工程を含む:
1)腐食剤エッチング、
2)中和のための酸予備浸漬(pre−dip)、
3)コロイド活性化、
4)アクセラレーション、及び
5)無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっき。
【0033】
また、液晶ポリマーの場合以下のプロセスを用いてもよい:
1)腐食剤エッチング、
2)中和のための酸予備浸漬、
3)イオン性パラジウム活性化、
4)イオン性還元剤、及び
5)無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっき。
【0034】
これらの場合も、無電解めっきサイクルの各工程の間に冷水によるすすぎ工程が介在することが好ましい。
【0035】
当該技術分野において既知である他の無電解めっきプロセスも本発明で用いるのに好適である。
【実施例】
【0036】
実施例1
アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー(ABS)基材を以下のサイクルを介して処理した:
(1)450g/Lのクロム酸及び350g/Lの硫酸と、0.1%w/vのMetex(登録商標)Spray Stop−L(マクダーミッド インコーポレーテッド,Waterbury,CTから入手可能)とを含む溶液を8分間160°F(71℃)の温度で塗布、
(2)冷水ですすぐ(3回)−1分間、
(3)5体積%のMacuplex(登録商標)9339中和剤(マクダーミッド インコーポレーテッド,Waterbury,CT)と、3.5体積%の塩酸とを、2分間115°F(46℃)の温度で塗布、
(4)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(5)0.6体積%のMacuplex(登録商標)D−34濃縮活性化剤(マクダーミッド インコーポレーテッド,Waterbury,CTから入手可能)と、20体積%の塩酸とを、3分間85°F(29℃)の温度で塗布、
(6)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(7)60g/LのMacuplex(登録商標)9369促進剤(マクダーミッド インコーポレーテッド,Waterbury,CTから入手可能)を、2分間120°F(49℃)の温度で塗布、硬水が問題となる場合は、Macuplex(登録商標)9369促進剤でMaccelerator(登録商標)25(MacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)を代用してもよい、
(8)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(9)Macuplex(登録商標)J−64EN又はUltradep(登録商標)60無電解銅(それぞれMacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)、
(10)冷水ですすぐ(3回)1分間、
(11)必要に応じて更なる処理工程。
【0037】
めっき部としてめっき等級のABS樹脂(GEから入手可能)、及び触媒毒物質として0.25重量%のテトラメチルチウラムモノスルフィドを含有しているGE100%ポリカーボネート樹脂を、上記サイクルを介して処理した。無電解めっき後、部品間に細い線が見られたため、2種のプラスチックを区別することができた。QC検査後不用なめっきは見られなかった。
【0038】
実施例2
液晶ポリマー(LCP)基材を以下のサイクルを介して処理した:
(1)Macudizer(登録商標)9276(MacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)100体積%M−79−224を、6分間〜10分間190°F(88℃)の温度で塗布、
(2)冷水ですすぐ(3回)1分間、
(3)55g/LのMacudizer(登録商標)9278 Glass Etch(MacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)と、7体積%の硫酸とを、5分間110°F(43℃)の温度で塗布、
(4)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(5)酸浸漬−10%硫酸を1分間〜2分間75°F(24℃)の温度で塗布、
(6)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(7)Conditioner90(MacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)−10体積%のA、5体積%のB、及び2.5体積%のCを、2分間120°F(49℃)の温度で塗布、
(8)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(9)Macuplex(登録商標)D−34濃縮物(MacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)−0.8体積%D−34濃縮物の20体積%塩酸溶液を、2分間〜4分間80°F(27℃)の温度で塗布、
(10)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(11)60g/LのUltracel(登録商標)9369(MacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)を2分間〜3分間120°F(49℃)の温度で塗布、
(12)冷水ですすぐ(2回)1分間、
(13)Macuplex(登録商標)J−64EN又はUltradep(登録商標)60無電解銅(それぞれMacDermid,Inc.,Waterbury,CTから入手可能)、
(14)冷水ですすぐ(3回)1分間、
(15)必要に応じて更なる処理工程。
【0039】
工程3から工程6は、めっきされる部品が充填材としてガラスを含有し、表面の外観を精密化する必要がある場合のみ必要である。
【0040】
上記処理サイクルは各種液晶ポリマーに応用できる。該処理サイクルは、Vectra(登録商標)C810樹脂(Ticona Corporation,Florence,KYから入手可能)などのVectra(登録商標)LCP樹脂に特に有効であることが見出されている。
【0041】
本発明の特定の実施形態を参照して本発明について上に記載したが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく多くの変更、修正、及び交換を行い得ることは明らかである。従って本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲内のかかる変更、修正、及び交換を全て包含することを意図する。本明細書に引用される全ての特許出願、特許、及び他の刊行物は参照することにより全体を本願に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的にめっきが施されているめっき体であって、
a)第1プラスチック部であって、該プラスチック部中に触媒毒が実質的に均一に分布しており、該触媒毒が該プラスチック部上への無電解めっきを阻止する第1プラスチック部と、
b)第2プラスチック部であって、該プラスチック部上に無電解めっきを受容可能であり、該プラスチック部上に析出している無電解金属めっき層を有する第2プラスチック部と、
を含み、
前記第1プラスチック部が、無電解金属めっきを少なくとも実質的に含まないことを特徴とする、選択的にめっきが施されているめっき体。
【請求項2】
触媒毒が、有機硫黄化合物及び有機ヨード化合物からなる群から選択される請求項1に記載のめっき体。
【請求項3】
触媒毒が、式R−SH又はR=Sを有する硫黄種であり、式中Rが、アルキル基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、有機環基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項2に記載のめっき体。
【請求項4】
触媒毒が、チアジアゾール、チアジアゾール誘導体、置換チアジアゾール、アルキルジチオリン酸塩、不活性担体上のチアジアゾール誘導体、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのエーテル誘導体、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバマートからなる群から選択される請求項2に記載のめっき体。
【請求項5】
有機ヨード化合物が、ヨード安息香酸である請求項2に記載のめっき体。
【請求項6】
触媒毒が、金属安定剤を全く含有していない請求項2に記載のめっき体。
【請求項7】
無電解金属めっき層が、無電解ニッケル及び無電解銅からなる群から選択される請求項1に記載のめっき体。
【請求項8】
プラスチック部品にめっきを施す方法であって、
a)プラスチック部品を提供する工程であって、
i)第1プラスチック部であって、該プラスチック部中に触媒毒が実質的に均一に分布しており、該触媒毒が該プラスチック部上への無電解めっきを阻止する第1プラスチック部と、
ii)第2プラスチック部であって、該プラスチック部上に無電解めっきを受容可能である第2プラスチック部と、
を含むプラスチック部品を提供する工程と、
b)無電解めっきを受容可能な前記第2プラスチック部上において無電解めっきを受容するよう前記プラスチック部品を調製する工程と、
c)無電解めっき浴中で前記プラスチック部品にめっきを施す工程と、
を含み、
前記第1プラスチック部が、無電解めっきを少なくとも実質的に含まないことを特徴とする、プラスチック部品にめっきを施す方法。
【請求項9】
無電解めっきが、無電解銅及び無電解ニッケルから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第2プラスチック部が、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリカーボネート、液晶ポリマー、パラジウム充填液晶ポリマー、及びパラジウム充填シンジオタクチックポリスチレンからなる群から選択される樹脂である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1プラスチック部が、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリカーボネート、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリカーボネート/ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン、及び液晶ポリマーからなる群から選択される樹脂である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
第1プラスチック部が、実質的に100%樹脂である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1プラスチック部が、該プラスチック部上に接着部位を生じさせ得る充填材を全く含有していない請求項8に記載の方法。
【請求項14】
触媒毒が、硫黄種及び有機ヨード化合物からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項15】
触媒毒が、式R−SH又はR=Sを有する硫黄種であって、式中Rが、アルキル基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、有機環基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒毒が、チアジアゾール、チアジアゾール誘導体、置換チアジアゾール、アルキルジチオリン酸塩、不活性担体上のチアジアゾール誘導体、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのエーテル誘導体、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバマートからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
有機ヨード化合物が、ヨード安息香酸である請求項14に記載の方法。
【請求項18】
触媒毒が、金属安定剤を全く含有していない請求項14に記載の方法。
【請求項19】
触媒毒が、硫黄に基づいて約0.015mg/L〜約5.0mg/Lの濃度で第1プラスチック部に存在している請求項8に記載の方法。
【請求項20】
触媒毒が、約 の濃度で第1プラスチック部に存在している請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プラスチック部品が、二重ショット成形プラスチック部品である請求項8に記載の方法。
【請求項22】
第2プラスチック部が、硫黄種及び有機ヨード化合物のいずれかからなる群から選択される充填材を含んでいる請求項8に記載の方法。
【請求項23】
第2プラスチック部が、パラジウム触媒を含有している請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2011−515580(P2011−515580A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500827(P2011−500827)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/033641
【国際公開番号】WO2009/117187
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591069732)マクダーミッド インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
【Fターム(参考)】