説明

成形ワイヤーハーネス

【課題】成形ワイヤーハーネス用金型の小型化・使用効率の向上が可能な技術を提供する。
【解決手段】成形ワイヤーハーネス1は、ワイヤーハーネス80を所要の配索形状に樹脂モールドした樹脂モールド部10を有している。樹脂モールド部10は、ワイヤーハーネス80の幹線70を覆うモールド本体部20と、幹線70から分岐する枝線75を覆うモールド枝線部40とを備えている。モールド枝線部40は、樹脂モールドされる時点では、モールド本体部20と、分離用接続部50によって一体に構成される。使用される場合に、分離用接続部50で分離することで、枝線75のモールド枝線部40が自由に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形ワイヤーハーネスに係り、例えば、電線群を樹脂のモールド成形で被覆した成形ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ワイヤーハーネスが多数用いられているが、近年、ワイヤーハーネスの生産性や車両組付け性の向上の観点から、ワイヤーハーネス外周部に、従来の外装部材に替わり、樹脂等の熱可塑性材料をモールド成形することがなされている。そして、外周を樹脂成形したワイヤーハーネス(成形ワイヤーハーネスともいう)について、各種の技術が提案されている。
【0003】
例えば、電線群をモールドする樹脂を改良してワイヤーハーネスの各部位にそれぞれ要求される機能を持たせるように構成した技術がある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、電線が集中的に分岐する領域においては、硬化後に比較的高い剛性を有する未発泡性樹脂でモールドすることで所望の強度が確保されている。また、分岐した枝線部分は、発泡性樹脂を用いることで、曲げ可能な支線として成形されている。
【0004】
成形ワイヤーハーネスの製造に関して、成形用金型に配索用溝を形成することで、成形用金型を配索治具として使用できるようにした技術もある(例えば、特許文献2参照)。この技術では、分岐線部に対してもモールド被覆することが可能となり、テープ巻き工程が省略されて生産性が向上する。また、常温硬化性の合成樹脂をモールド材として用いることにより、コールド成形が行えるので電線およびコネクタハウジング、分岐ハウジング等の付属品に対して加熱による悪影響がなく、得られるフラットワイヤハーネスの品質および信頼性が著しく向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−6129号公報
【特許文献2】登録実用新案第3103899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図4に示すように、成形ワイヤーハーネス101のワイヤーハーネス180が多数の枝線(支線)を持つ形状を呈する場合がある。その場合、ワイヤーハーネス180の幹線170がモールド本体部120に配置され、必要に応じて枝線がモールド成形されたモールド枝線部140がモールド本体部120から延出して一体となって成形される。その場合、当然に、金型190には、モールド本体部120及びモールド枝線部140の各端部(外縁部分)を一度に成形可能とする大きさが求められることになる。したがって、モールド本体部120の大きさの割には、金型190が非常に大きなサイズとなってしまい、金型190の使用効率が悪いという課題があり、成形ワイヤーハーネス用金型の小型化・使用効率の向上が可能な技術が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の成形ワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスの幹線の外周を覆う樹脂成形されたモールド本体部と、前記モールド本体部と一体に樹脂成形された、前記ワイヤーハーネスの枝線を覆うモールド枝線部と、前記モールド本体部と前記モールド枝線部とを、樹脂成形後において樹脂成形部分において分離可能とする接続部とを備える。
また、前記モールド枝線部と前記モールド本体部とは、前記ワイヤーハーネスの前記幹線と前記枝線とが並走するように成形されており、前記モールド枝線部における前記ワイヤーハーネスの配索方向と略平行な側面部分で一体となっており、当該一体となっている領域に前記接続部が形成され、前記接続部の断面積は、前記枝線の断面積より狭くともよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形ワイヤーハーネス用金型の小型化・使用効率の向上が可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る、成形時の樹脂モールドとその金型との関係を把握可能に示した成形ワイヤーハーネスの平面図である。
【図2】実施形態に係る、車両に搭載されたときの成形ワイヤーハーネスを示した平面図である。
【図3】実施形態に係る、図1のA−A断面を示した図である。
【図4】従来技術に係る、成形時の樹脂モールドとその金型との関係を把握可能に示した成形ワイヤーハーネスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る成形ワイヤーハーネス1を示した図であり、特に成形時の状態を示している。ここでは、成形ワイヤーハーネス1と使用する金型90との関係が分かるように示している。また、図2は、実際に使用される状態の成形ワイヤーハーネス1を示している。さらに、図3は、図1のA−A断面図を模式的に示した図である。
【0013】
この成形ワイヤーハーネス1は、例えば、車両におけるケーブル配索のために、ワイヤーハーネス80を所要の配索形状に樹脂モールドした樹脂モールド部10を有している。
【0014】
樹脂モールド部10は、ワイヤーハーネス80の幹線70を覆うモールド本体部20と、幹線70から分岐する枝線75を覆うモールド枝線部40とを備えている。なお、樹脂モールドが不要の枝線76は、モールド枝線部40に覆われない。モールド用の材料としては、一般的に用いられる合成樹脂材、例えばウレタン発泡材がある。
【0015】
ここで、モールド枝線部40は、樹脂モールドされる時点では、モールド本体部20と一体に構成される。具体的には、図3に示すように、モールド枝線部40は、断面が略円形状である。また、モールド本体部20は同様に断面が略円形状である。
【0016】
そして、モールド本体部20とモールド枝線部40とは、両方の側面部分において接続された状態になっている。この接続部分は、図示のように、厚さが薄く設定されており、成形後において、カッター等により容易に分離可能な分離用接続部50となっている。具体的には、分離用接続部50の断面積は、モールド枝線部40に覆われている枝線75の断面積よりも狭くなっている。なお、ここで枝線75の断面積とは、図示のように枝線75が複数で構成されているときには、個々の枝線75の断面積ではなく複数の断面積の合計を指す。また、このとき、枝線75の根元部分75aは、樹脂モールドされず露出した状態となっている。
【0017】
モールド本体部20やモールド枝線部40の形状は、上記の形状に限る趣旨ではなく、適宜選択できる。例えば、モールド枝線部40の形状が、断面三角形状であれば、三角形状の頂点部分とモールド本体部20との接続部分が分離用接続部50となる。
【0018】
分離用接続部50が分離されると、図2に示したように、モールド枝線部40は、枝線75の根元部分75aによってモールド本体部20と連結した状態になっており、樹脂モールドされた部分は、モールド本体部20から自由に可動し、所望の位置に配置される。
【0019】
なお、分離用接続部50は、少なくともモールド枝線部40の内部の枝線75が延びている方向に実質平行になっている。つまりモールド本体部20に沿うようにモールド枝線部40が配置された状態で成形される。したがって、成形時における必要とされる樹脂モールド部10の空間が従来と比較してコンパクトにすることができる。その結果、金型90事態をコンパクトにすることができる。
【0020】
また、樹脂成形工程自体は、従来技術で説明したような既知の技術を適用することで成形ワイヤーハーネス1を製造することができる。つまり、所要形状の金型90に、ワイヤーハーネス80が配索される。金型90を組み付けた後、内部にモールド材がインサートされる。その結果、樹脂モールド部10ではワイヤーハーネス80が被覆一体化される。
【0021】
以上、本実施形態によると、上述の通り、成形用の金型90を小型化することができ、使用効率の向上を図ることができる。また、ワイヤーハーネス80には、車両においてオプション設定時のみ利用される回路も含まれ、オプション未設定時には、その回路は、周辺の回路や構造物にテープ等で収束される。本実施形態の成形ワイヤーハーネス1では、オプション未設定時に分離用接続部50を切り離さずモールド本体部20とモールド枝線部40とを一体に維持することで、上記のようなテープ収束作業を排除することができる。
【0022】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、分離用接続部50に、一層分離容易とする為にステッチ状の穴が設けられてもよい。また、分離される頻度に応じて分離用接続部50の分離容易度(厚さ等)が設定されてもよい。つまり、あまり使用されない枝線75については、誤った作業で容易に分離してしまわないようにすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 成形ワイヤーハーネス
10 樹脂モールド部
20 モールド本体部
40 モールド枝線部
50 分離用接続部
70 幹線
75、76 枝線
75a 根元部分
80 ワイヤーハーネス
90 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスの幹線の外周を覆う樹脂成形されたモールド本体部と、
前記モールド本体部と一体に樹脂成形された、前記ワイヤーハーネスの枝線を覆うモールド枝線部と、
前記モールド本体部と前記モールド枝線部とを、樹脂成形後において樹脂成形部分において分離可能に接続する接続部と
を備えることを特徴とする成形ワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記モールド枝線部と前記モールド本体部とは、前記ワイヤーハーネスの前記幹線と前記枝線とが並走するように成形されており、前記モールド枝線部における前記ワイヤーハーネスの配索方向と略平行な側面部分で一体となっており、当該一体となっている領域に前記接続部が形成され、前記接続部の断面積は、前記枝線の断面積より狭いことを特徴とする請求項1に記載の成形ワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−101855(P2013−101855A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245251(P2011−245251)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】