説明

成形冷却液ホースの製造方法

【課題】車のボンネット内の厳しい環境条件に耐える複雑な形状を持つ冷却液ホースなどを容易に安価に製造する方法を提供すること。
【解決手段】押出し機、心棒膨張押出しダイ、ロボットハンドリングユニットおよびフレキシブル圧力ホースからなる装置を用いて、熱可塑性ポリマーを前記ダイを通して送り出し、ホースを製造する。前記ダイは、ロボットで制御でき、溝付ダイ通路に偏心を生じるようにオフセットすることが可能な外側ダイと内側ダイとを持つ。これにより、曲げ部の厚みが一定のホースを作ることができる。熱可塑性ポリマーは、ポリビニルクロライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル・ポリマー、ABSコポリマー、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、および弾性ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
押出し装置において繊維強化熱可塑性プラスチックから成形品を製造するためのプロセスに関する。典型的な成形品は冷却液ホースのようなホースおよびチューブから選ばれる。
【背景技術】
【0002】
ホース結合部組立て品、特に自動車および/または工業プロセスに関する流体回路において使われる特別なそれらの組立におけるものは、過度に厳しい環境で動作する。組立て品の異なった場所における色々な圧力および温度、または特別の回路における異なったホースの色々な直径を含んでいる要因は、化学暴露と同様に、高度に厳密なホース組立てに対するニーズにつながる。その結果、たくさんの永久的に成形されたゴムホースを効率的に経済的に製造することは、不可能ではないとしても困難である。そのような組立て品を製造するための多くの従来からの試行は、使用中の漏れに対して完全には信頼性がなかった製品につながってきた。エンジンおよび車体を組立てた後で、異なった集合体間の連結が行われてきた。自動車のボンネット下の狭いスペースのために、エンジン、冷却液およびラジエターなどの連結に使われるゴムホースは、色々なエンジンや車体タイプに個々に適合しなければならない。その形状は、車ボンネット下の利用可能なスペースに依存して、しばしば非常に複雑になる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その結果、特に冷却液ホースにおいては、ボンネット下の適用における厳しい環境条件に対して、複雑な形状および充分な耐性を有するホースの強いニーズがある。
【0004】
本発明のさらなる目的は、従来から周知のホースと比較して、容易にリサイクル可能で重量が小さい冷却液ホースを提供することである。
【0005】
加えて、個別で、経済的な方法で前記ホースを製造する方法が、限定された量の生産という観点において特に、要求されている。
【0006】
冷却液ホースを製造するための材料として、熱可塑性エラストマーのような熱可塑性ポリマーは、ここ数年で確立されてきた。熱可塑性エラストマー(TPE)は、熱可塑性と弾性との両方の特性を合わせ持つ。加硫化可能な非熱可塑性ゴムと比較して、成形された非加硫化ホースを高温処理できる分離加硫処理工程は、もはや必ずしも必要ではない。
【0007】
高温および作業圧力に対する所望の耐性を達成するために、熱可塑性エラストマーの強化が必要である。
【0008】
幾つかの理由により、短繊維強化熱可塑性エラストマーの使用は、本発明に従うプロセスによって永久変形ホースのような成形製品を生産する上では必須である。
【0009】
・その強化材料は、それが押出される前に材料内に存在しなければならない。何の繊維強化材料もない押出し製品は、ダイオリフィスを離れた後で、崩壊することになる。
【0010】
・分散化短繊維は、熱い押出された成形製品に、構造的完全性をもたらし、その結果その押出し製品を固化する前に、形状ゆがみを最小化する。
【0011】
・繊維強化材料は、たとえば、昇温・昇圧下で使用中の自動車ラジエターホースの膨張を減少させる。
【0012】
しかし、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーブレンドの固有特性は、その非反応性表面である。強化繊維と埋め込んでいる熱可塑性材料との接着性を高めるために、極性基板に密着性良く結合できるように、極性材料を用いて改良しなければならない。
【0013】
それらの低い表面張力(28〜30dyns/cm)のために、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーブレンドは、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン系材料と同様に、ポリアミド、ポリエステル、金属またはガラスのようなより多くの極性基板に直接に接着することができない。
【0014】
たとえば化学表面処理、極性材料経由の化合物改良、表面酸化またはプライマー/接着剤システムを用いて極性基板の表面張力を減らす方法のような、色々な技術が、ポリオレフィン材料の表面張力を増加させるために使われてきた。
【0015】
US特許4,345,004は、(金属)基板上のオレフィン塗布膜を形成する方法、つまりエポキシ樹脂、オレフィン樹脂および改良オレフィン樹脂の多層膜を適用して、その後でそこにオレフィン樹脂層を熱結合する方法を記載している。
【0016】
US特許4,732,632は、液体、樹脂(たとえば、エポキシ、ポリウレタン前駆物質)からなる硬化性ポリマーおよび硬化材料(たとえば、イソシアヌル酸塩)を基板に適用し、その後で硬化性の第1層と化学的に又は物理的に相互作用できるポリマー(たとえば、ポリオレフィン、EPDM、ブチルなど)層を適用することにより基板を塗布する方法を記載している。
【0017】
US特許6,300,418は、完全に硬化されたゴムおよび熱可塑性ポリオレフィン、官能化ポリオレフィン、および架橋剤や強化繊維(たとえば、炭素繊維)のような添加物を含有する熱可塑性ゴムを含む熱可塑性エラストマー組成を開示している。
【0018】
US特許6,072,003は熱可塑性エラストマー、改良ポリオレフィンおよび繊維のような添加物を含む組成を開示している。
【0019】
サイクラサン(Saikrasun)らは、「ポリオレフィン基材熱可塑性エラストマーの防弾強化」(ポリマー、エルセビア(Elsevier)科学出版社のGB,Vol.40,Nr.23ページ6437〜6442)の中において、熱可塑性エラストマー、改良ポリオレフィンおよび表面改質強化アラミド繊維を含む繊維強化熱可塑性エラストマーを開示している。
【0020】
国際公開特許出願WO03/062309は、メラミン型架橋結合剤と結合した接着性で活性化した繊維を含むタイヤに関するものである。
【0021】
それにもかかわらず、技術的に知られた接着システムを含む強化エラストマー製品は、湿度に対する好ましくない感度を示す。湿度は自動車冷却システムにおいて不可避的に存在するから、湿度/湿気に対して敏感でなく、また自動車エンジンの冷却水回路において冷却液ホースを使うのに適切である、接着システムを提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0022】
本発明のさらなる観点は冷却ホースのような成形製品を製造する方法に関する。
【0023】
特殊なダイ形状を使うことによって、たとえばアメリカ化学学会のゴム部会会議(ミシガン州デトロイト、1980年10月7日〜10日)において、ゴエットラー(L. A. Goettler)、ランブライト(A. J. Lambright)、レイブ(R.I. Leib )およびディマウロ(P. J. DiMauro)によって開示されたように、使用中にかかる水圧から生じる高い周方向応力に対抗するために、押出されたホースの円周または輪の方向に強化短繊維(一般には20mm以下)を配向することができる。
【0024】
短繊維強化熱可塑性エラストマーを使用した単一の押出し工程において、強化ホース構造を生産する経済性は、この単純化した成形技術によってさらに改善される。短繊維強化材の使用により、ダウン-ライン編みおよび被覆作業はなくなるから、ダイの所で真直ぐにそのホースに好ましい外形を与えることができる。オリフィスに通じかつオリフィスを含む溝つきダイ通路において偏心を生じるように、ピン(内側ダイ、または心棒)を用いて、外側ダイを同心から外側へ単純に動かすことによって、これが成し遂げられる。またはその逆もまた同様である。その結果、生じる押出し製品は、より広い通路を含むダイの側面から離れて曲がるだろう。
【0025】
チューブ・ダイの内側または外側部分をプログラム化されたシーケンスにおいて同心から外側へ動かすことによって、機械軸から逸脱し、その結果ホースにおいて曲げ部分を生じるように、ホースを押出す方向を作ることができる。
【0026】
上述した心棒ダイ技術は、特に、きつい曲げホースの形成を容易にする。
【0027】
それにも拘わらず、壁の薄層化および曲率効果のために曲げ部の内側の壁における応力の実質的な増加にもかかわらず、ホースを曲げる際に、破裂強度は犠牲にされる
さらに、得られる製品の形状は、押出し機および/または押出しダイと押出し製品との立体的相互作用によってしばしば制限される。押出し方向とは反対の方向にホースが大きく曲げられる時に、このことを知覚することができる。この場合において、成形された製品は押出し機の方向に押出される。
【0028】
上述の曲率効果を克服する一つの方法は、吹込みモールディングによるホースの製造である。吹込みモールディングプロセス中に、金型の形状が、成形されるホースへ転写される。それゆえ、この方法は個々の形状を持つ金型を必要とする。金型の生産は時間およびコストがかかるから、前記方法によるホースの製品は、特に少ない量においては、不経済である。
【0029】
前述の曲率効果をさらに回避する冷却液ホースを自由成形する方法を発明することは、それゆえ必要である。その方法は高価な金型を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0030】
(本発明の要約)
本発明は成形製品を製造するプロセスに関するものである。そのプロセスは、押出しバレル及び押出しダイを含む押出し機装置において、繊維強化熱可塑性ポリマーをプロセスすることを含む。前記押出しバレルは、ロボットハンドリングユニットに連結された心棒膨張押出しダイを通して送り出す。またその押出しバレルはフレキシブルな圧力ホースを用いて押出しダイへ連結される。
【0031】
本発明に従ったプロセスは、繊維を分散化することができるどんな押出し可能ポリマー組成にも適用される。圧力の適用によってダイを通して押出すこともできるどんなポリマーまたはポリマーブレンドも本発明の実施において適切である。熱可塑性ポリマーは特に適切であり、その例は、塩化ポリビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ポリビニル、ポリエステル・ポリマー、たとえば、ポリ(エチレン、テレフタレート)、ABSコポリマー、ポリアミド、たとえばナイロンである。好適な種類の押出し可能ポリマーはエラストマー・ポリマーによって代表される。ある種類の適切なエラストマー(ゴム系)ポリマーは、加硫化を必要としないが、それらの軟化温度以上で成形され、冷却下でエラストマー特性を向上させる熱可塑性エラストマーを含む。
【0032】
好ましい熱可塑性エラストマーの例として、ポリウレタン-ポリエステル・エラストマー(商業的に商標テキシン(Texin)で利用可能)、セグメント化ポリエーテルとポリエステル(商業的に商標テキシン(Hytel)で利用可能)、ナイロンブロックポリマー、スチレンブロック熱可塑性エラストマーおよびポリオレフィンとモノオレフィンとの動的に硬化されたブレンドである。US特許3,806, 558、3, 023,192、3,651, 014、3, 763,109、3,775,373、3, 784,520および3,533, 172は適切な熱可塑性エラストマーを示し、それらの開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0033】
加硫化エラストマーは別の種類の押出し可能ポリマー、特に加硫化ジエン含有エラストマーを含む。しかし、シリコンゴムまたはフッ素化ゴムのような非ジエンゴムも好ましい。適切な合成ゴムの説明に役立つ実例は、シス-4-ポリブタジエン、ブチルゴム、ネオプレン、エチレン・プロピレン・ターポリマー類、1,3-ブタジエンのポリマー、イソプレンのポリマー、エチレン酢酸ビニル・コポリマーおよび他のモノマーと1,3-ブタジエンとのポリマー、たとえば、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレンおよびメチルメタクリレートを含む。
【0034】
熱可塑性ポリマーと関連して使われる強化繊維は、以下のパラグラフ「強化繊維(D)」でさらに特定される。
【0035】
本発明のプロセスにおいて使われる強化熱可塑性ポリマーにおいて、強化繊維(D)の量は、熱可塑性ポリマーおよび強化繊維(D)の全量に基づいて、約1〜約30重量%、好適には約5〜約20重量%、最も好適には約8〜約16重量%である。
【0036】
好適な実施形態において、強化繊維は、溶融混合のような技術的に知られた方法によって、熱可塑性ポリマー内部に細かく分散されている。
【0037】
(熱可塑性エラストマー組成)
本発明に従ったプロセスにおいて1つの代替の熱可塑性ポリマーとして使われる熱可塑性エラストマー組成は、以下の(A)〜(B)を含む。
【0038】
(A)i. 50重量%以下の抽出可能ゴム(23℃、48h、シクロヘキサン)を含有する少なくとも部分的に硬化されたゴム、および
ii.熱可塑性ポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマー
を含む熱可塑性ゴム
(B)官能化ポリオレフィン
(C)メラミン、ウレア、ベンゾグアナミンおよび/またはグリコルリルをホルムアルデヒド、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂と反応させることにより得られる樹脂から選ばれる架橋材料
(D)グリセロール-ポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物および/またはブロック化ジソシアネートの群から選ばれたエポキシ樹脂によって接着性活性化された強化繊維。
【0039】
好適な実施形態において、熱可塑性ゴムは完全に硬化される。すなわち、それは5重量%以下の抽出可能ゴム(23℃、48h、シクロヘキサン)を含む。
【0040】
本発明に従った組成から得られる架橋繊維強化熱可塑性エラストマーは、優れた機械的特性、高温と高圧耐性、および顕著に減少した湿度敏感性を有する。
【0041】
さらに、熱可塑性エラストマー組成内部に分散化された短繊維は、固化する前にダイオリフィスを離れる熱い押出し製品の形状ゆがみを最小化させる改良された構造的完全性(グリーン強度)を実現する。以下に説明するように、この構造的完全性は、成形製品、好適には寸法安定性を改良した自立構造の成形製品、を製造するプロセスにおいて、熱可塑性組成処理を容易にする。
【0042】
繊維強化熱可塑性エラストマー組成は、以下の(I)〜(III)の工程を含むプロセスによって作られる。
【0043】
(I)(i)硬化性熱可塑性ゴム、
(ii)熱可塑性ポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマー、および
(iii)硬化剤、
の溶融混合
(II)熱可塑性ゴムを得るために硬化性熱可塑性ゴムを、少なくとも部分的に硬化するためにその混合物を動的に加硫処理すること
(III)(A)工程(II)の50重量%以下の抽出可能ゴム(23℃、48h、シクロヘキサン)を含有する少なくとも部分的に硬化されたゴム、
(B)官能化ポリオレフィン、
(C)架橋材、および
(D)接着性活性化繊維
の溶融混合。
【0044】
好適な実施形態において、硬化性ゴムは完全に硬化される。すなわち、それは5重量%以下の抽出可能ゴム(23℃、48h、シクロヘキサン)を含む。
【0045】
上述の特性を持つ強化熱可塑性エラストマーは、架橋後に前記方法によって好適に得られる。
【0046】
本発明に従って、US特許5,336,349において説明されているように、(その内容は参照することによりここに完全に含まれる)心棒ダイとロボットハンドリングユニットとを結合する配列は、押出し製品と押出しダイとの立体的相互作用の問題を解決し、金型を必要としない、ということが驚くべきことに発見された。本発明に従ったデバイスはロボットハンドリングユニットにより押出しダイの方向を容易にする。
【0047】
本発明のプロセスと関連して使われる装置は、(a)押出し機、(b)心棒膨張押出しダイ、(c)ロボットハンドリングユニット、および(d)フレキシブル圧力ホース、押出し機(a)を心棒膨張押出しダイ(b)と連結すること、を含む、ここに心棒膨張押出しダイ(b)はロボットハンドリングユニット(c)に、制御できるように連結される。
【0048】
好適な実施形態において、本発明に従ったプロセスにおいて使われる心棒膨張押出しダイ(b)は、溝付きダイ通路における偏心を生じるようにオフセットすることが可能な内側または外側ダイを持つ押出しダイである。
【0049】
この結果、本発明に従って使われた装置は、押出し製品と押出し機の1部との立体的相互作用を引き起こさずに、広く密接した曲げを持つ押出し製品の3次元成形を容易にする。
【0050】
本発明に従ったプロセスは、上述の架橋された強化熱可塑性エラストマー組成を含む成形され押出された製造品につながる。この製品は、たとえば、チューブ、または湿度に対する高い耐性および優れた機械的特性(圧力および温度耐性のような)を持つ冷却液ホースのようなホースであっても良い。
【0051】
その結果の押出し製品は複雑な形状、すなわち、鋭く広い曲げを持つものであっても良い。ロボットハンドリングユニットの動作により形成される広い曲げは、曲げ部の外側と同様に内側の壁厚を一定にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明の代替の好適な実施形態は、以下の請求項および説明から明らかになる。
【0053】
(本発明の詳細な説明)
熱可塑性ポリマーの一つの実施形態において、本発明に従ったプロセスにおいて使われる強化熱可塑性エラストマー組成は、熱可塑性ゴム、官能化ポリオレフィン(B)、架橋化剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)をブレンドすることによって、得ることができる。
【0054】
好適には、硬化性ゴム(i)、熱可塑性ポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマー(ii)およびオプションの硬化剤(iii)は、官能化ポリオレフィン(B)、架橋化剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)と一緒にブレンドする前に、完全に硬化された熱可塑性エラストマー(A)を形成するために、前もってブレンドされ硬化される。
【0055】
その成分は、樹脂を柔軟にするために充分に昇温された温度または、好適には、室温で結晶質であるような樹脂の融点以上の温度で、混合される。
【0056】
個々の化合物を混合すること(Mixing/Blending)は、ロールミル、バンブリミキサー、ブラベンダーミキサー、連続ミキサー、ミキシング押出し機、およびその類似品のような従来のミキシング装置を使って行われる。従来のフィラーや添加物は、それを製造するどんな段階においてもその組成に添加することができる。
【0057】
好適には、架橋剤(C)の添加は、プロセスの最終工程を示す。
【0058】
(熱可塑性ゴム(A))
成分(A)として本発明に従って使われた熱可塑性ゴム(エラストマー)組成は、一般にエラストマー(ゴム)を持つ熱可塑性ポリオレフィンを、熱可塑性連続相内部に離散微粒子相としてエラストマーを密接にかつ均一に分散化するという方法で、ブレンドすることによって得られる。加硫化組成に関する初期の研究は、ゲスラー(Gessler)のUS特許3,037,954に見出される。その中において、動的な加硫処理技術と同様に静的加硫処理が開示されていて、加硫性エラストマーが樹脂状熱可塑性ポリマー中に分散され、エラストマーは、ポリマーブレンドを連続的にミキシングしたりせん断したりする間に、硬化される。その結果として生じる組成(熱可塑性エラストマー加硫物質“TPV”)は、ポリプロピレンのような熱可塑性ポリマーの未硬化組成における、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、ポリブタジエン、ポリイソブテンなどのような硬化されたエラストマーのミクロゲル分散である。
【0059】
従って、(i)未硬化ゴム、(ii)熱可塑性ポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマーおよび、オプションとして(iii)従来の添加物およびフィラーを混合し、その後で均質なブレンドが得られるまで混練しながら混合物を溶融することによって、熱可塑性ゴム成分(A)が一般に製造される。加熱およびせん断の条件下で混合中にそのブレンドへの硬化剤(硬化性剤、架橋剤または加硫化剤と呼んでも良い)の添加は、熱可塑性組成に分散した少なくとも部分的に硬化され、好適には完全に硬化された(「完全に加硫化された」または「完全に架橋された」、と言っても良い)ゴムを生じる。
【0060】
ここで使われる用語「ゴム」は、エラストマー特性を示すように硬化することができるどんな天然または合成ポリマーをも意味する。本発明の目的に関して、用語「エラストマー」は、用語「ゴム」と同義的に使われる。
【0061】
本発明の動的に硬化されたゴム成分と関連して使われる用語「完全に硬化された」とは、従来の加硫化された状態におけるゴムと一般に連想するゴムへエラストマー特性を与えるように、ゴムの物理的特性が向上する状態まで、加硫化されるべきゴム成分が硬化される、ということを示す。ゲル量または、逆に、抽出可能なゴム成分の観点において、加硫化ゴムの硬化程度を説明することができる。代替的に、架橋密度の観点において、硬化程度を説明できる。抽出可能なゴムの決定は硬化状態の適切な尺度である。未硬化ゴムを分解する溶媒によって、硬化した後に室温で抽出できるせいぜい約5,4,3,2,1重量%以下のゴム成分を、与えられた順に優先度を増しながら、組成が含む程度まで、ブレンドの硬化可能なゴム成分を加硫処理することによって、改良熱可塑性エラストマー組成が作られる。一つの代替例において、試験標本が23℃48時間でシクロヘキサンによって抽出される。別の代替例において、試験標本が半時間キシレンを煮沸する時に抽出される。一般には、硬化ゴム成分が抽出可能なゴムを少なく含むほど、TPE特性は良くなる。当然、硬化ゴム相から抽出可能なゴムを実質的に何も含まない組成はずっと好適であるということになる。本発明の観点において、用語「何も抽出可能でない」とは、約0.5重量%以下、理想的には0重量%の抽出性を意味する。標本を室温の有機溶媒(たとえば、シクロヘキサン)中で約48時間浸漬し、乾燥した残留物の重さをはかり、組成の知識に基づいて適切な補正をすることにより、非溶解ポリマーの量を決定することを含む手順によって、%ゲルとして示されるゲル量が決定される。こうして、最初の重量から、硬化を意図しないTPVのゴム成分と同様に、溶解成分の重量、エキステンダー油のような加硫化されるゴムより外のもの、可塑剤および有機溶媒中の溶解組成成分を減じることによって、補正された最初と最後の重量が得られる。どんな不溶性色素やフィラーなども、最初と最後の両方から減じられる。上に補足して、US特許4,311,628が参照され、その開示は参照することにより完全にここに含まれる。
【0062】
動的に硬化されたゴム成分と関連して使われる用語「部分的に硬化された」とは、未硬化ゴム(23℃、シクロヘキサン、48h)を分解する溶媒によって、硬化されたゴム成分の約50まで、30まで、15まで、しかし5重量%を含まない所まで、与えられた順に優先度を増しながら、室温で抽出できることを示す。上で特定されているように、完全に硬化されたゴムは好適である。
【0063】
ゲル量の測定において、約100gの熱可塑性エラストマー組成のサンプルは、重さが測られ、細かい小片(サイズ:0.5mm x 0.5mm x 0.5mm)にカットされる。密閉容器中で、そのサンプルは、30mlのシクロヘキサンに23℃、48時間浸される。その後、そのサンプルは取り出され、ろ紙上に置かれ、重量が一定になるまで室温で72時間以上乾燥される。乾燥した残留物の重量から、ポリマー成分以外のすべてのシクロヘキサン不溶性成分(たとえば、繊維状フィラー、フィラー、色素)が引かれる。得られた値は「補正最終重量(Y)」とみなされる。他方で、そのサンプル重量から、ポリマー成分以外のシクルヘキサン可溶性成分(たとえば、柔軟剤)重量とシクロヘキサン不溶性成分(たとえば、繊維状フィラー、フィラー、色素)の重量とが引かれる。得られた値は「補正初期重量(X)」とみなされる。ゲル量(シクロヘキサン不溶性成分の量)は次の式により計算される。
【式1】
【0064】

好適な実施形態において、前記熱可塑性ゴム(A)は、約20A〜約60D、好適には約30A〜約約40D、最適には約35A〜約85Aのショア硬さ(ASTMD2240-02@5秒遅延に従って測定される)を持つ。
【0065】
さらなる好適な実施形態において、熱可塑性ゴム(A)は、約45〜約70Pa・s、好適には約50〜約65 Pa・s、および特定の形態においては約55 Pa・sのLCR粘性(実験室毛細管式血流計)を持つ。
【0066】
本発明に従った組成において、成分(A)として使われる熱可塑性ゴム成分の製造に関して、ゴム(i)は、樹脂を軟化するに充分な温度で、または、もっと普通には、室温で結晶質であるような樹脂の融点以上の温度で、熱可塑性ポリオレフィン・ホモ-またはコポリマー(ii)と混合される。ポリオレフィンおよびゴムを充分に混合した後に、硬化剤が添加される。約0.5〜10分で加硫化を完全にするためには、加硫化温度でせん断しながら加熱と咀嚼が一般に適切である。硬化温度を昇温することにより硬化時間を減少することができる。硬化温度の適切な範囲は、その樹脂のピーク融点(たとえば、高密度ポリエチレンでは約130℃、ポリプロピレンでは約165℃)から約225℃である。好適には、加硫化は約170℃〜約200℃の範囲の温度で行われる。
【0067】
動的な加硫化は、ロールミル、バンブリミキサー、ブランベリミキサー、連続ミキサー、ミキシング押出し機およびその類似品のような従来のミキシング装置で、高温で熱可塑性材およびエラストマー成分を混合することにより達成される。
【0068】
本発明と関連して使うことができる適切な熱可塑性ゴム(A)は商業的に利用できる。たとえば、USAオハイオ州アクロンのアドバンスド・エラストマー・システムズから商標サントプレーン(Santoprene)。
【0069】
本発明に従ったプロセスと関連して、フェノール硬化システムを利用する熱可塑性ゴム(A)が好適に使われる。以下において、熱可塑性ゴム(A)の個々の構成がもっと詳細に説明される。
【0070】
(ゴム(i))
熱可塑性ゴム(A)において使用に適切なゴムの説明に役立つが限定されない例は、エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエン・コポリマーゴム(たとえば、エチレン-プロピレン/非共役シエンゴム(EPDM))、エチレン/アルファ-オレフィン・コポリマーゴム(アルファ-オレフィンは化学式CH2=CHRであり、Rはプロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、およびその類似物質のような1〜12個の炭素原子を持つ直鎖または分岐アルキル基である。)から選ばれたゴムを含む。好適なエチレン/アルファ-オレフィン・ゴムはエチレン/プロピレン・コポリマーゴム(EPM)である。ゴムのさらなる実例は、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、C4〜C7イソモノオレフィンとパラ-アルキルスチレンとそれらのハロゲン化誘導体とのコポリマー、天然または合成ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン・コポリマーゴム、およびそれらのブレンドである。
【0071】
本発明の実施において使うことができる硬化可能な、または加硫化可能なゴムは、合成および天然のゴムの両方を含む。利用されるゴムの少なくとも一つは、加硫化可能なゴムでなければならない。
【0072】
ポリイソブチレン(PIB)は、加硫化できないので、真のゴムではないが、PIBは約40,000〜約百万の粘度平均分子量を持つという条件で、加硫化ゴムとあわせて本発明の実施において利用することができる。
【0073】
用語「ニトリルゴム」は、アクリロニトリル・コポリマーゴムを意味する。適切なニトリルゴムは、1,3-ブタジエンまたはイソプレンとアクリロニトリルとのゴム状ポリマーを含む。好適なニトリルゴムは、1,3-ブタジエンおよび20〜50重量パーセントのアクリロニトリルを含む。少なくとも50,000、好適には約100,000〜1,000,000の平均分子量を持つ「固体」ゴムであるどんなニトリルでも使うことができる。本発明の実施に関して適切な商業的に利用可能なゴムは、1980年版ゴム世界ブルーブック、ページ386〜406のゴムに関する材料および配合剤に記載されている。C4〜C7イソモノオレフィンとパラ-アルキルスチレンとの適切なハロゲン化コポリマーは、次の構造式によって示すことができるパラ-アルキルスチレン部分を含有するコポリマーを含む。
【式2】
【0074】

ここで、R2およびR6は、水素、約1〜5個の炭素原子を持つアルキル基、約1〜5個の炭素原子を持つ1級および2級ハロアルキル基からなる群から、独立に選択される。たとえば、公開ヨーロッパ特許出願0355021において開示されたもののように、Xは、臭素、塩素およびそれらの混合物からなる群から選ばれる。好適には、アルキルスチレン・コポリマーは、イソブチレンおよびパラ-メチルスチレンのハロゲン化コポリマー、もっと好適には、イソブチレンおよびパラ-メチルスチレンの臭素化コポリマーである。
【0075】
ブチルゴムはイソオレフィンと共役マルチオレフィンとのコポリマーである。有用なゴムコポリマーは、主要部分のイソオレフィンと少数量、好適には約30重量%以下の共役マルチオレフィンとを含む。好適なゴムコポリマーは、約85〜約99.5重量%(好適には約95〜約99.5重量%)のC〜Cイソオレフィンを含む。たとえば、イソブチレン、および約15〜0.5重量%(好適には約5〜0.5重量%)の約4〜14炭素原子を持つマルチオレフィンである。これらのコポリマーは文字通りに「ブチルゴム」と呼ばれる。
【0076】
ここで使われる用語「ブチルゴム」は、4〜7個の炭素原子を持つイソオレフィンおよび約0.5〜約20重量%の約4〜14個炭素原子を持つ共役マルチオレフィンの前述コポリマーを含む。好適には、これらのコポリマーは約0.5〜5%共役マルチオレフィンを含む。好適なイソオレフィンはイソブチレンである。適切な共役マルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、ジメチルブタジエン、ピペリレンなどを含む。商業用ブチルゴムは、イソブチレンと少量のイソプレンとのコポリマーである。
【0077】
適切なハロブチルゴムを作るために、約0.1〜10、好適には、約0.5〜3.0重量%の塩素または臭素を用いて、上述のブチルゴムをハロゲン化しても良い。ブチルゴムの塩素化形態は、「塩化ブチルゴム」として、臭素化形態は「臭化ブチルゴム」として普通に知られている。
【0078】
本発明に従った別の適切なゴムは、ポリクロロプレンゴムのようなポリ塩化ブタジエンに基づく。これらのゴムは、ネオプレン(デュポン ダウ)およびベイプレン(Bayprene)(モベイ(Mobay))と名づけられた商標で商業的に利用できる。
【0079】
本発明の好適な実施形態において、ゴムは、エチレン/アルファ-オレフィン・コポリマーゴム(EPM)またはエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエン・コポリマーゴム(EPDM)であり、後者は最適である。
【0080】
非共役ジエンモノマーは、約6〜15炭素原子を持つ直鎖、分岐鎖または環状炭化水素ジエンである。適切な非共役ジエンモノマーの例は、1,4-ヘキサジエンおよび1,6-オクタジエンのような直鎖非環状ジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンのような分岐鎖非環状ジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエンおよびジヒドロミリセンとジヒドロオシネンとの混合異性体、1,3-シクロペンタジエンのような単環脂環式ジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエンおよび1,5-シクロドデカジエン、およびテトラハイドロインデン、メチル・ハイドロインデン、ジシクロペンタジエンのような多環脂環式縮合と架橋環ジエン、ビシクロ-(2,2,1)-ヘプタ-2,5-ジエン、アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよび5-メチレン-2-ノルボネン(MNB)のようなシクロアルキリデン・ノルボネン、5-プロペニル-2-ノルボネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボネン、5-ビニル-2-ノルボネンおよびノルボルナジエンである。
【0081】
EPDMsを製造するために典型的に使われるジエンの内で、特に好適なジエンは、1,4-ヘキサジエン(HD)、5-エチリデン-2-ノルボネン(ENB)、5-ビニリデン-2-ノルボネン(VNB)、5-メチレン-2-ノルボネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好適なジエンは、5-エチリデン-2-ノルボネン(ENB)および1,4-ヘキサジエン(HD)である。
【0082】
エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンは、エチレン/プロピレン/非共役ジエン・ゴムに基づき、約40〜約85重量%、好適には約45〜約80重量%、およびもっと好適には約50〜約75重量%の範囲内にあるエチレンを含む。エチレン/プロピレン/非共役ジエン・ゴムは、約0.25〜約5重量%、好適には約0.25〜約2重量%およびもっと好適には約0.5〜約1.2重量%の範囲内にあるジエンを含む。約100%までのエチレン、アルファ-オレフィン、非共役ジエンエラストマー・ポリマーの平衡は、アルファ-オレフィンから一般に作られる。プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンおよびそれらの組合せ、およびその類似物質からなる群から選ばれる。本発明に従った好適なエチレン/プロピレン/非共役ジエン・ゴムは、アルファ-オレフィンとしてプロピレンとジエンコモノマーとして5-ビニル-2-ノルボルネンを含む。
【0083】
熱可塑性ゴム成分(A)において、ゴム(i)量は、ゴム(i)および熱可塑性樹脂(ii)(全ポリマー)の重量に基づき、一般に約95〜約10重量%の範囲内にある。好適には、ゴム量は、全ポリマーの約80〜約20重量%の範囲内にある。
【0084】
(熱可塑性ポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマー(ii))
熱可塑性エラストマー成分(A)の説明と関連してここで使われる用語「熱可塑性ポリオレフィン」は、熱可塑特性を示すどんなポリオレフィン樹脂をも表す。
【0085】
広範囲の熱可塑性樹脂および/またはそれらの混合物は、熱可塑性エラストマーの製造において使われてきて、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン・コポリマー類、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレン・コポリマー類、オレフィン・ブロック・コポリマー類に加えて環状オレフィンホモポリマー類またはコポリマー類、ポリスチレン、ポリフェニレン・サルファイド、ポリフェニレン・オキサイドおよびエチレン・プロピレン・コポリマー(EP)熱可塑性物質を含む。
【0086】
本発明によって作られる組成において有用な熱可塑性樹脂は結晶質および半結晶質のポリオレフィン・ホモポリマーおよびコポリマーを含む。それらは望ましくは、約2〜約20、好適には約2〜約12、もっと好適には約2〜約7炭素原子を持つ(たとえば、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセンおよびそれらの混合物、およびメチル(メタ)アクリレート類のような(メタ)アクリレートとそれらのコポリマー)モノ-オレフィン・モノマーから作られる。
【0087】
明細書および請求項において使われるように、用語「ポリプロピレン」は、約1〜約20重量%のエチレンまたは約4〜約20炭素原子のアルファ-オレフィン・コモノマー、およびそれらの混合物を含むことができる、ポリプロピレンの反応物コポリマー(PPRC)と同様にプロピレンのホモポリマーを含む。そのプロピレンは、チーグラー-ナッタまたはメタロセン触媒を用いて作られた、アタクチック、アイソタクチックまたはシンジオタクチックであることも可能である。PPRCはランダムまたはブロックコポリマーのどちらかであることも可能である。PPまたはPPRCの密度は約0.88〜約0.92 g/ cm3、好適には約0.89〜約0.91 g/cm3であることも可能である。商業的に利用可能なポリオレフィンを本発明の実施において使っても良い。熱可塑性樹脂のブレンドも使っても良い。
【0088】
好適なポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレン(HDPE)およびポリプロピレンである。エチレンの他のポリオレフィン・ホモノマーおよびコポリマーを本発明の実施において利用することができる一方で、生じるTPE組成は高温特性が不十分である。そのような他のポリオレフィンは低密度ポリエチレン(LDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリブチレン(BB)を含む。しかし、これらの他のポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HDPE)とともに本発明の熱可塑性エラストマー組成(a)に組入れることができる。
【0089】
高密度ポリエチレン(HDPE)(本発明のポリオレフィン樹脂として有用である)は約0.941〜約0.965 g/cm3の密度を持つ。高密度ポリエチレンは商業的および製造上は確立した生産物であり、一般的な特性は技術的に周知である。典型的には、HDPEは比較的ブロードな分子量分配を持ち、役20〜約40の数平均分子量に対する重量平均分子量の比によって特徴付けられる。
【0090】
ここで使われる用語「低密度ポリエチレン」または「LDPE」は、約0.910〜約0.940 g/cm3の低および中間の両方の密度を持つポリエチレンを意味する。この用語は熱可塑性樹脂であるエチレンのコポリマーと同様に線状ポリエチレンを含む。
【0091】
用語「極低密度ポリエチレン」または「VLDPE」は、約0.910 g/cm3以下の密度を持つポリエチレンを意味するようにここでは使われ、熱可塑性樹脂であるエチレンのコポリマーと同様に線状ポリエチレンを含む。
【0092】
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、一種の低密度ポリエチレンである。それは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、好適には1-ブテンまたは1-ヘキセンからなる群から選ばれた、長鎖分岐誘導C3〜C12アルファ-オレフィンがほとんどないか、あったとしても少しであることによって特徴づけられる。LLDPEを生産するプロセスは技術的には周知であり、このポリオレフィンの商用銘柄が利用可能である。一般に、気相流動床リアクターまたは液相溶解法リアクター内で生産される。前者のプロセスは、約0.69〜2.07Mpa(100〜300psi)の圧力で、約100℃程度の低い温度で行うことができる。
【0093】
有用な組成(A)を提供するために見出される熱可塑性ポリオレフィン(ii)の量は、ゴム(i)および熱可塑性ポリオレフィン樹脂(ii) の重量に基づく、ゴム一般に約5〜約90重量%である。好適には、熱可塑性樹脂量は全ポリマー重量の約20〜約80%の範囲となるであろう。
【0094】
(硬化剤(iii))
組成(A)において、ゴム成分は部分的に、好適には完全に加硫化/架橋化される。当業者は、ゴムの部分的または完全な加硫化を達成するために必要とされる、適切な量、硬化システムのタイプおよび加硫化条件を理解するだろう。望ましい最適で完全な架橋化を得るために有効な硬化剤の量、温度および時間を変化させてゴムを加硫化することができる。使用されるゴムの加硫化条件の下で、それが適切で、TPVのポリオレフィン樹脂成分と適合する限り、どんな硬化システムも使うことができる。これらの硬化剤は、硫黄、硫黄供与体、金属酸化物、樹脂システム、高エネルギー放射物およびその類似物、硬化促進剤および共通剤(co-agent)の有り無しの両方を含む。本発明のさらなる好適な代替において、公開ヨーロッパ特許出願0776937において開示されているように、架橋は、ヒドロシリル化架橋によっても効果的でありうる。その開示は参照によりここに完全に含まれる。
【0095】
ブチルゴムが非ハロゲン化ブチルゴムである場合を除いた硬化システムとして、適切な周知共通剤を持つ有機過酸化物を使うこともできる。過酸化物硬化システムにおいて共通剤の役割は、硬化状態を増大させ、鎖分解または切断効果を抑制することである。有用な有機過酸化物の具体例は、過酸化オクタノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、t-ブチル・ペロクトエイト、過酸化p-クロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酸化シクロヘキサノン、t-ブチル・ペロキシベンゾエイト、過酸化メチル・エチル・ケトン、過酸化ジクミル、過酸化ジ-t-ブチル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル・ペロキシ)ヘキサン、ジ- t-ブチル・ジペロキシフタレート、過酸化t-ブチルクミル、ジイソプロピルベンゼン・ヒドロペルオキサイド、1,3-ビス(t-ブチル-ペロキシイソプロピル)ベンゼン・t-ブチル・ペロキシ-ピバレート、過酸化3,5,5-トリメチル-ヘキサノイル、1,1-ビス(t-ブチル-ペロキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチル-ペロキシ)シクロヘキサン、など;アゾ-ビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、およびその類似物から選ばれる。
【0096】
過酸化物ベースの硬化システムは、ジメタクリル酸エチレン、メタクリル酸ポリエチレン・グリコール、トリメタクリル酸トリメチルプロパン、ジビニル・ベンゼン、イタコン酸ジアリル、シアヌール酸トリアリル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロヘキシル、m-フェニレン・ビス・マレイミド(HVA-2)、およびその類似物のような共通剤有り無しで使っても良い。
【0097】
フェノール樹脂硬化剤は、本発明の熱可塑性エラストマー加硫化物質の製造にとって好適である。そのような硬化システムは、技術的に周知であり、文字通りにゴムの加硫化である。加硫化組成におけるそれらの使用は、US特許4,311,628にもっと完全に記載されていて、その開示はこれを参照してここに完全に含まれている。
【0098】
そのようなシステムの基本原料は、アルカリ媒体において、ハロゲン置換フェノール、アルデヒド、好適には、ホルムアルデヒドを持つC1〜C10アルキル置換フェノールまたは非置換フェノールの縮合によって、または二官能性フェノールジアルコールの縮合によって作られる、フェノール系硬化樹脂である。
【0099】
パラ位置でC5〜C10のアルキル基と置換されたジメチルフェノールが好適である。アルキル置換フェノール硬化樹脂のハロゲン化によって製造されたハロゲン化アルキル置換フェノール硬化樹脂もまた適切である。メチロール・フェノール樹脂を含むフェノール硬化システム、ハロゲン供与体および金属化合物が特に推薦される。それらの詳細は、ギラー(Giller)のUS特許3,287,440およびガースチン(Gerstin)らのUS特許3,709,840に記載されている。非ハロゲン化フェノール硬化樹脂は、ハロゲン供与体と一緒に、好適には、水素ハロゲン化物スカベンジャーと一緒に使用される。通常、約2〜10重量%の臭素を含むハロゲン化、好適には臭素化フェノール樹脂は、ハロゲン供与体を必要としないが、酸化鉄、酸化チタニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化シリコンおよび好適には酸化亜鉛のような金属酸化物や、フェノール樹脂の架橋化機能を促進するもののような水素ハロゲン化物スカベンジャーと一緒に、使われる。しかし、フェノール樹脂と容易に硬化しないゴムを用いて、ハロゲン供与体および酸化亜鉛の共同使用が推薦される。ハロゲン化フェノール樹脂の製造および酸化亜鉛と一緒に硬化システムにおけるそれらの使用は、US特許2,972,600および3,093,613に述べられている。その開示は、前述のギラーおよびガースチンの特許とともに、参照することによりここに完全に含まれる。適切なハロゲン供与体の例は、塩化第一スズ、塩化第二鉄、または、塩化パラフィン、塩化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、およびポリクロロブタジエン(ネオプレン・ゴム)のようなハロゲン供与性ポリマーである。ここで使われる用語「活性剤」とは、フェノール硬化樹脂の架橋効率性を著しく増大させ、単独または共同かのどちらかで使われる金属酸化物およびハロゲン供与体を含む。フェノール硬化システムのさらなる詳細に関しては、「加硫化処理および加硫化剤」(パルマートン出版社、ホフマン(W.Hoffman))を見よ。適切なフェノール硬化樹脂および臭素化フェノール硬化樹脂は商業的に利用可能である。たとえば、そのような樹脂は、スケネクタディ・ケミカルズ社から商標名SP-1045、CRJ-352、SP-1055およびSP-1056で販売されている。同様の機能の
等価フェノール硬化樹脂は他のサプライヤーからも得ることができる。上述したように、充分な量の硬化剤が、ゴムの本質的に完全な硬化を達成するために使われる。
【0100】
ハロゲン化ブチルゴムに関して、好適な硬化システムは、ZnOおよび/またはMgOに基づくものである。このシステムにおいて、そのMgOは、脱ハロゲン化水素からゴムを安定化させるために、活性剤としてではなく酸受容体として作用する。
【0101】
ハロゲン化ブチルゴムに関して別の好適な硬化システムは、ZnOおよびマレイミド物質を含む。マレイミド物質のうちで、ビスマレイミドは有効性において特に優れていて、m-フェニレン・ビスマレイミド(4,4’-m-フェニレン・ビスマレイミド)(HVA-2)は好適である。そのビスマレイミドの他の例は、4,4’-ビニレンジフェニル・ビスマレイミド、p-フェニレン・ビスマレイミド、4,4’-サルフォニルジフェニル・ビスマレイミド、2,2’-ジチオジフェニル・ビスマレイミド、4,4’-エチレン-ビス-オキソフェニル・ビスマレイミド、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビビフェニル・ビスマレイミド、o-フェニレン・ビスマレイミド、ヘキサメチレン・ビスマレイミド、および3,6-ドゥリン・ビスマレイミドである。硬化されるはずのゴム100重量%あたり、硬化剤または硬化性システムの通常約1〜15重量%、好適には約2〜10重量%が使われる。
【0102】
(従来の添加剤とフィラー(iv))
エラストマー相中に組み入れたフィラーおよび/または添加剤を有することは好ましくなる可能性があるが、その程度に依存して、そのフィラーおよび/または添加剤をエラストマー相の硬化が要求されるレベルで添加しても良い。上述のプロセスに対する代替として、熱可塑性ゴム(A)はフィラーまたは添加剤なしで製造しても良い。そのフィラーおよび/または添加剤は、遅い段階の第2の配合操作において、添加しても良い。
【0103】
一般に、フィラーまたは添加剤を添加することはゴム配合の技術においては従来手段である。適切な添加剤は、色素、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、抗ブロッキング剤、潤滑剤、プロセス・オイル、ワックス、フィラーの結合剤、およびそれらの混合物である。ここで使われる用語「フィラー」とは、非強化フィラー、強化フィラー、有機フィラーおよび無機フィラーを示す。フィラーは、有機フィラーおよび無機フィラー(たとえば、ミネラルのフィラー)であっても良い。好適には、フィラーは無機フィラーである。適切なフィラーは、滑石、シリカ、粘土、固体難燃剤、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボン・ブラック、他の無機質フィラー、およびそれらの混合物である。
【0104】
カーボン・ブラックはどんな原料からも生成でき、チャネル・ブラック、ファーネス・ブラック、サーマル・ブラック、アセチレン・ブラック、ランプ・ブラックおよびその類似物質のような、どんな種類のカーボン・ブラックとすることもできる。どんな有効量のフィラーを添加しても良い。熱可塑性の動的に加硫化された組成(A)の全体に基づいて、典型的には、フィラーは、約60重量%までの量で、好適には約2〜約50重量%の範囲内で、添加することもできる。特定のフィラーに関して、これらの比率は変化しても良い。たとえば、カーボン・ブラックは、組成(A)に基づいて、好適には約1〜約40重量%の範囲内の量で、もっと好適には約2〜約20重量%の量で添加される。
【0105】
特殊な適用に関して、フィラーまたは添加剤の有効量は、これらの範囲を超える場合もあるということは理解されるだろう。本発明は、強化フィラーの場合において最も必要とされる、熱可塑性相内にフィラーを集中させるので、所望の同じ強度を維持しながら、添加されるべきフィラー量の減少を期待できる。
【0106】
本発明の実施に適切な添加剤を、全組成に基づいて、約0.05〜約5重量%の範囲内の量で、好適には約0.05〜約3重量%の範囲内の量で、添加することも可能である。適切な添加剤が紫外線安定剤である時、その紫外線安定剤は、全エラストマー組成(A) に基づいて、約0.05〜約1.0重量%の範囲内の量で、存在しても良い。
【0107】
用語「紫外線安定剤」(U.V.安定剤、典型的には、少なくとも約1000、好適には少なくとも5000の分子量を有する、標準温度および圧力で固体の粒子状物質)は、TPV組成で紫外線の劣化効果から安定化させるかまたは防止する化合物を示すために、ここで使われる。U.V.安定剤は、本発明のTPV組成に悪影響を及ぼさない。TPV組成に対してU.V.安定剤の添加は、ハロブチル・エラストマー材料に使用された硬化剤の架橋性能を顕著に減少させることができる。硬化システムがマレイミド硬化システムである時、そのような減少は、同程度までは生じない。適切なU.V.安定剤は、「ヒンダードアミン」と呼ばれる1種の化合物に属するヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含む。これらのヒンダードアミンは、ポリマーの安定化に有効であると分ってきた。たとえば、US特許4,064,102を見よ。その教示は参照によりここに含まれる。好適なUV安定剤は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,6-ヘキサンジアミンのような2,2,4,4-テトラメチルピペリジン誘導体である。たとえば、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,6-ヘキサンジアミン、ビス(2,2,6,6-テトラ-メチル-4-ピペリジニル)デカン-ジオエイト、およびコハク酸ジメチル・プラス4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリデン-エタノールの反応生成物であり、チバ-ガイギー社によってそれぞれ、商標名チマソーブ(Chimassorb)944LD、チヌヴィン(Tinuvin)770、およびチヌヴィン(Tinuvin)622LDで販売される。添加されるU.V.安定剤の有効量は、使用される安定剤の種類および所望の防止程度に依存する。HALSは、組成(A)に基づいて、組成(A)の約0.01〜0.5重量%、好適には約0.02〜0.25重量%、および最適には約0.03〜0.15重量%で用いられる。
【0108】
UV安定剤が使われる時、たとえ、以下で議論される他の硬化システムも有用だとしても、好適には、そのブレンドはマレイミド硬化システムの存在下で動的に加硫化される。本発明において好適に使われるマレイミド化合物は、ビスマレイミド化合物である。マレイミド化合物のうちで、ビスマレイミド化合物は有効性において特に優れていて、m-フェニレン・ビスマレイミド(4,4’-m-フェニレン・ビスマレイミド)は好適である。ビスマレイミドの例は、4,4’-ビニレン・ビスマレイミド、p-フェニレン・ビスマレイミド、4,4’-スルホニルジフェニル・ビスマレイミド、2,2’-ジチオジフェニル・ビスマレイミド、4,4’-エチレン-ビス-オキソフェニル・ビスマレイミド、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニル・ビスマレイミド、o-フェニレン・ビスマレイミド、m-フェニレン・ビスマレイミド(HVA-2)、ヘキサメチレン・ビスマレイミドおよび3,6-プリン・ビスマレイミドである。
【0109】
ゴム・プロセス・オイルは、パラフィン系、ナフテン系または芳香族オイルの種類に入るかどうかに依存する特別のASTM表示を有する。利用されるプロセス・オイルのタイプは、ゴム成分と一緒に通常使われるものである。普通に熟練したゴム化学者は、特別のゴムとともにどのタイプのオイルを使うべきかを認識するであろう。利用されるゴム・プロセス・オイルの量は、全ゴム量(硬化および未硬化の両方)に基づき、TPEにおける全ゴムに対するプロセス・オイルの重量による割合として定義することができる。この割合は約0〜約1.5/1、好適には約0.2/1〜約1.0/1、もっと好適には約0.3/1〜約0.8/1の範囲内でも良い。もっと大量のプロセス・オイルを使うこともできるが、その不足分は組成の物理的強度の減少となる。コールタールやパインタールから生成したオイルのような、石油ベース・オイル以外のオイルもまた利用できる。ゴム・プロセス・オイルに加えて、有機エステルおよび他の合成可塑性剤も使うことが可能である。
【0110】
酸化防止剤は、ゴム組成(A)に添加することができる。利用される特別の酸化防止剤は、イソパラオレフィン・オイルのようなカン入り合成オイルとして利用されるゴムに依存するだろう。また1タイプを超えるものを必要としても良い。それらの適切な選択は、普通の技術を有するゴム・プロセスを行う化学者には周知である。酸化防止剤は一般に化学的防護剤また物理的保護剤に入るだろう。
【0111】
物理的保護剤は、その組成から製造される部分において殆ど機構部分がない所で使用される。これらは一般に、ゴム部分の表面に「皮膜(bloom)」を与え、酸素、オゾンなどからその部分を保護するために保護膜を形成する蝋質の材料である。
【0112】
化学的防護剤は一般に、3つの化学群に入る。すなわち、二級アミン、フェノールおよび亜リン酸塩である。本発明の実施において有用なこれらの種類の酸化防止剤の典型的な例は、従来品で当業者には知られ、ヒンダード・フェノール、アミノ・フェノール、ヒドロキノン、アルキルジアミン、アミン縮合生成物などのような化合物群から選ばれる。酸化防止剤の例は、フェノールをベースとした酸化防止剤、アミン-ベース酸化防止剤、硫黄ベース酸化剤、およびその類似品である。
【0113】
物理的酸化防止剤は、混合石油系ワックスおよびミクロ結晶性ワックスを含む。動的な加硫処理工程前、部分的ではあるが動的な加硫処理工程前、または動的な加硫処理工程後に、フィラー及び/または添加物の全部または1部分を添加できる。
【0114】
本発明の強化熱可塑性エラストマー組成において、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体に基づいて、熱可塑性ゴム(A)は、約40重量%〜約95重量%、好適には約60重量%〜約85重量%、最適には約70重量%〜約80重量%存在しても良い。
【0115】
(官能化ポリオレフィン(B))
本発明に従って、官能化ポリオレフィン(B)は、C2〜C7モノオレフィンモノマーのホモポリマーまたはコポリマー、アクリレートとC2〜C7モノオレフィンモノマーとのコポリマー、メチル-、エチルー、プロピル-、またはブチル-メタクリレートのような(メタ)アクリレート、またはビニル・アセテートから選択される。C2〜C7モノオレフィンモノマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチレン-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセンおよびそれらの混合物から選択することができる。本発明の好適な実施形態において、官能化ポリオレフィンは、それに以下から選択されたモノマーをグラフトする。
【0116】
・ 3〜20炭素原子を含む不飽和カルボン酸
・ 4〜10炭素原子を含む不飽和ジカルボン酸またはそれらの誘導体またはそれらの無水物(それらが存在する場合)
・ 少なくとも6炭素原子を含む不飽和カルボン酸のエステル含有エポキシ基
・ 少なくとも5炭素原子を含む不飽和カルボン酸のエステル含有ヒドロキシ基
・ オキサゾリン
・ ポリアミンとさらに官能化された、前記不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸モノマー、およびそれらの混合物
適切な官能化ポリオレフィンは、US特許5,609,962に開示されていて、その開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0117】
官能化ポリオレフィンにおいて存在する不飽和カルボン酸、ジカルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイ酸、フマル酸およびイタコン酸のような分子当たり3〜20炭素原子を持つものである。
【0118】
グラフトモノマーとして特に好適なものは、分子当たり4〜10炭素原子およびそれらの無水物を持つ不飽和ジカルボン酸から選ばれる。これらのグラフトモノマーは、たとえば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、シクロヘキクス-4-エン-1,2-ジ-カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルこはく酸、無水4-メチルシクロヘクス-4-エン-1,2-ジカルボン酸、および無水ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸を含む。好適な実施形態において、ユニロイヤル化学社によって商標表示ポリボンド(POLYBOND)3150で供給される、マレイン酸グラフト化ポリプロピレン(MA-g-PP)が使われてきた。
【0119】
さらにグラフトモノマーは、少なくとも6、好適には7炭素原子および20炭素原子まで含む不飽和カルボン酸のエステル含有エポキシ基である。
【0120】
アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルは特に好適である。さらにグラフトモノマーは、少なくとも5炭素原子、好適には6炭素原子まで、および2-ヒドロキシエチルメタクリルレート、2-ヒドロキシエチルアクリルレート、ヒドロキシプロピルメタクリルレートおよびヒドロキシプロピルアクリルレートのような12炭素原子までを含む不飽和カルボン酸のエステル含有ヒドロキシ基のような化合物を含むヒドロキシ基である。
【0121】
アミン官能基を含むポリオレフィンはさらに好適である。ピペラジン、ポリオキシアルキレンアミン族(ジェファミン(Jeffamine))のような、上述したようにポリアミン(ジアミン、トリアミン、テトレアミン)及びそれらの誘導体を用いて、カルボン酸、無水物またはエポキシ基含有ポリオレフィンの反応によって、これらが得られる。
【0122】
さらに、ポリオレフィンは、たとえば、グラフトモノマーとして2-(4-ビニルフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリンを使うことにより、オキサゾリン基を用いて官能化することができる。
【0123】
基本ポリマーにグラフトポリマーをグラフトするために、種々の公知の方法を使うことができる。たとえば、ラジカル開始剤有り無しで、溶媒の存在の有り無しにおいて、ポリマーおよびグラフトモノマーを約150℃〜約300℃の高温で加熱することによりこれを達成できる。別のビニルモノマーは、グラフト反応中で存在しても良い。使用可能である適切なラジカル開始剤は、t-ブチル・ヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼン・ヒドロペルオキシド、ジ- t-ブチル過酸化物、t-ブチル・クミル過酸化物、アセチル過酸化物、ベンゾイル過酸化物、イソブチル過酸化物およびメチルエチルケトン過酸化物を含む。
【0124】
このようにして得られた官能化ポリオレフィンにおいて、グラフトモノマーの量、好適にはカルボン酸またはカルボン酸無水物の量は、官能化ポリオレフィン(B)の重量に基づいて、約0.3〜約10重量%であり、もっと好適には約0.3〜約5重量%であり、最適には少なくとも約1重量%である。
【0125】
好適な実施形態において、たとえば、デュポンにより商標表示フサボンド(Fusabond)で供給されるマレイン酸プロピレンは官能ポリオレフィン(B)として使われる。
【0126】
さらに好適な実施形態において、官能化ポリオレフィン(B)におけるグラフトモノマーは、官能化ポリオレフィン(B)の量に基づいて、約0.1〜約10重量%、好適には約0.3〜約5重量%であり、最適には約0.5〜約3.0重量%である。
【0127】
強化熱可塑性エラストマー組成において、官能化ポリオレフィン(B)は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体に基づいて、約0.3〜約15重量%、好適には約1〜約10重量%であり、最適には約3〜約8重量%である。
【0128】
(架橋剤(C))
熱可塑性組成(A)に対して接着性活性化繊維の接着性は、特に、得られた繊維強化熱可塑性エラストマーの湿度感受性および結合強度に関して、架橋剤(C)がその組成に添加された場合、著しく改善することができるということが驚くべきことに見つけられてきた。本発明に従って使われる架橋剤は、強化繊維(D)の接着性活性システムを用いて、官能化ポリオレフィン(B)の架橋を開始する。
【0129】
好適な架橋剤(C)は、メラミン、ウレア、ベンゾグアナミン、グリコールリルまたはそれらとホルムアルデヒドとの混合物の反応によって得られる化合物である。さらに、エポキシおよび/またはイソシアネート樹脂を本発明による架橋剤(C)として使うことができる。もっと好適な実施形態において、メラミン樹脂は架橋剤(C)として使われる。好適なメラミン樹脂は、ヘキサメタオキシメチルメラミン樹脂、高固体メチル化・メラミン樹脂、高固体混合エーテル・メラミン樹脂およびブチル化メラミン樹脂からなる群から選ばれる。「高固体」とは、有機系揮発性測定に基づいて、固体量が一般に70〜98重量%である、ということを意味する。前記架橋剤は、たとえば、ソルチア(SOLUTIA)から商標表示レジメン(Resimene)またはシテック(CYTEC)から商標表示シメル(Cymel)で、商業的に利用できる。好適な他の実施形態において、レジメン(Resimene)745(ヘキサメタオキシメチルメラミン)およびレジメン(Resimene)3521が使われる。
【0130】
本発明の代替の実施形態において、エポキシ樹脂は架橋剤(C)として使われる。エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのようなジオール、トリオールまたはポリオールを持つエピクロロヒドリンの反応により得られるプレポリマーである。エポキシ樹脂は、分子当たり平均で2つ以上のエポキシ基を含む。色々な架橋剤とそれらの反応により、架橋された又は熱硬化されたプラスチックは、優れた強度、強靭性、および化学的耐性を持つようになる。適切なエポキシ樹脂は先行技術から周知であり商業的に利用できる。たとえば、ダウ・ケミカルにより供給されるD.E.R.、D.E.N.、タクチックス(Tactix)、クオルテックス(Quartex)、シェルにより供給されるエプン(Epon)、エピコート(Epikote)、エポノール(Eponol)、エポネックス(Eponex)、アラルダイト(Araldite)、チバ・ガイギーにより供給されるアラキャスト、セラネス(Celanese)により供給されるエピ-Rz(Epi-Rz)、レイチョルドにより供給されるエポッフ(Epotuf)、ユニオン・カーバイドにより供給されるユノックス(Unox)、ネウカドゥア(Neukadur)、ビレジン(Biresin)およびエバタLM(Ebata LM)を使うことができる。
【0131】
さらに代替の実施形態において、イソシアネート樹脂は架橋剤(C)として使うことができる。適切なイソシアネートは、架橋するために、両方の官能化ポリオレフィン(B)とおよび、強化繊維(D)の接着性活性システムと反応するのに適切な、2つの反応性イソシアネート基を持つジイソシアネートである。代表的なジイソシアネートは、1,6-ヘキサメチレン、1.8-オクトメチレン・ジイソシアネート、1.12-ドデカメチレン・ジソシアネート、1,8-オクトメチレン・ジイソシアネート、1,12-ドデカメチレン・ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレン・ジイソシアネート、および類似のイソシアネート類のようなジイソシアネート、3,3’-ジイソシアネートジプロピル・エーテル、3-イソシアネートメチル-3,5,5’-トリメチルシクロヘキシル・イソシアネート、シクロペンタレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、メチル-2,6-ジイソシアネートカプロレート、ビス-(2-イソシアネートエチル)-フマレート、4-メチル-1,3-シクロヘキサン、トランス-ビニレン・ジイソシアネートおよび類似不飽和ポリイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス-(シクロヘキシルイソシアネート)および同類ポリイソシアネート、メタン・ジイソシアネート、ビス-(2-イソシアネートエチル)カーボネートおよび類似カーボネート・ポリイソシアネート、N,N'N"-トリス-(6-イソシアネートヘキサメチレン)ビウレットおよび同類ポリイソシアネート、脂肪族ポリアミン、トルエン・ジイソシアネート、キシレン・ジイソシアネート、ジアニシジン・ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタン・ジイソシアネート、1-エトキシ-2,4-ジイソシアネートベンゼン、1-クロロ-2,4-ジイソシアネートベンゼン、トリス(4-イソシアネートフェニル)メタン、ナフタレン・ジ、4,4-ビフェニル・ジイソシアネート、フェニレン・ジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4'-ビフェニル・ジイソシアネート、p-イソシアネートベンゾイル・イソシアネートおよびテトラクロロ-1,3-フェニレン・ジイソシアネート、およびそれらの混合物から典型的に選択される。発明の好適な実施形態において、先行技術において知られた、カプロラクタムによりブロック化されたイソシアネート、フェノールおよび他のブロッキング剤が使われる。さらに好適な実施形態において、イソホロン・ジイソシアネートおよび他の知られたブロック化ポリ-イソシアネートおよびそれらのブレンドに基づいたポリイソシアネートが使われる。本発明と関連して好適に使われるカプロラクタム・ブロック化・イソシアネートは、EMS-ケミエから商標名グリルボンド(Grilbond)IL-6で商業的に利用可能である。
【0132】
強化熱可塑性エラストマー組成を作成するための方法の好適な実施形態において、架橋剤(C)は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、接着性活性化強化繊維(D)を含む組成に添加された最後の成分である。すなわち、その追加の成分を完全に溶融混合した後に、成分(C)が添加される。好適には、架橋剤は押出し工程において、すなわち、完全な混合は150℃〜250℃、好適には180℃〜230℃の温度である時に、添加される。
【0133】
代替の実施形態において、架橋剤(C)は接着性活性化繊維(D)に適用され、その後で、それらを熱可塑性ゴム(A)および官能化ポリオレフィン(B)に埋め込む。約150℃〜250℃の温度で、すなわち典型的には上述の押出しおよびモールド条件下で、架橋が進行する。
【0134】
強化熱可塑性エラストマー組成は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体に基づいて、約0.3〜約15重量%、好適には約1〜約10重量%であり、最適には約3〜約7重量%の量において、架橋剤(C)を含む。
【0135】
(強化繊維(D))
本発明はどんな特別の種類の繊維にも限定されない。従って、有機、無機、合成または非合成繊維のどんな種類も強化繊維として使うことができる。たとえば、ポリエステル、ポリアラミド、ポリエチレン、ナフタレート(PEN)、ポリエステル-ポリアリレート、ポリビニルクロライド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリイミドまたはセルロース繊維が使われる。代替として、ガラス、スチール、臭素、炭素またはウォラストナイト繊維、粘土、タルカム(滑石)または化学式Mg4Si6O15(OH)2・6H2Oの繊維性水酸化マグネシウム・シリケートのような無機繊維も使うことができる。
【0136】
好適な実施形態において、ポリアラミド繊維またはポリエステル-ポリアリレート繊維が使われる。両方の繊維は、繊維長を減少せずに強化熱可塑性エラストマー組成の再生を容易にする高い機械的安定度を持つ。適切なポリアラミド繊維は、テイジン・ツワロン(Teijin Twron B.V.)から商標表示ツワロン(Twron)、で商業的に利用可能であり、ポリエステル-ポリアリレート繊維は中国から商標表示ヴェクトラン(Vectran)で利用可能である。本発明に従って、強化繊維(D)は好適には、約0.3mm〜20mm、好適には約1mm〜15mmまたは6mm、最適には、約2mm〜4mmの繊維長を持つ。
【0137】
好適な実施形態において、前記繊維(D)の直径は約1μm〜100μm、好適には約5μm〜75μm、最適には約10μm〜30μmの範囲である。
【0138】
好適に使われる強化熱可塑性エラストマー組成において、接着性活性化強化繊維(D)の量は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体に基づいて、約1〜30重量%、好適には約5〜20重量%、最適には約8〜16重量%である。
【0139】
典型的に、上述の殆どの強化繊維は、周囲のエラストマー組織に対して良好な接着性を達成するために、表面処理を必要とする。
【0140】
本発明において、架橋剤(C)と反応するのに適切であるどんな接着性活性システムを使っても良い。
【0141】
たとえば、とりわけ本発明に使うこともできるツワロン(Twron)繊維は、ヨーロッパ特許出願0107887に開示されているように、硬化エポキシ含有仕上げを含む。その開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0142】
本発明に従って、強化繊維は、繊維表面および埋め込み熱可塑性エラストマー組成組織の間の接着性を改善するために、接着性活性化されている。その結果、その繊維は、それらをエラストマー組成組織に埋め込む前に、表面処理される。その表面処理は、繊維表面に接着性活性剤(接着性促進剤)の薄層を形成することにより、接着性を促進する。
【0143】
本発明の好適な実施形態において、ポリエステル、ポリエステル-ポリアリレート-またはポリアミド繊維が、US特許5,609,962のcol.2、10行〜col.8、47行に開示されている方法によって処理されてきた。その開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0144】
その方法に従って、オプションとしてその繊維は、ポリエステルが、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン(エピクロロヒドリン)のようなエポキシ誘導体を用いて、処理されるということを意味するエポキシ活性化を行っても良い。
【0145】
第1工程において、水分散液において、水分散性、ブロック化ジイソシアネートを用いてその繊維を処理することができる。そのブロック化ジイソシアネートは、カプロラクタム・ブロック化メチレン-ビス-(4-フェニル)または4,4’-メチレン-ビス-(フェニルカルバニレート)から選択される。
【0146】
ブロック化ジイソシアネートを含む水分散液にその繊維を浸漬することによりその処理を行っても良い。その浸漬時間は通常天然繊維に依存し、1秒〜1時間まで変化できる。浸漬後、その繊維は水の蒸発を有効にするために適切な温度で乾燥される。100℃〜240℃の温度に1〜60分間その繊維を暴露することにより乾燥を達成することができ、その乾燥はその繊維の性質に依存する。
【0147】
第2工程において、処理され乾燥された繊維はその後、水エマルジョン中で水性エポキシ樹脂エマルジョンを用いて処理される。そのエポキシ樹脂は、グリセロール-ポリ-グリシジルエーテル(たとえば、ドイツ・ラシヒ社によるグリシドエーテル100、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの間の反応から生じ、シェル科学の製品のエピコート(Epikote) DX258のような水乳剤にするために改善された、エポキシ樹脂、またはウィツコ(Witco)により供給されるユーレッポックス(Eurepox) 756/67Wから選択される。その処理、その処理条件およびその後の乾燥工程において、ブロック化ジイソシアネートを分散してその繊維を処理することに関して、それは上記に示されたものを示す。エマルジョン/分散液中に浸漬する代わりに、その繊維の表面上にエマルジョン/分散液を吹きかけ、その結果乾燥することもできる。
【0148】
その繊維の処理に関して第1および第2工程は逆にすることもできるということを注目すべきである。すなわち、ブロック化ジイソシアネートを用いて繊維を処理する前に、エポキシ樹脂を用いて繊維を処理することもできる。ブロック化ジイソシアネートおよびエポキシ樹脂を用いて、一つの工程で、すなわち同時に繊維を処理することもできる。この例では、ただ1回の乾燥工程だけが必要とされる。
【0149】
ブロック化ジイソシアネート単独の分散化を使って、また上述したようにそれを適用して、繊維を処理することもできる。処理される繊維上でのその処理剤(ブロック化ジイソシアネートおよびエポキシ樹脂、またはブロック化ジイソシアネート単独)の最終量は、繊維表面1m2あたり約5〜500グラム、好適には約20〜100g/m2である。
【0150】
乾燥された繊維は、以下に述べるように熱および圧力の影響下で、改良熱可塑性エラストマーをその上に結合することによって、さらに処理される。
【0151】
本発明と関連して、スイスのEMS-ケミエにより、商標表示グリルボンド(Grillbond)で供給される、カプロラクタム-ブロック化ジイソシアネートが好適に使われてきた。
【0152】
一般に、繊維強化ゴム複合物を形成する時、ポリエステル、ポリアミドおよびポリアミド繊維/長繊維のような、長繊維のゴムに対する接着性を改善および/または分与するための技術的に知られたどんな接着性活性システムも、US特許3,956, 566、 3,964, 950、 3,968, 304、 3,991, 027、 4,009, 134、 4,026, 744、 4,134, 869、 4,251, 409 および 4,409, 055に開示されているもののように、利用することができる。その全体の開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0153】
一般に熱可塑性エラストマー・ブレンドは、たとえば、ロール・ミル、バンブリ・ミキサー、ブラベンダー・ミキサー、連続ミキサー、混合押出し成形機、およびその類似製品のような従来の混合装置の使用により、熱および圧力への暴露下でその繊維に適用される。
【0154】
本発明による硬化された強化エラストマー組成から作られた製品は、高い化学的、熱的および圧力安定性、さらに顕著に小さな湿度敏感性に加えて、良好な機械的性質を持つ。
【0155】
本発明による強化エラストマー組成は、自動車用途、たとえば、チューブと同様に冷却液ホースにおけるような、熱と圧力とに対する高い安定性および化学物質への高い耐性を必要とする押出し成形製品の、製造プロセスにおいて有利に適用することができる。典型的なプロセスは、従来の押出しまたは吹出しモールディングのような、押出しおよびモールディング・プロセスである。
【0156】
(成形製品の製造)
本発明による強化エラストマー組成は、充分なグリーン強度、すなわち、押出しダイ・オリフィスを離れた後に押出し製品を固化する前に、形状ゆがみを最小化するのに必要な構造的完全性、を表す。
【0157】
本発明による強化エラストマー組成は、従来の移動心棒膨張ダイを使う押出しによって成形することができる。本発明の繊維強化熱可塑性エラストマー組成は、湿度敏感性の小さな成形製品になる。
【0158】
押出し機と押出し製品との立体的相互作用の不利益および押出し製品の異なる壁厚を克服するために、ロボットハンドリングユニットで配列された押出しダイは、押出し製品を自由に成形するための装置になる。
【0159】
その配列は、コーニルらのUS特許5,336,349に記載されているように、ロボット押出し組立てに匹敵する。その開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0160】
本発明による熱可塑性エラストマー組成は、押出し機1および加熱された圧力ホース2を経由して、加熱された押出しダイ3へ供給される。押出しダイはロボット4によって導かれ、エラストマーは押出しされ、押出しダイを用いて、好適に前成形補助具表面5上に置かれる。ダイは自動ハンドリング装置によって導かれ、エラストマーが押出しされ、同時に成形される。好適な実施形態において、アメリカ化学学会のゴム部会会議(ミシガン州デトロイト、1980年10月7日〜10日)で、ゴエットラー(L. A. Goettler)、ランブライト(A. J. Lambright)、レイブ(R.I. Leib )およびディマウロ(P. J. DiMauro)において開示されたように、押出しダイ3は移動心棒膨張ダイである。この組立てに関して、鋭い曲げは心棒膨張押出しダイ3の内側および外側部分をオフセットすることによって形成される。広い曲げはロボットハンドリングユニット4の移動によって形成される。
【0161】
さらに、ロボットハンドリングユニット4の移動は、曲げ部の内側と外側とに一定壁厚を持つ押出し製品6を得るために、内側ダイ3をオフセットして調整しても良い。
【0162】
たとえば、ロボットハンドリングユニット4の過度の動作は一般に、外側で伸ばされ(大きな半径)、内側で圧縮される(小さな半径)曲げを生じる。結果として、壁厚は、曲げ部の内側で壁厚が厚くなり、対照的に曲げ部の外側で壁厚が薄くなる。溝付きダイ通路は、曲げ部の内側で狭く、外側で広い場合、ダイの内側または外側部分のオフセットは異なる壁厚の形成を是正する。
【0163】
押出し製品6を押出し機1と接触しないようにするために、押出しダイ3または、ハンドリング・ユニット4で配置される心棒ダイ3の出口オリフィスは、押出し機1/ハンドリング・ユニット4から離れた方向へ向けられる。
【0164】
本発明による方法において、外部シリンダーヒーターを含む共通のスクリュー押出し機を使っても良い。それは、熱可塑性エラストマー材料を必要なプロセス温度まで可塑化する。溶融エラストマーは、フレキシブル高圧ホースを経由して、押出し機の送り出しゾーンから押出しダイへ供給され、また適切なヒーターを用いて提供される。そのホースは、熱可塑性エラストマーの粘性に対応する高圧に耐えることができなければならない。心棒押出しダイも、適切なヒーターを使ってエラストマーの必要なプロセス温度まで、熱せられ、ロボットを用いて導かれる。必要性に応じて、圧力ホースは約20cm〜約6.0mの長さ、約5mm〜約50mmの直径を有しても良い。
【0165】
ロボット押出しについてのさらなる詳細に関して、コーニルズ(Cornils)のUS特許5,336,349を参照せよ。その開示は参照することによりここに完全に含まれる。
【0166】
成形押出し製品を作るために、乾燥ブレンドは典型的に、長手バレル型押出し機内で処理される。その押出し機は、長さ/直径(L/D)比が約24:1〜約2.5:1の範囲におけるバレルを持ち、約2.5:1を超える圧縮比で、かつ、そのバレルの内部の融液上で、好適には溝付のバレル部分の入口ゾーンにおいて、実質的に定圧を示すスクリューを取り付けている。1つの実施形態において、前記バレルの直径は約2.54cm〜約15.24cmの範囲にある。押出し製品は、タンデム型または2軸押出し機において製造しても良い。
【0167】
本発明による押出しプロセスに関して、どんな押出しダイでも使うことができる。押出し製品内で繊維方向の制御を容易にする押出しダイが好適である。押出し製品を成形するためにオフセットすることができる内側および外側ダイを含む心棒膨張押出しダイが最適である。本発明により得られたパリソン(押出し製品)は、使用される熱可塑性エラストマーの形態に基づいた、また、最新ブロー成形技術によるパリソン操作にとって充分である短繊維の存在および方向のおかげで、高い溶融強度を持つ。典型的な押出し温度は、約150℃〜約250℃、好適には約180℃〜約230℃である。
【実施例】
【0168】
次の実施例は、本発明を図示して表されるが、それに限定されるわけではない。その実施例およびパーセントにおいて、何も示されていなければ、重量表示である。
【0169】
特許法に従っているが、最善形態および好適な実施形態が説明され、本発明の範囲はそれらに限定されないし、添付の請求項の範囲によっても限定されない。
【0170】
(実施例)
(ホースの破裂圧力に及ぼす繊維強化の効果)
ホースは、サントプレン(Santoprene)121-67W175、オレヴァック(Orevac)(カルボキシル化ポリプロピレン)およびアラミド繊維の各量を含む組成を、200℃の心棒膨張ダイを経由した溶融押出しによって製造された。
【表1】

【0171】
(繊維強化ホースに及ぼす異なる成形方法の効果)
【表2】

【表3】

【0172】
ホースは、サントプレン(Santoprene)101-64およびアラミド短繊維の5重量%を含む組成を、200℃の心棒膨張ダイを経由した溶融押出しによって製造された。硬化程度は、上述の抽出法によって決定され、96%以上であると決定された。
【0173】
(TPEホースのフレキシブル押出し)
使用材料:サントプレン(Santoprene)101-64ベースのサントプレン(Santoprene)SFR001、マレイン酸ポリプロピレンおよび8重量%の接着性活性化ポリエステル短繊維。
【0174】
(押出し装置)
45mm直径で25:1L/Dのシングル・スクリュー押出し機、レイス(Reis)RV30ロボット、21.2mm外径で15.2mm内径および2.5:1膨張比の心棒膨張押出しダイ。ダイのオフセットは2つのDCモーターによって制御された。
【0175】
(試験手順)
ストレート端および3つのカーブ(図2を見よ)を持つホースの押出し、カーブ形状はロボット動作によって主に実現される。また、チューブ壁厚のどんな相違も補正するために、内側ダイのオフセットによって、少し伸びる。最大圧力限界に関する押出し速度:19.1Mpaで 16mm/s、押出し機の投与速度:40%。
【0176】
再現性をチェックするために、全部で10本のホースが押出され、壁厚を測定するために断面にカットされた。その平均値は以下の表に示される。
【0177】
(試験結果)
押出しホースの再現性を実証することができた。以下の表から導き出すことができるように、そのカーブの領域における壁厚のばらつきは許容可能である。
【表4】

【0178】
本発明をまとめると以下のようになる。
【0179】
本発明は、押出し機装置において繊維強化熱可塑性ポリマーを処理することを含む、チューブやホースのような成形製品を製造するための製造方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】図1は本発明に従った装置の透視図である。
【図2】図2は本発明の装置および方法によって押出された鋭く広い曲げを持つホースの図を示す。
【符号の説明】
【0181】
1・・・押出し機、2・・・圧力ホース、3・・・押出しダイ、
4・・・ロボットハンドリングユニット、5・・・前成形補助具、6・・・押出し製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し機バレルおよび押出しダイを含む押出し機装置において、
繊維強化熱可塑性ポリマーを処理することを含む成形製品の製造方法であって、
前記押出し機バレルは、フレキシブル圧力ホースを用いて押出しダイに連結されていて、
ロボットハンドリングユニットに連結した心棒膨張押出しダイを通して送り出すことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
繊維強化熱可塑性ポリマーは、ポリビニルクロライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル・ポリマー、ABSコポリマー、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、および弾性ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーは、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性エラストマーは、ポリウレタン-ポリエステル・エラストマー、セグメント化ポリエーテルおよびポリエステル、ナイロン・ブロック・ポリマー、ポリオレフィン樹脂とモノ-オレフィン・ゴムとの動的に部分的に硬化されたブレンド、加硫化ジエン含有エラストマー、天然または合成ゴム、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーは、次の(A)、(B)、(C)および(D)を含む繊維強化熱可塑性エラストマーであることを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
(A)次の(i)および(ii)を含む熱可塑性ゴム。
(i)50重量%以下の抽出可能ゴム(23℃、48h、シクロヘキサン)を含有する少なくとも部分的に硬化されたゴム、
(ii)熱可塑性ポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマー。
(B)官能化ポリオレフィン
(C)メラミン、ウレア、ベンゾグアナミンおよび/またはグリコルリルを、ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂と反応させることにより得られる樹脂から選ばれる架橋材料。
(D)グリセロール-ポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物、および/またはブロック化ジソシアネートの群から選ばれたエポキシ樹脂によって接着性活性化された強化繊維。
【請求項6】
熱可塑性ゴム(A)の量は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体量に基づいて、約40重量%〜約95重量%であることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
官能化ポリオレフィン(B)の量は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体量に基づいて、約0.3重量%〜約15重量%であることを特徴とする、請求項5または6記載の製造方法。
【請求項8】
架橋剤(C)の量は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体に基づいて、約0.3重量%〜約15重量%であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかの項記載の製造方法。
【請求項9】
接着性活性化強化繊維(D)の量は、熱可塑性ゴム(A)、官能化ポリオレフィン(B)、架橋剤(C)および接着性活性化強化繊維(D)の全体に基づいて、約1重量%〜約30重量%であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれかの項記載の製造方法。
【請求項10】
官能化ポリオレフィン(B)は、次の(1)〜(5)から選択されたモノマーをグラフトした、C2〜C7モノオレフィン・モノマーのホモポリマーまたはコポリマー、アクリレートとC2〜C7モノオレフィンモノマーとのコポリマー、或いは、(メタ)アクリレートまたはビニル・アセテートとそれらのコポリマー、から選択されることを特徴とし、次の(1)〜(5)の不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸モノマーは、ポリアミン、およびその混合物とさらに官能化されることを特徴とする、請求項5〜9のいずれかの項記載の製造方法。
(1)3〜20炭素原子を含む不飽和カルボン酸
(2)4〜10炭素原子を含む不飽和ジカルボン酸またはそれらの誘導体またはそれらの無水物(それらが存在する場合)
(3)少なくとも6炭素原子を含む不飽和カルボン酸のエステル含有エポキシ基
(4)少なくとも5炭素原子を含む不飽和カルボン酸のエステル含有ヒドロキシ基
(5)オキサゾリン
【請求項11】
強化繊維(D)は
ポリエステル、ポリアラミド、ポリエステル-ポリアリレート、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、ポリビニルクロライド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリイミドまたはセルロース繊維、ガラス、スチール、臭素、炭素繊維、粘土の繊維、タルカム、ウォラストナイト繊維、または化学式Mg4Si6O15(OH)2・6H2Oの水酸化マグネシウム・シリケート、およびそれらのブレンドからなる群から選択されること特徴とする、請求項1〜10のいずれかの項記載の製造方法。
【請求項12】
接着性活性ジイソシアネートは、カプロラクタム・ブロック化メチレン-ビス-(4-フェニルイソシアネート)、4,4’-メチレン-ビス-(フェニル-カルバニレート)、およびそれらの混合物から成る群から選ばれること特徴とする、請求項5〜11のいずれかの項記載の製造方法。
【請求項13】
メラミン樹脂(c)は、ヘキサメタオキシメチルメラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、混合エーテル・メラミン樹脂およびブチル化メラミン樹脂から成る群から選ばれること特徴とする、請求項5〜12のいずれかの項記載の製造方法。
【請求項14】
熱可塑性ゴム(A)は、5重量%以下の抽出可能ゴム(23℃、48h、シクロヘキサン)を含有する完全に硬化されたゴム(i)を含むこと特徴とする、請求項5〜13のいずれかの項記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−504290(P2007−504290A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524371(P2006−524371)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051960
【国際公開番号】WO2005/021643
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】