説明

成形型内に重合性組成物を導入する方法

【課題】垂直に配置された成形型に充填する方法で光学レンズを成形する際に生じる大小の光学的欠陥が局在する問題を解決する手段を提供する。
【解決手段】少なくとも成形型の一部分と成形型の一部に装着された封鎖部材16とによって形状規定されるキャビティ40を準備し;該成形型の一部は垂直に配置され上部と底部とを有し、また該底部付近に配置されて封鎖部材に装着された封止部材を有し;封止材料と封鎖部材との底部付近を器具50で穿刺し、穿刺によって封止材料に開口を設け、器具を介してキャビティに重合性組成物を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学レンズの成形時に使用可能な試験材料に関する。本発明は、また、重合性組成物から光学レンズ、具体的には眼科用レンズの成形に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の成形型は、一般には無機ガラスで製造された2つの型部材と、その外周を取り囲み、そこに装着されたガスケットまたは接着テープなどの環状封鎖部材とによって形状規定される成形キャビティを含む。上記のような2部材の成形型を充填する従来の方法は、封鎖部材に注入目的で設けた注入口から成形材料を成形キャビティ内に流入させる方法による。少なくとも一部が自動化された方法において、充填されるべき成形キャビティは、ノズルを介して所定量の成形材料を適切に送り込むための充填装置とともに垂直に配置されている。
【0003】
このような垂直に配置された成形型を充填する一つの方法は、重力のみで成形キャビィティに成形材料を成形型外周の上部に設けたノズルを介して充填することである。例えば特許文献1参照。例えば成形型の充填と重合開始との間の待ち時間が比較的長い場合(例えば2時間程度)には、特別な手段を加えなければ、得られる光学レンズは、しばしば大小の光学的欠陥が局在し、相対的に不合格率が高くなることが実施例に示されている。
【0004】
上記課題を克服するために、特許文献2および特許文献3は、封鎖部材の下方部に設けた注入口を介して、かつ極端に加圧することなく成形材料の流動を生じさせうるポンプ機構を用い、垂直に配置された2部材の成形型の成形キャビィティを充填することを提案している。この方法における成形キャビティの通常の充填は、通常、加圧された成形材料用タンクに連結され、充填用ノズルのような注入口に取り付けられたパイプを用いて実施される。このような方法により、充填後、直ちに重合を開始することができる。しかし、特許文献4に開示される配合物のように、成形材料が室温で10分足らずで反応する場合には、パイプは急速に詰まる。
【0005】
この問題に対する解決の一つは、ガブリエル・ケイタ(Gabriel Keita)およびヤシーン・ユセフ・トゥルシャニ(Yassin Yusef Turshani)を発明者とする特許文献5に開示されるような封鎖部材に設けられた逆止弁の使用を含む。特許文献5に開示されるダッグビル弁などの逆止弁の使用は、前述した詰まりの問題に対応するものであるが、そのような逆止弁の使用はコスト高となるであろう。
【0006】
垂直に配置された成形型を充填するもう一つの方法が特許文献6に開示されている。特許文献6は、2つの型部材1と接着テープ2からある環状封鎖部材とによって形状規定される成形キャビティAを開示している。垂直に配置された成形型の上部の接着テープに、ゴム状弾性を有する弾性体3が装着されている。また、特許文献6は、弾性体3の代替として、ゴム状弾性を有する塗膜層4も開示する。特許文献6は、弾性体3または塗膜層4と粘着テープ2とに開けられた別の開口を介してキャビティA内に挿入された排気管を使用しながら、弾性体3または塗膜層4と粘着テープ2とを貫通して挿入された注射針を介してキャビティAに成形材料を導入することを開示している。特許文献6は、キャビティAに成形材料を充填した後、ノズルと排気管とを引き抜くことを開示している。特許文献6は、ノズル(例えば注射針)と排気管とを引き抜いた後、該ノズルと排気管との導入により接着テープ2に形成された2つの穴は、弾性体3または塗膜層4のゴム状弾性により塞がれると述べている。次に、約100℃に加熱した加熱炉の中で約10〜15時間、成形材料を硬化させる。特許文献6で開示された充填方法は、注射針または排気管の周囲の成形キャビティAから成形材料が漏れる問題に直面しておらず、そのため、この問題に対応していない。これは、これら2つの装置が、垂直に配置された成形型の上部からキャビティに挿入されるためである。さらに、特許文献6に開示される方法には、特殊な手段を講じないかぎり、例えば、キャビティAを充填する際に成形材料中に形成されるミクロ泡などによる局部的な光学欠陥の問題が存在するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,110,514号明細書
【特許文献2】米国特許第5,547,618号明細書
【特許文献3】米国特許第5,662,839号明細書
【特許文献4】米国特許第5,973,098号明細書
【特許文献5】米国特許出願第09/814,318号明細書
【特許文献6】特願平8−308223号(特開平10−146846号公報)
【発明の概要】
【0008】
光学レンズ、特に眼科用レンズを早くかつ高いコスト効率で成形するために使用しうる方法および組成物を提供する。そのような方法の1つで、成形型の少なくとも一部と、該成形型の一部に装着した封鎖部材とによって形状規定されたキャビティが提供される。成形型は垂直に配置され、上部と底部とを有する。封止材料は底部付近に配置され、封鎖部材に装着される。また、この方法は、封止材料および封鎖部材を、底部付近の器具で穿刺することを含む。穿刺によって、封止材料に開口が形成される。この方法は、さらに、上記装置を介して重合性組成物をキャビティ内に導入することを含む。このおよび他の開示された方法に関連する適切な封止材料を使用すれば、該封止材料は重合性組成物の導入に使用される器具の外形によく追従しやすいため、逆止弁およびそれに類似した他の弁に要する費用を回避することができる。さらに、穿刺器具が一旦引き抜かれると、前記封止材料は穿刺により生じた開口の大きさを最小化し(または、消失すらさせ)、その結果、重合性組成物中のミクロ泡の形成を最小化する(または、消失することさえある)。
【0009】
また、本発明は、各種の材料が、例えば上記の方法において、封止材料としての使用に適しているか判断するために、各種材料の自己密封性を評価する方法を提供する。そのような方法の1つにおいて、その上に封止材料片が配置される開口を少なくとも1つ有するキャビティが提供される。キャビティは液体を含む(しかし、必ずしも充満されなくてもよい)。この方法は、封止材料片を器具によって穿刺し、それにより封止材料に開口を一定期間設けること、キャビティを真空吸引すること、および最初の泡が封止材料の開口から液体に入り込むガスの周りに生じるのとほぼ同時にキャビティ圧を記録することを含む。記録されたキャビティ圧が低いほど、例えば上記の方法において、試験された材料が封止材料としての使用に、より良好なまたは適したものといえる。
【0010】
後述の図面は、本発明の方法および組成物の全てではないが特定の態様を示している。図面は例を示しており、これに限定されるものではなく、同一の符号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】成形型およびポンプ機構の断面図である。
【図2】成形型の正面図である。
【図3】回転した成形型の正面図であり、重合性組成物中に生じた泡の移動パターンを示す。
【図4】回転していない成形型の正面図であり、重合性組成物中に生じた泡の移動パターンを示す。
【図5】5A、5Bは、それぞれ、試験片の封止材料としての使用適性を判定するために使用する試験用システムの正面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
“comprise(含む)”(“comprises”および“comprising”などのcompriseのいずれの形態も)、“have(有する)”(“has”および“having”などhaveのいずれの形態も)、“contain(含む)”(“contains”および“containing”などcontainのいずれの形態も)、および“include(含む)”(“includes”および“including”などincludeのいずれの形態も)は、非制限的な連結動詞である。したがって、1以上の工程または要素を“含む”または“有する”(“comprises”、“has”、“contains”または“includes”)方法または方法内の工程とは、その工程または要素の1以上を保有するが、1以上のその工程または要素のみを保有に限定されるものではない。
【0013】
したがって、例えば、少なくとも成形型の一部および該成形型の一部に装着された封鎖部材によって形状限定されるキャビティで、該成形型の一部は垂直に配置され、上部と底部とを有し、封止材料が底部付近に配置され封鎖部材に装着されているキャビティを準備し;封止材料と封鎖部材とを底部付近の器具で穿刺し、穿刺によって封止材料に開口を形成し;器具を介して重合性組成物をキャビティに導入することを“含む(comprising)”方法は、列挙された工程を有するが、それらの工程のみを有することに限定されない。つまり、本発明の方法は少なくとも列挙された工程を有するが、明記されていない他の工程を除外するものではない。例えば、この方法は器具の後退および/または成形型の回転をも対象とする。
【0014】
本発明の方法は、多様な変更および他の形態に適応できるが、例として具体的な実施例を示している。しかし、当然のことながら、本発明の方法は、開示された特定の形態に限定することを意図していない。むしろ、本発明の方法は特許請求の範囲に含まれるすべての変更、均等物および代替を包括するものである。
【0015】
さらに、開示された方法の各種態様は、多様な組み合わせにおいて、および/または独立して実施することができる。よって、本発明の方法および組成物は開示された組み合わせのみに限定されず、他の組み合わせであってもよい。当業者は、開示された方法および組成物に他の多数の変更を追加することができ、そのような類似した置換および変更は特許請求の範囲内であることを理解するであろう。
【0016】
図1は、成形型10の断面を示す。成形型10は、前面側型部材12および後面側型部材14からなる2つの型部材を含む。2つの型部材は、たとえばガラスなど、適切であればいかなる材料製であってもよい。より具体的には、これらの型部材用として無機ガラスを使用してもよい。他の適切な型部材の材料は金属およびプラスチックである。前面側および後面側型部材12および14の内側に面する表面は、成形される光学レンズの所望表面に反して逆像(negative image)である。図1に示されるように2つの型部材は、マイナスの眼科用レンズを成形することを意図している。
【0017】
前面側および後面側型部材12および14は成形型の一部とみなすことができる。これは、当業者が理解するように、成形型10を使用する際に、図1に示されるものと一緒に使用し得る部品(図示せず)は他にもあるためである。それらの追加部品は、例えば、使用中に、前面側および後面側型部材12および14を収納するフレームなどを含む。
成形型10は、一般的に30で示される上部と一般的に32で示される底部とを有する。
【0018】
前面側型部材12はエッジ22を有し、後面側型部材14はエッジ24を有する。図1に示されるように、封鎖部材16は成形型10の一部(例えば、前面側および後面側型部材12および14)に装着される。適切な封鎖部材はスリーブ(例えば、ゴムのガスケット)とみなすことができ、成形型10の前面側および後面側型部材のエッジの周囲に配置して該エッジに固定することができる。例えば、図1は、前面側および後面側型部材12および14のエッジ22および24の周囲に配置され該エッジに装着された封鎖部材16を示す。封鎖部材16は型部材のエッジ周囲を覆い包む細片でもよい。これを実施するための装置を使用することができる。例えば、型部材12および14を固定位置に保持し、型部材12および14が固定位置に保持されている間に封鎖部材16でを覆い、封鎖部材16を効果的にエッジ22および24に装着するように装置を構成することができる。
【0019】
封鎖部材16は、好適材料であればなんでもよく、例えば、接着性合成材料または熱収縮合成材料などが挙げられる。好適な封鎖部材の一例は、株式会社スリオンテック(214−0014神奈川県川崎市多摩区登戸3819)が販売するNiponzeon Sliontec 6263である。封鎖部材16に好適な材料の他の例は、(スカパ・テープ・フランス(Scapa Tapes France)社製;9-11 Rue Edouard Branly 26000 Valence)Barnier tape製品番号8055である。3Mは封鎖部材16にも好適なテープを製造している−3M複合ボンディング・テープ8905および3Mポリエステル・フィルム・テープ8412(ミネソタ州セントポールの3M社の産業用テープおよび特殊部門から入手可能)。
【0020】
また、成形型10は、底部32の付近に配置され封鎖部材16に装着された封止材料18を含む。“底部32付近”とは、底部32または底部32の近くを意味する。本願で使用されている“付近”という言葉はすべて同一の意味、つまり、その位置またはその近くという意味である。材料が、図1に示される封止材料18としての使用に適しているかを試験するための適切な方法の記載が、以下の実施例に含まれる。実験の結果として、いくつかの適切な封止材料も以下に提供される。
【0021】
前面側および後面側型部材12および14ならびに封鎖部材16は、一緒になって成形型キャビティとなりうるキャビティ40を形状づける。キャビティ40は上半部と下半部とを含み、これら両半分は成形型10の水平軸HHに対して対照的に配置することができる。図1に示すように、成形型10は、中心水平軸HHに対して直角に配置されるであろう垂直な軸VV方向にキャビティ40が延びている状態で、垂直または少なくとも実質的に垂直にあるいはエッジを下にして保持されるであろう。
【0022】
光学レンズを成形する方法として特徴付けられる本発明の特定の方法と一貫して、成形型10が提供され、(図1に示されるように)好ましくは垂直に配置された後に、封止材料18および封鎖部材16を穿刺するために器具50を使用することができ、それによって封止材料18、より具体的には封止材料18と封鎖部材16に開口(例えば、穴)を形成する。一つの実施形態では、器具50は、成形型10の最下点において封止材料18と封鎖部材16とを穿刺し得る。図1に示すように、器具50は皮下注射針などの針でもよい。しかし、先端が鋭い中空の構造(チューブなど)であればいかなるものでも器具50に使用し得る。先端の角度は好ましくは10〜80度の間であるべきである。
【0023】
次に、重合性組成物を、器具50を介してキャビティ40に導入することができる。適切な重合性組成物は、室温組成物、具体的には速硬性組成物などの重合性合成組成物が挙げられる。速硬化組成物の例は、室温で10分以下、7分以下、または4分以下で硬化する組成物である。室温で10分以下で硬化する組成物の例は、米国特許第5,973,098号に開示されており、参照することにより本明細書に記載されているとする。本発明の特定の方法での使用に特に好適な重合性組成物としては、その縮小傾向の小さいもの(例えば、好ましくは15容量%未満の量、より好ましくは0〜8容量%の範囲)が挙げられ、なぜなら、最小限の縮小は、成形型の充填または組成物の硬化の間の泡形成の可能性を抑えるからである。使用できる他の好適な重合性組成物は、米国特許第5,741,831号および第5,702,825号に記載されたアクリル紫外線重合性組成物であり、これらはいずれも参照することにより本明細書に記載されているとする。
【0024】
器具50を介しての重合性組成物のキャビティ40への導入は、ポンプ機構を使用して実行してもよい。好適なポンプ機構の1つの実施形態を図1に示す。ポンプ機構62は、重合性成形材料58を含有する貯蔵容器60の上流側の圧力源54を含む。貯蔵容器60は、導管52によって器具50に連結され、充填用ノズルのように適用され得る。圧力源54は、例えば、圧縮空気容器でもよく、弁56で制御された導管64によって貯蔵容器60に連結し得る。弁56は、所望の流量の重合可能な成形材料58が、成形型10の底部32からキャビティ40内に進行するように、開放して制御することができる。キャビティ40に重合性成形材料58が連続的に供給されるように弁56を調整することができる。例えば、弁56は、重合性成形材料58がキャビティ40に一様に流入するように調整し得る。一様な流れは、0.4〜1.3ミリリットル/分の体積流速によって達成される。
【0025】
図2は、成形型10の正面図である。図2に示されるように、一片のベントテープ70を成形型10の上部30付近に配置し得る。このベントテープ片は封鎖部材16に装着され、封鎖部材16の開口を塞ぐ。ベントテープ片は、空気を通過させるが、キャビティ40を充填する重合性組成物を通過させないように設計される。ベントテープ70に使用される好適な材料の一例は、3Mベンティング・テープ(Venting Tape)394(3M社の産業用テープおよび特殊部門から入手可能)である。本発明の方法で使用される適切なベントテープの検討は、米国特許出願第10/212,629号(2002年8月5日出願,発明者ジェームス・エイ・リード(James A. Reed)およびボリスラウスキ(Joseph Boryslawski))に見られる。この出願は、参照により本明細書に記載されているとする。
【0026】
キャビティ40が重合性組成物で完全に充填されたら(つまり、オペレータが満足するまで充填された)、器具50をキャビティ40から後退させる。一実施形態では、その後に成形型10を回転させる。この回転は、器具50の後退後、可能な限り早く行われる。回転は、成形型10をその中心水平軸HHの周りに回転させることによって実施される。回転は、時計回りまたは反時計回りの方向に実施される。回転の角度は、0°〜180°の範囲であってもよいが、好ましくは90°または少なくとも約90°である。“約(approximately)”および“実質的に(substantially)”は、任意の値に少なくとも近似している(つまり、好ましくはその値の10%以内、さらに好ましくは1%以内、もっとも好ましくは0.1%以内である)と定義される。よって、“約90度”は、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98および99度を含む81〜99度のすべての角度を含み、81〜99度のすべての角度のすべての派生数も含む。“実質的に垂直”は垂直を含む。
【0027】
回転の目的は、器具50を後退させた後に残る封止材料18および封鎖部材16の開口を介して、または、ベントテープ片70および封鎖部材16の開口(これらの開口は、充填処理の間に重合性組成物によって排出されるガスを排気するために設計されている)を介して、重合性組成物中に進入後、該重合性組成物中に生成する全ミクロ泡が、レンズの中央部に移動する可能性を低減または排除することである。例えば、図3に示されるように、このような方法で成形型10を回転させることにより、該回転後に重合性組成物中に生成する、ミクロ泡の可能性がある泡110はどれも、矢印で示されるように重合性組成物の最も外側のエッジ(つまり、封鎖部材16付近)に沿って成形型10の新たな上部まで移動する。このように、速硬性重合性組成物中に生じる泡は、得られるレンズのエッジに留まり、一対の眼鏡レンズにおける最終的なレンズとして使用される部分であるレンズの中央部の実用性を損なわない。
【0028】
反対に、図4に示されるように、成形型10の重合性組成物中の、封止材料18および封鎖部材16に残る開口付近に生じる泡110は、レンズが硬化または重合化されているときに該レンズの中央部またはその付近に移動し、硬化されるとその位置に留まり、硬化レンズの有用性を奪う可能性がある。この問題は、重合性組成物が、室温で約10分以下というように速やかに硬化する場合に顕著である。
【0029】
重合が終了した後に、成形型10を解体してもよい。米国特許出願第09/814,318号に開示される弁の代わりに封止材料が使用されるので、完成したレンズから弁を取り除くために特殊な機械加工は必要ない。この結果、時間およびコストを節約することができる。
【0030】
他の本発明の方法は、材料片の自己密封性を評価または試験するための方法である。この方法は、その上に封止材料などの材料片が配置されている開口を有するキャビティを用意することを含む。キャビティは、例えば、ガラス管内の空間の形状であり、開口は管の底部付近に位置してもよい。キャビティは、水などの液体で部分的に充填される。材料片は器具で穿刺することができる。材料片を穿刺する力は、器具上に配置されたロードセルを介して記録される。器具は、ロボットアームによって駆動することができる。記録は、入力カードを有するコンピュータで実行することができる。試験される材料片を穿刺する好適な力は、30ニュートン(N)以下である。真空吸引は、例えばキャビティの上部付近で、例えばキャビティに連通する導管を介してキャビティに施すことができる。真空吸引は、上記の例で示した針(例えば皮下注射針など)を含む器具がキャビティから後退した後に施される。真空吸引はベンチュリを用いて施され、真空吸引バランス弁を用いて調整される。前記器具によって材料片に形成された開口は、封止材料としての使用に好適な材料では該器具が後退した後に縮小されるであろう。試験中、材料片に器具が開けた開口付近に最初のミクロ泡が形成されるとき、またはほぼそのときの、真空度(例えば、インチ水銀で)を記録すべきである。次に、真空度は、圧力を記録する1つの方法である圧力に変換される。または、真空度から変換せずに圧力を直接記録する。最良の結果が得られるのは、キャビティ内の液体に進入するガス(空気など)の周辺に最初の泡が生成するときの圧力が低い場合である。
【0031】
1つの実施形態において、適切な封止材料片は、以下の特徴を有する。封鎖部材との良好な密着;30N未満の力の器具で開孔される性質;開孔後、漏洩または流出が最低限に留められるか回避されるために、材料の封止が直ちに得られる弾性;真空吸引(すなわち低圧)に耐え、器具に形成された開口を最小限のガスのみ通すか、またはまったく通さない性質。
【0032】
以下の実施例は、本発明の試験方法の具体的な実施形態を示すために含まれる。実施例に開示される技術は、本発明の試験方法の実施が機能するように発明者によって発見された代表的な技術に従うものであり、すなわち本発明の実施のための具体的な態様を構成していると考えられることは、当業者に認識されるであろう。しかしながら、当業者は、この開示を考慮して、開示された具体的な実施形態に対して多様な変更を行っても、本発明の試験方法の範囲から外れずに同様の結果を得ることができることを認識すべきであろう。
【実施例1】
【0033】
発明者は、封止材料として使用する材料をスクリーンできるように、図5Aおよび図5Bに示される試験装置を創出した。図5Aで示されるように、試験用システム100は、長さ6インチ、外径0.625インチ、内径0.500インチのガラスのサイト管84を含む。ガラス管は、実験者が管内の(つまり、キャビティ内の)水位を視認することを可能とし、自己密封に効果的ではない材料は分かるであろう(例えば、水が漏洩すれば水位が下がるため)。さらに、ガラス管は、試験される材料が真空吸引の適用に対して完全に封止されない場合のどのような泡の生成も実験者は視認することができた。ガラス管の底部には、試験すべき材料片99に覆われた開口があった。
【0034】
試験すべき材料片を、16ゲージx1インチのベクトン・ディッキンソン(Becton-Dickinson)社製注入針である針96によって開孔した。針96を、インテリジェント・アクチュエータ(Intelligent Actuator)社(2690 W. 237thSt., Torrance, CA 90505)製のRobot Cylinder、モデルRCP-RSA1-H-100-Sであるシリンダー80を用いて前進および後退させた。開孔の間、負荷を記録するために、GS sensor 2-pound、モデルXFTC101-M5M-2(24 Rue Des Dames B17 78340 Les Clayes Sous Bois FranceのGSセンサー(GS Sensors)社から入手可能)であるロードセル82を針96に装着した。
【0035】
図5Aに示されるように、真空吸引源が連結された真空吸引口接続具86は管84と連通していた。管84に施された真空の度合を測定する真空ゲージ88は、真空吸引口接続具86と連通していた。真空吸引バランス弁90は、管86に施された真空を調整するために真空吸引源と連通していた。
【0036】
配電盤ボックス94は、Intelligent Actuator社製コントローラモデルRCP-Cを含む電源コントローラ95のための24ボルトDC電源を備えていた。オペレータ制御ボックス92を使用して、実験者は、コントローラ95を作動させ(必要に応じて事前設定によって)、シリンダー80を用いて針82を前進および後退させることができた。これらの構成要素はすべて、フレーム構造98に支えられていた。
【0037】
試験方法を実施するために、異なる材料片を管84の底部に装着し、それにより、その開口を覆った。次に管84に、水をある程度まで満たした。オペレータは、針の先端で材料片を開孔するように針96を前進させた。これは制御ボックス92のボタンを動作することによって行われた。針96が材料片に開孔を生じさせるためにシリンダー80に使用した負荷圧力を、ロードセル82によって感知し、入力カードによってコンピュータに記録した。全ての場合に、開孔負荷圧力の値は30N未満だった。侵入速度および侵入深さは、それぞれ毎秒20ミリメートルおよび10ミリメートルに固定した。次に制御ボックス92の別のボタンにより針を後退させた。
【0038】
オペレータは、どの水分損失も10分間監視した。大気圧で漏洩したテープはいずれも基準に達していないと位置付けられた。次に、アメリカSMC株式社(SMC Corporation of America)(Indianapolis,IN)製のベンチュリZHシリーズを使用して真空吸引を実行し、真空吸引バランス弁90を調整することによってインチ水銀単位の真空度を徐々に増加させた。真空吸引は、真空ゲージ88で読み取った。真空吸引を調整しながら、オペレータが針96の穿刺点に形成されたミクロ泡を確認した。各材料片について、最初のミクロ泡を発見した時に試験を止めた。この時点、またはほぼこの時点で、真空度も記録した。
【0039】
この試験の結果を表1に表す。試験中に記録された真空度を、圧力値に変換した。封止材料として使用するためにスクリーンされた異なる材料は、社名とモデルとに従って記載した。欄名“泡が出現しない最低圧力(mmHg)”は、管84内の水中にミクロ泡が生成する前に記録した管84内の最低圧力を意味する(なお、標準大気圧は〜760mmHg)。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【実施例2】
【0042】
重合性組成物は、2つのプリポリマーから調製した。次に、重合性組成物からレンズを作成する際に、封止材料として使用するために異なる材料を試験した。
Gabriel Keita、Joey O. Obordo、Pamela Anne McClimans、およびYusef Turshaniによって出願された米国特許出願第10/012,727号(2001年11月5日出願)に詳細に記載され、参照することにより本明細書に記載されているとされる以下の方法に従って2つのプリポリマーを調製した:
【0043】
A部−NCO
コンデンサー、サーマル・プローブ、および撹拌器を装備した反応器に、所定量のキシリレンジイソシアナート(XDI)を装入した。モノマーXDIを115℃に加熱した。次に、3−(2−スルファニルエチルチオ)−2−(2−スルファニルエチルチオ)プロパン1−チオールを導入し、ポリイソシアナート基のチオール基(NCO/SH)に対するモル比が8:1となる量でポリイソシアナートと混合した。
反応は3〜4.5時間後に終了した。イソシアナート末端基を有する最終的なA部のプリポリマーは、25℃での粘度が0.071パスカル秒(Pa.s)だった。
【0044】
B部−SH末端
反応器に、所定量の3−(2−スルファニルエチルチオ)−2−(2−スルファニルエチルチオ)プロパン1−チオールを装入した。このモノマーを90℃に加熱した。次に、キシリレンジイソシアナートを導入し、チオール基のイソシアナート基に対するモル比(SH/NCO)が8:1となる量でポリチオールと混合した。
反応は3時間後に終了した。チオール末端基を有する最終的なB部のプリポリマーを35℃まで冷却した。25℃での粘度は0.543Pa・sだった。
【0045】
触媒溶液を10,000グラム(g)のB部に添加した。触媒溶液は以下のとおり:71.88gの18−クラウ−6エーテル、17.97gのチオシアン酸カリウム(KSCN)、および119.8のチオエタノール。
A部およびB部(および触媒溶液)を、A/Bの容量比=1.18で2つの定量歯車ポンプを介して供給した。これらの2部を、動的ミキサを使用して混ぜ合わせた。
【0046】
重合性組成物を作製した後、図1のキャビティ40にしたがって形成される成形キャビティに、図1に示される方法で充填した。つまり、皮下注射針を使用し、Barnierテープ商品番号8055製の封鎖部材に装着された材料を底部から穿刺した。重合性組成物を、約2グラム/秒の速度で成形キャビティに導入した。室温で10分、次いで120℃で1時間硬化した後レンズを得た。次に、泡またはミクロ泡がないか、高輝度ランプ(アークランプ)で視覚的にレンズを確認した。
【0047】
多数の異なるレンズを作製するためにこのプロセスを利用し、異なる材料を試験した。使用された材料および作製されたレンズ数などを含む結果は下記表2に示されている。下記の圧力値に変換された真空度は、実施例1で上記したと同様のZHシリーズベンチュリを使用して測定した。“ミクロ泡を有するレンズのパーセンテージ”という欄名は、その中にミクロ泡が形成されたレンズのパーセント割合を示す。表2のデータが示すように、“最低の圧力”値と確認されたミクロ泡のパーセンテージとの間に良好な相関があった:つまり、圧力値が低いほど、確認されるミクロ泡のパーセンテージが低かった。上記したとおり、いくつかのレンズを充填した後に90度回転し、その結果、その中にミクロ泡が形成されるレンズのパーセンテージがさらに低下した。
封止材料として使用するために最適の材料は、充填後に90°回転したかどうかとは関係なく、ミクロ泡有のレンズが10%以下で得られるものであることを発明者は見出した。
【0048】
【表3】

【0049】
505mmHg以下のキャビティ圧を耐え得る材料は、本発明の方法での使用に適した材料の一例である。450mmHg以下、400mmHg以下、350mmHg以下、300mmHg以下、250mmHg以下、200mmHg以下、150mmHg以下および100mmHg以下のキャビティ圧力に耐え得る材料についても同様のことが言える。75mmHg以上で505mmHg以下の圧力に耐え得る材料も、また、本発明の方法で使用するのに好適である。100mmHg以上で450mmHg以下、150mmHg以上で400mmHg以下、200mmHg以上で350mmHg以下、250mmHg以上で300mmHg以下の圧力を耐え得る材料についても同様のことが言える。
【0050】
上記の表1および2の試験結果に基づいて、10mmHg以上で505mmHg以下の圧力を耐え得る材料も、また、本発明の方法で使用するのに好適であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に封止材料片が配置される少なくとも1つの開口を有するキャビティを準備し、該キャビティが液体を含み;
前記封止材料片を器具で穿刺して、それにより封止材料の開口を一定期間生じさせ;
前記キャビティに真空吸引を適用し;
前記封止材料の開口を介して前記液体に進入するガスの周囲に最初の泡を生じるとほぼ同時にキャビティ圧を記録する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記キャビティ圧が10mmHg以上で505mmHg以下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャビティ圧が75mmHg以上で505mmHg以下である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャビティ圧が505mmHg以下である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記封止材料片から器具を後退させることをさらに含み;かつ前記封止材料の開口が前記器具の後退後に縮小する大きさをもつ、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記準備が、封止された上部開口、底部開口、キャビティを形状づける内壁、および前記底部開口を覆って配置された封止材料片を有するシリンダーを準備することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記器具がロボットを使用して制御される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法がレンズ成形操作のために前記封止材料片の有用性を試験するための方法であって、該方法は、
前記準備、穿刺、適用、および少なくとも第2の封止材料片のための記録を繰り返し、かつ
前記レンズ成形操作で使用するために試験されたもののうちから封止材料片を選択することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記封止材料片がシリコンを含み、前記第2の封止材料片がネオプレンを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記封止材料の開口からのどの液体損失も監視することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記真空吸引の適用が、ベンチュリを使用して真空吸引を適用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記準備が、封止された上部開口、底部開口、キャビティを形状づける内壁、および前記底部開口を覆って配置された封止材料片を有するシリンダーを準備することを含み、該封止材料片が該底部開口上に配置された後に前記少なくともある程度の液体が該キャビティに導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記封止材料片がシリコンを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
材料片の自己密封性を評価する方法であって、
器具によって材料片を開孔し、該材料片が液体を含むキャビティの開口上に配置されており、開孔が穿刺開口を生じさせ;
前記材料片から前記器具を後退させ;
前記キャビティに真空吸引を適用し;
最初の泡が前記液体内の前記穿刺開口付近に生じるとほぼ同時にキャビティ圧を記録することを含む方法。
【請求項15】
少なくとも成形型の一部と該成形型の一部に装着された封鎖部材とによって形づけられるキャビティを準備し、前記成形型の一部が実質的に垂直に配置され、上部と底部とを有し、封止材料が該底部付近に配置され前記封鎖部材に装着され;
前記封止材料と該封鎖部材とを底部付近で器具によって穿刺し、該穿刺が該封止材料を開口させ;
前記器具を介して前記キャビティに重合性組成物を導入することを含む方法。
【請求項16】
前記封止材料が、請求項1の方法を使用して試験されるときに、10mmHg以上で505mmHg以下のキャビティ圧をもたらす請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記封止材料が、請求項1の方法を使用して試験されるときに、75mmHg以上で505mmHg以下のキャビティ圧をもたらす請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記導入後に前記キャビティから前記器具を後退させることをさらに含み;
前記封止材料の前記開口は大きさがあり、該封止材料は、該器具が後退された後に該開口の大きさを縮小する自己密封性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記成形型の一部を、該成形型の一部を通過する水平軸の周りに回転させる請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記回転が、前記成形型の一部を該成形型の一部を通過する水平軸の周りにを90°回転させることを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導入後に前記キャビティから前記器具を後退させること;および
前記成形型の一部を、該成形型の一部を通過する水平軸の周りに回転させることをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記回転が、前記成形型の一部を該成形型の一部を通過する水平軸の周りに90度回転させることを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
光学レンズを形成するために前記重合性組成物を重合することをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記キャビティが、さらに、上部付近に配置されかつ前記封鎖部材に装着された前記ベントテープ片によって形づけられる請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記ベントテープ片が、該ベントテープ片を介して、空気を通過させるが、前記重合性組成物を通過させないように設計される請求項24記載の方法。
【請求項26】
実質的に垂直に配置された前記成形型の一部がエッジを有する少なくとも2つの型部材を含み、前記封鎖部材が少なくとも該2つの型部材のエッジに装着されている請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物を重合して4分以内に光学レンズを形成することをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を重合して7分以内に光学レンズを形成することをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物を重合して10分〜2時間の間に光学レンズを形成することをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記封止材料がシリコンを含む請求項15に記載の方法。
【請求項31】
上部と底部とを有し、かつ少なくとも(a)凹面を有する第1の型部材、(b)凸面を有する第2の型部材、および(c)該第1および第2の型部材の周りに配置され装着された封鎖部材、によって形づけられる垂直に配置された成形キャビティを準備し、封止材料が前記該封鎖部材に連結し、前記底部付近に配置されており、
前記底部付近の前記封止材料と前記封鎖部材とを穿刺し、該穿刺が該封止材料に開口を形成し、
前記器具を介して重合性組成物を前記キャビティに導入し、
該キャビティから器具を後退させ、
該成形キャビティを回転させ、次いで
該重合性組成物を重合してレンズを形成することを含み、
前記封止材料中の開口は前記器具が後退した後に縮小する大きさである、レンズの製造方法。
【請求項32】
前記封止材料が、請求項1の方法を用いて試験するとき、10mmHg以上で505mmHg以下のキャビティ圧をもたらす請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記封止材料が、請求項1の方法を用いて試験するとき、75mmHg以上で505mmHg以下のキャビティ圧をもたらす請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218812(P2011−218812A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127069(P2011−127069)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2006−537189(P2006−537189)の分割
【原出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】