説明

成形型装置

【課題】 成形品(6、106)が内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器の場合でも、成形型装置から充分円滑に成形品を取り出すことを可能にする、新規且つ改良された成形型装置を提供することである。
【解決手段】 雄型部材(2)を中央主部材(8)とこの中央主部材の周囲に配設された環状部材(10)とから構成し、そして雄型部材の中央主部材の外周面と環状部材の内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間(42)を形成すると共に、雄型部材には環状隙間を通して該成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段(46)を付設する。或いは、雌型部材(104)を中央主部材(160)とこの中央主部材の周囲に配設された環状部材(156)とから構成し、そして雌型部材の中央主部材の前端部外周面と環状部材の前端部内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間(142)を形成すると共に、雌型部材には環状隙間を通して成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段(146)が付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されるものではないが、特に内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器の圧縮成形に適した成形型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、食品容器として、内径に対して深さが比較的大きいカップ状の合成樹脂製薄肉容器が広く実用に供されている。かような薄肉容器は、下記特許文献1に開示されている如く、雄型部材と雌型部材とから構成された成形型部材を使用して圧縮又は射出成形されている。圧縮成形の場合には、雄型部材と雌型部材とを相互に離隔せしめた開状態において、雄型部材又は雌型部材に軟化乃至溶融状態の合成樹脂素材を供給し、次いで、雄型部材と雌型部材とを両者間に成形空洞を規定する閉状態にせしめ、これによって合成樹脂素材を容器に圧縮成形する。圧縮成形された容器が充分に冷却されると、成形型装置を開状態にせしめて成形された容器を成形型装置から取り出す。
【特許文献1】国際公開第2008/032841号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然るに、本発明者等の経験によれば、従来の成形型装置には次のとおりの解決すべき課題が存在する。特に成形品が内径に対して深さが比較的大きいカップ状の合成樹脂製薄肉容器の場合、成形品が雄型部材或いは雌型部材に相当な領域に渡って緊密に密着することに起因して、成形品を成形型装置から円滑に取り出すことが困難であった。また、圧縮成形の場合には、通常は雄型部材と雌型部材とを上下方向に対向して配設しているが、圧縮成形後に成形型装置を開状態にせしめた時に成形品が下方に位置する雄型部材又は雌型部材上に残留すると、雄型部材又は雌型部材から成形品を離脱せしめた後に雄型部材又は雌型部材上に次の圧縮成形のための合成樹脂素材を供給することが必要であり、成形工程効率が制限されてしまう(成形型装置を開状態にせしめた時に成形品が上方に位置する雌型部材又は雄型部材上に残留する場合には、上方に位置する雌型部材又は雄型部材からの成形品の離脱と下方に位置する雄型部材又は雌型部材への合成樹脂素材の供給とを並行して遂行することによって成形効率を高めることができる)。
【0004】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、成形品が内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器の場合でも、成形型装置から充分円滑に成形品を取り出すことを可能にする、新規且つ改良された成形型装置を提供することである。
【0005】
本発明の他の技術的課題は、上記主たる技術的課題の達成に加えて、雄型部材と雌型部材が上下方向に対向して配置されている場合、圧縮成形の後に成形型装置を開状態にせしめると、成形品は問題を発生せしめることなく上方に位置する雌型部材又は雄型部材に残留せしめられ、従って上方に位置する雌型部材又は雄型部材からの成形品の離脱と下方に位置する雄型部材又は雌型部材への合成樹脂素材の供給とを並行して遂行することによって成形効率を高めることができる、新規且つ改良された成形型装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、雄型部材を中央主部材とこの中央主部材の周囲に配設された環状部材とから構成し、そして雄型部材の中央主部材の外周面と環状部材の内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間を形成すると共に、雄型部材には環状隙間を通して該成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段を付設し、雄型部材と雌型部材とが閉状態に設定され成形空洞内に成形品が成形されている状態から、雄型部材と雌型部材とが開状態に移動せしめられる際に、加圧気体供給手段が加圧気体の供給を開始し、これに起因して成形品は雌型部材と共に雄型部材から離隔せしめられるようになすことによって、上記主たる技術的課題が達成される。
【0007】
本発明の他の局面によれば、雌型部材を中央主部材とこの中央主部材の周囲に配設された環状部材とから構成し、そして雌型部材の中央主部材の前端部外周面と環状部材の前端部内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間を形成すると共に、雌型部材には環状隙間を通して成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段が付設し、雄型部材と雌型部材とが閉状態に設定され成形空洞内に成形品が成形されている状態から、雄型部材と雌型部材とが開状態に移動せしめられる際に、該加圧気体供給手段が加圧気体の供給を開始し、これに起因して該成形品は該雄型部材と共に該雌型部材から離隔せしめられるようになすことによって、上記主たる技術的課題が達成される。
【0008】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する成形型装置として、雄型部材と雌型部材とから構成され、該雄型部材と該雌型部材とは相対的に接近及び離隔する方向に移動せしめられて両者間に成形空洞を規定する閉状態と相互に離隔した開状態とに設定され、該雄型部材は中央主部材と該中央主部材の周囲に配設された環状部材とを含み、該中央主部材の先端面、該中央主部材の外周面前端部及び該環状部材の該先端面が該雌型部材と協働して該成形空洞を規定する成形型装置において、
該雄型部材の該中央主部材の該外周面と該環状部材の内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間が形成されており、該雄型部材には該環状隙間を通して該成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段が付設されており、該雄型部材と該雌型部材とが該閉状態に設定され該成形空洞内に成形品が成形されている状態から、該雄型部材と該雌型部材とが該開状態に移動せしめられる際に、該加圧気体供給手段が加圧気体の供給を開始し、これに起因して該成形品は該雌型部材と共に該雄型部材から離隔せしめられる、ことを特徴とする成形型装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該雄型部材の該環状部材は、該中央主部材に対して相対的に、該成形空洞を規定するための規定位置と該規定位置から前進せしめられた排出位置との間を移動自在であり、該中央主部材と該環状部材との間には受圧空間が規定されており、該加圧気体供給手段が該受圧空間を介して該環状間隙に加圧気体を供給し、該加圧気体が供給されることによって該環状部材が該規定位置から該排出位置に前進せしめられる。該雄型部材の該中央主部材の該外周面は該先端面に続く錐台形状の規定部と該規定部に続く柱形状の継続部とを有し、該環状部材が該規定位置に位置せしめられている時には該環状部材は該中央主部材の該継続部の周囲に位置するのが好適である。該雄型部材の該継続部には該雌型部材側を向いた環状肩面が形成され、該受圧空間は該環状肩面と該環状部材との間に規定されているのが好ましい。該雄型部材と該雌型部材とは該雄型部材を下方に該雌型部材を上方にして上下方向に対向して配置されているのが好都合である。
【0010】
本発明の第二の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する成形型装置として、雄型部材と雌型部材とから構成され、該雄型部材と該雌型部材とは相対的に接近及び離隔する方向に移動せしめられて両者間に成形空洞を規定する閉状態と相互に離隔した開状態とに設定され、該雌型部材は中央主部材と該中央主部材の周囲に配設された環状部材とを含み、該中央主部材の中央部に形成されている凹部が該雄型部材と協働して該成形空洞を規定する成形型装置において、
該雌型部材の該中央主部材の前端部外周面と該環状部材の前端部内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間が形成されており、該雌型部材には該環状隙間を通して該成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段が付設されており、該雄型部材と該雌型部材とが該閉状態に設定され該成形空洞内に成形品が成形されている状態から、該雄型部材と該雌型部材とが該開状態に移動せしめられる際に、該加圧気体供給手段が加圧気体の供給を開始し、これに起因して該成形品は該雄型部材と共に該雌型部材から離隔せしめられる、ことを特徴とする成形型装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該雌型部材の該環状部材は、該中央主部材に対して相対的に、該雄型部材と該雌型部材が該閉状態にある時に位置する規定位置と該規定位置から前進せしめられた排出位置との間を移動自在であり、該中央主部材と該環状部材との間には受圧空間が規定されており、該加圧気体供給手段が該受圧空間を介して該環状間隙に加圧気体を供給し、該加圧気体が供給されることによって該環状部材が該規定位置から該排出位置に前進せしめられる。該雌型部材の該外周面には該雄型部材側を向いた環状肩面が形成され、該受圧空間は該環状肩面と該環状部材との間に規定されているのが好適である。該雄型部材と該雌型部材とは該雌型部材を下方に該雄型部材を上方にして上下方向に対向して配置されているのが好都合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形型装置においては、環状間隙を通して成形空洞に供給される加圧気体の作用によって、雄型部材または雌型部材からの成形品の離脱が促進され、かくして成形品が内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器の場合でも、成形型装置から充分円滑に成形品を取り出すことができる。また、加圧気体が供給される環状間隙を備えた雄型部材又は雌型部材を下方に位置せしめて雄型部材と雌型部材とを上下方向に対応して配設すると、成形の後に成形型装置を開状態にせしめると、成形品は問題を発生せしめることなく上方に位置する雌型部材又は雄型部材に残留せしめられ、従って上方に位置する雌型部材又は雄型部材からの成形品の離脱と下方に位置する雄型部材又は雌型部材への合成樹脂素材の供給とを並行して遂行することによって成形効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された成形型装置の好適実施形態について更に詳述する。
【0014】
図1乃至図3は、本発明に従って構成された成形型装置の第一の好適実施形態を図示している。成形型装置は雄型部材2と雌型部材4とから構成されている。図示の実施形態においては、雄型部材2と雌型部材4とは上下方向に対向して配設されており、雄型部材2が下方に雌型部材4が上方に位置せしめられている。雌型部材4は図1に図示する下降位置と図3に図示する上昇位置との間を上下方向に移動せしめられる。雌型部材4が図1に図示する下降位置に位置せしめられると、成形型装置は閉状態になり雄型部材2と雌型部材4とは協働して成形空洞を規定する(図1においては成形空洞内に圧縮成形された成形品6が存在している)。雌型部材4が図3に図示する上昇位置に位置せしめられると、成形型装置は開状態になり雌型部材4は雄型部材2から離隔せしめられる。雌型部材4を昇降動せしめることに代えて或いはこれに加えて雄型部材2を昇降動せしめることによって成形型装置を開閉せしめることもできる。
【0015】
雄型部材2は中央主部材8と環状部材10とから構成されている。図示の中央主部材8は基盤12、本体14及び環状片16を含んでいる。基盤12は円板形状であり、適宜の静止支持構造体(図示していない)に固定される。基盤12上に位置する本体14は、円形先端面(即ち上面)18に続く円錐台形状の規定部20、規定部20に続く円柱形状の継続部22、円柱形状の下部24を有する。規定部20の下端部には若干の膨出部21(図3)が形成されている。下部24の下端部には環状フランジ26が形成されている。先端面18の中央部には凹状窪みが形成されている。継続部22の外径は規定部20の下端の外径と実質上同一である。下部22の外径は継続部20の外径よりも大きく、継続部22と下部24との境界には上方に面した(即ち雌型部材4側を向いた)環状肩面28が形成されている。かような本体14は、例えば環状フランジ26を通して基盤12に螺合される締結ボルトの如き適宜の固定手段(図示していない)によって、基盤12上に固定されている。環状片16は比較的小さい外径を有する上部30と比較的大きい外径を有する下部32とを有し、上部30と下部32との境界には上方に面した環状肩面35が形成されている。上部30の内径は本体14の下部24の外径に対応し下部32の内径は本体14のフランジ26の外径に対応している。環状片16も、例えばその下部32を通して基盤12に螺合される締結ボルトの如き適宜の固定手段(図示していない)によって、基盤12上に固定されている。環状片16の上面は本体14の上記環状肩面28と面一をなし、環状肩面28の延長面を形成する。
【0016】
雄型部材2における環状部材10は第一の環状片34と第二の環状片36とから構成されている。第一の環状片34は本体14の継続部22の外径に対応する内径を有する。第一の環状片34の上面には、内周縁部から上方に突出する環状突条38が形成されている。そして、かかる環状突状38の内周縁部には若干の環状凹部39(図3)が形成されている。かかる環状凹部39も、本体14の規定部20と協働して成形空洞を規定する。第一の環状片34の下面の内周縁部には環状突条40が形成されている。第二の環状片36は略短円筒形状であり、その上部内径は第一の環状片34の下面に形成されている環状突条40の外径に対応し、その下部内径は環状片16の上部30の外径に対応している。第二の環状片36は、その内周面上部を第一の環状片34の環状突起40の外周面に密接せしめその上面を第一の環状片34の下面に密接せしめて、適宜の固定手段(図示していない)によって第一の環状片34に固定されている。相互に固定されている第一の環状片34と第二の環状片36とから構成されている環状部材10は、本体14に対して図1及び図3に示す規定位置と図2に図示する排出位置との間を移動自在に本体14に組み合わされている。
【0017】
雄型部材2においては、本体14の継続部22の外周縁と環状部材10の第一の環状片34の内周縁との間に、気体に流動は許容するが合成樹脂素材の流入は阻止する寸法の環状間隙42が生成されていることが重要である。かような環状間隙の間隙寸法は0.01乃至0.03mm程度でよい。更に、図示の実施形態においては、本体14の環状肩面28及びこの環状肩面28の延長面を形成する環状片16の上面と環状部材10の第一の環状片34の下面との間には受圧空間44(図2)が規定されている(後に更に言及する如く、この受圧空間44には加圧気体が流入せしめられる)。そして、環状部材10の第二の環状片36には、半径方向に貫通して延在し内側端は受圧空間44に接続されている流路46が形成されている。この流路46には加圧空気でよい加圧気体の供給源48が開閉制御弁50を介して接続されている。流路46、供給源48及び開閉制御弁50は加圧気体供給手段を構成する。環状部材10の第二の環状片36の内周面と環状片16の上部30の外周面との間には両者間を気密状態に維持するための環状パッキン52が配設されている。後に更に言及するとおり、流路46に供給される加圧気体は受圧空間44を通して環状間隙42に流動せしめられる。必要に応じて、流路46に整合せしめて第一の環状片34の下面或いは環状片16の上面及び環状肩面28に溝(図示していない)を形成し、流路46から受圧空間44への加圧気体の流入を助長することができる。
【0018】
図1乃至図3を参照して説明を続けると、図示の雌型部材4も中央主部材54と環状部材56とから構成されている。中央主部材54は基板58、本体60及び環状片62を含んでいる。基板58は昇降動せしめられる可動構造体(図示していない)に固定される。本体60は円形先端面(即ち下面)64に続く円錐台形状の下部66、円柱形状の中間部68及び円柱形状の上部70を有する。上部70の上端部には環状フランジ72が形成されている。先端面64には成形空間を規定する成形凹部74が形成されている。中間部68の外径は下部66の上端の外径よりも大きく、下部66と中間部68との境界には下方に面した環状肩面76が形成されている。上部70の外径は中間部68の外径よりも大きく、中間部68と上部70との境界にも下方に面した環状肩面78が形成されている。かような本体60は、例えば環状フランジ72を通して基板58に螺合される締結ボルトの如き適宜の固定手段(図示していない)によって基板58に固定されている。環状片62は比較的小さい内径を有する下部80と比較的大きい内径を有する上部82とを有し、下部80と上部82との境界には上方に面した環状肩面84が形成されている。環状片62の下部80の内径は本体60の上部70の外径に対応し、上部82の内径は本体60の環状フランジ72の外径に対応している。環状片62も、例えば環状片62を貫通して基板58に螺合される締結ボルトの如き適宜の固定手段(図示していない)によって、基板58に固定されている。
【0019】
環状部材56は第一の環状片86と第二の環状片88とから構成されている。第一の環状片86は本体60の下部66の外形に対応した円錐台形状の内周面を有する下部90と本体60の中間部68の外径に対応した内径の円筒形状内周面を有する上部92とを有する。第一の環状片86の下面内周縁部には環状凹部94が形成されている。環状凹部94の底面は本体の60の先端面と面一であり、後に更に言及する如く、環状凹面94の底面の内周縁部は、本体60の先端面64及び成形凹部74と協働して成形空洞を規定する。第二の環状片88は本体60の中間部68の外径に対応した内径を有する短円筒形状である。第二の環状片88の下面には第一の環状片86の外径に対応した内径の環状凹部96が形成されている。第二の環状片88は、その下面に形成された環状凹部96に第一の環状片86の上端部を収容した状態で、適宜の固定手段(図示していない)によって第一の環状片86に固定されている。第一の環状片86と第二の環状片88とから構成された環状部材56は、中央主部材54に対して図1乃至図3に図示する規定位置とかかる規定位置から下方に幾分変位した排出位置との間を移動自在であり、流体圧シリンダ機構の如き適宜の移動手段((図示していない)が中央主部材54と環状部材56との間に配設されている。
【0020】
上述したとおりの成形型装置の作用は次のとおりである。図1においては、雌型部材4が下降せしめられて雄型部材2と雌型部材4とは閉状態にある。そして、成形空洞内には所要形状に圧縮成形された成形品(内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器)6が存在している。成形品6が充分に冷却されて取り出し可能温度になると、図2に図示する如く、雌型部材4の上昇が開始される。本発明に従って構成された成形型装置においては、雌型部材4の上昇と同時或いはこれより若干前に流路46に圧縮空気でよい加圧気体が供給される。かかる加圧気体は流路46から受圧空間44に流入し、受圧空間44を通して環状間隙42に流入する。受圧空間44に流入した加圧気体は雄型部材2の環状部材8を図1に図示する規定位置から図2に図示する排出位置に移動せしめる。従って、環状部材8の第一の環状片34の前端面に形成されている環状凹部39(図3)が成形品6の下端に形成されている環状フランジ98(図3)に作用して、成形品6を上方に強制して雄型部材2の本体14、更に詳しくはその前端面18及び規定部20の外周面)から強制的に離脱せしめる。同時に、環状間隙42に流入した加圧空気は成形空洞内、更に詳しくは雄型部材2の本体14における規定部20及び前端面18と成形品6との間に流入し、雄型部材2の本体14から成形品6を強制的に離脱せしめる。かくして、成形品6が内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器である場合でも、成形品6は雄型部材2から充分円滑に離脱せしめられ、雌型部材4に付随して上昇せしめられる。
【0021】
雌型部材4及びこれに付随して成形品6が充分に上昇せしめられると、流路46への加圧気体の供給が停止され、雄型部材2における環状部材10は図3に図示する規定位置に戻される。雌型部材4が図3に図示する開位置まで上昇せしめられると、雌型部材4における環状部材56を移動手段(図示していない)によって幾分下方に変位して、成形品6の環状フランジ98を下方に強制し、これによって雌型部材4の本体60から成形品6が離脱され、成形品6が取り出される。かような成形品6の取り出しの間には、それ自体は周知の合成樹脂素材供給手段(図示していない)によって、雄型部材2の本体14の先端面18に形成されている凹状窪み内に次の成形品圧縮成形のための軟化乃至溶融状態の合成樹脂素材を供給することができる。しかる後に、雌型部材4が図1に示す閉位置まで下降されて合成樹脂素材が圧縮成形される。
【0022】
図4乃至図6は、本発明に従って構成された成形型装置の第二の好適実施形態を図示している。この第二の実施形態においては、雌型部材104を下方に雄型部材102を上方に位置せしめて雌型部材104と雄型部材102とが上下方向に対向して配設されている。
【0023】
雌型部材104の基板158は適宜の静止支持構造体(図示していない)に固定されている。雌型部材104における中央主部材154の本体160の円錐台形状の上部166の外周面と環状部材156の第一の環状片186の内周面との間には、気体の流動は許容するが合成樹脂素材の流入は阻止する環状間隙142が生成されている。そして、本体154の(雄型部材102側を向いた)環状肩面196と第一環状片186の下面との間には受圧空間144(図5)が規定されている。第一の環状片186には、半径方向に貫通して延在し内側端は受圧空間144に接続されている流路146が形成されている。この流路146には加圧空気でよい加圧気体の供給源148が開閉制御弁150を介して接続されている。流路146、供給源148及び開閉制御弁150は加圧気体供給手段を構成する。第二の環状片188の内周面と本体160の中間部168の外周面との間には両者間を気密状態に維持するための環状パッキン152が配設されている。必要に応じて、流路146に整合せしめて第一の環状片186の下面或いは本体160の環状肩面196の上面に溝(図示していない)を形成し、流路146から受圧空間144への加圧気体の流入を助長することができる。
【0024】
雄型部材102の基板112は昇降動せしめられる可動構造体(図示していない)に固定されている。雄型部材102の環状部材110は中央主部材108に対して図4乃至図6に図示する規定位置とかかる規定位置から下方に幾分変位した排出位置との間を移動自在であり、流体圧シリンダ機構の如き適宜の移動手段((図示していない)が中央主部材108と環状部材110との間に配設されている。図4乃至図6に図示する実施形態においては、雄型部材102には、図1乃至図3に図示する実施形態における環状間隙42、受圧空間44及び流路46が配設されていない。
【0025】
図4乃至図6に図示する第二の実施形態における上述した構成以外の構成は、図1乃至図3に図示する第一の実施形態の構成と実質状同一であり、従って説明の重複を避けるためこれらの構成についての説明は省略する。
【0026】
図4乃至図6に図示する成形型装置の作用は次のとおりである。図4においては、雄型部材102が下降せしめられて雌型部材104と雄型部材102とは閉状態にある。そして、成形空洞内には所要形状に圧縮成形された成形品(内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器)106が存在している。成形品106が充分に冷却されて取り出し可能温度になると、図5に図示する如く、雄型部材102の上昇が開始される。雄型部材102の上昇と同時或いはこれより若干前に流路146に圧縮空気でよい加圧気体が供給される。かかる加圧気体は流路146から受圧空間144に流入し、受圧空間144を通して環状間隙142に流入する。受圧空間144に流入した加圧気体は雌型部材104の環状部材156を図4に図示する規定位置から図5に図示する排出位置に移動せしめる。従って、環状部材156の第一の環状片186の前端面内周縁部が成形品106の上端に形成されている環状フランジ198(図6)に作用して、成形品106を上方に強制して雌型部材104の本体160、更に詳しくはその成形凹部174から強制的に離脱せしめる。同時に、環状間隙142に流入した加圧空気は成形空洞内、更に詳しくは雌型部材104の本体160における成形凹部174と成形品106との間に流入し、雌型部材104の本体160から成形品106を強制的に離脱せしめる。かくして、成形品106が内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器である場合でも、成形品106は雌型部材104から充分円滑に離脱せしめられ、雄型部材102に付随して上昇せしめられる。
【0027】
雄型部材102及びこれに付随して成形品106が充分に上昇せしめられると、流路140への加圧気体の供給が停止され、雌型部材104における環状部材156は図6に図示する規定位置に戻される。雄型部材4が図6に図示する開位置まで上昇せしめられると、雄型部材102における環状部材110を移動手段(図示していない)によって幾分下方に変位して、成形品6の環状フランジ98を下方に強制し、これによって雄型部材102の本体114から成形品106が離脱され、成形品106が取り出される。かような成形品106の取り出しの間には、それ自体は周知の合成樹脂素材供給手段(図示していない)によって、雌型部材104の本体160の成形凹部174内に次の成形品圧縮成形のための軟化乃至溶融状態の合成樹脂素材を供給することができる。しかる後に、雄型部材102が図4に示す閉位置まで下降されて合成樹脂素材が圧縮成形される。
【0028】
以上、添付図面を参照して本発明に従って構成された成形型装置の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。例えば、内径に対して深さが比較的大きい合成樹脂製薄肉容器の圧縮成形に関連せしめて本発明の成形型装置を説明したが、本発明の成形型装置は圧縮成形に限定されることなく射出成形にも適用することができ、そしてまた他の形態の合成樹脂製容器或いは合成樹脂製の容器以外の成形品の成形にも適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に従って構成された成形型装置の第一の好適実施形態を、雄型部材と雌型部材とを閉状態で示す断面図。
【図2】図1に図示する成形型装置を、雌型部材の上昇が開始された直後の状態で示す断面図。
【図3】図1に図示する成形型装置を、雌型部材が開位まで上昇された状態で示す断面図。
【図4】本発明に従って構成された成形型装置の第二の好適実施形態を、雌型部材と雄型部材とを閉状態で示す断面図。
【図5】図4に図示する成形型装置を、雄型部材の上昇が開始された直後の状態で示す断面図。
【図6】図3に図示する成形型装置を、雄型部材が開位まで上昇された状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0030】
2:雄型部材
4:雌型部材
6:成形品
8:雄型部材の中央主部材
10:雄型部材の環状部材
42:環状間隙
44:受圧空間
46:流路
54:雌型部材の中央主部材
56:雌型部材の環状部材
102:雄型部材
104:雌型部材
106:成形品
110:雄型部材の環状部材
142:環状間隙
144:受圧空間
146:流路
154:雌型部材の中央主部材
156:雌型部材の環状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型部材と雌型部材とから構成され、該雄型部材と該雌型部材とは相対的に接近及び離隔する方向に移動せしめられて両者間に成形空洞を規定する閉状態と相互に離隔した開状態とに設定され、該雄型部材は中央主部材と該中央主部材の周囲に配設された環状部材とを含み、該中央主部材の先端面、該中央主部材の外周面前端部及び該環状部材の該先端面が該雌型部材と協働して該成形空洞を規定する成形型装置において、
該雄型部材の該中央主部材の該外周面と該環状部材の内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間が形成されており、該雄型部材には該環状隙間を通して該成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段が付設されており、該雄型部材と該雌型部材とが該閉状態に設定され該成形空洞内に成形品が成形されている状態から、該雄型部材と該雌型部材とが該開状態に移動せしめられる際に、該加圧気体供給手段が加圧気体の供給を開始し、これに起因して該成形品は該雌型部材と共に該雄型部材から離隔せしめられる、ことを特徴とする成形型装置。
【請求項2】
該雄型部材の該環状部材は、該中央主部材に対して相対的に、該成形空洞を規定するための規定位置と該規定位置から前進せしめられた排出位置との間を移動自在であり、該中央主部材と該環状部材との間には受圧空間が規定されており、該加圧気体供給手段が該受圧空間を介して該環状間隙に加圧気体を供給し、該加圧気体が供給されることによって該環状部材が該規定位置から該排出位置に前進せしめられる、請求項1記載の成形型装置。
【請求項3】
該雄型部材の該中央主部材の該外周面は該先端面に続く錐台形状の規定部と該規定部に続く柱形状の継続部とを有し、該環状部材が該規定位置に位置せしめられている時には該環状部材は該中央主部材の該継続部の周囲に位置する、請求項2記載の成形型装置。
【請求項4】
該雄型部材の該継続部には該雌型部材側を向いた環状肩面が形成され、該受圧空間は該環状肩面と該環状部材との間に規定されている、請求項3記載の成形型装置。
【請求項5】
該雄型部材と該雌型部材とは該雄型部材を下方に該雌型部材を上方にして上下方向に対向して配置されている、請求項1から4までのいずれかに記載の成形型装置。
【請求項6】
雄型部材と雌型部材とから構成され、該雄型部材と該雌型部材とは相対的に接近及び離隔する方向に移動せしめられて両者間に成形空洞を規定する閉状態と相互に離隔した開状態とに設定され、該雌型部材は中央主部材と該中央主部材の周囲に配設された環状部材とを含み、該中央主部材の中央部に形成されている凹部が該雄型部材と協働して該成形空洞を規定する成形型装置において、
該雌型部材の該中央主部材の前端部外周面と該環状部材の前端部内周面との間には、気体の流動を許容する環状隙間が形成されており、該雌型部材には該環状隙間を通して該成形空洞に加圧気体を供給する加圧気体供給手段が付設されており、該雄型部材と該雌型部材とが該閉状態に設定され該成形空洞内に成形品が成形されている状態から、該雄型部材と該雌型部材とが該開状態に移動せしめられる際に、該加圧気体供給手段が加圧気体の供給を開始し、これに起因して該成形品は該雄型部材と共に該雌型部材から離隔せしめられる、ことを特徴とする成形型装置。
【請求項7】
該雌型部材の該環状部材は、該中央主部材に対して相対的に、該雄型部材と該雌型部材が該閉状態にある時に位置する規定位置と該規定位置から前進せしめられた排出位置との間を移動自在であり、該中央主部材と該環状部材との間には受圧空間が規定されており、該加圧気体供給手段が該受圧空間を介して該環状間隙に加圧気体を供給し、該加圧気体が供給されることによって該環状部材が該規定位置から該排出位置に前進せしめられる、請求項6記載の成形型装置。
【請求項8】
該雌型部材の該外周面には該雄型部材側を向いた環状肩面が形成され、該受圧空間は該環状肩面と該環状部材との間に規定されている、請求項7記載の成形型装置。
【請求項9】
該雄型部材と該雌型部材とは該雌型部材を下方に該雄型部材を上方にして上下方向に対向して配置されている、請求項6から8までのいずれかに記載の成形型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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