説明

成形機の液圧装置

【課題】液圧回路の異常を少ない負担で検出可能な成形機の液圧装置を提供する。
【解決手段】ダイカストマシン1の液圧装置14は、ポンプ19と、液圧回路16を介してポンプ19から作動液が供給される液圧シリンダ13と、液圧回路16の圧力を検出する圧力センサ26と、成形サイクルにおいて、所定の駆動用供給量(F)の作動液がポンプ19から吐出されることにより、液圧シリンダ13が駆動されるようにポンプ19及び液圧回路16を制御する制御装置17とを有する。制御装置17は、液圧回路16における作動液の定格の外部リーク量Fより多く、駆動用供給量(F)よりも少ない、所定の診断用供給量Ftの作動液がポンプ19から吐出されるようにポンプ19を制御し、そのときの圧力センサ26の検出圧力が所定の基準圧力P未満であるときに、異常が生じたことを報知する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン等の成形機に用いられる液圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプや液圧回路の異常を検出可能な成形機の液圧装置が知られている。特許文献1の成形機の油圧装置は、複数のポンプと、複数のポンプから作動油が供給される油圧回路と、油圧回路を介して複数のポンプからの作動液が供給される油圧モータと、ポンプの吐出圧を検出する圧力センサと、油圧モータの回転を検出する回転計とを有している。
【0003】
そして、この油圧装置は、所定の回転数(回転速度)で複数のポンプを回転させ、そのときの油圧モータの回転数が設定回転数から外れている場合において(異常が生じた場合において)、圧力センサの検出圧力が既定値から外れているか否かにより、異常がポンプと油圧回路とのいずれにおいて生じたかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−94815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、異常検出のために油圧モータ等のアクチュエータを駆動する必要がある。また、異常検出に際して、アクチュエータに連結された部材も駆動されることになる。さらに、アクチュエータを駆動するために大量の作動油を油圧回路に供給する必要があり、多くのエネルギーを消費することになる。このように、油圧回路の異常検出のための動作が大掛かりとなり、手軽に異常検出を行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、液圧回路の異常を少ない負担で検出可能な成形機の液圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形機の液圧装置は、ポンプと、前記ポンプから作動液が供給される液圧回路と、前記液圧回路を介して前記ポンプから作動液が供給される液圧シリンダと、前記液圧回路の圧力を検出する圧力センサと、成形サイクルにおいて、所定の駆動用供給量の作動液が前記ポンプから吐出されることにより、前記液圧シリンダが駆動されるように前記ポンプ及び前記液圧回路を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記液圧回路における作動液の定格の外部リーク量より多く、前記駆動用供給量よりも少ない、所定の診断用供給量の作動液が前記ポンプから吐出されるように前記ポンプを制御し、そのときの前記圧力センサの検出圧力が所定の基準圧力未満であるときに、異常が生じたことを報知する処理を行う。
【0008】
好適には、前記液圧装置は、前記ポンプのドレン量を検出するポンプ用流量センサを更に有し、前記制御装置は、所定の回転数及び所定の容量で駆動されるように前記ポンプを制御し、そのときの前記検出圧力が前記基準圧力未満である場合において、前記ポンプ用流量センサの検出流量が所定の基準ポンプドレン量未満であるときは、前記液圧回路に異常が生じたことを報知する処理を行い、前記ポンプ用流量センサの検出流量が前記基準ポンプドレン量以上であるときは、前記ポンプに異常が生じたことを報知する処理を行う。
【0009】
好適には、前記液圧回路は複数の制御弁を有し、前記複数の制御弁のドレン量を検出する複数の弁用流量センサが設けられており、前記制御装置は、前記診断用供給量の作動液が吐出されるように前記ポンプを制御したときの前記検出圧力が前記基準圧力未満である場合において、前記複数の制御弁のいずれかにおいて、その制御弁に対応する前記弁用流量センサの検出流量が前記複数の制御弁毎に設定された所定の基準弁ドレン量を超えたときは、その制御弁に異常が生じたことを報知する処理を行う。
【0010】
好適には、前記液圧回路は、複数の制御弁を有する弁群と、少なくとも一つの制御弁を有する弁群とを含む複数の弁群を有し、前記複数の弁群のドレン量を検出する複数の弁用流量センサが設けられており、前記制御装置は、前記診断用供給量の作動液が吐出されるように前記ポンプを制御したときの前記検出圧力が前記基準圧力未満である場合において、前記複数の弁群のいずれかにおいて、その弁群に対応する前記複数の弁用流量センサの検出流量が前記複数の弁群毎に設定された所定の基準弁ドレン量を超えたときは、その弁群に異常が生じたことを報知する処理を行う。
【0011】
好適には、前記制御装置は、圧力と成形サイクルのサイクル数とを対応付けたデータベースを保持しており、前記データベースを参照して、前記診断用供給量の作動液が吐出されるように前記ポンプを制御したときの前記検出圧力に対応するサイクル数を特定し、特定したサイクル数と、所定の限界サイクル数との差に基づく情報を報知する処理を行う。
【0012】
好適には、前記液圧装置は、前記作動液の温度を検出する温度センサを更に有し、前記制御装置は、前記温度センサの検出温度の上昇に応じて前記診断用供給量を増加させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形機の液圧装置における液圧回路の異常を少ない負担で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの概略構成を示す図。
【図2】図1のダイカストマシンの液圧装置の構成を示す、ポンプ部に着目したブロック図。
【図3】図1のダイカストマシンの液圧装置の構成を示す、液圧回路に着目したブロック図。
【図4】図2の液圧装置における異常診断方法について説明する図。
【図5】図2の液圧装置における故障予知方法について説明する図。
【図6】図2の液圧装置における異常診断時の液圧回路への作動液の供給量の補正について説明する図。
【図7】図2の液圧装置が実行する異常診断の処理の手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の変形例に係る液圧装置の構成を示す、液圧回路に着目したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、符号は、同一又は類似する構成のものについて、「第1切換弁31A、第2切換弁31B」などのように、大文字のアルファベットの付加符号を付すことがある。また、この場合において、単に「切換弁31」というなど、名称の頭の番号、及び/又は、上記の付加符号を省略することがある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシン1の概略構成を示す図である。
【0017】
ダイカストマシン1は、金型501を開閉するための型締装置3と、金型501に離型剤などを塗布するスプレイ装置4と、金型501に成形材料としての溶湯(溶融金属)を射出するための射出装置5と、成形品としてのダイカスト製品を金型501から押し出す押出装置6とを有している。
【0018】
ダイカストマシン1の成形サイクルにおける動作の概要は、以下のとおりである。
【0019】
まず、型締装置3において、固定金型503を保持する固定ダイプレート7に対して移動金型505を保持する移動ダイプレート8が近接して型閉じ及び型締が行われる。次に、射出装置5において、金型501のキャビティCaに連通する射出スリーブ9に溶湯が供給され、射出スリーブ9内を射出プランジャ10が摺動することにより、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。
【0020】
その後、所定の時間が経過し、キャビティCa内の溶湯が凝固すると、型締装置3において、移動ダイプレート8が固定ダイプレート7から離間する方向へ移動され、型開きが行われる。また、型開きに並行して、若しくは、型開き後、押出装置6の不図示の押し出しピンが移動金型505の分割面から突出し、成形品が移動金型505から押し出される。
【0021】
成形品が押し出されると、スプレイ装置4は、不図示の駆動装置により、複数のノズル11aを有するノズル部11を型開きされた固定金型503と移動金型505との間に挿入し、複数のノズル11aから離型剤を金型501に噴出する。そして、ノズル部11が固定金型503と移動金型505との間から退避され、次の成形サイクルの準備が完了する。
【0022】
このような動作を実現するために、ダイカストマシン1は、液圧式のアクチュエータを有している。例えば、型締装置3は、移動ダイプレート8を駆動する型締シリンダ13Aを有している。射出装置5は、射出プランジャ10を駆動する射出シリンダ13Bを有している。押出装置6は、不図示の押し出しピンを駆動する押出シリンダ13Cを有している。
【0023】
なお、以下では、型締シリンダ13A、射出シリンダ13B及び押出シリンダ13Cについて、「液圧シリンダ13」といい、これらを区別しないことがある。
【0024】
これらの液圧シリンダ13は、特に図示しないが、シリンダチューブと、シリンダチューブを摺動可能なピストンと、ピストンに連結されたロッドとを有している。ピストンは、シリンダチューブ内を2つのシリンダ室に区画しており、その2つのシリンダ室に選択的に作動液(例えば油)が供給されることにより、液圧シリンダ13は駆動される。
【0025】
図2は、ダイカストマシン1の液圧装置14の構成を示すブロック図である。ただし、図2は概念図であり、実際の液圧系よりも簡略化されたり、説明の便宜のために変形されたりした液圧系が図示されている。後述する他のブロック図も同様である。
【0026】
液圧装置14は、作動液を送出するポンプ部15と、ポンプ部15と液圧シリンダ13との間で作動液の流れを制御する液圧回路16とを有している。また、液圧装置14は、ポンプ部15や液圧回路16の動作を制御するとともに、これらにおける異常の有無を判定するための制御装置17を有している。
【0027】
ポンプ部15は、ポンプ19と、ポンプ19を駆動する電動機20と、電動機20の回転を検出するエンコーダ21とを有している。
【0028】
ポンプ19は、例えば、ポンプ19の1サイクルにおける吐出量を変化させることが可能な可変容量形ポンプにより構成されている。ポンプ19は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータリー式のものであってもよいし、アキシャルプランジャポンプやラジアルプランジャポンプ等のプランジャ式のものであってもよい。
【0029】
ポンプ19は、不図示のロータが回転し、又は不図示のピストンが往復運動することにより、タンク23に貯留されている作動液を吸入ポート19aから吸入し、吐出ポート19bから吐出する。なお、特に図示しないが、ポンプ19においては、吸入ポート19aからの作動液が収容され、その作動液を吐出ポート19bへ押し出すための部屋が、ケーシング及びロータ、若しくは、ケーシング及びピストンにより形成されている。
【0030】
また、ポンプ19において、ケーシング及びロータとの隙間、若しくは、ケーシングとピストンとの隙間を介して、上記の作動液を押し出すための部屋から流れ出た作動液は、ドレンポート19cを介してタンク23に戻される。
【0031】
電動機20は、例えば、サーボモータにより構成されている。すなわち、サーボドライバ58は、エンコーダ21の検出値と、適宜に入力された指令値(制御信号)との比較に基づくフィードバック制御により、指令値に応じた回転数で電動機20を駆動する。なお、電動機20は、直流電動機であってもよいし、交流電動機であってもよい。
【0032】
エンコーダ21は、電動機20の回転数に比例した数のパルスを制御装置17に出力する。従って、制御装置17は、パルス数の計数により、電動機20(ポンプ19)の回転数を特定することができる。
【0033】
ポンプ19の吐出ポート19bから吐出された作動液は、液圧回路16に供給される。吐出ポート19bと液圧回路16との間の流路には、作動液の圧力が所定圧に達したときに作動液をタンクに排出することにより、作動液の最大圧力を制限するリリーフ弁24が設けられている。
【0034】
吐出ポート19bと液圧回路16との間の流路には、作動液の温度を検出する温度センサ25と、作動液の圧力を検出する圧力センサ26とが設けられている。また、ポンプ部15においては、ドレンポート19cからの作動液の排出量(ドレン量)を検出するポンプ用流量センサ27が設けられている。
【0035】
温度センサ25は、作動液の温度の変動に応じて信号レベル(例えば電圧)が変動する多値の信号を制御装置17に出力する。同様に、圧力センサ26は、作動液の圧力の変動に応じて信号レベルが変動する多値の信号を制御装置17に出力する。ポンプ用流量センサ27は、ドレン量の変動に応じて信号レベルが変動する多値の信号を制御装置17に出力する。なお、信号は、アナログ式でもデジタル式でもよい。他の信号についても同様である。
【0036】
制御装置17は、各部へ電力を供給する電源回路51と、各部へ制御信号を出力する主制御部52と、主制御部52に異常診断の実行を指示する液圧機器診断回路53とを有している。
【0037】
電源回路51は、例えば、変圧器等を含んで構成され、商用電源から供給される電力を適宜な電圧に変換して各部に供給する。電源回路51には、商用電源から電源回路51への電力の供給を許容又は遮断するために、電源OFFスイッチ55や電源ONスイッチ56が接続されている。
【0038】
主制御部52は、例えば、CPU、ROM、RAM等を含んで構成されている。主制御部52は、予め定められたプログラムやユーザの入力部57に対する操作などに基づいて、サーボドライバ58や表示部59などへ制御信号を出力する。
【0039】
主制御部52は、種々のセンサの検出値に基づいて、所定の比較処理を行う比較部61と、比較部61の比較結果に基づいて異常の有無を判定する異常判別回路62と、比較部61や異常判別回路62に参照されるデータベース63を有している。
【0040】
液圧機器診断回路53には、診断ONスイッチ65及び診断ON回路67が接続されている。
【0041】
診断ONスイッチ65は、ユーザによって任意の時期に操作され、当該操作に応じて液圧機器診断回路53に対してON信号を出力する。液圧機器診断回路53は、診断ONスイッチ65からON信号が入力されると、異常判別回路62に診断を指示する。
【0042】
診断ON回路67は、電源回路51に電力が供給されたときに(ダイカストマシン1が起動されたときに)、診断ONスイッチ65と同様に、液圧機器診断回路53にON信号を出力する。なお、診断ON回路67は、入力部57に対する操作により、起動時に診断の指示を行うか否かの設定がなされることが可能である。
【0043】
図3は、液圧装置14の液圧系及び信号処理系の構成を示す他のブロック図である。ただし、上述の図2がポンプ部15の構成に着目したものであったのに対し、図3は、液圧回路16の構成に着目したものとなっている。
【0044】
液圧回路16は、ポンプ部15からの作動液の流れを制御する複数の制御弁を有している。例えば、液圧回路16は、複数の切換弁31と、減圧弁32と、逆止弁33とを有している。
【0045】
複数の切換弁31は、例えば、互いに並列に接続されている。減圧弁32は、例えば、第1切換弁31Aの一のポートに直列に接続されている。逆止弁33は、例えば、第2切換弁31Bの一のポートに直列に接続されている。
【0046】
第1切換弁31A及び減圧弁32は、例えば、一の液圧シリンダ13に対する作動液の流れを制御する。同様に、第2切換弁31B及び逆止弁33は、他の一の液圧シリンダ13に対する作動液の流れを制御する。このように、液圧回路16は、複数の制御弁を有することにより、複数の液圧シリンダ13に対して個別に作動液の流れを制御可能である。
【0047】
切換弁31は、例えば、4ポート3位置の切換弁により構成されている。4つのポートは、例えば、ポンプ部15、タンク23、液圧シリンダ13の2つのシリンダ室に接続されている。そして、切換弁31は、スプールの位置が3位置間において切り換えられることにより、ポンプ部15(タンク23)と一方(他方)のシリンダ室との接続、ポンプ部15(タンク23)と他方(一方)のシリンダ室との接続、ポンプ部15(タンク23)と2つのシリンダ室との遮断のいずれかを行う。切換弁31は、例えば、電気信号の入力によりソレノイドが駆動され、ソレノイドの駆動によりパイロット圧力が導入され、パイロット圧力の導入によりスプールが駆動される電磁パイロット弁により構成されている。
【0048】
減圧弁32は、第1切換弁31A側の圧力を一定の圧力に保つように構成されている。また、減圧弁32は、パイロット圧力の導入によっても作動することが可能に構成されている。
【0049】
逆止弁33は、第2切換弁31B側からの作動液の流れを許容し、その逆方向の流れを阻止するように構成されている。また、逆止弁33は、パイロット圧力の導入によって、第2切換弁31B側への流れを許容可能に構成されている。
【0050】
液圧装置14は、複数の制御弁(31、32、33等)のドレンポートからの作動液の流量(ドレン量)を検出する複数の弁用流量センサ35を有している。弁用流量センサ35は、ドレン量の変動に応じて信号レベルが変動する多値の信号を制御装置17に出力する。
【0051】
また、液圧装置14は、複数の制御弁(31、32、33等)を制御するために、液圧機器制御回路37を有している。主制御部52は、液圧機器制御回路37に制御信号を出力し、液圧機器制御回路37は、その制御信号に応じた電力を各制御弁等に出力する。
【0052】
表示部59は、例えば、点灯、点滅若しくは消灯により異常の有無を報知する複数のランプを含んで構成されている。例えば、表示部59は、ポンプ部15の異常の有無を報知するためのポンプ用ランプ69(図2)、液圧回路16の異常の有無を報知するための液圧回路用ランプ70(図2及び図3)、複数の制御弁(31、32、33等)の異常の有無を報知するための複数の弁用ランプ71(図3)を有している。また、表示部59は、特に図示しないが、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの画像を表示するディスプレイを含んでいる。
【0053】
図4は、液圧装置14における異常診断方法を説明する図である。
【0054】
具体的には、図4は、液圧回路16への作動液の供給量(ポンプ19の吐出量)の時間変化を示しており、横軸は時間、縦軸は作動液の供給量を示している。なお、図4は、模式図であり、液圧回路16への作動液の供給量の変化を正確に表したものではない。
【0055】
ダイカストマシン1が周期Tの成形サイクルを繰返し行うことに応じて、液圧回路16への作動液の供給量の変化も周期Tで周期的に変動する。供給量の変化は、ポンプ19の回転数の変化又は容量の変化によりもたらされる。
【0056】
各成形サイクルにおいては、液圧シリンダ13を駆動するときなどに供給量が増大し、液圧シリンダ13を駆動しないときなどに供給量が減少する。液圧シリンダ13を駆動しないときなどにおいては、成形サイクル中であっても、ポンプ19(電動機20)が停止され、供給量が0とされてもよい。
【0057】
液圧回路16においては、液圧機器(制御弁など)の構成部品同士の隙間における作動液の漏れなどにより、外部リーク量Fの作動液が液圧回路16の外部へ漏れる。外部リーク量Fは、例えば、複数の制御弁(31、32、33等)のドレン量の総和である。液圧シリンダ13を駆動するためには、ある程度の差で外部リーク量Fよりも多い供給量の作動液が液圧回路16に供給される必要がある。従って、液圧回路16への作動液の供給量の極大値F、Fは、ある程度の差で外部リーク量Fよりも大きく設定されている。
【0058】
なお、以下では、極大値Fは、少なくとも一つの液圧シリンダ13を駆動するときの液圧回路16への作動液の供給量に関する、最小の極大値であるものとして説明する。極大値F、Fは、図4に示すように、所定時間に亘って維持され得る。
【0059】
異常診断時においては、外部リーク量Fよりも多く、且つ、極大値Fよりも少ない診断用供給量Ftで、液圧回路16に作動液が供給される。このとき、液圧回路16(複数の制御弁)は、液圧シリンダ13等のアクチュエータへの作動液の供給を遮断するように制御されている。
【0060】
一方、複数の制御弁(31、32、33等)は、摩耗により隙間が大きくなり、ドレン量は徐々に多くなる。また、突発的に故障が生じた場合においても、作動液の漏れが多くなることがある。
【0061】
従って、液圧回路16が正常であれば、液圧回路16の圧力は、所定の基準圧力まで上昇する。一方、摩耗の進行が所定のレベルを超えたり、突発的な故障が生じたりし、作動液の漏れが多くなると、液圧回路16の圧力は、所定の基準圧力まで達しない。このことに基づいて、液圧回路16の異常の有無が判定される。
【0062】
また、本実施形態においては、診断用供給量Ftの作動液の供給は、診断用供給量Ftに対応して予め設定された回転数及び容量で電動機20及びポンプ19が制御されることにより実現される。換言すれば、液圧回路16への作動液の供給量を検出して、当該供給量をフィードバック制御することは行われていない。
【0063】
従って、ポンプ部15に異常が生じると、診断用供給量Ftの作動液が液圧回路16に供給されず、液圧回路16の圧力は基準圧力まで達しない。すなわち、液圧回路16の圧力の検出により、ポンプ部15の異常も検出される。
【0064】
そして、ポンプ用流量センサ27の検出するポンプ19のドレン量が所定の基準ポンプドレン量を超えている場合には、異常箇所がポンプ部15であることを特定でき、ドレン量が所定の基準ポンプドレン量を超えていない場合には、異常箇所が液圧回路16であることを特定できる。
【0065】
なお、外部リーク量Fは、液圧回路16が製造者及び/又は作業者において期待されている性能を発揮するとき(正常時)の外部リーク量であり、いわば、定格の外部リーク量である。定格の外部リーク量Fとしては、例えば、液圧装置14の仕様書に記載されているものを用いることができる。また、液圧回路16における定格の外部リーク量Fは、液圧回路16を構成する液圧機器(制御弁など)の仕様書に記載されている液圧機器毎の定格の外部リーク量の総和から求められてもよい。また、摩耗が進んでいない液圧装置14(出荷直後の液圧装置14若しくはそれに相当する状態の液圧装置14)において測定された外部リーク量が定格の外部リーク量Fとされてもよい。
【0066】
診断用供給量Ftは、定格の外部リーク量Fより多く、液圧シリンダを駆動するときの駆動用供給量(F)よりも少なければよいが、定格の外部リーク量Fをわずかに超える程度であることが好ましい。例えば、診断用供給量Ftは、定格の外部リーク量Fの10%〜50%の量の差で定格の外部リーク量Fを超える量であることが好ましい。
【0067】
図5は、液圧装置14における故障予知方法について説明する図である。
【0068】
具体的には、図5は、上述した異常診断時(診断用供給量Ftの作動液を供給したとき)における液圧回路16の圧力の長期的な時間変化を示しており、横軸は実行された成形サイクルのサイクル数、縦軸は異常診断時の液圧回路16の圧力を示している。
【0069】
液圧回路16は、突発的な故障が生じない場合であっても、成形サイクルが繰り返されると、摩耗が進行し、外部リーク量が多くなる。従って、異常診断時の液圧回路16の圧力は、成形サイクルが繰り返されることにより、徐々に低下していく。そして、その圧力が所定の基準圧力Pを下回ると、異常が生じたと判定される。
【0070】
このような正常摩耗が進行する過程においては、図5に例示するように、サイクル数と、異常診断時の液圧回路16の圧力との間に相関がある。従って、その相関を予め調べておくことにより、現在の異常診断時の圧力に基づいて、異常診断時の圧力が基準圧力Pを下回る時期を予測することができる。
【0071】
例えば、現在の異常診断時の圧力がPであるとすると、図5に例示する相関から、圧力Pに対応するサイクル数nを特定できる。そして、基準圧力Pに対応する限界サイクル数nと、現在のサイクル数nとの差から、異常発生までのサイクル数n(=n−n)を算出できる。
【0072】
図6は、診断用供給量Ftの補正について説明する図である。横軸は温度、縦軸は診断用供給量Ftを示している。
【0073】
作動液の温度は、成形サイクルが繰り返されると作動液と液圧機器との摩擦などにより上昇する。また、作動液の温度は、ダイカストマシン1が配置される環境、その環境(気温)の変化の影響も受ける。作動液の温度が上昇すると、作動液の粘度が低下し、外部リーク量は多くなる。
【0074】
そこで、ダイカストマシン1は、作動液の温度に基づいて診断用供給量Ftを補正する。換言すれば、ダイカストマシン1は、作動液の温度に応じた診断用供給量Ftを設定する。
【0075】
例えば、データベース63には、温度と診断用供給量Ftとを対応付けたマップが保持されている。当該マップは、図6に示すように、作動液の温度が上昇すると、診断用供給量Ftが多くなるように設定されている。異常判別回路62は、データベース63を参照して、温度センサ25の検出温度に対応する診断用供給量Ftを特定し、その特定した診断用供給量Ftで作動液を供給するようにポンプ部15に指示する。なお、圧力と診断用供給量Ftの補正量とを対応付けたマップも、広義には、圧力と診断用供給量Ftとを対応付けたマップである。
【0076】
本実施形態においては、上述のように、診断用供給量Ftの作動液の供給は、診断用供給量Ftに対応して予め設定された回転数及び容量が維持されるように電動機20及びポンプ19が制御されることにより実現される。従って、実際に温度に基づく補正が行われるのは、回転数及び容量の少なくとも一方であり、データベース63は、温度と、回転数及び容量の少なくとも一方とを対応付けたマップを保持している。
【0077】
図7は、液圧装置14が実行する異常診断の処理の手順を示すフローチャートである。
【0078】
この処理は、上述のように、診断ONスイッチ65に対する操作により開始され、又は、ダイカストマシン1の起動時に診断ON回路67により開始指示がなされることにより開始される。
【0079】
ステップS1では、液圧装置14は、診断用供給量Ftの作動液を液圧回路16に供給する制御を開始する。具体的には、主制御部52は、図6を参照して説明したように、診断用供給量Ftに対応した回転数及び容量の少なくとも一方を温度に基づいて補正する。そして、主制御部52は、補正後の回転数及び容量が維持されるように電動機20及びポンプ19を制御する。
【0080】
ステップS2では、液圧装置14は、電動機20及びポンプ19が定常状態となり、また、液圧回路16の圧力が定常状態となるまで待つ。当該待機は、圧力センサ26等の所定のセンサの検出値が定常状態になったと判定されるまで行われてもよいし、予め定められた時間が経過するまで行われてもよい。
【0081】
ステップS3では、液圧装置14は、圧力センサ26の検出圧力、すなわち、液圧回路16の圧力を取得する。
【0082】
ステップS4では、液圧装置14は、ステップS3で取得した検出圧力が基準圧力P未満であるか否か判定する。検出圧力が基準圧力P未満でないと判定された場合は、処理は、ステップS5に進み、検出圧力が基準圧力P未満と判定された場合は、処理は、ステップS8に進む。
【0083】
ステップS5では、液圧装置14は、液圧装置14において異常が生じていないことを報知するための処理を実行する。例えば、主制御部52は、ポンプ用ランプ69、液圧回路用ランプ70及び複数の弁用ランプ71を消灯する。
【0084】
ステップS6では、液圧装置14は、図5を参照して説明した故障予知を行う。具体的には、制御装置17は、図5に示されるマップをデータベース63に保持している。そして、異常判別回路62は、データベース63を参照することにより、圧力センサ26により検出された検出圧力に対応するサイクル数nを特定し、異常発生までのサイクル数n(=n−n)を算出する。
【0085】
ステップS7では、液圧装置14は、ステップS6において算出した異常発生までのサイクル数nに基づく情報を表示部59において表示する。サイクル数nに基づく情報は、例えば、サイクル数n自体、サイクル数nが代入される所定の計算式により算出された故障時期である。
【0086】
ステップS8では、ポンプ用流量センサ27の検出するドレン量が所定の基準ポンプドレン量未満であるか否か判定する。検出ドレン量が基準ポンプドレン量未満でないと判定された場合は、処理は、ステップS9に進み、検出ドレン量が基準ポンプドレン量未満と判定された場合は、処理は、ステップS10に進む。
【0087】
ステップS9では、液圧装置14は、ポンプ部15において異常が生じたことを報知するための処理を実行する。例えば、主制御部52は、ポンプ用ランプ69を点滅させる。
【0088】
ステップS10では、液圧装置14は、液圧回路16において異常が生じたことを報知するための処理を実行する。例えば、主制御部52は、液圧回路用ランプ70を点滅させる。
【0089】
ステップS10の実行後、異常診断の処理を終えることにより、負担の少ない診断のみが行われるようにすることもできる。しかし、本実施形態では、ステップS10までに液圧回路16の異常が検出された場合には、負担は増えるが、異常対象機器を特定するために、S11以降のステップを行う。
【0090】
ステップS11及びS12では、液圧装置14は、液圧回路16の診断対象となる機器を作動させる。例えば、主制御部52は、複数の制御弁(31、32、33等)を順次若しくは並行して所定の動作で作動させる。この作動は、所定時間行われ、その間、診断対象となる機器(複数の制御弁)のドレン量が検出される。なお、このときの液圧回路16への作動液の供給量は、診断用供給量Ftであってもよいし、診断用供給量Ftよりも多くてもよい。
【0091】
ステップS13及びS14では、液圧装置14は、全ての制御弁について順次、各制御弁において検出されたドレン量が、各制御弁に対して設定された基準弁ドレン量未満であるか否かを判定する。
【0092】
ステップS15では、液圧装置14は、ステップS13において検出ドレン量が基準弁ドレン量未満でないと判定された制御弁において異常が生じていることを報知する処理を実行する。例えば、主制御部52は、異常が生じた制御弁に対応する弁用ランプ71を点滅させる。
【0093】
以上の実施形態によれば、ダイカストマシン1の液圧装置14は、ポンプ19と、ポンプ19から作動液が供給される液圧回路16と、液圧回路16を介してポンプ19から作動液が供給される液圧シリンダ13と、液圧回路16の圧力を検出する圧力センサ26と、成形サイクルにおいて、所定の駆動用供給量(F)の作動液がポンプ19から吐出されることにより、液圧シリンダ13が駆動されるようにポンプ19及び液圧回路16を制御する制御装置17とを有する。制御装置17は、液圧回路16における作動液の定格の外部リーク量Fより多く、駆動用供給量(F)よりも少ない、所定の診断用供給量Ftの作動液がポンプ19から吐出されるようにポンプ19を制御し、そのときの圧力センサ26の検出圧力が所定の基準圧力P未満であるときに、異常が生じたことを報知する処理を行う。
【0094】
従って、比較的少ない供給量で作動液を供給し、液圧回路16の異常を検出することができる。また、液圧シリンダ13に接続された部材(例えば、移動ダイプレート8や射出プランジャ10)を駆動する必要がない。その結果、液圧回路の異常を少ない負担で検出することができる。なお、本実施形態の異常検出は、正常摩耗の進行により生じる異常と、突発的に生じる異常との双方に対応可能である。
【0095】
液圧装置14は、ポンプ19のドレン量を検出するポンプ用流量センサ27を更に有する。制御装置17は、所定の回転数及び所定の容量で駆動されるようにポンプ19を制御し、そのときの検出圧力が基準圧力P未満である場合において、ポンプ用流量センサ27の検出流量が所定の基準ポンプドレン量未満であるときは、液圧回路16に異常が生じたことを報知する処理を行い(ステップS10)、ポンプ用流量センサ27の検出流量が基準ポンプドレン量以上であるときは、ポンプ19に異常が生じたことを報知する処理を行う(ステップS9)。
【0096】
従って、簡易に診断用供給量Ftの作動液の供給が行われ、異常検出が行われる。すなわち、液圧回路16への作動液の供給量を検出する流量センサを設けて、フィードバック制御により供給量を診断用供給量Ftに維持する(なお、この態様も本発明に含まれる)ことは行われない。さらに、少ない供給量でポンプ19の異常も含めて異常を検出することができ、且つ、故障箇所の特定もできる。
【0097】
液圧回路16は複数の制御弁(31、32、33)を有する。液圧装置14は、複数の制御弁のドレン量を検出する複数の弁用流量センサ35が設けられる。制御装置17は、診断用供給量Ftの作動液が吐出されるようにポンプ19を制御したときの検出圧力が基準圧力P未満である場合において、複数の制御弁のいずれかにおいて、その制御弁に対応する弁用流量センサ35の検出流量が複数の制御弁毎に設定された所定の基準弁ドレン量を超えたときは、その制御弁に異常が生じたことを報知する処理を行う(ステップS15)。
【0098】
従って、少ない供給量での異常検出により液圧回路16全体の異常を検出し、異常が検出されたときには、液圧回路16内における異常の検出箇所を特定することができる。すなわち、効率的に詳細な異常を検出することができる。
【0099】
制御装置17は、圧力と成形サイクルのサイクル数とを対応付けたデータベース63を保持している。また、制御装置17は、データベース63を参照して、診断用供給量Ftの作動液が吐出されるようにポンプ19を制御したときの検出圧力に対応するサイクル数nを特定し、特定したサイクル数nと、所定の限界サイクル数nとの差nに基づく情報を報知する処理を行う(ステップS6)。
【0100】
従って、正常摩耗の進行による異常発生の時期を予兆することができる。その結果、作業者はメンテナンスに適切な時期を知ることができ、作業者の利便性が向上する。しかも、異常検出のための動作に基づいて予兆が行われることから、予兆のためだけに液圧系を動作させることがなく、且つ、その動作は上述のように負担が少ないから、著しく液圧装置の負担が軽減される。
【0101】
液圧装置14は、作動液の温度を検出する温度センサ25を有する。制御装置17は、温度センサ25の検出温度の上昇に応じて診断用供給量Ftを増加させる。従って、温度により生じる異常診断の誤差を抑制することができる。その結果、比較的少ない供給量で異常検出を行う場合においても、正確な異常検出が可能となる。
【0102】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るダイカストマシンの液圧装置114の液圧系及び信号処理系の構成を示すブロック図である。なお、図8は、第1の実施形態の図3の一部に相当する。
【0103】
液圧装置114は、少なくとも一の弁用流量センサ35が、2以上の制御弁のドレン量を検出されるように設けられている点が第1の実施形態の液圧装置14と相違する。その他の構成は、第1の実施形態の液圧装置14と同様である。
【0104】
具体的には、第1弁用流量センサ35Aは、第1切換弁31A及び第2切換弁31Bを含む第1弁群75A全体のドレン量を検出する。第2弁用流量センサ35Bは、減圧弁32及び逆止弁33を含む第2弁群75B全体のドレン量を検出する。
【0105】
液圧装置114の動作は、第1の実施形態の液圧装置14の動作と概ね同様である。ただし、図7のステップS13〜S15では、制御装置17は、全ての弁群75について順次、各弁用流量センサ35の検出流量が、各弁群75に対して設定された基準弁用ドレン量未満か否かを判定する。そして、制御装置17は、検出流量が基準弁用ドレン量未満でないと判定された弁群75において異常が生じたことを報知する処理を実行する。例えば、異常が生じた弁群75に含まれる制御弁に対応する弁用ランプ71を点滅させる。
【0106】
以上の実施形態によれば、複数の制御弁を複数の弁群にグループ化し、弁群毎にドレン量の検出及び異常検出を行うことから、流量センサの数を減らして費用を抑えることができる。このとき、実施形態のように、電磁パイロット弁(31A、31B)とパイロット弁(32、33)とを別グループとするなど作動方式毎にグループ化したり、切換弁(31A、31B)と、それ以外の弁(32、33)とを別グループとするなど弁の構造に関する種類毎にグループ化したりすることにより、効率的且つ精度よく異常の検出を行うことができる。
【0107】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0108】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。
【0109】
また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。成形機は、トグル式のものに限定されず、例えば、型閉じ及び型締めが別個の駆動手段により行われるハイブリッド式のものであってもよい。
【0110】
異常診断を行う時期は、成形機の稼働時及び作業者の任意の時期に限定されない。例えば、異常診断は、各成形サイクル毎に行われたり、所定回数の成形サイクル毎に行われたりするなど、定期的に行われてもよい。このような場合、異常診断は、液圧シリンダ等の液圧式のアクチュエータが用いられない工程(例えば、実施形態ではスプレイ行程)と同時に行われることが好ましい。
【0111】
診断用供給量の作動液を供給するとき(ステップS1〜S4)における液圧回路の状態は、液圧シリンダ等のアクチュエータへの作動液の流れを遮断した状態に限定されない。例えば、一方側の駆動限に到達している液圧シリンダを更に前記一方側へ駆動するように作動液の流れが許容されている状態では、実質的に液圧回路から液圧シリンダへ作動液は流れず、液圧回路の圧力は上昇する。ただし、この場合、液圧シリンダにおける作動液の漏れも考慮して、診断用供給量を設定する必要がある。
【0112】
診断用供給量の作動液を供給するとき(ステップS1〜S4)における液圧回路内における流れの許容及び遮断の状態(各弁の状態など)は、適宜に設定されてよい。例えば、作動液の流れを許容及び遮断可能な2つの弁が、一の液圧シリンダ13に対して直列に設けられている場合において、いずれか一方の弁においてのみ流れの遮断が行われてもよいし、双方の弁において流れの遮断が行われてもよい。また、一方の弁においてのみ遮断を行って診断した後に、他方の弁においてのみ遮断を行って診断してもよい。複数の弁間における相対的な異常の生じやすさ、各弁における異常が生じやすい状態などを考慮して、適宜に各弁の状態が設定されてよい。
【0113】
異常診断時に検出される液圧回路の圧力は、液圧回路の上流(ポンプと液圧回路との間、流れを遮断可能な最上流の制御弁よりも上流)における圧力に限定されない。例えば、上述のように、流れを遮断可能な2つの弁が直列に配置されている場合には、2つの弁の間において圧力が検出されてもよい。外部リーク量の増加に伴う圧力低下を検出できる位置であればよい。同様に、作動液の温度は、液圧回路の上流における温度に限定されず、適宜な位置において検出されてよい。
【0114】
ポンプは、回転数及びポンプの1サイクル当たりの容量のいずれかで液圧回路に供給する作動液を調整可能であればよい。すなわち、ポンプは定量形のものであってもよい。また、電動機はサーボモータでなくてもよい。
【0115】
圧力センサ及び流量センサは、多値の信号を出力するものに限定されず、2値の信号を出力するものであってもよい。例えば、圧力センサは、圧力が基準圧力になったときにON信号(又はOFF信号)を出力する圧力スイッチであってもよい。同様に、流量センサは、基準ドレン量になったときにON信号(又はOFF信号)を出力するフロースイッチであってもよい。
【0116】
報知のための装置は、視覚的に報知を行う表示装置に限定されない。例えば、スピーカの出力する報知音により報知が行われてよい。
【0117】
複数の弁群は、少なくとも一の弁群が2以上の制御弁を有していればよい。少なくとも2つの制御弁において、ドレン量が共に計測されれば、流量センサの削減などが図られるからである。
【符号の説明】
【0118】
1…ダイカストマシン、13…液圧シリンダ、14…液圧装置、16…液圧回路、17…制御装置、19…ポンプ、26…圧力センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機の液圧装置であって、
ポンプと、
前記ポンプから作動液が供給される液圧回路と、
前記液圧回路を介して前記ポンプから作動液が供給される液圧シリンダと、
前記液圧回路の圧力を検出する圧力センサと、
成形サイクルにおいて、所定の駆動用供給量の作動液が前記ポンプから吐出されることにより、前記液圧シリンダが駆動されるように前記ポンプ及び前記液圧回路を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記液圧回路における作動液の定格の外部リーク量より多く、前記駆動用供給量よりも少ない、所定の診断用供給量の作動液が前記ポンプから吐出されるように前記ポンプを制御し、そのときの前記圧力センサの検出圧力が所定の基準圧力未満であるときに、異常が生じたことを報知する処理を行う
成形機の液圧装置。
【請求項2】
前記ポンプのドレン量を検出するポンプ用流量センサを更に有し、
前記制御装置は、
所定の回転数及び所定の容量で駆動されるように前記ポンプを制御し、そのときの前記検出圧力が前記基準圧力未満である場合において、
前記ポンプ用流量センサの検出流量が所定の基準ポンプドレン量未満であるときは、前記液圧回路に異常が生じたことを報知する処理を行い、
前記ポンプ用流量センサの検出流量が前記基準ポンプドレン量以上であるときは、前記ポンプに異常が生じたことを報知する処理を行う
請求項1に記載の成形機の液圧装置。
【請求項3】
前記液圧回路は複数の制御弁を有し、
前記複数の制御弁のドレン量を検出する複数の弁用流量センサが設けられており、
前記制御装置は、
前記診断用供給量の作動液が吐出されるように前記ポンプを制御したときの前記検出圧力が前記基準圧力未満である場合において、
前記複数の制御弁のいずれかにおいて、その制御弁に対応する前記弁用流量センサの検出流量が前記複数の制御弁毎に設定された所定の基準弁ドレン量を超えたときは、その制御弁に異常が生じたことを報知する処理を行う
請求項1又は2に記載の成形機の液圧装置。
【請求項4】
前記液圧回路は、複数の制御弁を有する弁群と、少なくとも一つの制御弁を有する弁群とを含む複数の弁群を有し、
前記複数の弁群のドレン量を検出する複数の弁用流量センサが設けられており、
前記制御装置は、
前記診断用供給量の作動液が吐出されるように前記ポンプを制御したときの前記検出圧力が前記基準圧力未満である場合において、
前記複数の弁群のいずれかにおいて、その弁群に対応する前記複数の弁用流量センサの検出流量が前記複数の弁群毎に設定された所定の基準弁ドレン量を超えたときは、その弁群に異常が生じたことを報知する処理を行う
請求項1又は2に記載の成形機の液圧装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
圧力と成形サイクルのサイクル数とを対応付けたデータベースを保持しており、
前記データベースを参照して、前記診断用供給量の作動液が吐出されるように前記ポンプを制御したときの前記検出圧力に対応するサイクル数を特定し、特定したサイクル数と、所定の限界サイクル数との差に基づく情報を報知する処理を行う
請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形機の液圧装置。
【請求項6】
前記作動液の温度を検出する温度センサを更に有し、
前記制御装置は、前記温度センサの検出温度の上昇に応じて前記診断用供給量を増加させる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形機の液圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−140059(P2011−140059A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3203(P2010−3203)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】