説明

成形機システム、射出成形機、光学素子、及び光ピックアップ装置

【課題】高精度の成形品を製造することができる成形機システム又は射出成形機を提供すること。
【解決手段】この成形機システム100では、乾燥機30と温調機50とを射出成形機10との接続部を除いて射出成形機10と隔離するための隔離部材67を適所に設けているので、射出成形機10が乾燥機30や温調機50の熱的影響を受けることを防止でき、金型61,62やこれらの動作に関連する部品の温度管理が容易になり、具体的には短時間で射出成形機10の可動部の温度を安定化させることができ、高精度の成形品MPを高い歩留まりで製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて光学部品等を成形するための成形機システム及び射出成形機、かかる射出成形機等を用いて作製した光学素子、並びに、かかる光学素子を組み込んだ光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機として、固定プラテンと可動プラテンとの間に固定金型と可動金型とを挟持して型締めを行うものが存在する(例えば特許文献1参照)。また、射出成形機に付帯する装置として、射出成形機にエアーで成形材料を自動供給する材料供給装置(特許文献2参照)が存在する。
【特許文献1】特開2006−272558号公報
【特許文献2】特開2001−179778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような射出成形機では、これに付帯する設備としての金型用温調機や材料供給装置の動作に伴って発生する熱が成形品の形状精度に影響を及ぼす。特に、金型用温調機については、熱効率を考えると射出成形機からあまり離れた位置に配置することができず、射出成形機の金型等が温調機から熱的影響を受けて安定するまでに時間がかかりやすくなる。また、射出成形機に対して温調機が一つの場合など、射出成形機の周りに温調機が偏って配置される場合、温調機から射出成形機への熱的な影響が一方向に偏ったものとなり、例えばタイバーが左右非対称に膨張して、微小ながら金型の形状歪や位置ズレが生じ、製品レンズの光学性能に影響すると考えられる。
【0004】
そこで、本発明は、高精度の成形品を製造することができる成形機システム又は射出成形機を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、上記のような成形機システム又は射出成形機を用いて作製した光学素子、及び、かかる光学素子等を組み込んだ光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る成形機システムは、射出成形機と、射出成形機の材料貯留部にエアーを用いて材料を供給する乾燥機と、射出成形機の金型を温度調節する温調機とを備えた成形機システムであって、乾燥機及び温調機の少なくとも一方を射出成形機との接続部を除いて射出成形機と隔離する隔離部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記成形機システムでは、乾燥機及び温調機の少なくとも一方を射出成形機との接続部を除いて射出成形機と隔離する隔離部材を設けているので、射出成形機が乾燥機や温調機の熱的影響を受けることを防止でき、金型やこれに関連する部品の温度管理が容易になり、高精度の成形品を製造することができる。
【0008】
また、本発明の具体的な態様では、上記成形機システムにおいて、隔離部材が、射出成形機を囲む部材であることを特徴とする。この場合、射出成形機を周囲から熱的に孤立させることができ、射出成形機を周囲の熱源から確実に保護して熱的に安定して動作させることができる。
【0009】
本発明の別の態様では、隔離部材が、乾燥機を囲む部材であることを特徴とする。この場合、乾燥機から周囲に発散する熱を抑えて射出成形機への影響を低減することができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、隔離部材と乾燥機との間に、乾燥機の周りの温度を冷却する冷却設備を設けたことを特徴とする。この場合、乾燥機から発生する熱を冷却設備によって積極的に除去することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、隔離部材が、温調機を囲む部材であることを特徴とする。この場合、温調機から周囲に発散する熱を抑えて射出成形機への影響を低減することができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、隔離部材と温調機との間に、温調機の周りの温度を冷却する冷却設備を設けたことを特徴とする。この場合、温調機から発生する熱を冷却設備によって積極的に除去することができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、乾燥機及び温調機の両方を、射出成形機とのそれぞれの接続部を除いて射出成形機から隔離したことを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、隔離部材が、二重以上の構造を有することを特徴とする。この場合、隔離部材の断熱効果を簡易に高めることができ、射出成形機の温度管理をより精密化して、高精度の成形品を製造することができる。
【0015】
本発明に係る射出成形機は、材料貯留部にエアーを用いて材料を供給する乾燥機の接続部と、金型を温度調節する温調機との接続部とを除いて、外部温度の影響を抑えるように外部と隔離する隔離部材を設けたことを特徴とする。
【0016】
上記射出成形機では、乾燥機との接続部と、温調機との接続部とを除いて、外部温度の影響を抑えるように外部と隔離する隔離部材を設けているので、射出成形機が乾燥機や温調機の熱的影響を受けることを防止でき、高精度の成形品を製造することができる。
【0017】
また、本発明の具体的な態様では、上記射出成形機において、隔離部材が、断熱素材で形成されていることを特徴とする。射出成形機を簡易・確実に周囲から熱的に分離することができる。
【0018】
本発明の別の態様では、隔離部材が、二重以上の構造を有することを特徴とする。この場合、隔離部材の断熱効果を簡易に高めることができ、射出成形機の温度管理をより精密化して、高精度の成形品を製造することができる。
【0019】
本発明に係る光ピックアップ装置用の光学素子は、上述の成形機システム又は射出成形機を用いて製造されたことを特徴とする。この場合、上記成形機システムによる精密な成形によって高精度の光学素子を得ることができる。
【0020】
本発明に係る光ピックアップ装置は、光源と、上述の光学素子とを備えたことを特徴とする。この場合、上述の光学素子によって、高精度で情報の再生及び/又は記録可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である成形機システムについて、図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、本実施形態の成形機システムを説明する概念図である。
【0022】
本実施形態の成形機システム100は、射出成形機10と、取出し装置20と、乾燥機30と、ゲート切断機40と、温調機50とを備える。射出成形機10は、射出成形を行って成形品MPを作製する部分であり、取出し装置20は、射出成形機10から成形品MPを取り出す部分であり、乾燥機30は、空気や窒素等のエアーを用いて成形材料であるペレットPMを供給する部分であり、ゲート切断機40は、成形品MPのゲートを切断して不要部分を除去する部分であり、温調機50は、射出成形機10の金型及びその周辺の温度を調節する部分である。
【0023】
射出成形機10は、固定プラテン11と、可動プラテン12と、後部プラテン13と、開閉駆動装置15と、射出装置16とを備える。射出成形機10は、固定プラテン11と可動プラテン12との間に固定金型61と可動金型62とを挟持して両金型61,62を型締めすることにより成形を可能にする。
【0024】
固定プラテン11は、支持フレーム14の中央側上面に固定されており、取出し装置20をその上部に支持する。固定プラテン11の内側は、固定金型61を着脱可能に支持しており、可動プラテン12の内側に対向している。なお、固定プラテン11は、タイバー64a,64bを介して後部プラテン13に固定されており、成形時の型締め(すなわちロックアップ)の圧力に耐え得るようになっている。
【0025】
上側タイバー64aと下側タイバー64bとは、それぞれ固定プラテン11と後部プラテン13との間に架設されている。上側タイバー64aと下側タイバー64bとは、実際には2本ずつあり、固定プラテン11及び後部プラテン13の四隅に支持されて、互いに平行に延びている。可動プラテン12の四隅には、タイバー64a,64bを貫通させるための貫通孔が形成されており、可動プラテン12は、タイバー64a,64bに対して摺動可能である。
【0026】
可動プラテン12は、後述するスライドガイド15aによって固定プラテン11に対して進退移動可能に支持されている。可動プラテン12の内側は、可動金型62を着脱可能に支持しており、固定プラテン11の内側に対向している。
【0027】
後部プラテン13は、支持フレーム14の端部側上面に固定されているが、タイバー64a,64bが延びている方向に関して位置調整が可能になっており、固定プラテン11と可動プラテン12との間隔調整を可能にしている。後部プラテン13は、型締めに際して、開閉駆動装置15の動力伝達部15dを介して可動プラテン12をその背後から支持する。
【0028】
開閉駆動装置15は、スライドガイド15aと、動力伝達部15dと、アクチュエータ15eとを備える。スライドガイド15aは、支持フレーム14上であって可動プラテン12の直下に設けられており、可動プラテン12を支持するとともに可動プラテン12の固定プラテン11に対する進退方向に関する滑らかな往復移動を可能にしている。動力伝達部15dは、それぞれトグルリンク等で構成され、アクチュエータ15eからの駆動力を受けて伸縮する。これにより、後部プラテン13に対して可動プラテン12が近接したり離間したり自在に変位し、結果的に、可動プラテン12と固定プラテン11とを互いに近接するように締め付けることができる。なお、アクチュエータ15eは、例えば油圧シリンダ等で構成され、不図示の制御部からの制御信号に応じて所望のタイミングで動作する。なお、以上の開閉駆動装置15において、動力伝達部15dを例えばボールネジに置き換え、アクチュエータ15eを例えばモータに置き換えることもできる。
【0029】
以上の開閉駆動装置15により、固定プラテン11と可動プラテン12とに挟まれた固定金型61と可動金型62とを型閉じすることができ、或いは、可動プラテン12と固定プラテン11とを互いに離間させてこれらに挟まれた固定金型61と可動金型62とを型開きすることができる。さらに、型閉じに際しては、アクチュエータ15eの駆動によって可動プラテン12を固定プラテン11側に極めて大きな圧力で押し付けることができ、固定金型61と可動金型62とを十分な力で型締めすることができる。
【0030】
射出装置16は、シリンダ16a、ホッパ16b、スクリュ駆動部16c等を備え、射出端16dから温度制御された状態で溶融樹脂を吐出することができる。射出装置16は、シリンダ16aの射出端16dを固定プラテン11に対して分離可能に接続することができ、固定プラテン11を介して、固定金型61と可動金型62とを型締めした状態で形成されるキャビティ中に溶融樹脂を所望のタイミングで供給することができる。ホッパ16bは、成形材料であるペレットPMを貯留する材料貯留部であり、乾燥機30から乾燥したペレットPMが不足しないように一定の貯留量になるように随時供給される。
【0031】
射出成形機10は、固定プラテン11と、可動プラテン12と、後部プラテン13と、開閉駆動装置15と、射出装置16とを収納するケース66中に収められている。ケース66は、乾燥機30との接続部として、射出装置16のホッパ16bの部分で開口しており、取出し装置20やゲート切断機40との接続部として、固定プラテン11付近の部分で開口しており、温調機50との接続部として、固定プラテン11や可動プラテン12の周辺部分で開口している。また、ケース66は、他の機器20,30,40,50と接続するための開口部を除いて、その周囲を断熱素材からなる隔離部材67によって覆われている。
【0032】
図2(A)は、隔離部材67の構造を概念的に説明する断面図である。射出成形機10を覆うケース66は、側板部66bと天板部66cとを備え、例えば天板部66cの適所に取出し装置20等の他の機器と接続するための開口66aを有する。隔離部材67は、開口66aを除いて、ケース66の側板部66bや天板部66cを全体的に覆っている。隔離部材67を構成する断熱素材は、プラスチック系、無機繊維系、天然系の各種断熱素材を用いることができる。例えば、セラミックファイバを用いて板状もしくは厚肉の固結フェルト状等に予め成形したり充填したりることができる。一例としては、アルミナ(Al)及びシリカ(SiO)を主成分とするセラミックファイバに少量の無機バインダを加えたものを用いて予め成形したり充填したりすることにより、隔離部材を形成することができる。このような隔離部材67を設けることにより、射出成形機10が他の機器の熱的影響を受けることを防止でき、金型61,62やプラテン11,12等を含む各部の温度管理が容易になる。なお、図示の例では、ケース66と隔離部材67との間に隙間を設けているが、ケース66と隔離部材67とを密着させることもできる。
【0033】
図2(B)は、図2(A)の隔離部材67の変形例を概念的に説明する断面図である。この場合も、隔離部材167は、開口66aを除いて、ケース66の側板部66bや天板部66cを全体的に覆っている。隔離部材167は、二重構造になっており、外側の第1層167aと内側の第2層167bとを備える。第1層167aと内側の第2層167bとは、ともに断熱素材で形成されており、両層167a,167bの間に空気層ALが設けられている。このように、二重構造の隔離部材167を用いることにより、断熱効果が高まり、射出成形機10の温度管理をより精密化することができる。なお、隔離部材167は、二重構造に限らず、三重構造以上とすることができる。
【0034】
図2(C)は、図2(B)の隔離部材67の変形例を概念的に説明する断面図である。この場合も、隔離部材267は、開口66aを除いて、ケース66の側板部66bや天板部66cを全体的に覆っている。隔離部材267は、二重構造になっており、外側の第1層167aと内側の温度調節層267cとを備える。この温度調節層267cは、例えば冷却水循環パイプ網等からなり、循環水供給装置268から冷却水の供給を受けて冷却水を循環させることができるようになっている。この場合、温度調節層267cや循環水供給装置268は、射出成形機10の周りの温度を冷却する冷却設備になっており、射出成形機10が過剰に加熱されることを防止している。なお、温度調節層267cには、常温又は室温の冷却水を供給することもできるが、射出成形機10を所望の温度状態で動作させるため、温度管理された媒体、具体的には室温よりも多少低温の冷却水や室温よりも多少高温の温水を供給することもできる。また、温度調節層267cには、冷却水に代えて冷却エアーを供給することもできる。
【0035】
図1に戻って、取出し装置20は、成形品MPを把持することができるハンド21と、ハンド21を3次元的に移動させる3次元駆動装置22とを備える。取出し装置20は、固定金型61と可動金型62とを離間させて型開きする際に、固定金型61や可動金型62に残る成形品MPを把持してゲート切断機40まで搬送する役割を有する。なお、成形品MPが光学素子である場合、光学面を有する製品本体を傷つけないように、成形に付随して形成される不要部分であるスプル部分等がハンド21に把持される。
【0036】
乾燥機30は、材料供給部31と、粉取り部32とを備える。ここで、材料供給部31は、成型用の原材料であるペレットPMを乾燥しつつ貯留する部分であり、投入されたペレットPMを乾燥エアーによって乾燥状態に維持する。また、材料供給部31は、必要なタイミングで、乾燥エアーとともにペレットPMを材料供給ホース33を介してホッパ16bに適当量だけ圧送する。なお、ホッパ16b中のペレットPMの量は、不図示のセンサによって監視されており、ペレットPMの供給タイミングの判定に利用される。粉取り部32は、エアー供給ホース34を介してホッパ16b中に乾燥エアーを噴出する。これにより、ペレットPMが舞い上がって撹拌され、その際、ペレットPMの表面に付着している粉が吹き飛ばされてペレットPMの粉取りが行われる。なお、材料供給部31を動作させてペレットPMをホッパ16b中に供給する場合や、粉取り部32を動作させてペレットPMの粉取りを行う際には、不図示のホースを介してホッパ16bからエアーを吸引することもできる。これにより、ペレットPMの供給やペレットPMの粉取りを効率的に行うことができる。以上の材料供給部31や粉取り部32は、材料保管時のほか、材料供給時や粉取り時に発熱源となり、放置すれば、射出成形機10の等の周囲装置に熱を与える傾向がある。
【0037】
このため、乾燥機30は、材料供給部31と、粉取り部32とを収納するケース66中に収められている。ケース66は、射出成形機10との接続部として、ホース33,34の部分で開口している。また、ケース66は、射出成形機10と接続するための開口部を除いて、その周囲を断熱素材からなる隔離部材67によって覆われている。隔離部材67の構造は、図2(A)に示すようなものとなっており、乾燥機30が外部の射出成形機10等に対して熱的影響を与えることを防止している。
【0038】
なお、乾燥機30の周囲を覆う隔離部材67については、図2(B)に示すような二重構造の隔離部材167に変形することができ、図2(C)に示すような温度調節層267cを備える隔離部材267に変形することができる。
【0039】
ゲート切断機40は、製品受取部41と、搬送部42と、カッタ装置43と、集塵装置44とを備える。製品受取部41は、取出し装置20を介して受け取った成形品MPの姿勢を変化させて切断に適する状態として搬送部42に送り出す。搬送部42は、成形品MPをカッタ装置43に順次供給する搬送路となっている。搬送部42は、モータや機械機構等からなる搬送駆動部42aを有しており、この搬送駆動部42aは、搬送部42を駆動して成形品MPを移送する際に振動源となり、例えば射出成形機10等の周囲装置に振動を与える傾向がある。カッタ装置43は、搬送部42の搬送路に臨むカッタ43aと、カッタ43aを駆動するカッタ駆動装置43bとを備える。カッタ装置43は、カッタ43aによって搬送部42によって供給される成形品MPのゲート部分を順次切除する。集塵装置44は、カッタ装置43と同期して動作するものであり、カッタ装置43に対向するダクト44aと、ダクト44aを介して粉塵を集める集風機44bとを備える。集塵装置44は、その他に、圧縮空気を成形品MPの表面に噴射して表面に付着したゴミを除去するためのコンプレッサやノズル等も備える。以上のカッタ装置43や集塵装置44は、切断動作時すなわち集塵動作時に振動源となり、例えば射出成形機10の等の周囲装置に振動を与える傾向がある。
【0040】
温調機50は、ポンプ、ヒータ、冷却部、温度センサ等を備える媒体循環装置51を備える。媒体循環装置51から延びる配管52,53は、固定プラテン11と可動プラテン12とにそれぞれ連結されており、固定プラテン11や可動プラテン12中、或いは金型61,62中に所望の温度に設定された温度調節媒体を循環させることができるようになっている。このような温調機5により、固定プラテン11や可動プラテン12を所望の温度に設定することができ、ひいては固定金型61や可動金型62の温度管理が可能になる。つまり、成形中における金型61,62中の樹脂の温度を精密に調節して高精度の成形品MPを得ることができる。以上の媒体循環装置51は、その動作時に発熱源となり、放置すれば、射出成形機10の等の周囲装置に熱を与える傾向がある。
【0041】
このため、温調機50は、媒体循環装置51を収納するケース66中に収められている。ケース66は、射出成形機10との接続部として、配管52,53の部分で開口している。また、ケース66は、射出成形機10と接続するための開口部を除いて、その周囲を断熱素材からなる隔離部材67によって覆われている。隔離部材67の構造は、図2(A)に示すようなものとなっており、温調機50が外部の射出成形機10等に対して熱的影響を与えることを防止している。
【0042】
なお、温調機50の周囲を覆う隔離部材67については、図2(B)に示すような二重構造の隔離部材167に変形することができ、図2(C)に示すような温度調節層267cを備える隔離部材267に変形することができる。
【0043】
図3は、図1に示す成形機システム100の制御系を説明するブロック図である。この制御系は、成形機システム100の動作を制御するための制御手段として、成形機本体制御部71と、取出し装置制御部72と、乾燥機制御部73と、ゲート切断機制御部74と、温調機制御部75とを備える。ここで、成形機本体制御部71は、射出成形機10に内蔵され、取出し装置制御部72は、取出し装置20に内蔵され、乾燥機制御部73は、乾燥機30に内蔵され、ゲート切断機制御部74は、ゲート切断機40に内蔵され、温調機制御部75は、温調機50に内蔵されている。
【0044】
成形機本体制御部71は、射出成形機10に設けた開閉駆動装置15のアクチュエータ15eを介して動力伝達部15dを動作させる。この際、開閉駆動装置15は、これに付随する位置センサ、圧力センサ等の検出出力を監視しつつ動力伝達部15dを動作させる。また、成形機本体制御部71は、射出装置16の動作を制御して、固定プラテン11への樹脂の供給タイミングや供給圧力を調整する。これにより、射出成形機10において、両金型61,62の型閉じや型開きが可能になるとともに、両金型61,62間のキャビティ中への溶融樹脂の射出が可能になる。
【0045】
取出し装置制御部72は、取出し装置20を動作させてハンド21を3次元的に移動させるとともにハンド21に成形品MPを把持させ、成形品MPを射出成形機10外に搬出させる。この際、取出し装置制御部72は、取出し装置20に付随する位置センサ等の検出出力を監視しつつ取出し装置20を動作させる。
【0046】
乾燥機制御部73は、乾燥機30の材料供給部31を動作させてホッパ16b中のペレットPMが所定以上に減少した場合に、ホッパ16bに乾燥エアーとともにペレットPMを供給させる。また、乾燥機制御部73は、乾燥機30の粉取り部32を動作させてホッパ16b中に定期的に乾燥エアーを噴射して、ペレットPMの表面の粉取りを行わせる。
【0047】
ゲート切断機制御部74は、ゲート切断機40の製品受取部41、搬送部42、カッタ装置43、集塵装置44等の動作内容や動作タイミングを管理しており、製品受取部41によって取出し装置20から受け取った成形品MPを適当な姿勢で搬送部42に送り込ませ、搬送部42の搬送路上の適所でカッタ装置43によって成形品MPのゲート部のカットを行わせる。その際、ゲート切断機制御部74は、集塵装置44を適宜動作させて、ゲートカットに伴って発生する切りくずをカッタ装置43の周辺から除去させる。
【0048】
温調機制御部75は、温調機50を動作させて固定金型61や可動金型62の温度管理を行うことにより、射出装置16によって両金型61,62のキャビティ中に溶融樹脂を射出させる際に両金型61,62の温度管理を行い、樹脂射出後は、両金型61,62を適当な工程で徐冷して成形品MPの固化を制御する。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の成形機システム100では、乾燥機30と温調機50とを射出成形機10との接続部を除いて射出成形機10と隔離するための隔離部材67を適所に設けているので、射出成形機10が乾燥機30や温調機50の熱的影響を受けることを防止でき、金型61,62やこれらの動作に関連する部品の温度管理が容易になり、具体的には短時間で射出成形機10の可動部の温度を安定化させることができ、高精度の成形品MPを高い歩留まりで製造することができる。特に、多数個取りを可能にする高精度の金型61,62であっても、周囲からの熱的な影響を回避することで、成形品MPの形状を高精度に維持することができる。
【0050】
図4は、図1等に示す成形機システム100を用いて射出成形した光学素子の一例であるレンズ91の断面図である。レンズ91は、第1対物レンズ本体部91aと、第2対物レンズ本体部91bと、支持体部分91cとを備える複合対物レンズである。支持体部分91cは、第1対物レンズ本体部91aと第2対物レンズ本体部91bとを支持して不図示のホルダに固定するための部分となっている。なお、支持体部分91cには、成形時に形成されるゲートを切除したゲートカット部CPが形成されている。
【0051】
図5は、図4のレンズ91を組み込んだ光ピックアップ装置の光学系の構成を概略的に示す図である。
【0052】
この光ピックアップ装置において、各半導体レーザ81A,81Bからのレーザ光は、共用の対物レンズアクチュエータ200を介して光情報記録媒体である光ディスクDB,DD(又はDC)にそれぞれ集光され、各光ディスクDB,DD(又はDC)からの反射光は、共用の対物レンズアクチュエータ200を介し、最終的に各光検出器87A,87Bにそれぞれ導かれる。
【0053】
ここで、第1半導体レーザ81Aは、第1光ディスクDBの情報再生用のレーザ光(具体的には、BD用の波長405nm)を発生し、このレーザ光は、対物レンズアクチュエータ200に設けたレンズ91の第1対物レンズ本体部91aで集光され、NA0.85相当のスポットが情報記録面MB上に形成される。第2半導体レーザ81Bは、2波長型のレーザダイオードであり、第2光ディスクDDと第3光ディスクDCの情報再生用のレーザ光(具体的には、DVD用の波長655nm、又はCD用の波長780nm)を発生し、その後レーザ光は、第2対物レンズ本体部91bで集光され、NA0.65(又はNA0.53)相当のスポットが情報記録面MD(又はMC)上に形成される。
【0054】
一方、第1光検出器87Aは、第1光ディスクDB(具体的にはBD)に記録された情報を光信号として検出し、第2光検出器87Bは、第2光ディスクDD(具体的にはDVD)又は第3光ディスクDC(具体的にはCD)に記録された情報を光信号として検出する。
【0055】
以下、図5の光ピックアップ装置の詳細な構造や具体的な動作について説明する。まず第1光ディスクDBを再生する場合、第1半導体レーザ81Aから例えば波長405nmのレーザ光が出射され、出射された光束は、ビームシェーパやコリメータレンズからなるコリメータ系82Aにより平行光束となる。この光束は、トラッキング用信号の検出に使用するサブビームスポットを生成するためのグレーティング83A、偏光ビームスプリッタ84A、ダイクロイックプリズム84Cを透過し、さらにビームエキスパンダ84G、1/4波長板88Bを透過し、ダイクロイックプリズム84Dに入射する。入射した光束は面84Daで反射され、第1対物レンズ本体部91aを介して、第1光ディスクDBの情報記録面MBに集光される。
【0056】
情報記録面MBでピットや記録マークにより変調されて反射された光束は、再び第1対物レンズ本体部91a等を透過して、ダイクロイックプリズム84C等を経て偏光ビームスプリッタ84Aに入射し、ここで反射されてサーボレンズ85Aにより非点収差が与えられ、第1光検出器87A上へ入射し、その出力信号を用いて、第1光ディスクDBに記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0057】
また、第1光検出器87A上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦(フォーカス)検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、対物レンズアクチュエータ200に設けた不図示の磁気回路部が、第1半導体レーザ81Aからの光束を第1光ディスクDBの情報記録面MB上に結像させるように、レンズ91すなわち第1対物レンズ本体部91aを光軸方向に移動させるとともに、この第1半導体レーザ81Aからの光束を所定のトラックに結像するように、同第1対物レンズ本体部91aを光軸に垂直な方向に移動させる。
【0058】
次に、第2光ディスクDDを再生する場合、第2半導体レーザ81Bから例えば波長655nmのレーザ光が出射され、出射された光束は、コリメータ系82Bにより平行光束となる。この光束は、トラッキング用信号の検出に使用するサブビームスポットを生成するためのグレーティング83B、偏光ビームスプリッタ84Bを透過し、ダイクロイックプリズム84Cで反射され、ビームエキスパンダ84G、1/4波長板88Bを通過し、ダイクロイックプリズム84Dに入射する。入射した光束は、面84Daを透過し、面84Dbで反射されて、レンズ91のうち対応する第2対物レンズ本体部91bを介して第2光ディスクDDの情報記録面MDに集光される。
【0059】
情報記録面MDでピットや記録マークにより変調されて反射された光束は、再び第2対物レンズ本体部91bを透過して、ダイクロイックプリズム84D、ビームエキスパンダ84G等を通過した後、ダイクロイックプリズム84Cで反射され、さらに偏光ビームスプリッタ84Bで反射される。反射された光束は、サーボレンズ85Bにより非点収差が与えられ、第2光検出器87B上ヘ入射し、その出力信号を用いて、第2光ディスクDDに記録された情報の読み取り信号が得られる。また、第1光ディスクDBの場合と同様、第2光検出器87B上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、対物レンズアクチュエータ200に設けた不図示の磁気回路部により、フォーカシング及びトラッキングのため、レンズ91すなわち第2対物レンズ本体部91bを移動させる。
【0060】
次に、第3光ディスクDCを再生する場合、第2半導体レーザ81Bから例えば波長780nmのレーザ光が出射され、出射された光束は、コリメータ系82Bにより平行光束となる。この光束は、トラッキング用信号の検出に使用するサブビームスポットを生成するためのグレーティング83B、偏光ビームスプリッタ84Bを透過し、ダイクロイックプリズム84Cで反射され、ビームエキスパンダ84G、1/4波長板88Bを通過し、ダイクロイックプリズム84Dに入射する。入射した光束は、面84Daを透過し、面84Dbで反射されて、レンズ91のうち対応する第2対物レンズ本体部91bを介して第3光ディスクDCの情報記録面MCに集光される。
【0061】
情報記録面MCでピットや記録マークにより変調されて反射された光束は、再び第2対物レンズ本体部91bを透過して、ダイクロイックプリズム84D、ビームエキスパンダ84G等を通過した後、ダイクロイックプリズム84Cで反射され、さらに偏光ビームスプリッタ84Bで反射される。反射された光束は、サーボレンズ85Bにより非点収差が与えられ、第2光検出器87B上ヘ入射し、その出力信号を用いて、第3光ディスクDCに記録された情報の読み取り信号が得られる。また、第2光ディスクDDの場合と同様、第2光検出器87B上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、対物レンズアクチュエータ200に設けた不図示の磁気回路部により、フォーカシング及びトラッキングのために、レンズ91すなわち第2対物レンズ本体部91bを移動させる。
【0062】
なお、以上は各光ディスクDB,DD(又はDC)から情報を再生する場合の説明であったが、各半導体レーザ81A,81Bの出力を調整すること等により、各光ディスクDB,DD(又はDC)に情報を記録することもできる。
【0063】
また、上記実施形態では、第1対物レンズ本体部91aによりBD(又はHD DVD)に対する情報の再生・記録を行い、第2対物レンズ本体部91bによりDVDやCDに対する情報の再生・記録を行っているが、第1対物レンズ本体部91aによりBDに対する情報の再生・記録を行い、第2対物レンズ本体部91bによりHD DVDやDVD、CDに対する情報の再生・記録を行う実施形態とすることもできる。逆に、第1対物レンズ本体部91aによりHD DVDに対する情報の再生・記録を行い、第2対物レンズ本体部91bによりBDやDVD、CDに対する情報の再生・記録を行う実施形態とすることもできる。さらに、第1対物レンズ本体部91aによりCDに対する情報の再生・記録を行い、第2対物レンズ本体部91bによりDVDに対する情報の再生・記録を行う実施形態とすることもできる。
【0064】
また、上記実施の形態では、第1対物レンズ本体部と第2対物レンズ本体部とを有する光ピックアップ装置用の対物レンズの例を説明したが、光ピックアップ装置用の対物レンズとしては、例えば対物レンズ本体部は1つのみからなるBD専用の対物レンズ、或いはHD DVDとDVDとCDとの互換可能な対物レンズ等、種々多様な光ピックアップ装置用の対物レンズの製造に適用できることは勿論である。
【0065】
また、図1等に示す成形機システム100を用いて射出成形したレンズ等の光学素子は、コリメータ系82A,82Bやビームエキスパンダ84Gを構成するものとして組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態の成形機システムを説明する正面図である。
【図2】(A)〜(C)は基本的な隔離部材とその変形例と説明する断面図である。
【図3】図1に示す成形機システムの制御系を説明するブロック図である。
【図4】図1の成形機システムで得た光学素子である対物レンズの側面図である。
【図5】図4に示すレンズを組み込んだ光ピックアップ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
10…射出成形機、 11…固定プラテン、 12…可動プラテン、 13…後部プラテン、 15…開閉駆動装置、 15a…スライドガイド、 15d…動力伝達部、 15e…アクチュエータ、 16…射出装置、 16a…シリンダ、 16b…ホッパ、 20…取出し装置、 21…ハンド、 22…3次元駆動装置、 30…乾燥機、 31…材料供給部、 32…粉取り部、 40…ゲート切断機、 41…製品受取部、 42…搬送部、 42a…搬送駆動部、 43…カッタ装置、 44…集塵装置、 50…温調機、 51…媒体循環装置、 52,53…配管、 61…固定金型、 62…可動金型、 66…ケース、 67,167,267…隔離部材、 71…成形機本体制御部、 72…取出し装置制御部、 73…乾燥機制御部、 74…ゲート切断機制御部、 75…温調機制御部、 91…レンズ、 91a…第1対物レンズ本体部、 91b…第2対物レンズ本体部、 91c…支持体部分、 100…成形機システム、 MP…成形品、 PM…ペレット、 SC…型締め中信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と、前記射出成形機の材料貯留部にエアーを用いて材料を供給する乾燥機と、前記射出成形機の金型を温度調節する温調機とを備えた成形機システムであって、
前記乾燥機及び前記温調機の少なくとも一方を前記射出成形機との接続部を除いて前記射出成形機と隔離する隔離部材を設けたことを特徴とする成形機システム。
【請求項2】
前記隔離部材は、前記射出成形機を囲む部材であることを特徴とする請求項1に記載の成形機システム。
【請求項3】
前記隔離部材は、前記乾燥機を囲む部材であることを特徴とする請求項1に記載の成形機システム。
【請求項4】
前記隔離部材と前記乾燥機との間に、前記乾燥機の周りの温度を冷却する冷却設備を設けたことを特徴とする請求項3に記載の成形機システム。
【請求項5】
前記隔離部材は、前記温調機を囲む部材であることを特徴とする請求項1に記載の成形機システム。
【請求項6】
前記隔離部材と前記温調機との間に、前記温調機の周りの温度を冷却する冷却設備を設けたことを特徴とする請求項5に記載の成形機システム。
【請求項7】
前記乾燥機及び前記温調機の両方を、前記射出成形機とのそれぞれの接続部を除いて前記射出成形機から隔離したことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の成形機システム。
【請求項8】
前記隔離部材は、二重以上の構造を有することを特徴とする請求項7に記載の成形機システム。
【請求項9】
材料貯留部にエアーを用いて材料を供給する乾燥機との接続部と、金型を温度調節する温調機との接続部とを除いて、外部温度の影響を抑えるように外部と隔離する隔離部材を設けたことを特徴とする射出成形機。
【請求項10】
前記隔離部材は、断熱素材で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記隔離部材は、二重以上の構造を有することを特徴とする請求10に記載の射出成形機。
【請求項12】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の成形機システム又は請求項9から請求項11までのいずれか一項に記載の射出成形機を用いて製造されたことを特徴とする光ピックアップ装置用の光学素子。
【請求項13】
光源と、請求項12に記載の光学素子とを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−221777(P2008−221777A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67031(P2007−67031)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】