説明

成形機

【課題】構造が簡単で安価に実施することができ、しかも高品質の成形品を成形可能な成形機を提供する。
【解決手段】ベースフレーム7上に所定の間隔を隔てて対向に配置された固定ダイプレート31及びテールストック32と、両端が固定ダイプレート及びテールストックに固定された複数本のタイバー33と、該タイバーに案内されてダイプレートとテールストックとの間で前後進する可動ダイプレート34と、固定ダイプレートに取り付けられた固定側金型38と、可動ダイプレートに取り付けられた可動側金型39とを備える。固定ダイプレートの重心Gを通り、固定ダイプレートの下面に対して垂直に交わる直線上に1つの球面軸受50を配置し、この1つの球面軸受50を介して固定ダイプレートをベースフレーム7上に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機及びダイカストマシン等の成形機に係り、特に、固定側金型が取り付けられる固定ダイプレートのベースフレームに対する取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モーメントフリー型締機構(登録商標)と呼ばれる型締機構を備えた射出成形機が提案されている。この型締機構は、固定ダイプレートを、軸心が固定ダイプレートの中心軸又はその近傍を通り、固定ダイプレートの金型取付面に対して平行で、装置のベース面に対して平行な支持軸を介して、その両側面から支持するというものであり、より具体的には、ベースフレーム上に2本の支持脚を平行に固定し、この支持脚上に前記支持軸を軸受を介して回転自在に支持するというものである(特許文献1参照。)。
【0003】
この型締機構を備えると、固定ダイプレートの中心軸に射出ノズルの軸心を一致させることにより、固定ダイプレートに取り付けられた固定側金型の背面に射出ノズルを押し付けたとき、固定ダイプレートが前方に傾くことがなく、固定側金型と可動側金型との間に備えられるガイドピン及びブッシュ等の異常摩耗を防止できると共に、型締力を必要以上に大きくする必要がないので、異物を挟み込んだ場合にも金型を破損することがない。また、型締を行ったとき、固定ダイプレート及び可動ダイプレートなどに上下非対称な変形が生じないので、固定側金型と可動側金型との間に均一な型締力が作用し、高精度の成形が可能になる。
【特許文献1】特許第3635220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこの種の型締機構は、ベースフレーム上に2本の支持脚を平行に固定する必要があり、しかも、これら2本の支持脚と固定ダイプレートとの間にそれぞれ1つずつ、合計2つの軸受を必要とするので、構造が複雑となり、成形機のコスト高になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、構造が簡単で安価に実施することができ、しかも高品質の成形品を成形可能な成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この目的を達成するため、ベースフレーム上に所定の間隔を隔てて対向に配置された固定ダイプレート及びテールストックと、両端が前記固定ダイプレート及び前記テールストックに固定された複数本のタイバーと、該タイバーに案内されて前記ダイプレートと前記テールストックとの間で前後進する可動ダイプレートと、前記固定ダイプレートに取り付けられた固定側金型と、前記可動ダイプレートに取り付けられた可動側金型とを備えた成形機において、前記固定ダイプレートの重心を通り、前記固定ダイプレートの下面に対して垂直に交わる直線上又はその近傍に1つの球面軸受を配置し、この1つの球面軸受を介して前記固定ダイプレートを前記ベースフレーム上に支持するという構成にした。
【0007】
かかる構成によると、1つの球面軸受を介して固定ダイプレートをベースフレーム上に支持するので、従来技術においては必須の構成要件であった支持脚を省略できると共に、軸受の数を最小の1つにできて、型締機構、ひいては成形機の構成の簡略化と低コスト化とを図ることができる。また、1つの球面軸受を、固定ダイプレートの重心を通り、固定ダイプレートの下面に対して垂直に交わる直線上又はその近傍に配置するので、この直線を回転中心とする方向、及び球面軸受の設定位置を回転中心とする任意の方向に固定ダイプレートを回転することができる。よって、固定ダイプレートに型締力及び射出ノズルの押し付け力が作用した場合、これらの力が平衡に達する位置まで固定ダイプレートの姿勢が自動的に調整されるので、固定ダイプレートの上下方向の変形及び左右方向の変形をそれぞれ対称形にすることができ、固定側金型と可動側金型との間に作用する型締力を均一化することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成形機は、固定ダイプレートの重心を通り、固定ダイプレートの下面に対して垂直に交わる直線上に1つの球面軸受を配置し、この1つの球面軸受を介して固定ダイプレートをベースフレーム上に支持するので、成形機の構成を簡略化できて、その低コスト化を図ることができると共に、固定ダイプレートに作用する型締力及び射出ノズルの押し付け力に応じて、それらの力が平衡する位置まで固定ダイプレートの姿勢が自動的に調整されるので、固定側金型と可動側金型との間に作用する型締力を均一化することができて、高精度の成形が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る成形機の実施形態を、射出成形機を例にとり、図1乃至図4を用いて説明する。図1は実施形態に係る射出成形機の構成図、図2は実施形態に係る固定ダイプレートの支持構造を示す要部側面図、図3は実施形態に係る固定ダイプレートの支持構造を示す要部正面図、図4は実施形態に係る射出成形機の効果を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本例の射出成形機は、射出装置1と、型締装置2とから主に構成されている。
【0011】
射出装置1は、ベースフレーム7上に所定の間隔を隔てて対向に配設されたヘッドストック11及びモータ取付板12と、モータ取付板12に取り付けられた射出用電動サーボモータ13と、射出用電動サーボモータ13に備えられ、射出用電動サーボモータ13の回転方向及び回転量を検出するエンコーダ15と、ヘッドストック11とモータ取付板12との間に架け渡された4本の連結バー16と、連結バー16に案内されてヘッドストック11とモータ取付板12との間を前後進する直動体17と、射出用電動サーボモータ13の回転運動を直動体17の直進運動に変換するボールネジ機構18と、直動体17に取り付けられた計量用サーボモータ20と、該計量用サーボモータ20に一端が連結されたスクリュー21と、スクリュー21を収納するシリンダ22と、シリンダ22の先端部に備えられた射出ノズル23と、シリンダ22内に原料樹脂を供給するホッパ24とから主に構成されている。ボールネジ機構18は、射出用電動サーボモータ13のモータ回転子に直結され、この射出用電動サーボモータ13によって回転駆動されるネジ軸25と、該ネジ軸25に螺合され、一端が直動体17に固定されたナット体26とからなる。
【0012】
この射出装置1は、図示しない制御装置からの指令により計量用サーボモータ20を起動すると、モータ回転子と一体にスクリュー21が回転駆動され、それに伴ってホッパ24からシリンダ22内に原料樹脂が供給される。シリンダ22内に供給された原料樹脂は、スクリュー21の回転に伴う剪断力及びシリンダ22の外周に設けられた図示しないバンドヒータから与えられる熱によって可塑化及び混練され、シリンダ22の先端側に順次移送される。そして、シリンダ22の先端側に移送される樹脂の量が増加するにしたがって、スクリュー21に作用する背圧が大きくなるので、この背圧を適宜のセンサで検出することにより、可塑化及び混練された樹脂の計量を行うことができる。図示しない制御装置は、可塑化及び混練された樹脂が所定量に達したと判定したとき、駆動指令信号を出力して、射出用電動サーボモータ13を起動する。これにより、モータ回転子と一体にボールネジ機構18のネジ軸25が回転駆動し、ネジ軸25に螺合されたナット体26、及びナット体26に固定された直動体17が前進して、射出ノズル23が固定側金型38に押し付けられ、射出ノズル23から可塑化及び混練された樹脂が金型内に射出される。
【0013】
型締装置2は、図1に示すように、ベースフレーム7上に所定の間隔を隔てて対向に固定された固定ダイプレート31及びテールストック32と、両端がこれら固定ダイプレート31及びテールストック32に固定された4本のタイバー33と、タイバー33に案内されて固定ダイプレート31とテールストック32との間で前後進する可動ダイプレート34と、テールストック32と可動ダイプレート34とを連結するトグルリンク機構35と、テールストック32に搭載された型締用電動サーボモータ36と、型締用電動サーボモータ36の回転運動を直進運動に変換してトグルリンク機構35に伝達するボールネジ機構37とを備えている。固定ダイプレート31には、固定側金型38が搭載され、可動ダイプレート34には、可動側金型39が搭載される。
【0014】
固定ダイプレート31は、図2及び図3に示すように、球面軸受50を介して、ベースフレーム7上に支持される。球面軸受50は、固定ダイプレート31の重心Gを通り、固定ダイプレート31の下面に対して垂直に交わる直線Z上又はその近傍に1つのみ配置される。なお、「その近傍」とは、球面軸受50を直線Z上に配置した場合と実質的に同一の効果が得られる範囲を意味し、例えば設計上許容される公差の範囲をいう。したがって、固定ダイプレート31は、この直線Zを回転中心とするz方向、球面軸受50の設定位置を通り、タイバー33と平行な直線Xを回転中心とするx方向、及び球面軸受50の設定位置を通り、直線Zと直線Xとに直交する直線Yを回転中心とするy方向に回転することができる。
【0015】
タイバー33は、その一端が、図2及び図3に示すように、固定ダイプレート31の四隅部に開設されたタイバー貫通孔33aに貫通され、ボルト33bにて固定ダイプレート31に固定される。このタイバー33の配設位置は、固定ダイプレート31の重心Gを中心とする円周を等分する位置になっている。4本のタイバー33をこのように配列すると、型締力が固定ダイプレート31に等分に作用するので、高精度の成形品を成形しやすくなる。但し、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、固定ダイプレート31の形状によっては、重心Gを中心とする円周を等分する位置から各タイバー33の配設位置をずらすことも可能である。
【0016】
トグルリンク機構35は、図1に示すように、一端側がテールストック32に回動可能にピン結合されたBリンク41と、一端側が可動ダイプレート34に回動可能にピン結合されると共に、他端側がBリンク41の他端側と相対的に回動するようにピン結合されたAリンク42と、ボールネジ機構37を介して型締用電動サーボモータ36の駆動力を受けるクロスヘッド43と、一端がクロスヘッド43に回動可能にピン結合されると共に、他端側がBリンク41の中間部と相対的に回動するようにピン結合されたCリンク44とからなる。なお、本例のトグルリンク機構35は、Aリンク42とBリンク41とCリンク44とを有する5点軸支構造のリンク機構となっているが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、他の形式のトグルリンク機構を備えることも勿論可能である。
【0017】
この型締装置2は、型締用電動サーボモータ36を駆動し、ボールネジ機構37を介してクロスヘッド43を固定ダイプレート31側に前進させると、図1に示すようにAリンク42とBリンク41とが一直線状に延びて可動ダイプレート34が固定ダイプレート31側に前進し、固定側金型38と可動側金型39とが型締めされる。これにより、固定側金型38と可動側金型39との間に所要の金型キャビティ40が形成されるので、射出装置1による金型キャビティ40内への成形材料の射出が可能になる。また、この状態から、型締用電動サーボモータ36を駆動し、ボールネジ機構37を介してクロスヘッド43をテールストック32側に後退させると、Aリンク42とBリンク41とが折り畳まれて可動ダイプレート34がテールストック32側に後退し、固定側金型38と可動側金型39とが型開される。これにより、押出装置3を用いた成形品の取り出しが可能になる。
【0018】
本例の成形機は、1つの球面軸受50を介して固定ダイプレート31をベースフレーム7上に支持するので、従来のモーメントフリー型締機構(登録商標)を備えた成形機においては必須の構成要件であった支持脚を省略でき、かつ軸受の数を1つにできる。よって、成形機の構成の簡略化と低コスト化とを図ることができる。また、1つの球面軸受50を、固定ダイプレート31の重心Gを通り、固定ダイプレート31の下面に対して垂直に交わる直線Z上又はその近傍に配置するので、この直線Zを回転中心とするz方向、球面軸受50の設定位置を通り、タイバー33と平行な直線Xを回転中心とするx方向、及び球面軸受50の設定位置を通り、直線Zと直線Xとに直交する直線Yを回転中心とするy方向に回転することができる。よって、固定ダイプレート31に型締力が作用した場合、図4に示すように、これらの力が平衡に達する位置まで固定ダイプレート31の姿勢が自動的に調整されるので、固定ダイプレート31の上下方向の変形及び左右方向の変形がそれぞれ対称形になり、固定側金型38と可動側金型39との間に作用する型締力を均一化することができて、高品質の成形が可能になる。固定ダイプレート31に型締力及び射出ノズル23の押し付け力が作用した場合も同様である。
【0019】
なお、前記実施形態においては、射出用電動サーボモータ13がボールネジ機構18のネジ軸25に直結され、型締用電動サーボモータ36がボールネジ機構37のネジ軸に直結された直結式の成形機を例にとって説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、電動サーボモータとボールネジ機構とがベルトを介して連結されたベルト駆動式の成形機についても同様に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る射出成形機の構成図である。
【図2】実施形態に係る固定ダイプレートの支持構造を示す要部側面図である。
【図3】は実施形態に係る固定ダイプレートの支持構造を示す要部正面図である。
【図4】実施形態に係る射出成形機の効果を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 射出装置
2 型締装置
7 ベースフレーム
31 固定ダイプレート
32 テールストック
33 タイバー
34 可動ダイプレート
35 トグルリンク機構
36 型締用電動サーボモータ
37 ボールネジ機構
38 固定側金型
39 可動側金型
50 球面軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレーム上に所定の間隔を隔てて対向に配置された固定ダイプレート及びテールストックと、両端が前記固定ダイプレート及び前記テールストックに固定された複数本のタイバーと、該タイバーに案内されて前記ダイプレートと前記テールストックとの間で前後進する可動ダイプレートと、前記固定ダイプレートに取り付けられた固定側金型と、前記可動ダイプレートに取り付けられた可動側金型とを備えた成形機において、
前記固定ダイプレートの重心を通り、前記固定ダイプレートの下面に対して垂直に交わる直線上又はその近傍に1つの球面軸受を配置し、この1つの球面軸受を介して前記固定ダイプレートを前記ベースフレーム上に支持したことを特徴とする成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−64350(P2010−64350A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232530(P2008−232530)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】