説明

成形物の製造方法

【課題】
人間の皮膚に近い弾力性を備え、表面に微細な凹凸があるため、彩色を施すのに乗りが良く、彩色された塗料が剥げ難く、有機質的な暖かみを備え、人間の顔に近いマスク等の成形物を製造することができる成形物の製造方法を提供する
【解決手段】
成形物の製造方法は、合成樹脂板6の表面6aに発泡インキ20を印刷する印刷工程Aと、合成樹脂板6及び発泡インキ20を加熱して、合成樹脂板6を軟らかくすると共に発泡インキ20を発泡させる加熱工程Bと、軟らかくした合成樹脂板6の裏面6bに成形型1を当接し、合成樹脂板6を成形型1に真空吸着させることによって、合成樹脂板6を接触した成形型1の形状通りに変形させる成形工程Cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人間の皮膚に近い感触を有する皮膜を付着させた成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間等の一部、例えば顔を模した面玩具を製造する製造方法として、ブリスター成形による成形物の製造方法が知られている。ブリスター成形とは、加熱して柔らかくした合成樹脂シートを加圧若しくは真空方式により成形型となる立体物の表面に密着させ、所定の形状に変形させた合成樹脂シートを冷却して取外し、所定の成形物を得る方法である。そして、従来の面玩具は、成形が完了した成形物の表面に所定の塗料によって彩色を施すことにより作成されるようになっている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】実開昭59−24726号公報
【特許文献2】登録実用新案公報第3066953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記面玩具の場合は、顔の形状に成型した立体物の表面に後から塗料を塗るという工程のため、塗料を塗るという工程を一つ一つ行う手作業で行う必要があった。また、上記した製造方法により製造した成形物である面玩具は、表面が合成樹脂シートそのものであるため、硬質で弾力性がなく、人間の皮膚と全く異なる感触を有するものであった。
さらに、面の用途として、メイキャップ(化粧)の練習台として、ファンデーション、口紅等といった化粧料を付着させる用途がある。この場合、化粧料を付着させる面の表面が樹脂表面そのものであったり、下地として塗布した一般的な塗膜であると、人間の皮膚とは異なって化粧料が付着しにくかったり、化粧時の感触が人間とは異なるために化粧練習用の面としては不向きなものであった。
【0004】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、弾力性のある表面層を有した面の製造方法であって、しかも従来の面玩具の製造方法とも比較して製造工程を簡素なものとした製造方法を提供することを目的とするものである。また、上記目的に加え、人間の皮膚に近い弾力性を備え、表面に微細な凹凸があるため、化粧等を行う際の化粧料の乗りが良い人間の顔に近いマスク等の成形物を製造することができる成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に係る成形物の製造方法は、上記目的を達成するため、合成樹脂板の表面に発泡インキを印刷する印刷工程と、合成樹脂板及び発泡インキを加熱して、合成樹脂板を軟らかくすると共に発泡インキを発泡させる加熱工程と、軟らかくした合成樹脂板の裏面に成形型を当接し、合成樹脂板を成形型に真空吸着させることによって、合成樹脂板を接触した成形型の形状通りに変形させる成形工程とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本願発明に係る成形物の製造方法は、印刷工程で、合成樹脂板の表面に発泡インキを印刷し、加熱工程で、合成樹脂板及び発泡インキを加熱して、合成樹脂板を軟らかくすると共に発泡インキを発泡させ、成形工程で、軟らかくした合成樹脂板の裏面に成形型を当接し、合成樹脂板を成形型に真空吸着させることによって、合成樹脂板を接触した成形型の形状通りに変形させ、成形物を製造することができる。当該方法では、被成型物となる合成樹脂板を加熱変形させる前に発泡インキを用いて当該発泡インキによる層を形成するも
のであるため、当該工程を所定の印刷機を使用して連続かつ自動的に行うことができる。すなわち、従来合成樹脂板の加熱変形後に手作業で行っていた作業を、自動化することができるという効果を有している。
【0007】
また、本願発明に係る成形物の製造方法は、一度の加熱工程で、合成樹脂板を軟らかくする処理と、発泡インキを発泡させる処理を行うことができるので、極めて効率的であるという効果がある。さらに、本願発明に係る成形物の製造方法は、成形工程で、発泡インキが印刷されていない合成樹脂板の裏面を成形型に真空吸着させるので、発泡インキの発泡により形成された皮膜が圧潰されることがなく、十分に発泡した皮膜の弾力性を保持することができるという効果がある。
【0008】
本願発明に係る成形物の製造方法は、人間の皮膚に近い弾力性を備え、表面に微細な凹凸があるため、化粧料等の乗りが良く、人間の顔に近い暖かみを備えたマスク等の成形物を製造することができるという効果がある。又、本願発明に係る成形物の製造方法により製造された成形物は、合成樹脂板の単純成形と異なり、表面に発泡インキの発泡により形成された皮膜が付着しており、当該被膜の表面上に出来た微細な凹凸部分に、水分等を噴霧して保湿状態にすることにより、より人間の化粧等がし易い状態を作り出すことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明に係る成形物の製造方法の一つの実施の形態を図1乃至図22に基づいて説明する。図1は、合成樹脂板の斜視図である。図2は、表面に発泡インキを印刷した合成樹脂板の斜視図である。図3は、第1の加熱工程により発泡インキを一次発泡させた合成樹脂板の斜視図である。図4は、第2の加熱工程により加熱した合成樹脂板の裏面を成形型に接触させる工程を示す斜視図である。図5は、第2の加熱工程により加熱した合成樹脂板の裏面を成形型に真空吸着させている工程を示す斜視図である。図6は、成形物から成形型を引き離している工程を示す斜視図である。図7は、図1のa−a断面図である。図8は、図2のb−b断面図である。図9は、図3のc−c断面図である。図10は、図4のd−d断面図である。図11は、図5のe−e断面図である。図12は、図6のf−f断面図である。
【0010】
図13は、成形型の外観斜視図である。図14は、成形型の要部断面図である。図15は、成形型および真空成形装置の要部断面図である。図16は、成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。図17は、成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。図18は、成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。図19は、成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。図20は、図17に対応した成形型および真空成形装置の要部断面図である。図21は、図18に対応した成形型および真空成形装置の要部断面図である。図22は、図19に対応した成形型および真空成形装置の要部断面図である。
【0011】
成形物の製造方法は、合成樹脂板6の表面6aに発泡インキ20を印刷する印刷工程Aと、合成樹脂板6及び発泡インキ20を加熱して、合成樹脂板6を軟らかくすると共に発泡インキ20を発泡させる加熱工程(第2の加熱工程)Bと、軟らかくした合成樹脂板6の裏面6bに成形型1を当接し、合成樹脂板6を成形型1に真空吸着させることによって、合成樹脂板6を接触した成形型1の形状通りに変形させる成形工程Cとを有する。
【0012】
図1,7に示すように、合成樹脂板6は、ポリスチレン、ポリプロピレンを主成分とした、厚さ約0.5mm程度の薄い合成樹脂シートである。図2,8に示すように、印刷工程Aにおいて、合成樹脂板6の表面6aに発泡インキ20を印刷する。発泡インキ20は、インキに発泡剤を混入して形成される。インキは、プラスチゾルインキ、水性インキ、
有機溶剤型インキ等がある。発泡剤には、アゾビスイソブチロニトリルのように加熱によって分解しガスを発生する発泡剤と、揮発性液体を熱可塑性樹脂中に封入した微小球体が熱によって破れて発泡するような発泡剤とがある。印刷は、発泡によって凹凸効果を出すためインキ層が厚い方が有利なので、グラビア印刷、スクリーン印刷などによって行われる。なお、印刷は、インクジェット方式その他のプリンターによって行われても構わない。印刷層の厚みは、約0.1mm程度であるが、この厚みは、適宜変更しても構わない。
【0013】
図4,10に示すように、加熱工程(第2の加熱工程)Bにおいて、合成樹脂板6及び発泡インキ20を加熱して、合成樹脂板6を軟らかくすると共に発泡インキ20を発泡(二次発泡)させる。即ち、加熱ユニット14によって、合成樹脂板6及び発泡インキ20を130°Cで約3分加熱すると、合成樹脂板6が軟らかくなり、発泡インキ20が発泡(二次発泡)する。発泡インキ20は、上記加熱により発泡(二次発泡)して、合成樹脂板6の表面6aに約0.4mm程度の厚みを有する皮膜22が設けられた状態となる。
【0014】
図5,11に示すように、成形工程Cにおいて、軟らかくした合成樹脂板6の裏面6bに成形型1を当接し、合成樹脂板6を成形型1に真空吸着させることによって、合成樹脂板6を接触した成形型1の形状通りに変形させ、成形物21を成形する。図6,12に示すように、取り出し工程Dにおいて、合成樹脂板6を冷却後、成形型1から合成樹脂板6を取り外すと、表面6aに弾力性を備えた皮膜22を備えた成形物21を得ることができる。
【0015】
本願発明に係る成形物の製造方法の実施の形態をさらに詳細に説明する。図13に示すように、本願発明に係る成形物の製造方法に使用される成形型1は、人の顔を象った形状に形成されたものである。当該成形型1は、お面を成形する真空成形用の成形型であって、主として成形物であるお面の型部分となる成形部2と、当該成形部2の外周縁(成形部の下端外周部)から突出した板状の縁部3を有した装着部4とから構成されている。前記成形部2と縁部3を有した装着部4は、後述するABS樹脂による造形方法によって一体的な構造物として成形されている。
【0016】
図14に示すように、成形部2は、溶融させた線径の細いABS樹脂を空気の通過が可能となるように微細な隙間を形成しながら積層させた多孔質の造形体として形成されたものである。
当該多孔質の造形体は、溶融させたABS樹脂を小径のノズル孔より押し、当該押し出された糸状のABS樹脂を予めプログラムされた領域上に押し出しながら積層させ、ABS樹脂の硬化とともに立体的な形状を成すように造形されたものである。なお、本実施の形態においては、直径0.3mmのノズル径を有する射出機を用いて、0.254mm単位でABS樹脂を積層させ立体造形物を形成するようになっている。また、ABS樹脂の積層は、各積層段階において糸状のABS樹脂を輪郭に沿って3周させ、当該輪郭の内部に5mm間隔のハニカム構造の隔壁16が形成されるように順次積層を繰り返すようになっている。当該ハニカム構造となるような隔壁によって、造形物の内部に小空間15が形成されるようになっている。なお、小空間15の形状は、強度を高める観点から6角柱状であることが好ましいが、必ずしも当該形状に限られるわけではない。
【0017】
また、造形の際、ABS樹脂を積層させるべき位置の下部分が空間である場合(下支えが無い場合)には、サポートと称する別素材の樹脂を積層させた上にABS樹脂を積層させ、造形完了後に水や溶剤等でサポートを溶かして除去するようになっている。当該手法により、下面には前記小空間15のような空間を有しているものの表面には大きな孔がない外殻部を形成した造形物を得る事が出来るようになっている。
また、成形部2の前記小空間15上に位置する表面側部分には数mm〜数cm程度の肉厚の外殻部となっている。当該外殻部は、前述のように糸状のABS樹脂を内部に大きな
空間を形成せずに格子状に積層して形成した造形部分である。当該造形部分は、内部に視覚では判別できない程度の空気の流通が可能な程度の隙間を有しているが、圧縮方向の応力には比較的強く、押圧による変形や破壊が発生しにくい構造となっている。
【0018】
また、前記外殻部は、前述のように糸状のABS樹脂を比較的高密度で格子状に並べて造形した部分であり、糸状のABS樹脂の配列間隔を粗・密に調整することで、視覚では判別することが出来ない程度の僅かな隙間を形成した状態で造形物を得ることが出来る。このように隙間を設けた状態で造形することにより、表裏において空気の流通が可能な外殻部を形成することが出来るようになっている。
なお、前記押圧に対する強度を失わない程度に、前記隔壁16によって仕切られた小空間15を形成することにより、空気の流通の際に生じる抵抗を低減させるようになっている。また、構造的に小空間を形成することができない部分については、隣り合う糸状のABS樹脂の間隔を粗あるいは密に調整することにより、強度を損なうことなく造形物の内部に空気の流通が可能な隙間を形成した多孔質状の造形物を得るようになっている。
【0019】
成形部2は、耳よりも前部分の人間の顔(前髪、額、目、鼻、口、顎)の形状を立体的に模した形状となっている。本実施の形態では、モデルとなる実際の人間の顔にレーザー光を照射して座標を取得する3次元スキャナによって顔の表面形状の座標データを取得し、当該座標データを利用して造形の際のABS樹脂射出ノズルの位置を制御し、自動的に顔の形状の立体造形物を得るようになっている。なお、当該3次元スキャナ装置、当該3次元スキャナ装置で取得したデータの修正および造形データへの変換、造形装置の構造等については説明を省略する。
【0020】
図14に示すように、顔面を象った成形型1の正中線位置における断面図を表している。A矢視図は、成形型1の底面を部分的に表している。
同図に示すように、成形型1は前述した主として耳よりも前部分の顔の形状を象った成形部2と、当該成形部2の下端から周囲にフランジ状に設けられた板状の縁部3が設けられたものである。また、当該縁部3を周囲に形成した成形部2の裏面部分は、平坦面になっており、縁部3の裏面を含む成形部2の裏面部分が、真空成形装置Pに対する装着部4となっている。なお、真空成形装置Pに対する装着面となる装着部4の底面は、必ずしも平坦面である必要はなく、成形型1を真空成形装置に対して位置精度よく確実に固定できる形状であればよい。周囲に延出した縁部3は、真空成形装置Pに備えられた固定手段(図示せず)と係合する被係合部であり、真空成形装置に対する位置決めおよび固定のための被係合部として使用されるようになっている。縁部3の外形形状は矩形を成しており、当該外形形状を基準として成形部2の位置が定められている。すなわち、縁部3の外形の位置を規定することにより、成形部2の位置が定められるようになっている。
また、本実施の形態では、成形部2と当該縁部3は別個に形成したものではなく、前述した造形手法によって連続的に一体形成したものである。すなわち、成形部2と装着部4の間に継ぎ目や接合面はなく、内部に隙間を形成した状態でABS樹脂によって一体的に形成された造形物として形成されたものである。
【0021】
上記説明の通り、成形型1は内部に空気の流通を可能とする微細な隙間を形成した多孔質の造形体として形成されており、表面部分が人間の前髪、額、目、鼻、口、顎の形状を表した成形面5であり、縁部3を含む成形部2の裏面部分が真空成形装置Pに対する装着部4となっているものである。当該成形型1を用いたお面の成形行程を説明する。
【0022】
図20は、成形型1、真空成形装置P、成形後に面となる合成樹脂シート6等の要部を断面として表した説明図である。
真空成形装置Pは、前記成形型1を載置する装着台7を有している。当該装着台7は多数の小孔8が穿設された鉄板であり、当該装着台7の表面が成形型1の装着部4と接する
接触面となっている。装着台7の裏面には真空室9が設けられており、継ぎ手10を介して空気を抜くことにより内部空間の圧力を大気圧より負圧として、前記小孔8を介して空気を吸い込むようになっている。なお、空気を抜くためのポンプや制御装置等の図示しての説明は省略する。
装着台7は矩形形状に形成されており、当該装着台7および真空室9を構成する部分は、成形型1を載置した状態で電動モータ若しくは空圧機器により上下動するようになってする。上下動を行う機構の詳細な説明は省略する。
【0023】
装着台7の上方には、前記矩形形状の装着台7外形よりも若干大きい内径形状を有する一対の枠体(下枠11、上枠12)が設けられている。下枠11は固定されており、当該下枠11に対して上枠12が上下動することにより、下枠11と上枠12との間に前記合成樹脂シート6を挟んで保持したり、当該保持を解除するようになっている。
なお、前記装着台7は、成形時にはほぼ下枠11の上面(下枠11と上枠12の当接面)位置まで上昇し、成形終了とともに再び降下するようになっている。
また、前記上枠12のやや上方には、加熱用ヒーター13を下面に配置した加熱ユニット14が配置されている。当該加熱ユニット14は、略水平横方向に往復移動可能に設けられており、成形直前に合成樹脂シート6上に移動して枠体に狭持された合成樹脂シート6を加熱して軟化させ、成形時には上昇した装着台7と干渉しない位置まで移動するようになっている。
【0024】
次に、成形物となる合成樹脂シート6について説明する。当該合成樹脂シート6は、インキによる印刷ができるような表面加工された合成樹脂性のシートである。本実施の形態で使用する合成樹脂シート6は、最適な例として、日清紡績株式会社から「ピーチコート」の名称で提供されている、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレンからなるシートをベースとして表面に多孔質表層を形成した約0.5mmの肉厚を有する合成紙が用いられる。
【0025】
次に、図15乃至図22を用いて、成形型1を用いた面の形成順序について説明する。なお、真空成形装置Pは、当該真空成形装置Pを構成する装着台7や加熱ユニット14等の種々の構成要素を有しており、これら各構成要素を駆動するための空圧機器、モータ、ヒータドライバ回路その他の駆動手段およびこれら駆動手段を自動若しくは半自動制御によって駆動させる制御手段を有しているが、本実施の形態においては要部のみを説明するものとし、これらの説明は省略する。
【0026】
前記したように、最初の工程である印刷工程Aにより、合成樹脂シート6の表面6aに発泡インキ20を印刷する。次に、図15に示すように、真空成形装置Pの装着台7に成形型1を載置して固定した後に装着台7を降下させ、下枠11と上枠12の間に合成樹脂シート6を狭持しようとしている状態を表している。この際、加熱ユニット14は下枠11および上枠12を設けた位置から外れた位置にある。装着台7に対する成形型1の取り付けは、載置した後に成形型1の周囲に設けた縁部3をネジ等を使用した押さえ手段や粘着テープ等によって固定することにより行われる。合成樹脂シート6は、発泡インキ20が印刷された表面6aを上にして、人間によって下枠11と上枠12の間に差し入れられ、上枠12を降下させて下枠11と上枠12の間に狭持されるようになっている(図16)。
【0027】
図17に示すように、加熱工程(第2の加熱工程)Bにおいて、下枠11と上枠12の間に合成樹脂シート6を正確に狭持した後、加熱ユニット14を合成樹脂シート6上に移動させる。加熱ユニット14の下面には加熱用ヒーター13が配列されており、当該加熱用ヒーター13の発熱によって合成樹脂シート6及び発泡インキ20が加熱されるようになっている。当該加熱は、合成樹脂シート6が軟化して自重により中央部分がやや垂れ下
がるように変形する程度まで行われる。また、発泡インキ20が充分発泡(二次発泡)するまで行われる。
【0028】
図18に示すように、前記合成樹脂シート6の加熱の後、加熱ユニット14が移動して合成樹脂シート6の上部から外れた後、成形型1を載置した装着台7が、真空室9内の空気を排出しながら上昇する。真空室9内は負圧になると、装着台7に穿設した小孔を介して空気が吸い込まれるので、当該小孔上に載置された成形型1の底面に対しても空気の吸引が行われる。また、図21に示すように、成形型1の内部には空気の流通が可能な程度の微細な空隙が形成されているので、装着台7の小孔によって生ずる負圧は、成形型1の内部を介して成形型1の表層である成形面5の表面にも作用し、当該成形面5の表層全体が空気の吸引を行うよう作用する。
【0029】
前記成形面5の表層全体が空気の吸引を行いながら上昇し、加熱により軟化した合成樹脂シート6の裏面6bと接触すると、接触が行われた位置から順次連続的に合成樹脂シート6の裏面6bが成形面5に吸い付けられていく。すなわち、成形面5が上昇するにつれて成形面5表面の高い位置から順に合成樹脂シート6が吸い付けられて成形が行われ、窪んだ部分は高い位置が吸着された後に順次成形が行われる。
【0030】
成形面5に対する吸着行程が完了すると、図19,22に示すように、取り出し工程Dにおいて、合成樹脂シート6を冷却するためのエアパージが数秒間行われ、合成樹脂シート6が冷却されて硬化したところで装着台7が下降し、合成樹脂シート6の裏面6bから成形型1が引きはがされ、次いで上枠12が上昇して合成樹脂シート6の狭持を解除し、成形面5の表面形状が転写された合成樹脂シート6を取り出すことができる。以上説明した工程により、成形物21としてモデルとなる人間の顔そっくりのお面を形成することができるようになっている。
【0031】
成形が完了したお面(成形物21)は、縁部3に対応する部分等の不要な部分を有しているが、当該不要な部分は後に切り取られ、顔を象った部分のみがお面(成形物21)として利用される。お面(成形物21)の表面は、人間の皮膚に近い弾力性を備え、表面に微細な凹凸がある皮膜22によって覆われているため、恰も人の顔に触れているような感触があり、人間的な暖かみを備え、化粧料等の乗りが良いのでお化粧の練習に好適である。
【0032】
上記成形物の製造方法は、印刷工程Aで、合成樹脂板6の表面6aに発泡インキ20を印刷し、加熱工程(第2の加熱工程)Bで、合成樹脂板6及び発泡インキ20を加熱して、合成樹脂板6を軟らかくすると共に発泡インキ20を発泡させ、成形工程Cで、軟らかくした合成樹脂板6の裏面6bに成形型1を当接し、合成樹脂板6を成形型1に真空吸着させることによって、合成樹脂板6を接触した成形型1の形状通りに変形させ、成形物21を製造することができる。なお、印刷工程Aにおいて、多色印刷により、目、鼻、口等の顔の部分を印刷しておいても構わない
【0033】
上記成形物の製造方法は、一度の加熱工程(第2の加熱工程)Bで、合成樹脂板6を軟らかくする処理と、発泡インキ20を発泡させる処理を行うことができるので、極めて効率的である。また、成形物の製造方法は、成形工程Cで、発泡インキ20が印刷されていない合成樹脂板6の裏面6bを成形型1に真空吸着させるので、発泡インキ20の発泡により形成される皮膜22が圧潰されることがない。このように、上記成形物の製造方法は、人間の皮膚に近い弾力性を備え、表面に微細な凹凸があるため、化粧料等の乗りが良く人間の顔に近いマスク等の成形物21を製造することができる。
【0034】
上記成形物の製造方法は、印刷工程Aと、加熱工程(第2の加熱工程)Bと、成形工程
Cを有するが、図3、9に示すように、印刷工程Aと加熱工程(第2の加熱工程)Bとの間に、第1の加熱工程A1を入れても構わない。このようにすると、印刷工程Aで合成樹脂板6の表面6aに印刷した発泡インキ20を第1の加熱工程A1で加熱して、発泡インキ20を一次発泡させることができる。なお、この第1の加熱工程A1の加熱温度は、発泡インキ20を一次発泡させることが出来るが、合成樹脂板6を軟らかくしない程度の温度である。この第1の加熱工程A1により、発泡インキ20が一次発泡して、合成樹脂板6の表面6aに約0.2mm程度の厚みを有する皮膜が形成される。この第1の加熱工程A1の加熱は、加熱工程Bと同様に、加熱ユニット14によって行うことも可能である。
また、印刷工程Aと加熱工程(第2の加熱工程)Bとの間に、紫外線照射工程を入れても構わない。なお、発泡インキ20には、、紫外線硬化型インキを混入しておく。このようにすると、印刷工程Aで合成樹脂板6の表面6aに印刷した発泡インキ20に、紫外線照射工程で紫外線を照射すると、発泡インキ20を素早く乾燥させることができ、迅速に次の加熱工程Bに移行させることができる。
【0035】
以上、本願発明に係る成型物の製造方法は、上記した化粧練習用の面の製造に限られるわけではなく、表面に柔らかな層を設けた立体物を形成するものであれば、種々の用途に利用可能なものである。例えば、昆虫、動物、植物の花や葉、壁飾り等種々の立体物の製造に利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】合成樹脂板の斜視図である。
【図2】表面に発泡インキを印刷した合成樹脂板の斜視図である。
【図3】第1の加熱工程により発泡インキを一次発泡させた合成樹脂板の斜視図である。
【図4】第2の加熱工程により加熱した合成樹脂板の裏面を成形型に接触させる工程を示す斜視図である。
【図5】第2の加熱工程により加熱した合成樹脂板の裏面を成形型に真空吸着させている工程を示す斜視図である。
【図6】成形物から成形型を引き離している工程を示す斜視図である。
【図7】図1のa−a断面図である。
【図8】図2のb−b断面図である。
【図9】図3のc−c断面図である。
【図10】図4のd−d断面図である。
【図11】図5のe−e断面図である。
【図12】図6のf−f断面図である。
【図13】成形型の外観斜視図である。
【図14】成形型の要部断面図である。
【図15】成形型および真空成形装置の要部断面図である。
【図16】成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。
【図17】成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。
【図18】成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。
【図19】成形物(面)の形成手順を説明するための説明図である。
【図20】図17に対応した成形型および真空成形装置の要部断面図である。
【図21】図18に対応した成形型および真空成形装置の要部断面図である。
【図22】図19に対応した成形型および真空成形装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0037】
A 印刷工程
A1 第1の加熱工程
B 加熱工程(第2の加熱工程)
C 成形工程
D 取り出し工程
P 真空成形装置
1 成形型
2 成形部
3 縁部
4 装着部
5 成形面
6 合成樹脂シート(合成樹脂板)
7 装着台
8 小孔
9 真空室
10 継ぎ手
11 下枠
12 上枠
13 加熱ヒーター
14 加熱ユニット
15 小空間
16 隔壁
20 発泡インキ
21 成形物
22 皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂板の表面に発泡インキを印刷する印刷工程と、
合成樹脂板及び発泡インキを加熱して、合成樹脂板を軟らかくすると共に発泡インキを発泡させる加熱工程と、
軟らかくした合成樹脂板の裏面に成形型を当接し、合成樹脂板を成形型に真空吸着させることによって、合成樹脂板を接触した成形型の形状通りに変形させる成形工程と、
を有することを特徴とする成形物の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−335008(P2006−335008A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164790(P2005−164790)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(593191970)株式会社エムアイシー (5)
【Fターム(参考)】