説明

成形用ダイ

【課題】 貫通孔径の異なる中空成形体を製造できる成形用ダイの提供。
【解決手段】 成形用材料の流入孔14を有するピンプレート11と、流入孔14と連続した成形通路15を形成する筒状のブッシング部13と、成形通路15の延長方向に位置するダイ出口16と、ピンプレート11に垂設され、成形通路15内に配置された円錐状のピン12を有している。ピン12とブッシング部13の軸方向の位置関係を調整することで、貫通孔径の異なる中空成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機出口等に取り付けて使用する成形用ダイと、前記成形用ダイを用いて貫通孔を有する中空成形体を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載するエアバッグ装置に使用するガス発生剤は、各種形状のものがあり、例えば、特許文献1〜3に開示された貫通孔を有する円柱状のものが知られている。
【0003】
貫通孔を有する円柱状のガス発生剤の製造に際しては、押出機出口に図8で示すようなダイ(口金)50を取り付けて押出成形する方法が適用されている。
【0004】
図8で示すダイ50は、押出機出口に接続するためのピンプレート51と、ピンプレート51表面に垂設されたピン52と、肉厚筒状のブッシング53からなるものである。ピンプレート51は、原料の流入孔54を有している。ピン52は均一径の棒状のもので、ブッシング53により形成される原料の成形通路55内において軸方向に配置されている。成形通路55の延長方向には、ダイ出口56が設けられている。
【0005】
流入孔54から流入した原料は、成形通路55を通ってダイ出口56から押し出される過程で、ピン52の存在により、ピン52の外径と同程度の内径を有する貫通孔を有する紐状乃至棒状の状態で押し出される。そして、紐状乃至棒状の成形体を所望長さに切断して、ガス発生剤が得られる。
【特許文献1】特開昭62−83406号公報
【特許文献2】特開2002−31273号公報
【特許文献3】特開2000−94198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貫通孔を有するガス発生剤を製造する際、貫通孔の径を所望径に調整するためには、所望径のピンを有するダイを使用する必要があるため、複数のダイ又は複数の交換用のピンを用意しなければならない。また、貫通孔の径が小さなものを成形する場合(例えば、径が1.0mm程度)、ピン52も径が小さなものを使用する必要があるが、径の小さなピン54は、それ自体の製造が難しく、成形時に加えられる圧力により折れやすいという問題もある。
【0007】
本発明は、1つで、径の異なる貫通孔を有する中空成形体を得ることができ、耐久性も高い成形用ダイと、前記成形用ダイを用いて貫通孔を有する各種中空成形体を成形する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、課題の解決手段として、
中空成形体を成形するための成形用ダイであって、
前記成形用ダイが、成形用材料の流入孔を有するピンプレートと、前記流入孔と連続した成形通路を形成する筒状のブッシング部と、前記成形通路の延長方向に位置するダイ出口と、前記ピンプレートに垂設され、前記成形通路内に配置された円錐状のピンを有するものであり、
前記成形通路の内壁面と前記円錐状のピンの外表面との間には、長さ方向に連続した間隙が形成されており、
前記間隙の内、前記成形通路の長さ方向の特定位置部分と、それに正対する前記円錐状のピンの外表面との間に形成される間隙を基準環状間隙とするとき、前記基準環状間隙の幅を調整する手段を有している、成形用ダイを提供する。
【0009】
円錐状のピンは、円柱状のピンに比べて強度を大きくでき、耐久性を高めることができるため、成形時におけるピンの破損が生じ難くなる。
【0010】
また、基準環状間隙の幅を調整する手段により、前記基準環状間隙の幅を所望幅に調整することにより、即ち、前記基準環状間隙と一致する円錐状のピンの直径(以下「基準直径」という)を所望の大きさに調整することができる。よって、成形用材料が成形通路の内壁面と円錐状のピンの外表面との間の間隙を通って押し出されるとき、所望大きさの基準直径と一致する径の貫通孔を有する中空成形体が得られる。
【0011】
前記基準環状間隙の幅を調整する手段は、前記円錐状のピンを軸方向に可動自在にする手段、前記筒状のブッシング部を軸方向に可動自在にする手段又はそれらの2つの手段を組み合わせた手段を用いることができる。
【0012】
円錐状のピンの最大外径(Dmax)と半分の長さ位置の外径(Dmed)との比率(Dmed/Dmax)は、0.01〜1.00が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8である。Dmed/Dmaxの比率を前記範囲に設定することにより、ピンの耐久性が高められる。最大外径は、円錐状のピンの底面の直径である。
【0013】
本発明は、他の課題の解決手段として、請求項1〜3のいずれかに記載の成形用ダイを用いた中空成形体の成形方法であって、前記基準環状間隙の幅を調整することで、所望径の貫通孔を有する中空成形体を得る、中空成形体の成形方法を提供する。
【0014】
上記した成形用ダイを用い、前記基準環状間隙の幅を調整することで、所望径の貫通孔を有する中空成形体を得ることができる。
【0015】
本発明の成形方法を適用して得られる中空成形体は、貫通孔を有する棒状、紐状又は糸状の成形体にすることができ、用途に応じて、内径、外径、長さ等は適宜設定される。
【0016】
本発明の成形方法は、ガス発生剤の製造、食品加工、樹脂加工、中空糸の製造等に適用することができるが、特に、押出機出口と成形用ダイを接続して、貫通孔を有する円柱状のガス発生剤成形体を製造する方法として適している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の成形用ダイは、耐久性が高く、1つのダイのみで異なる貫通孔径を有する中空成形体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<成形用ダイ−1>
図1〜図4により、成形用ダイの一実施形態について説明する。図1〜図3は、いずれも成形用ダイの縦断面図であり、円錐状ピンの軸方向の位置が異なった状態を示している。図4は、図1〜図3の共通の幅方向の断面図(但し、ピン12のみが断面図、ブッシング部13は断面ではなく、端面13aが見えている状態)を示しており、ピンプレート11は略している。図1〜図4の成形用ダイ10は、押出機出口又は圧伸機に接続して、ガス発生剤の成形、食品加工、樹脂加工等に使用する形態に適している。
【0019】
成形用ダイ10は、成形用材料の流入孔14を有する円板状のピンプレート11と、肉厚筒状のブッシング部13を有している。
【0020】
ピンプレート11が有する流入孔14は、環状である。ピンプレート11は、流動性のある成形用材料の供給口、例えば、押出機出口又は圧伸機出口に対して、直接又はアダプタを介して接続固定されるものであり、その場合には、押出機出口又は圧伸機出口と流入孔14が連通される。
【0021】
筒状のブッシング部13の内側は、成形材料が通過する成形通路15となっており、成形通路15の延長方向にはダイ出口16が設けられている。
【0022】
ピンプレート11には、その中央部(環状の流入孔14内)から円錐状のピン12が垂設されており、ピン12は成形通路15内において軸方向に延ばされている。ピン12の底面の外径(Dmax)と、ピン12の半分の長さ位置の外径(Dmed)との比率(Dmed/Dmax)は約0.5である。
【0023】
ピン12の中心軸と成形通路15の中心軸は一致しているから、成形通路15の内壁面(ブッシング部13の内壁面)15aと円錐状のピン12の外表面との間には、長さ方向に連続した間隙が形成されている。
【0024】
前記間隙は、成形通路15中のピン12が占有していない空間部分であり、成形用材料が通過して、成形に関与する間隙(以下「成形用間隙」と称する)である。なお、ピンプレート11とブッシング部13の端面13aとの間の空間は、流入孔14から流入した成形用材料が通過するだけであり、成形に直接関与するものではない。
【0025】
成形用ダイ10は、ピン12及びブッシング部13のいずれか一方又は両方が軸方向に可動自在になるように設定されている。前記の可動自在にする手段は特に制限されず、例えば、図5及び図6に示す手段を適用できる。
【0026】
図5は、ブッシング部13の厚さを変更することで、ピン12とブッシング部13との相対位置を変える手段である。ピンプレート11は、押出機出口に取り付けた筒状アダプタ30の開口部近傍に固定されている。そして、所望厚みのブッシング部13は、中央部に開口32を有する環状保持具31と開口部周縁30aの間において、螺子33とナット34にて固定されている。
【0027】
ピン12とブッシング部13との相対位置を変える場合、螺子33とナット34を緩めてブッシング部13を外し、より厚い又はより薄いブッシング部と交換する方法を適用できる。また、ブッシング部13を薄いワッシャの組み合わせからなるものとして、ワッシャを増減する方法も適用できる。
【0028】
図6は、ピンプレート11の軸方向の位置を変更することで、ピン12とブッシング部13との相対位置を変える手段である。図示するとおり、押出機出口に取り付けた筒状アダプタ30の開口部は内向きのフランジ部30bを有しており、ピンプレート11は内向きのフランジ部30bの内壁面に配置されている。そして、ピンプレート11と内向きのフランジ部30bの内壁面の間にはワッシャ35が挟み込まれている。ブッシング部13は、中央部に開口32を有する環状保持具31と開口部周縁30aの間において、螺子33とナット34にて固定されている。
【0029】
ピン12とブッシング部13との相対位置を変える場合、ピンプレート11と内向きのフランジ部30bの内壁面の間に挟み込まれたワッシャ35の枚数を増減する方法を適用できる。
【0030】
ピン12とブッシング部13との相対位置を変えることにより、図1〜図3に示すとおり、成形用通路15の入口(ダイ出口16の反対側開口)部分における成形用通路内壁面15aとピン12の外表面との間に形成される基準環状間隙の幅(図1〜図4に示すw、w又はw)を変更することができ、w、w及びwに対応するピン12の直径(基準直径)D、D及びDを変更することができる。
【0031】
基準環状間隙の幅は、図4に示すとおり、ピン12をブッシング部端面13aと同一平面で切断したと考えた場合における、ピン12の外表面と成形用通路内壁面15aとの間隔である。図1〜図3における基準環状間隙の幅の大小関係は、w>w>wとなっており、それらに対応する基準環状間隙におけるピン12の基準直径(図4参照)の大小関係は、D>D>Dとなっている。
【0032】
<成形用ダイ−2>
図7により、成形用ダイの他の実施形態について説明する。図7は、成形用ダイ100の縦断面図である。図7の成形用ダイ100は、中空糸の成形に適している。
【0033】
成形用ダイ100の基本構造及び機能は、一部を除いて成形用ダイ10と同一であり、ピンプレート111、円錐状のピン112、肉厚筒状のブッシング部113、流入孔114、成形通路115、ダイ出口116を有している。
【0034】
ピン112の先端部112aは、図1〜図3のピン12のように尖った状態ではなく、平面が形成されている。ピン112の内部には、軸方向に貫通して、液体乃至は気体通路117が形成されている。液体乃至は気体通路117の先端部112a側の端部は開口しており、反対側の端部はピンプレート111の中央部に形成された厚さ方向への貫通孔111aに接続されている。
【0035】
図7に示す成形用ダイ100を用いて中空糸を成形するときは、流入孔114が紡糸溶液の流入孔となり、液体乃至は気体通路117が、凝固液(例えば、水)又は凝固気体(例えば、空気)の通路となる。
【0036】
<中空成形体の成形方法>
次に、図1〜図4に示す成形用ダイ10を周知の2軸混練押出機の出口に取り付け、長さ方向に貫通孔を有するガス発生剤成形体を成形する方法について説明する。なお、前記ガス発生剤成形体の製造において、本発明の成形用ダイ10以外の様々な製造条件については、公知のガス発生剤の製造方法(例えば、特開2001−342091号公報)の製造条件を適用できる。
【0037】
2軸混練押出機の原料投入口に、それぞれ所要量の燃料、酸化剤、バインダ、必要な添加剤からなるガス発生剤の成形材料及びイオン交換水を投入し、混練する。
【0038】
次に、2軸混練押出機中の混練物を、押出機出口を経て、成形用ダイ10から押し出す。このとき、中空成形体の貫通孔が所望の径になるように(例えば、図1〜図3のいずれか)、予め、成形用ダイ10のピン12とブッシング部13の軸方向位置を調節しておく。
【0039】
押出機出口から押し出された成形用材料は、流入孔14から流入した後、成形通路15を通って、ダイ出口16からストランド状に押し出される。この過程にて、例えば、ピン12とブッシング部13が図1に示す状態のときには、Dに相当する貫通孔(例えば、1〜10mm程度)を有するストランドが押し出されることになる。
【0040】
次に、押し出されたストランドを所望長さに裁断して、単孔円柱状のガス発生剤を得る。その後、乾燥し、篩い分して最終製品としてのガス発生剤成形体を得ることができる。
【0041】
本発明の成形方法では、成形用ダイ10におけるピン12とブッシング部13の軸方向の相対位置を調整することにより、得られるガス発生剤の貫通孔の大きさを調整することができるため、1つの成形用ダイ10のみで、貫通孔径の異なるガス発生剤を製造することができる。
【0042】
本発明の成形方法では、成形用ダイ10のピン12が円錐状であるため、図8で示すような従来の成形用ダイ50のピン52と比べると耐久性が高く、成形時の圧力を受けた場合でも、ピンが折れたりし難い。ピンが折れた場合には、そのときの衝撃により、ガス発生剤が着火する危険性が考えられるが、成形用ダイ10を用いた場合には、そのような危険性が無くなる。
【0043】
本発明の成形方法では、成形用ダイ10のピン12が円錐状であるため、図8で示すような従来の成形用ダイ50のピン52と比べると、成形材料がピン12と接触する場合に発生する摩擦力と、成形材料がブッシング部13と接触する場合に発生する摩擦力との差が小さくなるため、得られたガス発生剤成形体の表面が滑らかになる。
【実施例】
【0044】
2軸混練押出機の押出出口(外径14.0mm)に、図1に示す状態になるように成形用ダイ10を取り付けた。
【0045】
2軸混練押出機の原料投入口から、ニトログアニジン36.8重量%、塩基性硝酸銅44.0重量%、グアガム2.5重量%及びイオン交換水(電気伝導度1μS/cm)16.7重量%を投入し、混練した。混練は、温度80℃で、混練時間(滞留時間)2分間行った。
【0046】
その後、成形用ダイ10のダイ出口16から、ストランド状に押し出し、裁断して、単孔円柱状のガス発生剤(外径2.4mm、内径0.7mm、長さ4.0mm)を得た。
【0047】
次に、このガス発生剤を乾燥機内に入れ、30℃で保持して予備乾燥し、更に80℃で乾燥して、加熱減量を0.3重量%以下にした後、篩い分して最終製品を得た。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】成形用ダイの縦断面図。
【図2】図1の成形用ダイにおいて、ピンの位置を変更したものの縦断面図。
【図3】図1の成形用ダイにおいて、更にピンの位置を変更したものの縦断面図。
【図4】図1〜図3のいずれかの横断面図。
【図5】図1〜図3の成形用ダイの使用方法の説明図。
【図6】図1〜図3の成形用ダイの別形態の使用方法の説明図。
【図7】図1〜図3とは別形態の成形用ダイの縦断面図。
【図8】従来技術の成形用ダイの縦断面図。
【符号の説明】
【0049】
10 成形用ダイ
11 ピンプレート
12 ピン
13 ブッシング部
14 流入孔
15 成形通路
16 ダイ出口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空成形体を成形するための成形用ダイであって、
前記成形用ダイが、成形用材料の流入孔を有するピンプレートと、前記流入孔と連続した成形通路を形成する筒状のブッシング部と、前記成形通路の延長方向に位置するダイ出口と、前記ピンプレートに垂設され、前記成形通路内に配置された円錐状のピンを有するものであり、
前記成形通路の内壁面と前記円錐状のピンの外表面との間には、長さ方向に連続した間隙が形成されており、
前記間隙の内、前記成形通路の長さ方向の特定位置部分と、それに正対する前記円錐状のピンの外表面との間に形成される間隙を基準環状間隙とするとき、前記基準環状間隙の幅を調整する手段を有している、成形用ダイ。
【請求項2】
前記基準環状間隙の幅を調整する手段が、前記円錐状のピンを軸方向に可動自在にする手段及び前記筒状のブッシング部を軸方向に可動自在にする手段の少なくとも一方である、請求項1記載の成形用ダイ。
【請求項3】
前記ピンの最大外径(Dmax)と半分の長さ位置の外径(Dmed)との比率(Dmed/Dmax)が、0.01〜1.00である請求項1又は2記載の成形用ダイ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の成形用ダイを用いた中空成形体の成形方法であって、前記基準環状間隙の幅を調整することで、所望径の貫通孔を有する中空成形体を得る、中空成形体の成形方法。
【請求項5】
前記中空成形体が、貫通孔を有する棒状、紐状又は糸状の成形体である、請求項4記載の中空成形体の成形方法。
【請求項6】
前記中空成形体が、貫通孔を有する円柱状のガス発生剤成形体である、請求項4記載の中空成形体の成形方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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