説明

成形装置および成形方法

【課題】高精度に成形物を成形できる成形装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るレンズ成形装置100は、転写面1aを有するモールド1と、転写面2aを有するモールド2と、転写面1a上に供給され、転写面2aが押し当てられた樹脂材料を加熱して硬化させる加熱装置3a・3bと、支持装置4が樹脂材料に圧力を印加するように制御する圧力制御部6と、モールド1・2間に電圧を印加して電界を形成する直流電源7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置および成形方法に関し、特に、レンズ等の複雑な形状を有する成形物を高精度に成形可能な成形装置および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂材料からレンズ等の成形物を成形するために、所定の形状を転写するための転写面を有するモールドの当該転写面を樹脂材料に押し当て、樹脂材料を硬化させることにより、成形物を成形する圧縮成形技術が用いられている。上記樹脂材料としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性もしくは光硬化性の材料が用いられ、樹脂材料を加熱するか、あるいは樹脂材料に光を照射することにより、樹脂材料を硬化させる。
【0003】
このような圧縮成形技術は、例えば特許文献1および2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−099813号公報(1991年4月25日公開)
【特許文献2】特開平10−180786号公報(1998年7月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、微細な形状を有する製品には、更なる高精度化が望まれており、例えば、レンズ成形の分野では、光学系の高性能化にともなって、レンズ形状の高精度化がますます重要となっている。しかしながら、上記従来の成形技術では、成形物の形状誤差が大きいため、高精度化が難しいという問題がある。
【0006】
具体的には、特許文献1および2に開示されている圧縮成形技術では、樹脂材料に転写面を押し当てた後、樹脂材料の硬化が完了するまで、モールドの位置は固定される。しかしながら、樹脂材料は硬化に伴って収縮するため、モールドの転写面が樹脂材料に追従できず、成形物のサイズが転写面によって規定されるサイズよりも小さくなる。そのため、予め樹脂材料の硬化収縮を考慮して、転写面のサイズを成形物のサイズよりも大きくする必要がある。よって、成形物の形状が複雑な場合や、樹脂材料の硬化収縮率が大きい場合は、成形物の形状誤差が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高精度に成形物を成形できる成形装置および成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る成形装置は、誘電体材料に所定の形状を転写するための第1の転写面を有する第1のモールドと、前記誘電体材料に所定の形状を転写するための第2の転写面を有し、当該第2の転写面が前記第1の転写面と対向している第2のモールドと、前記第1の転写面上に供給され、前記第2の転写面が押し当てられた前記誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化手段とを備える成形装置であって、前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記誘電体材料に圧力を印加する圧力印加手段と、前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電界を形成する電界形成手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、第1のモールドの第1の転写面上に供給された材料に、第2のモ
ールドの第2の転写面が押し当てられた状態で、硬化手段が前記材料を硬化させることにより、成形物が成形される。ここで、硬化手段が材料を硬化させる間、材料は硬化収縮する。これに対し、材料が硬化されている間に、圧力印加手段によって材料に圧力が印加されるとともに、第1のモールドと第2のモールドとの間に電界が形成されるため、硬化が完了するまで、圧力および電界による静電引力によってモールドが材料に追従して、モールドと材料との接触状態が維持される。そのため、材料の硬化収縮に起因する成形物の形状誤差を大幅に低減することができる。
【0010】
したがって、高精度に成形物を成形できる成形装置を提供することができる。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る成形装置は、基板と、誘電体材料に所定の形状を転写するための転写面を有するモールドと、前記基板上に供給され、前記転写面が押し当てられた前記誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化手段とを備える成形装置であって、前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記誘電体材料に圧力を印加する圧力印加手段と、前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記モールドと前記基板との間に電界を形成する電界形成手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、基板上に供給された材料に、モールドの転写面が押し当てられた状態で、硬化手段が前記材料を硬化させることにより、成形物が成形される。ここで、硬化手段が材料を硬化させる間、材料は硬化収縮する。これに対し、材料が硬化されている間に、圧力印加手段によって材料に圧力が印加されるとともに、モールドと基板との間に電界が形成されるため、硬化が完了するまで、圧力および電界による静電引力によってモールドが材料に追従して、モールドと材料との接触状態が維持される。そのため、材料の硬化収縮に起因する成形物の形状誤差を大幅に低減することができる。
【0013】
したがって、高精度に成形物を成形できる成形装置を提供することができる。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係る成形方法は、誘電体材料に所定の形状を転写するための第1の転写面を有する第1のモールドの前記第1の転写面上に誘電体材料を供給する供給工程と、誘電体材料に所定の形状を転写するための第2の転写面を有する第2のモールドの前記第2の転写面を、供給された前記誘電体材料に押し当てた状態で、当該誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化工程とを有する成形方法であって、前記硬化工程の間、前記誘電体材料に圧力を印加するとともに、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電界を形成することを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、第1のモールドの第1の転写面上に供給された材料に、第2のモールドの第2の転写面が押し当てられた状態で、前記材料を硬化することにより、成形物が成形される。ここで、硬化工程では、材料が硬化収縮する。これに対し、硬化工程の間、材料に圧力が印加されるとともに、第1のモールドと第2のモールドとの間に電界が形成されるため、硬化が完了するまで、圧力および電界による静電引力によってモールドが材料に追従して、モールドと材料との接触状態が維持される。そのため、材料の硬化収縮に起因する成形物の形状誤差を大幅に低減することができる。
【0016】
したがって、高精度に成形物を成形できる成形方法を提供することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明に係る成形方法は、基板上に誘電体材料を供給する供給工程と、誘電体材料に所定の形状を転写するための転写面を有するモールドの前記転写面を、供給された前記誘電体材料に押し当てた状態で、当該誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化工程とを有する成形方法であって、前記硬化工程の間、前記誘電体材料に圧力を印加するとともに、前記基板と前記モールドとの間に電界を形成することを
特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、基板上に供給された材料に、モールドの転写面が押し当てられた状態で、前記材料を硬化することにより、成形物が成形される。ここで、硬化工程では、材料が硬化収縮する。これに対し、硬化工程の間、材料に圧力が印加されるとともに、モールドと基板との間に電界が形成されるため、硬化が完了するまで、圧力および電界による静電引力によってモールドが材料に追従して、モールドと材料との接触状態が維持される。そのため、材料の硬化収縮に起因する成形物の形状誤差を大幅に低減することができる。
【0019】
したがって、高精度に成形物を成形できる成形方法を提供することができる。
【0020】
本発明に係る成形装置では、前記電界形成手段は、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電圧を印加することにより、前記電界を形成してもよい。
【0021】
本発明に係る成形方法では、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電圧を印加することにより、前記電界を形成してもよい。
【0022】
本発明に係る成形装置では、前記電界形成手段は、前記モールドと前記基板との間に電圧を印加することにより、前記電界を形成してもよい。
【0023】
本発明に係る成形方法では、前記基板と前記モールドとの間に電圧を印加することにより、前記電界を形成してもよい。
【0024】
本発明に係る成形装置および成形方法では、前記成形物はレンズであることが好ましい。
【0025】
上記のように、本発明は、高精度に成形物を成形することができるので、複雑な形状を有するレンズの成形に特に好適である。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る成形装置は、誘電体材料に所定の形状を転写するための第1の転写面を有する第1のモールドと、前記誘電体材料に所定の形状を転写するための第2の転写面を有し、当該第2の転写面が前記第1の転写面と対向している第2のモールドと、前記第1の転写面上に供給され、前記第2の転写面が押し当てられた前記誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化手段とを備える成形装置であって、前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記誘電体材料に圧力を印加する圧力印加手段と、前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電界を形成する電界形成手段とを備える構成である。
【0027】
また、本発明に係る成形方法は、誘電体材料に所定の形状を転写するための第1の転写面を有する第1のモールドの前記第1の転写面上に誘電体材料を供給する供給工程と、誘電体材料に所定の形状を転写するための第2の転写面を有する第2のモールドの前記第2の転写面を、供給された前記誘電体材料に押し当てた状態で、当該誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化工程とを有する成形方法であって、前記硬化工程の間、前記誘電体材料に圧力を印加するとともに、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電界を形成する構成である。
【0028】
したがって、高精度に成形物を成形できる成形装置および成形方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレンズ成形装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すレンズ成形装置において、モールドの転写面上に樹脂材料を供給した状態を示す図である。
【図3】樹脂材料にモールドの転写面を押し当てた状態を示す図である。
【図4】モールド間に電界を形成して、圧力を印加しながら、樹脂材料を硬化させている状態を示す図である。
【図5】樹脂材料の硬化時の状態を示す模式図である。
【図6】硬化した樹脂材料からモールドの転写面を引き離した状態を示す図である。
【図7】樹脂材料に印加する圧力およびモールド間に印加する電圧と、成形物の形状誤差との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るレンズ成形装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明に係る成形装置の一例として、レンズを成形するレンズ成形装置について説明する。
【0031】
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態について図1〜図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0032】
(レンズ成形装置100の構成)
図1は、本実施形態に係るレンズ成形装置100の構成を示す図である。レンズ成形装置100は、樹脂材料からレンズを成形する装置であり、モールド1、モールド2、加熱装置3a・3b、支持装置4、ロードセル5、圧力制御部6、直流電源7、スイッチ8、絶縁プレート9a・9bおよび断熱プレート9cを備えている。
【0033】
モールド1は、特許請求の範囲に記載の第1のモールドに相当するものであり、加熱装置3a上に設けられている。また、モールド2は、特許請求の範囲に記載の第2のモールドに相当するものであり、支持装置4によってモールド1の上方に支持されている。
【0034】
モールド1は、樹脂材料に所定のレンズ形状を転写するための転写面1aを有しており、転写面1aの中心部には、凹部が形成されている。同様に、モールド2も、樹脂材料に所定のレンズ形状を転写するための転写面2aを有しており、転写面2aの中心部には、凹部が形成されている。また、転写面2aは転写面1aと対向している。
【0035】
加熱装置3a・3bは、特許請求の範囲に記載の硬化手段に相当するものであり、それぞれモールド1・2を加熱することにより、モールド1の転写面1a上に供給された樹脂材料を硬化させる。加熱の開始/終了は、シーケンスプログラム等によって制御してもよいし、手動で制御してもよい。
【0036】
ロードセル5は、支持装置4とモールド2との間に設けられている。ロードセル5は、自身にかかる荷重を検知して、当該荷重を電気信号に変換して出力する。ロードセル5からの電気信号は、圧力制御部6に入力される。
【0037】
支持装置4は、支持体4aおよび駆動軸4bを備えている。支持体4aはロードセル5に接合されており、駆動軸4bによって伸縮可能となっている。これにより、支持装置4は、モールド2を図中上下に移動させることができる。
【0038】
圧力制御部6は、ロードセル5からの電気信号に基づいて支持装置4の支持体4aの伸縮制御を行うものである。後述するように、圧力制御部6は、モールド1・2間に供給された樹脂材料が硬化される間に、当該樹脂材料に圧力が印加されるように、支持装置4を制御する。
【0039】
なお、圧力制御部6は、支持装置4に内蔵されていてもよい。また、支持装置4および圧力制御部6は、特許請求の範囲に記載の圧力印加手段を構成している。
【0040】
直流電源7は、特許請求の範囲に記載の電界形成手段に相当するものである。直流電源7の出力電圧は、例えば6KVであり、直流電源7は、スイッチ8を介してモールド2に接続されている。一方、モールド1はGNDに接続されている。さらに、モールド1と加熱装置3aとの間に、絶縁プレート9aが設けられ、モールド2と加熱装置3bとの間に、絶縁プレート9bが設けられている。
【0041】
断熱プレート9cは、加熱装置3bとロードセル5との間に配置されている。これにより、ロードセル5は、加熱装置3bの熱による影響を受けることがない。
【0042】
上記の構成により、スイッチ8をONさせると、モールド1とモールド2との間に電界を形成することができる。すなわち、モールド1・2は、電界を形成するための電極としても機能する。
【0043】
なお、電界を形成するために、モールド1に直流電源7を接続し、モールド2を接地してもよい。あるいは、モールド1・2を接地せずに、モールド1とモールド2との間に直流電圧をかけてもよい。あるいは、直流電源7の代わりに交流電源を用いて電界を形成してもよい。
【0044】
(レンズの成形工程)
続いて、レンズ成形装置100におけるレンズの成形工程について、図2〜図6を参照して説明する。
【0045】
まず、図2に示すように、ディスペンサ10を用いて、モールド1の転写面1a上に樹脂材料11を供給する(供給工程)。樹脂材料11は、特許請求の範囲に記載の誘電体材料に相当するものであり、本実施形態では、加熱されることにより硬化する熱硬化性樹脂であるとともに、電界を与えることにより分極が生じる誘電体である。
【0046】
続いて、図3に示すように、支持装置4がモールド2を下方に移動させて、モールド2の転写面2aを樹脂材料11に押し当てる。この状態で、加熱装置3a・3bによりモールド1・2および樹脂材料11を加熱することにより、樹脂材料11を硬化させる(硬化工程)。
【0047】
樹脂材料11が硬化している間、図4に示すように、樹脂材料11に圧力が印加される。具体的には、ロードセル5が検知する荷重に基づいて、圧力制御部6が、硬化途中の樹脂材料11にかかる圧力を算出し、当該圧力が所定の値になるように支持装置4を制御する。さらに、樹脂材料11が硬化している間、スイッチ8がONすることにより、モールド1とモールド2との間に電界が形成される。
【0048】
図5は、樹脂材料11の硬化時の状態を示す模式図である。同図に示すように、硬化収縮により、樹脂材料11は、モールド2と接触している部分がモールド2から離間するように変形する。これに対し、硬化時に樹脂材料11に圧力が印加されるとともに、モールド1とモールド2との間に電界が形成される。
【0049】
樹脂材料11は絶縁体であるため、誘電分極によって、樹脂材料11のモールド2と対向する部分(上側)は、負に帯電し、樹脂材料11のモールド1と対向する部分(下側)は、正に帯電する。一方、モールド2は負に帯電し、モールド1は正に帯電する。このため、図中上向きの矢印に示すように、樹脂材料11をモールド2に引き寄せる静電引力が発生する。
【0050】
よって、硬化が完了するまで、モールド2が樹脂材料11に追従して、モールド2と樹脂材料11との接触状態が維持される。したがって、樹脂材料11の硬化収縮に起因するレンズ形状の誤差を大幅に低減することができる。
【0051】
硬化が完了すると、図6に示すように、支持装置4がモールド2を上昇させ、転写面2aを樹脂材料11から引き離す。これにより、レンズ21が成形される。
【0052】
(効果の検証)
図7は、樹脂材料に印加する圧力およびモールド間に印加する電圧と、成形物の形状誤差との関係を示すグラフである。
【0053】
従来の成形装置では、樹脂材料を硬化させる間、2つのモールドの位置が固定されるので、樹脂材料の硬化収縮による成形物の形状誤差が大きく、発明者による実験では、従来の成形装置における成形物の形状誤差は、0.2186μmであった。一方、樹脂材料の硬化時に10Nの圧力を印加した場合、成形物の形状誤差は0.1058μmであった。さらに、本実施形態のように、樹脂材料の硬化時に10Nの圧力を印加するとともに、1.5KV、4.5KV、6.0KVの電圧を印加した場合における成形物の形状誤差は、それぞれ、0.0465μm、0.0464μm、0.0239μmであった。特に、印加電圧が6.0KVの場合では、圧力のみ印加する場合に比べ、転写精度を約5倍向上させることができ、さらに、圧力を印加しない構成に比べ、転写精度を約10倍向上させることができた。
【0054】
このように、硬化途中の樹脂材料へ圧力を印加するとともに、2つのモールド間に電界を形成することにより、成形物の形状誤差をさらに低減することができた。
【0055】
特に、硬化収縮率が大きい樹脂材料を用いる場合、従来の成形装置では成形物の形状誤差が非常に大きくなる。これに対し、本実施形態では、モールドが樹脂材料に追従するので、成形物の形状誤差を大幅に改善することができる。
【0056】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0057】
図14は、本実施形態に係るレンズ成形装置200の構成を示す図である。レンズ成形装置200は、樹脂材料からレンズを成形する装置であり、モールド2、加熱装置3a・3b、支持装置4、ロードセル5、圧力制御部6、直流電源7、スイッチ8および絶縁プレート9a・9b、断熱プレート9cおよび基板12を備えている。すなわち、レンズ成形装置200は、前記の実施形態1に係るレンズ成形装置100において、モールド1を基板12に置き換えた構成である。
【0058】
前記の実施形態1において説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記している。また、本実施形態における、レンズの成形工程は、前記の実施形態1におけるものと略同一である。
【0059】
このように、本発明は、2つのモールドによって成形物を成形する構成だけでなく、本実施形態のように、1つのモールドと1つの基板とを用いて成形物を成形する構成にも適用可能である。
【0060】
〔実施形態の総括〕
以上のように、本発明に係る成形装置および成形方法によって、成形物を高精度に成形することができる。
【0061】
また、検証実験では、樹脂材料に印加する圧力を10Nとしたが、圧力の具体的な数値は、用いられる樹脂材料の種類などによって適宜設定される。なお、成形物の形状が複雑な場合、樹脂材料の硬化収縮は均等ではないため、印加される圧力が、モールドを硬化収縮分だけ追従させる程度であっても、形状の精度はあまり向上しない。そのため、モールドの移動が樹脂材料の硬化収縮を上回り、モールドが樹脂材料を積極的に押圧する程度の圧力を印加することが望ましい。
【0062】
また、樹脂材料に印加する圧力は、樹脂材料が硬化する間、一定であってもよいし、変化してもよい。例えば、樹脂材料の硬化の進行に従って、印加する圧力を徐々に低下させてもよい。
【0063】
また、上述した各実施形態では、上側のモールドを介して樹脂材料に圧力を印加する構成であったが、圧力を印加する方向はこれに限定されない。例えば、図1に示す構成において、上側のモールド2の位置を変化させずに、下側のモールド1を押し上げることにより、樹脂材料に圧力を印加する構成であってもよい。同様に、図8に示す構成において、モールド2の位置を変化させずに、基板12を押し上げることにより、樹脂材料に圧力を印加する構成であってもよい。
【0064】
また、上述した各実施形態では、樹脂材料として熱硬化性樹脂を用いたが、これに限定されない。例えば、UVを照射されることにより硬化する光硬化性樹脂を用いてもよい。この場合、加熱装置の代わりに、UV照射装置が用いられる。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、レンズ成形装置およびレンズ成形方法だけでなく、レンズ以外のあらゆる成形物を成形するための成形装置および成形方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 モールド(第1のモールド)
1a 転写面(第1の転写面)
2 モールド(第2のモールド)
2a 転写面(第2の転写面)
3a 加熱装置(硬化手段)
3b 加熱装置(硬化手段)
4 支持装置(圧力印加手段)
4a 支持体
4b 駆動軸
5 ロードセル
6 圧力制御部(圧力印加手段)
7 直流電源(電界形成手段)
8 スイッチ
9a 絶縁プレート
9b 絶縁プレート
9c 断熱プレート
10 ディスペンサ
11 樹脂材料(誘電体材料)
12 基板
21 レンズ(成形物)
100 レンズ成形装置(成形装置)
200 レンズ成形装置(成形装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料に所定の形状を転写するための第1の転写面を有する第1のモールドと、
前記誘電体材料に所定の形状を転写するための第2の転写面を有し、当該第2の転写面が前記第1の転写面と対向している第2のモールドと、
前記第1の転写面上に供給され、前記第2の転写面が押し当てられた前記誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化手段とを備える成形装置であって、
前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記誘電体材料に圧力を印加する圧力印加手段と、
前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電界を形成する電界形成手段とを備えることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
基板と、
誘電体材料に所定の形状を転写するための転写面を有するモールドと、
前記基板上に供給され、前記転写面が押し当てられた前記誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化手段とを備える成形装置であって、
前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記誘電体材料に圧力を印加する圧力印加手段と、
前記硬化手段が前記誘電体材料を硬化させる間に、前記モールドと前記基板との間に電界を形成する電界形成手段とを備えることを特徴とする成形装置。
【請求項3】
前記電界形成手段は、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電圧を印加することにより、前記電界を形成することを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項4】
前記電界形成手段は、前記モールドと前記基板との間に電圧を印加することにより、前記電界を形成することを特徴とする請求項2に記載の成形装置。
【請求項5】
前記成形物はレンズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項6】
誘電体材料に所定の形状を転写するための第1の転写面を有する第1のモールドの前記第1の転写面上に誘電体材料を供給する供給工程と、
誘電体材料に所定の形状を転写するための第2の転写面を有する第2のモールドの前記第2の転写面を、供給された前記誘電体材料に押し当てた状態で、当該誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化工程とを有する成形方法であって、
前記硬化工程の間、前記誘電体材料に圧力を印加するとともに、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電界を形成することを特徴とする成形方法。
【請求項7】
基板上に誘電体材料を供給する供給工程と、
誘電体材料に所定の形状を転写するための転写面を有するモールドの前記転写面を、供給された前記誘電体材料に押し当てた状態で、当該誘電体材料を硬化させて成形物を成形する硬化工程とを有する成形方法であって、
前記硬化工程の間、前記誘電体材料に圧力を印加するとともに、前記基板と前記モールドとの間に電界を形成することを特徴とする成形方法。
【請求項8】
前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間に電圧を印加することにより、前記電界を形成することを特徴とする請求項6に記載の成形方法。
【請求項9】
前記基板と前記モールドとの間に電圧を印加することにより、前記電界を形成することを特徴とする請求項7に記載の成形方法。
【請求項10】
前記成形物はレンズであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−75379(P2013−75379A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215474(P2011−215474)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】