成形金型
【課題】凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有するような成形体であっても、簡単に脱型することのできる、優れた成形金型を提供する。
【解決手段】キャビティ型30とコア型31とベース台32とを備え、上記コア型31が、進退型33と、ガイド孔34と、傾斜面35、36と、上記傾斜面35、36に沿ってスライド自在に配置される傾斜型37、38とで構成され、型締め時には、上記キャビティ型30と進退型33と傾斜型37、38が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記傾斜型37、38が互いに後方に開いて、成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている。
【解決手段】キャビティ型30とコア型31とベース台32とを備え、上記コア型31が、進退型33と、ガイド孔34と、傾斜面35、36と、上記傾斜面35、36に沿ってスライド自在に配置される傾斜型37、38とで構成され、型締め時には、上記キャビティ型30と進退型33と傾斜型37、38が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記傾斜型37、38が互いに後方に開いて、成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成形体の多くが射出成形機によって製造されているが、金型の型締型開方向に対して垂直方向に突出する、いわゆるアンダーカット部を有するものは、そのままでは脱型できないため、分割型を組み合わせたり、型の一部を進退させたりすることによって、上記アンダーカット部を無理なく脱型する方法がいろいろと提案されている。
【0003】
例えば、図11(a)に示すように、上型1と下型2との組み合わせからなる金型において、その内側に、斜めに延びるスライドコア3を設け、図11(b)に示すように、型開き後に、下型2の下側に設けられたエジェクタプレート4を上昇させることによってスライドコア3を成形体5ごと斜め上方向に押し出し、成形体5をスライドコア3から外す方法が広く知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−231160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願出願人は、図12に示すように、容器本体6と蓋体7とのヒンジ連結部8において、蓋体7のヒンジ連結部8の左右端面に回転軸9、9′を一体成形し、これを容器本体6側の縦穴10、10′に嵌挿させることによって、金属製のヒンジピン(いわゆるギザピン)を不要としたコンパクト容器を考案し、すでに実用新案権を取得している(登録実用新案第2536726号公報参照)。
【0006】
このものは、容器本体6と蓋体7の組立工程を簡略化できる等の利点を有するが、上記蓋体7を射出成形によって一体的に得ようとすると、矢印で示すように、図において下向きに凹んだ形状(矢印P)と、左右方向に突出する突形状(矢印Q、Q′)とが、互いに接近した配置で設けられているため、例えば前記スライドコア3のような構造で対処しようとしても、スライドコア3の本数が多くなり、しかも、それぞれの配置がむずかしいという問題がある。また、エジェクタプレート昇降用のシリンダも装備しなければならず、金型が全体として非常に大がかりになって場所をとる上、組み付け作業が複雑となり、設備コストおよび生産コストの負担が増大することが判明した。なお、蓋体7を容器本体6に係合させるためのフック11も、その先端に突部を有するが、この突部は、フック11自身の可撓性によって型から容易に外れるため、脱型に問題はない。
【0007】
そこで、このような、凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有する成形体に対しても、簡単な構造で対応することのできる、優れた成形金型の提供が強く望まれているが、そのような成形金型は未だ実用化されていない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有するような成形体であっても、簡単に脱型することのできる、優れた成形金型の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型であって、上記成形体の主として上面を賦形するためのキャビティ型と、上記成形体の主として下面を賦形するためのコア型と、上記コア型の下方に配置されるベース台とを備え、上記コア型が、キャビティ型に向かって進退自在に設けられる進退型と、上記進退型を進退方向に貫通するガイド孔と、上記ガイド孔の内周面に、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された一対の傾斜面と、上記ガイド孔に挿通されその側面が上記傾斜面に沿ってスライド自在に配置される一対の傾斜型とで構成され、上記一対の傾斜型は、それぞれの下端部が、上記ベース台に、その取り付け面に沿って摺動しうる状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で上記成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっており、型締め時には、上記進退型がキャビティ型に向かって前進し、上記キャビティ型と進退型と上記一対の傾斜型の先端部が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型がキャビティ型から後退し、上記一対の傾斜型の上端部が上記ガイド孔から上方に突出するとともに側面がガイド孔の傾斜面に沿ってスライドすることにより、上記傾斜型が互いに後方に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている成形金型を第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっている成形金型を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明の成形金型は、それぞれの下端部が、ベース台に摺動自在な状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっている一対の傾斜型を、進退型に設けられたガイド孔内周面の、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された傾斜面に沿ってスライド自在に配置した構成になっている。そして、上記傾斜型をスライド自在に保持する進退型が、型締め時にキャビティ型に向かって前進して閉じ合わせられた状態で、上記傾斜型も互いに閉じて、全体として成形体賦形空間が形成され、逆に、型開き時に、進退型がキャビティ型から後退すると、成形体の上方が開放され、傾斜型が進退型のガイド孔から上方に突出するとともに互いに後方に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている。
【0012】
したがって、この構成によれば、互いに上に向かって広がる傾斜面に沿って、いわば側面視V字状に配置された一対の傾斜型が、進退型の進退動作に伴って互いに閉じたり開いたりするようになっているため、図11に示す従来品のように、スライドコアを昇降させるためのエジェクタプレートやシリンダを設ける必要がなく、部品数の少ない簡単な構成で、効率よくアンダーカット部の脱型を行うことができる。
【0013】
しかも、上記傾斜型のアンダーカット部賦形空間の配置を工夫することにより、この傾斜型が開く方向に対し垂直方向に突出する第2のアンダーカット部を、同時に賦形することができるため、より複雑な凹凸を有する成形体にも対応することができるという優れた効果を奏する。
【0014】
そして、本発明のなかでも、特に、上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっているものは、成形体の脱型を、よりスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態における成形体の形状を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A′断面図である。
【図3】上記実施の形態の成形金型の側面方向の要部断面図である。
【図4】上記成形金型の正面方向の要部断面図である。
【図5】(a)は上記成形金型の平面方向の要部説明図、(b)は図1に示す成形体の部分的な説明図である。
【図6】上記成形金型の動作説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の成形金型の側面方向の要部断面図である。
【図8】上記成形金型の正面方向の要部断面図である。
【図9】上記成形金型の動作説明図である。
【図10】上記成形金型の動作説明図である。
【図11】(a)、(b)はともに従来の成形金型の説明図である。
【図12】アンダーカット部を有する成形体が用いられたコンパクト容器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態である成形金型を用いて成形された成形体20を示している。この成形体20は、コンパクト容器の蓋体として用いられるもので、図12の蓋体7と同様、内側に凹部21を有するヒンジ連結部22と、その左右の端面から左右方向に突出する回転軸23とが、一体成形されている。そして、図1のA−A′断面図である図2に示すように、その内側面に、鏡取り付け用の凸条24が設けられている。
【0018】
図3は、上記成形体20の成形に用いる成形金型の要部断面を、側面方向から示したもので、この成形金型の平面形状を部分的に示す図5のB−B′断面に相当する。また、図4は、上記成形金型の要部断面を、正面方向から示したもので、図5のC−C′断面に相当する。
【0019】
これらの図において、30は、上記成形体20の、主として上面を賦形するためのキャビティ型であり、31は、上記成形体20の、主として下面を賦形するためのコア型である。また、上記コア型31の下方には、ベース台32が配置されている。ただし、図5において、キャビティ型30は図示しておらず、成形体20の上面を賦形するための凹部開口の輪郭のみ鎖線15で示している。
【0020】
上記コア型31は、キャビティ型30に向かって進退自在に設けられる進退型33と、上記進退型33を進退方向に貫通するガイド孔34と、上記ガイド孔34の内周面に、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された一対の傾斜面35、36と、上記ガイド孔34に挿通されその側面が上記傾斜面35、36に沿ってスライド自在に配置される一対の傾斜型37、38とで構成されている。
【0021】
上記進退型33は、コアエレメント39と、これを支受するガイドエレメント40とを組み合わせた構造になっており、ともに、耐摩耗性に優れた各種工具鋼(例えば炭素工具甲鋼、高速度鋼、合金工具鋼等)で形成されている。また、上記一対の傾斜型37、38も、これらと同様、耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されている。
【0022】
上記傾斜型37、38のうち、その上部が奥側(図3において左側)に配置される傾斜型37は、図4に示すように、正面からみると略T字状で、同じくその上部が手前側(図3において右側)に配置される傾斜型38は、正面からみると略L字状(図4において、傾斜型37を見せるために省略された傾斜型38の上部輪郭を、鎖線および影線で示す)で、左右方向に延びる互いの上端部が相対峙するようになっている。そして、上記傾斜型37、38の両対峙面37a、38aは、ともに垂直に形成されており、この両対峙面37a、38aに、この両面を閉じ合わせることにより、成形体20の下面の一部とアンダーカット部となるヒンジ連結部22等(図1参照)とを賦形するための空間が形成されるよう、凹凸が形成されている。
【0023】
すなわち、上記傾斜型37の対峙面37aには、図4に示すように、成形体20の下面の一部を賦形するための上方突出部40′と、ヒンジ連結部22の内側に形成される凹部21を賦形するための手前突出部41と、ヒンジ連結部22と回転軸23の内側半分を賦形するための凹部42とが形成されている。また、上記傾斜型38の対峙面38aには、図3において破線で示すように、ヒンジ連結部22と回転軸23の外側半分を賦形するための凹部43が形成されている。
【0024】
一方、上記傾斜型37、38のそれぞれの下端部は、左右方向(図3において紙面垂直方向)に略一直線状に並ぶ配置で、前記ベース台32に設けられた摺動用のガイドスペース51、52に、摺動自在な状態で係止されている。より詳しく説明すると、上記傾斜型37、38の下端部には、左右方向に突出する一対のガイドピン53、54がそれぞれ設けられており、このガイドピン53、54が、ベース台32に設けられたガイドスペース51、52の天井面51a、52aに係合している。そして傾斜型37、38の下端面が、ガイドスペース51、52の底面51b、52bに沿って摺動自在に当接している。
【0025】
なお、上記ベース台32は、ガイドスペース51、52を設けるために、上下2枚のベースプレート55、56を組み合わせた構造になっており、ガイドスペース51、52の底面51b、52bを構成する部分が、耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されている。
【0026】
上記ガイドスペース51、52のうち、その上部が手前側(図3において右側)に配置される傾斜型38の下端部を係止する方のガイドスペース51は、その底面51bが水平に延びており、傾斜型38が、ガイド孔34の傾斜面36に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型38の下端面が、水平方向に摺動するようになっている。
【0027】
また、上記ガイドスペース51、52のうち、その上部が奥側(図3において左側)に配置される傾斜型37の下端部を係止する方のガイドスペース52は、その底面52bが手前側に向かって30°の上り傾斜に形成されており、傾斜型37が、後述するように、ガイド孔34の傾斜面35に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型37の下端面が、30°の傾斜角を維持した姿勢のまま斜め方向に摺動するようになっている。
【0028】
上記成形金型を用い、例えばつぎのようにして、図1に示す成形体20を得ることができる。すなわち、まず、この成形金型を、射出成形機に取り付け、型締めすることにより、図3に示すように、キャビティ型30とコア型31とを、互いに閉じ合わせる。このとき、進退型33は、最も上昇した位置に位置決めされ、ガイド孔34内に挿通された傾斜型37、38は、ガイド孔34の傾斜面35、36によって、互いに相手に向かって押し付けられた状態となり、閉じ合わせられる。これにより、上記キャビティ型30と進退型33と傾斜型37、38とで、成形体20を賦形するための空間が形成される。
【0029】
そこで、上記成形体賦形用空間内に、所定の経路(図示せず)を経由して、樹脂材料を高圧で射出し、冷却することにより、目的とする成形体20を得ることができる。
【0030】
そして、型開きにより成形体20を取り出す際には、図6に示すように、上記進退型33がキャビティ型30側からベース台32側に下降するようになっている。この動作に伴い、進退型33のガイド孔34から、傾斜型37、38の上端部が上方に突出するとともに、両傾斜型37、38の側面が、上記ガイド孔34の傾斜面35、36に沿ってスライドし、太矢印で示すように、上記傾斜型37、38が互いに後方に開く。これにより、上記成形体20のアンダーカット部(ヒンジ連結部22+回転軸23+凹部21)が、型抜き可能な状態になり、成形体20を、成形金型から取り出すことができる。
【0031】
なお、上記傾斜型37が後方に開く際、傾斜型37は、その下端部が、ガイドスペース52の傾斜した底面52bに沿って摺動するため、その傾斜姿勢が後方に30°傾斜した姿勢を保った状態のまま後方に開くようになっている。このため、アンダーカット部の型抜きを、30°斜め下方向に、安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0032】
ちなみに、30°斜め下方向への型抜きを考慮して、成形体20のアンダーカット部の構成は、図5(b)に示すように、ヒンジ連結部22の内側の凹部21の下面21aが、31°の傾斜面となっており、回転軸23の周面の一部23aが、同じく31°で面取りされている。なお、鎖線25は、傾斜型37による賦形面と傾斜型38による賦形面の境界を示している。
【0033】
また、同様の趣旨から、図6に示すように、傾斜型37の上端面の、成形体20の凸条24を賦形するための凹条も、その一方の溝面が29°の傾斜面に形成されており、凸条24の片面が傾斜面に賦形されるようになっている。
【0034】
このように、上記成形金型によれば、互いに閉じた状態で成形体20のアンダーカット部を賦形するための空間を形成する一対の傾斜型37、38を、進退型33に形成されたガイド孔34内の傾斜面に沿ってスライド自在に配置し、型締め時には、上記進退型33が、キャビティ型30に向かって前進して閉じ合わせられた状態で、上記傾斜型37、38も互いに閉じて、全体として成形体賦形空間が形成され、逆に、型開き時には、進退型33がキャビティ型30から後退して、成形体20の上方が開放され、傾斜型37、38が進退型33のガイド孔34から上方に突出するとともに互いに後方に開いて、上記成形体20のアンダーカット部が型抜きできるようになっている。
【0035】
そして、上記構成によれば、ガイド孔34に形成された、互いに上に向かって広がる傾斜面35、36に沿って、いわば側面視V字状に配置された一対の傾斜型37、38が、進退型33の進退動作に伴って互いに閉じたり開いたりするようになっているため、図11の従来品のように、スライドコアを昇降させるためのエジェクタプレートやシリンダを設ける必要がなく、部品数の少ない簡単な構成で、効率よくアンダーカット部の脱型を行うことができる。
【0036】
しかも、上記の例のように、傾斜型37、38のアンダーカット部賦形空間の配置を工夫することにより、この傾斜型37、38との間で、第1のアンダーカット部である凹部21を賦形できるだけでなく、これと垂直方向に延びる、第2のアンダーカット部である回転軸23も、同時に賦形することができるため、より複雑な凹凸を有する成形体にも対応することができるという優れた効果を奏する。
【0037】
なお、本発明の成形金型において、アンダーカット部を賦形するための一対の傾斜型37、38への開閉動作は、進退型33側に設けられたガイド孔34の傾斜面35、36を利用するものであれば、どのような構成になっていても差し支えない。
【0038】
例えば、図7(成形金型を側面方向から見た要部断面図)および図8(成形金型を正面方向から見た要部断面図)に示すように、その上端部が手前側に配置される傾斜型38に、より複雑な形状を与えて、ガイド孔34の内周面の傾斜を利用して、傾斜型38が、段階的に後方に開くようにしてもよい。この成形金型は、手前側(図7において右側)の傾斜型38が、上端部の、傾斜型37に対峙する側とは反対側の面において、ガイド孔34の傾斜面36に沿ってスライドするだけでなく、傾斜型37に対峙する側の面も、順次ガイド孔34の内周面に沿ってスライドするようになっており、それによって、2段階で開動作が行われるようになっている。それ以外の基本的な構成は、図3〜図6に示す実施の形態と同様であり、同一部分に同一番号を付してその説明を省略する。
【0039】
この成形金型を、より詳しく説明すると、傾斜型37、38のうち、手前側の傾斜型38は、傾斜型37に対峙する側の面が、比較的長く垂直に下方まで延びており、型締め時には、この図に示すように、傾斜型37の垂直面61のうち、上部が傾斜型37の上部に当接し、下部が、ガイド孔34の内周面に形成された垂直面62に当接した状態で、キャビティ型30と進退型33と傾斜型37、38とで、成形体20を賦形するための空間が形成されるようになっている。なお、上記傾斜型38の垂直面61の下には、比較的短い距離の傾斜したスライド面63が形成されており、ガイド孔34の内周面側にも、その垂直面62の下に、上記スライド面63に沿う第2の傾斜面64が形成されている。
【0040】
そして、型開き時には、まず、図9に示すように、進退型33が少し下降した時点で、上記傾斜型37、38が、ガイド孔34の傾斜面35、36に沿ってスライドして、ガイド孔34から上方に突出した状態となり、傾斜型38が、太矢印で示すように、後方に少し開く。一方、傾斜型37は、その垂直面61がガイド孔34側の垂直面62に沿ってスライドするだけであり、直立姿勢を保っている。
【0041】
そして、図10に示すように、傾斜型38のスライド面63とガイド孔34側の第2の傾斜面64とが当接した状態から、さらに進退型33が下降することにより、太矢印で示すように、傾斜型37がさらに後方に開くとともに、傾斜型38が、後方に大きく開いて、アンダーカット部の脱型がスムーズに行われるようになっている。この成形金型も、前記の例と同様の効果を奏する。
【0042】
なお、本発明の成形金型は、上記2つの例のように、上下方向に型締め型開きを行うタイプに限らず、左右方向に型締め型開きを行うタイプのものであってもよい。その場合、進退型33は左右方向に進退してキャビティ型30と開閉するように設定され、傾斜型37、38等は、左右方向に延びる形状となるだけであり、その基本的な構成と効果に差異はない。
【0043】
また、本発明の成形金型は、上記2つの例のように、型抜きに支障のあるアンダーカット部が、複数個、異なる方向に突出している場合の成形に適用することが好適であるが、アンダーカット部が一個所のものであっても、もちろん、そのアンダーカット部の脱型を容易に行うことができ、好適である。
【0044】
そして、アンダーカット部の形状によっては、傾斜型37、38の少なくとも一方を、前記の例のように、傾斜姿勢を保ったまま斜め方向にスライドさせながら後方に開く必要があるが、その必要がない場合には、傾斜型37、38の下端部は、ベース台32側において、それぞれ水平に摺動させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
30 キャビティ型
31 コア型
32 ベース台
33 進退型
34 ガイド孔
35、36 傾斜面
37、38 傾斜型
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成形体の多くが射出成形機によって製造されているが、金型の型締型開方向に対して垂直方向に突出する、いわゆるアンダーカット部を有するものは、そのままでは脱型できないため、分割型を組み合わせたり、型の一部を進退させたりすることによって、上記アンダーカット部を無理なく脱型する方法がいろいろと提案されている。
【0003】
例えば、図11(a)に示すように、上型1と下型2との組み合わせからなる金型において、その内側に、斜めに延びるスライドコア3を設け、図11(b)に示すように、型開き後に、下型2の下側に設けられたエジェクタプレート4を上昇させることによってスライドコア3を成形体5ごと斜め上方向に押し出し、成形体5をスライドコア3から外す方法が広く知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−231160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願出願人は、図12に示すように、容器本体6と蓋体7とのヒンジ連結部8において、蓋体7のヒンジ連結部8の左右端面に回転軸9、9′を一体成形し、これを容器本体6側の縦穴10、10′に嵌挿させることによって、金属製のヒンジピン(いわゆるギザピン)を不要としたコンパクト容器を考案し、すでに実用新案権を取得している(登録実用新案第2536726号公報参照)。
【0006】
このものは、容器本体6と蓋体7の組立工程を簡略化できる等の利点を有するが、上記蓋体7を射出成形によって一体的に得ようとすると、矢印で示すように、図において下向きに凹んだ形状(矢印P)と、左右方向に突出する突形状(矢印Q、Q′)とが、互いに接近した配置で設けられているため、例えば前記スライドコア3のような構造で対処しようとしても、スライドコア3の本数が多くなり、しかも、それぞれの配置がむずかしいという問題がある。また、エジェクタプレート昇降用のシリンダも装備しなければならず、金型が全体として非常に大がかりになって場所をとる上、組み付け作業が複雑となり、設備コストおよび生産コストの負担が増大することが判明した。なお、蓋体7を容器本体6に係合させるためのフック11も、その先端に突部を有するが、この突部は、フック11自身の可撓性によって型から容易に外れるため、脱型に問題はない。
【0007】
そこで、このような、凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有する成形体に対しても、簡単な構造で対応することのできる、優れた成形金型の提供が強く望まれているが、そのような成形金型は未だ実用化されていない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有するような成形体であっても、簡単に脱型することのできる、優れた成形金型の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型であって、上記成形体の主として上面を賦形するためのキャビティ型と、上記成形体の主として下面を賦形するためのコア型と、上記コア型の下方に配置されるベース台とを備え、上記コア型が、キャビティ型に向かって進退自在に設けられる進退型と、上記進退型を進退方向に貫通するガイド孔と、上記ガイド孔の内周面に、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された一対の傾斜面と、上記ガイド孔に挿通されその側面が上記傾斜面に沿ってスライド自在に配置される一対の傾斜型とで構成され、上記一対の傾斜型は、それぞれの下端部が、上記ベース台に、その取り付け面に沿って摺動しうる状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で上記成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっており、型締め時には、上記進退型がキャビティ型に向かって前進し、上記キャビティ型と進退型と上記一対の傾斜型の先端部が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型がキャビティ型から後退し、上記一対の傾斜型の上端部が上記ガイド孔から上方に突出するとともに側面がガイド孔の傾斜面に沿ってスライドすることにより、上記傾斜型が互いに後方に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている成形金型を第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっている成形金型を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明の成形金型は、それぞれの下端部が、ベース台に摺動自在な状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっている一対の傾斜型を、進退型に設けられたガイド孔内周面の、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された傾斜面に沿ってスライド自在に配置した構成になっている。そして、上記傾斜型をスライド自在に保持する進退型が、型締め時にキャビティ型に向かって前進して閉じ合わせられた状態で、上記傾斜型も互いに閉じて、全体として成形体賦形空間が形成され、逆に、型開き時に、進退型がキャビティ型から後退すると、成形体の上方が開放され、傾斜型が進退型のガイド孔から上方に突出するとともに互いに後方に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている。
【0012】
したがって、この構成によれば、互いに上に向かって広がる傾斜面に沿って、いわば側面視V字状に配置された一対の傾斜型が、進退型の進退動作に伴って互いに閉じたり開いたりするようになっているため、図11に示す従来品のように、スライドコアを昇降させるためのエジェクタプレートやシリンダを設ける必要がなく、部品数の少ない簡単な構成で、効率よくアンダーカット部の脱型を行うことができる。
【0013】
しかも、上記傾斜型のアンダーカット部賦形空間の配置を工夫することにより、この傾斜型が開く方向に対し垂直方向に突出する第2のアンダーカット部を、同時に賦形することができるため、より複雑な凹凸を有する成形体にも対応することができるという優れた効果を奏する。
【0014】
そして、本発明のなかでも、特に、上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっているものは、成形体の脱型を、よりスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態における成形体の形状を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A′断面図である。
【図3】上記実施の形態の成形金型の側面方向の要部断面図である。
【図4】上記成形金型の正面方向の要部断面図である。
【図5】(a)は上記成形金型の平面方向の要部説明図、(b)は図1に示す成形体の部分的な説明図である。
【図6】上記成形金型の動作説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の成形金型の側面方向の要部断面図である。
【図8】上記成形金型の正面方向の要部断面図である。
【図9】上記成形金型の動作説明図である。
【図10】上記成形金型の動作説明図である。
【図11】(a)、(b)はともに従来の成形金型の説明図である。
【図12】アンダーカット部を有する成形体が用いられたコンパクト容器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態である成形金型を用いて成形された成形体20を示している。この成形体20は、コンパクト容器の蓋体として用いられるもので、図12の蓋体7と同様、内側に凹部21を有するヒンジ連結部22と、その左右の端面から左右方向に突出する回転軸23とが、一体成形されている。そして、図1のA−A′断面図である図2に示すように、その内側面に、鏡取り付け用の凸条24が設けられている。
【0018】
図3は、上記成形体20の成形に用いる成形金型の要部断面を、側面方向から示したもので、この成形金型の平面形状を部分的に示す図5のB−B′断面に相当する。また、図4は、上記成形金型の要部断面を、正面方向から示したもので、図5のC−C′断面に相当する。
【0019】
これらの図において、30は、上記成形体20の、主として上面を賦形するためのキャビティ型であり、31は、上記成形体20の、主として下面を賦形するためのコア型である。また、上記コア型31の下方には、ベース台32が配置されている。ただし、図5において、キャビティ型30は図示しておらず、成形体20の上面を賦形するための凹部開口の輪郭のみ鎖線15で示している。
【0020】
上記コア型31は、キャビティ型30に向かって進退自在に設けられる進退型33と、上記進退型33を進退方向に貫通するガイド孔34と、上記ガイド孔34の内周面に、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された一対の傾斜面35、36と、上記ガイド孔34に挿通されその側面が上記傾斜面35、36に沿ってスライド自在に配置される一対の傾斜型37、38とで構成されている。
【0021】
上記進退型33は、コアエレメント39と、これを支受するガイドエレメント40とを組み合わせた構造になっており、ともに、耐摩耗性に優れた各種工具鋼(例えば炭素工具甲鋼、高速度鋼、合金工具鋼等)で形成されている。また、上記一対の傾斜型37、38も、これらと同様、耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されている。
【0022】
上記傾斜型37、38のうち、その上部が奥側(図3において左側)に配置される傾斜型37は、図4に示すように、正面からみると略T字状で、同じくその上部が手前側(図3において右側)に配置される傾斜型38は、正面からみると略L字状(図4において、傾斜型37を見せるために省略された傾斜型38の上部輪郭を、鎖線および影線で示す)で、左右方向に延びる互いの上端部が相対峙するようになっている。そして、上記傾斜型37、38の両対峙面37a、38aは、ともに垂直に形成されており、この両対峙面37a、38aに、この両面を閉じ合わせることにより、成形体20の下面の一部とアンダーカット部となるヒンジ連結部22等(図1参照)とを賦形するための空間が形成されるよう、凹凸が形成されている。
【0023】
すなわち、上記傾斜型37の対峙面37aには、図4に示すように、成形体20の下面の一部を賦形するための上方突出部40′と、ヒンジ連結部22の内側に形成される凹部21を賦形するための手前突出部41と、ヒンジ連結部22と回転軸23の内側半分を賦形するための凹部42とが形成されている。また、上記傾斜型38の対峙面38aには、図3において破線で示すように、ヒンジ連結部22と回転軸23の外側半分を賦形するための凹部43が形成されている。
【0024】
一方、上記傾斜型37、38のそれぞれの下端部は、左右方向(図3において紙面垂直方向)に略一直線状に並ぶ配置で、前記ベース台32に設けられた摺動用のガイドスペース51、52に、摺動自在な状態で係止されている。より詳しく説明すると、上記傾斜型37、38の下端部には、左右方向に突出する一対のガイドピン53、54がそれぞれ設けられており、このガイドピン53、54が、ベース台32に設けられたガイドスペース51、52の天井面51a、52aに係合している。そして傾斜型37、38の下端面が、ガイドスペース51、52の底面51b、52bに沿って摺動自在に当接している。
【0025】
なお、上記ベース台32は、ガイドスペース51、52を設けるために、上下2枚のベースプレート55、56を組み合わせた構造になっており、ガイドスペース51、52の底面51b、52bを構成する部分が、耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されている。
【0026】
上記ガイドスペース51、52のうち、その上部が手前側(図3において右側)に配置される傾斜型38の下端部を係止する方のガイドスペース51は、その底面51bが水平に延びており、傾斜型38が、ガイド孔34の傾斜面36に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型38の下端面が、水平方向に摺動するようになっている。
【0027】
また、上記ガイドスペース51、52のうち、その上部が奥側(図3において左側)に配置される傾斜型37の下端部を係止する方のガイドスペース52は、その底面52bが手前側に向かって30°の上り傾斜に形成されており、傾斜型37が、後述するように、ガイド孔34の傾斜面35に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型37の下端面が、30°の傾斜角を維持した姿勢のまま斜め方向に摺動するようになっている。
【0028】
上記成形金型を用い、例えばつぎのようにして、図1に示す成形体20を得ることができる。すなわち、まず、この成形金型を、射出成形機に取り付け、型締めすることにより、図3に示すように、キャビティ型30とコア型31とを、互いに閉じ合わせる。このとき、進退型33は、最も上昇した位置に位置決めされ、ガイド孔34内に挿通された傾斜型37、38は、ガイド孔34の傾斜面35、36によって、互いに相手に向かって押し付けられた状態となり、閉じ合わせられる。これにより、上記キャビティ型30と進退型33と傾斜型37、38とで、成形体20を賦形するための空間が形成される。
【0029】
そこで、上記成形体賦形用空間内に、所定の経路(図示せず)を経由して、樹脂材料を高圧で射出し、冷却することにより、目的とする成形体20を得ることができる。
【0030】
そして、型開きにより成形体20を取り出す際には、図6に示すように、上記進退型33がキャビティ型30側からベース台32側に下降するようになっている。この動作に伴い、進退型33のガイド孔34から、傾斜型37、38の上端部が上方に突出するとともに、両傾斜型37、38の側面が、上記ガイド孔34の傾斜面35、36に沿ってスライドし、太矢印で示すように、上記傾斜型37、38が互いに後方に開く。これにより、上記成形体20のアンダーカット部(ヒンジ連結部22+回転軸23+凹部21)が、型抜き可能な状態になり、成形体20を、成形金型から取り出すことができる。
【0031】
なお、上記傾斜型37が後方に開く際、傾斜型37は、その下端部が、ガイドスペース52の傾斜した底面52bに沿って摺動するため、その傾斜姿勢が後方に30°傾斜した姿勢を保った状態のまま後方に開くようになっている。このため、アンダーカット部の型抜きを、30°斜め下方向に、安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0032】
ちなみに、30°斜め下方向への型抜きを考慮して、成形体20のアンダーカット部の構成は、図5(b)に示すように、ヒンジ連結部22の内側の凹部21の下面21aが、31°の傾斜面となっており、回転軸23の周面の一部23aが、同じく31°で面取りされている。なお、鎖線25は、傾斜型37による賦形面と傾斜型38による賦形面の境界を示している。
【0033】
また、同様の趣旨から、図6に示すように、傾斜型37の上端面の、成形体20の凸条24を賦形するための凹条も、その一方の溝面が29°の傾斜面に形成されており、凸条24の片面が傾斜面に賦形されるようになっている。
【0034】
このように、上記成形金型によれば、互いに閉じた状態で成形体20のアンダーカット部を賦形するための空間を形成する一対の傾斜型37、38を、進退型33に形成されたガイド孔34内の傾斜面に沿ってスライド自在に配置し、型締め時には、上記進退型33が、キャビティ型30に向かって前進して閉じ合わせられた状態で、上記傾斜型37、38も互いに閉じて、全体として成形体賦形空間が形成され、逆に、型開き時には、進退型33がキャビティ型30から後退して、成形体20の上方が開放され、傾斜型37、38が進退型33のガイド孔34から上方に突出するとともに互いに後方に開いて、上記成形体20のアンダーカット部が型抜きできるようになっている。
【0035】
そして、上記構成によれば、ガイド孔34に形成された、互いに上に向かって広がる傾斜面35、36に沿って、いわば側面視V字状に配置された一対の傾斜型37、38が、進退型33の進退動作に伴って互いに閉じたり開いたりするようになっているため、図11の従来品のように、スライドコアを昇降させるためのエジェクタプレートやシリンダを設ける必要がなく、部品数の少ない簡単な構成で、効率よくアンダーカット部の脱型を行うことができる。
【0036】
しかも、上記の例のように、傾斜型37、38のアンダーカット部賦形空間の配置を工夫することにより、この傾斜型37、38との間で、第1のアンダーカット部である凹部21を賦形できるだけでなく、これと垂直方向に延びる、第2のアンダーカット部である回転軸23も、同時に賦形することができるため、より複雑な凹凸を有する成形体にも対応することができるという優れた効果を奏する。
【0037】
なお、本発明の成形金型において、アンダーカット部を賦形するための一対の傾斜型37、38への開閉動作は、進退型33側に設けられたガイド孔34の傾斜面35、36を利用するものであれば、どのような構成になっていても差し支えない。
【0038】
例えば、図7(成形金型を側面方向から見た要部断面図)および図8(成形金型を正面方向から見た要部断面図)に示すように、その上端部が手前側に配置される傾斜型38に、より複雑な形状を与えて、ガイド孔34の内周面の傾斜を利用して、傾斜型38が、段階的に後方に開くようにしてもよい。この成形金型は、手前側(図7において右側)の傾斜型38が、上端部の、傾斜型37に対峙する側とは反対側の面において、ガイド孔34の傾斜面36に沿ってスライドするだけでなく、傾斜型37に対峙する側の面も、順次ガイド孔34の内周面に沿ってスライドするようになっており、それによって、2段階で開動作が行われるようになっている。それ以外の基本的な構成は、図3〜図6に示す実施の形態と同様であり、同一部分に同一番号を付してその説明を省略する。
【0039】
この成形金型を、より詳しく説明すると、傾斜型37、38のうち、手前側の傾斜型38は、傾斜型37に対峙する側の面が、比較的長く垂直に下方まで延びており、型締め時には、この図に示すように、傾斜型37の垂直面61のうち、上部が傾斜型37の上部に当接し、下部が、ガイド孔34の内周面に形成された垂直面62に当接した状態で、キャビティ型30と進退型33と傾斜型37、38とで、成形体20を賦形するための空間が形成されるようになっている。なお、上記傾斜型38の垂直面61の下には、比較的短い距離の傾斜したスライド面63が形成されており、ガイド孔34の内周面側にも、その垂直面62の下に、上記スライド面63に沿う第2の傾斜面64が形成されている。
【0040】
そして、型開き時には、まず、図9に示すように、進退型33が少し下降した時点で、上記傾斜型37、38が、ガイド孔34の傾斜面35、36に沿ってスライドして、ガイド孔34から上方に突出した状態となり、傾斜型38が、太矢印で示すように、後方に少し開く。一方、傾斜型37は、その垂直面61がガイド孔34側の垂直面62に沿ってスライドするだけであり、直立姿勢を保っている。
【0041】
そして、図10に示すように、傾斜型38のスライド面63とガイド孔34側の第2の傾斜面64とが当接した状態から、さらに進退型33が下降することにより、太矢印で示すように、傾斜型37がさらに後方に開くとともに、傾斜型38が、後方に大きく開いて、アンダーカット部の脱型がスムーズに行われるようになっている。この成形金型も、前記の例と同様の効果を奏する。
【0042】
なお、本発明の成形金型は、上記2つの例のように、上下方向に型締め型開きを行うタイプに限らず、左右方向に型締め型開きを行うタイプのものであってもよい。その場合、進退型33は左右方向に進退してキャビティ型30と開閉するように設定され、傾斜型37、38等は、左右方向に延びる形状となるだけであり、その基本的な構成と効果に差異はない。
【0043】
また、本発明の成形金型は、上記2つの例のように、型抜きに支障のあるアンダーカット部が、複数個、異なる方向に突出している場合の成形に適用することが好適であるが、アンダーカット部が一個所のものであっても、もちろん、そのアンダーカット部の脱型を容易に行うことができ、好適である。
【0044】
そして、アンダーカット部の形状によっては、傾斜型37、38の少なくとも一方を、前記の例のように、傾斜姿勢を保ったまま斜め方向にスライドさせながら後方に開く必要があるが、その必要がない場合には、傾斜型37、38の下端部は、ベース台32側において、それぞれ水平に摺動させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
30 キャビティ型
31 コア型
32 ベース台
33 進退型
34 ガイド孔
35、36 傾斜面
37、38 傾斜型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型であって、上記成形体の主として上面を賦形するためのキャビティ型と、上記成形体の主として下面を賦形するためのコア型と、上記コア型の下方に配置されるベース台とを備え、上記コア型が、キャビティ型に向かって進退自在に設けられる進退型と、上記進退型を進退方向に貫通するガイド孔と、上記ガイド孔の内周面に、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された一対の傾斜面と、上記ガイド孔に挿通されその側面が上記傾斜面に沿ってスライド自在に配置される一対の傾斜型とで構成され、上記一対の傾斜型は、それぞれの下端部が、上記ベース台に、その取り付け面に沿って摺動しうる状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で上記成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっており、型締め時には、上記進退型がキャビティ型に向かって前進し、上記キャビティ型と進退型と上記一対の傾斜型の先端部が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型がキャビティ型から後退し、上記一対の傾斜型の上端部が上記ガイド孔から上方に突出するとともに側面がガイド孔の傾斜面に沿ってスライドすることにより、上記傾斜型が互いに後方に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されていることを特徴とする成形金型。
【請求項2】
上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっている請求項1記載の成形金型。
【請求項1】
アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型であって、上記成形体の主として上面を賦形するためのキャビティ型と、上記成形体の主として下面を賦形するためのコア型と、上記コア型の下方に配置されるベース台とを備え、上記コア型が、キャビティ型に向かって進退自在に設けられる進退型と、上記進退型を進退方向に貫通するガイド孔と、上記ガイド孔の内周面に、互いの間隔が上にいくほど広がるよう形成された一対の傾斜面と、上記ガイド孔に挿通されその側面が上記傾斜面に沿ってスライド自在に配置される一対の傾斜型とで構成され、上記一対の傾斜型は、それぞれの下端部が、上記ベース台に、その取り付け面に沿って摺動しうる状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で上記成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっており、型締め時には、上記進退型がキャビティ型に向かって前進し、上記キャビティ型と進退型と上記一対の傾斜型の先端部が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型がキャビティ型から後退し、上記一対の傾斜型の上端部が上記ガイド孔から上方に突出するとともに側面がガイド孔の傾斜面に沿ってスライドすることにより、上記傾斜型が互いに後方に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されていることを特徴とする成形金型。
【請求項2】
上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっている請求項1記載の成形金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−20456(P2012−20456A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159275(P2010−159275)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
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