説明

成熟度判定プログラム、成熟度判定装置及び成熟度判定方法

【課題】花粉の成熟度を正確かつ簡易に判定すること。
【解決手段】開示の成熟度判定装置は、記憶部と、照合部と、判定部とを備える。記憶部は、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを処理対象の花粉の成熟度ごとに記憶する。照合部は、処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、記憶部に記憶された基準データとを照合する。判定部は、照合部による照合結果に基づいて、処理対象となる花粉の成熟度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成熟度判定プログラム、成熟度判定装置及び成熟度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、花粉の飛散時期を予測するために、花粉の成熟度を判定することが行われている。花粉の成熟度は、例えば、花粉の成熟に応じた色合いの変化を過去のデータと比較することによって判定される。例えば、現在の花粉の色合いと最も近い色合いを有していた「昨年の日付」が、花粉の成熟度として用いられる。花粉の成熟度を判定する方法としては、例えば、以下に説明する方法が行われている。
【0003】
例えば、現地調査で目視判別を行う方法がある。この方法は、例えば、調査対象となる地域に調査を行う者が直接赴き、現在の花粉の色合いと過去の花粉の色合いとを比較することで、花粉の成熟度を判定する。
【0004】
また、例えば、気温の累積値を用いる方法も存在する。この方法は、例えば、調査対象となる地域ごとに、花粉の成熟が開始してからの毎日の気温を累積させる。そして、過去の累積値と比較することで、現在の花粉の成熟度を判定する。
【0005】
また、例えば、リモートセンシングを用いる方法も存在する。この方法は、例えば、調査対象となる樹木や森林をデジタルカメラで撮影し、撮影した画像データからR値、G値、B値をそれぞれ分離する。そして、分離したそれぞれの値を花粉の成熟が開始してから毎日累積させ、過去の累積値と比較することで、現在の花粉の成熟度を判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山形大学工学部技術部、情報技術室、中島孝則「平成17年度科学研究費(奨励研究17921011)研究報告、リモートセンシング画像解析によるスギ花粉飛散量ハザードマップ構築に関する研究」、[online]、[2011年8月5日検索]、インターネット<URL:http://tech-staff.yz.yamagata-u.ac.jp/kakenhi/H17Nakajima.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、花粉の成熟度を正確かつ簡易に判定することができなかった。
【0008】
例えば、現地調査で目視判別を行う方法では、調査を行う者が調査対象となる地域に直接赴くことを要していたため、花粉の成熟度を簡易に判定することができなかった。また、例えば、調査対象となる樹木ごと、あるいは花粉がなる雄花ごとに個体差があるため、調査対象の選択にかかる誤差が生じてしまい、花粉の成熟度を正確に判定することができなかった。
【0009】
また、例えば、気温の累積値を用いる方法では、調査対象となる地域の気温を毎日測定することを要していたため、花粉の成熟度を簡易に判定することができなかった。また、例えば、調査対象となる地域が山中である場合には、気象台で測定される気温とのズレが生じやすく、さらに、累積によりズレが大きくなってしまうこともある。このため、この方法では、花粉の成熟度を正確に判定することができなかった。
【0010】
また、例えば、リモートセンシングを用いる方法では、調査対象となる樹木や森林を毎日撮影することを要していたため、花粉の成熟度を簡易に判定することができなかった。また、例えば、雨や雪が降った場合には、画像データから分離されるR値、G値、B値が晴れの日の値と異なってしまうため、花粉の成熟度を正確に判定することができなかった。
【0011】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、花粉の成熟度を正確かつ簡易に判定することができる成熟度判定プログラム、成熟度判定装置及び成熟度判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示のプログラムは、一つの態様において、処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部に記憶された基準データとを照合する処理をコンピュータに実行させる。また、開示のプログラムは、照合結果に基づいて、処理対象となる花粉の成熟度を判定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本願の開示する技術の一つの態様によれば、花粉の成熟度を正確かつ簡易に判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1に係る成熟度判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、HSDの一例を示す図である。
【図3】図3は、HSDが有するスペクトルデータの一例を示す図である。
【図4】図4は、HSDが有するスペクトルデータの一例を示す図である。
【図5】図5は、時系列データベースを説明するための図である。
【図6】図6は、照合結果について説明するための図である。
【図7】図7は、花粉飛散開始予測日を求める処理を説明するための図である。
【図8】図8は、花粉飛散開始予測日を求める処理を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例1に係る成熟度判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、成熟度判定装置の効果を説明するための図である。
【図11】図11は、スペクトルデータに含まれる特異点について説明するための図である。
【図12】図12は、時系列データベースを説明するための図である。
【図13】図13は、照合部の処理を説明するための図である。
【図14】図14は、成熟度判定プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する成熟度判定プログラム、成熟度判定装置及び成熟度判定方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係る成熟度判定装置の機能構成の一例について説明する。図1は、実施例1に係る成熟度判定装置の機能構成を示すブロック図である。図1に示すように、この成熟度判定装置100は、記憶部110と、制御部120とを有する。また、成熟度判定装置100は、入力装置101と、出力装置102とに接続される。成熟度判定装置100は、例えば、パーソナルコンピュータに対応する。
【0017】
入力装置101は、各種情報の入力を受け付ける。例えば、入力装置101は、処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータを受け付け、受け付けたスペクトルデータを後述する受付部121に送る。また、例えば、入力装置101は、利用者による処理を開始する指示の入力を受け付け、受け付けた指示の入力を受付部121に送る。例えば、入力装置101は、キーボードやマウス、媒体読み取り装置、あるいは温度計や湿度計、ハイパースペクトルセンサなどの各種センサに対応する。
【0018】
出力装置102は、各種情報を出力する。例えば、出力装置102は、後述する判定部123により判定された花粉の成熟度を出力する。また、例えば、出力装置102は、ディスプレイやモニタなどに対応する。
【0019】
記憶部110は、HSD(Hyper-Spectral Data)111と、時系列データベース112とを有する。記憶部110は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置に対応する。
【0020】
HSD111は、画像としての2次元要素にスペクトルデータとしての要素を併せ持つ3次元的な構成を有するデータである。例えば、HSD111は、波長の情報と、光強度又は反射率の情報とを含むスペクトルデータを、画像の1ピクセルごとに有する。例えば、HSD111は、ハイパースペクトルセンサにより撮影される。HSD111は、ハイパースペクトルデータとも称する。
【0021】
図2は、HSDの一例を示す図である。図2には、一例として、測定対象となる風媒花であるスギが植生する森林を、航空機に搭載したハイパースペクトルセンサで撮影したHSD111を示す。図2に示すように、HSD111は、例えば、ピクセル2aを含む。このピクセル2aは、例えば、成熟したスギの花粉に対応するスペクトルデータを有する。なお、ここでは、HSD111が航空機に搭載したハイパースペクトルセンサにより撮影される場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、HSD111は、人工衛星や地上を走行する車両などに搭載したハイパースペクトルセンサで撮影されても良く、人の手によって撮影されても良い。また、例えば、HSD111は、過去に撮影されたHSD111を記憶する外部記憶装置から取得されても良い。
【0022】
図3及び図4を用いて、HSDが有するスペクトルデータについて説明する。図3及び図4は、HSDが有するスペクトルデータの一例を示す図である。図3には、スペクトル強度が用いられる場合を示し、図4には、相対反射率が用いられる場合を示す。この相対反射率は、スペクトル強度から光源のスペクトル成分を除去することで得られる値である。図3及び図4の横軸は波長を示し、縦軸はスペクトル強度又は相対反射率を示す。なお、図3及び図4には、測定波長域が400nmから900nmのハイパースペクトルセンサで撮影した場合を示す。この測定波長域のうち400nmから700nmまでの可視光領域には、花粉の成熟の程度が現れやすい。特に、スギ花粉の成熟は、黄色成分を含む550nmから650nmまでの領域に現れやすい。また、撮影に用いられるハイパースペクトルセンサの測定波長域は、400nmから900nmに限定されるものではない。例えば、ハイパースペクトルセンサの測定波長域は、測定対象となる風媒花の種類に応じて適宜選択されて良い。なお、スペクトルデータとしては、スペクトル強度が用いられても良く、相対反射率が用いられても良い。以下では、相対反射率が用いられる場合を説明する。例えば、図2に示したHSD111のピクセル2aは、図4に示したスペクトルデータを有する。
【0023】
時系列データベース112は、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを花粉の成熟度ごとに記憶する。例えば、時系列データベース112は、花粉未成熟時から花粉飛散時までの過去の日付に対応するスペクトルデータを、該当する過去の日付ごとに記憶する。図5は、時系列データベースを説明するための図である。図5に示すように、時系列データベース112は、例えば、昨年の日付に対応する花粉のスペクトルデータを、該当する日付ごとに記憶する。なお、時系列データベース112は、基準データの一例である。また、時系列データベース112が記憶するスペクトルデータは、照合用スペクトルデータの一例である。
【0024】
例えば、時系列データベース112は、花粉未成熟時から花粉飛散時までの花粉のスペクトルデータが毎日記録されることで生成される。なお、雨天時や降雪時などに取得されたスペクトルデータは、晴天時のスペクトルデータとは異なる値になってしまうため、晴天時のスペクトルデータを用いることが望ましい。また、雨天や降雪などが原因で望ましいスペクトルデータを記録できない場合には、他の日付に記録されたスペクトルデータから推定されても良い。例えば、記録できない日付の前後の日付に対応するスペクトルデータの中間値を用いてもよい。
【0025】
制御部120は、受付部121と、照合部122と、判定部123とを有する。制御部120の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現することができる。また、制御部120の機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が所定のプログラムを実行することで実現することができる。
【0026】
受付部121は、各種情報を受け付ける。例えば、受付部121は、処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータを受け付ける。また、例えば、受付部121は、HSD111を入力装置101から受け付け、受け付けたHSD111を記憶部110に格納する。また、例えば、受付部121は、利用者による処理を開始する指示を入力装置101から受け付け、受け付けた指示を照合部122に送る。
【0027】
照合部122は、処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、時系列データベース112とを照合する。例えば、照合部122は、処理を開始する指示を受付部121から受け付けると、処理対象となる花粉が撮影されたHSD111に含まれるピクセルを一つ選択する。照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータと、時系列データベース112のスペクトルデータとを照合する。
【0028】
例えば、照合部122は、ベクトルのコサイン距離を用いてスペクトルデータの照合を行う。例えば、照合部122は、特開2009−39280号公報に記載されるように、スペクトルデータに基づいて、基準ベクトルeHSを求める。例えば、照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータから基準ベクトルeHS1を求め、時系列データベース112のスペクトルデータから基準ベクトルeHS2を求める。照合部122は、下記の式(1)を用いてコサイン距離cosθを算出する。なお、eHS1及びeHS2は、大きさが1の単位ベクトルであるため、このコサイン距離cosθが1に近いほど、照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータと、時系列データベース112のスペクトルデータとが類似すると判定する。
【0029】
【数1】

【0030】
例えば、照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータと、時系列データベース112のスペクトルデータとを照合する。照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータに最も類似のスペクトルデータの昨年の日付を、選択したピクセルに対応付ける。また、照合部122は、他のピクセルについても同様に、昨年の日付を対応付ける。このように、照合部122は、処理対象となる花粉が撮影されたHSD111に含まれるピクセルごとに、最も類似のスペクトルデータの昨年の日付を対応付ける。なお、この方法は、Spectral Angle Mapper法とも称される。
【0031】
図6は、照合結果について説明するための図である。図6上段には、時系列データベース112のスペクトルデータと対応する昨年の日付とを示す。また、図6下段には、実測データとして図2に示したHSD111のうち、過去の日付と類似するピクセルをマッピングした画像6a〜画像6cを示す。つまり、画像6aに示すピクセルは昨年の1月18日と類似し、画像6bに示すピクセルは昨年の1月19日と類似し、画像6cに示すピクセルは昨年の1月20日と類似することをそれぞれ示す。例えば、照合部122は、図6に示すように、HSD111の各ピクセルに、過去の日付と類似するピクセルをマッピングしたデータを照合結果として出力する。なお、ここでは、照合部122がマッピングしたデータを照合結果として出力する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、照合部122は、HSD111の各ピクセルの座標に、類似する過去の日付を対応付けたデータを照合結果として出力しても良い。
【0032】
判定部123は、照合部122による照合結果に基づいて、処理対象となる花粉の成熟度を判定する。例えば、判定部123は、照合部122から受け付けた照合結果に含まれる過去の日付のうち、ピクセル数が最も多い過去の日付を処理対象の花粉の成熟度として判定する。例えば、図6に示した照合結果に含まれる過去の日付のうち、ピクセル数が最も多い日付が1月19日である場合には、判定部123は、1月19日を処理対象の花粉の成熟度として判定する。なお、判定部123による判定方法は、この方法に限定されるものではない。例えば、判定部123は、照合結果においてピクセル数が所定数以上存在する過去の日付のうち、最も早い日付を処理対象の花粉の成熟度として判定しても良い。例えば、図6に示した照合結果においてピクセル数が所定数以上存在する過去の日付が1月18日、1月19日、1月20日の3日である場合を説明する。この場合、判定部123は、1月18日を処理対象の花粉の成熟度として判定する。
【0033】
また、例えば、判定部123は、処理対象の花粉の成熟度に基づいて、花粉の飛散が開始する日付を示す花粉飛散開始予測日と、花粉の飛散が終了する日付を示す花粉飛散終了予測日とを求める。例えば、判定部123は、過去に花粉の飛散が開始した日付から処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、処理対象となる花粉の飛散が開始する日付を算出する。
【0034】
図7は、花粉飛散開始予測日を求める処理を説明するための図である。図7に示す例では、実測値として1月17日に撮影した花粉の成熟度が、時系列データベース112に記憶された昨年の1月19日に対応する場合を説明する。また、図7に示す例では、時系列データベース112に、昨年の花粉飛散開始日が1月24日であった旨が記憶される場合を示す。図7に示す例では、判定部123は、(24日−19日)+17日=22日を花粉飛散開始予測日として算出する。このように、判定部123は、実測値を1点計測するだけで、花粉飛散開始予測日を算出することができる。なお、判定部123が花粉飛散終了予測日を算出する処理は、花粉飛散開始予測日を算出する処理と同様である。
【0035】
図8は、花粉飛散開始予測日を求める処理を説明するための図である。図8に示す例では、実測値として1月13日と1月17日に撮影した花粉の成熟度を判定した場合を説明する。図8には、1月13日に撮影した花粉の成熟度が昨年の1月14日に対応し、1月17日に撮影した花粉の成熟度が昨年の1月19日に対応する場合を示す。また、図8に示す例では、時系列データベース112に、昨年の花粉飛散開始日が1月24日であった旨が記憶される場合を示す。図8に示す例では、判定部123は、13日+(24日−14日)×(17日−13日)/(19日−14日)=21日を花粉飛散開始予測日として算出する。このように、判定部123は、実測値を2点計測することで、花粉飛散開始予測日を正確に算出することができる。なお、ここでは、実測値を2点計測する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実測値を3点以上計測することで、花粉飛散開始予測日をより正確に算出することができる。これは、複数の日付における実測値を時系列データベース112と比較することで、その年の花粉の成熟の傾向を把握できるからである。また、判定部123が花粉飛散終了予測日を算出する処理は、花粉飛散開始予測日を算出する処理と同様である。
【0036】
また、例えば、判定部123は、処理対象の花粉の成熟度に基づいて、花粉飛散量を判定する。例えば、判定部123は、花粉の成熟度に対応する照合用スペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度に対する、前記処理対象となる花粉の成熟度に対応するスペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度の比率を算出する。判定部123は、算出した比率を前記照合用飛散量に乗じて前記処理対象となる花粉が飛散した場合の飛散量を算出する。
【0037】
例えば、昨年の花粉飛散量が1平方センチメートル当り3000個であった場合を説明する。また、実測値として1月17日に撮影した花粉の成熟度が昨年の1月19日に対応する場合を説明する。また、1月17日に撮影したスペクトルデータの600nmにおける相対反射率が0.22であり、昨年の1月19日に対応するスペクトルデータの600nmにおける相対反射率が0.2である場合を説明する。この場合、予測される花粉飛散量は1平方センチメートル当り3000個×0.22/0.2=3300個となる。なお、ここでは、花粉の波長が600nmであるものとして算出したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、植物種に応じて花粉の波長は適宜選択されて良い。また、花粉の波長の範囲を選択し、選択した範囲内のスペクトルデータの積分値を用いて比率を算出し、花粉飛散量を予測しても良い。
【0038】
次に、実施例1に係る成熟度判定装置100の処理手順について説明する。図9は、実施例1に係る成熟度判定装置の処理手順を示すフローチャートである。図9に示す処理は、例えば、図示した各装置に電源から電力が供給される間、所定時間間隔で実行される。
【0039】
図9に示すように、受付部121が処理を開始する指示を入力装置101から受け付けると(ステップS101Yes)、照合部122は、処理対象となる花粉が撮影されたHSD111に含まれるピクセルを一つ選択する(ステップS102)。
【0040】
照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータと、時系列データベース112のスペクトルデータとを照合する(ステップS103)。例えば、照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータに最も類似のスペクトルデータの昨年の日付を、選択したピクセルに対応付ける。
【0041】
照合部122は、処理対象となる花粉が撮影されたHSD111に含まれる全てのピクセルが選択されるまで(ステップS104No)、ステップS102及びステップS103の処理を繰り返し実行する。
【0042】
全てのピクセルが選択されると(ステップS104Yes)、判定部123は、照合部122による照合結果に基づいて、処理対象となる花粉の成熟度を判定する(ステップS105)。
【0043】
次に、実施例1に係る成熟度判定装置100の効果について説明する。成熟度判定装置100は、処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを処理対象となる花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部に記憶された基準データとを照合する。成熟度判定装置100は、照合結果に基づいて、処理対象となる花粉の成熟度を判定する。このため、成熟度判定装置100は、花粉の成熟度を正確かつ簡易に判定することができる。また、成熟度判定装置100は、判定した花粉の成熟度に基づいて、花粉飛散開始予測日、花粉飛散終了予測日及び花粉飛散量を正確かつ簡易に判定することができる。
【0044】
例えば、成熟度判定装置100は、ハイパースペクトルセンサを用いて処理対象となる風媒花を撮影する。このため、成熟度判定装置100は、調査を行う者が調査対象となる地域に直接赴くことなく、花粉の成熟度を簡易に判定することができる。例えば、図10に示すように、成熟度判定装置100は、人工衛星に搭載したハイパースペクトルセンサを用いたリモートセンシングを行うことで、広範囲に亘る花粉の成熟度を簡易に判定することができる。図10は、成熟度判定装置の効果を説明するための図である。
【0045】
また、例えば、成熟度判定装置100は、HSD111に含まれるピクセルごとに基準データと照合し、花粉の成熟度を判定する。このため、成熟度判定装置100は、調査対象となる樹木ごと、あるいは雄花ごとの個体差による影響を低減することができ、花粉の成熟度を正確に判定することができる。
【0046】
また、例えば、成熟度判定装置100は、処理対象として撮影した花粉のHSD111に基づいて、花粉の成熟度を判定する。このため、成熟度判定装置100は、毎日花粉を撮影することなく、花粉の成熟度を簡易に判定することができる。また、成熟度判定装置100は、毎日花粉を撮影してデータを累積させることを要しないので、ズレの影響を低減でき、花粉の成熟度を正確に判定することができる。
【実施例2】
【0047】
実施例2に係る成熟度判定装置100について説明する。実施例1では、ベクトルのコサイン距離を用いてスペクトルデータの照合を行う場合を説明したが、スペクトルデータに含まれる複数の特異点を用いてスペクトルデータの照合を行うこととしても良い。そこで、実施例2では、スペクトルデータに含まれる複数の特異点を用いてスペクトルデータの照合を行う場合を説明する。
【0048】
ここで、スペクトルデータに含まれる特異点について説明する。図11は、スペクトルデータに含まれる特異点について説明するための図である。図11には、スペクトル強度を用いたスペクトルデータの一例を示す。スペクトルデータに含まれる特異点とは、例えば、スペクトルデータの極大点及び極小点である。図11に示す例では、成熟度判定装置100は、特異点A〜Eを用いてスペクトルデータの照合を行う。なお、特異点は、特徴点とも称する。
【0049】
実施例2に係る成熟度判定装置100の機能構成の一例について説明する。実施例2に係る成熟度判定装置100の機能構成は、図1に示した成熟度判定装置100の機能構成の機能構成と基本的には同様であり、相違する点についてのみ説明する。
【0050】
時系列データベース112は、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに含まれる複数の特異点の値から算出される一つ又は複数の特徴量を含む組合せを基準データとし、花粉の成熟度ごとに記憶する。
【0051】
図12は、時系列データベースを説明するための図である。図12に示すように、時系列データベース112は、過去の日付と、該当する日に撮影されたスペクトルデータに含まれる特異点から導いた数値とを対応付けて記憶する。例えば、時系列データベース112は、特異点から導いた数値として、α、β、γ及びδを記憶する。αは、下記の式(2)を用いて算出される。βは、下記の式(3)を用いて算出される。γは、下記の式(4)を用いて算出される。δは、下記の式(5)を用いて算出される。なお、下記の式(2)〜(5)において、Aは、図11の特異点Aのスペクトル強度を示し、Bは、特異点Bのスペクトル強度を示し、Cは、特異点Cのスペクトル強度を示し、Dは、特異点Dのスペクトル強度を示し、Eは、特異点Eのスペクトル強度を示す。また、この数値は、特徴量の一例である。
【0052】
α=C/A・・・(2)
β=(C−B)/(A−B)・・・(3)
γ=(A/B)/(A/C)・・・(4)
δ={(C−B)/(C−D)}/{(C−D)/(C−E)}・・・(5)
【0053】
上記の式(2)〜(5)は、特異点のスペクトル強度の比を求めるものであるため、撮影条件の影響が現れにくい。なお、数値を求める式は、上記の式(2)〜(5)に限定されるものではなく、成熟度判定装置100を利用する者が適宜設定してよい。
【0054】
図12に示すように、時系列データベース112は、例えば、過去の日付「2009.12.1」と、α「○○○」と、β「△△△」と、γ「×××」と、δ「□□□」とを対応付けて記憶する。つまり、時系列データベース112は、2009年12月1日に取得したスペクトルデータに含まれる特異点から導いた数値として、α=○○○と、β=△△△と、γ=×××と、δ=□□□とを記憶する。なお、時系列データベース112は、他の日付についても同様に数値を記憶する。
【0055】
照合部122は、処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータに含まれる複数の特異点の値から一つ又は複数の特徴量を算出する。照合部122は、算出した一つ又は複数の特徴量と、時系列データベース112に記憶された特徴量の組合せに含まれる一つ又は複数の特徴量とを照合する。
【0056】
例えば、照合部122は、処理を開始する指示を受付部121から受け付けると、処理対象となる花粉が撮影されたHSD111に含まれるピクセルを一つ選択する。照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータと、時系列データベース112のスペクトルデータとを照合する。
【0057】
例えば、照合部122は、スペクトルデータに含まれる複数の特異点を用いてスペクトルデータの照合を行う。この特異点の検出方法としては、例えば、スペクトルデータの微分係数が正から負もしくは負から正に変わるゼロクロス点を用いる方法や、パターンマッチングを行って特異点を検出する方法などが用いられる。
【0058】
図13は、照合部の処理を説明するための図である。図13に示すように、照合部122は、選択したピクセルが有するスペクトルデータに含まれる複数の特異点を、上記の式(2)〜(5)に適用し、α、β、γ及びδをそれぞれ算出する。照合部122は、算出したα、β、γ及びδを時系列データベース112のα、β、γ及びδとそれぞれ比較する。例えば、照合部122は、α、β、γ及びδのそれぞれの数値の誤差範囲が±5%以内となる過去の日付を、選択したピクセルの照合結果とする。なお、それぞれの数値の誤差が±5%以内となる過去の日付が複数存在する場合には、照合部122は、誤差範囲を狭めることで、唯一の過去の日付を特定する。また、それぞれの数値の誤差が±5%以内となる過去の日付が存在しない場合には、照合部122は、誤差範囲を広めることで、唯一の過去の日付を特定する。このように、照合部122は、HSD111の各ピクセルに、類似する過去の日付を対応付けたデータを照合結果として出力する。
【0059】
上述してきたように、実施例2に係る成熟度判定装置100は、スペクトルデータに含まれる複数の特異点を用いてスペクトルデータの照合を行う。このため、成熟度判定装置100は、時系列データベース112にスペクトルデータを記憶する必要がないので、時系列データベース112に要する記憶容量を軽減することができる。
【実施例3】
【0060】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、その他の実施形態にて実施されても良い。そこで、以下では、その他の実施例について説明する。
【0061】
例えば、上記の実施例1及び2では、処理対象となる風媒花を撮影したHSD111に含まれるピクセルごとに、時系列データベース112と照合する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、照合部122は、処理対象となる風媒花を撮影したHSD111に含まれるピクセル同士を照合し、類似するピクセルが最も多いピクセルについて時系列データベース112と照合しても良い。
【0062】
また、実施例1及び2において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、成熟度判定装置100の処理は、受付部121が利用者による処理を開始する指示を受け付けたことを契機として手動的に開始されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、成熟度判定装置100の処理は、受付部121が処理対象となるHSD111を受け付けたことを契機として自動的に開始されても良い。この他、上述文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、図12に示した時系列データベース112は、他の算出方法により求まる数値を記憶しても良い。
【0063】
また、図1に示した成熟度判定装置100の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、成熟度判定装置100の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図1に示した照合部122、判定部123、時系列データベース112のうちいずれか又は全ての機能をサーバに持たせ、かかるサーバと成熟度判定装置100とが協働することで、花粉の成熟度を判定しても良い。
【0064】
また、成熟度判定装置100は、成熟度判定装置100の各機能を既知の情報処理装置に搭載することによって実現することもできる。既知の情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、携帯電話、PHS(Personal Handy-phone System)端末、移動体通信端末又はPDA(Personal Digital Assistant)などの装置に対応する。
【0065】
図14は、成熟度判定プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。図14に示すように、コンピュータ300は、各種演算処理を実行するCPU301と、ユーザからデータの入力を受け付ける入力装置302と、モニタ303とを有する。また、コンピュータ300は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読み取り装置304と、他の装置と接続するためのインターフェース装置305と、他の装置と無線により接続するための無線通信装置306とを有する。また、コンピュータ300は、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)307と、ハードディスク装置308とを有する。また、各装置301〜308は、バス309に接続される。
【0066】
ハードディスク装置308には、図1に示した照合部122及び判定部123の各処理部と同様の機能を有する成熟度判定プログラムが記憶される。又はドディスク装置308には、成熟度判定プログラムを実現するための各種データが記憶される。
【0067】
CPU301は、ハードディスク装置308に記憶された各プログラムを読み出して、RAM307に展開し、各種の処理を行う。また、これらのプログラムは、コンピュータを図1に示した照合部122及び判定部123として機能させることができる。
【0068】
なお、上記の成熟度判定プログラムは、必ずしもハードディスク装置308に記憶されている必要はない。例えば、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されたプログラムを、コンピュータ300が読み出して実行するようにしても良い。コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、例えば、CD−ROMやDVDディスク、USBメモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等に接続された装置にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしても良い。
【0069】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0070】
(付記1)コンピュータに、
処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを前記花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部に記憶された前記基準データとを照合し、
前記照合する処理による照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定する
処理を実行させることを特徴とする成熟度判定プログラム。
【0071】
(付記2)前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれるピクセルごとのスペクトルデータと、前記基準データとを照合し、
前記判定する処理は、前記照合する処理によるピクセルごとの照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定することを特徴とする付記1に記載の成熟度判定プログラム。
【0072】
(付記3)前記判定する処理は、過去に花粉の飛散が開始した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が開始する日付を算出することを特徴とする付記1又は2に記載の成熟度判定プログラム。
【0073】
(付記4)前記判定する処理は、過去に花粉の飛散が終了した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が終了する日付を算出することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の成熟度判定プログラム。
【0074】
(付記5)前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータである照合用スペクトルデータが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータと、前記記憶部に記憶された前記照合用スペクトルデータとを照合することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の成熟度判定プログラム。
【0075】
(付記6)前記記憶部には、前記照合用スペクトルデータに対応する花粉が飛散した場合の飛散量である照合用飛散量が記憶され、
前記判定する処理は、前記照合用スペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度に対する、前記処理対象となる花粉の成熟度に対応するスペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度の比率を算出し、算出した比率を前記照合用飛散量に乗じて前記処理対象となる花粉が飛散した場合の飛散量を算出することを特徴とする付記5に記載の成熟度判定プログラム。
【0076】
(付記7)前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から算出される一つ又は複数の特徴量を含む組合せが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から一つ又は複数の特徴量を算出し、算出した一つ又は複数の特徴量と、前記記憶部に前記花粉の成熟度ごとに記憶された前記組合せに含まれる一つ又は複数の特徴量とを照合することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の成熟度判定プログラム。
【0077】
(付記8)花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを前記花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部と、
処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、前記記憶部に記憶された前記基準データとを照合する照合部と、
前記照合部による照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定する判定部と
を備えることを特徴とする成熟度判定装置。
【0078】
(付記9)前記照合部は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれるピクセルごとのスペクトルデータと、前記基準データとを照合し、
前記判定部は、前記照合する処理によるピクセルごとの照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定することを特徴とする付記8に記載の成熟度判定装置。
【0079】
(付記10)前記判定部は、過去に花粉の飛散が開始した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が開始する日付を算出することを特徴とする付記8又は9に記載の成熟度判定装置。
【0080】
(付記11)前記判定部は、過去に花粉の飛散が終了した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が終了する日付を算出することを特徴とする付記8〜10のいずれか一つに記載の成熟度判定装置。
【0081】
(付記12)前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータである照合用スペクトルデータが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合部は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータと、前記記憶部に記憶された前記照合用スペクトルデータとを照合することを特徴とする付記8〜11のいずれか一つに記載の成熟度判定装置。
【0082】
(付記13)前記記憶部には、前記照合用スペクトルデータに対応する花粉が飛散した場合の飛散量である照合用飛散量が記憶され、
前記判定部は、前記照合用スペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度に対する、前記処理対象となる花粉の成熟度に対応するスペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度の比率を算出し、算出した比率を前記照合用飛散量に乗じて前記処理対象となる花粉が飛散した場合の飛散量を算出することを特徴とする付記12に記載の成熟度判定装置。
【0083】
(付記14)前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から算出される一つ又は複数の特徴量を含む組合せが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合部は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から一つ又は複数の特徴量を算出し、算出した一つ又は複数の特徴量と、前記記憶部に前記花粉の成熟度ごとに記憶された前記組合せに含まれる一つ又は複数の特徴量とを照合することを特徴とする付記8〜13のいずれか一つに記載の成熟度判定装置。
【0084】
(付記15)コンピュータにより実行される成熟度判定方法であって、
処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを前記花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部に記憶された前記基準データとを照合し、
前記照合する処理による照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定する
ことを特徴とする成熟度判定方法。
【0085】
(付記16)前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれるピクセルごとのスペクトルデータと、前記基準データとを照合し、
前記判定する処理は、前記照合する処理によるピクセルごとの照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定することを特徴とする付記15に記載の成熟度判定方法。
【0086】
(付記17)前記判定する処理は、過去に花粉の飛散が開始した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が開始する日付を算出することを特徴とする付記15又は16に記載の成熟度判定方法。
【0087】
(付記18)前記判定する処理は、過去に花粉の飛散が終了した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が終了する日付を算出することを特徴とする付記15〜17のいずれか一つに記載の成熟度判定方法。
【0088】
(付記19)前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータである照合用スペクトルデータが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータと、前記記憶部に記憶された前記照合用スペクトルデータとを照合することを特徴とする付記15〜18のいずれか一つに記載の成熟度判定方法。
【0089】
(付記20)前記記憶部には、前記照合用スペクトルデータに対応する花粉が飛散した場合の飛散量である照合用飛散量が記憶され、
前記判定する処理は、前記照合用スペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度に対する、前記処理対象となる花粉の成熟度に対応するスペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度の比率を算出し、算出した比率を前記照合用飛散量に乗じて前記処理対象となる花粉が飛散した場合の飛散量を算出することを特徴とする付記19に記載の成熟度判定方法。
【0090】
(付記21)前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から算出される一つ又は複数の特徴量を含む組合せが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から一つ又は複数の特徴量を算出し、算出した一つ又は複数の特徴量と、前記記憶部に前記花粉の成熟度ごとに記憶された前記組合せに含まれる一つ又は複数の特徴量とを照合することを特徴とする付記15〜20のいずれか一つに記載の成熟度判定方法。
【符号の説明】
【0091】
100 成熟度判定装置
101 入力装置
102 出力装置
110 記憶部
112 時系列データベース
120 制御部
121 受付部
122 照合部
123 判定部
300 コンピュータ
301 CPU
302 入力装置
303 モニタ
304 媒体読み取り装置
305 インターフェース装置
306 無線通信装置
307 RAM
308 ハードディスク装置
309 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを前記花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部に記憶された前記基準データとを照合し、
前記照合する処理による照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定する
処理を実行させることを特徴とする成熟度判定プログラム。
【請求項2】
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれるピクセルごとのスペクトルデータと、前記基準データとを照合し、
前記判定する処理は、前記照合する処理によるピクセルごとの照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定することを特徴とする請求項1に記載の成熟度判定プログラム。
【請求項3】
前記判定する処理は、過去に花粉の飛散が開始した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が開始する日付を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の成熟度判定プログラム。
【請求項4】
前記判定する処理は、過去に花粉の飛散が終了した日付から前記処理対象となる花粉の成熟度に対応する過去の日付を減算し、減算結果を前記処理対象となる花粉が撮影された日付に加算することで、前記処理対象となる花粉の飛散が終了する日付を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の成熟度判定プログラム。
【請求項5】
前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータである照合用スペクトルデータが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータと、前記記憶部に記憶された前記照合用スペクトルデータとを照合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の成熟度判定プログラム。
【請求項6】
前記記憶部には、前記照合用スペクトルデータに対応する花粉が飛散した場合の飛散量である照合用飛散量が記憶され、
前記判定する処理は、前記照合用スペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度に対する、前記処理対象となる花粉の成熟度に対応するスペクトルデータに含まれる花粉の波長におけるスペクトル強度の比率を算出し、算出した比率を前記照合用飛散量に乗じて前記処理対象となる花粉が飛散した場合の飛散量を算出することを特徴とする請求項5に記載の成熟度判定プログラム。
【請求項7】
前記記憶部には、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から算出される一つ又は複数の特徴量を含む組合せが前記基準データとして前記花粉の成熟度ごとに記憶され、
前記照合する処理は、前記処理対象となる花粉をハイパースペクトルセンサで撮影して取得された画像に含まれる各ピクセルのスペクトルデータに含まれる複数の特徴点の値から一つ又は複数の特徴量を算出し、算出した一つ又は複数の特徴量と、前記記憶部に前記花粉の成熟度ごとに記憶された前記組合せに含まれる一つ又は複数の特徴量とを照合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の成熟度判定プログラム。
【請求項8】
花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを前記花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部と、
処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、前記記憶部に記憶された前記基準データとを照合する照合部と、
前記照合部による照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定する判定部と
を備えることを特徴とする成熟度判定装置。
【請求項9】
コンピュータにより実行される成熟度判定方法であって、
処理対象となる風媒花を撮影して取得されたスペクトルデータと、花粉の成熟度を示すスペクトルデータに基づく基準データを前記花粉の成熟度ごとに記憶する記憶部に記憶された前記基準データとを照合し、
前記照合する処理による照合結果に基づいて、前記処理対象となる花粉の成熟度を判定する
ことを特徴とする成熟度判定方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−50406(P2013−50406A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189238(P2011−189238)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】