説明

成膜方法及び成膜装置並びに積層膜

【課題】絶縁膜上に中間層を介して金属膜を形成する場合に、その密着性を改善することができる成膜方法及び成膜装置並びに積層膜を提供すること。
【解決手段】基板3の表面の絶縁膜1上に、金属と酸化物とを含む複合層である中間層5を介して金属膜7を積層して、積層膜9を形成する際には、基板3に対して、超臨界流体と複合層5中の金属となる原料と複合層5中の酸化物となる原料とを供給して、複合層5の超臨界成膜を行うとともに、超臨界成膜を行う際には、複合層5中の酸化物となる原料に対する複合層5中の金属となる原料の供給比率を、連続的又はステップ状に、膜厚の増加に伴って増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表面に絶縁膜を備えた基板上に積層膜を形成する成膜方法、及びその成膜方法を実施する際に用いる成膜装置、並びにその成膜方法又は成膜装置によって形成される積層膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、TSV(貫通電極)等の形成方法として、超臨界成膜の技術を用いて金属成膜を行う場合には、ビアの側壁に形成された絶縁膜上に金属成膜を行う必要がある。
【0003】
しかしながら、一般的な水素還元法による成膜の場合には、下地が金属である場合のみ膜形成が起こる、いわゆる選択成長になることから、絶縁膜上への直接成膜は困難であった。
【0004】
そのため、絶縁膜上への成膜には、例えば一旦RuOを成膜した後に、そのRuOを水素雰囲気中で還元することによって金属Ruに変化させ、当該金属Ru上に所望の金属材料を成膜していた(特許文献1参照)。
【0005】
また、絶縁膜上に金属メッキによって金属膜を形成する例では、図6(a)に示す様に、酸化物を含む導電膜を中間層として用いることで、金属膜の密着性を向上させていた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2005/118910
【特許文献2】特開平7−54160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、中間層が金属Ruであるため、金属Ruと絶縁膜との界面での密着性が低いという問題があった。
また、特許文献2の技術では、中間層に酸化物と導電体との混合物を用いているが、図6(b)に示す様に、単一の組成比であるため、(中間層を介する)絶縁膜と金属膜との密着性の改善には限界があった。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、絶縁膜上に中間層を介して金属膜を形成する場合に、その密着性を改善することができる成膜方法及び成膜装置並びに積層膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1の発明は、超臨界流体に、金属となる原料(例えば金属(中間層)用原料)と酸化物となる原料(例えば金属酸化物(中間層)用原料)とを供給して、超臨界成膜によって金属と酸化物とを含む複合層を形成する成膜方法であって、前記超臨界成膜を行う際には、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させる、又は、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って減少させる。
【0010】
本発明では、超臨界成膜を行う際には、酸化物となる原料に対する金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させるので、複合層における金属の割合を膜厚方向(厚みが増す方向)に増加させることができる。よって、複合層における金属成分の濃度が低い側に絶縁膜を形成した場合の接合強度が向上するとともに、金属成分の濃度が高い側に金属膜を形成した場合の接合強度が向上する。その結果、絶縁膜上に複合層を介して金属膜を形成する場合には、その接合強度が向上するという顕著な効果を奏する。
【0011】
なお、金属となる原料に対する酸化物となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って減少する場合も同様な効果を奏する(以下同様)。
ここで、超臨界成膜とは、超臨界状態における流体(超臨界流体)の溶解させた原料を基板等の表面に析出させて成膜する技術である。また、超臨界状態とは、温度・圧力の臨界点を超えた状態であり、ここでは、亜超臨界状態も含む。なお、亜超臨界状態とは、臨界点未満で且つ臨界点近傍の領域にある状態(超臨界成膜においては、この亜臨界状態では、臨界状態と同様な現象を示す)のことである(以下同様)。
【0012】
また、前記金属となる原料としては、例えば還元等の反応によって複合層中に金属を析出する原料だけでなく、金属自身からなる原料(例えば金属微粒子)も含むものである(以下同様)。
【0013】
(2)請求項2の発明は、基板の表面の絶縁膜上に、金属と酸化物とを含む複合層である中間層を介して金属膜を積層して、積層膜を形成する成膜方法であって、前記基板に対して、超臨界流体と前記複合層中の金属となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料とを供給して、前記複合層の超臨界成膜を行うとともに、前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の酸化物となる原料に対する前記複合層中の金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させる、又は、前記複合層中の金属となる原料に対する前記複合層中の酸化物となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って減少させることを特徴とする。
【0014】
本発明では、超臨界成膜を行う際には、酸化物となる原料に対する金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させるので、複合層における金属の割合を膜厚方向(厚みが増す方向)に増加させることができる。よって、複合層における金属成分の濃度が低い側に絶縁膜を形成した場合の接合強度が向上するとともに、金属成分の濃度が高い側に金属膜を形成した場合の接合強度が向上する。その結果、絶縁膜上に複合層を介して金属膜を形成する場合には、その接合強度が向上するという顕著な効果を奏する。
【0015】
(3)請求項3の発明は、前記超臨界流体に、還元剤と、前記複合層中の金属となる原料と、前記酸化物となる原料と、を溶解し、前記超臨界成膜を行う際には、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って増加させる、又は、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って増加させるとともに、前記還元剤によって、前記金属となる原料を還元して複合層中に金属を析出させることを特徴とする。
【0016】
本発明は、複合層中に金属を析出させる手法を例示したものであり、還元剤によって、金属となる原料を還元して複合層中に金属を析出させる。
(4)請求項4の発明は、前記還元剤は、水素であることを特徴とする。
【0017】
本発明は、還元剤を例示したものである。
(5)請求項5の発明は、前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の酸化物となる原料に対する前記複合層中の金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させる、或いは、前記複合層中の金属となる原料に対する前記複合層中の酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に減少させることを特徴とする。
【0018】
本発明は、各原料の供給比率の調整方法を例示したものである。
なお、ここでは、10段階(ステップ)以下の変化をステップ的な変化とし、それを上回るステップによる変化(例えばリニアな変化)を連続的な変化とする(以下同様)。
【0019】
(6)請求項6の発明は、酸化剤成分を含む前記超臨界流体を用い、前記超臨界流体中の酸化剤成分によって、前記酸化物となる原料を酸化して酸化物を複合層中に析出させることを特徴とする。
【0020】
本発明は、酸化物となる原料から酸化物を複合層中に析出させる手法を例示したものである。
(7)請求項7の発明は、前記金属となる原料中の金属は、前記酸化物を構成する元素(例えば金属酸化物中の金属)よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする。
【0021】
従って、複合層中に、酸化物となる原料から酸化物を構成する元素(例えば金属)を析出させるのではなく、金属となる原料から、金属を優先的に析出させることができる。
ここで、物質の酸化され易さの指標としては、例えばエリンガム図が知られており、エリンガム図の下方にある物質、即ち、酸化物の標準反応ギブスエネルギーの低いものが酸化され易い。
【0022】
(8)請求項8の発明は、前記酸化物となる原料は、シリコン(Si)を含むことを特徴とする。
本発明は、酸化物となる原料を例示したものである。
【0023】
この酸化物は、シリコン酸化物であり、シリコン酸化物を形成する原料としては、TEOS(Tetraethyl orthosiricate):(Si(OC254)が挙げられる。
(9)請求項9の発明は、前記酸化物となる原料は、金属を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明は、酸化物となる原料を例示したものである。
(10)請求項10の発明は、前記酸化物となる原料中の金属は、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、アルミムウム(Al)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びストロンチウム(Sr)のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明は、酸化物となる原料中の金属を例示したものである。
ここで、金属酸化物としては、マンガン酸酸化物(MnO2、MnO)、チタン酸化物(TiO2)、アルミ酸化物(Al23)、ハフニウム酸化物(HfO2)、タンタル酸化物(Ta25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)が挙げられる。
【0026】
(11)請求項11の発明は、前記酸化物となる金属を含む原料として、Mn(pmcp)2を用いることを特徴とする。
本発明は、酸化物となる金属を含む原料を例示したものである。
【0027】
(12)請求項12の発明は、前記金属となる原料中の金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びルテニウム(Ru)のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする。
本発明は、金属となる原料中の金属を例示したものである。
【0028】
(13)請求項13の発明は、前記金属となる原料として、Cu(tmhd)2、Cu(acac)2、及びCu(hfac)2のいずれか1種を有機溶媒に溶かしたものを用いることを特徴とする。
【0029】
本発明は、金属となる原料を例示したものである。なお、有機溶媒としては、例えばアセトンやエタノール等、溶解させる物質に応じて、適宜選択すればよい。
なお、tmhdは、bis(tetramethylheptanedionato)、pmcpは、bis(pentamethylcyclopentadienyl)、acacは、acetylacetonate、hfacは、Hexafluoroacetylacetonateである。
【0030】
(14)請求項14の発明は、前記複合層を形成した後に、前記複合層の表面に金属膜を形成する。
これにより、複合層の上に金属膜を形成した積層膜を形成することができる。
【0031】
(15)請求項15の発明は、超臨界流体に、金属となる原料と酸化物となる原料とを供給して、超臨界成膜によって金属と酸化物とを含む複合層を形成する成膜装置であって、前記超臨界成膜を行う際に、前記金属となる原料と前記酸化物となる原料との供給比率を変更する手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
本発明では、超臨界成膜を行う際には、金属となる原料と酸化物となる原料との供給比率を変更できる。よって、例えば、酸化物となる原料に対する金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させることにより、複合層における金属の割合を膜厚方向(厚みが増す方向)に増加させることができる。
【0033】
(16)請求項16の発明は、基板の表面の絶縁膜上に、超臨界成膜によって、金属と酸化物とを含む複合層である中間層を介して金属膜を積層して積層膜を形成する成膜装置であって、前記基板に対して、超臨界流体と前記複合層中の金属となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料とを供給する手段と、前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の金属となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料との供給比率を変更する手段と、 を備えたことを特徴とする。
【0034】
本発明では、超臨界成膜を行う際には、超臨界流体を供給するとともに、金属となる原料と酸化物となる原料との供給比率を変更できる。よって、例えば酸化物となる原料に対する金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させることにより、複合層における金属の割合を膜厚方向(厚みが増す方向)に増加させることができる。
【0035】
(17)請求項17の発明は、前記供給比率を変更する手段によって、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させる、又は、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に減少させる。
【0036】
本発明では、酸化物となる原料に対する金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させることにより、複合層における金属の割合を膜厚方向に増加させることができる。よって、複合層における金属成分の濃度が低い側に絶縁膜を形成した場合の接合強度が向上するとともに、金属成分の濃度が高い側に金属膜を形成した場合の接合強度が向上する。その結果、絶縁膜上に複合層を介して金属膜を形成する場合には、その接合強度が向上するという顕著な効果を奏する。
【0037】
なお、金属となる原料に対する酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って(連続的又はステップ的に)減少する場合も同様な効果を奏する(以下同様)。
(18)請求項18の発明は、前記超臨界流体に、還元剤を供給する手段を備え、
前記還元剤によって、前記金属となる原料を還元して複合層中に金属を析出させることを特徴とする。
【0038】
本発明は、複合層中に金属を析出させる手法を例示したものであり、還元剤によって、金属となる原料を還元して複合層中に金属を析出させる。
(19)請求項19の発明は、前記還元剤は、水素であることを特徴とする。
【0039】
本発明は、還元剤を例示したものである。
(20)請求項20の発明は、酸化剤成分を含む前記超臨界流体を用い、前記超臨界流体中の酸化剤成分によって、前記酸化物となる原料を酸化して酸化物を複合層中に析出させることを特徴とする。
【0040】
本発明は、酸化物となる原料から酸化物を複合層中に析出させる手法を例示したものである。
(21)請求項21の発明は、前記金属となる原料中の金属は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする。
【0041】
従って、複合層中に、酸化物となる原料から酸化物を構成する元素(例えば金属)を析出させるのではなく、金属となる原料から、金属を優先的に析出させることができる。
(22)請求項22の発明は、前記酸化物となる原料は、シリコン(Si)を含むことを特徴とする。
【0042】
本発明は、酸化物となる原料を例示したものである。
(23)請求項23の発明は、前記酸化物となる原料は、金属を含むことを特徴とする。
【0043】
本発明は、酸化物となる原料を例示したものである。
(24)請求項24の発明は、前記酸化物となる原料中の金属は、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、アルミムウム(Al)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びストロンチウム(Sr)のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0044】
本発明は、酸化物となる原料中の金属を例示したものである。
(25)請求項25の発明は、前記酸化物となる金属を含む原料として、Mn(pmcp)2を用いることを特徴とする。
【0045】
本発明は、酸化物となる金属を含む原料を例示したものである。
(26)請求項26の発明は、前記金属となる原料中の金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びルテニウム(Ru)のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0046】
本発明は、金属となる原料中の金属を例示したものである。
(27)請求項27の発明は、前記金属となる原料として、Cu(tmhd)2、Cu(acac)2、及びCu(hfac)2のいずれか1種を有機溶媒に溶かしたものを用いることを特徴とする。
【0047】
本発明は、金属となる原料を例示したものである。
(28)請求項28の発明は、前記複合層を形成した後に、前記複合層の表面に金属膜を形成する手段を備えたことを特徴とする。
【0048】
これにより、複合層の上に金属膜を形成した積層膜を形成することができる。
(29)請求項29の発明は、超臨界流体に、金属微粒子又は金属微粒子となる原料と酸化物となる原料とを供給して、超臨界成膜によって金属と酸化物とを含む複合層を形成する成膜装置であって、前記超臨界成膜を行う際に、前記金属微粒子の供給量と前記酸化物となる原料の供給量との供給比率を変更する手段を備えたことを特徴とする。
【0049】
本発明では、超臨界成膜を行う際には、金属微粒子又は金属微粒子となる原料と酸化物となる原料との供給比率を変更できる。よって、例えば、酸化物となる原料に対する金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させることにより、複合層における金属の割合を膜厚方向(厚みが増す方向)に増加させることができる。
【0050】
なお、金属微粒子としては、複合層の膜厚未満の寸法の範囲の金属微粒子を採用できる。
(30)請求項30の発明は、基板の表面の絶縁膜上に、超臨界成膜によって、金属と酸化物とを含む複合層である複合層を介して金属膜を積層して積層膜を形成する成膜装置であって、前記基板に対して、超臨界流体と前記複合層中の金属となる金属微粒子又は金属微粒子となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料とを供給する手段と、前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の金属となる金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給量と前記複合層中の酸化物となる原料の供給量との供給比率を変更する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0051】
本発明では、超臨界成膜を行う際には、超臨界流体を供給するとともに、金属微粒子又は金属微粒子となる原料と酸化物となる原料との供給比率を変更できる。よって、例えば酸化物となる原料に対する金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させることにより、複合層における金属の割合を膜厚方向(厚みが増す方向)に増加させることができる。
【0052】
(31)請求項31の発明は、前記供給比率を変更する手段によって、前記酸化物となる原料に対する前記金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させる、又は、前記金属微粒子又は金属微粒子となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に減少させることを特徴とする。
【0053】
本発明では、酸化物となる原料に対する金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させることにより、複合層における金属の割合を膜厚方向に増加させることができる。よって、複合層における金属成分の濃度が低い側に絶縁膜を形成した場合の接合強度が向上するとともに、金属成分の濃度が高い側に金属膜を形成した場合の接合強度が向上する。その結果、絶縁膜上に複合層を介して金属膜を形成する場合には、その接合強度が向上するという顕著な効果を奏する。
【0054】
なお、金属となる原料に対する酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って(連続的又はステップ的に)減少する場合も同様な効果を奏する(以下同様)。
(32)請求項32の発明は、前記超臨界流体に、前記金属微粒子となる原料を供給し、前記超臨界流体中の熱反応によって金属微粒子を形成する手段を備えたことを特徴とする。
【0055】
本発明は、金属微粒子を形成する手法を例示したものである。
(33)請求項33の発明は、酸化剤成分を含む前記超臨界流体を用い、前記超臨界流体中の酸化剤成分によって、前記酸化物となる原料を酸化して酸化物を複合層中に析出させることを特徴とする。
【0056】
本発明は、酸化物となる原料から酸化物を複合層中に析出させる手法を例示したものである。
(34)請求項34の発明は、前記金属微粒子は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする。
【0057】
従って、複合層中に、酸化物となる原料から酸化物を構成する元素(例えば金属)を析出させるのではなく、金属微粒子により複合層中に金属(金属酸化物中の金属ではない金属)を生成することができる。
【0058】
(35)請求項35の発明は、前記酸化物となる原料は、シリコン(Si)を含むことを特徴とする。
本発明は、酸化物となる原料を例示したものである。
【0059】
(36)請求項36の発明は、前記酸化物となる原料は、金属を含むことを特徴とする。
本発明は、酸化物となる原料を例示したものである。
【0060】
(37)請求項37の発明は、前記酸化物となる原料中の金属は、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、アルミムウム(Al)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びストロンチウム(Sr)のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0061】
本発明は、酸化物となる原料中の金属を例示したものである。
(38)請求項38の発明は、前記酸化物となる金属を含む原料として、Mn(pmcp)2を用いることを特徴とする。
【0062】
本発明は、酸化物となる金属を含む原料を例示したものである。
(39)請求項39の発明は、前記金属微粒子は、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、及びルテニウム(Ru)のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0063】
本発明は、金属微粒子となる金属を例示したものである。
(40)請求項40の発明は、前記金属微粒子となる原料として、Cu(tmhd)2、Cu(acac)2、及びCu(hfac)2のいずれか1種を有機溶媒に溶かしたものを用いることを特徴とする。
【0064】
本発明は、金属微粒子となる原料を例示したものである。
(41)請求項41の発明は、前記複合層を形成した後に、前記複合層の表面に金属膜を形成する手段を備えたことを特徴とする。
【0065】
これにより、複合層の上に金属膜を形成した積層膜を形成することができる。
(42)請求項42の発明は、絶縁性表面上に複合層を介して金属膜を積層した積層膜において、前記複合層は、金属と酸化物とによって構成される複合層であり、該複合層の金属濃度が、前記絶縁性表面側から前記金属膜側に向かって高くなることを特徴とする。
【0066】
本発明では、複合層の金属濃度が、絶縁性表面側から金属膜側に向かって高くなっているので、複合層(その金属成分の濃度が低い側)と絶縁膜との接合強度が向上するとともに、複合層(その金属成分の濃度が高い側)と金属膜との接合強度が向上し、結果として、基板に対しての金属膜の接合強度が向上する。
【0067】
(43)請求項43の発明は、前記複合層の金属濃度が、前記絶縁性表面側から前記金属膜側に向かって、傾斜するように徐々に高くなる又はステップ状に高くなることを特徴とする。
【0068】
本発明は、複合層の膜厚方向における濃度の変化を例示したものである。
(44)請求項44の発明は、前記複合層の金属の含有量又は酸化物の含有量が、複合層の膜厚方向10nmに対して10%以上変化することを特徴とする。
【0069】
本発明は、複合層の膜厚方向における金属又は酸化物の濃度の変化を例示したものである。本発明のように、複合層中の金属の含有量又は酸化物の含有量が、複合層の膜厚方向10nmに対して10%以上変化する(例えば増加する)構成の場合には、複合層の厚みを50nm以下とすることができるという利点がある。
【0070】
なお、濃度の変化は、例えばSIMS(二次イオン質量分析器)、XPS(X線光電子分光装置)を用いて、複合層の厚み(深さ)方向の濃度を測定することにより得ることができる。
【0071】
(45)請求項45の発明は、前記複合層の金属は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする。
本発明は、複合層における金属と酸化物を構成する元素(例えば金属酸化物中の金属)との特性を例示したものである。
【0072】
(46)請求項46の発明は、前記複合層の酸化物は、金属酸化物であることを特徴とする。
本発明は、複合層の酸化物を例示したものである。
【0073】
(47)請求項47の発明は、前記金属酸化物は、マンガン酸化物、チタン酸化物、アルミ酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、及びチタン酸ストロンチウムのうち、少なくとも1種であることを特徴とする。
【0074】
本発明は、複合層中の金属酸化物を例示したものである。
(48)請求項48の発明は、前記複合層の金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びルテニウム(Ru)のうち、少なくとも1種であることを特徴とする。
【0075】
本発明は、複合層中の金属(金属酸化物中の金属ではない金属)を例示したものである。
(49)請求項49の発明は、前記絶縁性原料は、酸化珪素(SiO2)、及び窒化珪素(SiN)のうち、少なくとも1種であることを特徴とする。
【0076】
本発明は、絶縁性原料を例示したものである。
(50)請求項50の発明は、前記絶縁性原料からなる表面は、三次元構造を有していることを特徴とする。
【0077】
本発明は、絶縁性原料からなる表面を例示したものである。
ここで、三次元構造とは、例えば絶縁性原料からなる絶縁膜の平面方向及び厚み方向において、凹凸等の変化がある形状を示している。
【0078】
(51)請求項51の発明は、前記三次元構造は、アスペクト比100以上のトレンチ又は孔であることを特徴とする。
本発明は、三次元構造を例示したものである。なお、アスペクト比とは、細径の凹部(トレンチ)又は孔において、その直径(円で無い場合は円に換算した場合の直径)に対する深さの比である。
【0079】
(52)請求項52の発明は、前記金属膜原料は、銅(Cu)及びルテニウム(Ru)のうち、少なくとも1種であることを特徴とする。
本発明は、金属膜原料を例示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(a)実施例1の積層膜を模式的に示す説明図、(b)は中間層における金属及び酸化物の濃度勾配を示す説明図である。
【図2】実施例1の成膜装置を示す説明図である。
【図3】実施例2の成膜装置を示す説明図である。
【図4】実施例3の成膜装置を示す説明図である。
【図5】(a)実施例4の積層膜を模式的に示す説明図、(b)は中間層における金属及び酸化物の濃度の変化を示す説明図である。
【図6】(a)従来技術の積層膜を模式的に示す説明図、(b)は中間層における酸化物と導電体の濃度を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
次に、本発明の成膜方法及び成膜装置並びに積層膜ついて、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0082】
a)まず、本実施例の積層膜を形成するために用いられる成膜装置について説明する。
本実施例の成膜装置は、超臨界成膜の技術を用いて、図1(a)に示す様に、表面に絶縁膜1を備えた基板3上に、薄膜の中間層(複合層)5及び薄膜の金属膜7からなる積層膜9を形成するためのものである。
【0083】
図2に示す様に、本実施例の成膜装置11は、流路の上流側より、主として、第1管路13及び第2管路15と、シリンジポンプ17と、第3管路19と、チャンバー21と、第4管路23とを備えている。また、第3管路19には、第5管路25と、第6管路227と、第7管路29とが接続されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0084】
第1管路13は、水素ガス(H2)をシリンジポンプ17に供給する管路であり、その管路には、上流側より、逆止弁31と2つの手動弁33、35とを備えている。なお、この手動弁33、35は、管路の開閉を調節できる弁である(以下同様)。
【0085】
第2管路15は、超臨界流体となる二酸化炭素ガス(CO2)を、第1管路13を介してシリンジポンプ17に供給する管路であり、その管路には、二酸化炭素ガスを加圧してシリンジポンプ17に供給するためのポンプ37と逆止弁38と手動弁39とを備えている。なお、この第2管路15は、第1管路13の両手動弁33、35の間に接続されている。
【0086】
シリンジポンプ17は、シリンジポンプ17内に供給された水素ガスと二酸化炭素ガスを混合して加圧し、その混合ガスを第3管路19に供給するポンプである。
第3管路19は、シリンジポンプ17からチャンバー21に混合ガスを供給するための管路であり、その管路には、逆止弁40と手動弁41、43とを備えている。
【0087】
チャンバー21は、基板表面に積層膜9を形成するための反応室である。
第4管路23は、チャンバー21内のガスを排出するための管路であり、その管路には、上流側より、手動弁45と、チャンバー21内の圧力を所定の圧力に調整するための自動圧力調整弁47とを備えている。
【0088】
第5管路25は、中間層5を構成する金属を供給するための中間層用の金属用原料[金属(中間層)用原料]を、第3管路19を介してチャンバー21に供給するための管路であり、その管路には、上流側より、中間層用の金属原料を収容する第1容器49と、中間層用の金属用原料を第3管路19に供給するポンプ51と、逆止弁53と、手動弁55とを備えている。
【0089】
第6管路27は、中間層5を構成する金属酸化物を供給するための中間層用の金属酸化物用原料[金属酸化物(中間層)用原料]を、第3管路19を介してチャンバー21に供給するための管路であり、その管路には、上流側より、中間層用の金属酸化物用原料を収容する第2容器57と、中間層用の金属原料を第3管路19に供給するポンプ59と、逆止弁61と、手動弁63とを備えている。
【0090】
第7管路29は、金属膜を形成するための金属膜用の金属用原料[金属用原料]を、第3管路19を介してチャンバー21に供給するための管路であり、その管路には、上流側より、金属膜用の金属酸化物用原料を収容する第3容器65と、金属膜用の金属用原料を第3管路19に供給するポンプ67と、逆止弁69と、手動弁71とを備えている。
【0091】
なお、第5〜第7管路25〜29は、両手動弁41、43の間の第3管路19に接続されている。
b)次に、前記成膜装置11を用いて行われる成膜方法について説明する。
【0092】
(1)まず、チャンバー21内に、表面にSiO2からなる絶縁膜1を有する基板(Si基板)3を設置し、チャンバー21を閉じる。なお、チャンバー21では、ガスの流入、流出は可能である。
【0093】
(2)次に、ポンプ37を作動させ、CO2を第2管路15を介して装置全体(即ち管路内やチェンバー内等の装置内部:流路内部)に供給する(流量10ml/min)。このとき、各手動弁39、35、41、43、45は開いておき、他の手動弁33、55、63、71は閉じておく。
【0094】
そして、配管に取り付けたヒータ(図示せず)により、装置全体を50℃に保ち、基板3の近傍に取り付けたヒータ(図示せず)により、基板3を200℃に保つ。
また、自動圧力調整弁47により、装置全体の圧力を15MPaに保つ。
【0095】
(3)次に、手動弁33を開いて、25℃のH2を1MPaの分量シリンジポンプ17に供給し(流量1ml/min)、その後、25℃のCO2をシリンジポンプ17内が10Mpaになるまで供給し(流量10ml/min)、手動バルブ35を閉じた。その後、シリンジポンプ17全体をヒータ(図示せず)により昇温させ、シリンジポンプ17内を、50℃、15MPaの圧力に保ち、両ガスを混合して混合流体を作製した。なお、このとき、シリンダポンプ17内は密閉状態として混合流体を作製した。
【0096】
ここで、混合流体中のCO2ガスは、その臨界点(圧力7.38MPa、温度31.1℃)を超える超臨界状態である。なお、この混合流体の組成比(モル比)は、H2:CO2=1:9である。
【0097】
(4)また、積層膜9を形成する原料として、金属(中間層)用原料(中間層5の金属を生成するための前駆体)と、金属酸化物(中間層)用原料(中間層5の金属酸化物を生成するための前駆体)と、金属用原料(金属膜7の金属を生成するための前駆体)とを用意した。
【0098】
具体的には、金属(中間層)用原料としては、原料のCu(tmhd)2(化学式:C2240CuO4)780mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として準備した。
【0099】
また、金属酸化物(中間層)用原料としては、原料のMn(pmcp)2(化学式:C2030Mn)588gを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを準備した。
更に、金属用原料としては、原料のCu(tmhd)2(化学式:C2240CuO4)780mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として準備した。
【0100】
なお、金属用原料としては、原料のRu(tmhd)3(化学式:C33576Ru)1173mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として用いてもよい。
【0101】
(5)そして、混合流体と、金属(中間層)用原料と、金属酸化物(中間層)用原料とをチャンバー21内に5分に渡り供給した。このとき、混合流体及び各原料を供給する際には、各手動弁55、63を開くとともに、各ポンプ51、59を作動させた。
【0102】
なお、装置全体の温度は50℃、基板温度は200℃に保ち、圧力は、自動圧力調整弁47により15MPaに保持した。
具体的には、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、金属(中間層)用原料は0.7ml/minで一定流量とし、金属酸化物(中間層)用原料は0.7ml/minから−0.08ml/minの一定変化流速にて変化させ(徐々に流速が低下するように変化させ)、5分後に0.3ml/minになるように変化させた。
【0103】
即ち、金属(中間層)用原料と金属酸化物(中間層)用原料との供給比率(金属(中間層)用原料/金属酸化物(中間層)用原料)を、5分間で1から2.3に一定変化量で変化させた。つまり、原料の供給比率を時間と共に連続的に変化させた(金属(中間層)用原料の供給比率を連続的に増加させた)。
【0104】
なお、金属(中間層)用原料と金属酸化物(中間層)用原料の供給比率の調整は、ポンプ51、59による原料の供給量(流量)の調整(詳しくはポンプ51、59の回転数の調節)によって行い、混合流体の供給量(流量)の設定は、シリンジポンプ17の動作(混合流体を供給する場合は、流入側は閉じ流出側は開く)により行った(以下同様)。
【0105】
そして、所定時間後(例えば原料供給から5分後)に、金属(中間層)用原料と金属酸化物(中間層)用原料との供給を停止した。なお、原料の供給を停止する際には、各手動弁55、63を閉じるとともに、各ポンプ51、59を停止させた。
【0106】
これにより、厚さ50nmの中間層5、詳しくは、中間層5中の金属(Cu)の濃度の勾配が膜厚方向(厚みが増加する方向)に1nm当たり1.5%増加する中間層5が形成された。なお、中間層5中の金属酸化物(MnO及びMnO2)の濃度の勾配は、金属とは逆に、膜厚方向に1nm当たり1.5%減少していた。
【0107】
ここで、中間層5の形成過程を詳細に説明する。
超臨界状態の二酸化炭素ガス中に供給された金属(中間層)用原料であるCu(tmhd)2は、還元剤である水素ガスによって還元されて、中間層5中の金属(Cu)として析出する。また、超臨界状態の二酸化炭素ガス中供給された金属酸化物(中間層)用原料であるMn(pmcp)2は、二酸化炭素によって酸化されて、中間層5中の金属酸化物(マンガン酸化物:MnO2、MnO)として析出する。
【0108】
ここで、中間層5中のCuは、金属酸化物を構成するMnよりも酸化されにくい原料であるので、本実施例のように、中間層5中にCuとMnの酸化物が析出する。
なお、物質の酸化され易さの指標としては、例えばエリンガム図が知られており、エリンガム図の下方にある物質、即ち、酸化物の標準反応ギブスエネルギーの低いものが酸化され易い。
【0109】
(6)次に、前記中間層5の形成後に、混合流体と金属用原料とを、チャンバー21内に10分に渡り供給した。このとき、原料を供給する際には、手動弁71を開くとともに、ポンプ67を作動させた。なお、装置全体の温度は50℃、基板温度は200℃に保ち、圧力は、自動圧力調整弁47により15MPaとした。
【0110】
具体的には、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、金属用原料は、0.7ml/minの一定の流量で供給した。なお、金属用原料の供給量の調節は、ポンプ67の回転数の調節によって行った。
【0111】
そして、所定時間後(例えば原料供給から10分後)に、混合流体と金属用原料との供給を停止した。なお、原料の供給を停止する際には、手動弁71を閉じるとともに、ポンプ67を停止させた。
【0112】
これにより、100nmの厚みの金属膜7が形成された。
なお、超臨界状態の二酸化炭素ガス中に供給された金属用原料であるCu(tmhd)2は、還元剤である水素ガスによって還元されて、金属膜5を構成する金属(Cu)として析出する。
【0113】
c)この様に、本実施例では、基板表面の絶縁膜1の表面に、超臨界技術によって中間層5を形成する際には、時間と共に金属(中間層)用原料の供給比率を徐々に増加させたので、図1(b)に示す様に、中間層21における金属の濃度は、絶縁膜1側から金属膜7側に向かって、一定の勾配で増加している。なお、金属酸化物の濃度は、金属の濃度とは逆に(相補的に)一定の勾配で減少する。
【0114】
従って、この中間層5は絶縁膜1に対しても高い接合強度を有するとともに、金属膜7に対しても高い接合強度を有する。すなわち、中間層5及び金属膜7からなる積層膜9は、基板表面の絶縁膜1に対して(従って基板3に対して)高い接合強度を有している。
【実施例2】
【0115】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例は、中間層を形成する原料として、金属微粒子を用いる点が、前記実施例1とは大きく異なる。
【0116】
a)まず、本実施例の積層膜を形成するために用いられる成膜装置について説明するが、この成膜装置は、前記実施例1とほぼ同様であるので、簡単に説明する。
図3に示す様に、本実施例の成膜装置81は、流路の上流側より、主として、第1管路83及び第2管路85と、シリンジポンプ87と、第3管路89と、チャンバー91と、第4管路93とを備えている。また、第3管路89には、第5管路95と、第6管路97と、第7管路99とが接続されている。
【0117】
第1管路33には、逆止弁101と2つの手動弁103、105とを備えている。
第2管路85には、ポンプ107と逆止弁108と手動弁109とを備えている。
第3管路89には、逆止弁110と手動弁111、113とを備えている。
【0118】
第4管路93には、手動弁115と自動圧力調整弁117とを備えている。
第5管路95には、中間層用の金属用原料[金属(中間層)用原料]を収容する第1容器119と、ポンプ121と、逆止弁123と、手動弁125とを備えている。
【0119】
第6管路97には、中間層用の金属酸化物用原料[金属酸化物(中間層)用原料]を収容する第2容器127と、ポンプ129と、逆止弁131と、手動弁133とを備えている。
【0120】
第7管路99には、金属膜用の金属用原料[金属用原料]を収容する第3容器135と、ポンプ137と、逆止弁139と、手動弁141とを備えている。
b)次に、前記成膜装置81を用いて行われる成膜方法について説明する。なお、各層には前記図1(a)と同じ番号を使用する。
【0121】
(1)まず、チャンバー91内に、表面にSiO2からなる絶縁膜1を有する基板(Si基板)3を設置し、チャンバー91を閉じる。
(2)次に、ポンプ107を作動させ、CO2を第2管路85を介して装置全体(即ち管路内やチェンバー内等の装置内部)に供給する(流量10ml/min)。このとき、手動弁109、105、111、113、115は開いておき、手動弁103、125、133、141は閉じておく。
【0122】
そして、配管に取り付けたヒータ(図示せず)により、装置全体を50℃に保ち、基板3近傍に取り付けたヒータ(図示せず)により、基板3を200℃に保つ。
また、自動圧力調整弁117により、装置全体の圧力を15MPaに保つ。
【0123】
(3)次に、手動弁103を開いて、前記実施例1と同様に、25℃のH2を1MPaの分量シリンジポンプ87に供給し(流量1ml/min)、その後、25℃のCO2を10Mpaになるまで供給し(流量10ml/min)、手動弁105を閉じた。その後、シリンジポンプ87全体をヒータ(図示せず)により昇温させ、シリンジポンプ87内を、50℃、15MPaの圧力に保ち、両ガスを混合して混合流体を作製した。なお、この混合流体の組成比(モル比)は、H2:CO2=1:9である。
【0124】
(4)また、積層膜9を形成する原料として、金属(中間層)用原料と、金属酸化物(中間層)用原料と、金属用原料とを用意した。
具体的には、金属(中間層)用原料としては、溶媒として水を用いて、金属濃度4質量%、粒径5nmのAuナノ粒子コロイド溶液を準備した。
【0125】
また、金属酸化物(中間層)用原料としては、原料のMn(pmcp)2(化学式:C2030Mn)588gを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを準備した。
更に、金属用原料としては、原料のCu(tmhd)2(化学式:C2240CuO4)780mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として準備した。
【0126】
なお、金属用原料としては、原料のRu(tmhd)3(化学式:C33576Ru)1173mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として用いてもよい。
【0127】
(5)そして、混合流体と、金属(中間層)用原料と、金属酸化物(中間層)とをチャンバー91内に5分に渡り供給した。なお、装置全体の温度は50℃、基板温度は200℃に保ち、圧力は、自動圧力調整弁117により15MPaに保持した。
【0128】
具体的には、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、金属(中間層)用原料は1ml/minで一定流量とし、金属酸化物(中間層)用原料は0.7ml/minから−0.08ml/minの一定変化流速で変化させ、5分後に0.3ml/minになるように変化させた。
【0129】
即ち、金属(中間層)用原料と金属酸化物(中間層)との供給比率を、5分間で1.4から3.3に一定変化量で変化させた。つまり、原料の供給比率を時間と共に連続的に変化させた(金属(中間層)用原料の供給比率を増加させた)。
【0130】
そして、所定時間後(例えば原料供給から5分後)に、金属(中間層)用原料と金属酸化物(中間層)用原料との供給を停止した。
これにより、厚さ50nmの中間層5、詳しくは、中間層5中の金属の濃度の勾配が膜厚方向に1nm当たり1.5%増加する中間層5が形成された。
【0131】
(6)次に、前記中間層3の形成後に、混合流体と、金属用原料とをチャンバー91内に10分に渡り供給した。このとき、手動弁141を開くとともに、手動弁125、133を閉じる。なお、チャンバー91内の温度は、200℃で、圧力は、自動圧力調整弁117により15MPaとした。
【0132】
具体的には、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、金属用原料は0.7ml/minの一定の流量で供給した。
そして、所定時間後(例えば原料供給から10分後)に、混合流体と金属用原料との供給を停止した。
【0133】
これにより、100nmの厚みの金属膜7が形成された。
c)本実施例においても、基板表面の絶縁膜1の表面に、超臨界技術によって中間層5を形成する際には、時間と共に金属(中間層)用原料の供給比率を徐々に増加させたので、中間層21における金属の濃度は、絶縁膜1側から金属膜7側に向かって、一定の勾配で増加している。
【0134】
従って、この中間層5は絶縁膜1に対しても高い接合強度を有するとともに、金属膜7に対しても高い接合強度を有する。すなわち、中間層5及び金属膜7からなる積層膜9は、基板表面の絶縁膜1に対して(従って基板3に対して)高い接合強度を有している。
【実施例3】
【0135】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
a)まず、本実施例の積層膜を形成するために用いられる成膜装置について説明する。
図4に示す様に、本実施例の成膜装置151は、流路の上流側より、主として、第1管路153及び第2管路155と、シリンジポンプ157と、第3管路159と、プレチャンバー161と、第4管路163と、チャンバー165と、第5管路165とを備えている。
【0136】
また、プレチャンバー161には、第6管路169が接続され、第3管路159には、第7管路171が接続され、第4管路163には、第8管路173と第9管路175とが接続されている。更に、第1管路153から分岐する第1、2分岐管路177、179は、シリンジポンプ157の上流側と下流側の開口に接続されている。
【0137】
更に、プレチャンバー161をバイパスするように、第3管路159と第4管路163とを接続するバイパス管路181が設けられている。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0138】
第1管路153は、超臨界流体となる二酸化炭素ガス(CO2)を、シリンジポンプ157に供給する管路であり、その管路には、ポンプ183と逆止弁184とが設けられるとともに、第1分岐管路177には、手動弁185、187が設けられ、2分岐管路1779には、手動弁189、191と逆止弁192とが設けられている。
【0139】
第2管路155は、水素ガス(H2)をシリンジポンプ157に供給する管路であり、その管路には、逆止弁193と手動弁195とを備えている。なお、第2管路155は、第1分岐管路177の両手動弁185、187の間に接続されている。
【0140】
第3管路159は、第2分岐管路179の両手動弁189、191間とプレチャンバー161とを接続する管路であり、その管路には、手動弁197が設けられている。
プレチャンバー161は、熱反応によって金属微粒子を生成するための反応室である。
【0141】
第4管路163は、プレチャンバー161とチャンバー165とを接続する管路であり、その管路には、手動弁199と逆止弁201と手動弁203とを備えている。
チャンバー165は、基板表面に積層膜9を形成するための反応室である。
【0142】
第5管路167は、チャンバー165内のガスを排出するための管路であり、その管路には、手動弁205と、チャンバー165内の圧力を所定の圧力に調整するための自動圧力調整弁207とを備えている。
【0143】
第6管路169は、プレチャンバー161内のガスを排出するための管路であり、その管路には、手動弁209と、プレチャンバー161内の圧力を所定の圧力に調整するための自動圧力調整弁211とを備えている。
【0144】
第7管路171は、中間層用の金属用原料[金属(中間層)用原料]を、第3管路159を介してプレチャンバー161に供給するための管路であり、その管路には、中間層用の金属用原料を収容する第1容器213と、ポンプ215と、逆止弁217と、手動弁219とを備えている。なお、第7管路171は、第3管路159の手動弁197より上流側に接続されている。
【0145】
第8管路173は、中間層用の金属酸化物用原料[金属酸化物(中間層)用原料]を、第4管路163を介してチャンバー165に供給するための管路であり、その管路には、中間層用の金属酸化物用原料を収容する第2容器221と、ポンプ223と、逆止弁225と、手動弁227とを備えている。なお、第8管路173は、第4管路163の逆止弁201と手動弁203との間に接続されている。
【0146】
第9管路175は、金属膜用の金属用原料[金属用原料]を、第4管路163を介してチャンバー165に供給するための管路であり、その管路には、金属膜用の金属酸化物用原料を収容する第3容器229と、ポンプ231と、逆止弁233と、手動弁235とを備えている。なお、第9管路175は、第4管路163の逆止弁201と手動弁203との間に接続されている。
【0147】
なお、バイパス管路181は、第3管路159の手動弁197の上流側と第4管路163の手動弁199と逆止弁201との間とを接続する管路であり、その管路には、手動弁237が設けられている。
【0148】
b)次に、前記成膜装置151を用いて行われる成膜方法について説明する。
(1)まず、チャンバー165内に、表面にSiO2からなる絶縁膜1を有する基板(Si基板)3を設置し、チャンバー165を閉じる。
【0149】
(2)次に、ポンプ183を作動させ、CO2を第1管路153を介して装置全体(即ち管路内やプレチェンバー内やチェンバー内等の装置内部)に供給する(流量10ml/min)。このとき、手動弁185、187、191、197、199、203、205、209、237は開いておき、手動弁195、219、227、235は閉じておく。
【0150】
そして、配管に取り付けたヒータ(図示せず)により、装置全体を50℃に保ち、基板3近傍に取り付けたヒータ(図示せず)により、基板3を200℃に保つ。
また、自動圧力調整弁207により、装置全体の圧力を15MPaに保つ。
【0151】
(3)次に、手動弁195を開いて、前記実施例1と同様に、25℃のH2を1MPaの分量シリンジポンプ157に供給し(流量1ml/min)、手動弁187を閉じる。その後、25℃のCO2を10Mpaになるまで供給し(流量10ml/min)、シリンジポンプ157全体をヒータ(図示せず)により昇温させ、シリンジポンプ157内を、50℃、15MPaの圧力に保ち、両ガスを混合して混合流体を作製した。なお、この混合流体の組成比(モル比)は、(H2:CO2=1:9)である。
【0152】
(4)また、積層膜9を形成する原料として、金属(中間層)用原料と、金属酸化物(中間層)用原料と、金属用原料とを用意した。
具体的には、金属(中間層)用原料としては、原料のCu(acac)2(化学式:C1014CuO4)473mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として準備した。
【0153】
また、金属酸化物(中間層)用原料としては、原料のMn(pmcp)2(化学式:C2030Mn)588gを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを準備した。
更に、金属原料としては、原料のCu(tmhd)2(化学式:C2240CuO4)780mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として準備した。
【0154】
なお、金属用原料としては、原料のRu(tmhd)3(化学式:C33576Ru)1173mgを、溶媒のアセトン100mlの割合で溶かしたものを原料の溶液として用いてもよい。
【0155】
(5)そして、まず、金属(中間層)用原料を、プレチャンバー161内に5分に渡り供給した。
具体的には、CO2、金属(中間層)用原料ともに2ml/minの一定流量で供給した。このとき、手動弁189、197、209、219は開き、手動弁185、191、199、237は閉じ、圧力は、自動圧力調整弁211により15MPaに保持した。
【0156】
次に、プレチャンバー161を250℃に昇温させ、熱反応によって、Cu(acac)2から平均粒径10nmのCu粒子を生成した。
その後、混合流体と、生成したCu粒子と、金属酸化物(中間層)用原料とを、チャンバー165内に5分に渡り供給した。なお、混合流体の作成手法は、前記実施例1と同様である。このとき、手動弁185、195、187、191、197、199、227、203、205は開き、手動弁189、219、237、209、235は閉じる。なお、装置全体の温度は50℃、基板温度は200℃に保ち、圧力は、自動圧力調整弁207により15MPaに保持した。
【0157】
具体的には、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、Cu粒子は、混合流体により一定量(例えば質量%)ずつ押し流した。さらに、金属酸化物(中間層)用原料0.7ml/minから−0.08ml/minの一定変化流速で変化させ、5分後に0.3ml/minになるように変化させた。
【0158】
すなわち、原料の供給比率を時間と共に連続的に変化させた(金属(中間層)用原料の供給比率を増加させた)。
そして、所定時間後(例えば原料供給から5分後)に、金属(中間層)用原料と金属酸化物(中間層)用原料との供給を停止した。
【0159】
これにより、厚さ50nmの中間層5、詳しくは、中間層5中の金属の濃度の勾配が膜厚方向に1nm当たり1.5%増加する中間層5が形成された。
(6)次に、前記中間層3の形成後に、混合流体と、金属用原料とをチャンバー165内に10分に渡り供給した。このとき、手動弁191、203、205、235、237は開き、手動弁185、187、189、195、197、199、209、219、227は閉じる。なお、チャンバー165内の温度は、200℃で、圧力は、自動圧力調整弁207により15MPaとした。
【0160】
具体的には、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、金属用原料は、0.7ml/minの一定の流量で供給した。
そして、所定時間後(例えば原料供給から10分後)に、混合流体と金属用原料との供給を停止した。
【0161】
これにより、100nmの厚みの金属膜7が形成された。
c)本実施例においても、基板表面の絶縁膜1の表面に、超臨界技術によって中間層5を形成する際には、時間と共に金属(中間層)用原料の供給比率を徐々に増加させたので、中間層5における金属の濃度は、絶縁膜1側から金属膜7側に向かって、一定の勾配で増加している。
【0162】
従って、この中間層5は絶縁膜1に対しても高い接合強度を有するとともに、金属膜7に対しても高い接合強度を有する。すなわち、中間層5及び金属膜7からなる積層膜9は、基板表面の絶縁膜1に対して(従って基板3に対して)高い接合強度を有している。
【実施例4】
【0163】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例では、前記実施例1のように、時間と共に金属(中間層)用原料の供給比率を徐々に増加させるのではなく、供給比率をステップ状に変化させる。
【0164】
具体的には、図5(a)に示す様に、基板301の表面の絶縁膜303上に中間層305を形成する際には、金属酸化物(中間層)用原料の供給を、0.7ml/minから1分おきに−0.08ml/min変化させる。
【0165】
これにより、図5(b)に示す様に、中間層305における金属の濃度は、絶縁膜303側から金属膜307側に向かって、一定厚み毎(例えば10nm)に一定の濃度(例えば15%)ずつステップ(階段状に)変化する。なお、金属酸化物の濃度は、金属の濃度とは逆に(相補的に)ステップ状に減少する。
【0166】
従って、この中間層305は絶縁膜303に対しても高い接合強度を有するとともに、金属膜307に対しても高い接合強度を有する。すなわち、中間層305及び金属膜307からなる積層膜309は、基板表面の絶縁膜303に対して(従って基板301に対して)高い接合強度を有している。
【実施例5】
【0167】
次に、実施例5について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例では、シリコン基板の表面に、アスペクト比100以上のトレンチ(図示せず)、具体的には、深さ50μm、開口幅0.5μm、アスペクト比100のトレンチを形成し、熱酸化により基板表面に絶縁膜を0.5μm形成した。その基板表面に、前記実施例1と同様にして積層膜を形成した。
【0168】
また、シリコン基板に、アスペクト比100以上の孔(貫通孔)(図示せず)、具体的には、深さ(基板厚み)625μm、直径5μm、アスペクト比125の孔を形成し、その基板表面に、前記実施例1と同様にして積層膜を形成した。
【0169】
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例6】
【0170】
次に、実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例では、実施例1とは、中間層における金属(及び金属酸化物)の濃度勾配が異なる。
【0171】
本実施例では、中間層(図示せず)を形成する際に、混合流体は1.25ml/minの一定流量で供給した。また、金属(中間層)用原料は0.7ml/minで一定流量とし、金属酸化物(中間層)用原料は0.7ml/minから−0.05ml/minの一定変化流速で変化させ、5分後に0.45ml/minになるように変化させた。なお、中間層を形成する際の他の製造条件は、実施例1と同様である。
【0172】
これにより、膜厚が50nmの中間層が得られた。この中間層における金属の含有量は、中間層の膜厚方向10nmに対して10%変化(増加)したものであった。なお、金属酸化物の濃度勾配は、金属とは逆に膜厚方向10nmに対して10%減少した。
【0173】
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0174】
(1)例えば前記絶縁膜の原料として、酸化珪素以外に、窒化珪素(SiN)を用いてもよい。
(2)前記中間層を形成する酸化物として、金属酸化物ではなく、例えばシリコン酸化物を採用することができる。
【0175】
(3)中間層を形成する金属酸化物として、マンガン酸酸化物(MnO2、MnO)以外に、チタン酸化物(TiO2)、アルミ酸化物(Al23)、ハフニウム酸化物(HfO2)、タンタル酸化物(Ta25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)が挙げられる。
【0176】
この場合、各酸化物となる原料として、Ti(O・i−Pr)2(dpm)2(化学式:C28526Ti)、Al(hfac)3(化学式:C153183Al)、Hf(tmhd)4(化学式:C44808Hf)、Ta(i−OC375(化学式:C15355Ta)、Sr(tmhd)2(化学式:C22404Sr)を用いることができる。
【0177】
(4)中間層を形成する金属(金属酸化物を構成する金属以外の金属)として、銅(Cu)以外に、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)を採用できる。
この場合、銅となる原料として、Cu(tmhd)2以外に、Cu(acac)2、Cu(hfac)2を用いることができる。
【0178】
また、他の金属となる原料として、NiCp2、Ru(tmhd)3を用いることができる。なお、Cpとは、bis-cyclopentadienylのことである。
(5)金属微粒子を構成する金属として、金以外に、銅、ニッケル、ルテニウムを用いることができる
(6)前記金属用原料として、例えばCu(hfac)2(化学式:C10212CuO2)や、Ru(tmhd)3(化学式:C33576Ru)を用いても良い。
【0179】
(7)例えば前記各実施例では、手動で操作する成膜装置について述べたが、例えば手動弁に代えて電磁制御弁(開閉弁)を使用し、その電磁制御弁の開閉のタイミングや開閉の程度を電子制御装置によって制御して、自動的に積層膜を行ってもよい。また、ポンプの動作も電子制御装置によって制御することができる。
【0180】
なお、金属の濃度を調節する手法としては、ポンプによる供給量を調節する方法以外に、電磁制御弁のデューティ比制御を行って、その開度を調節してもよい。
【符号の説明】
【0181】
1、303…絶縁膜
3、301…基板
5、305…中間層
7、307…金属膜
9、309…積層膜
11、81、151…成膜装置
17、87、157…シリンジポンプ
21、91、165…チャンバー
47、117、207、211…自動圧力調整弁
161…プレチャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体に、金属となる原料と酸化物となる原料とを供給して、超臨界成膜によって金属と酸化物とを含む複合層を形成する成膜方法であって、
前記超臨界成膜を行う際には、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させる、又は、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って減少させることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
基板の表面の絶縁膜上に、金属と酸化物とを含む複合層である中間層を介して金属膜を積層して、積層膜を形成する成膜方法であって、
前記基板に対して、超臨界流体と前記複合層中の金属となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料とを供給して、前記複合層の超臨界成膜を行うとともに、
前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の酸化物となる原料に対する前記複合層中の金属となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って増加させる、又は、前記複合層中の金属となる原料に対する前記複合層中の酸化物となる原料の供給比率を膜厚の増加に伴って減少させることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
前記超臨界流体に、還元剤と、前記複合層中の金属となる原料と、前記酸化物となる原料と、を溶解し、
前記超臨界成膜を行う際には、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って増加させる、又は、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って増加させるとともに、
前記還元剤によって、前記金属となる原料を還元して複合層中に金属を析出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記還元剤は、水素であることを特徴とする請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記超臨界成膜を行う際には、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させる、或いは、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に減少させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
酸化剤成分を含む前記超臨界流体を用い、前記超臨界流体中の酸化剤成分によって、前記酸化物となる原料を酸化して酸化物を複合層中に析出させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記金属となる原料中の金属は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記酸化物となる原料は、シリコンを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記酸化物となる原料は、金属を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記酸化物となる原料中の金属は、マンガン、チタン、アルミムウム、ハフニウム、タンタル、及びストロンチウムのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記酸化物となる金属を含む原料として、Mn(pmcp)2を用いることを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記金属となる原料中の金属は、銅、ニッケル、及びルテニウムのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記金属となる原料として、Cu(tmhd)2、Cu(acac)2、及びCu(hfac)2のいずれか1種を有機溶媒に溶かしたものを用いることを特徴とする請求項12に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記複合層を形成した後に、前記複合層の表面に金属膜を形成することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項15】
超臨界流体に、金属となる原料と酸化物となる原料とを供給して、超臨界成膜によって金属と酸化物とを含む複合層を形成する成膜装置であって、
前記超臨界成膜を行う際に、前記金属となる原料と前記酸化物となる原料との供給比率を変更する手段を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項16】
基板の表面の絶縁膜上に、超臨界成膜によって、金属と酸化物とを含む複合層である中間層を介して金属膜を積層して積層膜を形成する成膜装置であって、
前記基板に対して、超臨界流体と前記複合層中の金属となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料とを供給する手段と、
前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の金属となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料との供給比率を変更する手段と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項17】
前記供給比率を変更する手段によって、前記酸化物となる原料に対する前記金属となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させる、又は、前記金属となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に減少させることを特徴とする請求項15又は16に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記超臨界流体に、還元剤を供給する手段を備え、
前記還元剤によって、前記金属となる原料を還元して複合層中に金属を析出させることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項19】
前記還元剤は、水素であることを特徴とする請求項18に記載の成膜装置。
【請求項20】
酸化剤成分を含む前記超臨界流体を用い、前記超臨界流体中の酸化剤成分によって、前記酸化物となる原料を酸化して酸化物を複合層中に析出させることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項21】
前記金属となる原料中の金属は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項22】
前記酸化物となる原料は、シリコンを含むことを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項23】
前記酸化物となる原料は、金属を含むことを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項24】
前記酸化物となる原料中の金属は、マンガン、チタン、アルミムウム、ハフニウム、タンタル、及びストロンチウムのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項23に記載の成膜装置。
【請求項25】
前記酸化物となる金属を含む原料として、Mn(pmcp)2を用いることを特徴とする請求項24に記載の成膜装置。
【請求項26】
前記金属となる原料中の金属は、銅、ニッケル、及びルテニウムのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項15〜25のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項27】
前記金属となる原料として、Cu(tmhd)2、Cu(acac)2、及びCu(hfac)2のいずれか1種を有機溶媒に溶かしたものを用いることを特徴とする請求項26に記載の成膜装置。
【請求項28】
前記複合層を形成した後に、前記複合層の表面に金属膜を形成する手段を備えたことを特徴とする請求項15〜27のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項29】
超臨界流体に、金属微粒子又は金属微粒子となる原料と酸化物となる原料とを供給して、超臨界成膜によって金属と酸化物とを含む複合層を形成する成膜装置であって、
前記超臨界成膜を行う際に、前記金属微粒子の供給量と前記酸化物となる原料の供給量との供給比率を変更する手段を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項30】
基板の表面の絶縁膜上に、超臨界成膜によって、金属と酸化物とを含む複合層である複合層を介して金属膜を積層して積層膜を形成する成膜装置であって、
前記基板に対して、超臨界流体と前記複合層中の金属となる金属微粒子又は金属微粒子となる原料と前記複合層中の酸化物となる原料とを供給する手段と、
前記超臨界成膜を行う際には、前記複合層中の金属となる金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給量と前記複合層中の酸化物となる原料の供給量との供給比率を変更する手段と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項31】
前記供給比率を変更する手段によって、前記酸化物となる原料に対する前記金属微粒子又は金属微粒子となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に増加させる、又は、前記金属微粒子又は金属微粒子となる原料に対する前記酸化物となる原料の供給比率を、膜厚の増加に伴って連続的又はステップ的に減少させることを特徴とする請求項29又は30に記載の成膜装置。
【請求項32】
前記超臨界流体に、前記金属微粒子となる原料を供給し、前記超臨界流体中の熱反応によって金属微粒子を形成する手段を備えたことを特徴とする請求項29〜31のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項33】
酸化剤成分を含む前記超臨界流体を用い、前記超臨界流体中の酸化剤成分によって、前記酸化物となる原料を酸化して酸化物を複合層中に析出させることを特徴とする請求項29〜32のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項34】
前記金属微粒子は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする請求項29〜33のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項35】
前記酸化物となる原料は、シリコンを含むことを特徴とする請求項29〜34いずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項36】
前記酸化物となる原料は、金属を含むことを特徴とする請求項29〜34のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項37】
前記酸化物となる原料中の金属は、マンガン、チタン、アルミムウム、ハフニウム、タンタル、及びストロンチウムのうち、少なくとも1種であることを特徴とする請求項36に記載の成膜装置。
【請求項38】
前記酸化物となる金属を含む原料として、Mn(pmcp)2を用いることを特徴とする請求項37に記載の成膜装置。
【請求項39】
前記金属微粒子は、銅、金、ニッケル、及びルテニウムのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項29〜38のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項40】
前記金属微粒子となる原料として、Cu(tmhd)2、Cu(acac)2、及びCu(hfac)2のいずれか1種を有機溶媒に溶かしたものを用いることを特徴とする請求項39に記載の成膜装置。
【請求項41】
前記複合層を形成した後に、前記複合層の表面に金属膜を形成する手段を備えたことを特徴とする請求項29〜40のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項42】
絶縁性表面上に複合層を介して金属膜を積層した積層膜において、
前記複合層は、金属と酸化物とによって構成される複合層であり、
該複合層の金属濃度が、前記絶縁性表面側から前記金属膜側に向かって高くなることを特徴とする積層膜。
【請求項43】
前記複合層の金属濃度が、前記絶縁性表面側から前記金属膜側に向かって、傾斜するように徐々に高くなる又はステップ状に高くなることを特徴とする請求項42に記載の積層膜。
【請求項44】
前記複合層の金属の含有量又は酸化物の含有量が、複合層の膜厚方向10nmに対して10%以上変化することを特徴とする請求項43に記載の積層膜。
【請求項45】
前記複合層の金属は、前記酸化物を構成する元素よりも酸化されにくい原料であることを特徴とする請求項42〜44のいずれか1項に記載の積層膜。
【請求項46】
前記複合層の酸化物は、金属酸化物であることを特徴とする請求項42〜45のいずれか1項に記載の積層膜。
【請求項47】
前記金属酸化物は、マンガン酸化物、チタン酸化物、アルミ酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、及びチタン酸ストロンチウムのうち、少なくとも1種であることを特徴とする請求項42〜46のいずれか1項に記載の積層膜。
【請求項48】
前記複合層の金属は、銅、ニッケル、及びルテニウムのうち、少なくとも1種であることを特徴とする請求項42〜47のいずれか1項に記載の積層膜。
【請求項49】
前記絶縁性原料は、酸化珪素、及び窒化珪素のうち、少なくとも1種であることを特徴とする請求項42〜48のいずれか1項に記載の積層膜。
【請求項50】
前記絶縁性原料からなる表面は、三次元構造を有していることを特徴とする請求項42〜49のいずれか1項に記載の積層膜。
【請求項51】
前記三次元構造は、アスペクト比100以上のトレンチ又は孔であることを特徴とする請求項50に記載の成膜装置。
【請求項52】
前記金属膜原料は、銅及びルテニウムのうち、少なくとも1種であることを特徴とする請求項42〜51のいずれか1項に記載の積層膜。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−111676(P2011−111676A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272122(P2009−272122)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月8日 社団法人 応用物理学会発行の「2009年(平成21年)秋季 第70回応用物理学会学術講演会 講演予稿集 No.2」に発表
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】