説明

成膜材料供給装置

【課題】 長期に亘って成膜材料の補給を必要とせずに真空蒸着装置を連続運転することが可能であり、かつその間、成膜材料を常に一定の供給速度でリングハースへ安定して供給することができる成膜材料供給装置を提供すること。
【解決手段】 成膜材料供給室10内において、例えば2週間程度は成膜材料の補給を必要としない量のMgOペレットを収容し得る成膜材料ホッパー11と、成膜材料ホッパー11から排出されるMgOペレットを計量して一定量のMgOペレットを収容する計量ホッパー21と、計量ホッパー21から排出されるMgOペレットを受けてそのまま成膜室20内へ導く漏斗状ホッパー31と、成膜室20内において、漏斗状ホッパー31からの受けるMgOペレットをリングハース50へ一定の速度で供給し、供給量が所定の値になると計量ホッパー21から補給される回転円筒フィーダ41とからなる成膜材料供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜材料供給装置に関するものであり、更に詳しくは、真空蒸着装置において、成膜材料を成膜材料供給室から成膜室のリングハースへ定量的に供給する成膜材料供給装置に関するものである。
【0002】
プラズマテレビに使用されているプラズマディスプレイパネル(PDP)のパネルとなる前面のガラス基板には放電電極が取り付けられており、その放電電極を保護するために酸化マグネシウム(MgO)の膜が形成されている。近年のプラズマテレビの著しい普及によってパネルの需要が急激に増大しており、それに応じてMgO成膜用の真空蒸着装置にも生産能力の増大が求められている。
【0003】
従来のMgO成膜用の真空蒸着装置におけるMgOの供給装置としては、図9に示すようなものが知られている(特許文献1を参照)。 図9を参照し、真空蒸着装置の中央部を占める成膜室120の上部には、電極の取り付けられている基板Gを水平な姿勢で搬入し搬出するキャリア128が設けられており、ガラス基板Gの下方には、保護膜の材料であるMgOペレットを蒸発させるための2個のリングハ−ス150が電子ビームを発生させるピアスガン151と共に配置されている。また、成膜室120の両端部の上方には成膜材料供給室110が設けられており、成膜材料供給室110にはMgOペレットを成膜室120内へ送り込む第2供給手段が設けられ、成膜材料供給室110とはゲートバルブ113を介して接続されている成膜室120内にはMgOペレットをリングハース150へ供給する第1供給手段であるシューター141が設けられている。そして成膜室120は真空ポンプ109によって真空排気され、成膜材料供給室110は図示されない真空ポンプによって真空排気される。なお、MgOペレットは粗目状のものとして供給される。
【0004】
図10は上記の成膜材料供給室110を示す拡大断面図である。すなわち、成膜材料供給室110内には第2供給手段として、MgOペレットを収容する6個のホッパー101が6位置でピッチ回転するホッパーテーブル102上に配置されている。そして、断面で示す右側のホッパー101を参照して、ホッパー101の底部にはノズル104が設けられており、上方のシリンダー107によってシャフト108、ホッパーシャフト105を介して開閉される。そして、ホッパー101はダクト112の直上に停止されているが、ダクト112に接続して水平方向に移動する弁体を備えたゲートバルブ113、テーパー管114が設けられ、テーパー管114は成膜室120の第1供給手段であるシューター141の流入管141aと連結されている。なお、MgOペレットは吸湿性で水分を保持していることから、真空雰囲気下において水分を放出するが、その水分を可及的に早く放出させるために成膜材料供給室110の天井面側にはMgOペレットを加熱するためのヒーター103が取り付けられている。
【特許文献1】特開2000−199050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の成膜材料供給室110においては、ホッパー101内のMgOペレットは、シリンダー107によってシャフト108とホッパーシャフト105とを引き上げてノズル104を開け、ゲートバルブ113を開けることにより、ホッパー101からダクト112へ落下し、ダクト112からゲートバルブ113を通り、テーパー管114を経てシューター141内へ供給される。そして各ホッパー101にはそれぞれ1日分のMgOペレットが収容され、かつシューター141内へ供給されるMgOペレットの量は1日分とされている。
【0006】
MgOペレットは落下の途中に相互に擦れ合い、ダクト112の内壁面とも擦れ合うことから粉状化するものを生じ、ゲートバルブ113の水平方向に移動する弁体にはMgOペレットや摩耗によるMgO粉体が残留しゲートバルブ113の密閉性を損なうという問題がある。すなわち、一旦ゲートバルブ113の密閉性が損なわれると成膜室120の真空度の維持が困難になるので、真空蒸着装置を大気に開放してゲートバルブ113を整備してから真空蒸着を再開することになり、真空蒸着装置の稼動率を著しく低下させる。
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、長期に亘って成膜材料の補給を必要とせずに真空蒸着装置を連続運転することが可能であり、かつその間、成膜材料を常に一定の供給速度でリングハースへ安定して供給することができる成膜材料供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は請求項1の構成によって解決されるが、その解決手段を説明すれば次に示す如くである。
【0009】
請求項1の成膜材料供給装置は、成膜材料供給室から供給される成膜材料を成膜室内のリングハース上で蒸発させて基板に保護膜を形成させる真空蒸着装置の成膜材料供給装置において、前記成膜材料供給室内に設置され、長期間の連続運転に耐える多量の前記成膜材料を収容し下方へ排出する成膜材料ホッパーと、前記成膜材料ホッパーから排出される前記成膜材料を計量して一定量の前記成膜材料を受ける計量ホッパーと、前記計量ホッパーから排出される一定量の前記成膜材料を受けて下方へ排出する漏斗状ホッパーと、前記成膜室内に設置され、前記漏斗状ホッパーから排出される前記成膜材料を受けて下方の前記リングハースへ所定の供給速度で供給する定量移送機器とからなるものである。
【0010】
このような成膜材料供給装置は、真空蒸着装置を例えば2週間の連続運転を行うために必要な量の成膜材料を成膜材料ホッパー内に収容しておくことにより、運転の途中において成膜材料ホッパーへの補給を必要とせず、成膜材料ホッパーから排出される成膜材料は、一旦、計量ホッパーで受け、一定量の成膜材料として下方の定量移送機器へ排出するので、成膜材料ホッパー内に存在する成膜材料の量、すなわち重量による圧力に影響されることなく、常に一定の条件で成膜材料を定量移送機器からリングハースへ供給することができ、その結果、長期間の連続運転中における成膜条件が安定化され、その間、基板に薄膜を均等に形成させることができる。
【0011】
請求項1に従属する請求項2の成膜材料供給装置は、前記成膜材料ホッパーにおける底部の円筒形状の第1排出口が、第1回動軸によって回動される第1開閉腕に固定され、前記第1排出口の径と同等以上の径の底面を有する円錐形の先端部を備えた挿入栓を前記第1排出口へ下方から上向きに挿入して前記挿入栓の円錐面が前記第1排出口の下端と当接するか、または前記成膜材料のサイズより小さい隙間をもって停止することによって閉じられ、下方へ引き抜かれることによって開かれるものである。
このような成膜材料供給装置は、第1排出口を開閉する時に、成膜材料が挿入栓の先端部の円錐面を滑落することから、先端部が挿入された時点で第1排出口の下端と挿入栓の円錐面との間に成膜材料を噛み込むことなく第1排出口は閉じられる。
【0012】
請求項1に従属する請求項3の成膜材料供給装置は、前記計量ホッパーにおける前記成膜材料の計量が、前記計量ホッパーを挟んで所定の高さに設置された発光素子と受光素子からなる第1光センサの水平方向の光線が前記計量ホッパー内に収容される前記成膜材料のレベルの増大によって遮断されることを検出し、前記成膜材料ホッパーの前記第1排出口を閉じることによって行われるものである。
このような成膜材料供給装置は、第1光センサの光線が一定の高さとなった成膜材料によって遮断されることによって第1排出口を閉じるので、計量ホッパーに保持される成膜材料の量は常に一定であり、下方の定量移送機器へは常に一定量の成膜材料が排出される。
【0013】
請求項1に従属する請求項4の成膜材料供給装置は、前記計量ホッパーにおける底部の第2排出口が、該排出口の下端に第2回動軸によって回動される蓋板が傾斜した状態で下方から当接されることによって閉じられ、前記蓋板が下方へ離脱されることによって開かれる
このような成膜材料供給装置は、計量ホッパーの第2排出口を閉じる時に、排出されている成膜材料は傾斜面となっている蓋板を滑落し蓋板上には残らないので、第2排出口を閉じる時に第2排出口の下端と蓋板との間に成膜材料を噛み込むことはなく完全に遮断される。
【0014】
請求項1に従属する請求項5の成膜材料供給装置は、前記定量移送機器が、軸心を所定角度傾斜して前記軸心の回りに一定速度で回転される円筒状容器の内壁面にリボン状スクリューが形成された回転円筒フィーダである
このような成膜材料供給装置は、円筒状容器内の成膜材料を常に一定の供給速度でリングハースへ供給する。
【0015】
請求項5に従属する請求項6の成膜材料供給装置は、前記回転円筒フィーダの回転軸の回転数を検出する第2光センサによって前記回転円筒フィーダから前記リングハースへの前記成膜材料の供給量が算出されており、前記供給量が所定の値に達すると前記計量ホッパーの前記第2排出口が開けられ、前記成膜材料が前記漏斗状ホッパーを経由して前記回転円筒フィーダへ補給されるものである。
このような成膜材料供給装置は、回転円筒フィーダが空になることはなく成膜材料は途切れることなくリングハースへ供給される。
【0016】
請求項1に従属する請求項7の成膜材料供給装置は、前記成膜材料供給室の天井部から垂下され前記成膜材料ホッパー内の前記成膜材料内へ突っ込むように複数本のパイプ状ヒーターが配設されているものである。
このような成膜材料供給装置は、成膜材料を輻射のみならず伝熱によっても加熱して成膜材料を真空加熱することになるので、成膜材料から水分を効果的に除去することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の成膜材料供給装置によれば、運転開始時のように成膜材料ホッパー内に成膜材料が満杯状に収容されている時、および運転停止時に近く成膜材料ホッパー内に成膜材料が殆ど残っていない時においても、成膜材料は、一旦、計量ホッパーで一定量の成膜材料を受けて定量移送機器へ排出することから、成膜材料は定量移送機器へ常に一定の条件で排出され、定量移送機器は常に一定の条件で成膜材料をリングハースへ供給するので、成膜材料ホッパー内には長期間の連続運転が可能な量の成膜材料を収容しておくことができ真空蒸着装置の稼動率を高めると共に、形成される薄膜を均等化させる。
【0018】
請求項2の成膜材料供給装置によれば、成膜材料ホッパーの第1排出口の下端が挿入栓の先端部の円錐面と当接するか、または前記成膜材料のサイズより小さい隙間をもって停止することによって閉じられるので、第1排出口を閉じる時に成膜材料は円錐面を滑落し、第1排出口の下端と挿入栓の円錐面との間に成膜材料を噛み込むことによる密閉不全を招かず、計量ホッパーへ不必要に流れ込むことはない。
【0019】
請求項3の成膜材料供給装置によれば、計量ホッパーには常に一定量の成膜材料が収容され、下方の定量移送機器へは常に一定量の成膜材料が排出されるので、定量移送機器からリングハースへは成膜材料が変動なく供給され、常に均等な蒸着膜を形成させる。
【0020】
請求項4の成膜材料供給装置によれば、蓋板によって計量ホッパーの第2排出口を閉じる時、成膜材料は蓋板を滑落するので、第2排出口の下端と蓋板との間に成膜材料を噛み込むことなく閉じられる。従って空になった計量ホッパーへ成膜材料ホッパーから成膜材料が排出される時に第2排出口から成膜材料が漏れるような事態を招かない。
【0021】
請求項5の成膜材料供給装置によれば、定量移送機器として、円筒j08容器の内壁面にリボン状スクリューが形成された回転円筒フィーダが採用されているので、成膜材料を高い精度でリングハースへ定量的に供給することができる。
【0022】
請求項6の成膜材料供給装置によれば、第2光センサが回転円筒フィーダの回転軸の回転数を検出して回転円筒フィーダからリングハースへの供給量を算出しており、回転円筒フィーダ内で成膜材料が空になる前に計量ホッパーから一定量の成膜材料が補給されるので、成膜材料が長期間に亙って途切れることなくリングハースへ供給され、真空蒸着装置の長期間の連続運転を可能ならしめる。
【0023】
請求項7の成膜材料供給装置によれば、複数のパイプ状ヒーターが成膜材料内へ突っ込まれるので、真空中の輻射による加熱のみならず伝熱によっても加熱することができ、成膜材料に含まれる水分を高い効率で除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の成膜材料供給装置は、上述したように、成膜材料供給室から供給される成膜材料を成膜室内のリングハース上で蒸発させて基板に保護膜を形成させる真空蒸着装置の成膜材料供給装置において、成膜材料供給室内に設置され、長期間の連続運転に耐える多量の成膜材料を収容し下方へ排出する成膜材料ホッパーと、成膜材料ホッパーから排出される成膜材料を計量して一定量の成膜材料を受ける計量ホッパーと、計量ホッパーから排出される一定量の成膜材料を受けて下方へ排出する漏斗状ホッパーと、成膜室内に設置され、漏斗状ホッパーから排出される成膜材料を受けて下方のリングハースへ所定の供給速度で供給する定量移送機器とからなるものである。
【0025】
成膜材料ホッパーには真空蒸着装置を連続運転する期間に使用する量の成膜材料を保持し得る容積を有するものである。そして、成膜時間の経過と共に減少する成膜材料が底部側に溜まるように、水平方向の断面積が底部に近い程小さくなるように絞った形状とされる。そして、ホッパーの底部に設けられる第1排出口は円筒形状とされ、第1排出口の径と同等以上の径の底面を有する円錐形状の先端部を備えた挿入栓を第1回動軸によって回動される第1開閉腕に取り付けて、下方から上向きに挿入することによって、成膜材料ペレットないしはその粉体化物は挿入栓の円錐面を滑落するので、第1排出口を閉じる時に、第1排出口の排出と挿入栓の円錐面との間に成膜材料ペレットないしはその粉体化物が挟まれることはない。
【0026】
成膜材料ホッパーの直下に設けられる計量ホッパーは、成膜材料ホッパーと同様に底部に近いほど断面積が小となるように絞った形状とされている。そして、計量ホッパーは底部の第2排出口を閉じて成膜材料ホッパーから排出される成膜材料を受けるが、受ける量は常に一定量とされる。すなわち、計量ホッパーには、所定の高さにおいて対向する側壁の一方に取り付けられた発光素子と他方に取り付けられた受光素子とからなる第1光センサが取り付けられており、発光素子から受光素子に至る水平な光線が成膜材料ホッパーから排出されて高さが漸増する成膜材料によって遮断されることを検出して、所定量の成膜材料を受けたことを認識して成膜材料ホッパーの第1排出口が閉じられるようになっている。計量ホッパーにおいて計測される体積は第2排出口を開けて成膜材料を排出する下方の回転円筒フィーダの容積よりは小である。なお、計量ホッパーにおける成膜材料の量は計量ホッパーに歪ゲージを取り付け、成膜材料の重量によって歪ゲージの電気抵抗が変化することを利用して計量することも可能である。
【0027】
計量ホッパーの底部に設けられている筒形状の第2排出口は、第2回動軸によって回動される蓋板を傾斜した状態で下方から当接されて閉じられ、下方へ離脱されることによって開けられる。蓋板は閉じた時点においても傾斜した状態で第2排出口に当接されており、開いた時には成膜材料は蓋板から滑落するので、蓋板を閉じる時に第2排出口の下端と蓋板との間に成膜材料を噛みこむことはない。
【0028】
計量ホッパーの直下に配置されている漏斗状ホッパーは計量ホッパーが第2排出口を開いて排出される成膜材料を受けて外部へ飛び散らすことなく成膜室の回転円筒フィーダへ導くためのホッパーであり、本体は広口で底部ほど絞られた形状とされているが、本体の底部には排出管が鉛直方向に接続されており、排出管の下端部は成膜室内へ延在している。
【0029】
以下、定量移送機器として回転円筒フィーダを採用している場合を示す。回転円筒フィーダは軸心が所定角度(例えば水平面から55度の角度)傾斜しており、一定の回転速度で軸心の回りに回転される円筒状容器の内壁面にリボン状スクリューを設けたものであり、一種のコンベアとして構成されているものである。そして、円筒状容器内の成膜材料を回転速度に応じた一定の供給速度で円筒状容器の上縁端の最も低い部分から送り出す。漏斗状ホッパーの排出管の下端部から排出される成膜材料を直接に回転円筒フィーダの円筒状容器へ供給するようにしてもよいが、上流側において漏斗状ホッパーの排出管の下端部から成膜材料を受ける広幅の緩い傾斜で下流端が円筒状容器の上方へかぶさるような流入ガイドを回転円筒フィーダの上流側に設け、その流入ガイドを経由させて補給する方が回転円筒フィーダでの成膜材料の飛び散りを抑えて円滑に補給することができる。同様、回転円筒フィーダの下流側に、回転円筒フィーダから送り出される成膜材料を受けて先端から直下のリングハースへ導く供給シュートを設けることが望ましい。なお、リングハースは低速度(例えば1時間で1回転)で回転されている。
【0030】
回転円筒フィーダの回転軸の近辺には、その回転軸の回転数をカウントする第2光センサ設置されており、計量ホッパーの第2排出口が閉じられた時を起点とする回転円筒フィーダからリングハースへの供給量が算出されている。そして回転円筒フィーダからの供給量が所定の値に達すると、上方の計量ホッパーの第2排出口の蓋板が開かれて成膜材料が漏斗状ホッパーを経由して回転円筒フィーダへ供給される。
【0031】
なお、成膜材料供給室内の成膜材料ホッパーには、成膜材料供給室の天井部から垂下されて成膜材料内へ突っ込むように複数のパイプ状ヒーターが挿入されている。このようなパイプ状ヒーターは輻射のみならず伝熱によっても成膜材料を加熱するので、成膜材料を高い効率で加熱することができる。これは成膜材料を真空加熱し成膜材料が吸着している水分を水蒸気として脱離させ、成膜材料供給室に属する真空ポンプによって排気して、成膜室のリングハースへ供給される成膜材料が水分を持ち込まないようにするためのものである。
【実施例】
【0032】
本発明の成膜材料供給装置は従来例の図9に示したものと同様な構成の真空蒸着装置に据え付けられるので、真空蒸着装置の全体図は省略し、成膜材料供給装置における成膜材料供給室を図1〜図4によって示す。すなわち、図1は成膜材料供給室10を概略的に示す縦断面図であり、図2は成膜材料供給室10の平面図である。また図3は図1における[3]−[3]線方向の断面図であり、図4は図1における[4]−[4]線方向の断面図である。
【0033】
図1を参照して、成膜材料供給室10の内部には成膜材料ホッパー11、成膜材料ホッパー11の第1排出口12の直下には計量ホッパー21、計量ホッパー21の第2排出口22の直下には漏斗状ホッパー31が設けられており、漏斗状ホッパー31の底部の排出管32は成膜室20内へ挿入される。そして、成膜材料供給室10は真空ポンプ9によって真空排気されている。また、図1、図2、 図3を参照して、成膜材料供給室10の天井部1から垂下され、成膜材料ホッパー11内の成膜材料であるMgOペレット内へ突っ込むように12本のパイプ状ヒーター17が設けられている。加えて計量ホッパー21の壁にはヒーターが巻き付けられている。そのほか、図1〜図3を参照して、天井部1には、成膜材料ホッパー11内へMgOペレットを投入する時に開放される投入蓋4が設けられている。
【0034】
成膜材料ホッパー11の円筒形状の第1排出口12は第1回動軸13によって回動される第1開閉腕14の平板部14pの先端側に固定された円柱形状部15bとその上の同径の円錐形状部15aとからなる挿入栓15が下方から挿入されて閉じられ、挿入栓15が下方へ引き抜かれることによって開かれる。また、計量ホッパー21の第2排出口22は第2回動軸23によって回動される蓋板25が傾斜した状態で下方から当接されることによって閉じられ、蓋板25が下方へ離脱されることにより開かれる。そして、図3を参照し、成膜材料ホッパー11の第1排出口12を開閉させる第1回動軸13はエアシリンダ16によって駆動され、図4を参照し、計量ホッパー21の第2排出口22を開閉させる第2回動軸23はエアシリンダ26によって駆動される。
【0035】
上記の成膜材料ホッパー11は真空蒸着装置を例えば2週間の連続運転することができる量のMgOペレットが投入される。そして、計量ホッパー21は底部の第2排出口22を閉じた状態で、上方の成膜材料ホッパー11の第1排出口12を開いて排出されるMgOペレットを受けるが、受ける量は常に一定量とされる。すなわち、図1を参照して、計量ホッパー21には所定の高さ位置において対向する側壁の一方の側壁に取り付けられた発光素子27aと、他方の側壁27bに取り付けられた受光素子27bとからなる第1光センサ27が設けられており、成膜材料ホッパー11から受け入れるMgOペレットの量が増大し、そのMgOペレットによって第1光センサ27の発光素子27aから受光素子27bに至る光が遮断されるとその遮断を検出して成膜材料ホッパー11の第1排出口12が閉じられるようになっている。計量ホッパー21に計量されるMgOペレットの量は成膜室20内の後述する回転円筒フィーダ41への供給量に見合う量である。
【0036】
計量ホッパー21の第2排出口22の直下に存在する漏斗状ホッパー31は、計量ホッパー21から排出されるMgOペレットを散逸させることなく受けてそのまま成膜室20内に設置されている回転円筒フィーダ41へ導くためのホッパーであり、底部は開閉されることなく、底部に取り付けられた鉛直方向の排出管32が上述したように成膜室20へ挿入されている。
【0037】
図5は上記の第1光センサ27と、成膜材料ホッパー11の第1排出口12の開閉、および計量ホッパー21の第2排出口22の開閉によるMgOペレットの排出、計量を概略的に示す部分省略斜視図である。すなわち、図5−Aは成膜材料ホッパー11の第1排出口12が閉じられており、成膜材料ホッパー11内にMgOペレットが収容されており、計量用の第1光センサ27が取り付けられている計量ホッパー21の第2排出口22は閉じられている状態、図5−Bは第1回動軸16が第1開閉腕14と挿入栓15を下方へ回動させて成膜材料ホッパー11の第1排出口12を開いてMgOペレットを下方の計量ホッパー21へ排出している状態、図5−Cは計量ホッパー21に収容されたMgOペレットの表面レベルが高くなり、第1光センサ27の発光素子27aから受光素子27bに至る光線が遮断されたことにより、第1回動軸16を逆方向へ回動させて成膜材料ホッパー11の第1排出口12へ挿入栓15を挿入して閉じて、一定量のMgOペレットを収容した後、第2回動軸26が蓋板25を下方へ回動させたことにより、成膜材料ホッパー11内に計量された一定量のMgOペレットが漏斗状ホッパー31を経由して下方の成膜室20における流入ガイド49の上流端部へ排出されている状態を示す。
【0038】
図6は成膜室20(従来例の図9における成膜室120に相当するもの)の内部に設置されるリングハ−ス50と共に示す回転円筒フィーダ41を示す図であり、図6−Aは部分省略した平面図、図6−Bは部分破断側面図である。図6−Bに示すように、回転円筒フィーダ41は、軸心を傾斜して回転される円筒状容器42の内周面にリボン状スクリュー43を取り付けたものであり、円筒状容器42の回転軸44は軸受45を介してブラケット46に支持されている。円筒状容器42の内容積は計量ホッパー21内のMgOペレット量よりも大とされている。そして、回転軸44はモータ47によって駆動され減速器48によって減速されて回転する。上記の回転軸44は水平面に対して角度55度に傾斜されている。そして、図7に示すように、リボン状スクリュー43が取り付けられている円筒状容器42内のMgOペレットは、回転される円筒状容器42の内壁面の最も低くなる部分に沿って上方へ移送され、円筒状容器42の上端縁の最も低くなる部分から送り出される。
【0039】
なお、図示せずとも、回転軸44の回転数をモニタリングしている第2光センサが回転軸44に近接して設けられている。そして、回転軸44の回転数によって回転円筒フィーダ41からリングハース50へのMgOペレットの供給量が算出されており、供給量が所定の値に達すると、計量ホッパー21の第2排出口22を開けて、MgOペレットが漏斗状ホッパー31を経て回転円筒フィーダ41へ排出される。
【0040】
更には、回転円筒フィーダ41の下流側に近接して、回転円筒フィーダ41の回筒容器42から送り出されるMgOペレットを受けてリングハース50に供給するための供給シュート49が設けられている。すなわち、供給シュート49の一端側は回転する回筒容器42の上端縁に囲うよう近接されており、他端側はリングハース50の直上まで延在している。また、成膜材料供給室10と回転円筒フィーダ41とリングハース50とを示す部分省略斜視図であり、本発明の成膜材料供給装置を示す図でもある図8を参照して、漏斗状ホッパー31の底部の排出管32が挿入される成膜室20においては、排出管32の直下に位置してMgOペレットを回転円筒フィーダ41へ導くための流入ガイド40が設けられており、流入ガイド40の下流端は回転する円筒状容器42の上へ僅かの間隙をあけてかぶさるよう設置されている。また回転円筒フィーダ41の下流側には上記の供給シュート49が設置されている。
【0041】
本発明の成膜材料供給装置の実施例は以上のように構成されているが、次にその作用を説明する。
【0042】
図1、図2、図3を参照して、成膜材料供給室10の成膜材料ホッパー11は底部の円筒形状の第1排出口12へ円錐形状部15a付き挿入栓15が挿入されて第1排出口12は閉じた状態にあり、成膜材料ホッパー11の内部には全体図を省略した真空蒸着装置の2週間の連続運転が可能である量のMgOペレットが収容されており、成膜材料ホッパー11内のMgOペレットに挿入されているパイプ状ヒーター17によって加熱状態にあり、かつ、成膜材料供給室10は真空ポンプ9で真空排気されており、MgOペレットに含まれている水分は充分に取り除かれているものとする。また、計量ホッパー21は第2排出口22が閉じられ計量された所定量のMgOペレットが収容されているものとする。更には図10を援用し真空排気されている成膜室20においても、回転円筒フィーダ41の円筒状容器42内には一定量のMgOペレットが収容されており、回転円筒フィーダ41およびリングハース50は起動されているものとする。
【0043】
成膜室20において、図6−Bを参照し、傾斜した回転軸44によって回転される回転円筒フィーダ41の円筒状容器42内のMgOペレットは、図7に示すように、リボン状スクリュー43によって内周面を上昇し上端縁の最も低い部分から定量的に送り出され、供給シュート49を経て低い回転速度(例えば1時間に1回転)で回転しているリングハース50上へ均等に供給され、成膜室20において基板にMgO蒸着膜を均等に形成させる。そして、第2光センサによって回転円筒フィーダ41の回転軸44の回転数がモニタリングされており、円筒状容器42からリングハース50への供給量が算出されているので、供給量が所定の値に達すると第2エアシリンダ26が駆動され第2回動軸23が回動されて蓋板25が共に回動されて計量ホッパー21の第2排出口22を開くので、計量ホッパー21からMgOペレットが排出されて漏斗状ホッパー31で受けられ、漏斗状ホッパー31の底部の鉛直な排出管32から成膜室20の流入ガイド40を経由して、回転円筒フィーダ41の円筒状容器42内へ排出される。円筒状容器42の容積は計量ホッパー21内のMgOペレット量よりも大に製作されているので、円筒状容器42から溢れ出すことはない。
【0044】
計量ホッパー21の蓋板25が開けられて所定の時間が経過すると、第2エアシリンダ26が起動されて第2回動軸23が逆方向へ回動されて蓋板25が計量ホッパー21の第2排出口22を閉じる。続いて図5も参照して、第1エアシリンダ16が駆動されて第1回動軸13が第1開閉腕14と共に回動され、成膜材料ホッパー11の第1排出口12を閉じている挿入栓15が第1排出口12から引き抜かれて成膜材料ホッパー11からMgOペレットが自重によって計量ホッパー21へ排出される。時間が経過すると共に計量ホッパー21内に収容されるMgOペレットの表面レベルは高くなるが、収容されたMgOペレットによって第1光センサ27の発光素子27aから受光素子27bに至る光線の遮断が検出されると、上記の第1エアシリンダ16が逆向きに駆動され第1排出口12へ挿入栓15が挿入されて成膜材料ホッパー11の第1排出口12が閉じられる。この時、挿入栓15の円錐形状部15aの円錐面が円筒状の第1排出口12の下端に当接して閉じられるが、第1排出口12の下端と円錐形状部15aの円錐面との間にMgOペレットのサイズより小さい距離をあけて挿入栓15を停止させてもよい。このようにして、計量ホッパー21内に所定量のMgOペレットが収容される。以降は同様な作用が繰り返されて、成膜材料供給装置による基板GへのMgO膜の成膜が長期間に亘って連続的に行われる。
【0045】
上記の挿入栓15のほか、径を若干小さくした円柱形状部(図1の15bに相当)と円錐形状部(図1の15aに相当)とし、その円柱形状部(図1の15bに相当)の外周面と第1排出口12の内面との隙間がMgOペレットのサイズより小であるような挿入栓(図1の15に相当)としてもよい。こうすることにより、MgOペレットは上記の隙間を落下しないので、第1排出口12の下端と挿入栓(図1の15に相当)が固定されている第1開閉腕14の平板部14pとの間にMgOペレットが挟み込まれることはない。そのほか挿入栓15の底面と同径の底面を有する円錐形状の挿入栓、または上記若干小径の挿入栓(図1の15に相当)の底面と同径の底面を有する円錐形状の挿入栓も採用し得る。
【0046】
本実施例の成膜材料供給装置は以上のように構成され作用するが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0047】
例えば本実施の形態例においては、計量ホッパーに収容されたMgOペレットの計量を、発光素子と受光素子からなる第1光センサの光線を遮断する収容体の高さによって求める方法を採用したが、収容体の高さをCCDカメラまたはCMOSカメラで求めるようにしてもよい。そのほか、MgOペレットの重量を歪ゲージで求めることも可能である。
【0048】
また本実施例においては、回転円筒フィーダ41を円筒状スクリューコンベアによってMgOペレットを定量的に送り出すものとしたが、MgOペレットを定量的に送り出すことができるもの、例えば容器に受けたMgOペレットをプランジャーポンプを利用して送り出すようにしてもよい。
【0049】
また本実施例においては、成膜材料ホッパー11の挿入栓15は第1開閉腕14を介して第1回動軸16に取り付け、計量ホッパー21の蓋板25は第2回動軸26に直接に取り付けたが、何れのようにしてもよい。また、成膜材料ホッパー11の挿入栓15はMgOペレットを多量に収容している成膜材料ホッパー11の底部へ挿入するためにも円錐形状部を備えたものを必要とするが、計量ホッパー21の蓋板25を挿入栓15と同様なものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】成膜材料供給室の縦断面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】図1における[3]−[3]線方向の矢視図である。
【図4】図1における[4]−[4]線方向の断面図である。
【図5】第1光センサと、成膜材料ホッパーの第1排出口の開閉および計量ホッパーの第2排出口の開閉によるMgOペレットの移動、計量を概念的に示す断面図である。
【図6】成膜室における回転円筒フィーダとリングハースとを示す図であり、図5−Aは部分省略平面図、図5−Bは部分省略縦断面図である。
【図7】回転円筒フィーダの作用を示す断面図である。
【図8】成膜材料供給室における3個のホッパーと、成膜室における回転円筒フィーダとからなる成膜材料供給装置を概略的に示す部分省略斜視図である。
【図9】従来例の真空蒸着装置の成膜材料供給室と成膜室を示す断面図である。
【図10】図9における成膜材料供給室の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 成膜材料供給室、 11 成膜材料ホッパー、 12 第1排出口、
13 第1回動軸、 14 第1開閉腕、 15 挿入栓、
16 第1エアシリンダ、 17 パイプ状ヒーター、 20 成膜室、
21 計量ホッパー、 22 第2排出口、20 成膜室、23 第2回動軸、
25 蓋板、 26 第2エアシリンダ、 27 第1光センサ、
31 漏斗状ホッパー 、 32 排出管、 40 流入ガイド、
41 回転円筒フィーダ、 42 円筒状容器、 43 リボン状スクリュー、
44 回転軸、 47 モータ、 48 減速器、 49 供給シュート、
50 リングハ−ス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料供給室から供給される成膜材料を成膜室内のリングハース上で蒸発させて基板に保護膜を形成させる真空蒸着装置の成膜材料供給装置において、
前記成膜材料供給室内に設置され、長期間の連続運転に耐える多量の前記成膜材料を収容し下方へ排出する成膜材料ホッパーと、前記成膜材料ホッパーから排出される前記成膜材料を計量して一定量の前記成膜材料を受ける計量ホッパーと、前記計量ホッパーから排出される一定量の前記成膜材料を受けて下方へ排出する漏斗状ホッパーと、前記成膜室内に設置され、前記漏斗状ホッパーから排出される前記成膜材料を受けて下方の前記リングハースへ所定の供給速度で供給する定量移送機器とからなる
ことを特徴とする成膜材料供給装置。
【請求項2】
前記成膜材料ホッパーにおける底部の円筒形状の第1排出口が、第1回動軸によって回動される第1開閉腕に固定され、前記第1排出口の径と同等以上の径の底面を有する円錐形の先端部を備えた挿入栓を前記第1排出口へ下方から上向きに挿入して前記挿入栓の円錐面が前記第1排出口の下端と当接するか、または前記成膜材料のサイズより小さい隙間をもって停止することによって閉じられ、下方へ引き抜かれることによって開かれる
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜材料供給装置。
【請求項3】
前記計量ホッパーにおける前記成膜材料の計量が、前記計量ホッパーを挟んで所定の高さに設置された発光素子と受光素子からなる第1光センサの水平方向の光線が前記計量ホッパー内に収容される前記成膜材料のレベルの増大によって遮断されることを検出し、前記成膜材料ホッパーの前記第1排出口を閉じることによって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜材料供給装置。
【請求項4】
前記計量ホッパーにおける底部の第2排出口が、該排出口の下端に第2回動軸によって回動される蓋板が傾斜した状態で下方から当接されることによって閉じられ、前記蓋板が下方へ離脱されることによって開かれる
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜材料供給装置。
【請求項5】
前記定量移送機器が、軸心を所定角度傾斜して一定速度で回転される円筒状容器の内壁面にリボン状スクリューが形成された回転円筒フィーダである
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜材料供給装置。
【請求項6】
前記回転円筒フィーダの回転軸の回転数を検出する第2光センサによって前記回転円筒フィーダから前記リングハースへの前記成膜材料の供給量が算出されており、前記供給量が所定の値に達すると前記計量ホッパーの前記第2排出口が開けられ、前記成膜材料が前記漏斗状ホッパーを経由して前記回転円筒フィーダへ補給される
ことを特徴とする請求項5に記載の成膜材料供給装置。
【請求項7】
前記成膜材料供給室の天井部から垂下され前記成膜材料ホッパー内の前記成膜材料内へ突っ込むように複数本のパイプ状ヒーターが配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜材料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−45589(P2006−45589A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224377(P2004−224377)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】