説明

扁平状導電性粒子の製造方法、扁平状導電性粒子および樹脂組成物

【課題】本発明の課題は、扁平状導電性粒子を比較的高速で精密分級処理することができるようにすることにある。
【解決手段】本発明に係る扁平状導電性粒子の製造方法は、扁平状導電性粒子製造工程および湿式分級工程を備える。扁平状導電性粒子製造工程では、扁平状の導電性粒子が製造される。湿式分級工程では、扁平状の導電性粒子が湿式で篩分け分級される。なお、この扁平状導電性粒子の製造方法において、扁平状導電性粒子製造工程では、湿式で扁平状の導電性粒子が製造されるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平状導電性粒子の製造方法に関する。また、本発明は、その製造方法により製造される扁平状導電性粒子にも関する。また、本発明は、そのような扁平状導電性粒子を含有する樹脂組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「アトマイズ法、電解法、化学還元法から得られる銅粉と固体粒子状有機化合物を乾式混合粉砕し、その後一定の篩網目を有した風力分級機により粒度調整する」という技術(例えば、特開平11−264001号公報等参照)や「乾式対向衝突式ジェットミルを用いて銅粉をフレーク化し、その粒子をサイクロンで簡易分級した後にバクフィルターで回収する」という技術(例えば、特開2006−210214号公報等参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−264001号公報
【特許文献2】特開2006−210214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように、分級方法として風力分級方法を採用すると、篩網目に目詰まりが生じる頻度が比較的高くなるため、分級処理速度が比較的低くなってしまう。一方、分級方法としてサイクロン分級方法を採用すると、比較的高速で分級処理を行うことができるものの、精密な分級を行うことができない。
【0005】
本発明の課題は、扁平状導電性粒子を比較的高速で精密分級処理することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明の一局面に係る扁平状導電性粒子の製造方法は、扁平状導電性粒子製造工程および湿式分級工程を備える。扁平状導電性粒子製造工程では、扁平状の導電性粒子が製造される。湿式分級工程では、扁平状の導電性粒子が湿式で篩分け分級される。
【0007】
本願発明者らの鋭意検討の結果、扁平状の導電性粒子を湿式で篩分け分級すると、比較的高速で精密分級処理することができることが明らかとなった。このため、この扁平状導電性粒子の製造方法を利用すれば、扁平状の導電性粒子を比較的高速で精密分級処理することができる。
【0008】
(2)
本発明の一局面に係る扁平状導電性粒子の製造方法において、扁平状導電性粒子製造工程では、湿式で扁平状の導電性粒子が製造されるのが好ましい。
【0009】
このようにすれば、扁平状導電性粒子製造工程において扁平状導電性粒子の取り出しを容易に行うことができるだけでなく、そのままの状態で扁平状導電性粒子を湿式分級工程に供給することができる。
【0010】
(3)
本発明の一局面に係る扁平状導電性粒子の製造方法において、湿式分級工程では、扁平状の導電性粒子が液状媒体に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲となるように濃度調整された扁平状の導電性粒子のスラリーが篩に供給される。
【0011】
本願発明者らの鋭意検討の結果、このような扁平状の導電性粒子のスラリーであれば、扁平状の導電性粒子をより高速で精密分級処理することができることが明らかとなった。このため、このようにすれば、扁平状導電性粒子製造工程において扁平状の導電性粒子をより高速で精密分級処理することができる。
【0012】
(4)
本発明の他の局面に係る扁平状導電性粒子は、上記(1)から(3)のいずれかの局面に係る扁平状導電性粒子の製造方法により製造される。
【0013】
この扁平状導電性粒子は、精密分級されている。このため、この扁平状導電性粒子が導電性ペーストに利用される場合等において、シリンジを詰まらせる等の不具合を生じることを十分に抑制することができる。
【0014】
(5)
本発明の他の局面に係る樹脂組成物は、上記(4)の局面に係る扁平状導電性粒子および樹脂を含有する。なお、ここにいう「樹脂」には、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂が含まれる。また、この「樹脂」には、最終形態の一段階前の状態のもの(いわゆる前駆体)も含まれる。
【0015】
この扁平状導電性粒子は、精密分級されている。このため、この樹脂組成物が、導電性ペーストとして利用される場合等において、シリンジを詰まらせる等の不具合を生じることを十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る湿式分級装置の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る湿式分級装置の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る湿式分級装置のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法は、扁平状導電性粒子製造工程および湿式分級工程を備える。以下、これらの工程について詳述する。
【0018】
<扁平状導電性粒子の製造方法の各工程の詳細>
【0019】
1.扁平状導電性粒子製造工程
扁平状導電性粒子製造工程では、機械的粉砕法、化学還元法、電解法、アトマイズ法等の方法により製造された導電性粒子が、アトライター、スタンプミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の粉砕機により湿潤環境下で扁平化(フレーク化、鱗片化)される。
【0020】
なお、ここにいう「導電性粒子」とは、特に限定されないが、例えば、金属粒子、コア−シェル型導電性粒子などである。なお、これらの導電性粒子は、単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
【0021】
上述の「金属粒子」としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、インジウム、鉄、クロム、タンタル、錫、鉛、亜鉛、コバルト、チタン、タングステン、ビスマス、シリコン、アンチモン、アルミニウム、マグネシウム等の単独金属粒子および合金粒子等が挙げられる。なお、これらの中でも銀の単独金属粒子および合金粒子等が好ましい。銀の単独金属粒子および合金粒子は、良好な導電性および熱伝導性を有すると共に酸化されにくく加工性にも優れるからである。銀の合金粒子としては、特に限定されないが、例えば、銀を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する銀−銅合金、銀−パラジウム合金、銀−錫合金、銀−亜鉛合金、銀−マグネシウム合金、銀−ニッケル合金などの合金粒子が好ましく挙げられる。なお、これらの金属粒子は、単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
【0022】
導電性粒子の平均粒子径は0.5μm以上30μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上10μm以下であるのがより好ましい。導電性粒子の平均粒子径がこの範囲内であると、導電性粒子の凝集が発生しにくく、導電性粒子が良好な導電性を示すからである。
【0023】
導電性粒子は上述の通り機械的粉砕法等により得られるが、機械的粉砕法では導電性粒子の種類によっては目的とする粒子径の導電性粒子が得られないこともある。このため、導電性粒子は、化学還元法、電解法、アトマイズ法のいずれかにより得られるのが好ましい。特に粒子径が10μmより小さい銀粒子を製造するに際しては、溶融金属を水中に噴霧する水アトマイズ法、または、硝酸銀溶液を還元剤により還元する化学還元法が好適である。
【0024】
この扁平状導電性粒子製造工程は、上述の通り、湿潤環境下で行われる。その湿潤環境を作り出す溶剤としては、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、グリコール、エステル、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素、不飽和カルボン酸等が挙げられる。なお、これらの溶剤は、単独で使用されてもかまわないし、複数種を併用してもかまわない。
【0025】
アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等が挙げられる。グリコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール等が挙げられる。エステルとしては、特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。エーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。ケトンとしては、特に限定されないが、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、トルエン、キシレン等が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等が挙げられる。
【0026】
導電性粒子が扁平化されて得られる扁平状導電性粒子は0.1μm〜100μmの粒子径を有するのが好ましい。
【0027】
2.湿式分級工程
【0028】
湿式分級工程では、扁平状導電性粒子製造工程において製造された扁平状導電性粒子が乾燥されることなく、図1〜図3に示される湿式分級装置により湿式で篩分け分級される。なお、扁平状導電性粒子製造工程において最終的に得られたスラリー状の扁平状導電性粒子は、そのまま湿式分級工程に供給されてもよいし、扁平状導電性粒子製造工程において使用された溶剤と同じ溶剤または異なる溶剤により濃度調節された後に湿式分級工程に供給されてもよい。スラリー状扁平状導電性粒子中の扁平状導電性粒子の濃度は、溶剤に対して0.1重量%以上50重量%以下が好ましく、溶剤に対して0.5重量%以上30重量%以下がより好ましい。
【0029】
上述の湿式分級装置100は、図1〜図3に示されるように、主に、多段篩ユニット110、接続部材120、振動装置130、排出用チューブ140、排出容器150および供給ホース160から構成される。以下、これらの各構成について詳述した後、湿式分級装置100の使用方法を説明する。
【0030】
(1)湿式分級装置の構成
【0031】
A.多段篩ユニット
多段篩ユニット110は、図1〜図3に示されるように、主に、3つの篩111a,111b,111c、2つの中間リング112a,112b、排出管付き受皿113、蓋体116、5つのO−リングOr及び2つのクランプ117から構成される。なお、以下、説明の便宜上、符号111aの篩を「第1篩」と称し、符号111bの篩を「第2篩」と称し、符号111cの篩を「第3篩」と称する。また、符号112aの中間リングを「第1中間リング」と称し、符号111bの中間リングを「第2中間リング」と称する。
【0032】
篩111a,111b,111cは、図3に示されるように、主に、枠体Fa,Fb,FcおよびメッシュMa,Mb,Mcから構成されている。なお、本実施の形態において、第1篩111a、第2篩111bおよび第3篩111cの枠体Fa,Fb,Fcは、いずれも同一である。また、本実施の形態において、第1篩111aのメッシュMaの目が最も粗く、第3篩111cのメッシュMcの目が最も細かい。第2篩111bのメッシュMbは、第1篩111aのメッシュMaよりも目が細かく、第3篩111cのメッシュMcよりも目が粗い。このため、扁平状導電性粒子のスラリーを上方から流すと、メッシュMa,Mb,Mcの目に応じて順次、扁平状導電性粒子が分級されることになる。
【0033】
中間リング112a,112bには、図3に示されるように、空気穴Pが形成されている。中間リング112a,112bは、この空気穴Pにより扁平状導電性粒子および溶剤を系外に漏らすことなくエアークッション現象を抑える。そして、これらの中間リング112a,112bは、各篩111a,111b,111cの間に挿入される。なお、本実施の形態では、第1中間リング112aが第1篩111aと第2篩111bの間に挿入され、第2中間リング112bが第2篩111bと第3篩111cの間に挿入される。
【0034】
排出管付き受皿113は、底板付きの略円筒形の受け容器である。この排出管付き受皿113の側面には、図1に示されるように、排出管114が貫通して設けられている。このため、この排出管付き受皿113まで落下してきた溶剤や扁平状導電性粒子は、液面が一定以上になると、排出管114および排出用チューブ140を通って排出容器150に排出される。
【0035】
蓋体116は、図1〜図3に示されるように、板状部材である。この蓋体116には、図3に示されるように、中央部に開口116aが形成されていると共に、両端部にガイドバー挿通用の孔(図示せず)が形成されている。開口116aは、図1〜図3に示されるように接続部材120に覆われる。
【0036】
O−リングOrは、図1及び3に示されるように、第1篩111aと第1中間リング112aとの間、第1中間リング112aと第2篩111bとの間、第2篩111bと第3篩111cとの間、第3篩111cと排出管付き受皿113との間に介在し、これらの部材間のシール性を確保している。
【0037】
クランプ117は、図1および図2に示されるように、主に、本体部118およびレバー119から構成されており、振動装置130のガイドバー115(後述)に挿通されている。本体部118には、ガイドバー挿通用の孔(図示せず)が形成されている。レバー119は、押し上げられるとクランプ117をガイドバー115に沿って上下移動させることができる状態とし、押し下げられるとクランプ117をガイドバー115に固定する。なお、このクランプ117は、図1及び図2に示されるように多段篩ユニット110が完全に組み立てられた状態でガイドバー115に固定され、多段篩ユニット110を振動装置130の載置テーブル132(後述)に固定する。
【0038】
B.接続部材
接続部材120は、図1〜図3に示されるように、略切頭円錐筒形の部材であって、多段篩ユニット110の蓋体116の開口を覆うように蓋体116に固定されている。そして、この接続部材120の上端には供給ホース160が接合されている。
【0039】
C.振動装置
振動装置130は、図1に示されるように、主に、本体部131、載置テーブル132およびガイドバー115から構成される。
【0040】
本体部131には、載置テーブル132を振動させる機構(図示せず)および制御部(図示せず)等が設けられている。
【0041】
載置テーブル132は、円形のテーブルである。そして、この載置テーブル132には、本体部131により発生される振動が伝達される。したがって、この載置テーブル132に多段篩ユニット110が固定された状態では、多段篩ユニット110に振動が伝達されることとなる。
【0042】
ガイドバー115は、図1に示されるように、振動装置130の載置テーブル132(後述)から上方に向かって延びている。このガイドバー115には、蓋体116およびクランプ117が挿通されている。
【0043】
D.排出用チューブ
排出用チューブ140は、排出管付き受皿113の排出管114に接続されており、排出液を排出容器150まで導く役目を担っている。
【0044】
E.排出容器
排出容器150は、通常の容器である。
【0045】
F.供給ホース
供給ホース160は、図1に示されるように、接続部材120の上端に接合されている。この供給ホース160は、追加の溶剤を多段篩ユニット110に供給するために設けられている。
【0046】
(2)湿式分級装置の使用方法
先ず、振動装置130の載置テーブル132上に多段篩ユニット110を組み上げる。なお、このとき、蓋体116はまだ設置せず、多段篩ユニット110の上部、すなわち第1篩111aの上部を開放しておく。次に、扁平状導電性粒子製造工程で得られた扁平状導電性粒子を第1篩111aに投入した後、蓋体116を設置し、クランプ117により多段篩ユニット110を載置テーブル132に固定する。続いて、振動装置130を始動させることにより多段篩ユニット110を振動させ、分級処理を開始させる。分級処理の最中、排出容器150に流れてくる溶剤を観察し、その溶剤が透明になったら振動装置130を停止させて分級処理を停止させる。
【0047】
なお、分級処理中、必要に応じて供給ホース160を介して追加の溶剤を多段篩ユニット110に供給するようにしてもかまわない。
【0048】
3.乾燥工程
湿式分級工程において分級された扁平状導電性粒子は、その後加熱乾燥される。
【0049】
<導電性ペーストの製造>
1.原料
【0050】
(1)導電性粒子
上述のようにして得られる扁平状導電性粒子が使用される。
【0051】
(2)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、種々の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、ここにいう「熱硬化性樹脂」とは、加熱またはエネルギー線照射により3次元的網目構造を形成して硬化する樹脂であって、硬化剤、硬化促進剤等を含むものである。なお、この熱硬化性樹脂としては、室温で液状であるのが好ましい。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。以下各樹脂について詳述する。
【0052】
A.シアネート樹脂
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する樹脂である。シアネート樹脂としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4'−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、及びノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられる。また、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用することができる。なお、このプレポリマーは、上述の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0053】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものを使用することができる。この硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン等のアミン類が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。なお、シアネート樹脂は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂とブレンドして用いることもできる。
【0054】
B.エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は分子内に少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物であるが、グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましい。グリシジル基を1つしか有しない化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等のビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノール等の脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等の脂肪族ジオール又はこれらの誘導体等をエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等をエポキシ化した多官能のもの等が挙げられる。また、これらの化合物は、単独で又は混合物として室温で液状であるものが好ましい。導電性ペーストは、室温で液状態である必要があるからである。なお、反応性の希釈剤を使用することもできる。このような反応性希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルといった1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0055】
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるものである。このような硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、P−オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンとの反応物、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体などが挙げられる。フェノール樹脂は1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物である。なお、このフェノール樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を1つしか有しない場合には架橋構造をとることができないため、十分な硬化物特性が得られず使用することができない。1分子内のフェノール性水酸基数が2つ以上であれば使用することができるが、好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2〜5である。1分子内のフェノール性水酸基数が5超である場合には分子量が大きくなりすぎ、その結果、導電性ペーストの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2又は3である。このような化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールといったビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンといった3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックといったフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体又は3核体がメインのもの及びその誘導体などが挙げられる。
【0056】
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン又はテトラフェニルホスフィンの塩類、ジアザビシクロウンデセン等アミン系化合物及びその塩類等が挙げられるが、2−メチルイミダゾール,2−エチルイミダゾール,2−フェニルイミダゾール,2−フェニル−4−メチルイミダゾール,2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール,2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール,2−C1123−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物といったイミダゾール化合物が好適に用いられる。これらのイミダゾール化合物の中でも融点が180℃以上のイミダゾール化合物が特に好ましい。
【0057】
C.ラジカル重合性のアクリル樹脂
ラジカル重合性のアクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。なお、この不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体であって(メタ)アクリル基を有するものが好ましい。
【0058】
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の2価の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。このようなポリエーテルは、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることができる。
【0059】
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の2価の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。このようなポリエステルは、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることができる。
【0060】
ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の2価の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。このようなポリカーボネートは、ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることができる。
【0061】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体、または、水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。なお、このようなポリ(メタ)アクリレートは、カルボキシ基と反応することができる場合には水酸基を有するアクリレートとの反応により得ることができ、水酸基と反応することができる場合には(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることができる。
【0062】
ポリブタジエンは、例えば、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応、または、水酸基を有するポリブタジエンと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることができ、また、無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることもできる。
【0063】
ブタジエンアクリロニトリル共重合体は、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。
【0064】
必要に応じて以下に示される化合物を添加することもできる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートや、水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、ここで使用することができるジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、しゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0065】
なお、上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することもできる。
【0066】
重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、熱ラジカル重合開始剤として用いることができるものであれば特に限定されないが、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度を測定する試験)における分解開始温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解開始温度がこの範囲であると、導電性ペーストの常温保存性、硬化時間を良好に維持することができるからである。この条件を満たす熱ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。なお、これらの熱ラジカル重合開始剤は単独で又は硬化性制御のため2種類以上を混合して用いることもできる。
【0067】
D.マレイミド樹脂
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物である。マレイミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂としては、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物が挙げられる。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸又はアミノカプロン酸とを反応させることで得られる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂と併用することもできる。アリルエステル樹脂としては脂肪族のものが好ましく、その中でもシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物が特に好ましい。また、このマレイミド樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂と併用することもできる。
【0068】
(3)その他
必要に応じて各種添加剤や溶剤が使用されてもよい。
添加剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、ハイドロタルサイト等の無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤等、種々の添加剤が挙げられる。
【0069】
溶剤としては、特に限定されず、上述の樹脂を溶解させ、適度な揮発性を有するものであればよい。
【0070】
2.導電性ペーストの製造方法
導電性ペーストは、例えば、上述の各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した、さらに真空下脱泡することにより製造することができる。
【0071】
<半導体装置の製造>
半導体装置の製造は、公知の方法を利用して実施することができる。例えば、市販のダイボンダーによりリードフレームの所定の部位に上述の導電性ペーストをディスペンス塗布した後、その部位にチップをマウントし、導電性ペーストを加熱硬化させる。そして、ワイヤーボンディングが行われた後、エポキシ樹脂がトランスファー成形されて半導体装置が作製される。また、フリップチップ接合後にアンダーフィル材で封止したフリップチップBGAなどのチップ裏面に導電性ペーストをディスペンスし、そのチップ裏面にヒートスプレッダー、リッドといった放熱部品を搭載して導電性ペーストを加熱硬化させて半導体装置を作成することもできる。
【0072】
<実施例>
以下、実施例を示すことにより本発明の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0073】
(1)扁平状導電性粒子の製造工程
円筒容器中に攪拌翼が配置された攪拌ボールミルを準備した。なお、本実施例において、この円筒容器の半径は15cmであり、高さは30cmであった。また、攪拌翼の半径は14cmであった。
【0074】
10kgの還元銀粒子(硝酸銀を化学還元することで得られる銀粒子)および30kgのチタン製ボールを攪拌ボールミルの円筒容器内に投入した。なお、本実施例において、還元銀粒子の平均粒子径は5μmであり、比表面積は0.2m/gであった。また、チタン製ボールの直径は0.8mmであった。そして、さらに8kgのエタノール、0.1kgのオレイン酸メチルおよび0.1kgパルミチン酸メチルを円筒容器内に投入した。その後、攪拌翼の回転数を500rpmに設定して、攪拌ボールミルを始動させて還元銀粒子のフレーク化を開始した。攪拌ボールミルを2時間運転した後に攪拌翼の回転を停止させ、円筒容器内からスラリー状の扁平状導電性粒子を取り出した。
【0075】
(2)分級工程
上記製造工程で得られたスラリー状の扁平状導電性粒子を、図1〜図3に示される湿式分級装置100を利用して湿式分級した。なお、本実施例では、第1篩(最上位の篩)111aのメッシュMaの目開きを38μmとし、第2篩(中間位の篩)111bのメッシュMbの目開きを20μmとし、第3篩(最下位の篩)111cのメッシュMcの目開きを10μmとした。
【0076】
(3)乾燥工程
上記湿式分級工程で分級された扁平状導電性粒子を加熱乾燥し、目的の扁平状導電性粒子を得た。
【0077】
<特徴>
本発明の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法では、先ず、機械的粉砕法、化学還元法、電解法、アトマイズ法等の方法により製造された導電性粒子が、アトライター、スタンプミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の粉砕機により湿潤環境下で扁平化される。このため、この扁平状導電性粒子の製造方法では、扁平状導電性粒子の取り出しを容易に行うことができる。また、その後、扁平化された導電性粒子が乾燥されることなく、湿式分級装置により湿式で篩分け分級される。湿式で篩分け分級を行うと、乾式での篩分け分級よりも高速に扁平状導電性粒子を精密分級処理することができる。このため、扁平状導電性粒子の製造方法では、扁平状導電性粒子を比較的高速で精密分級処理することができる。
【0078】
また、このようにして得られた扁平状導電性粒子は、粒子径分布が非常に狭いため、導電性ペースト等に利用される場合において、シリンジを詰まらせる等の不具合を生じるおそれを十分に抑制することができる。
【0079】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法では扁平状導電性粒子製造工程において導電性粒子が湿潤環境下で扁平化されたが、導電性粒子は乾燥環境下で扁平化されてもかまわない。かかる場合、湿式篩分け分級を行う前に、その扁平化された導電性粒子に上述の溶剤を添加して扁平状導電性粒子をスラリー状にすることが要求される。
【0080】
(B)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、扁平状導電性粒子製造工程において導電性粒子を扁平化する際に、滑剤として脂肪酸エステル化合物が利用されてもかまわない。
【0081】
なお、このような脂肪酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素数が10以上30以下の脂肪酸のアルキルエステル化合物が好ましく、炭素数が14以上20以下の脂肪酸のアルキルエステル化合物がより好ましい。具体的な脂肪酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸ブチル、カプリン酸のその他アルキルエステル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸のその他アルキルエステル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸のその他アルキルエステル、ペンタデシル酸メチル、ペンタデシル酸エチル、ペンタデシル酸ブチル、ペンタデシル酸のその他アルキルエステル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸のその他アルキルエステル、マーガリン酸メチル、マーガリン酸エチル、マーガリン酸ブチル、マーガリン酸のその他アルキルエステル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸のその他アルキルエステル、アラキジン酸メチル、アラキジン酸エチル、アラキジン酸ブチル、アラキジン酸のその他アルキルエステル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸のその他アルキルエステル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチル、リグノセリン酸ブチル、リグノセリン酸のその他アルキルエステル、セロチン酸メチル、セロチン酸エチル、セロチン酸ブチル、セロチン酸のその他アルキルエステル、モンタン酸メチル、モンタン酸エチル、モンタン酸ブチル、モンタン酸のその他アルキルエステル、メリシン酸メチル、メリシン酸エチル、メリシン酸ブチル、メリシン酸のその他アルキルエステルなどの飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が挙げられると共に、ミリストレイン酸メチル、ミリストレイン酸エチル、ミリストレイン酸ブチル、ミリストレイン酸のその他アルキルエステル、パルミトレイン酸メチル、パルミトレイン酸エチル、パルミトレイン酸ブチル、パルミトレイン酸のその他アルキルエステル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸のその他アルキルエステル、エライジン酸メチル、エライジン酸エチル、エライジン酸ブチル、エライジン酸のその他アルキルエステル、バクセン酸メチル、バクセン酸エチル、バクセン酸ブチル、バクセン酸のその他アルキルエステル、ガドレイン酸メチル、ガドレイン酸エチル、ガドレイン酸ブチル、ガドレイン酸のその他アルキルエステル、エルカ酸メチル、エルカ酸エチル、エルカ酸ブチル、エルカ酸のその他アルキルエステル、ネルボン酸メチル、ネルボン酸エチル、ネルボン酸ブチル、ネルボン酸のその他アルキルエステル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸ブチル、リノール酸のその他アルキルエステル、リノレン酸メチル、リノレン酸エチル、リノレン酸ブチル、リノレン酸のその他アルキルエステル、エレオステアリン酸メチル、エレオステアリン酸エチル、エレオステアリン酸ブチル、エレオステアリン酸のその他アルキルエステル、ステアリドン酸メチル、ステアリドン酸エチル、ステアリドン酸ブチル、ステアリドン酸のその他アルキルエステル、アラキドン酸メチル、アラキドン酸エチル、アラキドン酸ブチル、アラキドン酸のその他アルキルエステル、エイコサペンタエン酸メチル、エイコサペンタエン酸エチル、エイコサペンタエン酸ブチル、エイコサペンタエン酸のその他アルキルエステル、イワシ酸メチル、イワシ酸エチル、イワシ酸ブチル、イワシ酸のその他アルキルエステル、ドコサヘキサエン酸メチル、ドコサヘキサエン酸エチル、ドコサヘキサエン酸ブチル、ドコサヘキサエン酸のその他アルキルエステルの不飽和脂肪酸のアルキルエステルなどが挙げられる。なお、これらの脂肪酸エステル化合物は、単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
【0082】
これらの脂肪酸エステル化合物の中でも、脂肪酸のメチルエステル化合物、例えば、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルより成る群から選択される少なくとも1種の脂肪酸エステル化合物が好ましい。また、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルより成る群から選択される少なくとも1種の脂肪酸エステル化合物と、その他の飽和脂肪酸のメチルエステル化合物との併用も好ましい。また、不飽和脂肪酸のメチルエステル化合物、例えば、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルより成る群から選択される少なくとも1種の脂肪酸エステル化合物がより好ましい。また、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルより成る群から選択される少なくとも1種の不飽和脂肪酸エステル化合物と、飽和脂肪酸のメチルエステル化合物との併用もより好ましい。これらの脂肪酸エステル化合物は、脂肪酸、脂肪酸塩、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのエステル、高級脂肪族アミン、高級脂肪族アミド、ポリエチレンワックス等と併用されてもかまわない。
【0083】
脂肪酸エステル化合物は導電性粒子の表面積1m2あたり0.005g以上0.5g以下となるように使用されるのが好ましい。脂肪酸エステル化合物の濃度がこの範囲内であれば扁平状導電性粒子製造工程において導電性粒子が凝集せず、良好な導電性を有する導電性粒子を得ることができるからである。なお、脂肪酸エステル化合物の濃度が0.005g/m未満であると扁平状導電性粒子製造工程中に凝集が発生しやすく、脂肪酸エステル化合物の濃度がこれより多いと得られた導電性粒子に残存する脂肪酸エステル化合物が0.5g/m超であるとこの導電性粒子を導電性ペーストとしたときに導電性粒子の導電性の悪化に繋がる恐れがあるからである。
【0084】
(C)
先の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法では扁平状導電性粒子製造工程および湿式分級工程の両工程において同一の溶剤が使用されたが、扁平状導電性粒子製造工程と湿式分級工程とで異なる溶剤が使用されてもかまわない。かかる場合、扁平状導電性粒子製造工程後に導電性粒子を一旦乾燥させ、その後にその乾燥された導電性粒子を、扁平状導電性粒子製造工程中における溶剤と異なる溶剤に添加する。
【0085】
(D)
先の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法では湿式分級工程において図1〜3に示される湿式分級装置が採用されたが、本願発明の趣旨を損ねない限り、他の市販の湿式分級装置が採用されてもかまわない。また、先の実施の形態に係る湿式分級装置100の多段篩ユニット110は3段構成となっていたが、この段数は、特に限定されず、1段であってもよいし、2段であってもよいし、4段以上であってもよい。
【0086】
(E)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、湿式分級工程において篩の目詰まり防止対策としてブラシやボール等が利用されてもかまわない。
【0087】
(F)
先の実施の形態に係る扁平状導電性粒子の製造方法では湿式分級工程において多段篩ユニット110が振動させられたが、多段篩ユニット110は面内運動させられてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100 湿式分級装置
110 多段篩ユニット
111a,111b,111c 篩
112a,112b 中間リング
113 排出管付き受皿
114 排出管
115 ガイドバー
116 蓋体
117 クランプ
118 本体部
119 レバー
120 接続部材
130 振動装置
131 本体部
132 載置テーブル
140 排出用チューブ
150 排出容器
160 供給ホース
Fa,Fb,Fc 枠体
Ma,Mb,Mc メッシュ
P 空気穴
Or O−リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平状の導電性粒子を製造する扁平状導電性粒子製造工程と、
前記扁平状の導電性粒子を湿式で篩分け分級する湿式分級工程と
を備える扁平状導電性粒子の製造方法。
【請求項2】
前記扁平状導電性粒子製造工程では、湿式で前記扁平状の導電性粒子が製造される
請求項1に記載の扁平状導電性粒子の製造方法。
【請求項3】
前記湿式分級工程では、前記扁平状の導電性粒子が液状媒体に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲となるように濃度調整された前記扁平状の導電性粒子のスラリーが前記篩に供給される
請求項1または2に記載の扁平状導電性粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の扁平状導電性粒子の製造方法により製造される
扁平状導電性粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の扁平状導電性粒子と、
樹脂と
を含有する樹脂組成物。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−14979(P2012−14979A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151037(P2010−151037)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】