扉のロック機構
【課題】構成がシンプルで、可動部が比較的少なく、製造・組立が容易で、且つ故障が少ない扉のロック機構の提供。
【解決手段】扉(50)のヒンジとは反対側縁部の垂直方向全域に亘って形成された把手(1)が上下両端の少なくとも一方にスリーブ状収容部(11)を備えており、そのスリーブ状収容部(11)には把手(1)の回転軸となり扉(50)の上下両端の少なくとも一方に固着されたロックピン収納部材(2)を収容しており、該ロックピン収納部材(2)は、弾性手段(4)により上方又は下方へ付勢され且つ垂直方向へ移動可能に構成されたロックピン(3)を収納しており、把手(1)の回動をロックピン(3)の下方又は上方の移動に変換する変換機構が設けられている。
【解決手段】扉(50)のヒンジとは反対側縁部の垂直方向全域に亘って形成された把手(1)が上下両端の少なくとも一方にスリーブ状収容部(11)を備えており、そのスリーブ状収容部(11)には把手(1)の回転軸となり扉(50)の上下両端の少なくとも一方に固着されたロックピン収納部材(2)を収容しており、該ロックピン収納部材(2)は、弾性手段(4)により上方又は下方へ付勢され且つ垂直方向へ移動可能に構成されたロックピン(3)を収納しており、把手(1)の回動をロックピン(3)の下方又は上方の移動に変換する変換機構が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納庫やロッカー等の扉において、扉を閉鎖した際の扉のロック機構に関する。より詳細には、本発明は、開閉操作用の把手が扉の上縁部から下縁部まで延在しているタイプの収納庫に好適に適用できるロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、扉の把手が、扉の上縁部から下縁部まで延在しており、その把手のどの部分を掴んでも、或いは引いても、扉の開閉操作を行うことが出来るタイプの収納庫が提供されている。
その様なタイプの収納庫においては、把手の構成の相違に起因して、従来の収納庫とは異なる構成のロック機構が採用されている。
【0003】
把手が扉の上縁部から下縁部まで延在しているタイプの収納庫のロック機構として、例えば、把手の回転中心となる垂直方向のシャフト及びラッチの回転中心となる垂直方向シャフト(2本の垂直シャフト)と、係る2本の垂直方向シャフト間で回転を伝達する回転伝達機構とを有しており、そして把手を引いた際にとって側の垂直方向シャフトに生じる回転を、複雑な構成を有する回転伝達機構によりラッチ側の垂直方向シャフトへ伝達するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記技術は構成、特に回転伝達機構の構成が複雑であり、製造及び組立てに多大な労力やコストが必要となるという問題を具備している。それと共に、回転伝達機構には、関節部分、可動箇所が多く、故障する可能性も高い、という問題も有している。
【0005】
かかる問題点に対して、簡単な機構で確実に扉を開閉及びロックする技術が望まれている。
しかし、その様な要望に応えることが出来るロック機構は、未だに提案されていない。
【特許文献1】特開2004−92022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、構成がシンプルで、可動部が比較的少なく、製造・組立が容易な扉のロック機構の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、種々研究・開発の結果、螺旋構造(ねじ山と類似の構造)を応用した回転−直線運動変換機構を用いれば、把手を操作する(掴んで、或いは、引いて)ことによる回転運動(回動:例えば、45°〜90°程度)を、当該シャフト状部材或いはスリーブ状部材の延長線上にある扉ロック用(閉鎖用)ピンの上下方向移動に変換できることを見出した。
【0008】
本発明の扉のロック機構は係る知見に基づいて創作されたものであり、扉(50)に設けられた把手(1)と、該把手(1)の上下両端部の少なくとも一方に設けられたスリーブ状収容部(11)と、回転運動を上下方向直線運動に変換する運動変換機構(ガイドピン4、第1の溝13、第2の溝25等)と、把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)と係合可能なロック部材(ロックピン3の先端部32)とを備え、前記把手(1)は前記運動変換機構に対して回転運動を伝達する様に構成され、前記ロック部材は前記運動変換機構により上下方向に直線移動する様に構成されている(請求項1)。
【0009】
ここで、前記把手(1)は、扉(50)のヒンジ(H)の反対側縁部の垂直方向全域に亘って形成されているのが好ましい。
但し、前記把手(1)は、扉(50)の右縁部から左縁部に亘って水平方向に延在するタイプであっても良いし、或いは、扉(50)のヒンジ(H)の反対側縁部に扉(50)の上縁部から下縁部の間の一部領域に設けられているタイプであっても良い。
【0010】
本発明において、前記スリーブ状収容部(11)は把手(1)の回転軸であり、前記前記運動変換機構は、前記スリーブ状収容部(11)の上下両端の少なくとも一方に固着されたロックピン収納部材(2)と、前記スリーブ状収容部(11)に形成された螺旋状の第1の溝部(第1のガイド溝13)と、ロックピン収納部材(2)に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)と、前記ロックピン(3)から水平方向へ突出している突起部分(ガイドピン4)とを含み、ロックピン(3)から水平方向へ突出している突起部分(ガイドピン4)は、前記スリーブ状収容部(11)に形成された螺旋状の第1の溝部(第1のガイド溝13)及びロックピン収納部材(2)に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)を貫通しており、前記ロックピン(3)の上下何れか一方の端部にはロック部材(先端部32)が設けられ、前記ロックピン収納部材(2)には弾性手段(4)が収容され、該弾性部材(4)は前記ロック部材(ロックピン3の先端部32)が把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)と係合する方向へ前記ロックピン(3)を付勢しているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
本発明において、把手(1)が回動すると前記第1の溝部(第1のガイド溝13)が回動し、ロックピン(3)の突起部分(ガイドピン4)は第2の溝部(第2のガイド溝25)により回転方向の移動が規制され且つ第1の溝部(第1のガイド溝13)に沿って移動し、ロック部材(ロックピン3の先端部32)が鉛直方向へ移動して、把手(1)の上方及び/又は下方の部材(ロッカー60の係合孔65)との係合を解除する様に構成されているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
本発明において、把手(1)の回動が解除された場合に、前記弾性手段(4)の反撥力により、前記ロック部材(ロックピン3の先端部32)が、把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)に挿入されて嵌合する様に構成されているのが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の、扉(50)のロック機構によれば、把手(1)の回動をロックピン(3)の下方又は上方の移動に変換する運動変換機構(ガイドピン4、第1の溝13、第2の溝25等)が設けられている(請求項1)。この運動変換機構の作用により、把手(1)を掴んで回動すれば、その回動が、ロックピン(3)(に設けたロック部材32)と把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)との係合状態を解除する動作に変換される。
そのため、本発明によれば、把手(1)を掴んで回動すれば、扉(50)が収納庫(ロッカー60)にロックされた状態を解除することが出来る。
【0014】
より詳細には、その運動変換機構(ガイドピン4、第1の溝13、第2の溝25等)は、スリーブ状収容部(11)に形成された螺旋状の第1の溝部(第1のガイド溝13)と、ロックピン収納部材(2)に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)と、ロックピン(3)に形成され水平方向へ延在する突起部分(ガイドピン4)とを含み、前記突起部分(ガイドピン4)は前記第1の溝部(13)及び第2の溝部(25)内に挿入されているので(請求項2)、把手を操作して(例えば、把手1を掴んで引いて)把手(1)の回転軸(スリーブ状収容部11)を回転させた場合に、当該回転(45°〜90°程度の回動)は、ロックピン(3)に形成され水平方向へ延在する突起部分(ガイドピン4)が、鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)により回転方向(円周方向)の移動が制限されつつ、第1の溝部(第1のガイド溝13)を摺動することにより、鉛直方向の移動に変換される。
【0015】
その結果、把手(1)の回転軸(スリーブ状収容部11)の延長線上にあるロック部材(ロックピン3の先端部32:把手1を操作しない場合に扉50の上縁部或いは下縁部から5mm程度突出している)を引き込み、ロックピン(3)に設けたロック部材32と把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)との係合状態を解除して、扉(50)が収納庫(ロッカー60)にロックされた状態を解除することが出来る。
【0016】
一方、扉(50)を閉めてロックさせる際には、前記変換機構に設けられた弾性体(たとえばスプリング5)の弾性反発力により、ロックピン(3)が扉(50)から突出して収納庫(ロッカー60)の係合孔(ロッカー60の天框62における底板63に形成された係合孔65)に挿入されて、ロック状態となる。
その際に、弾性体(スプリング5)の弾性反発力は、螺旋状の第1の溝部(13)及び把手(1)の回転軸(スリーブ状収容部11)により、把手(1)における扉開放時における回転方向とは逆の方向への回転に変換され、把手(1)を、扉(50)閉鎖時の状態(ロック状態)に保持するのである。
【0017】
そして、本発明のロック機構は構成部品点数が比較的少なく、且つ構造が単純であるため、製造及び組立が容易である。
そして、構造及び作動原理が単純であるので、故障が少ない。
なお、本実施形態の扉のロック機構は、回転式扉のみならず、引き戸を始めとして、いわゆる「ラッチ」を有する扉の全てに適用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態において、収納庫は例えばロッカーであり、ロッカーの扉をロックし、ロック解除する機構を例にして、説明する。
【0019】
先ず、本発明のロック機構の理解を容易にするために、本発明が適用される収納庫(ロッカー)について、図13、図14を参照して説明する。
図13において、全体を符号60で示すロッカーは、ヒンジHにより回動自在に取り付けられた扉50を有している。
【0020】
扉50のヒンジHの反対側縁部、図13において左方向縁部には、扉50の上縁部から下縁部まで延在した把手1が設けられている。そして、詳細を後述するように、扉50の上縁部から下縁部まで延在している把手1のどの部分を掴んでも、扉50の開閉操作が行われる様に構成されている。
より詳細に述べると、把手1とロッカー60の天框62との境界部分R1と、把手1とロッカー60の底框64との境界部分R2に、図1〜図12を参照して詳述するロック機構が設けられている。
【0021】
なお、図14は、図13で示すロッカー60の端面を示しているが、把手1のみは断面形状(A14−A14矢視断面の形状)を示している。
【0022】
次に、図1〜図12を参照して、扉の開閉について説明する。
図1〜図3は、扉が閉められ、ロックされた状態の扉におけるロック機構の拡大断面を、また図4〜図7は各構成の単一部品を示している。
図1は、扉50の把手1のある側の上方コーナー部の縦断面図(図8も参照)を示し、図2は図1のX−X段面図、図3は図2のY−Y段面図を示している。
なお、図示の実施形態では、扉50は上下対称に構成されており、扉50の上下2箇所に同様のロック機構を有している。
【0023】
図1〜図3において、把手1の上下の端部には、ロックピン収納部材2を収容するスリーブ状収容部11が設けられている。
図示の実施形態においては、把手1の上端におけるロック機構について説明する。すなわち、図1〜図12において、把手1の上端部側のみを示している。
【0024】
図2において、把手1(の上端)では、スリーブ状収容部11が把手1に嵌合した状態で示されているが、例えば、把手1の断面形状を正方形にして、円環状のスリーブ状収容部11が断面正方形の把手1に内接する様に構成しても良い。
図2で示す場合も、上述する場合(円環状のスリーブ状収容部11が断面正方形の把手1に内接して構成される場合)も、把手1及びスリーブ状収容部11(例えば、アルミニウム製)は、何れも、押出成形(アルミニウム押出成形)により製造可能である。
【0025】
スリーブ状収容部11には、円筒状のロックピン収納部材2が収容されている。詳細は後述するが、スリーブ状収容部11とロックピン収納部材2とは、相対的に回動可能である。
またスリーブ状収容部11には、図4(図2のA矢視図)に示すように、螺旋状の第1の溝部(以降、螺旋状の第1の溝部を第1のガイド溝という)13が形成されており、第1のガイド溝13は、収容部11内部と外部とを貫通している。
【0026】
前記ロックピン収納部材2には、図5に詳細を示すように、下端が開放された円形断面の空間部であるロックピン収納室21が形成され、その開放された収納室21下端の内径部には雌ねじ22が形成されている。
ロックピン収納部材2の上端面の中心には後述するロックピン3(図6参照)の先端部32(ロック部材)が貫通するピン貫通孔23が形成され、ロックピン収納部材2の上端部近傍の外周には雄ネジ24が形成されている。
【0027】
図1で示されているように、ロックピン収容部材2の上端部外周に形成された雄ネジ24は、天井板70の取付代部72に形成された雌ネジ25と螺合しており、ロックピン収容部材2の上端部外周で雄ネジ24が形成されている部分の外径は、それよりも下方の部分(ロックピン収容部材2の雄ネジ24が形成されていない部分)よりも小径に形成されているので、ロックピン収容部材2の雄ネジ24が形成されていない部分の上端部と雄ネジ24が形成されている部分との境界は段部となっており、当該段部が取付代部72と当接してストッパとして作用する。
ロックピン収納部材2は、ビス74により、扉本体50上端の天井板70に取り付けられており、当該ビス74により、ロックピン収納部材2は回り止めが為されて、固定される。
また、天井板70の取付代部72の下面と、把手1上端のスリーブ状収容部11の上端との間には、スリーブ状収容部11の回転運動を円滑にするため、スラストワッシャ7が介装されている。
【0028】
図5において、ロックピン収納室21には長孔形状の第2のガイド溝25が形成され、第2のガイド溝25はロックピン収納部材2の長手方向(図5における鉛直方向)に延在しており、ロックピン収納室21と外部とを貫通している。
【0029】
図1、図3で示す様に、ロックピン収納部材2は、ビス74により天井板70に固定されており、且つ、ロックピン収容部材2の上端部外周に形成された雄ネジ24が天井板70の取付代部72に形成された雌ネジ25と螺合しているので、スリーブ状収容部11が回動しても、(扉本体50の)天井板70に固着されたロックピン収納部材2は回動しない。換言すれば、把手1の回動時には、把手1と同時に回動するスリーブ状収容部11と、(扉本体50に固着された)ロックピン収納部材2との間で、相対的な回転運動(回動)が行われることになる。
【0030】
ロックピン3は、図6で示すように、前記ロックピン収納部材2のロックピン収納室21をガタ無く、しかも円滑に摺動する円柱部31と、その円柱部31より径が細く先端が半球状の先端部32と、円柱部31に対して、先端部32と反対側に位置している円形突出部33、とから構成されている。
【0031】
円柱部31の外周には、ロックピン2の中心軸方向(図6の上下方向)と直交する方向にガイドピン4が突設されている。そして、ガイドピン4は、図示しないねじにより、円柱部31へ植込まれている。
【0032】
また、図1及び図3で示す様に、ロックピン収納部材2内には付勢用コイルスプリング5が収容されており、ロックピン収納部材2の下端部にはプラグ6(図7参照)が螺合している。
【0033】
次に、主として図1を参照して、ロックピン3をロックピン収納部材2へ組み付ける態様について説明する。
先ず、ガイドピン4を捩じ込む以前の状態のロックピン3(図示せず)を、単体で、ロックピン収納部材2のロックピン収納室21に挿入する。
そして、付勢用コイルスプリング5をロックピン収納室21内に挿入し、プラグ6をロックピン収納部材2下端に取り付ける。
【0034】
ここで、図7で示す様に、プラグ6は外周部に雄ねじ61を有しており、プラグ6をロックピン収納部材2下端に取り付けるに際しては、プラグ6の雄ネジ61を、ロックピン収納部材2下端の内径部に形成された雌ねじ22に螺合させれば良い。
【0035】
図4で示す状態、すなわちロックピン収納部材2内(のロックピン収納室21内)にロックピン3および付勢用コイルスプリング5を組み込んだ状態において、把手1上端のスリーブ状収容部11に形成された螺旋状の第1のガイド溝13の上端部13aと、ロックピン収納部材2の鉛直方向に形成された第2のガイド溝25の上端25aとは概略同じ高さである。換言すれば、図4において、上下方向位置が概略同じとなる。そして、第1のガイド溝13の下端部13bと、ロックピン収納部材2に形成された第2のガイド溝25の下端25bとは、概略同じ高さである(図4において、上下方向位置が概略同じとなる)。
【0036】
図4で示す様に、第1のガイド溝13の上下端部13a、13bと、第2のガイド溝25の上下端部25a、25bとが概略同じ高さである状態において、第1のガイド溝13と、第2のガイド溝25の双方を貫通するようにして、ガイドピン4をロックピン3の円柱部31に捩じ込んで、ガイドピン4をロックピン3(の円柱部31)に突設せしめる。
これにより、ロックピン収納部材2と、ロックピン3との組立が完了するのである。
【0037】
図1〜図4及び図8は、ロック状態、すなわち把手1を引かない(把手を操作しない)状態を示している。この時、第1のガイド溝13と、第2のガイド溝25との相対位置関係は図4で実線によって示される。
【0038】
ロック状態(図1〜図4及び図8)において、コイルスプリング5(図1及び図3参照:図4では図示せず)の反発力によって、ロックピン3は上方に押し上げられ(図1及び図3参照)、ロックピン3の先端部32がロックピン収納部材2の上方に突出し、天框62の底板63に形成された係合孔(受容部)65に挿入、係合する。
ロックピン3の先端部32が、天框62(の底板63)の係合孔(受容部)65に挿入、係合することにより、扉50はロック状態を維持する。
なお、図1及び図3において、底板63及び係合孔65は2点鎖線で示されている。
【0039】
ここで、コイルスプリング5の反発力は、ロックピン3及びガイドピン4を介して螺旋状の第1のガイド溝13へ伝達され、螺旋状のガイド溝13によって回転方向の力に変換される。係る回転方向の力は、スリーブ状収容部11を介して、把手1に伝達される。すなわち、把手1もコイルスプリング5の反力を受ける。
そして、扉50がロック状態を維持している場合において、把手1にはコイルスプリング5の反発力(が変換された回転方向の力)が伝達されるので、図2に示すように、把手1の把手部12は、扉50の前面50tと面一となる様な位置へ(図2の矢印Bとは逆方向へ)常に付勢される。
【0040】
次に、図9〜図12を参照して、把手1を引いて扉50の開放操作を行う場合について説明する。
扉50を開放するに際しては、図2、図10、図12に示すように、把手1を引くことにより、矢印B方向に回転させる。
【0041】
係る回転力(把手1を矢印B方向に回転させる力)はスリーブ状収容部11に伝達され、スリーブ状収容部11に形成した螺旋状の第1のガイド溝13は、前述の図4において矢印Cの方向に回転する。そして、ガイドピン4は、扉50に固定されたロックピン収納部材2及び鉛直の第2のガイド溝25によって回転方向(円周方向)へ移動してしまうことを抑止されつつ、螺旋状の第1のガイド溝13と摺動して移動することにより、図4において矢印D方向へ下降する。
把手1が最大に回転した状態が図9〜図11に示してある。
【0042】
ガイドピン4が図4の矢印D方向へ下降する結果、図11に示すように、ガイドピン4は、螺旋状の第1のガイド溝13及び鉛直の第2のガイド溝25の最下点13b、25bまで移動する。
そして、ガイドピン4が第1のガイド溝13及び第2のガイド溝25の最下点13b、25bまで移動する結果として、ロックピン3も最下点まで下降する。
ロックピン3が下方に移動すれば、先端部32が天框62の係合孔65から引き出され、以って、扉50のロック状態が解除される。
【0043】
扉50のロック状態が解除されたならば、把手1をそのまま手前に引っ張れば、ロッカー60の扉50は開放される。
【0044】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態に係るロッカー60の把手1は、扉50のヒンジHの反対側縁部に、扉50の上縁部から下縁部に亘って延在して設けられているが、当該把手は、扉50の右縁部から左縁部に亘って水平方向に延在するタイプであっても良いし、或いは、扉50のヒンジHの反対側縁部に扉50の上縁部から下縁部の間の一部領域に設けられているタイプであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態の要部構成を説明する縦断面図であって、ロック状態を示す図。
【図2】図1のX−X断面図。
【図3】図2のY−Y断面図。
【図4】図2のA矢視図。
【図5】ロックピン収納部材の縦断面図。
【図6】ロックピンの斜視図。
【図7】プラグの斜視図。
【図8】扉のロック状態を示す斜視図。
【図9】本発明の実施形態の縦断面図であって、ロック解除の状態を示す図。
【図10】図9のX−X断面図。
【図11】図10のY−Y断面図。
【図12】扉の開放時で把手を操作中の要部を示す斜視図。
【図13】本発明が適用されるロッカーの正面図。
【図14】図13のA14−A14端面図であって、把手の断面形状を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1・・・把手
2・・・ロックピン収容部材
3・・・ロックピン
4・・・突起部分/ガイドピン
5・・・付勢手段/コイルスプリング
6・・・プラグ
7・・・スラストワッシャ
11・・・スリーブ状収容部
12・・・把手部
13・・・第1の溝部/第1のガイド溝
21・・・ロックピン収容室
23・・・ピン貫通孔
24・・・拡径縁部
25・・・第2の溝部/第2のガイド溝
31・・・円柱部
32・・・先端部
50・・・扉/扉本体
60・・・ロッカー/収納庫
62・・・天框
63・・・(天框の)底板
65・・・受容部/係合孔
70・・・(扉の)天井板
72・・・(扉の天井板における)取付代部
74・・・ビス
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納庫やロッカー等の扉において、扉を閉鎖した際の扉のロック機構に関する。より詳細には、本発明は、開閉操作用の把手が扉の上縁部から下縁部まで延在しているタイプの収納庫に好適に適用できるロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、扉の把手が、扉の上縁部から下縁部まで延在しており、その把手のどの部分を掴んでも、或いは引いても、扉の開閉操作を行うことが出来るタイプの収納庫が提供されている。
その様なタイプの収納庫においては、把手の構成の相違に起因して、従来の収納庫とは異なる構成のロック機構が採用されている。
【0003】
把手が扉の上縁部から下縁部まで延在しているタイプの収納庫のロック機構として、例えば、把手の回転中心となる垂直方向のシャフト及びラッチの回転中心となる垂直方向シャフト(2本の垂直シャフト)と、係る2本の垂直方向シャフト間で回転を伝達する回転伝達機構とを有しており、そして把手を引いた際にとって側の垂直方向シャフトに生じる回転を、複雑な構成を有する回転伝達機構によりラッチ側の垂直方向シャフトへ伝達するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記技術は構成、特に回転伝達機構の構成が複雑であり、製造及び組立てに多大な労力やコストが必要となるという問題を具備している。それと共に、回転伝達機構には、関節部分、可動箇所が多く、故障する可能性も高い、という問題も有している。
【0005】
かかる問題点に対して、簡単な機構で確実に扉を開閉及びロックする技術が望まれている。
しかし、その様な要望に応えることが出来るロック機構は、未だに提案されていない。
【特許文献1】特開2004−92022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、構成がシンプルで、可動部が比較的少なく、製造・組立が容易な扉のロック機構の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、種々研究・開発の結果、螺旋構造(ねじ山と類似の構造)を応用した回転−直線運動変換機構を用いれば、把手を操作する(掴んで、或いは、引いて)ことによる回転運動(回動:例えば、45°〜90°程度)を、当該シャフト状部材或いはスリーブ状部材の延長線上にある扉ロック用(閉鎖用)ピンの上下方向移動に変換できることを見出した。
【0008】
本発明の扉のロック機構は係る知見に基づいて創作されたものであり、扉(50)に設けられた把手(1)と、該把手(1)の上下両端部の少なくとも一方に設けられたスリーブ状収容部(11)と、回転運動を上下方向直線運動に変換する運動変換機構(ガイドピン4、第1の溝13、第2の溝25等)と、把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)と係合可能なロック部材(ロックピン3の先端部32)とを備え、前記把手(1)は前記運動変換機構に対して回転運動を伝達する様に構成され、前記ロック部材は前記運動変換機構により上下方向に直線移動する様に構成されている(請求項1)。
【0009】
ここで、前記把手(1)は、扉(50)のヒンジ(H)の反対側縁部の垂直方向全域に亘って形成されているのが好ましい。
但し、前記把手(1)は、扉(50)の右縁部から左縁部に亘って水平方向に延在するタイプであっても良いし、或いは、扉(50)のヒンジ(H)の反対側縁部に扉(50)の上縁部から下縁部の間の一部領域に設けられているタイプであっても良い。
【0010】
本発明において、前記スリーブ状収容部(11)は把手(1)の回転軸であり、前記前記運動変換機構は、前記スリーブ状収容部(11)の上下両端の少なくとも一方に固着されたロックピン収納部材(2)と、前記スリーブ状収容部(11)に形成された螺旋状の第1の溝部(第1のガイド溝13)と、ロックピン収納部材(2)に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)と、前記ロックピン(3)から水平方向へ突出している突起部分(ガイドピン4)とを含み、ロックピン(3)から水平方向へ突出している突起部分(ガイドピン4)は、前記スリーブ状収容部(11)に形成された螺旋状の第1の溝部(第1のガイド溝13)及びロックピン収納部材(2)に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)を貫通しており、前記ロックピン(3)の上下何れか一方の端部にはロック部材(先端部32)が設けられ、前記ロックピン収納部材(2)には弾性手段(4)が収容され、該弾性部材(4)は前記ロック部材(ロックピン3の先端部32)が把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)と係合する方向へ前記ロックピン(3)を付勢しているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
本発明において、把手(1)が回動すると前記第1の溝部(第1のガイド溝13)が回動し、ロックピン(3)の突起部分(ガイドピン4)は第2の溝部(第2のガイド溝25)により回転方向の移動が規制され且つ第1の溝部(第1のガイド溝13)に沿って移動し、ロック部材(ロックピン3の先端部32)が鉛直方向へ移動して、把手(1)の上方及び/又は下方の部材(ロッカー60の係合孔65)との係合を解除する様に構成されているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
本発明において、把手(1)の回動が解除された場合に、前記弾性手段(4)の反撥力により、前記ロック部材(ロックピン3の先端部32)が、把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)に挿入されて嵌合する様に構成されているのが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の、扉(50)のロック機構によれば、把手(1)の回動をロックピン(3)の下方又は上方の移動に変換する運動変換機構(ガイドピン4、第1の溝13、第2の溝25等)が設けられている(請求項1)。この運動変換機構の作用により、把手(1)を掴んで回動すれば、その回動が、ロックピン(3)(に設けたロック部材32)と把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)との係合状態を解除する動作に変換される。
そのため、本発明によれば、把手(1)を掴んで回動すれば、扉(50)が収納庫(ロッカー60)にロックされた状態を解除することが出来る。
【0014】
より詳細には、その運動変換機構(ガイドピン4、第1の溝13、第2の溝25等)は、スリーブ状収容部(11)に形成された螺旋状の第1の溝部(第1のガイド溝13)と、ロックピン収納部材(2)に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)と、ロックピン(3)に形成され水平方向へ延在する突起部分(ガイドピン4)とを含み、前記突起部分(ガイドピン4)は前記第1の溝部(13)及び第2の溝部(25)内に挿入されているので(請求項2)、把手を操作して(例えば、把手1を掴んで引いて)把手(1)の回転軸(スリーブ状収容部11)を回転させた場合に、当該回転(45°〜90°程度の回動)は、ロックピン(3)に形成され水平方向へ延在する突起部分(ガイドピン4)が、鉛直方向に延在する第2の溝部(第2のガイド溝25)により回転方向(円周方向)の移動が制限されつつ、第1の溝部(第1のガイド溝13)を摺動することにより、鉛直方向の移動に変換される。
【0015】
その結果、把手(1)の回転軸(スリーブ状収容部11)の延長線上にあるロック部材(ロックピン3の先端部32:把手1を操作しない場合に扉50の上縁部或いは下縁部から5mm程度突出している)を引き込み、ロックピン(3)に設けたロック部材32と把手(1)の上方及び/又は下方の部材(例えば、ロッカー60の天框62の底板63に形成された係合孔65)との係合状態を解除して、扉(50)が収納庫(ロッカー60)にロックされた状態を解除することが出来る。
【0016】
一方、扉(50)を閉めてロックさせる際には、前記変換機構に設けられた弾性体(たとえばスプリング5)の弾性反発力により、ロックピン(3)が扉(50)から突出して収納庫(ロッカー60)の係合孔(ロッカー60の天框62における底板63に形成された係合孔65)に挿入されて、ロック状態となる。
その際に、弾性体(スプリング5)の弾性反発力は、螺旋状の第1の溝部(13)及び把手(1)の回転軸(スリーブ状収容部11)により、把手(1)における扉開放時における回転方向とは逆の方向への回転に変換され、把手(1)を、扉(50)閉鎖時の状態(ロック状態)に保持するのである。
【0017】
そして、本発明のロック機構は構成部品点数が比較的少なく、且つ構造が単純であるため、製造及び組立が容易である。
そして、構造及び作動原理が単純であるので、故障が少ない。
なお、本実施形態の扉のロック機構は、回転式扉のみならず、引き戸を始めとして、いわゆる「ラッチ」を有する扉の全てに適用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態において、収納庫は例えばロッカーであり、ロッカーの扉をロックし、ロック解除する機構を例にして、説明する。
【0019】
先ず、本発明のロック機構の理解を容易にするために、本発明が適用される収納庫(ロッカー)について、図13、図14を参照して説明する。
図13において、全体を符号60で示すロッカーは、ヒンジHにより回動自在に取り付けられた扉50を有している。
【0020】
扉50のヒンジHの反対側縁部、図13において左方向縁部には、扉50の上縁部から下縁部まで延在した把手1が設けられている。そして、詳細を後述するように、扉50の上縁部から下縁部まで延在している把手1のどの部分を掴んでも、扉50の開閉操作が行われる様に構成されている。
より詳細に述べると、把手1とロッカー60の天框62との境界部分R1と、把手1とロッカー60の底框64との境界部分R2に、図1〜図12を参照して詳述するロック機構が設けられている。
【0021】
なお、図14は、図13で示すロッカー60の端面を示しているが、把手1のみは断面形状(A14−A14矢視断面の形状)を示している。
【0022】
次に、図1〜図12を参照して、扉の開閉について説明する。
図1〜図3は、扉が閉められ、ロックされた状態の扉におけるロック機構の拡大断面を、また図4〜図7は各構成の単一部品を示している。
図1は、扉50の把手1のある側の上方コーナー部の縦断面図(図8も参照)を示し、図2は図1のX−X段面図、図3は図2のY−Y段面図を示している。
なお、図示の実施形態では、扉50は上下対称に構成されており、扉50の上下2箇所に同様のロック機構を有している。
【0023】
図1〜図3において、把手1の上下の端部には、ロックピン収納部材2を収容するスリーブ状収容部11が設けられている。
図示の実施形態においては、把手1の上端におけるロック機構について説明する。すなわち、図1〜図12において、把手1の上端部側のみを示している。
【0024】
図2において、把手1(の上端)では、スリーブ状収容部11が把手1に嵌合した状態で示されているが、例えば、把手1の断面形状を正方形にして、円環状のスリーブ状収容部11が断面正方形の把手1に内接する様に構成しても良い。
図2で示す場合も、上述する場合(円環状のスリーブ状収容部11が断面正方形の把手1に内接して構成される場合)も、把手1及びスリーブ状収容部11(例えば、アルミニウム製)は、何れも、押出成形(アルミニウム押出成形)により製造可能である。
【0025】
スリーブ状収容部11には、円筒状のロックピン収納部材2が収容されている。詳細は後述するが、スリーブ状収容部11とロックピン収納部材2とは、相対的に回動可能である。
またスリーブ状収容部11には、図4(図2のA矢視図)に示すように、螺旋状の第1の溝部(以降、螺旋状の第1の溝部を第1のガイド溝という)13が形成されており、第1のガイド溝13は、収容部11内部と外部とを貫通している。
【0026】
前記ロックピン収納部材2には、図5に詳細を示すように、下端が開放された円形断面の空間部であるロックピン収納室21が形成され、その開放された収納室21下端の内径部には雌ねじ22が形成されている。
ロックピン収納部材2の上端面の中心には後述するロックピン3(図6参照)の先端部32(ロック部材)が貫通するピン貫通孔23が形成され、ロックピン収納部材2の上端部近傍の外周には雄ネジ24が形成されている。
【0027】
図1で示されているように、ロックピン収容部材2の上端部外周に形成された雄ネジ24は、天井板70の取付代部72に形成された雌ネジ25と螺合しており、ロックピン収容部材2の上端部外周で雄ネジ24が形成されている部分の外径は、それよりも下方の部分(ロックピン収容部材2の雄ネジ24が形成されていない部分)よりも小径に形成されているので、ロックピン収容部材2の雄ネジ24が形成されていない部分の上端部と雄ネジ24が形成されている部分との境界は段部となっており、当該段部が取付代部72と当接してストッパとして作用する。
ロックピン収納部材2は、ビス74により、扉本体50上端の天井板70に取り付けられており、当該ビス74により、ロックピン収納部材2は回り止めが為されて、固定される。
また、天井板70の取付代部72の下面と、把手1上端のスリーブ状収容部11の上端との間には、スリーブ状収容部11の回転運動を円滑にするため、スラストワッシャ7が介装されている。
【0028】
図5において、ロックピン収納室21には長孔形状の第2のガイド溝25が形成され、第2のガイド溝25はロックピン収納部材2の長手方向(図5における鉛直方向)に延在しており、ロックピン収納室21と外部とを貫通している。
【0029】
図1、図3で示す様に、ロックピン収納部材2は、ビス74により天井板70に固定されており、且つ、ロックピン収容部材2の上端部外周に形成された雄ネジ24が天井板70の取付代部72に形成された雌ネジ25と螺合しているので、スリーブ状収容部11が回動しても、(扉本体50の)天井板70に固着されたロックピン収納部材2は回動しない。換言すれば、把手1の回動時には、把手1と同時に回動するスリーブ状収容部11と、(扉本体50に固着された)ロックピン収納部材2との間で、相対的な回転運動(回動)が行われることになる。
【0030】
ロックピン3は、図6で示すように、前記ロックピン収納部材2のロックピン収納室21をガタ無く、しかも円滑に摺動する円柱部31と、その円柱部31より径が細く先端が半球状の先端部32と、円柱部31に対して、先端部32と反対側に位置している円形突出部33、とから構成されている。
【0031】
円柱部31の外周には、ロックピン2の中心軸方向(図6の上下方向)と直交する方向にガイドピン4が突設されている。そして、ガイドピン4は、図示しないねじにより、円柱部31へ植込まれている。
【0032】
また、図1及び図3で示す様に、ロックピン収納部材2内には付勢用コイルスプリング5が収容されており、ロックピン収納部材2の下端部にはプラグ6(図7参照)が螺合している。
【0033】
次に、主として図1を参照して、ロックピン3をロックピン収納部材2へ組み付ける態様について説明する。
先ず、ガイドピン4を捩じ込む以前の状態のロックピン3(図示せず)を、単体で、ロックピン収納部材2のロックピン収納室21に挿入する。
そして、付勢用コイルスプリング5をロックピン収納室21内に挿入し、プラグ6をロックピン収納部材2下端に取り付ける。
【0034】
ここで、図7で示す様に、プラグ6は外周部に雄ねじ61を有しており、プラグ6をロックピン収納部材2下端に取り付けるに際しては、プラグ6の雄ネジ61を、ロックピン収納部材2下端の内径部に形成された雌ねじ22に螺合させれば良い。
【0035】
図4で示す状態、すなわちロックピン収納部材2内(のロックピン収納室21内)にロックピン3および付勢用コイルスプリング5を組み込んだ状態において、把手1上端のスリーブ状収容部11に形成された螺旋状の第1のガイド溝13の上端部13aと、ロックピン収納部材2の鉛直方向に形成された第2のガイド溝25の上端25aとは概略同じ高さである。換言すれば、図4において、上下方向位置が概略同じとなる。そして、第1のガイド溝13の下端部13bと、ロックピン収納部材2に形成された第2のガイド溝25の下端25bとは、概略同じ高さである(図4において、上下方向位置が概略同じとなる)。
【0036】
図4で示す様に、第1のガイド溝13の上下端部13a、13bと、第2のガイド溝25の上下端部25a、25bとが概略同じ高さである状態において、第1のガイド溝13と、第2のガイド溝25の双方を貫通するようにして、ガイドピン4をロックピン3の円柱部31に捩じ込んで、ガイドピン4をロックピン3(の円柱部31)に突設せしめる。
これにより、ロックピン収納部材2と、ロックピン3との組立が完了するのである。
【0037】
図1〜図4及び図8は、ロック状態、すなわち把手1を引かない(把手を操作しない)状態を示している。この時、第1のガイド溝13と、第2のガイド溝25との相対位置関係は図4で実線によって示される。
【0038】
ロック状態(図1〜図4及び図8)において、コイルスプリング5(図1及び図3参照:図4では図示せず)の反発力によって、ロックピン3は上方に押し上げられ(図1及び図3参照)、ロックピン3の先端部32がロックピン収納部材2の上方に突出し、天框62の底板63に形成された係合孔(受容部)65に挿入、係合する。
ロックピン3の先端部32が、天框62(の底板63)の係合孔(受容部)65に挿入、係合することにより、扉50はロック状態を維持する。
なお、図1及び図3において、底板63及び係合孔65は2点鎖線で示されている。
【0039】
ここで、コイルスプリング5の反発力は、ロックピン3及びガイドピン4を介して螺旋状の第1のガイド溝13へ伝達され、螺旋状のガイド溝13によって回転方向の力に変換される。係る回転方向の力は、スリーブ状収容部11を介して、把手1に伝達される。すなわち、把手1もコイルスプリング5の反力を受ける。
そして、扉50がロック状態を維持している場合において、把手1にはコイルスプリング5の反発力(が変換された回転方向の力)が伝達されるので、図2に示すように、把手1の把手部12は、扉50の前面50tと面一となる様な位置へ(図2の矢印Bとは逆方向へ)常に付勢される。
【0040】
次に、図9〜図12を参照して、把手1を引いて扉50の開放操作を行う場合について説明する。
扉50を開放するに際しては、図2、図10、図12に示すように、把手1を引くことにより、矢印B方向に回転させる。
【0041】
係る回転力(把手1を矢印B方向に回転させる力)はスリーブ状収容部11に伝達され、スリーブ状収容部11に形成した螺旋状の第1のガイド溝13は、前述の図4において矢印Cの方向に回転する。そして、ガイドピン4は、扉50に固定されたロックピン収納部材2及び鉛直の第2のガイド溝25によって回転方向(円周方向)へ移動してしまうことを抑止されつつ、螺旋状の第1のガイド溝13と摺動して移動することにより、図4において矢印D方向へ下降する。
把手1が最大に回転した状態が図9〜図11に示してある。
【0042】
ガイドピン4が図4の矢印D方向へ下降する結果、図11に示すように、ガイドピン4は、螺旋状の第1のガイド溝13及び鉛直の第2のガイド溝25の最下点13b、25bまで移動する。
そして、ガイドピン4が第1のガイド溝13及び第2のガイド溝25の最下点13b、25bまで移動する結果として、ロックピン3も最下点まで下降する。
ロックピン3が下方に移動すれば、先端部32が天框62の係合孔65から引き出され、以って、扉50のロック状態が解除される。
【0043】
扉50のロック状態が解除されたならば、把手1をそのまま手前に引っ張れば、ロッカー60の扉50は開放される。
【0044】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態に係るロッカー60の把手1は、扉50のヒンジHの反対側縁部に、扉50の上縁部から下縁部に亘って延在して設けられているが、当該把手は、扉50の右縁部から左縁部に亘って水平方向に延在するタイプであっても良いし、或いは、扉50のヒンジHの反対側縁部に扉50の上縁部から下縁部の間の一部領域に設けられているタイプであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態の要部構成を説明する縦断面図であって、ロック状態を示す図。
【図2】図1のX−X断面図。
【図3】図2のY−Y断面図。
【図4】図2のA矢視図。
【図5】ロックピン収納部材の縦断面図。
【図6】ロックピンの斜視図。
【図7】プラグの斜視図。
【図8】扉のロック状態を示す斜視図。
【図9】本発明の実施形態の縦断面図であって、ロック解除の状態を示す図。
【図10】図9のX−X断面図。
【図11】図10のY−Y断面図。
【図12】扉の開放時で把手を操作中の要部を示す斜視図。
【図13】本発明が適用されるロッカーの正面図。
【図14】図13のA14−A14端面図であって、把手の断面形状を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1・・・把手
2・・・ロックピン収容部材
3・・・ロックピン
4・・・突起部分/ガイドピン
5・・・付勢手段/コイルスプリング
6・・・プラグ
7・・・スラストワッシャ
11・・・スリーブ状収容部
12・・・把手部
13・・・第1の溝部/第1のガイド溝
21・・・ロックピン収容室
23・・・ピン貫通孔
24・・・拡径縁部
25・・・第2の溝部/第2のガイド溝
31・・・円柱部
32・・・先端部
50・・・扉/扉本体
60・・・ロッカー/収納庫
62・・・天框
63・・・(天框の)底板
65・・・受容部/係合孔
70・・・(扉の)天井板
72・・・(扉の天井板における)取付代部
74・・・ビス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けられた把手と、該把手の上下両端部の少なくとも一方に設けられたスリーブ状収容部と、回転運動を上下方向直線運動に変換する運動変換機構と、把手の上方及び/又は下方の部材と係合可能なロック部材とを備え、前記把手は前記運動変換機構に対して回転運動を伝達する様に構成され、前記ロック部材は前記運動変換機構により上下方向に直線移動する様に構成されていることを特徴とする扉のロック機構。
【請求項2】
前記スリーブ状収容部は把手の回転軸であり、前記前記運動変換機構は、前記スリーブ状収容部の上下両端の少なくとも一方に固着されたロックピン収納部材と、前記スリーブ状収容部に形成された螺旋状の第1の溝部と、ロックピン収納部材に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部と、前記ロックピンから水平方向へ突出している突起部分とを含み、ロックピンから水平方向へ突出している突起部分は、前記スリーブ状収容部に形成された螺旋状の第1の溝部及びロックピン収納部材に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部を貫通しており、前記ロックピンの上下何れか一方の端部にはロック部材が設けられ、前記ロックピン収納部材には弾性手段が収容され、該弾性部材は前記ロック部材が把手の上方及び/又は下方の部材と係合する方向へ前記ロックピンを付勢している請求項1の扉のロック機構。
【請求項3】
把手が回動すると前記第1の溝部が回動し、ロックピンの突起部分は前記第2の溝部により回転方向の移動が規制され且つ前記第1の溝部に沿って移動し、前記ロック部材が鉛直方向へ移動して、把手の上方及び/又は下方の部材との係合を解除する様に構成されている請求項1、2の何れかの扉のロック機構。
【請求項4】
把手の回動が解除された場合に、前記弾性手段の反撥力により、前記ロック部材が、把手の上方及び/又は下方の部材に挿入されて嵌合する様に構成されている請求項1〜3の何れか1項の扉のロック機構。
【請求項1】
扉に設けられた把手と、該把手の上下両端部の少なくとも一方に設けられたスリーブ状収容部と、回転運動を上下方向直線運動に変換する運動変換機構と、把手の上方及び/又は下方の部材と係合可能なロック部材とを備え、前記把手は前記運動変換機構に対して回転運動を伝達する様に構成され、前記ロック部材は前記運動変換機構により上下方向に直線移動する様に構成されていることを特徴とする扉のロック機構。
【請求項2】
前記スリーブ状収容部は把手の回転軸であり、前記前記運動変換機構は、前記スリーブ状収容部の上下両端の少なくとも一方に固着されたロックピン収納部材と、前記スリーブ状収容部に形成された螺旋状の第1の溝部と、ロックピン収納部材に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部と、前記ロックピンから水平方向へ突出している突起部分とを含み、ロックピンから水平方向へ突出している突起部分は、前記スリーブ状収容部に形成された螺旋状の第1の溝部及びロックピン収納部材に形成され鉛直方向に延在する第2の溝部を貫通しており、前記ロックピンの上下何れか一方の端部にはロック部材が設けられ、前記ロックピン収納部材には弾性手段が収容され、該弾性部材は前記ロック部材が把手の上方及び/又は下方の部材と係合する方向へ前記ロックピンを付勢している請求項1の扉のロック機構。
【請求項3】
把手が回動すると前記第1の溝部が回動し、ロックピンの突起部分は前記第2の溝部により回転方向の移動が規制され且つ前記第1の溝部に沿って移動し、前記ロック部材が鉛直方向へ移動して、把手の上方及び/又は下方の部材との係合を解除する様に構成されている請求項1、2の何れかの扉のロック機構。
【請求項4】
把手の回動が解除された場合に、前記弾性手段の反撥力により、前記ロック部材が、把手の上方及び/又は下方の部材に挿入されて嵌合する様に構成されている請求項1〜3の何れか1項の扉のロック機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−70637(P2006−70637A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257858(P2004−257858)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(302050813)城南鋼鉄工業株式会社 (2)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(302050813)城南鋼鉄工業株式会社 (2)
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