説明

手すりのジョイント材

【課題】常温において3次元の曲げ変形とねじり変形を可能とし、かつ、十分な連結強度を有する、手すりのジョイント材を提供する。
【解決手段】ジョイント材1は、ポリプロピレン樹脂等の可撓性合成樹脂材を用いて、一体成形することにより製造される。ジョイント材1の一端には第1の連結端部3が突出形成され、ジョイント材1の他端には第2の連結端部4が突出形成されている。これらの連結端部3、4は、複数のリブ5、5…及び6、6…が一体的に形成された架橋部7によって連結されている。架橋部7は、連結端部3の直線状軸線3aに沿って距離Lだけ延在する直線部7aと、連結端部4の直線状軸線4aに沿って距離Lだけ延在する直線部7bと、直線部7aと直線部7bの間に延在する湾曲部7cからなる。湾曲部7cは、中心Oの周りに四分円の形状に延在する湾曲軸線Rを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の手すり部材を連結して連続手すりを施工するために使用される、手すりのジョイント材に関するものである。本発明は、特に、スロープや階段等の昇降路の壁面に、スロープや階段等に沿って傾斜した連続手すりを施工するために使用される、手すりのジョイント材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の階段室に下方の階段と上方の階段を連結する踊り場を設け、この踊り場で、階段を昇降する人の進行方向が、例えば、180度変わるように、下方の階段と上方の階段を配置する場合がある。このような階段室の壁面は、階段や踊り場を挟んで対向する一対の内壁を含む。これらの内壁のうち、外側の内壁に連続手すりを施工するときには、階段と踊り場の間に延在する連続手すりの手すり芯材に上下方向の曲げ加工を施し、踊り場内に延在する連続手すりの手すり芯材に水平方向の曲げ加工が施される。しかし、これらの上下方向の曲げ加工及び水平方向の曲げ加工は、いずれも、2次元の曲げ加工であるから、これらの加工に伴う困難性は左程高くはない。これに対し、階段室の内側の内壁に連続手すりを施工するときには、一般に、階段と踊り場の間に延在する連続手すりの手すり芯材に、上下方向の曲げ加工及び左右方向の曲げ加工のうちのいずれか一方又は双方を施す必要があり、更に、これらの曲げ加工に加えて、手すり芯材の軸線の周りに、ねじり加工又はひねり加工を施す必要がある。上下方向の曲げ加工と左右方向の曲げ加工を組み合わせた曲げ加工は、3次元の曲げ加工である。また、手すり芯材の曲げ角度及びねじり角度は、連続手すりの施工現場によって異なる。したがって、階段室の内側の内壁に設置される連続手すりは、階段と踊り場の間の施工に少なからぬ困難を伴う。
【0003】
従来、連続手すりを施工するには、施工現場において、連続手すりのアルミニウム合金製の手すり芯材(以下、アルミ芯材という。)をガスバーナー等の加熱手段によって加熱して軟化させ、軟化したアルミ芯材に曲げ加工及びねじり加工を施して、所望形状のアルミ芯材を得ていた。しかし、この加工方法は、特に、曲げ加工についての高い技能を必要とするため、専門職が手作業で加工する他はない。また、この加工方法は手すりの加工個所の採寸作業を伴う。したがって、このような加工方法は、通常、多くの時間と費用を必要とする。
【0004】
特開2004−131966号公報は、同公報の請求項1の記載によれば、「手すりに曲り部を形成するための自在コーナー具であって、伸縮屈曲自在な軸体とそれに沿って任意間隔に設置される複数のフランジを一体に形成し、上記軸体の両端からは連結軸部を延長形成してなる合成樹脂製の手摺主体を備え、上記手摺主体から両側に突出した連結軸部には、上記フランジと等しい外径寸法を有する合成樹脂製のボス部材が一体成形をなして結合され、上記手摺主体の各フランジとボス部材の外側には可撓性を有するチューブを嵌合したことを特徴とする自在コーナー具。」を開示する。同公報に軸体7の形状は記載されていないが、同公報の0019段落に、「なお全てのフランジ6はそれと一体化する軟質性樹脂からなる軸体の各部位がそれぞれ独立して全方向に対して伸縮屈曲自在なため、如何なる屈曲方向においても常に屈曲中心を向かうように配置されているので、複数の屈曲中心が存在する場合であっても、加えられる力の状態により前記した湾曲状態だけでなく、くの字状の屈曲、その他も変形が可能であり、多様なコーナー部の形成を可能とするものである。」と記載されていることから、軸体7の形状は、同公報の図2に記載された連結軸部3及びボス部4と同様に、円柱形であると考えられる。
【0005】
特開2010−180621号公報は、手すりに傾斜したコーナー部を形成するための継手部材を開示する。この継手部材は、一平面内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線に沿って、予め湾曲形成された、合成樹脂製の継手本体と、この継手部材の両端にそれぞれ形成された接続片を有し、継手本体を加熱して軟化させた後、継手本体の円弧状軸線の両端部における接線のまわりにそれぞれねじり変形を施すことによって、手すりの傾斜したコーナー部を形成することを特徴とする。
【0006】
特開2010−236343号公報は、同公報の請求項1の記載によれば、「手摺り(4)の本体部分となる本体手摺り(5)同士を連結する連結手摺りであって、芯材(41)と、可撓性を有していて前記芯材(41)を被覆するカバー(42)とを備え、前記芯材(41)が、手摺長手方向(A)に並べて配置された複数の芯材セグメント(43、44)を屈曲可能な関節部(45)を介して連結することにより、屈曲自在に構成されていることを特徴とする連結手摺り。」を開示する。同公報の0033段落を参照すると、「図9、10、11に示すように、前記連結手摺り6は、樹脂製の芯材41と、樹脂製のカバー42(笠木)とから構成されている。」と記載され、同公報の0040段落を参照すると、「また、前記連結手摺り6にあっては、芯材41を樹脂によって形成することにより、前記芯材セグメント43、44、関節部45及び接続部46を成形型内で同時に成形でき、屈曲自在な芯材41を容易に制作することができる。」と記載されている。また、同公報の0034段落を参照すると、「前記関節部45は、手摺長手方向Aの軸心を有する円柱状とされていると共に手摺長手方向Aに交差する方向に向けて屈曲自在とされている。」と記載され、同公報の0035段落を参照すると、「また、この関節部45は、芯材端部セグメント43及び芯材中間セグメント44の手摺長手方向Aに直交する方向の中心側(中心部)に位置する。したがって、この連結手摺り6は、図9に示す直線状態から、手摺長手方向Aに交差する方向のすべての方向(上下左右及び上下左右の間の斜めの方向)に向けて任意の屈曲角度で湾曲状に屈曲自在とされている。」と記載されている。更に、同公報の0043段落を参照すると、「図12及び図13の形態の連結手摺りは、芯材41と該芯材41を覆うカバー42(図示省略)とを備えていると共に、芯材41に埋設された棒状の補強部材53が設けられている。」と記載され、同公報の0044段落には、「前記補強部材53は、アルミ等の可塑性を有する金属材料によって直線状の棒状(丸棒状)に形成されていて、屈曲させることができると共に塑性変形自在とされている。」と記載されている。そして、同公報の0046段落を参照すると、「また、この図12及び図13に示す形態の連結手摺り6の芯材41にあっては、各関節部45に一対のリブ54が樹脂によって一体形成されている。この一対のリブ54は、手摺長手方向Aと上下方向とに直交する方向に張り出していると共に、関節部45の径方向対称位置に設けられ、且つ手摺長手方向Aで隣接する芯材41セグメント間にわたって設けられている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−131966号公報
【特許文献2】特開2010−180621号公報
【特許文献3】特開2010−236343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された自在コーナー具は、手摺主体を全方向に伸縮屈曲自在にするため、軸体を軟質性樹脂によって構成するから、手摺主体の強度が不足する恐れがある。また、特許文献2に開示した手すりのコーナー部の継手部材は、継手部材に硬質の合成樹脂を使用することができるから、手すりのコーナー部に十分な強度を付与することができるが、手すりの傾斜したコーナー部を形成するにあたっては、継手本体を加熱して軟化させた状態で、継手本体の両端部のねじり角度を施工現場の手すりに合わせて個別に調節する必要がある。そして、特許文献3に開示された連結手摺りは、手摺長手方向に交差する方向のすべての方向(上下左右及び上下左右の間の斜めの方向)に向けて任意の屈曲角度で湾曲状に屈曲自在にするため、樹脂製の円柱状の関節部を有するから、特許文献1に開示された自在コーナー具と同様に、手摺りの強度が不足する恐れがあり、この連続手摺りの強度を向上させるためには、芯材に、アルミ等の可塑性を有する金属材料によって形成された棒状の補強部材を埋設すると共に、各関節部に一対のリブを樹脂によって一体形成する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、常温において3次元の曲げ変形とねじり変形を可能とし、かつ、十分な連結強度を有する、手すりのジョイント材を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、手すりの傾斜したコーナー部を容易に施工することを可能にし、かつ、優れた仕上がりを得ることができる、手すりのジョイント材を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、可撓性を有する合成樹脂材料により、容易に一体成形することができる、手すりのジョイント材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の手すり部材に第2の手すり部材を連結し、前記第1の手すり部材と前記第2の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、手すりのジョイント材であって、前記ジョイント材は、前記第1の手すり部材に連結される第1の連結端部と、前記第2の手すり部材に連結される第2の連結端部と、前記第1及び第2の連結端部の間に延在し、かつ、前記第1及び第2の連結端部に一体化された、架橋部と、笠木を取り付けるために前記架橋部に形成された複数のリブを有し、前記架橋部を可撓性材料によって形成し、前記架橋部は、少なくとも一つの湾曲部と、少なくとも一つの直線部を有し、前記湾曲部は、前記第1の連結端部の軸線と前記第2の連結端部の軸線が、前記両軸線が通る平面内で、所定の角度で交差するように、予め湾曲形成され、前記直線部は、前記平面に沿って直線状に延在し、前記湾曲部は、前記湾曲部の半径方向の内方に位置する内面と前記湾曲部の半径方向の外方に位置する外面のうちのいずれか一方又は双方の方向のみに曲げ変形可能な形態を有し、前記直線部は、前記湾曲部の曲げ変形可能な方向とは異なる方向に沿って、一方向又は双方向に曲げ変形可能な形態を有し、前記湾曲部と前記直線部の連結部に、それぞれ、前記リブの一つを連結部材として配置し、前記連結部材を構成するリブの一方の側面に前記湾曲部の一端を一体化し、前記連結部材を構成するリブの他方の側面に前記直線部の一端を一体化したことを最も主要な特徴とする。
【0013】
本発明のジョイント材は、また、前記第1の連結端部と前記第2の連結端部と前記架橋部と前記複数のリブを可撓性合成樹脂材によって一体成形したことを特徴とする。
【0014】
本発明のジョイント材は、更に、前記湾曲部は、前記平面内に位置する湾曲軸線に沿って延在し、前記直線部は、前記平面内に位置する直線状軸線に沿って延在し、前記湾曲部を曲げ変形させることができる方向と、前記直線部を曲げ変形させることができる方向とが、90度の角度をなすことを特徴とする。
【0015】
本発明のジョイント材は、更に、前記湾曲部は、前記内面と前記外面を連結する一対の側面を有し、前記湾曲軸線に直交する方向の前記湾曲部の断面において、前記一対の側面間の距離を前記内面及び外面間の距離よりも大きな寸法に設定し、前記直線部は、一対の平面と、前記一対の平面を連結する一対の凸状曲面とを有し、前記直線状軸線に直交する方向の前記直線部の断面において、前記一対の凸状曲面間の距離を前記一対の平面間の距離よりも大きな寸法に設定したことを特徴とする。
【0016】
本発明のジョイント材は、更に、前記湾曲部の断面形状を前記湾曲部の全長にわたって同一の形状とし、前記直線部の断面形状を前記直線部の全長にわたって同一の形状としたことを特徴とする。
【0017】
本発明のジョイント材は、更に、前記架橋部は、一対の前記直線部と、前記一対の直線部の間に配置された一つの前記湾曲部を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のジョイント材は、更に、前記湾曲軸線と前記直線状軸線を横切る方向に前記リブを形成し、前記リブの間隔が一定になるように、前記直線部に形成されたリブの厚さを一定にすると共に、前記湾曲部に形成されたリブの厚さを、前記湾曲部の前記外面から前記内面に向かって除々に減少させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の手すりのジョイント材は、架橋部を構成する湾曲部と直線部を互いに異なる方向に曲げ変形させることができるから、3次元の曲げ変形が可能である。また、この湾曲部と直線部の連結部にリブを配置し、このリブの一方の側面に湾曲部の一端を一体化し、このリブの他方の側面に直線部の一端を一体化することにより、湾曲部と直線部を強固に連結させたから、ジョイント材のねじり変形に伴う剪断力を架橋部全体に分散させることができる。よって、ジョイント材のねじり角度を十分に大きくすることができる。更に、架橋部を構成する湾曲部と直線部の曲げ変形可能な方向は限定されているから、架橋部を曲げ変形させない方向には、架橋部の肉厚を大きくすることができる。よって、架橋部の強度を増大させることができる。
【0020】
本発明のその他の特徴は、図面を参照して説明する本発明の実施例の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、可撓性合成樹脂材を用いて一体成形された本発明のジョイント材を示し、図1(A)は、このジョイント材の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のa−a線に沿う矢視方向の断面図であり、図1(C)は、図1(A)のb−b線又はc−c線に沿う矢視方向の断面図である。
【図2】図2は、図1のジョイント材をその湾曲部の内側から見た側面図である。
【図3】図3は、図2に示した本発明のジョイント材の平面図である。
【図4】図4は、図3に示した本発明のジョイント材の平面図に対応する断面図であり、図2のd−d線に沿う矢視方向の断面図である。
【図5】図5は、本発明のジョイント材の架橋部を構成する湾曲部と直線部の間に配置され、この湾曲部と直線部の連結部材として機能するリブの斜視図であり、図3のe−e線又はf−f線に沿う矢視方向の斜視図である。
【図6】図1乃至5に示した本発明のジョイント材の曲げ変形及びねじり変形の方向を表す概念図である。
【図7】図7は、階段を昇降する人の進行方向が踊り場で180度変わるように、下方の階段と上方の階段を配置した階段室の内側の内壁に、本発明のジョイント材を用いて施工された連続手すりの要部側面図である。
【図8】図8は、図7の連続手すりの右側面図である。
【図9】図9は、図7及び図8の連続手すりに笠木を取り付けるときの手順を表す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
可撓性合成樹脂材で一体成形したジョイント材によって、常温において3次元の曲げ変形とねじり変形を可能とし、かつ、十分な連結強度を有する、手すりのジョイント材を実現する。
【実施例】
【0023】
図1乃至6は、本発明の手すりのジョイント材1を示す。ジョイント材1は、ポリプロピレン樹脂等の可撓性合成樹脂材を用いて、一体成形することにより製造され、図7乃至9に示すように、連続手すり2の傾斜したコーナー部を形成する。ジョイント材1は、図3及び4に示すように、全体として湾曲した形態を有する。ジョイント材1の一端には第1の連結端部3が突出形成され、ジョイント材1の他端には第2の連結端部4が突出形成されている。そして、これらの連結端部3、4は、複数のリブ5、5…及び6、6…が一体的に形成された架橋部7によって連結されている。架橋部7は、連結端部3の直線状軸線3aに沿って距離Lだけ延在する直線部7aと、連結端部4の直線状軸線4aに沿って距離Lだけ延在する直線部7bと、直線部7aと直線部7bの間に延在する湾曲部7cからなる。湾曲部7cは、中心Oの周りに四分円の形状に延在する湾曲軸線Rを有する。これにより、連結端部3と連結端部4は互いに90度の角度を成す。
【0024】
直線状軸線3aは、連結端部3と架橋部7の直線部7aの中心を通る軸線を構成し、直線状軸線4aは、連結端部4と架橋部7の直線部7bの中心を通る軸線を構成する。湾曲軸線Rは、架橋部7の湾曲部7cの中心を通る軸線を構成し、その一端は直線状軸線3aに交わり、その他端は直線状軸線4aに交わる。図6は、架橋部7の直線部7aと直線部7bと湾曲部7cの位置関係を表す概念図である。同図に示すように、湾曲部7cは、第1の連結端部3の直線状軸線3aと第2の連結端部4の直線状軸線4aが、これらの軸線3a、4aが通る平面内で、90度の角度で交差するように、予め湾曲形成され、湾曲部7cの湾曲軸線Rは、軸線3a、4aが通る平面内に延在する。架橋部7の湾曲部7cと直線部7a、7bとは、例えば、90度の角度で交差する。このうち、湾曲部7cは、その半径方向の内方に位置する内面7dと、その半径方向の外方に位置する外面7eのうちのいずれか一方又は双方の方向のみに曲げ変形可能な形態を有し、例えば、図6において、一方の連結端部4を固定したとき、他方の連結端部3が軸線3a、4aが通る平面内で角度θだけ変位可能なように、曲げ変形可能な形態に設定される。また、直線部7a、7bは、湾曲部7cの曲げ変形可能な方向とは異なる方向に沿って、一方向又は双方向に曲げ変形可能な形態を有し、例えば、図6において、一方の連結端部4を固定したとき、他方の連結端部3が、軸線3a、4aが通る平面に直交する方向N及びNに、曲げ変形可能な形態に設定される。前述のように、架橋部7は連結端部3、4に一体形成され、架橋部7の直線部7a、7bと湾曲部7cは可撓性合成樹脂材で一体形成されている。これにより、例えば、図6において、一方の連結端部4を固定したとき、他方の連結端部3が軸線3aの周りに、Z−Z方向に所望角度だけねじり変形可能になるように、架橋部7の直線部7a、7bと湾曲部7cの形態を設定する。
【0025】
図1(B)に、架橋部7の湾曲部7cの横断面図が示されている。湾曲部7cは、内面7dと外面7eを連結する一対の側面7f、7gを有し、この横断面において、一対の側面7f、7g間の距離を内面7dと外面7eとの間の距離よりも大きな寸法に設定してある。これにより、湾曲部7cは側面7f、7gの方向に曲げ変形することを防止され、湾曲部7cは内面7dと外面7eの方向のみに曲げ変形可能になる。湾曲部7cの横断面形状は、湾曲軸線Rに沿って、湾曲部7cの全長にわたって同一である。
【0026】
また、図1(C)に、架橋部7の直線部7a、7bの横断面が示されている。これらの直線部7a、7bは、一対の平面7h、7iと、これらの平面7h、7iを連結する一対の凸状曲面7j、7kを有し、この横断面において、一対の凸状曲面7j、7k間の距離を一対の平面7h、7i間の距離よりも大きな寸法に設定してある。これにより、直線部7a、7bは凸状曲面7j、7kの方向に曲げ変形することを防止され、直線部7a、7bは一対の平面7h、7iの方向のみに曲げ変形可能になる。直線部7a、7bの横断面形状は、それぞれ、直線状軸線3a、4aに沿って、直線部7a、7bの全長にわたって同一である。
【0027】
架橋部7の湾曲部7cに一体形成された複数のリブ6、6…は、図1(B)に示すように、湾曲軸線Rを横切る方向に延在し、各リブ6の上面6aと下面6bには、それぞれ、後述する笠木を係止するための一対の対向する係止面6c、6cが形成されている。架橋部7の一対の側面7f、7gは、これらの係止面6c、6cを連結する面と一致する。各リブ6の両側面6d、6eは、それぞれ、凸状に湾曲し、笠木の支持面を形成する。図3及び図4に示すように、湾曲部7cに形成されたリブ6の肉厚は、隣り合うリブ6、6の間隙を同一にするため、側面6eから側面6dに向かって徐々に減少するように形成されている。湾曲部7cを握持したときの違和感を減ずるためである。
【0028】
架橋部7の直線部7a、7bに一体形成された複数のリブ5、5…は、図1(C)に示すように、それぞれ、直線状軸線3a、4aを横切る方向に延在し、各リブ5の上面5aと下面5bには、それぞれ、笠木を係止するための一対の対向する係止面5c、5cが形成されている。架橋部7の一対の平面7h、7iは、これらの係止面5c、5cを連結する面よりも直線状軸線3a、4aの側に位置し、架橋部7が一対の平面7h、7iの方向に曲げ変形し易いようになっている。各リブ5の両側面5d、5eは、それぞれ、凸状に湾曲し、笠木の支持面を形成する。架橋部7の一対の凸状曲面7j、7kは、これらの側面5d、5eに一致し、架橋部7が凸状曲面7j、7kの方向に曲げ変形し難いようになっている。図3及び図4に示すように、直線部7a、7bに形成されたリブ5の肉厚は、隣り合うリブ5、5の間隙を同一にするため、一定の厚さに形成されている。直線部7a、7bを握持したときの違和感を減ずるためである。
【0029】
そして、図1(A)、図2及び図3に示すように、湾曲部7cに一体形成された複数のリブ6、6…のうち、直線部7a、7bに沿って配置されたリブ6f、6fは、架橋部7の直線部7a、7bと湾曲部7cを強固に連結するための連結部材として機能するように、その一方の側面6gに直線部7a、7bを面接合させ、その他方の側面6hに湾曲部7cを面接合させている(図5を参照のこと。)。これにより、図6に示したZ−Z方向のねじり変形が生じた場合には、直線部7a、7bと湾曲部7cの間でねじり力が確実に伝達されるから、このねじり変形により架橋部7に発生する剪断力を、架橋部7の全体に分散させることができる。よって、Z−Z方向のねじり角度を大きく設定することができると共に、連続手すりを施工したときの手すりの連結強度を向上させることができる。
【0030】
図1乃至6に示した本発明のジョイント材1は、階段室の踊り場の内壁に連続手すりを施工する際、連結される手すりの傾斜角によって、90度から120度までの角度範囲の曲げ変形を生じることが判明した。また、踊り場の内壁に連続手すりを施工する際、踊り場に面する手すりは上下二方向から伸びる傾斜した手すりを連結させるため、最大のねじり角度が片側に35度以上となり、連結される上下の手すりを合わせて70度だけねじられることが判明した。更に、踊り場から階段の側壁に伸びる手すりは、連結される手すりの傾斜角によっては、最大で45度までねじられることが判明した。そこで、先ず、本発明の手すりのジョイント材1を最大で45度の角度のねじりに対応させるために、架橋部材7の直線部7a、7bと湾曲部7cの断面形状を、それぞれ、直線部7a、7bと湾曲部7cの全長にわたって同一とし、更に、直線部7a、7bと湾曲部7cをリブ6f、6fを介して強固に接合し、ジョイント材1にねじり変形が生じるときに架橋部7に作用する剪断力を架橋部7の全体に分散させて支持するように構成した。次に、本発明のジョイント材1を90度から120度までの角度範囲の曲げ変形に対応させるために、ジョイント材1の連結端部3、4が90度の角度を成すように、予めジョイント材1を湾曲した形態に成形しておくと共に、ジョイント材1の連結端部3、4が120度の角度まで曲げ変形を生じる場合には、図6の角度θが30度になるように、湾曲部7cが曲がるように構成した。ジョイント材1がこの曲げ範囲以外の曲げ変形を生じる場合には、図6に示すように、直線部7a、7bをN−N方向に曲げ変形させることにより、対応することにした。ジョイント材1の湾曲部7cの曲げ変形と直線部7a、7bの曲げ変形を組み合わせると3次元の曲げを実現できるから、架橋部材7の横断面形状を円形にすることなく、全ての方向に対して角度の調節をすることができる。
【0031】
図7乃至9は、ジョイント材1を使用して施工された連続手すり2を示し、連続手すり2は、階段を昇降する人の進行方向が踊り場で180度変わるように、下方の階段と上方の階段を配置した階段室の内側の内壁に設置されている。本発明のジョイント材1は、階段室の下方の階段に沿う壁面8に、ブラケット9によって傾斜して取り付けられた手すり10の笠木受け10aと、踊り場に面した端部壁面14に平行に延在する笠木受け15の間を連結し、更に、本発明のもう一つのジョイント材1’が、階段室の上方の階段に沿う壁面11に、ブラケット12によって傾斜して取り付けられた手すり13の笠木受け13aと、笠木受け15の間を連結している。ジョイント材1は、手すり10の笠木受け10aに連結端部3を挿入して、連結端部3をタップネジ16によって笠木受け10aに固定され、次いで、連結端部4を笠木受け15に挿入して、タップネジ17によって固定される。もう一つのジョイント材1’は、その連結端部4を手すり13の笠木受け13aに挿入し、図示しないタップネジによって笠木受け13aに固定され、次いで、その連結端部3を笠木受け15に挿入し、タップネジ18によって笠木受け15に固定される。このとき、ジョイント材1、1’は、3次元の曲げ変形とねじり変形をすることができるから、笠木受け15を介して、手すり10の笠木受け10aと、手すり13の笠木受け13aを連結することができる。そして、加熱して十分に軟化させた被覆材(笠木)19を図示のように笠木受け10a、15、13aに被せ、必要に応じて部分的に養生を施して、連続手すり2を完成させる。
【0032】
本発明のジョイント材1、1’は、笠木受け10a、15、13aと滑らかに接合させるために、複数のリブ5、6を同じ間隔で配置し、リブ5の両側面5d、5e及びリブ6の両側面6d、6eを笠木受け10a、15、13aの外形と同じ形状とし、被覆材(笠木)19の外形に凹凸を生じないように配慮した。また、ジョイント材1、1’の形状を上下対称とし、ジョイント材1、1’の曲り変形の個体差を生じないように配慮した。
【0033】
なお、本発明のジョイント材1の架橋部7の直線部7a、7bの長さL、Lは任意である。また、湾曲部7cの湾曲軸線Rの長さも任意である。ジョイント材1の連結端部3、4は90度に限らずに任意の角度をとることができる。
【符号の説明】
【0034】
1、1’ ジョイント材
2 連続手すり
3 連結端部
3a 直線状軸線
4 連結端部
4a 直線状軸線
5、6 リブ
7 架橋部
7a、7b 直線部
7c 湾曲部
R 湾曲軸線
19 被覆材(笠木)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の手すり部材に第2の手すり部材を連結し、前記第1の手すり部材と前記第2の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、手すりのジョイント材であって、前記ジョイント材は、前記第1の手すり部材に連結される第1の連結端部と、前記第2の手すり部材に連結される第2の連結端部と、前記第1及び第2の連結端部の間に延在し、かつ、前記第1及び第2の連結端部に一体化された、架橋部と、笠木を取り付けるために前記架橋部に形成された複数のリブを有し、前記架橋部を可撓性材料によって形成し、前記架橋部は、少なくとも一つの湾曲部と、少なくとも一つの直線部を有し、前記湾曲部は、前記第1の連結端部の軸線と前記第2の連結端部の軸線が、前記両軸線が通る平面内で、所定の角度で交差するように、予め湾曲形成され、前記直線部は、前記平面に沿って直線状に延在し、前記湾曲部は、前記湾曲部の半径方向の内方に位置する内面と前記湾曲部の半径方向の外方に位置する外面のうちのいずれか一方又は双方の方向のみに曲げ変形可能な形態を有し、前記直線部は、前記湾曲部の曲げ変形可能な方向とは異なる方向に沿って、一方向又は双方向に曲げ変形可能な形態を有し、前記湾曲部と前記直線部の連結部に、それぞれ、前記リブの一つを連結部材として配置し、前記連結部材を構成するリブの一方の側面に前記湾曲部の一端を一体化し、前記連結部材を構成するリブの他方の側面に前記直線部の一端を一体化したことを特徴とする、手すりのジョイント材。
【請求項2】
請求項1に記載したジョイント材において、前記第1の連結端部と前記第2の連結端部と前記架橋部と前記複数のリブを可撓性合成樹脂材によって一体成形したことを特徴とする、前記ジョイント材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したジョイント材において、前記湾曲部は、前記平面内に位置する湾曲軸線に沿って延在し、前記直線部は、前記平面内に位置する直線状軸線に沿って延在し、前記湾曲部を曲げ変形させることができる方向と、前記直線部を曲げ変形させることができる方向とが、90度の角度をなすことを特徴とする、前記ジョイント材。
【請求項4】
請求項3に記載したジョイント材において、前記湾曲部は、前記内面と前記外面を連結する一対の側面を有し、前記湾曲軸線に直交する方向の前記湾曲部の断面において、前記一対の側面間の距離を前記内面及び外面間の距離よりも大きな寸法に設定し、前記直線部は、一対の平面と、前記一対の平面を連結する一対の凸状曲面とを有し、前記直線状軸線に直交する方向の前記直線部の断面において、前記一対の凸状曲面間の距離を前記一対の平面間の距離よりも大きな寸法に設定したことを特徴とする、前記ジョイント材。
【請求項5】
請求項4に記載したジョイント材において、前記湾曲部の断面形状を前記湾曲部の全長にわたって同一の形状とし、前記直線部の断面形状を前記直線部の全長にわたって同一の形状としたことを特徴とする、前記ジョイント材。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載したジョイント材において、前記架橋部は、一対の前記直線部と、前記一対の直線部の間に配置された一つの前記湾曲部を有することを特徴とする、前記ジョイント材。
【請求項7】
請求項3乃至6のうちのいずれか一項に記載したジョイント材において、前記湾曲軸線と前記直線状軸線を横切る方向に前記リブを形成し、前記リブの間隔が一定になるように、前記直線部に形成されたリブの厚さを一定にすると共に、前記湾曲部に形成されたリブの厚さを、前記湾曲部の前記外面から前記内面に向かって除々に減少させたことを特徴とする、前記ジョイント材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−122295(P2012−122295A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275441(P2010−275441)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】