手すりブラケット
【課題】手すり棒を安全に支持する手すりブラケットを提供する。
【解決手段】ブラケット3は、台座4と、台座4にスライド自在に支持されるブラケット本体5とを備えている。台座4は、壁面に固定される座部9と筒部10とを有する台座本体6と、カバー7とを備えている。ブラケット本体5は、手すり棒2を支持するための受け部12と、受け部12を支持するアーム部13とを備えている。筒部10には、第1の溝31と第2の溝とが形成されている。第1の溝31は、筒部10の表側端から裏側端まで延びている。一方、第2の溝は、筒部10の裏側端から裏側端と表側端との間の中途部まで延びている。第1の溝31および第2の溝32は、それぞれ4本ずつ形成され、周方向に等間隔に配置されている。アーム部13の先端側には軸部14が形成されており、軸部14の先端部には径方向外側に突出する4つの突出部15aからなるフランジ15が形成されている。
【解決手段】ブラケット3は、台座4と、台座4にスライド自在に支持されるブラケット本体5とを備えている。台座4は、壁面に固定される座部9と筒部10とを有する台座本体6と、カバー7とを備えている。ブラケット本体5は、手すり棒2を支持するための受け部12と、受け部12を支持するアーム部13とを備えている。筒部10には、第1の溝31と第2の溝とが形成されている。第1の溝31は、筒部10の表側端から裏側端まで延びている。一方、第2の溝は、筒部10の裏側端から裏側端と表側端との間の中途部まで延びている。第1の溝31および第2の溝32は、それぞれ4本ずつ形成され、周方向に等間隔に配置されている。アーム部13の先端側には軸部14が形成されており、軸部14の先端部には径方向外側に突出する4つの突出部15aからなるフランジ15が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に手すり棒を設置するための手すりブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より、壁面に手すり棒を設置するための手すりブラケットが用いられている。また、手すりブラケットの中には、例えば、壁面に凹凸があるために、場所により手すり棒と壁面との距離が異なるような場合であっても、手すり棒を曲げることなく取付可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
この種の手すりブラケットは、手すり棒を支持する受け部と、受け部を支持するアーム部と、アーム部を壁に取り付ける台座とを備えている。台座は、壁面と直交する方向に延びる筒部とを備えている。また、アーム部の先端側には略円筒形状または略円柱形状の軸部が形成され、軸部は筒部内に挿通されている。このような構成により、アーム部の軸部を筒部に対して軸方向に自在にスライドさせることにより、上記手すりブラケットは、出幅(受け部と壁面との平面視における距離)を自在に調節することができる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を取り付ける壁面に凹凸があっても、手すり棒を曲げることなく壁面に平行に取り付けることができる。
【特許文献1】実用新案登録第3070830号公報
【特許文献2】特開2003−97007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載された手すりブラケットでは、アーム部の軸部と筒部とが相対回転可能な様に構成されている。そして、アーム部の筒部に対する位置を決定した後、固定ねじを軸部の外面に押し付けて、軸部と筒部とが軸方向および周方向に相対移動しない様に固定することとしている。
【0005】
しかしながら、例えば、人が手すり棒に寄りかかった場合等、受け部を支持するアーム部には、大きな回転モーメントがかかる。このような場合、上記手すりブラケットでは、略円筒形状または略円柱形状の軸部であるため、固定ねじの先端部が軸部の外面上を周方向に滑り、受け部およびアーム部が回転してしまうというおそれがあった。そのため、上記手すりブラケットでは、このような場合に手すり棒を安定して支持することができず、安全性に欠けていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、手すり棒を安全に支持する手すりブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る手すりブラケットは、前記壁面に交差する方向に延びる断面略円形の孔と、前記孔内で前記方向に延びる取り付け溝とが形成された筒部を有し、前記壁面に固定される台座と、前記手すり棒を保持する受け部と、前記受け部を支持するとともに、先端側が前記筒部の前記孔内に挿入されたアーム部と、前記アーム部の先端部において前記アーム部の半径方向外側に突出し、前記筒部の軸方向にスライド自在かつ前記孔内で回転不能なように前記取り付け溝に係合する突出部と、を有するブラケット本体と、前記アーム部を前記台座に固定する固定具と、を備えたものである。
【0008】
上記手すりブラケットでは、アーム部の先端部に設けられた突出部は、筒部の取り付け溝と軸方向にスライド自在に係合している。このような構成により、突出部を取り付け溝に沿って軸方向にスライドさせると、ブラケット本体が台座に対して軸方向にスライド移動する。これにより、手すりブラケットは、軸方向長さを自在に調整可能に構成されることとなる。そのため、上記手すりブラケットによれば、手すりブラケットの出幅(受け部と壁面との平面視における距離)を自在に調整することが可能となる。そのため、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を取り付ける壁面に凹凸があっても、手すり棒と壁面との距離を自在に調節し、手すり棒を曲げることなく壁面と平行に取り付けることができる。
【0009】
さらに、上記手すりブラケットでは、アーム部の先端部に設けられた突出部は、取り付け溝と回転不能に係合する。そのため、突出部を取り付け溝に係合させることにより、ブラケット本体の台座に対する相対回転を規制することができる。これにより、例えば、人が手すり棒に寄りかかり、アーム部に大きな回転モーメントがかかった場合であっても、アーム部が回転することを規制することができる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を安定させることが可能となり、手すり棒を安全に支持することができる。
【0010】
前記筒部は、前記壁面側に位置する裏側端および前記壁面と反対側に位置する表側端のいずれもが開口しており、前記取り付け溝は、前記表側端から前記裏側端に渡って形成された第1の溝と、前記裏側端から前記表側端と前記裏側端との間の中途部にまで形成された第2の溝とを含んでいることが好ましい。
【0011】
上記手すりブラケットによれば、第2の溝は、筒部の裏側端から表側端と裏側端との間の中途部までしか形成されておらず、表側端までは至らない。そのため、筒部の表側端と裏側端との間の中途部には第2の溝の終端部によって段差が生じることとなる。これにより、突出部を第2の溝に係合させた場合、突出部は軸方向にスライド自在であるが、当該段差によって段差より表側へスライド移動しない様に規制される。したがって、上記手すりブラケットによれば、簡単な構成により、出幅を調整することができ、かつ、ブラケット本体が筒部から抜けることを防止することができる。
【0012】
なお、上記手すりブラケットには、筒部の表側端から裏側端に渡って形成された第1の溝が形成されている。また、筒部は裏側端および表側端のいずれもが開口している。このような構成により、まず、突出部を第1の溝と係合させて筒部の表側端から裏側端までスライド移動させた後、一旦、筒部の裏側端から外部へ押し出してアーム部を回転させることで、突出部を第2の溝に係合させることができる。このようにして、上記手すりブラケットによれば、第1の溝および第2の溝により出幅調整が可能となり、また、ブラケット本体が筒部から抜けることを防止することができる。
【0013】
また、突出部を第2の溝に係合させることにより、ブラケット本体を台座に対して相対回転しない様に規制することができるため、アーム部の回転を規制することができる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を安定させることが可能となり、手すり棒を安全に支持することができる。
【0014】
前記突出部を複数有し、前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ前記突出部と同数ずつ形成され、前記複数の突出部は、前記アーム部の周方向に等間隔に配置され、前記複数の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、前記複数の第2の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記手すりブラケットによれば、複数の突出部と、複数の第1の溝または第2の溝とが係合することによりブラケット本体と筒部との相対回転がより規制される。そのため、アーム部に大きなモーメントがかかった場合であっても、より安定的に手すり棒を支持することが可能となる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒をより安全に支持することができる。
【0016】
前記突出部を4つ有し、前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ4本ずつ形成され、前記4つの突出部は一体的に形成されて略正方形状のフランジを構成し、前記4本の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、前記4本の第2の溝は、前記4本の第1の溝のそれぞれを前記筒部の軸回りに略45度回転させた位置に配置され、前記孔と前記4本の第1の溝とにより、前記筒部の表側に略正方形状の表側孔が形成され、前記孔と前記4本の第1の溝と前記4本の第2の溝とにより、前記筒部の裏側に略八角形状の裏側孔が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記手すりブラケットによれば、略正方形状のフランジが4本の第1の溝または4本の第2の溝と係合するため、ブラケット本体が筒部にバランスよく支持される。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒をより安全に支持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、手すり棒を安全に支持する手すりブラケットを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る手すり1の構成を示す平面図である。まずは、図1を参照して、本実施形態に係る手すり1の構成について詳述する。
【0021】
《手すり1の構成》
手すり1は、手すり棒2と、手すり棒2を壁面Wに取り付けるための手すり棒2用のブラケット3とを備えている。なお、ブラケット3の個数や取付位置は本実施形態のものに限定されないが、本実施形態では、ブラケット3は、手すり棒2の両端部と、手すり棒2の中間部とに設けられている。
【0022】
以下に詳述するが、本実施形態に係るブラケット3は、壁面Wと手すり棒2との距離を自在に調節可能に構成されている。そのため、図1に示すように、壁面Wに凹凸がある場合であっても、ブラケット3の壁面Wに略直交する方向の長さXを調節することにより、手すり棒2を撓ませることなく壁面Wに平行に取り付けることができる。
【0023】
なお、手すり棒2の両端部に設けられたブラケット3と、手すり棒2の中間部に設けられたブラケット3とは、手すり棒2を支持する部分の形状が異なる以外、ほぼ同様の構成をしている。よって、以下、手すり棒2の中間部に設けられたブラケット3について詳述し、手すり棒2の両端部に設けられたブラケット3については詳細な説明は省略することとする。
【0024】
《ブラケット3の構成》
図2に示すように、ブラケット3は、壁面W(図1参照)に取り付けられる台座4と、手すり棒2を支持すると共に、台座4にスライド自在に支持されるブラケット本体5とを備えている。
【0025】
−台座4の構成−
台座4は、壁面W(図1参照)に取り付けられる台座本体6と、カバー7とを備えている。
【0026】
図3は台座本体6の側面断面図である。図4は台座本体6の背面図であり、図5は台座本体6を背面側から視た斜視図である。図3に示すように、台座本体6は、壁面W(図1参照)に取り付けられる接触面8を有する座部9と、座部9に連続し、接触面8に略直交する方向に延びる筒部10とを備えている。筒部10には、半径方向に延びるねじ穴17が設けられている。図2に示すように、筒部10は略円筒形状に形成されており、断面略円形の孔21が形成されている。
【0027】
図3、図4および図5に示すように、筒部10の内周面には、軸方向に関し、壁面W(図1参照)と反対側に位置する表側端11cから壁面(図1参照)側に位置する裏側端11dにまで延びる第1の溝31が形成されている。第1の溝31は、本実施形態では4本形成されている。また、4本の第1の溝31は、それぞれ筒部10の周方向に等間隔(略90度間隔)に配置されている。
【0028】
また、筒部10の内周面には、軸方向に関し、裏側端11dから裏側端11dと表側端11cとの間の中途部まで延びる第2の溝32が設けられている。第2の溝32は、第1の溝31と同数本(4本)形成されている。当該4本の第2の溝32は、第1の溝31と同様に、筒部10の周方向に等間隔(略90度間隔)に配置されており、かつ、4本の第1の溝31を略45度回転させた位置に配置されている。
【0029】
このような孔21と第1の溝31および第2の溝32により、筒部10には、筒部10の軸方向の途中で横断面の輪郭形状が変化する孔11が形成されることとなる。具体的には、当該孔11は、断面略円形の孔21と4本の第1の溝31とにより形成される表側の孔11aと、断面略円形の孔21と4本の第1の溝31と4本の第2の溝32とにより形成される裏側の孔11bとにより構成される。表側の孔11aの輪郭形状は、角が丸まった略正方形状に形成されている(図2参照)。一方、裏側の孔11bの輪郭形状は、外側の角が丸まった略正八角形状に形成されている(図5参照)。
【0030】
−ブラケット本体5の構成−
図6はブラケット本体5の側面図であり、図7はブラケット本体5の背面図である。図6に示すように、ブラケット本体5は、手すり棒2を支持するための受け部12と、受け部12を支持するアーム部13とを備えている。受け部12の形状は何ら限定されないが、本実施形態では、受け部12は手すり棒2を挿通可能な様に、略円筒形状に形成されている。
【0031】
アーム部13は、受け部12と連続しており、受け部12と一体に形成されている。なお、受け部12はアーム部13と別体に形成されていてもよい。アーム部13の先端側には、平面視において手すり棒2と略直交する方向に延びる軸部14(図1参照)が形成されている。
【0032】
軸部14は、輪郭形状が略円形状となるように形成されている。また、軸部14の軸方向長さは、筒部10の軸方向長さよりも長く形成されている。軸部14の先端部14aには、軸部14の外周面から径方向外側へ突出する4つの突出部15aが形成されている。4つの突出部15aは、軸部14の外周に沿って等間隔(本実施形態では略45度)に配置されている。本実施形態では、4つの突出部15aは、一体に形成されて一つのフランジ15を構成している。なお、先端部14aとは軸部14の先端付近を指し、先端だけでなく先端から僅かに受け部12側にずれた部分も含まれることとする。
【0033】
図7に示すように、フランジ15は、台座4の筒部10の孔11に挿通自在なように、表側の孔11aの輪郭形状と同様の輪郭形状を有している。すなわち、フランジ15は、角が丸まった略正方形状に形成されている。また、フランジ15の各辺は、アーム部13の中心軸から略45度傾いている。なお、フランジ15および軸部14には、輪郭形状が略円形状の長孔16が形成されている。
【0034】
以上がブラケット3の構成である。次に、ブラケット3の台座4およびブラケット本体5の組み立て方法について説明する。
【0035】
図2に示すように、台座4にブラケット本体5を組み立てる際には、ブラケット本体5を軸部14の軸回りに回転させてフランジ15の向きを台座4の表側の孔11aに合わせる。そして、フランジ15が孔11の裏側端11d(図3参照)を通過するまで、アーム部13の軸部14を孔11に挿入する(図8参照)。このとき、フランジ15の各突出部15aは、4本の第1の溝31に相対回転不能に係合され、4本の第1の溝31に沿ってスライド移動する。
【0036】
フランジ15が孔11の裏側端11dを通過し、外部に至ったところで、ブラケット本体5の軸部14を孔11内で略45度回転させて、フランジ15の向きを変える(図9参照)。そして、各突出部15aを、筒部10の4本の第2の溝32に係合させる。
【0037】
その状態でブラケット本体5を台座4の裏側端11dから表側端11c(図3参照)に向かって引っ張ると、フランジ15は裏側の孔11b内に挿入される(図10参照)。ここで、フランジ15と裏側の孔11bとは、互いに対応した略正八角形に形成されているので、フランジ15が裏側の孔11b内に挿入された状態では、フランジ15の回転は阻止される。したがって、台座4に対するブラケット本体5の回転が防止される。
【0038】
次に、ブラケット本体5を台座4に対してスライド移動させ、台座4に対するアーム部13の突出長さを微調整する。なお、台座4の筒部10内には4本の第2の溝32によって4つの段差部33(図5参照)が形成されている。そのため、フランジ15は段差部33によって、段差部33より表側にスライドしない様に規制される。このような構成により、ブラケット本体5を引っ張りすぎた場合であっても、ブラケット本体5が台座4から抜けることを防止することができる。
【0039】
そして、台座4に対するアーム部13の突出長さを微調整した後、ねじ穴17にねじ22(図3参照)を挿入して締め付け、ブラケット本体5のアーム部13を台座4に固定する。これにより、ブラケット本体5が台座4に対するスライド移動が規制されることとなる。このようにして、台座4に対してブラケット本体5が組み立てられる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る手すり棒2用のブラケット3では、アーム部13の先端側に設けられた突出部15aが、筒部10の第2の溝32と軸方向にスライド自在に係合するように形成されている。このような構成により、突出部15aを第2の溝32に沿って軸方向にスライドさせると、ブラケット本体5が台座4に対して軸方向にスライド移動する。これにより、ブラケット3は、軸方向長さを自在に調整可能に構成されることとなる。そのため、本ブラケット3によれば、ブラケットの出幅(受け部12と壁面Wとの平面視における距離)を自在に調整することが可能となる。そのため、本ブラケット3によれば、手すり棒2を取り付ける壁面Wに凹凸があっても、手すり棒2と壁面Wとの距離を自在に調節し、手すり棒2を曲げることなく壁面Wと平行に取り付けることができる。
【0041】
また、本ブラケット3では、アーム部13の軸部14の先端部14aに設けられた突出部15aは、第1の溝31または第2の溝32と回転不能に係合する。そのため、突出部15aを、第1の溝31または第2の溝32に係合させることにより、ブラケット本体5の台座4に対する相対回転を規制することができる。これにより、例えば、人が手すり棒2に寄りかかり、アーム部13に大きな回転モーメントがかかった場合であっても、アーム部13が回転することを規制することができる。したがって、本ブラケット3によれば、手すり棒2を安定させることが可能となり、手すり棒2を安全に支持することができる。
【0042】
また、本ブラケット3によれば、第2の溝32は、筒部10の裏側端11dから表側端11cと裏側端11dとの間の中途部までしか形成されておらず、表側端11cまでは至らない。そのため、筒部10の表側端11cと裏側端11dとの間の中途部には第2の溝32の終端部によって段差部33が生じることとなる。これにより、突出部15aを第2の溝32に係合させた場合、突出部15aは軸方向にスライド自在であるが、当該段差部33によって段差部33より表側へスライド移動しない様に規制される。したがって、本ブラケット3によれば、簡単な構成により、出幅を調整することができ、かつ、ブラケット本体5が筒部10から抜けることを防止することができる。
【0043】
なお、本ブラケット3には、筒部10の表側端11cから裏側端11dに渡って形成された第1の溝31が形成されている。また、筒部10は裏側端11dおよび表側端11cのいずれもが開口している。このような構成により、まず、突出部15aを第1の溝31と係合させて筒部10の表側端11cから裏側端11dまでスライド移動させた後、一旦、筒部10の裏側端11dから外部へ押し出してアーム部13を回転させることで、突出部15aを第2の溝32に係合させることができる。このようにして、本ブラケット3によれば、突出部15aを第1の溝31、第2の溝32の順に係合させることにより出幅調整が可能となり、また、ブラケット本体5が筒部10から抜けることを防止することができる。
【0044】
本ブラケット3では、突出部15aが複数(4つ)設けられており、突出部15aと係合する第1の溝31および第2の溝32が、それぞれ突出部15aと同数(4本)形成されている。そのため、複数の突出部15aと、複数の第1の溝31または第2の溝32とが係合することによりブラケット本体5と筒部10との相対回転がより規制される。これにより、アーム部13に大きなモーメントがかかった場合であっても、より安定的に手すり棒2を支持することが可能となる。したがって、本ブラケット3によれば、手すり棒2をより安全に支持することができる。
【0045】
また、本ブラケット3では、4つの突出部15aが一体的に構成されて略正方形状のフランジ15が形成されている。そのため、本ブラケット3では、略正方形状のフランジ15が、4本の第1の溝31または4本の第2の溝32と係合することとなり、ブラケット本体5が筒部10にバランスよく支持される。したがって、本ブラケット3によれば、手すり棒2をより安全に支持することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、軸部14の先端部14aに突出部15aが4つ、筒部10の内周面に第1および第2の溝31,32がそれぞれ4本ずつ形成されている場合について説明したが、ブラケット3はこのような形態に限定されない。例えば、図11に示すように、突出部15aが1つ、第1の溝31および第2の溝32がそれぞれ1本ずつ設けられたものであってもよい。
【0047】
また、突出部15aは、4以外の複数個、例えば図12に示すように、3つ設けられていてもよい。この場合、第1の溝31および第2の溝32を、それぞれ突出部15aと同数個(3本)ずつ形成することが必要となる。いずれの場合であっても、上述の効果と同様の効果を奏することが可能である。
【0048】
また、本実施形態では、4つの突出部15aは一体に形成され、1つのフランジ15を形成していたが、図13に示すように分離された形状に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明は、壁面に手すりを設置するための手すりブラケットについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る手すりの平面図である。
【図2】本実施形態に係るブラケットの構成図である。
【図3】台座本体の側面図である。
【図4】台座本体の背面図である。
【図5】台座本体を背面から視た斜視図である。
【図6】ブラケット本体の側面図である。
【図7】ブラケット本体の背面図である。
【図8】組立時におけるブラケット本体および台座の斜視図である。
【図9】組立時におけるブラケット本体および台座の斜視図である。
【図10】組立時におけるブラケット本体および台座の斜視図である。
【図11】変形例に係るブラケット本体の一部と台座を示す斜視図である。
【図12】変形例に係るブラケット本体の一部と台座を示す斜視図である。
【図13】変形例に係るブラケット本体の一部と台座を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 手すり
2 手すり棒
3 ブラケット(手すりブラケット)
4 台座
5 ブラケット本体
6 台座本体
9 座部
10 筒部
11 孔
11a 表側の孔(表側孔)
11b 裏側の孔(裏側孔)
11c 表側端
11d 裏側端
12 受け部
13 アーム部
14 軸部
14a 先端部
15 フランジ
15a 突出部
21 孔
22 ねじ(固定具)
31 第1の溝(取り付け溝、第1の溝)
32 第2の溝(取り付け溝、第2の溝)
33 段差部
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に手すり棒を設置するための手すりブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より、壁面に手すり棒を設置するための手すりブラケットが用いられている。また、手すりブラケットの中には、例えば、壁面に凹凸があるために、場所により手すり棒と壁面との距離が異なるような場合であっても、手すり棒を曲げることなく取付可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
この種の手すりブラケットは、手すり棒を支持する受け部と、受け部を支持するアーム部と、アーム部を壁に取り付ける台座とを備えている。台座は、壁面と直交する方向に延びる筒部とを備えている。また、アーム部の先端側には略円筒形状または略円柱形状の軸部が形成され、軸部は筒部内に挿通されている。このような構成により、アーム部の軸部を筒部に対して軸方向に自在にスライドさせることにより、上記手すりブラケットは、出幅(受け部と壁面との平面視における距離)を自在に調節することができる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を取り付ける壁面に凹凸があっても、手すり棒を曲げることなく壁面に平行に取り付けることができる。
【特許文献1】実用新案登録第3070830号公報
【特許文献2】特開2003−97007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載された手すりブラケットでは、アーム部の軸部と筒部とが相対回転可能な様に構成されている。そして、アーム部の筒部に対する位置を決定した後、固定ねじを軸部の外面に押し付けて、軸部と筒部とが軸方向および周方向に相対移動しない様に固定することとしている。
【0005】
しかしながら、例えば、人が手すり棒に寄りかかった場合等、受け部を支持するアーム部には、大きな回転モーメントがかかる。このような場合、上記手すりブラケットでは、略円筒形状または略円柱形状の軸部であるため、固定ねじの先端部が軸部の外面上を周方向に滑り、受け部およびアーム部が回転してしまうというおそれがあった。そのため、上記手すりブラケットでは、このような場合に手すり棒を安定して支持することができず、安全性に欠けていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、手すり棒を安全に支持する手すりブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る手すりブラケットは、前記壁面に交差する方向に延びる断面略円形の孔と、前記孔内で前記方向に延びる取り付け溝とが形成された筒部を有し、前記壁面に固定される台座と、前記手すり棒を保持する受け部と、前記受け部を支持するとともに、先端側が前記筒部の前記孔内に挿入されたアーム部と、前記アーム部の先端部において前記アーム部の半径方向外側に突出し、前記筒部の軸方向にスライド自在かつ前記孔内で回転不能なように前記取り付け溝に係合する突出部と、を有するブラケット本体と、前記アーム部を前記台座に固定する固定具と、を備えたものである。
【0008】
上記手すりブラケットでは、アーム部の先端部に設けられた突出部は、筒部の取り付け溝と軸方向にスライド自在に係合している。このような構成により、突出部を取り付け溝に沿って軸方向にスライドさせると、ブラケット本体が台座に対して軸方向にスライド移動する。これにより、手すりブラケットは、軸方向長さを自在に調整可能に構成されることとなる。そのため、上記手すりブラケットによれば、手すりブラケットの出幅(受け部と壁面との平面視における距離)を自在に調整することが可能となる。そのため、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を取り付ける壁面に凹凸があっても、手すり棒と壁面との距離を自在に調節し、手すり棒を曲げることなく壁面と平行に取り付けることができる。
【0009】
さらに、上記手すりブラケットでは、アーム部の先端部に設けられた突出部は、取り付け溝と回転不能に係合する。そのため、突出部を取り付け溝に係合させることにより、ブラケット本体の台座に対する相対回転を規制することができる。これにより、例えば、人が手すり棒に寄りかかり、アーム部に大きな回転モーメントがかかった場合であっても、アーム部が回転することを規制することができる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を安定させることが可能となり、手すり棒を安全に支持することができる。
【0010】
前記筒部は、前記壁面側に位置する裏側端および前記壁面と反対側に位置する表側端のいずれもが開口しており、前記取り付け溝は、前記表側端から前記裏側端に渡って形成された第1の溝と、前記裏側端から前記表側端と前記裏側端との間の中途部にまで形成された第2の溝とを含んでいることが好ましい。
【0011】
上記手すりブラケットによれば、第2の溝は、筒部の裏側端から表側端と裏側端との間の中途部までしか形成されておらず、表側端までは至らない。そのため、筒部の表側端と裏側端との間の中途部には第2の溝の終端部によって段差が生じることとなる。これにより、突出部を第2の溝に係合させた場合、突出部は軸方向にスライド自在であるが、当該段差によって段差より表側へスライド移動しない様に規制される。したがって、上記手すりブラケットによれば、簡単な構成により、出幅を調整することができ、かつ、ブラケット本体が筒部から抜けることを防止することができる。
【0012】
なお、上記手すりブラケットには、筒部の表側端から裏側端に渡って形成された第1の溝が形成されている。また、筒部は裏側端および表側端のいずれもが開口している。このような構成により、まず、突出部を第1の溝と係合させて筒部の表側端から裏側端までスライド移動させた後、一旦、筒部の裏側端から外部へ押し出してアーム部を回転させることで、突出部を第2の溝に係合させることができる。このようにして、上記手すりブラケットによれば、第1の溝および第2の溝により出幅調整が可能となり、また、ブラケット本体が筒部から抜けることを防止することができる。
【0013】
また、突出部を第2の溝に係合させることにより、ブラケット本体を台座に対して相対回転しない様に規制することができるため、アーム部の回転を規制することができる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒を安定させることが可能となり、手すり棒を安全に支持することができる。
【0014】
前記突出部を複数有し、前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ前記突出部と同数ずつ形成され、前記複数の突出部は、前記アーム部の周方向に等間隔に配置され、前記複数の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、前記複数の第2の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記手すりブラケットによれば、複数の突出部と、複数の第1の溝または第2の溝とが係合することによりブラケット本体と筒部との相対回転がより規制される。そのため、アーム部に大きなモーメントがかかった場合であっても、より安定的に手すり棒を支持することが可能となる。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒をより安全に支持することができる。
【0016】
前記突出部を4つ有し、前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ4本ずつ形成され、前記4つの突出部は一体的に形成されて略正方形状のフランジを構成し、前記4本の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、前記4本の第2の溝は、前記4本の第1の溝のそれぞれを前記筒部の軸回りに略45度回転させた位置に配置され、前記孔と前記4本の第1の溝とにより、前記筒部の表側に略正方形状の表側孔が形成され、前記孔と前記4本の第1の溝と前記4本の第2の溝とにより、前記筒部の裏側に略八角形状の裏側孔が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記手すりブラケットによれば、略正方形状のフランジが4本の第1の溝または4本の第2の溝と係合するため、ブラケット本体が筒部にバランスよく支持される。したがって、上記手すりブラケットによれば、手すり棒をより安全に支持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、手すり棒を安全に支持する手すりブラケットを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る手すり1の構成を示す平面図である。まずは、図1を参照して、本実施形態に係る手すり1の構成について詳述する。
【0021】
《手すり1の構成》
手すり1は、手すり棒2と、手すり棒2を壁面Wに取り付けるための手すり棒2用のブラケット3とを備えている。なお、ブラケット3の個数や取付位置は本実施形態のものに限定されないが、本実施形態では、ブラケット3は、手すり棒2の両端部と、手すり棒2の中間部とに設けられている。
【0022】
以下に詳述するが、本実施形態に係るブラケット3は、壁面Wと手すり棒2との距離を自在に調節可能に構成されている。そのため、図1に示すように、壁面Wに凹凸がある場合であっても、ブラケット3の壁面Wに略直交する方向の長さXを調節することにより、手すり棒2を撓ませることなく壁面Wに平行に取り付けることができる。
【0023】
なお、手すり棒2の両端部に設けられたブラケット3と、手すり棒2の中間部に設けられたブラケット3とは、手すり棒2を支持する部分の形状が異なる以外、ほぼ同様の構成をしている。よって、以下、手すり棒2の中間部に設けられたブラケット3について詳述し、手すり棒2の両端部に設けられたブラケット3については詳細な説明は省略することとする。
【0024】
《ブラケット3の構成》
図2に示すように、ブラケット3は、壁面W(図1参照)に取り付けられる台座4と、手すり棒2を支持すると共に、台座4にスライド自在に支持されるブラケット本体5とを備えている。
【0025】
−台座4の構成−
台座4は、壁面W(図1参照)に取り付けられる台座本体6と、カバー7とを備えている。
【0026】
図3は台座本体6の側面断面図である。図4は台座本体6の背面図であり、図5は台座本体6を背面側から視た斜視図である。図3に示すように、台座本体6は、壁面W(図1参照)に取り付けられる接触面8を有する座部9と、座部9に連続し、接触面8に略直交する方向に延びる筒部10とを備えている。筒部10には、半径方向に延びるねじ穴17が設けられている。図2に示すように、筒部10は略円筒形状に形成されており、断面略円形の孔21が形成されている。
【0027】
図3、図4および図5に示すように、筒部10の内周面には、軸方向に関し、壁面W(図1参照)と反対側に位置する表側端11cから壁面(図1参照)側に位置する裏側端11dにまで延びる第1の溝31が形成されている。第1の溝31は、本実施形態では4本形成されている。また、4本の第1の溝31は、それぞれ筒部10の周方向に等間隔(略90度間隔)に配置されている。
【0028】
また、筒部10の内周面には、軸方向に関し、裏側端11dから裏側端11dと表側端11cとの間の中途部まで延びる第2の溝32が設けられている。第2の溝32は、第1の溝31と同数本(4本)形成されている。当該4本の第2の溝32は、第1の溝31と同様に、筒部10の周方向に等間隔(略90度間隔)に配置されており、かつ、4本の第1の溝31を略45度回転させた位置に配置されている。
【0029】
このような孔21と第1の溝31および第2の溝32により、筒部10には、筒部10の軸方向の途中で横断面の輪郭形状が変化する孔11が形成されることとなる。具体的には、当該孔11は、断面略円形の孔21と4本の第1の溝31とにより形成される表側の孔11aと、断面略円形の孔21と4本の第1の溝31と4本の第2の溝32とにより形成される裏側の孔11bとにより構成される。表側の孔11aの輪郭形状は、角が丸まった略正方形状に形成されている(図2参照)。一方、裏側の孔11bの輪郭形状は、外側の角が丸まった略正八角形状に形成されている(図5参照)。
【0030】
−ブラケット本体5の構成−
図6はブラケット本体5の側面図であり、図7はブラケット本体5の背面図である。図6に示すように、ブラケット本体5は、手すり棒2を支持するための受け部12と、受け部12を支持するアーム部13とを備えている。受け部12の形状は何ら限定されないが、本実施形態では、受け部12は手すり棒2を挿通可能な様に、略円筒形状に形成されている。
【0031】
アーム部13は、受け部12と連続しており、受け部12と一体に形成されている。なお、受け部12はアーム部13と別体に形成されていてもよい。アーム部13の先端側には、平面視において手すり棒2と略直交する方向に延びる軸部14(図1参照)が形成されている。
【0032】
軸部14は、輪郭形状が略円形状となるように形成されている。また、軸部14の軸方向長さは、筒部10の軸方向長さよりも長く形成されている。軸部14の先端部14aには、軸部14の外周面から径方向外側へ突出する4つの突出部15aが形成されている。4つの突出部15aは、軸部14の外周に沿って等間隔(本実施形態では略45度)に配置されている。本実施形態では、4つの突出部15aは、一体に形成されて一つのフランジ15を構成している。なお、先端部14aとは軸部14の先端付近を指し、先端だけでなく先端から僅かに受け部12側にずれた部分も含まれることとする。
【0033】
図7に示すように、フランジ15は、台座4の筒部10の孔11に挿通自在なように、表側の孔11aの輪郭形状と同様の輪郭形状を有している。すなわち、フランジ15は、角が丸まった略正方形状に形成されている。また、フランジ15の各辺は、アーム部13の中心軸から略45度傾いている。なお、フランジ15および軸部14には、輪郭形状が略円形状の長孔16が形成されている。
【0034】
以上がブラケット3の構成である。次に、ブラケット3の台座4およびブラケット本体5の組み立て方法について説明する。
【0035】
図2に示すように、台座4にブラケット本体5を組み立てる際には、ブラケット本体5を軸部14の軸回りに回転させてフランジ15の向きを台座4の表側の孔11aに合わせる。そして、フランジ15が孔11の裏側端11d(図3参照)を通過するまで、アーム部13の軸部14を孔11に挿入する(図8参照)。このとき、フランジ15の各突出部15aは、4本の第1の溝31に相対回転不能に係合され、4本の第1の溝31に沿ってスライド移動する。
【0036】
フランジ15が孔11の裏側端11dを通過し、外部に至ったところで、ブラケット本体5の軸部14を孔11内で略45度回転させて、フランジ15の向きを変える(図9参照)。そして、各突出部15aを、筒部10の4本の第2の溝32に係合させる。
【0037】
その状態でブラケット本体5を台座4の裏側端11dから表側端11c(図3参照)に向かって引っ張ると、フランジ15は裏側の孔11b内に挿入される(図10参照)。ここで、フランジ15と裏側の孔11bとは、互いに対応した略正八角形に形成されているので、フランジ15が裏側の孔11b内に挿入された状態では、フランジ15の回転は阻止される。したがって、台座4に対するブラケット本体5の回転が防止される。
【0038】
次に、ブラケット本体5を台座4に対してスライド移動させ、台座4に対するアーム部13の突出長さを微調整する。なお、台座4の筒部10内には4本の第2の溝32によって4つの段差部33(図5参照)が形成されている。そのため、フランジ15は段差部33によって、段差部33より表側にスライドしない様に規制される。このような構成により、ブラケット本体5を引っ張りすぎた場合であっても、ブラケット本体5が台座4から抜けることを防止することができる。
【0039】
そして、台座4に対するアーム部13の突出長さを微調整した後、ねじ穴17にねじ22(図3参照)を挿入して締め付け、ブラケット本体5のアーム部13を台座4に固定する。これにより、ブラケット本体5が台座4に対するスライド移動が規制されることとなる。このようにして、台座4に対してブラケット本体5が組み立てられる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る手すり棒2用のブラケット3では、アーム部13の先端側に設けられた突出部15aが、筒部10の第2の溝32と軸方向にスライド自在に係合するように形成されている。このような構成により、突出部15aを第2の溝32に沿って軸方向にスライドさせると、ブラケット本体5が台座4に対して軸方向にスライド移動する。これにより、ブラケット3は、軸方向長さを自在に調整可能に構成されることとなる。そのため、本ブラケット3によれば、ブラケットの出幅(受け部12と壁面Wとの平面視における距離)を自在に調整することが可能となる。そのため、本ブラケット3によれば、手すり棒2を取り付ける壁面Wに凹凸があっても、手すり棒2と壁面Wとの距離を自在に調節し、手すり棒2を曲げることなく壁面Wと平行に取り付けることができる。
【0041】
また、本ブラケット3では、アーム部13の軸部14の先端部14aに設けられた突出部15aは、第1の溝31または第2の溝32と回転不能に係合する。そのため、突出部15aを、第1の溝31または第2の溝32に係合させることにより、ブラケット本体5の台座4に対する相対回転を規制することができる。これにより、例えば、人が手すり棒2に寄りかかり、アーム部13に大きな回転モーメントがかかった場合であっても、アーム部13が回転することを規制することができる。したがって、本ブラケット3によれば、手すり棒2を安定させることが可能となり、手すり棒2を安全に支持することができる。
【0042】
また、本ブラケット3によれば、第2の溝32は、筒部10の裏側端11dから表側端11cと裏側端11dとの間の中途部までしか形成されておらず、表側端11cまでは至らない。そのため、筒部10の表側端11cと裏側端11dとの間の中途部には第2の溝32の終端部によって段差部33が生じることとなる。これにより、突出部15aを第2の溝32に係合させた場合、突出部15aは軸方向にスライド自在であるが、当該段差部33によって段差部33より表側へスライド移動しない様に規制される。したがって、本ブラケット3によれば、簡単な構成により、出幅を調整することができ、かつ、ブラケット本体5が筒部10から抜けることを防止することができる。
【0043】
なお、本ブラケット3には、筒部10の表側端11cから裏側端11dに渡って形成された第1の溝31が形成されている。また、筒部10は裏側端11dおよび表側端11cのいずれもが開口している。このような構成により、まず、突出部15aを第1の溝31と係合させて筒部10の表側端11cから裏側端11dまでスライド移動させた後、一旦、筒部10の裏側端11dから外部へ押し出してアーム部13を回転させることで、突出部15aを第2の溝32に係合させることができる。このようにして、本ブラケット3によれば、突出部15aを第1の溝31、第2の溝32の順に係合させることにより出幅調整が可能となり、また、ブラケット本体5が筒部10から抜けることを防止することができる。
【0044】
本ブラケット3では、突出部15aが複数(4つ)設けられており、突出部15aと係合する第1の溝31および第2の溝32が、それぞれ突出部15aと同数(4本)形成されている。そのため、複数の突出部15aと、複数の第1の溝31または第2の溝32とが係合することによりブラケット本体5と筒部10との相対回転がより規制される。これにより、アーム部13に大きなモーメントがかかった場合であっても、より安定的に手すり棒2を支持することが可能となる。したがって、本ブラケット3によれば、手すり棒2をより安全に支持することができる。
【0045】
また、本ブラケット3では、4つの突出部15aが一体的に構成されて略正方形状のフランジ15が形成されている。そのため、本ブラケット3では、略正方形状のフランジ15が、4本の第1の溝31または4本の第2の溝32と係合することとなり、ブラケット本体5が筒部10にバランスよく支持される。したがって、本ブラケット3によれば、手すり棒2をより安全に支持することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、軸部14の先端部14aに突出部15aが4つ、筒部10の内周面に第1および第2の溝31,32がそれぞれ4本ずつ形成されている場合について説明したが、ブラケット3はこのような形態に限定されない。例えば、図11に示すように、突出部15aが1つ、第1の溝31および第2の溝32がそれぞれ1本ずつ設けられたものであってもよい。
【0047】
また、突出部15aは、4以外の複数個、例えば図12に示すように、3つ設けられていてもよい。この場合、第1の溝31および第2の溝32を、それぞれ突出部15aと同数個(3本)ずつ形成することが必要となる。いずれの場合であっても、上述の効果と同様の効果を奏することが可能である。
【0048】
また、本実施形態では、4つの突出部15aは一体に形成され、1つのフランジ15を形成していたが、図13に示すように分離された形状に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明は、壁面に手すりを設置するための手すりブラケットについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る手すりの平面図である。
【図2】本実施形態に係るブラケットの構成図である。
【図3】台座本体の側面図である。
【図4】台座本体の背面図である。
【図5】台座本体を背面から視た斜視図である。
【図6】ブラケット本体の側面図である。
【図7】ブラケット本体の背面図である。
【図8】組立時におけるブラケット本体および台座の斜視図である。
【図9】組立時におけるブラケット本体および台座の斜視図である。
【図10】組立時におけるブラケット本体および台座の斜視図である。
【図11】変形例に係るブラケット本体の一部と台座を示す斜視図である。
【図12】変形例に係るブラケット本体の一部と台座を示す斜視図である。
【図13】変形例に係るブラケット本体の一部と台座を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 手すり
2 手すり棒
3 ブラケット(手すりブラケット)
4 台座
5 ブラケット本体
6 台座本体
9 座部
10 筒部
11 孔
11a 表側の孔(表側孔)
11b 裏側の孔(裏側孔)
11c 表側端
11d 裏側端
12 受け部
13 アーム部
14 軸部
14a 先端部
15 フランジ
15a 突出部
21 孔
22 ねじ(固定具)
31 第1の溝(取り付け溝、第1の溝)
32 第2の溝(取り付け溝、第2の溝)
33 段差部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に手すり棒を取り付けるための手すりブラケットであって、
前記壁面に交差する方向に延びる断面略円形の孔と、前記孔内で前記方向に延びる取り付け溝とが形成された筒部を有し、前記壁面に固定される台座と、
前記手すり棒を保持する受け部と、前記受け部を支持するとともに、先端側が前記筒部の前記孔内に挿入されたアーム部と、前記アーム部の先端部において前記アーム部の半径方向外側に突出し、前記筒部の軸方向にスライド自在かつ前記孔内で回転不能なように前記取り付け溝に係合する突出部と、を有するブラケット本体と、
前記アーム部を前記台座に固定する固定具と、
を備えた手すりブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載の手すりブラケットにおいて、
前記筒部は、前記壁面側に位置する裏側端および前記壁面と反対側に位置する表側端のいずれもが開口しており、
前記取り付け溝は、前記表側端から前記裏側端に渡って形成された第1の溝と、前記裏側端から前記表側端と前記裏側端との間の中途部にまで形成された第2の溝とを含んでいる手すりブラケット。
【請求項3】
請求項2に記載の手すりブラケットにおいて、
前記突出部を複数有し、
前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ前記突出部と同数ずつ形成され、
前記複数の突出部は、前記アーム部の周方向に等間隔に配置され、
前記複数の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、
前記複数の第2の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置されている、手すりブラケット。
【請求項4】
請求項2に記載の手すりブラケットであって、
前記突出部を4つ有し、
前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ4本ずつ形成され、
前記4つの突出部は一体的に形成されて略正方形状のフランジを構成し、
前記4本の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、
前記4本の第2の溝は、前記4本の第1の溝のそれぞれを前記筒部の軸回りに略45度回転させた位置に配置され、
前記孔と前記4本の第1の溝とにより、前記筒部の表側に略正方形状の表側孔が形成され、
前記孔と前記4本の第1の溝と前記4本の第2の溝とにより、前記筒部の裏側に略八角形状の裏側孔が形成されている、手すりブラケット。
【請求項1】
壁面に手すり棒を取り付けるための手すりブラケットであって、
前記壁面に交差する方向に延びる断面略円形の孔と、前記孔内で前記方向に延びる取り付け溝とが形成された筒部を有し、前記壁面に固定される台座と、
前記手すり棒を保持する受け部と、前記受け部を支持するとともに、先端側が前記筒部の前記孔内に挿入されたアーム部と、前記アーム部の先端部において前記アーム部の半径方向外側に突出し、前記筒部の軸方向にスライド自在かつ前記孔内で回転不能なように前記取り付け溝に係合する突出部と、を有するブラケット本体と、
前記アーム部を前記台座に固定する固定具と、
を備えた手すりブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載の手すりブラケットにおいて、
前記筒部は、前記壁面側に位置する裏側端および前記壁面と反対側に位置する表側端のいずれもが開口しており、
前記取り付け溝は、前記表側端から前記裏側端に渡って形成された第1の溝と、前記裏側端から前記表側端と前記裏側端との間の中途部にまで形成された第2の溝とを含んでいる手すりブラケット。
【請求項3】
請求項2に記載の手すりブラケットにおいて、
前記突出部を複数有し、
前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ前記突出部と同数ずつ形成され、
前記複数の突出部は、前記アーム部の周方向に等間隔に配置され、
前記複数の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、
前記複数の第2の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置されている、手すりブラケット。
【請求項4】
請求項2に記載の手すりブラケットであって、
前記突出部を4つ有し、
前記第1の溝および前記第2の溝は、それぞれ4本ずつ形成され、
前記4つの突出部は一体的に形成されて略正方形状のフランジを構成し、
前記4本の第1の溝は、前記筒部の周方向に等間隔に配置され、
前記4本の第2の溝は、前記4本の第1の溝のそれぞれを前記筒部の軸回りに略45度回転させた位置に配置され、
前記孔と前記4本の第1の溝とにより、前記筒部の表側に略正方形状の表側孔が形成され、
前記孔と前記4本の第1の溝と前記4本の第2の溝とにより、前記筒部の裏側に略八角形状の裏側孔が形成されている、手すりブラケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−202340(P2008−202340A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40994(P2007−40994)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
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