説明

手ぶれ検出装置および撮影装置

【課題】 外部から衝撃があっても手ぶれ補正を迅速かつ正確に行う。
【解決手段】 スリープモード機能を備えるジャイロセンサ20A、20B、ハイパスフィルタ22A、22Bをカメラに設ける。外部から衝撃が加えられた場合、ジャイロセンサ20A、20BをスリープモードONに設定し、基準電圧Vrefと同じ電圧V0がハイパスフィルタ22A、22Bへジャイロセンサ20A、20Bから出力する。そして、安定かするまでの時間が経過すると、自動的にジャイロセンサ20A、20BをスリープモードOFFに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラなどの撮影装置に備えられた手ぶれ補正機構に関し、特に、外部から衝撃が加えられたときの手ぶれ検出に関する。
【背景技術】
【0002】
手ぶれ補正機能付きのカメラでは、ジャイロセンサなどの角速度検出器が設けられており、カメラ操作時の手ぶれによってカメラ本体がヨーイング、あるいはピッチングすると、ジャイロセンサはカメラの動きに従って角速度を検出する。そして、像ブレを防ぐため、手ぶれによるカメラの動きを相殺するように光学系、あるいは撮像素子が移動する。ジャイロセンサを使用する場合、ドリフトによるDC成分をカットするため、ジャイロセンサからの出力電圧はハイパスフィルタに入力される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
カメラ内部のミラーやシャッタなどが作動するとき、カメラ内部に衝撃が発生し、手ぶれの要因になる。このような内部動作時に発生する衝撃を回避するため、撮影動作時において手ぶれ補正動作が実行される(特許文献3参照)。あらかじめ内部衝撃による手ぶれ量をデータとして記憶し、そのデータに基づいて光学素子、あるいは撮像素子を移動させる。また、手ぶれ補正動作を終了後に光学素子を元の位置へ復帰させる過程で内部衝撃が発生するのを防ぐため、ぶれ量検出回路への電圧入力を遮断し、ぶれ量を減衰させる(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−247520号公報
【特許文献2】特開2003−57706号公報
【特許文献3】特開平7−28145号公報
【特許文献4】特開2001−159767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラに直接不特定物が当たるなど、急激な衝撃がカメラに生じた場合、周波数の高い角速度信号がジャイロセンサから出力される。手ぶれのような低い周波数に合わせて手ぶれ補正機構の応答特性が定められているため、外部からの衝撃による角速度信号が出力されると、検出されるぶれ量に対して位相の遅れが生じ、またゲインが高くなって手ぶれに追従できず、発振してしまう。衝撃の度合いはその状況によって異なるため、あらかじめデータとして衝撃によるぶれ量を記憶させることはできない。
【0005】
外部から衝撃を受けたとき一定期間だけ手ぶれ補正動作を停止させた場合、ハイパスフィルタから出力される信号にはDC成分が残る。そのため、正確にぶれ量を検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮影装置は、手ぶれ補正機能を備えたデジタルカメラ、ムービーカメラ、あるいは撮影機能を備えた携帯端末/携帯電話といった撮影装置であり、撮影装置は、外部からの衝撃があってもすぐに手ぶれ補正を実行することが可能である。撮影装置に設けられた手ぶれ検出装置は、手ぶれによる角速度に応じた角速度信号を出力する角速度センサと、角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれを検出する検出手段と、制御手段と、外部衝撃検出手段とを備える。角速度センサは例えば電圧信号を出力するとともに、角速度センサからの角速度信号に対してDC成分を除去するハイパスフィルタを備えた場合、DC成分の除去された電圧信号がハイパスフィルタから検出される。角速度センサは例えばジャイロセンサであり、精度よく手ぶれを検出するため、水晶の結晶による振動ジャイロセンサを適用するのがよい。角速度が検出されると、例えば、角速度信号の電圧値と基準電圧とに基づいてカメラの姿勢変動による変動角速度が手ぶれとして検出される。基準電圧は角速度信号の電圧値の基準となる値であり、ジャイロセンサから出力される。ハイパスフィルタの後段には、例えばアンプを接続すればよい。
【0007】
本発明の角速度センサは、動作状態から動作停止状態へ切替可能なセンサであり、角速度センサが動作停止状態になると、角速度信号の電圧値が、基準電圧の値と同じになる。ここで動作停止状態とは、角速度を測定する機能を発揮できない状態を示し、その機能を再び実現させるため必要な電力は角速度センサに供給される。上記特性をもつ角速度センサとしては、例えばスリープモード実行可能な角速度センサを適用すればよい。スリープモードをON設定すると、センサ素子、アンプなど角速度センサの一部のモジュールへの電源供給を遮断する結果、基準電圧による角速度信号が出力される。このような角速度センサに対し、制御手段は、角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する。
【0008】
本発明の手ぶれ検出装置は、外部からの衝撃を検知する外部衝撃検知手段を備える。ここで、外部からの衝撃とは、撮影装置外部から非常に短時間で与えられる力の作用を意味する(例えば、カメラを保持しているときに物体がカメラに直接当たった場合など)。外部から衝撃が加えられたことが検知された場合、制御部は、角速度センサを動作停止状態にし、衝撃が加えられてからハイパスフィルタからの出力信号に対する衝撃の影響が除去されるまでの間、動作停止状態が維持される。そして、出力信号が安定化するたまでの衝撃退避時間が経過すると、角速度センサを動作させる。手ぶれ補正機構による制御系は、手ぶれ量の値「0」が続くと自動的に撮像素子の位置が中心位置へ戻るように、応答特性を定めればよい。
【0009】
本発明では、外部から衝撃を受けてから所定時間、角速度センサから常時信号が出力されるが、角速度センサを動作停止状態にすることにより、基準電圧と電圧値が一致する角速度信号が角速度センサから出力される。そのため、衝撃直後から角速度センサあるいはハイパスフィルタの時定数に従う誘電吸収が開始する。したがって、すみやかに角速度センサあるいはハイパスフィルタからの出力信号が安定化し、衝撃退避時間経過後すぐに手ぶれ補正を実行することが可能になる。スリープモードを実行可能な角速度センサの場合、センサ素子、アンプなど角速度センサの一部のモジュールへの電源供給を遮断することで基準電圧値による信号出力が維持される。
【0010】
角速度センサからの角速度信号に対してDC成分を除去するハイパスフィルタを設けた場合、ハイパスフィルタから出力される信号が安定化するまでの衝撃退避時間は、ハイパスフィルタの時定数に従う。したがって、衝撃退避時間は、以下の式によって定めればよい。

TT≧τ×2.3

ただし、τはハイパスフィルタの時定数、TTは衝撃退避時間を示す。なお、ハイパスフィルタを設けない場合、角速度センサに基づいて衝撃退避時間を定めればよい。
【0011】
外部から衝撃を受けた場合、手ぶれとは異なって非常に短時間のカメラ変動が生じ、検出される角速度の値が大きい。したがって、外部衝撃検知手段は、角速度センサから出力される角速度信号の電圧値が手ぶれにより出力される手ぶれ電圧範囲を超えた電圧値である場合、外部からの衝撃があったものとみなせばよい。また、制御手段は、手ぶれ補正実行のため電源投入されると(メイン電源投入)、前記角速度センサを動作停止状態にし、前記衝撃退避時間に相当する所定時間経過後、前記角速度センサを動作させてばよい。
【0012】
本発明の手ぶれ検出方法は、動作停止状態に切替可能な角速度センサから出力される、手ぶれによる角速度に応じた角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれを検出し、角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する方法であって、角速度信号の電圧値が、角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、外部から衝撃が加えられた場合、角速度センサを動作停止状態にし、ハイパスフィルタからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの所定時間経過後、角速度センサを動作させることを特徴とする。
【0013】
本発明のプログラムは、動作停止状態に切替可能な角速度センサから出力される、手ぶれによる角速度に応じた角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれを検出する検出手段と、角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する制御手段とを機能させるプログラムであって、角速度信号の電圧値が、角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、外部から衝撃が加えられた場合、角速度センサを動作停止状態にし、ハイパスフィルタからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの所定時間経過後、角速度センサを動作させるように、制御手段を機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明の撮影装置は、撮影光学系と、撮影光学系によって形成される被写体像を記録する記録手段と、手ぶれによる角速度に応じた角速度信号を出力し、動作停止状態に切替可能な角速度センサと、角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれによる変位量を検出する検出手段と、角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する制御手段と、手ぶれによる変位量に基づいて、撮影光学系による結像エリアを像ぶれが生じないように調整する手ぶれ補正手段とを備え、角速度信号の電圧値が、角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、制御手段が、外部から衝撃が加えられた場合、角速度センサを動作停止状態にし、ハイパスフィルタからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの所定時間経過後、角速度センサを動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部から衝撃があっても手ぶれ補正を迅速かつ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態であるカメラの概略的斜視図である。図2は、カメラの正面図である。
【0018】
カメラ10は、手ぶれ補正機能を備えたデジタルカメラであり、カメラ本体内部には、手ぶれ補正機構12がレンズ鏡筒11の後方に設けられている。カメラ上面10U側には、レリーズボタン13、手ぶれ補正ボタン16が設けられ、カメラ背面10Bには、LCD17、メイン電源ボタン18が設けられている。
【0019】
カメラ本体内部には、手ぶれを検出するための、角速度センサとしてのジャイロセンサ20A、20Bが設けられており、ジャイロセンサ20A、20Bは、それぞれカメラ10がヨーイング、ピッチングするときの角速度を検出する。ただし、レンズ鏡筒11内の撮影光学系(図示せず)の光軸Eの横方向の動き、すなわちX方向に対する角度をヨーイングとし、光軸Eの垂直でカメラ10の縦方向の動き、すなわちY方向に対する角度をピッチングとする。なお、X−Y平面は光軸Eに垂直であり、Z方向は光軸方向に対応する。また、X、Y方向は、それぞれカメラ10の横方向、縦方向に対応する。カメラ10が水平姿勢状態の場合、X方向は水平面、Y方向は鉛直方向に沿った方向になる。
【0020】
図3は、カメラ10のブロック図である。
【0021】
CPUを含むシステムコントロール回路25はカメラ10を制御し、カメラ全体の処理動作を実行するプログラムがROM(図示せず)に格納されている。レリーズスイッチ13A、手ぶれ補正スイッチ16A、メイン電源スイッチ18A、レリーズ半押しスイッチ(図示せず)などがシステムコントロール回路25に接続され、メイン電源ボタン18に対する操作によってメイン電源スイッチ18AがONに切り替わると、各回路へ電源が供給される。
【0022】
撮影モードが設定されている場合、動画像を表示するための処理動作が実行される。撮影光学系を通った光はレンズシャッタ(図示せず)を介してCCD21に到達し、被写体像がCCD21に受光面に形成される。CCD21では、光電変換により被写体像に応じたアナログ画像信号が発生し、CCD駆動回路(図示せず)によってCCD21から画像信号が所定時間間隔で順次読み出される。CCD21から読み出されたアナログ画像信号は、増幅処理されて信号処理回路23へ送られる。
【0023】
信号処理回路23では、アナログ画像信号がデジタル信号に変換されるとともに、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理など様々な処理がデジタル画像信号に対して施される。処理された画像信号は一時的にフレームメモリ(図示せず)に格納され、LCDドライバ26へ送られる。LCDドライバ26は、画像信号に基づいてLCD17を駆動する。その結果、カメラ背面に設けられたLCD17に被写体像が動画像として表示される。
【0024】
AEブロック27では、CCD21から読み出される画像信号に基づいて被写体の明るさが検出され、信号処理回路23ではそれに基づき動画像の明るさ調整が行われる。また、AEブロック27では、ユーザによる露出、画質に関する設定操作に従い、シャッタスピード及び絞り値の露出値が演算される。レリーズボタン13が半押しされると、被写体との距離がAFセンサ28において検出される。そして焦点調整のため、撮影光学系内のフォーカシングレンズ(図示せず)がAF駆動部30によって駆動される。
【0025】
レリーズボタン13が全押しされると、撮影動作が実行される。すなわち、前述の演算された露出値に基づいて、絞りが所定の開口径となるように駆動制御されるとともに、シャッタが所定期間だけ開き、被写体像に応じた画像信号がCCD21から読み出される。読み出された画像信号は、信号処理回路23において処理され、システムコントロール回路25を介しメモリカード(図示せず)に記憶される。シャッタ動作および絞り駆動制御は、露出制御部29によって制御されている。
【0026】
手ぶれ補正ボタン16が押下されると手ぶれ補正スイッチ16AがON状態となり、手ぶれ補正を実行させる操作信号がシステムコントロール回路25において検出される。手ぶれ検出部20は、ジャイロセンサ20A、20B、ハイパスフィルタ22A、22B、アンプ24A、24Bとを備え、手ぶれによるカメラの姿勢変動時の角速度が電圧として検出される。
【0027】
手ぶれ補正機構12は、CCD21が中央付近に取付けられた矩形状の移動ステージ33と、移動ステージ33に近接した状態で対向する矩形状の固定ステージ35とを備え、移動ステージ33および固定ステージ35とを支持する支持体(図示せず)が設けられている。固定ステージ35には、レンズ鏡筒11内部を通った光を通す開口部が形成されており、開口部のサイズはCCD21の移動範囲に従って定められている。
【0028】
移動ステージ33は、コイル(図示せず)の駆動によってX方向、Y方向に沿って独立して移動可能であり、システムコントロール回路25は、検出された角速度に基づいてカメラ10の変位角を演算し、ステージ駆動回路38を介して手ぶれ補正機構12を制御する。
【0029】
詳述すると、ユーザの手ぶれによってカメラ10の姿勢が変動(ヨーイング、ピッチングの動き)をすると、ジャイロセンサ20A、20Bからヨーイング、ピッチングの角速度に応じた電圧信号(角速度信号)が出力される。出力された電圧信号は、それぞれハイパスフィルタ22A、22BにおいてDC成分が除去され、アンプ24A、24Bにおいて増幅される。増幅された電圧信号がシステムコントロール回路25へ入力されると、カメラ10の変動量に応じた変位角度が検出される。そして、手ぶれによる像ブレを相殺するように、システムコントロール回路25からステージ駆動回路38へ制御信号が出力され、移動ステージ33がX方向、Y方向へ移動する。その結果、撮影光学系による像がCCD21の受光面上に沿って相対的にシフトした位置で結像し、像ぶれのない画像がCCD21に形成される。
【0030】
移動ステージ33のCCD21周りには、X方向、Y方向に沿ってホール素子などの磁気センサ34A、34Bが配置されている。一方、固定ステージ35には、磁気センサ34A、34Bに対向するように磁石36A、36BがX方向、Y方向に沿って配置されている。手ぶれが検知されて移動ステージ33が移動すると、磁気センサ34A、34Bは、磁石36A、36Bに対する相対的位置の変化に応じて磁界変化を検知し、磁気センサ信号処理回路40A、40Bは、それぞれ移動ステージ33のX方向、Y方向の移動量を検出する。システムコントロール回路25は、移動ステージ33の現在の相対的位置と設定された位置との差に基づき、移動ステージ33をフィードバック制御する。
【0031】
図4は、手ぶれ検出部20の等価回路を示した図である。なお、ジャイロセンサ20B、ハイパスフィルタ22B、アンプ24Bも同様の構成である。
【0032】
ハイパスフィルタ22Aは、容量Cのコンデンサ51と抵抗値Rの抵抗52とを備え、コンデンサ51の一端と抵抗52の一端がジャイロセンサ20Aに接続されている。カメラ10の角速度に応じた電圧V0はコンデンサ51側へ出力され、基準電圧Vrefは抵抗52側へ出力される。アンプ24Aは、オペアンプ53と、抵抗値Rf、Rsをそれぞれもつ抵抗54、55とを備える。ハイパスフィルタ22Aの時定数τ(=CR)は、低周波数の手ぶれを検知できるように、比較的大きな値に定められている。
【0033】
ジャイロセンサ20Aは、水晶の結晶による振動ジャイロセンサであり、スリープモードが実行可能なように構成されている。スリープモードをON/OFFに設定する制御信号は、システムコントロール回路25からジャイロセンサ20Aの端子S1へ送信される。スリープモードがONに設定されると、ジャイロセンサ20A内のセンサ素子、増幅器(いずれも図示せず)等、角速度を検出するのに不可欠な要素へ電源が供給されない一方、スリープモードをOFF設定へ切り替えるのに必要な要素に対して電源供給される。スリープモードがONに設定されている間、コンデンサ51へ出力される電圧V0は基準電圧Vrefと一致する。
【0034】
図5は、カメラ10の撮影動作処理を示したフローチャートである。メイン電源ボタン18が押下されると、撮影動作処理が開始される。
【0035】
ステップS101では、CCD21、撮影光学系などが初期設定される。それとともに、ジャイロセンサ20A、20Bをスリープ状態に設定するための制御信号がシステムコントロール回路25から出力される。ステップS102では、所定時間TIだけスリープON状態が維持されるように、ジャイロセンサ20A、20Bが制御される。ステップS103では、ジャイロセンサ20A、20BをスリープOFFに設定するように制御信号が出力される。所定時間TIについては後に詳述する。ステップS104では、手ぶれ補正処理を実行する割り込み処理がタイマーセットされる。なお、手ぶれ補正機構に対しては、メイン電源がON状態の間、常に電源が供給されている。
【0036】
ステップS105では、手ぶれ補正スイッチ16AがON状態であるか否かが判断される。手ぶれ補正スイッチ16AがON状態であると判断されると、ステップS107へ進み、手ぶれ補正変数ISが「1」に設定される。一方、手ぶれ補正スイッチ16AがON状態でないと判断されると、ステップS106へ進み、手ぶれ補正変数ISが「0」に設定される。手ぶれ補正変数ISは、手ぶれ補正モードの設定、非設定を示す変数であり、手ぶれ補正スイッチ16AがONに設定された場合にはIS=1に設定され、手ぶれ補正スイッチ16AがON設定されていない場合にはIS=0に設定される。
【0037】
ステップS108では、AEブロック27において測光され、被写体の明るさ調整処理が実行される。そして、ステップS109では、動画像表示処理が実行される。ステップS110では、レリーズボタン13が半押しされてレリーズ半押しスイッチがON状態であるか否かが判断される。レリーズボタン13が半押しされていないと判断されると、ステップS105へ戻る。一方、レリーズボタン13が半押しされたと判断されると、ステップS111へ進み、焦点調整処理が実行される。
【0038】
ステップS112では、レリーズボタン13が全押しされてレリーズスイッチ13AがON状態であるか否かが判断される。レリーズスイッチ13AがON状態ではないと判断されると、ステップS105へ戻る。一方、レリーズスイッチ13AがON状態であると判断された場合、ステップS113へ進み、静止画像の撮影動作、記録処理が実行される。すなわち、シャッタ、絞り等の駆動によって被写体像に応じた画像信号がCCD21から読み出されると画像データが生成され、静止画像がLCD17に表示されるとともに記録メイン電源がOFF状態になるまで、ステップS105〜S113が繰り返し実行される。
【0039】
図6は、手ぶれ補正処理を示した割り込みルーチンである。図7は、ハイパスフィルタから出力される電圧の変動過程(状態遷移)を示した図である。手ぶれ補正処理は、図5の撮影動作処理に対して1ミリ秒[mS]間隔で割り込んで処理される。
【0040】
ステップS201では、カメラ10のヨーイングに対する角速度がジャイロセンサ20Aからの出力電圧に基づいて検出される。ステップS202では、スリープ設定変数INが1であるか否かが判断される。スリープ設定変数INは、ジャイロセンサ20Aがスリープモードの設定状態を示す変数であり、スリープ設定変数IN=1の時にはスリープON設定、スリープ設定変数IN=0のときにはスリープOFF設定であることを表す。
【0041】
ステップS202においてスリープ設定変数IN=1であると判断された場合、ステップS204へ進む。一方、スリープ設定変数IN=0であると判断された場合、ステップS203へ進む。ステップS203では、システムコントロール回路25へ入力される角速度の電圧に基づき、ハイパスフィルタ22Aから出力される電圧Vs(B点)の値が、所定電圧値AAより大きいか否かが判断される。
【0042】
図7のタイミングチャートでは、カメラ10に外部から衝撃が加えられたときジャイロセンサ20Aから出力される電圧V0と基準電圧Vrefとの差を図示するとともに、ハイパスフィルタ22Aから出力される電圧Vsを時間の経過とともに示している。スリープモードが常時OFFに設定されている(ジャイロセンサ20Aの角速度検出に必要な要素に電源が供給される)状態で外部から衝撃が加えられた場合、ジャイロセンサ20Aから出力される電圧を「V0’」で表すと、電圧V0’と基準電圧Vrefとの電圧差は図7の破線で示すように、大きく振幅しながら変動する。ここでは、撮影時にカメラ10が外部の物体から瞬間的に受ける力の作用を、外部の衝撃とする。
【0043】
また、ハイパスフィルタ22Aのコンデンサ51に起因して、ハイパスフィルタ22Aからの出力電圧は、徐々に上昇しながら一定になるまで過度状態が続く。そのため、スリープモードが常時OFFに設定されている状態でのハイパスフィルタ22Aから出力される電圧を「Vs’」で表すと、電圧Vs’は、衝撃を受けた直後に大きく振幅しながら変動し、その後、コンデンサ51の誘電吸収によって振幅しながら減衰する。図7では、電圧Vs’を破線で示している。
【0044】
一方、本実施形態では、外部からの衝撃が加えられたことを検知すると、スリープモードがONに設定され、これによりジャイロセンサ20Aからの出力電圧V0は、上述したように基準電圧Vrefと一致する。したがって、図4のB点におけるハイパスフィルタ22Aの出力電圧が衝撃後に安定化するまでの経過時間は、スリープモードがONに設定された時点から開始される。電圧Vsは、時定数τに従う経過時間(以下、退避時間という)TTが経過すると、手ぶれによるカメラ10の角速度を正確に反映した値になる。
【0045】
ここで、外部からの衝撃を受けてスリープモードがONに設定された直後から手ぶれを正確に検出できるまでの退避時間TTを求めると、ハイパスフィルタ22Aから出力される電圧Vsは、以下の式で表される。ただし、ハイパスフィルタの時定数をτで表す。

s=Vref(1−e(-t/τ)) ・・・(1)

t→∞になれなければVs=Vrefにならないことから、電圧Vsが実質的に基準電圧Vrefに等しいとみなせる値になるまでの経過時間を求める。ここでは、電圧Vsが基準電圧Vrefの90%に達するまでの時間を退避時間TTとする。
【0046】
s/Vref=0.1であることから、(1)式より以下の式が導かれる。

t=τ×ln(0.1)=τ×2.3 ・・・(2)

したがって、経過時間TTは以下の式を満たす値に定められる。

TT≧τ×2.3 ・・・(3)

なお、この退避時間TTは、電源投入直後からジャイロセンサ20Aの出力が安定するまでの時間としても利用できるので、本実施形態においては、前述のステップS102における所定時間TIも退避時間TTと同じ時間としている。
【0047】
外部から衝撃をうけた時、カメラ10のぶれ量は、手ぶれによるぶれ量(〜20Hzまで)に比べて高周波数であり、かつ振幅の大きいものになる。ぶれ量はカメラ10の変位角度に相当することから、角速度が急激に大きくなった時外部から衝撃があったものとみなせる。図6のステップS203では、電圧V0の大きさが所定電圧値AAを超えたとき外部から衝撃があったものと判断する。ここでの所定電圧値AAは、手ぶれによって検出される電圧値の範囲における略最大電圧値に定められている。
【0048】
ステップS203において、電圧V0の大きさが所定電圧AAを超えていると判断された場合、ステップS207へ進み、退避時間TTのカウントが開始される。そして、ステップS208では、スリープモードがONに設定され、スリープ設定変数INが1に設定される。ステップS208が実行されると、ステップS209へ進む。
【0049】
一方、ステップS203において、電圧V0が所定電圧AA以下であると判断された場合、ステップS204へ進む。ステップS204では、退避時間TTが経過したか否かが判断される。ステップS204において退避時間TTが経過していないと判断されると、ステップS206へ進み、退避時間TTがカウントされる。ここでは、1ミリ秒[mS]ずつ退避時間TTが減算される。
【0050】
一方、ステップS204において、退避時間TTが経過していると判断された場合、ステップS205へ進む。ステップS205では、ジャイロセンサ20AがスリープOFFに設定されるとともに、スリープ設定変数INが0に設定される。ステップS205が実行されると、ステップS209へ進む。
【0051】
ステップS209では、磁気センサ34Aから送られてくる検出信号に基づき、CCD21の中心位置からのX方向に沿った相対的位置が検出される。ただし、ここではCCD21の中心が光軸Eにあるときの位置を中心位置と定める。
【0052】
ステップS210では、手ぶれ補正変数IS=1であるか、すなわち手ぶれ補正モードが設定されているか否かが判断される。手ぶれ補正変数IS=0である、すなわち手ぶれ補正モードが設定されていないと判断されると、ステップS212へ進み、CCD21の位置が中心位置に定められる。一方、手ぶれ補正変数IS=1であると判断された場合、ステップS211へ進む。ステップS211では、検出された角速度に基づき、カメラ10の姿勢変化角度が検出される。そして、焦点距離等の特性に従う変換係数を利用して、移動させるべきCCD21の位置(設定位置)が演算される。なお、手ぶれ補正機構による制御系は、手ぶれ量の値「0」が続くと自動的にCCD21の位置が中心位置へ戻るように、応答特性が定められている。従来知られているように、PID制御ブロックとカメラ10の手ぶれによる変動量(角度)算出ブロックとの間に所定の時定数によるループを入れ、安定化を図っている。
【0053】
ステップS213では、演算されたCCD21の設定位置と磁気センサ34Aにより検出される今現在のCCD21の位置とに基づき、移動ステージ33の操作量が演算される。そして、ステップS214では、演算された操作量に基づき、移動ステージ33がステージ駆動回路38からの駆動信号によって所定距離だけ移動する。ここではPID制御がフィードバック制御として実行される。
【0054】
なお、図6ではヨーイングに対する手ぶれ補正処理ルーチンを示すが、同様の手ぶれ補正処理がピッチングに対しても実行される。
【0055】
以上のように本実施形態によれば、ジャイロセンサ20A、20B、ハイパスフィルタ24A、24Bがカメラ10に設けられており、ジャイロセンサ20A、20Bはスリープモード機能を備える。外部から衝撃が加えられた場合、ジャイロセンサ20A、20BはスリープモードONに設定され、基準電圧Vrefと同じ電圧V0がハイパスフィルタ22A、22Bへジャイロセンサ20A、20Bから出力される。そして、退避時間TTが経過すると、自動的にジャイロセンサ20A、20BがスリープモードOFFに設定される。ハイパスフィルタ22A、22B安定化までの過度状態が経過しているため、衝撃が加えられた後、すぐにぶれ量を正確に検出し、手ぶれ補正を精度よく行うことができる。
【0056】
ジャイロセンサ20A、20Bは、圧電型振動体のジャイロセンサなどの角速度センサであってもよい。ステップS203では、システムコントロール回路25へ入力される電圧が所定電圧を超えているか否か判断してもよい。また、ハイパスフィルタを用いなくてもよく、衝撃退避時間は角速度センサの特性に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態であるカメラの概略的斜視図である。
【図2】カメラの正面図である。
【図3】カメラのブロック図である。
【図4】ジャイロセンサ、ハイパスフィルタ、アンプの等価回路を示した図である。
【図5】カメラの撮影動作処理を示したフローチャートである。
【図6】手ぶれ補正処理を示した割り込みルーチンである。
【図7】ハイパスフィルタから出力される電圧の変動過程(状態遷移)を示した図である。
【符号の説明】
【0058】
10 カメラ
20 手ぶれ検出部
20A、20B ジャイロセンサ(角速度センサ)
21 CCD
22A、22B ハイパスフィルタ
25 システムコントロール回路
33 移動ステージ
AA 所定電圧値
0 出力電圧
ref 基準電圧
TT 退避時間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手ぶれによる角速度に応じた角速度信号を出力し、動作停止状態に切替可能な角速度センサと、
角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれを検出する検出手段と、
前記角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する制御手段と、
外部からの衝撃を検知する外部衝撃検知手段とを備え、
前記角速度信号の電圧値が、前記角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、
前記制御手段が、外部から衝撃が加えられた場合、前記角速度センサを動作停止状態にし、前記角速度センサからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの衝撃退避時間経過後、前記角速度センサを動作させることを特徴とする手ぶれ検出装置。
【請求項2】
前記角速度センサが、スリープモード実行可能なように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の手ぶれ検出装置。
【請求項3】
前記角速度センサが、水晶の結晶による振動ジャイロセンサであることを特徴とする請求項1に記載の手ぶれ検出装置。
【請求項4】
前記角速度センサからの角速度信号に対してDC成分を除去するハイパスフィルタをさらに有し、
前記衝撃退避時間が、以下の式によって定められることを特徴とする請求項1に記載の手ぶれ検出装置。

TT≧τ×2.3

ただし、τは前記ハイパスフィルタの時定数、TTは外部衝撃が加えられてからの衝撃退避時間を示す。
【請求項5】
前記外部衝撃検出手段が、角速度信号の電圧値が手ぶれにより出力される手ぶれ電圧範囲を超えた電圧値である場合、外部からの衝撃を検知することを特徴とする請求項1に記載の手ぶれ検出装置。
【請求項6】
動作停止状態に切替可能な角速度センサから出力される、手ぶれによる角速度に応じた角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれを検出し、
前記角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する方法であって、
前記角速度信号の電圧値が、前記角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、
外部から衝撃が加えられた場合、前記角速度センサを動作停止状態にし、前記角速度センサからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの衝撃退避時間経過後、前記角速度センサを動作させることを特徴とする手ぶれ検出方法。
【請求項7】
動作停止状態に切替可能な角速度センサから出力される、手ぶれによる角速度に応じた角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれを検出する検出手段と、
前記角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する制御手段とを機能させるプログラムであって、
前記角速度信号の電圧値が、前記角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、
外部から衝撃が加えられた場合、前記角速度センサを動作停止状態にし、前記角速度センサからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの衝撃退避時間経過後、前記角速度センサを動作させるように、前記制御手段を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
撮影光学系と、
前記撮影光学系によって形成される被写体像を記録する記録手段と、
手ぶれによる角速度に応じた角速度信号を出力し、動作停止状態に切替可能な角速度センサと、
角速度信号の電圧値と基準電圧値とに基づいて手ぶれによる変位量を検出する検出手段と、
前記角速度センサを動作させる動作信号および動作停止状態にさせる動作停止信号を選択的に出力する制御手段と、
前記手ぶれによる変位量に基づいて、前記撮影光学系による結像エリアを像ぶれが生じないように調整する手ぶれ補正手段とを備え、
前記角速度信号の電圧値が、前記角速度センサの動作停止状態において、基準電圧値と同じになり、
前記制御手段が、外部から衝撃が加えられた場合、前記角速度センサを動作停止状態にし、前記ハイパスフィルタからの出力信号に対して衝撃の影響が除去されるまでの衝撃退避時間経過後、前記角速度センサを動作させることを特徴とする撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段が、手ぶれ補正実行のため電源投入されると前記角速度センサを動作停止状態にし、前記衝撃退避時間に相当する所定時間経過後、前記角速度センサを動作させることを特徴とする請求項1に記載の手ぶれ検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−325074(P2006−325074A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147890(P2005−147890)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】