説明

手ぶれ補正機能付きカメラ

【課題】 カメラの使用状況に関らず、常に適切な手ぶれ補正を行う。
【解決手段】 ジャイロメータおよび手ぶれ補正機構をカメラ内部に設け、姿勢センサ、パラメータ調整ボタンを設ける。カメラの累積的手ぶれ補正実行時間が所定時間T1を超えた場合、パラメータ調整ボタンの押下に従い、限界感度法によって制御パラメータを調整する。このとき、姿勢センサ、ジャイロメータからの出力信号に基づいてカメラが撮影姿勢であることをモニタリングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手ぶれ補正機能を備えたカメラに関し、特に、制御系において定められるパラメータの設定、調整に関する。
【背景技術】
【0002】
手ぶれ補正機能を備えたカメラでは、手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出するため、角速度センサが設けられ、あるいは映像信号から動きベクトルが検出される。そして、像ブレを防ぐため、手ぶれによるカメラの動きを相殺するようにプリズムなどの光学レンズが駆動される。これにより、像ブレの生じない画像を得ることができる(特許文献1参照)。
【0003】
手ぶれ補正の制御に関しては、例えば汎用的なフィードバック制御であるPID制御が適用される。PID制御では、比例ゲイン、積分時間、微分時間といった制御パラメータが制御系の特性に従って調整され、例えば限界感度法によってパラメータ値が定められる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−199449号公報
【特許文献2】特開平9−34503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラを長い間使用すると、手ぶれ補正機構における磨耗などにより、応答特性といった制御系の特性が変化する。しかしながら、制御パラメータはあらかじめ製造時の制御系の特性に従って定められているため、長年の使用によって制御誤差が生じ、像ブレが防止できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカメラは、光学的補正により像ブレを防ぐ手ぶれ補正機構を備えたカメラであり、手ぶれ補正機構の経時的変化などに関らず、常に適切な手ぶれ補正を実行可能なカメラである。本発明のカメラは、手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出し、手ぶれ検出信号を出力する手ぶれ検出手段と、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構とを備える。例えば手ブレ検出手段は角速度を検出するジャイロメータによって構成すればよい。また、手ぶれ補正機構は、撮影光学系中に手ぶれ補正用レンズを設け、手ぶれを相殺する方向へレンズを相対的にシフトさせる構成にすればよい。あるいは、手ぶれを相殺する方向へ撮像素子を相対的にシフトさせる構成にしてもよい。
【0006】
さらに本発明のカメラは、手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御する制御手段と、制御パラメータを、手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に従って定めるパラメータ調整手段とを備える。制御系の特性は、手ぶれ補正機構の特性などにより、その応答特性、安定性などが異なる。そして、制御パラメータは、その制御系の特性に従って定められる。制御手段は、例えばPID制御を実行する。この場合、制御パラメータは比例ゲイン、積分時間、微分時間となる。PID制御の場合、パラメータ調整手段は、限界感度法によって制御パラメータを定めればよい。
【0007】
本発明のカメラでは、パラメータ調整手段が、カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき制御パラメータを定める。カメラの姿勢が変化していないのに関らず、手ぶれに応じた入力要素が制御系に入力されたものと仮定し、手ぶれ補正機構に操作量を与える。そして、手ぶれ補正機構から出力される制御量と入力要素との偏差に基づきフィードバック制御を実行する過程で、制御パラメータの値を変えていく。その中で、フィードバック制御系の特性、すなわち速応性、定常偏差、減衰特性を最も高める制御パラメータが定められる。例えば、PID制御において限界感度法により制御パラメータを定める場合、手ぶれ検出信号に相当するステップが入力されたものと仮定し、制御パラメータの積分時間、微分時間を一定にしたまま比例ゲインを変えていく。そして、持続振動が生じたときの比例ゲインおよび振動周期に基づいて制御パラメータを定めればよい。
【0008】
ここで、カメラの「撮影姿勢」は、手ぶれによる姿勢変化が生じておらず、かつカメラが水平姿勢のまま静止した状態を表し、撮影時において本来決められるべきカメラの姿勢を示す。すなわち、カメラの光軸(カメラ筐体の底面、上面)が水平方向に実質的に平行であって、静止した状態にあるカメラ姿勢を意味する。例えば、手ぶれ補正機構におけるレンズあるいは撮像素子を相対的シフトさせる方向が、撮影光学系の光軸に垂直な平面にあって互いに直交した2方向である場合、カメラが上記撮影姿勢の場合、2方向は水平方向、鉛直方向となる。手ぶれ補正機構あるいはカメラの自重により、制御系の応答特性はカメラ姿勢の違い(傾いた姿勢等)によって変わる。本発明では、撮影時に撮影者が決めようとするカメラの本来的姿勢(製造時における制御パラメータを設定するときの姿勢と同じ)により、制御パラメータが定められる。そのため、手ぶれ検出手段および手ぶれ補正機構の動作する状況に合った制御パラメータが得られ、適切なフィードバック制御によって手ぶれ補正が実行される。
【0009】
カメラの撮影姿勢は撮影者が判断してもよいが、より適切にカメラの姿勢を判断するため、カメラが撮影姿勢であるか否かを検出するカメラ姿勢検出手段を設けるのがよい。内部構成を複雑化させないため、カメラの手ぶれ検出手段を利用して撮影姿勢を検出するのがよい。例えば、カメラが水平姿勢であるか否かを検知し、水平姿勢検出信号を出力する水平姿勢検知手段を設け、手ぶれ検出手段による手ぶれ検出信号と水平姿勢検出信号とに基づいてカメラの撮影姿勢を検出するのがよい。水平姿勢検知手段は、例えばジャイロメータで構成される。
【0010】
制御パラメータの調整中にカメラの姿勢が崩れると、適正な制御パラメータを求められない恐れがある。そのため、制御パラメータの調整中、カメラが撮影姿勢から外れたか否かを検出するカメラ姿勢監視手段を設け、カメラが撮影姿勢から外れた場合、強制的に制御パラメータの調整を中止する強制中止手段を設けるのが好ましい。
【0011】
制御パラメータの調整は、撮影者の意思によって実行開始してもよく、あるいは自動的に制御パラメータの調整を行ってもよい。撮影者の判断によって実行される場合、制御パラメータの調整を開始させるパラメータ調整ボタンを設ける。
【0012】
制御パラメータの調整は、手ぶれ補正機構の経時的変化に合わせて行う必要性があることから、手ぶれ補正を利用した累積的時間や使用回数などに基づいて制御パラメータの調整を実行するのがよい。例えば、カメラの累積的手ぶれ補正実行時間が、制御パラメータの調整を必要としない許容限度時間を超えているか否かを検出する実行時間監視手段を備えるのが好ましい。撮影者がパラメータ調整を実行開始させる場合、カメラの使用時間が許容限度時間を過ぎている場合、制御パラメータの調整の必要性を報知する報知手段を設ける。一方、自動的に制御パラメータの調整を行う場合、パラメータ調整手段が、カメラの使用時間が許容限度時間を超えていれば制御パラメータを調整するのがよい。
【0013】
本発明のカメラの手ぶれ補正制御装置は、手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出する手ぶれ検出手段により得られる手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御する制御手段と、制御パラメータを、手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整手段とを備え、パラメータ調整手段が、カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき制御パラメータを定めることを特徴とする。ただし、撮影機能付き携帯電話、携帯端末などの携帯機器もここではカメラに含まれるものとする。
【0014】
本発明のカメラの手ぶれ補正制御方法は、手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出する手ぶれ検出手段により得られる手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御し、制御パラメータを、手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整する方法であって、カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき制御パラメータを定めることを特徴とする。
【0015】
本発明のカメラの手ぶれ補正制御プログラムは、手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出する手ぶれ検出手段により得られる手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御する制御手段と、制御パラメータを、手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整手段とを機能させ、カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき制御パラメータを定めるように、パラメータ調整手段を機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、カメラの使用経過に関らず、適切な手ぶれ補正を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態である手ぶれ補正機能付きカメラについて説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態であるデジタルカメラの概略的斜視図である。図2は、姿勢センサを模式的に示した図である。図3は、手ぶれ補正機構の模式図である。
【0019】
カメラ10は、手ぶれ補正機能を備えたデジタルカメラであり、レンズ鏡筒11の後方には、図3に示す手ぶれ補正機構26が設けられている。カメラ上面10Uには、レリーズボタン13、手ぶれ補正ボタン16、パラメータ調整ボタン18が設けられている。
【0020】
カメラ内部には、手ぶれを検出するためのジャイロメータ20A、20Bが設けられており、ジャイロメータ20A、20Bは、それぞれカメラがピッチング、ヨーイングするときの角速度を検出する。ただし、カメラ10の光軸E周りの動き、すなわち図1、図3に示すX−Y平面上での動きをヨーイング、光軸Eの垂直方向周りの動き、すなわちX−Y平面に垂直な方向とY方向とを含む平面上での動きをピッチングとする。
【0021】
また、カメラ10の姿勢を検知する姿勢センサ17がカメラ内部に設けられており、カメラの静止状態における姿勢を検出する。図2に示すように、姿勢センサ17は、内部が空洞の半球型ジャイロメータであり、断面曲線が放物線状になるように形成されている。姿勢センサ17は、頂部がカメラ10の底面方向を向いた容器21と、容器21の内部で自在に移動可能な球体23と、容器21の底部を支持する姿勢スイッチ22とを備え、球体23は容器21内部に密閉されている。
【0022】
カメラ10が水平姿勢、すなわちカメラ10の光軸Eおよびカメラ底面10Sが水平面に実質的に平行である姿勢を維持している状態では、球体23は容器21の頂部に位置し、姿勢スイッチ22はON状態となる。カメラ10が水平姿勢から傾くと、球体22が破線で示すように容器21の頂部から移動し、姿勢スイッチ22はOFFに切り替わる。
【0023】
手ぶれ補正機構26は、図3に示すように、CCD40が中央付近に取付けられた矩形状の移動ステージ26Aと、レンズ鏡筒11内部を通った光を通す開口部APが形成され、移動ステージ26Aに近接した状態で対向する矩形状の固定ステージ26Bと、移動ステージ26Aおよび固定ステージ26Bとを支持する支持体(図示せず)とを備える。移動ステージ26Aは、モータ(図示せず)の駆動により、光軸Eに垂直な平面上にあって互いに垂直なX方向、Y方向に沿って移動可能である。カメラ10が水平姿勢状態の場合、X方向は水平面に沿った方向、Y方向は鉛直方向に沿った方向になる。ジャイロメータ20A、20Bによってピッチング、ヨーイングに対応する角速度が検出されると、手ぶれによる像ブレを相殺(補償)するように移動ステージ26Aが移動する。固定ステージ26Bの開口部APのサイズは、CCD40の移動範囲に従って定められている。
【0024】
移動ステージ26AのCCD40の周りには、X方向、Y方向に沿ってホール素子などの磁気センサ27A、27Bが配置されている。一方、固定ステージ26Bには、磁気センサ27A、27Bに対向するように磁石24A、24BがX方向、Y方向に沿って配置されている。手ぶれが検知されて移動ステージ26Aが移動すると、磁気センサ27A、27Bは、磁石24A、24Bに対する相対的位置の変化に応じて磁界変化を検知し、それぞれ移動ステージ26AのX方向、Y方向の移動量を検出する。
【0025】
図4は、カメラ10のブロック図である。
【0026】
CPUを含むシステムコントロール回路50はカメラ10を制御し、カメラ全体の処理動作を実行するプログラムがROM51に格納されている。レリーズ全押スイッチ13B、レリーズ半押しスイッチ13A、パラメータ調整スイッチ18A、メインスイッチ15Aなどの回路がシステムコントロール回路50に接続されており、メインボタン(図示せず)に対する操作によって電源がONになると、メインスイッチ15AがONになり、各回路へ電源が供給される。
【0027】
撮影モードが設定されている場合、動画像を表示するための処理動作が実行される。撮影光学系15を通った光がシャッタ28を介してCCD40に到達すると、被写体像がCCD40に受光面に形成される。CCD40では、光電変換により被写体像に応じたアナログ画像信号が発生し、CCD駆動回路52によってCCD40から画像信号が所定時間間隔で順次読み出される。CCD40から読み出されたアナログ画像信号は、アンプ回路42において増幅され、A/D変換器44においてデジタル信号に変換される。
【0028】
画像処理回路46では、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理など様々な処理がデジタル画像信号に対して施される。処理された画像信号は一時的にフレームメモリ(図示せず)に格納され、LCDドライバ47へ送られる。LCDドライバ47は、画像信号に基づいて液晶表示部30を駆動する。その結果、カメラ背面に設けられた液晶表示部30に被写体像が動画像として表示される。
【0029】
レリーズボタン13が半押しされると、レリーズボタン半押スイッチ13Aによって半押しが検出され、被写体の明るさ、被写体との距離が露出検出器63などにおいて検出されるとともに、焦点調整のため、撮影光学系15内のフォーカシングレンズ(図示せず)がレンズ駆動回路64によって駆動される。シャッタ28の動作および撮影光学系15におけるレンズ駆動は、露出制御回路58によって制御されている。
【0030】
レリーズボタン13が全押しされると、撮影動作が実行される。すなわち、シャッタ28が所定の開度で所定期間開き、被写体像がCCD40に形成されると、被写体像に応じた1フレーム分の画像信号がCCD40から読み出される。読み出された画像信号は、アンプ回路42、A/D変換器44、画像処理回路46において処理され、一時的にフレームメモリに格納される。フレームメモリから読み出された画像信号は、画像処理回路46、システムコントロール回路50を介して記録制御回路62へ送られる。記録制御回路62では、画像信号に対して圧縮処理が施され、圧縮画像データがメモリカード60に記憶される。
【0031】
手ぶれ補正ボタン16が押下されると、手ぶれ補正スイッチ16AがON状態となり、手ぶれ補正を実行させる操作信号がシステムコントロール回路50において検出される。システムコントロール回路50は、手ぶれ補正処理を実行するため、手ぶれ補正機構26を駆動可能にする。手ぶれ補正ボタン16が再び押下されて手ぶれ補正スイッチ16AがOFF状態になると、手ぶれ補正スイッチ16AがON状態であった時間がメモリ50Rに格納される。手ぶれ補正スイッチ16AがON状態であった時間は蓄積され、手ぶれ補正の累積的実行時間がメモリ50Rに格納される。パラメータ調整ボタン18が押下されると、パラメータ調整スイッチ18AがON状態となり、後述する制御パラメータの調整処理が実行される。
【0032】
図5は、制御系のブロック線図である。
【0033】
制御器A1、制御パラメータ変更部A4は、システムコントロール回路50によって構成されており、制御対象A2は手ぶれ補正機構26によって構成され、検出部A3は磁気センサ27A、27Bによって構成される。手ぶれによってジャイロメータ20A、20Bから角速度に応じた信号が出力されると、その検出信号に基づいて目標信号が制御器A1に入力され、制御器A1は操作量として駆動信号を制御対象A2へ出力する。手ぶれ補正機構26の移動ステージ26Aが移動することによって磁気センサ27A、27Bから移動量に応じた信号が出力されると、その信号が制御量として検出部A3に入力し、観測信号として制御系にフィードバックされる。そして、偏差に基づいて制御器A1は制御対象A2をフィードバック制御する。
【0034】
制御器A1はPID制御器であり、P(比例)動作、I(積分)動作、D(微分)動作を組み合わせて制御を実行する。制御パラメータである比例ゲインKP、積分時間TI、微分時間TDは、あらかじめ製造時に限界感度法によって所定値に定められている。すなわち、制御器A1にステップが入力されたものと仮定し、積分時間TI、微分時間TDを固定しながら(TI→∞、TD→0)比例動作させ、比例ゲインKPを増大させていく。そして、持続振動が生じたときの比例ゲインKPCとその振動周期TCを定め、この比例ゲインKPCと振動周期TCから最適な比例ゲインKP、積分時間TI、微分時間TDの値を定める。
【0035】
一方、カメラ10の使用中にパラメータ調整ボタン18が押下された場合、手ぶれに応じたステップの信号が入力されたものとみなされ、制御器A1が操作量を出力する。このステップ入力に従って限界感度法による制御パラメータの調整が実行され、制御パラメータ(比例ゲインKP、積分時間TI、微分時間TD)の値が定められる。
【0036】
図6は、制御パラメータの調整処理を示したフローチャートである。この調整処理は、手ぶれ補正ボタン16による手ぶれ補正モードの状態、あるいはカメラの電源投入状態のいて、定期的に実行される。
【0037】
ステップS101では、手ぶれ補正スイッチ16Aの累積的なON時間、すなわちカメラを使用してから今までの手ぶれ補正の実行時間が所定時間T1を超えているか否かが判断される。ここでの所定時間T1は、手ぶれ補正機構26の機械的な経時変化(磨耗など)により制御パラメータの調整が必要となる時間を示す。手ぶれ補正の累積的実行時間が所定時間T1を超えていないと判断されると、ステップS101が繰り返し実行される。一方、手ぶれ補正の累積的実行時間が所定時間T1を超えていると判断されると、ステップS102へ進む。
【0038】
ステップS102では、姿勢センサ17がON状態であってジャイロメータ20A、20Bからの出力が0であるか、すなわち手ぶれが生じておらず、撮影時において撮影者が採ろうとするカメラの撮影姿勢を維持しているか否かが判断される。ここでは、カメラに手ぶれが生じておらず、光軸Eが水平方向となるようにカメラ10が水平姿勢で静止した状態をカメラの撮影姿勢と定める。
【0039】
ステップS102において、姿勢センサ17がOFF状態、あるいはジャイロメータ20A、20Bからの出力が0ではないと判断されると、繰り返しステップS102が実行される。一方、姿勢センサ17がON状態であってジャイロメータ20A、20Bからの出力が0であると判断された場合、ステップS103へ進み、制御パラメータの調整が必要であることをユーザに伝える文字情報(例えば、「パラメータ調整必要あり」など)が液晶表示部30に表示される。ステップS103が実行されると、ステップS104へ進む。
【0040】
ステップS104では、パラメータ調整スイッチ18AがON状態であるか、すなわちパラメータ調整ボタン18がユーザによって押下されたか否かが判断される。パラメータ調整スイッチ18AがON状態ではないと判断された場合、ステップS104が繰り返し実行される。一方、パラメータ調整スイッチ18AがON状態であると判断された場合、ステップS105へ進む。
【0041】
ステップS105では、手ぶれ補正機構26を含む制御系の今現在の応答特性に適した制御パラメータ(比例ゲインKP、積分時間TI、微分時間TD)の値を得るため、手ぶれに応じたステップ(入力要素)があったものと仮定して手ブレ補正機構26を駆動させ、限界感度法による制御パラメータ調整が実行される。そして、ステップS106では、制御パラメータをユーザに知らせる文字情報が液晶表示部30に表示される。
【0042】
ステップS107では、姿勢センサ17がOFF状態あるいはジャイロメータ20A、20Bからの出力が0でない、すなわち、手ぶれなどによりカメラ10が撮影姿勢から外れているか否かが判断される。ステップS107において、姿勢センサ17がOFF状態あるいはジャイロメータ20A、20Bからの出力が0でないと判断された場合、ステップS108へ進み、限界感度法による制御パラメータの調整が強制的に中止され、強制的中止を伝える文字情報が液晶表示部30に表示される。ステップS108が実行されると、ステップS102へ戻る。一方、姿勢センサ17がON状態あるいはジャイロメータ20A、20Bからの出力が0であると判断された場合、ステップS109へ進む。
【0043】
ステップS109では、制御パラメータの調整が終了したか否か、すなわち手ぶれ補正機構26Aが持続振動状態となって最適な制御パラメータが(比例ゲインKP、積分時間TI、微分時間TD)が求められたか否かが判断される。制御パラメータの調整が終了していないと判断された場合、ステップS107へ戻る。一方、制御パラメータの調整が終了したと判断された場合、パラメータの調整処理は終了する。
【0044】
このように本実施形態によれば、ジャイロメータ20A、20Bおよび手ぶれ補正機構26がカメラ10内部に設けられるとともに、姿勢センサ17、パラメータ調整ボタン18が設けられる。カメラの累積的手ぶれ補正実行時間が所定時間T1を超えた場合、パラメータ調整ボタン18が押下されると、限界感度法によって制御パラメータが調整される。このとき、姿勢センサ17、ジャイロメータ20A、20Bからの出力信号に基づいてカメラ10が撮影姿勢で維持されていることが監視される。
【0045】
次に、図7を用いて、第2の実施形態であるデジタルカメラについて説明する。第2の実施形態では、累積的手ぶれ補正実行時間が所定時間を超えると、自動的に制御パラメータが調整される。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0046】
図7は、第2の実施形態における制御パラメータの調整処理を示したフローチャートである。
【0047】
ステップS201、S202の実行は、図6のステップS101、S102の実行と同じである。すなわち、手ぶれ補正の累積的実行時間が所定時間T1を超えているか否かが判断され、所定時間T1を超えている場合にはカメラ10が撮影姿勢で維持されているか否かが判断される。
【0048】
ステップS203、S204の実行は、図6のステップS104、S105の実行と同じである。すなわち、制御パラメータの調整が必要である場合、限界感度法によって現在の手ぶれ補正機構26の応答特性に適した制御パラメータが自動的に設定される。ステップS205〜S207の実行は、図6のステップS107〜S109の実行と同じであり、制御パラメータが定められると制御パラメータの調整は終了する。
【0049】
手ぶれ補正機構としては、プリズムなどの手ぶれ補正用レンズを設け、手ぶれに合わせてレンズをシフトさせる構成にしてもよい。また、制御動作をPID制御以外の制御方法で実現させてもよく、その制御方法に従った制御パラメータを調整すればよい。手ぶれ補正の累積的実行時間によって制御パラメータの調整時期を判断する代わりに、手ぶれ補正の使用回数(手ぶれ補正スイッチ16AがONされた回数)など他の使用条件に従って判断してもよい。また、カメラの撮影姿勢については撮影者が判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態であるデジタルカメラの概略的斜視図である。
【図2】姿勢センサを模式的に示した図である。
【図3】手ぶれ補正機構の模式図である。
【図4】カメラのブロック図である。
【図5】制御系のブロック線図である。
【図6】制御パラメータの調整処理を示したフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における制御パラメータの調整処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 カメラ
15 撮影光学系
17 姿勢センサ
18 パラメータ調整ボタン
20A ジャイロメータ
20B ジャイロメータ
26 手ぶれ補正機構
50 システムコントロール回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系と、
手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出し、手ぶれ検出信号を出力する手ぶれ検出手段と、
手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、前記撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構と、
前記手ぶれ検出信号に基づき、前記手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御する制御手段と、
前記制御パラメータを、前記手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整手段とを備え、
前記パラメータ調整手段が、カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき前記制御パラメータを定めることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
カメラが撮影姿勢であるか否かを検出するカメラ姿勢検出手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記カメラ姿勢検出手段が、カメラが水平姿勢であるか否かを検知し、水平姿勢検出信号を出力する水平姿勢検知手段を有し、前記手ぶれ検出手段による手ぶれ検出信号と前記水平姿勢検出信号とに基づいてカメラの撮影姿勢を検出することを特徴とする請求項2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記水平姿勢検知手段が、ジャイロメータを有することを特徴とする請求項3に記載のカメラ。
【請求項5】
前記制御パラメータの調整中、カメラが撮影姿勢から外れたか否かを検出するカメラ姿勢監視手段と、
カメラが撮影姿勢から外れた場合、強制的に制御パラメータの調整を中止する強制中止手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項6】
前記制御パラメータの調整を開始させるパラメータ調整ボタンをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項7】
カメラの累積的手ぶれ補正実行時間が、制御パラメータの調整を必要としない許容限度時間を超えているか否かを検出する実行時間監視手段と、
前記カメラの累積的手ぶれ補正実行時間が前記許容限度時間を過ぎている場合、前記制御パラメータの調整の必要性を報知する報知手段と
をさらに有することを請求項6に記載のカメラ。
【請求項8】
カメラの累積的手ぶれ補正実行時間が、制御パラメータの調整を必要としない許容限度時間を超えているか否かを検出する実行時間監視手段をさらに有し、
前記パラメータ調整手段が、カメラの使用時間が許容時間を過ぎている場合、制御パラメータを定めることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項9】
前記制御手段がPID制御を実行し、
前記パラメータ調整手段が、限界感度法によって前記制御パラメータを定めることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項10】
手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出する手ぶれ検出手段により得られる手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御する制御手段と、
前記制御パラメータを、前記手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整手段とを備え、
前記パラメータ調整手段が、カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき前記制御パラメータを定めることを特徴とするカメラの手ぶれ補正制御装置。
【請求項11】
手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出する手ぶれ検出手段により得られる手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御し、
前記制御パラメータを、前記手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整する方法であって、
カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき前記制御パラメータを定めることを特徴とするカメラの手ぶれ補正制御方法。
【請求項12】
手ぶれによるカメラの姿勢変化を検出する手ぶれ検出手段により得られる手ぶれ検出信号に基づき、手ぶれによって生じる像ブレを防止するように、撮影光学系により得られる被写体像の結像エリアを調整する手ぶれ補正機構を制御パラメータに従ってフィードバック制御する制御手段と、
前記制御パラメータを、前記手ぶれ補正機構を含む制御系の特性に合わせて定めるパラメータ調整手段とを機能させ、
カメラの撮影姿勢が維持された状態において、手ぶれ検出信号に相当する仮定入力要素に基づき前記制御パラメータを定めるように、前記パラメータ調整手段を機能させることを特徴とするカメラの手ぶれ補正制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−293131(P2006−293131A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115455(P2005−115455)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】