説明

手動変速機の誤操作防止装置

【課題】高速前進走行中に後進ギヤへの変速操作が行われるのを防止する誤操作防止装置において、誤作動した場合でも誤操作防止機能が失われず、また後進ギヤへの変速操作が不可能にならなくする。
【解決手段】変速ギヤを切り換える前進及び後進フォークシャフト12〜15を選択するセレクトレバー20に設けたリバース規制部材27の先端部27aの移動方向に沿って規制ピン36を摺動可能に設けてリバース規制部材側に向けて付勢し、規制ピンとリバース規制部材の先端部の間に挿入離脱可能に設けたロックアウトレバー30はばね33により挿入側に付勢され、所定車速未満ではアクチュエータ40の前進する作動ロッド40aの先端が当接しばね33に抗して離脱される。所定車速以上では、リバース規制部材の先端部は挿入されたロックアウトレバーに当接してセレクトレバーが後進セレクト位置に移動するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの手動変速機において、高速で前進走行中に後進ギヤへの変速操作が行われることを防止する誤操作防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの手動変速機においては、高速で前進走行中に後進ギヤへの変速操作が行われと激しいギヤ鳴りが生じるという問題がある。このような問題を防止する誤操作防止装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。これは手動のセレクト操作と連動して複数の前進セレクト位置及び後進セレクト位置に対応する複数の前進位置及び後進位置に回動されるセレクトカムと、このセレクトカムに係合される位置とそれから離脱される位置の間で回動可能に支持されてねじりコイルばねにより離脱位置に向けて付勢される規制カムと、この規制カムをねじりコイルばねの付勢力に抗して係合位置に付勢するソレノイドを備えたものである。所定車速以上ではソレノイドを励磁し規制カムをねじりコイルばねの付勢力に抗してセレクトカムと係合させることにより、セレクトカムが後進位置に回動するのを禁止して、後進ギヤへの変速操作が行われることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3908484号公報(段落〔0030〕、段落〔0058〕、図5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、規制カムはばねにより常に離脱位置に向けて付勢され、所定車速以上になるとソレノイドを励磁し規制カムをセレクトカムと係合させるようにしているので、ソレノイドに断線などの故障を生じると所定車速以上になっても規制カムはセレクトカムと係合されない。従って所定車速以上では後進ギヤへの変速操作が行われることを防止する機能が失われるという問題がある。これを解決する手段としては、規制カムはばねにより常にセレクトカムと係合する位置に向けて付勢し、所定車速未満ではソレノイドを励磁し規制カムをセレクトカムから離脱される離脱位置としてセレクトカムが後進位置に回動するのを許容し、所定車速以上ではソレノイドを励磁の解除し規制カムをばねによりセレクトカムと係合する位置としセレクトカムが後進位置に回動するのを禁止して、後進ギヤへの変速操作が行われることを防止することが考えられる。しかしながらそのようにすると、ソレノイドに断線などの故障を生じた場合には規制カムはばねによりセレクトカムと係合されたままになるので、車速の如何にかかわらず後進ギヤへの変速操作が不可能になるという新たな問題を生じる。本発明はこのような各問題を同時に解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明による手動変速機の誤操作防止装置は、互いに平行に配置されてそれぞれ前進変速ギヤを切り換える複数の前進フォークシャフト及び後進変速ギヤを切り換える後進フォークシャフトと、手動の変速レバーのセレクト運動と連動して各前進及び後進フォークシャフトの1つを順次選択する各セレクト位置の間で移動されるセレクトレバーと、これらの各部材を支持するケーシングを備え、セレクトレバーにより選択された各フォークシャフトを手動の変速レバーのシフト運動と連動して作動させて前進及び後進ギヤの切り換えを行う自動車などの手動変速機において、セレクトレバーと関連して移動され、セレクトレバーが後進フォークシャフトを選択する後進セレクト位置にあるときはケーシングの内面の一部に最も接近されるとともに、セレクトレバーがそれ以外の各セレクト位置に順次移動されれば内面の一部から順次離隔される先端部を有するリバース規制部材と、ケーシングの内面の一部にこの一部に最も接近した位置付近におけるリバース規制部材の先端部の移動軌跡の接線方向に沿って摺動自在に嵌合されてリバース規制部材の先端部に向けて弾性的に付勢され、自由状態ではその一部がケーシングの一部に当接して停止される規制ピンと、ケーシングに規制ピンと平行な支持ピン回りに回動及び軸線方向摺動自在に支持されてそれから直交する方向に延び、ケーシングとの間に介装されたばねにより支持ピン回りに付勢されたロックアウトレバーを備え、セレクトレバーが後進セレクト位置にない状態では、ばねにより付勢されたロックアウトレバーの先端部分は、リバース規制部材の先端部と自由状態にある規制ピンの先端面の間に少なくとも規制ピン側に接近して挿入されるよう構成され、さらに、ロックアウトレバーの一部に当接離脱可能な作動ロッドを有し、所定車速未満では作動し作動ロッドをロックアウトレバーの一部に当接してばねの付勢力に抗して先端部分をリバース規制部材の先端部と自由状態にある規制ピンの先端面の間から離脱させるアクチュエータを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項1に記載の手動変速機の誤操作防止装置において、各フォークシャフトと平行に配置され変速レバーのセレクト運動及びシフト運動と連動して回転方向にセレクト運動されるとともに軸線方向にシフト運動されるシフトアンドセレクトシャフトをさらに備え、セレクトレバーはシフトアンドセレクトシャフトに固定されて半径方向に突出され、各フォークシャフトは軸線方向にシフト運動されるとともにそれぞれから半径方向に突出された各シフトピースの先端部はシフトアンドセレクトシャフトを中心とする円弧上に位置され、この各シフトピースの先端部に形成されたコ字状の切欠きは各フォークシャフトがシフト方向の中立位置にある状態では円弧上に沿って整列されてセレクト方向に揺動されるセレクトレバーの先端部に選択的に係合可能とし、リバース規制部材はシフトアンドセレクトシャフトに固定されていることが好ましい。
【0007】
請求項2に記載の手動変速機の誤操作防止装置において、セレクトレバーと一体的に形成されて半径方向に延びるシリンダ部と、このシリンダ部の内面に軸線方向摺動自在に嵌合されたピストン部材と、このピストン部材のシリンダ部より突出する先端部にシフトアンドセレクトシャフトと平行な枢支ピンを介して回転自在に支持されたローラと、シフトアンドセレクトシャフトに一端部が回動自在に支持されて半径方向に延び厚さ方向中心面がシリンダ部の中心線とほゞ一致するように配置されるとともにシリンダ部とピストン部材とローラを相対的に揺動自在に収容する開口部が形成されかつケーシングに対しシフトアンドセレクトシャフト方向の移動のみを許容するように係合された板状のカムプレートと、シリンダ部に対しピストン部材を外向きに付勢してローラを開口部のシフトアンドセレクトシャフトと反対側となる部分に形成したカム面に弾性的に押圧するスプリングをさらに備え、カム面はローラの移動範囲の間に位置するセレクト方向の中立位置においてシフトアンドセレクトシャフトの中心からの距離を最大にするとともに中立位置を境界としてその両側における傾斜角を互いに逆向きにし、リバース規制部材はシリンダ部と一体的に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、セレクトレバーと関連して移動され、セレクトレバーが後進フォークシャフトを選択する後進セレクト位置にあるときはケーシングの内面の一部に最も接近されるとともに、セレクトレバーがそれ以外の各セレクト位置に順次移動されれば内面の一部から順次離隔される先端部を有するリバース規制部材と、ケーシングの内面の一部にこの一部に最も接近した位置付近におけるリバース規制部材の先端部の移動軌跡の接線方向に沿って摺動自在に嵌合されてリバース規制部材の先端部に向けて弾性的に付勢され、自由状態ではその一部がケーシングの一部に当接して停止される規制ピンと、ケーシングに規制ピンと平行な支持ピン回りに回動及び軸線方向摺動自在に支持されてそれから直交する方向に延び、ケーシングとの間に介装されたばねにより支持ピン回りに付勢されたロックアウトレバーを備え、セレクトレバーが後進セレクト位置にない状態では、ばねにより付勢されたロックアウトレバーの先端部分は、リバース規制部材の先端部と自由状態にある規制ピンの先端面の間に少なくとも規制ピン側に接近して挿入されるよう構成され、さらに、ロックアウトレバーの一部に当接離脱可能な作動ロッドを有し、所定車速未満では作動し作動ロッドをロックアウトレバーの一部に当接してばねの付勢力に抗して先端部分をリバース規制部材の先端部と自由状態にある規制ピンの先端面の間から離脱させるアクチュエータを備えているので、セレクトレバーが後進セレクト位置にない自動車の前進走行状態で所定車速以上のときは、ばねにより付勢されたロックアウトレバーの先端部分は、リバース規制部材の先端部と自由状態にある規制ピンの先端面の間に少なくとも規制ピン側に接近して挿入され、この状態で変速レバーを後進セレクト位置としてセレクトレバーにより後進フォークシャフトを選択しようとすれば、ロックアウトレバーの先端部分はリバース規制部材の先端部により押されて移動し、弾性的に付勢された規制ピンの先端面に当接されるので変速レバーに生じる操作力は急に増大し、これにより所定車速以上で前進走行中に後進ギヤへの変速操作を行ったという誤操作にすぐに気付いてそれ以上の操作を取りやめることができる。
【0009】
また自動車が前進走行状態で所定車速未満となれば、アクチュエータが作動して作動ロッドによりロックアウトレバーの一部を押圧しばねの付勢力に抗して支持ピン回りに回動させてその先端部分はリバース規制部材の先端部と規制ピンの間から後退される。この状態では変速レバーを後進セレクト位置とすれば、リバース規制部材の先端部は規制ピンに接近するが当接することはないので、セレクトレバーにより容易に後進フォークシャフトを選択でき、次いで変速レバーをシフト方向に操作して後進変速ギヤを形成することができる。
【0010】
アクチュエータの断線などの故障によりその作動ロッドが後退位置で動かなくなった場合には、自動車が前進状態で所定車速未満となっても作動ロッドはセレクトレバーの一部を押圧しないので、ロックアウトレバーの先端部分はリバース規制部材の先端部と規制ピンの間から後退されない。この場合は所定車速以上で変速レバーを操作してセレクトレバーにより後進フォークシャフトを選択しようとした場合と同様、リバース規制部材の先端部がロックアウトレバーの先端部を介して規制ピンの先端面に当接して変速レバーに生じる操作力が急に増大するので、軽い操作力で後進ギヤへの変速操作をすることはできない。しかし変速レバーに加えるセレクト方向の操作力を増大すれば規制ピンの付勢手段が撓んでセレクトレバーが移動され、後進フォークシャフトが選択されるので、力を込めて操作すれば後進ギヤへの変速操作は可能であり、後進ギヤへの変速操作が不可能になることはない。
【0011】
請求項1に記載の手動変速機の誤操作防止装置において、各フォークシャフトと平行に配置され変速レバーのセレクト運動及びシフト運動と連動して回転方向にセレクト運動されるとともに軸線方向にシフト運動されるシフトアンドセレクトシャフトをさらに備え、セレクトレバーはシフトアンドセレクトシャフトに固定されて半径方向に突出され、各フォークシャフトは軸線方向にシフト運動されるとともにそれぞれから半径方向に突出された各シフトピースの先端部はシフトアンドセレクトシャフトを中心とする円弧上に位置され、この各シフトピースの先端部に形成されたコ字状の切欠きは各フォークシャフトがシフト方向の中立位置にある状態では円弧上に沿って整列されてセレクト方向に揺動されるセレクトレバーの先端部に選択的に係合可能とし、リバース規制部材はシフトアンドセレクトシャフトに固定されている請求項2の発明によれば、フォークシャフトを作動させるセレクトレバーと所定車速以上で前進走行中に後進ギヤへの変速操作を規制するリバース規制部材は、何れもシフトアンドセレクトシャフトに固定されているので、構造が簡略化されるとともに作動が確実な手動変速機の誤操作防止装置を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の手動変速機の誤操作防止装置において、セレクトレバーと一体的に形成されて半径方向に延びるシリンダ部と、このシリンダ部の内面に軸線方向摺動自在に嵌合されたピストン部材と、このピストン部材のシリンダ部より突出する先端部にシフトアンドセレクトシャフトと平行な枢支ピンを介して回転自在に支持されたローラと、シフトアンドセレクトシャフトに一端部が回動自在に支持されて半径方向に延び厚さ方向中心面がシリンダ部の中心線とほゞ一致するように配置されるとともにシリンダ部とピストン部材とローラを相対的に揺動自在に収容する開口部が形成されかつケーシングに対しシフトアンドセレクトシャフト方向の移動のみを許容するように係合された板状のカムプレートと、シリンダ部に対しピストン部材を外向きに付勢してローラを開口部のシフトアンドセレクトシャフトと反対側となる部分に形成したカム面に弾性的に押圧するスプリングをさらに備え、カム面はローラの移動範囲の間に位置するセレクト方向の中立位置においてシフトアンドセレクトシャフトの中心からの距離を最大にするとともに中立位置を境界としてその両側における傾斜角を互いに逆向きにし、リバース規制部材はシリンダ部と一体的に形成した請求項3の発明によれば、セレクトレバーとシリンダ部とリバース規制部材の3部材は一体化されてシフトアンドセレクトシャフトに固定されているので、部品点数がさらに減少されるとともに作動が一層確実な手動変速機の誤操作防止装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による手動変速機の誤操作防止装置の一実施形態の全体構造を示す側面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】本発明による手動変速機のシフトパターンを示す図である。
【図4】図1の4−4断面図である。
【図5】図4の5−5断面図である。
【図6】図5の6−6断面図である。
【図7】図1に示す実施形態の作動の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面により、本発明による手動変速機の誤操作防止装置の実施形態の説明をする。先ず本発明が適用される手動変速機の全体構造を図1及び図2により説明する。手動変速機のケーシング10には、シフトアンドセレクトシャフト11が回転及び軸線方向摺動自在に支持され、またシフトアンドセレクトシャフト11と平行に3本の前進フォークシャフト12〜14及び1本の後進フォークシャフト15が、軸線方向摺動自在に支持されている。この実施形態では、シフトアンドセレクトシャフト11には、手動の変速レバー(図示省略)のセレクト運動及びシフト運動と連動して、回転方向のセレクト運動及び軸線方向のシフト運動が与えられ、シフトアンドセレクトシャフト11には半径方向に突出するセレクトレバー20が固定され、各フォークシャフト12〜15はこのセレクトレバー20の揺動方向のセレクト運動により選択されて、それぞれその軸線方向中立位置とその両側または一側となるシフト位置の間でシフト運動が与えられ、シフトフォーク16(1個のみを二点鎖線で示す)を介して周知の変速ギヤの切り換えを行う。各フォークシャフト12〜15とケーシング10の間には、それぞれロックボール、スプリング及びノッチよりなり、各フォークシャフト12〜15をそれらのシフト方向中立位置とシフト位置に係止するボールロック手段(ノッチのみを符号12c〜15cで示す)が設けられてる。
【0015】
図1及び図2に示すように、セレクトレバー20はリブにより補強された先細の棒状でシフトアンドセレクトシャフト11にボルト止め固定されたボス部20aと一体形成され、ボス部20aの図1において軸線方向右側に偏心した位置から半径方向に突出されて、その先端部20bは4隅が面取りされた角棒状に形成されている。各シフトピース12a〜15aは各基端部が各フォークシャフト12〜15に一体的に固定されて互いに略平行に半径方向に突出され、各先端部はセレクトレバー20付近となるシフトアンドセレクトシャフト11を中心とする円弧上に位置しており、後進フォークシャフト15のシフトピース15aの先端部はこの円弧上の一方(図2において下方)の末端に位置している。この各シフトピース12a〜15aの各先端部に形成されたコ字状の切欠き12b〜15bは、各フォークシャフト12〜15がシフト方向の中立位置にある状態では上述した円弧上に沿って整列されて、セレクト方向に揺動されるセレクトレバー20の先端部20bに選択的に係合可能である。
【0016】
この手動変速機では、手動の変速レバーのセレクト運動及びシフト運動はシフトアンドセレクトシャフト11を介してセレクトレバー20に伝達され、先ずセレクトレバー20の揺動方向のセレクト運動によりその先端部20bはシフト方向中立位置にある各シフトピース12a〜15bの先端の切欠き12b〜15b内を移動してその何れか1つを選択し、次いでセレクトレバー20の軸線方向のシフト運動により選択した切欠きに対応するフォークシャフトを軸線方向にシフトさせて変速ギヤを切り換える。
【0017】
セレクトレバー20をセレクト方向の中立位置に向けて弾性的に付勢するセレクトリターン手段26は、主として図1及び図2に示すように、シリンダ部21と、ピストン部材22と、ローラ22aと、スプリング23と、カムプレート24により構成されている。シリンダ部21は、セレクトレバー20のボス部20aと一体形成され、ボス部20aのセレクトレバー20と軸線方向で反対側(図1において軸線方向左側)に偏心した位置から半径方向に突出され、シリンダ部21とセレクトレバー20の突出方向の円周方向の位相差は約124度である。シリンダ部21の内面には、ピストン部材22が長手方向軸線回りの回動が拘束されて長手方向摺動自在に設けられて、シリンダ部21の内底面との間に介装したスプリング24により半径方向外向きに付勢されている。シリンダ部21から半径方向外向きに突出するピストン部材22の先端部に形成された二叉部には、シフトアンドセレクトシャフト11と平行な枢支ピン23aによりローラ22aが回転自在に支持されている。
【0018】
カムプレート24は打ち抜きによりプレス成形された一定厚さの厚板状で、その一端部はシフトアンドセレクトシャフト11に回動自在に支持され、セレクトレバー20にねじ止め固定されたボス部20aのシリンダ部21側となる端面に当接されて、止め輪28により抜け止め保持されている。カムプレート24はシフトアンドセレクトシャフト11に支持される一端部から半径方向に延び、厚さ方向中心面がシリンダ部21の中心線とほゞ一致するように配置されるとともに、シリンダ部21とピストン部材22とローラ22aを相対的に揺動自在に収容する開口部24bが形成されている。カムプレート24にはシフトアンドセレクトシャフト11と反対側に半径方向外側が開かれたU字状の掛止め凹部24aが形成され、シフトアンドセレクトシャフト11と平行にケーシング10に固定された回り止めピン25が掛止め凹部24aに係合されて、カムプレート24はシフトアンドセレクトシャフト11回りの回動が拘束され、シフトアンドセレクトシャフト11方向の移動のみを許容するようにケーシング10に係止されている。
【0019】
カムプレート24の開口部24bには、主として図2に示すように、シフトアンドセレクトシャフト11と反対側となる部分にカム面26aが形成され、スプリング24により付勢されるピストン部材22の先端部に設けたローラ22aは、このカム面26aに弾性的に押圧されている。この実施形態の手動変速機は、図3に示すような前進6段・後進1段のシフトパターンを有しており、図2及び図7に示すように、ローラ22aはカム面26a上を両末端位置(シフトパターンの第1−2速セレクト位置P1と後進セレクト位置PR)の間で移動され、その移動範囲の間に第3−4速セレクト位置(中立位置)P2及び第5−6速セレクト位置P3が位置している。そしてカム面26aは、中立位置P2においてシフトアンドセレクトシャフト11の中心からの距離を最大にするとともにこの中立位置P2を境界としてその両側における傾斜角を互いに逆向きにしている。これによりセレクトレバー20は、カムプレート24に対しセレクト方向の中立位置に向けて付勢される。
【0020】
上述した手動変速機は、変速レバーを操作しない状態では、図7(b) に示すように、変速レバーはそのシフトパターンに○で示すセレクト方向の中立位置(第3−4速セレクト位置)P2(図3参照)及びシフト方向の中立位置にあり、セレクトレバー20の先端部20bは第2フォークシャフト13のシフトピース13a先端の切欠き13bに係合されている。この状態で変速レバーをシフト方向の一方または他方にシフトすれば、セレクトレバー20はシフトアンドセレクトシャフト11を介して軸線方向一方または他方に移動され、第2フォークシャフト13も同じ方向に移動されてボールロック手段により係止され、シフトフォーク16を介して第3速ギヤまたは第4速ギヤが形成される。
【0021】
変速レバーを、図7(b) のシフトパターンに○で示す中立位置P2から図7(a) のシフトパターンの○で示す第1−2速セレクト位置P1(図3参照)に移動すれば、セレクトレバー20の先端部20bは第1フォークシャフト12のシフトピース12a先端の切欠き12bに係合され、シリンダ部21の当接部21aがカムプレート24の開口部24bのストッパ面24dに当接してそれ以上のセレクト回動が阻止される。この状態で変速レバーをシフト方向の一方または他方にシフトすれば、前述と同様、セレクトレバー20は軸線方向一方または他方に移動され、第1フォークシャフト12も同じ方向に移動されてボールロック手段により係止され、第1速ギヤまたは第2速ギヤが形成される。
【0022】
変速レバーを上述した中立位置P2から図7(c) のシフトパターンに○で示す第5−6速セレクト位置P3(図3参照)に移動すれば、同様にして、セレクトレバー20の先端部20bは第3フォークシャフト14のシフトピース14a先端の切欠き12bに係合され、変速レバーをシフト方向の一方または他方にシフトすれば、第3フォークシャフト14により第5速ギヤまたは第6速ギヤが形成される。
【0023】
また変速レバーを上述した第5−6速セレクト位置P3から図7(e) または(f) のシフトパターンに○で示す後進セレクト位置PR(図3参照)に移動すれば、セレクトレバー20の先端部20bは後進フォークシャフト15のシフトピース15a先端の切欠き15bに係合され、シリンダ部21の当接部21bがカムプレート24のストッパ面24eに当接してそれ以上のセレクト回動が阻止される。この状態で変速レバーをシフト方向の一方にシフトすれば、前述と同様にしてセレクトレバー20は軸線方向一方に移動され、後進フォークシャフト15も同じ方向に移動されて、後進ギヤが形成される。
【0024】
次に本発明の要部である誤操作防止装置の説明をする。この誤操作防止装置は、図1、図2、図4及び図5に示すように、セレクトレバー20をセレクト方向の中立位置に戻すセレクトリターン手段26のシリンダ部21に一体的に設けられたリバース規制部材27と、ケーシング10に設けられた規制ピン36及びこれを付勢する付勢手段39と、ロックアウトレバー30及びこれを作動させるアクチュエータ40により構成されている。リバース規制部材27は、主として図1及び図2に示すように、シフトアンドセレクトシャフト11に固定されたセレクトレバー20に一体形成されたシリンダ部21の側部から突出して一体的に形成されて、セレクトレバー20とともに前述した各セレクト位置の間で揺動される。リバース規制部材27からシフトアンドセレクトシャフト11を中心とする円周方向に突出する先端部27aは、セレクトレバー20の先端部20bが後進フォークシャフト15のシフトピース15aの切欠き15bと係合される後進セレクト位置PRではケーシング10の内面の一部に最も接近され、(図7(e) 及び(f) 参照)それ以外の各セレクト位置P1〜P3ではケーシング10の内面の一部から順次離隔される(図7(a) 〜(c) 参照)。
【0025】
主として図1及び図2に示すように、後進セレクト位置PRにおいてリバース規制部材27の先端部27aが最も接近されるケーシング10の内面の一部付近は、シフトアンドセレクトシャフト11を中心とするの先端部27aの円弧状の軌跡のこの内面の一部に最も接近した位置付近における接線とほゞ直交している。この内面の一部には、この接線を中心とする保持孔10dが形成され、この保持孔10dの外側となるケーシング10に突出して形成されたボス部10aには、保持孔10dよりも大径のねじ孔10cが同軸的に形成されている。この保持孔10dには、後部にフランジ部36aが形成された円形の規制ピン36が軸線方向摺動自在に嵌合され、この規制ピン36はねじ孔10cにねじ込まれたカップ状のねじプラグ37の内底面との間に介装した大小2本のスプリング38a,38bによりリバース規制部材27の先端部27aに向けて弾性的に付勢され、自由状態ではそのフランジ部36aがねじ孔10cの底面に当接して停止されている。このねじプラグ37とスプリング38a,38bが、規制ピン36をリバース規制部材27の先端部27aに向けて弾性的に付勢する付勢手段39を構成している。この自由状態では、規制ピン36の先端面36bはケーシング10の内面より所定距離内方に突出している。リバース規制部材27の先端部27aは、後進セレクト位置PRではケーシング10の内面の一部に最も接近されるが、自由状態にある規制ピン36の先端面36bからは多少離れている(図7(e) 参照)。
【0026】
保持孔10dが形成されるケーシング10のボス部10aは断面形状が略だるま形で、図4〜図6に示すように、規制ピン36を保持する保持孔10dと平行にケーシング10に形成された支持孔10bには支持筒32が嵌合されている。ロックアウトレバー30は、この支持筒32に回動及び軸線方向摺動自在に支持された支持ピン31と一体形成されて、それから直交する方向に延びている。ロックアウトレバー30の先端部分30aと反対となる端部には、支持ピン31から反対向きに突出する略長方形の小さい当接片30bが一体的に形成されている。支持ピン31の軸線方向中間部の一側には薄い円板状となる先端部分31bを残して大きいえぐり部31aが形成されている。
【0027】
主として図6に示すように、ボス部10aと支持筒32を貫通して形成したピン孔34aに固定ピン34を挿通することにより、支持筒32はケーシング10に固定され、ピン孔34aの外端の大径部34bにロックボール34cを圧入することにより、固定ピン34は抜け止めされている。固定ピン34は相当な余裕を残してえぐり部31a内を通過している。従ってロックアウトレバー30及び支持ピン31は、えぐり部31aの底面の両縁が固定ピン34と当接する角度範囲内において回動可能であり、また先端部分31bが固定ピン34と当接する位置を最突出位置としてそれより内側に軸線方向摺動自在である。この最突出位置では、根元側よりも多少厚いロックアウトレバー30の先端部分30aと自由状態における規制ピン36の先端面36bとの間には多少の隙間が残されている。支持孔10bは蓋部材35を圧入することにより閉じられている。
【0028】
支持ピン31の根元部に多少の隙間をおいて巻き付けられた捩りばね33の一端はロックアウトレバー30の基端部に引っ掛けられ、他端から支持ピン31と平行に伸びる脚部33aは支持筒32の外周の一部に軸線方向に形成された溝部32aに挿入されている。これによりロックアウトレバー30は、図4において支持ピン31を中心として時計回転方向に弾性的に付勢され、リバース規制部材27の先端部27aがケーシング10の内面に最も接近する(従って自由状態にある規制ピン36の先端面36bに最も接近する)後進セレクト位置PRを除く各セレクト位置P1〜P3では、図4及び図5の実線に示すように、ロックアウトレバー30の先端部分30aは、自由状態における規制ピン36の先端面36bとの間には多少の隙間をおいて、リバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間に挿入され、支持ピン31のえぐり部31aの底面の一方の縁が固定ピン34と当接した位置で停止される。ロックアウトレバー30の先端部分30aには、規制ピン36の軸線方向から見てリバース規制部材27の先端部27aと対応する付近に三角形の切欠き30cが形成されている。
【0029】
アクチュエータ40は、通電されなければスプリング(図示省略)により後退され、通電されればスプリングの付勢力に抗して前進する作動ロッド40aを有するソレノイド式のもので、フランジ34bを介してケーシング10に取り付けられている。前述のようにロックアウトレバー30が後進セレクト位置PRを除く各セレクト位置P1〜P3にある場合には、アクチュエータ40に通電されなければ作動ロッド40aは後退しているので、捩りばね33により付勢されたロックアウトレバー30の先端部分30aはリバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間に挿入されている。しかしアクチュエータ40に通電され作動ロッド40aが前進してその先端が当接片30bに当接し、捩りばね33に抗してロックアウトレバー30を回動させれば、ロックアウトレバー30の先端部分30aはリバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間から離脱される(図4の二点鎖線30A参照)。先端部分30aに形成した三角形の切欠き30cは、この離脱の際にロックアウトレバー30の先端部分30aがリバース規制部材27の先端部27aから確実に離脱させるために設けたものである。アクチュエータ40は、所定車速未満では通電されて作動ロッド40aが前進され、所定車速以上では通電がされず作動ロッド40aが後退するように制御される。
【0030】
次に図7により上述した実施形態の作動の説明をする。変速レバーを図7(a) で示す第1−2速セレクト位置P1とした状態では、セレクトレバー20の先端部20bは第1フォークシャフト12のシフトピース12a先端の切欠き12bに係合されている。この状態で変速レバーをシフト方向の一方または他方にシフトすれば、前述と同様にして、第1速ギヤまたは第2速ギヤが形成される。この状態で自動車が所定車速以上で走行しているときは、アクチュエータ40に通電されず、従ってその作動ロッド40aがロックアウトレバー30の当接片30bを押圧することはないので、捩りばね33により付勢されたロックアウトレバー30の先端部分30aは、前述のようにリバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間に挿入されて停止されている。この状態では、ロックアウトレバー30の先端部分30aと規制ピン36の先端面36bの間の隙間はわずかであるが、先端部分30aとリバース規制部材27の先端部27aの間の距離は相当大である。
【0031】
この状態で変速レバーを、セレクトレバー20の先端部20bが後進フォークシャフト15のシフトピース15aの切欠き15bに係合される後進セレクト位置PR(図7(e) 及び図7(f) 参照)に切り換えようとすれば、セレクトレバー20の先端部20bが後進フォークシャフト15の切欠き15bに近づくにつれてリバース規制部材27の先端部27aが先端部分30aに接近し(図7(c) 参照)、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前にリバース規制部材27の先端部27aはロックアウトレバー30の先端部分30aに当接してこれを支持ピン31の軸線方向に移動させる。この先端部分30aはすぐに付勢手段39により付勢された規制ピン36の先端面36bに当接するので、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前に変速レバーに生じる操作力は急に増大する。なおこのロックアウトレバー30の支持ピン31の軸線方向への移動に伴い、ロックアウトレバー30の当接片30bはアクチュエータ40の作動ロッド40aに対し移動する。
【0032】
変速レバーを図7(b) で示す第3−4速セレクト位置(セレクト方向の中立位置)P2とした状態では、セレクトレバー20の先端部20bは第2フォークシャフト13のシフトピース13a先端の切欠き13bに係合され、変速レバーをシフト方向の一方または他方にシフトすれば、前述と同様にして、第3速ギヤまたは第4速ギヤが形成される。この状態で自動車が所定車速以上で走行しているときは、捩りばね33により付勢されたロックアウトレバー30の先端部分30aは、リバース規制部材27の先端部27aとの間の距離が減少したのを除き、第1−2速セレクト位置P1の場合と同様、リバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間に挿入されて停止されている。この状態で変速レバーを後進セレクト位置PRに切り換えようとすれば、第1−2速セレクト位置P1の場合と同様、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前にセレクトレバー20の先端部20bはロックアウトレバー30の先端部分30aに当接してこれを移動させる。この先端部分30aはすぐに付勢手段39により付勢された規制ピン36の先端面36bに当接するので、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前に変速レバーに生じる操作力は急に増大する。
【0033】
また変速レバーを図7(c) で示す第5−6速セレクト位置P3とした状態では、セレクトレバー20の先端部20bは第3フォークシャフト14のシフトピース14a先端の切欠き14bに係合され、変速レバーをシフト方向の一方または他方にシフトすれば、前述と同様にして、第5速ギヤまたは第6速ギヤが形成される。この状態で自動車が所定車速以上で走行しているときは、捩りばね33により付勢されたロックアウトレバー30の先端部分30aは、リバース規制部材27の先端部27aとの間の距離がさらに減少して殆ど0になったのを除き、第1−2速セレクト位置P1の場合と同様、リバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間に挿入されて停止されている。この状態で変速レバーを後進セレクト位置PRに切り換えようとすれば、リバース規制部材27の先端部27aは直ちにロックアウトレバー30の先端部分30aに当接してこれを移動させる。この先端部分30aはすぐに付勢手段39により付勢された規制ピン36の先端面36bに当接するので、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前に変速レバーに生じる操作力は急に増大する。
【0034】
上述のように、第1速ギヤ〜第6速ギヤが形成されて自動車が所定車速以上で前進走行している状態では、変速レバーを後進セレクト位置PRに切り換えようとすれば、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前に変速レバーに生じる操作力は急に増大する。これにより所定車速以上で前進走行中に後進ギヤへの変速操作を行ったという誤操作にすぐに気が付き、それ以上の操作を取りやめることができる。
【0035】
これに対し、第1速ギヤ〜第6速ギヤが形成されているが自動車が所定車速未満で前進走行している状態では、アクチュエータ40に通電され作動ロッド40aが前進して当接片30bに当接し、捩りばね33に抗してロックアウトレバー30を回動させれば、ロックアウトレバー30の先端部分30aはリバース規制部材27の先端部27aと自由状態にある規制ピン36の先端面36bの間から離脱される(図7(d) 参照)。この状態では変速レバーを後進セレクト位置PRとすれば、リバース規制部材27の先端部27aは自由状態にある規制ピン36の先端面36bに接近はするが当接することはないので、セレクトレバー20の先端部20bは軽く後進フォークシャフト15の切欠き15bに係合して後進フォークシャフト15を選択でき(図7(e) 参照)、次いで変速レバーをシフト方向に操作して後進変速ギヤを形成することができる。
【0036】
またアクチュエータ40の断線などの故障によりその作動ロッド40aが後退位置で動かなくなった場合には、前進状態で所定車速未満となっても作動ロッド40aはセレクトレバー20の一部を押圧しないので、所定車速の以上の場合と同様、ロックアウトレバー30の先端部分30aはリバース規制部材27の先端部27aと規制ピン36の間から後退されない。従ってリバース規制部材27の先端部27aがロックアウトレバー30の先端部を介して規制ピン36の先端面36bに当接して変速レバーに生じる操作力が急に増大するので、軽い操作力で後進ギヤへの変速操作をすることはできない。しかし変速レバーに加えるセレクト方向の操作力を増大すれば付勢手段39が撓み、ロックアウトレバー30が支持ピン31の軸線方向に移動してセレクトレバー20が移動され、後進フォークシャフト15が選択される(図(f) 参照)ので、力を込めて操作すれば後進ギヤへの変速操作は可能であり、後進ギヤへの変速操作が不可能になることはない。
【0037】
上述した実施形態によれば、上述のように、正常な作動状態では、自動車が前進変速ギヤで所定車速以上で走行している場合は、変速レバーを後進セレクト位置PRに切り換えようとすれば、セレクトレバー20の先端部20bが切欠き15bに係合する直前に変速レバーに生じる操作力は急に増大するので、所定車速以上で前進走行中に後進ギヤへの変速操作を行ったという誤操作にすぐに気が付き、それ以上の操作を取りやめることができ、自動車が前進変速ギヤで所定車速未満で走行している場合は、変速レバーを後進セレクト位置PRに切り換えようとすれば、セレクトレバー20の先端部20bは軽く後進フォークシャフト15の切欠き15bに係合して後進フォークシャフト15を選択でき、次いで変速レバーをシフト方向に操作して後進変速ギヤを形成することができる。またアクチュエータ40の断線などの故障によりその作動ロッド40aが後退位置で動かなくなった場合には、軽い操作力で後進ギヤへの変速操作をすることはできないが、力を込めて変速レバーを操作すれば後進ギヤへの変速操作は可能であり、後進ギヤへの変速操作が不可能になることはない。
【0038】
上述した実施形態では、変速レバーのセレクト運動及びシフト運動と連動して回転方向にセレクト運動されるとともに軸線方向にシフト運動されるシフトアンドセレクトシャフト11を各フォークシャフト12〜15と平行に設け、セレクトレバー20はこのシフトアンドセレクトシャフト11に固定されて半径方向に突出させ、各フォークシャフト12〜15は軸線方向にシフト運動させるとともにそれぞれから半径方向に突出された各シフトピース12a〜15aの先端部はシフトアンドセレクトシャフト11を中心とする円弧上に位置し、この各シフトピース12a〜15aの先端部に形成されたコ字状の切欠き12b〜15bは各フォークシャフト12〜15がシフト方向の中立位置にある状態では上記円弧上に沿って整列させてセレクト方向に揺動されるセレクトレバー20の先端部20bに選択的に係合可能とし、リバース規制部材27はシフトアンドセレクトシャフト11に固定しており、このようにすれば、フォークシャフト12〜15を作動させるセレクトレバー20と所定車速以上で前進走行中に後進ギヤへの変速操作を規制するリバース規制部材27は、何れもシフトアンドセレクトシャフト11に固定されているので、構造が簡略化されるとともに作動が確実な手動変速機の誤操作防止装置を得ることができる。
【0039】
また上述した実施形態では、セレクトレバー20と一体的に形成されて半径方向に延びるシリンダ部21と、このシリンダ部21の内面に軸線方向摺動自在に嵌合されたピストン部材22と、このピストン部材22のシリンダ部21より突出する先端部にシフトアンドセレクトシャフト11と平行な枢支ピン22bを介して回転自在に支持されたローラ22aと、シフトアンドセレクトシャフト11に一端部が回動自在に支持されて半径方向に延び厚さ方向中心面がシリンダ部21の中心線とほゞ一致するように配置されるとともにシリンダ部21とピストン部材22とローラ22aを相対的に揺動自在に収容する開口部24bが形成されかつケーシング10に対しシフトアンドセレクトシャフト11方向の移動のみを許容するように係合された板状のカムプレート24と、シリンダ部21に対しピストン部材22を外向きに付勢してローラ22aを開口部24bのシフトアンドセレクトシャフト11と反対側となる部分に形成したカム面24cに弾性的に押圧するスプリング23をさらに備え、カム面24cはローラ22aの移動範囲の間に位置するセレクト方向の中立位置においてシフトアンドセレクトシャフト11の中心からの距離を最大にするとともに中立位置を境界としてその両側における傾斜角を互いに逆向きにし、リバース規制部材27はシリンダ部21と一体的に形成しており、このようにすればセレクトレバー20とシリンダ部21とリバース規制部材27の3部材は一体化されてシフトアンドセレクトシャフト11に固定されているので、セレクトレバー20をセレクト方向の中立位置に戻すセレクトリターン手段26の部品点数が減少されるとともに作動が一層確実な手動変速機の誤操作防止装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10…ケーシング、11…シフトアンドセレクトシャフト、12〜14…前進フォークシャフト、12a〜15a…シフトピース、12b〜15b…切欠き、15…後進フォークシャフト、20…セレクトレバー、21…シリンダ部、22…ピストン部材、22a…ローラ、22b…枢支ピン、23…スプリング、24…カムプレート、24b…開口部、24c…カム面、27…リバース規制部材、27a…先端部、30…ロックアウトレバー、30a…先端部分、30b…一部(当接片)、31…支持ピン、33…ばね(捩りばね)、36…規制ピン、36a…一部(フランジ部)、36b…先端面、39…付勢手段、40…アクチュエータ、40a…作動ロッド、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置されてそれぞれ前進変速ギヤを切り換える複数の前進フォークシャフト及び後進変速ギヤを切り換える後進フォークシャフトと、手動の変速レバーのセレクト運動と連動して前記各前進及び後進フォークシャフトの1つを順次選択する各セレクト位置の間で移動されるセレクトレバーと、これらの各部材を支持するケーシングを備え、前記セレクトレバーにより選択された前記各フォークシャフトを前記手動の変速レバーのシフト運動と連動して作動させて前記前進及び後進ギヤの切り換えを行う自動車などの手動変速機において、
前記セレクトレバーと関連して移動され、前記セレクトレバーが前記後進フォークシャフトを選択する後進セレクト位置にあるときは前記ケーシングの内面の一部に最も接近されるとともに、前記セレクトレバーがそれ以外の各セレクト位置に順次移動されれば前記内面の一部から順次離隔される先端部を有するリバース規制部材と、
前記ケーシングの内面の前記一部にこの一部に最も接近した位置付近における前記リバース規制部材の先端部の移動軌跡の接線方向に沿って摺動自在に嵌合されて前記リバース規制部材の先端部に向けて弾性的に付勢され、自由状態ではその一部が前記ケーシングの一部に当接して停止される規制ピンと、
前記ケーシングに前記規制ピンと平行な支持ピン回りに回動及び軸線方向摺動自在に支持されてそれから直交する方向に延び、前記ケーシングとの間に介装されたばねにより前記支持ピン回りに付勢されたロックアウトレバーを備え、
前記セレクトレバーが前記後進セレクト位置にない状態では、前記ばねにより付勢された前記ロックアウトレバーの先端部分は、前記リバース規制部材の先端部と前記自由状態にある前記規制ピンの先端面の間に少なくとも前記規制ピン側に接近して挿入されるよう構成され、
さらに、前記ロックアウトレバーの一部に当接離脱可能な作動ロッドを有し、所定車速未満では作動し前記作動ロッドを前記ロックアウトレバーの一部に当接して前記ばねの付勢力に抗して前記先端部分を前記リバース規制部材の先端部と前記自由状態にある前記規制ピンの先端面の間から離脱させるアクチュエータを備えた
ことを特徴とする手動変速機の誤操作防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の手動変速機の誤操作防止装置において、前記各フォークシャフトと平行に配置され前記変速レバーのセレクト運動及びシフト運動と連動して回転方向にセレクト運動されるとともに軸線方向にシフト運動されるシフトアンドセレクトシャフトをさらに備え、前記セレクトレバーは前記シフトアンドセレクトシャフトに固定されて半径方向に突出され、前記各フォークシャフトは軸線方向にシフト運動されるとともにそれぞれから半径方向に突出された各シフトピースの先端部は前記シフトアンドセレクトシャフトを中心とする円弧上に位置され、この各シフトピースの先端部に形成されたコ字状の切欠きは前記各フォークシャフトがシフト方向の中立位置にある状態では前記円弧上に沿って整列されてセレクト方向に揺動される前記セレクトレバーの先端部に選択的に係合可能とし、前記リバース規制部材は前記シフトアンドセレクトシャフトに固定されていることを特徴とする手動変速機の誤操作防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の手動変速機の誤操作防止装置において、前記セレクトレバーと一体的に形成されて半径方向に延びるシリンダ部と、このシリンダ部の内面に軸線方向摺動自在に嵌合されたピストン部材と、このピストン部材の前記シリンダ部より突出する先端部に前記シフトアンドセレクトシャフトと平行な枢支ピンを介して回転自在に支持されたローラと、前記シフトアンドセレクトシャフトに一端部が回動自在に支持されて半径方向に延び厚さ方向中心面が前記シリンダ部の中心線とほゞ一致するように配置されるとともに前記シリンダ部とピストン部材とローラを相対的に揺動自在に収容する開口部が形成されかつ前記ケーシングに対し前記シフトアンドセレクトシャフト方向の移動のみを許容するように係合された板状のカムプレートと、前記シリンダ部に対し前記ピストン部材を外向きに付勢して前記ローラを前記開口部の前記シフトアンドセレクトシャフトと反対側となる部分に形成したカム面に弾性的に押圧するスプリングをさらに備え、前記カム面は前記ローラの移動範囲の間に位置するセレクト方向の中立位置において前記シフトアンドセレクトシャフトの中心からの距離を最大にするとともに前記中立位置を境界としてその両側における傾斜角を互いに逆向きにし、前記リバース規制部材は前記シリンダ部と一体的に形成したことを特徴とする手動変速機の誤操作防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64473(P2013−64473A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204506(P2011−204506)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】