説明

手動運行草処理機

【課題】吸気側フィルタの目詰まりやキャブレータへの異物の浸入を軽減して、保守点検の手間や、故障の発生が少ない手動運行草処理機を提供する。
【解決手段】エンジンユニット3の吸気側カバー30から、フレキシブル吸込管2を延伸状に付設して、回転草刈部5又は回転草引抜き爪部からフレキシブル吸込管2の自由端側吸込口21を遠ざけるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動運行草処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果樹園での草刈りや草抜きといった草処理(除草)作業は、樹木が障害物となるため、車両型の草処理機は使用できず、肩掛け型の草処理機は山間部での長期間の作業が重労働となるため、作業者の手押しによって進行する草刈機や草引抜き機といった手動運行草処理機が使用されていた(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−125627号公報
【特許文献2】特開2003−230305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の手動運行草処理機は、エンジンユニットが、車両型に比べて露出しており、肩掛け型に比べて回転草刈部又は回転草引抜き部に近いため、草刈刃や引抜き爪の回転によって発生する土埃や砂埃によって、吸気側フィルタが目詰まりを起こし、短期間で清掃や交換等の保守点検(メンテナンス)作業を行う必要があるといった問題や、吸気側フィルタの目詰まりによる吸気量不足やキャブレータへの異物混入によって、エンジンが故障してしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、吸気側フィルタの目詰まりやキャブレータへの異物の浸入を軽減して、保守点検の手間や、故障の発生が少ない手動運行草処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の手動運行草処理機は、エンジンユニットの吸気側カバーから、フレキシブル吸込管を延伸状に付設して、回転草刈部又は回転草引抜き爪部から上記フレキシブル吸込管の自由端側吸込口を遠ざけるように構成したものである。
また、上記フレキシブル吸込管は、自立可能な可撓性を有するものである。
また、上記吸気側カバーは、接続用短円筒部を一体に有し、該短円筒部に上記フレキシブル吸込管の基端側開口部を接続したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸気側フィルタやキャブレータと連通する吸込口を土埃や砂埃の少ない位置に自由に配設でき、土埃や砂埃等の異物吸込量を軽減して、吸気側フィルタの目詰まりやエンジンの故障を防止できる。風向きや地形によって変化する土埃や砂埃に迅速かつ容易に対応でき、異物の吸込を軽減できる。吸気側フィルタの清掃や交換の手間が軽減できると共に、エンジンの故障を防止できる。常に適切なエアー吸込量を確保でき、エンジンの出力や排気を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】吸気側カバーとフレキシブル吸込管の一例を示す要部断面側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図4】第1の比較例を示す斜視図である。
【図5】第2の比較例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の手動運行草処理機は、図1に示す第1の実施形態のように、作業者が手押しする操作ハンドル部9と、ハンドル部9に前方下傾状に連結される操作杆8と、操作杆8に連結されたフレーム4に取着されるエンジンユニット3と、円板状又は帯板状の草刈刃50が鉛直状軸心廻りに回転自在に取着される回転草刈部5と、エンジンユニット3のエンジンの駆動力を回転草刈部5に伝達する伝達軸部10と、水平軸心廻りに回転自在な複数の車輪7と、を備えた草刈機の場合を示す。
エンジンユニット3は、操作ハンドル部9と回転草刈部5の間に配設され、エンジンと、キャブレータ(気化器)と、吸気側フィルタ(エアフィルタ)と、吸気側(用)カバー30と、排気側(用)カバーと、を備えている。
そして、エンジンユニット3の吸気側カバー30から上方へ延伸状にフレキシブル吸込管2を付設している。
【0010】
図2に示すように、吸気側カバー30は、エンジンユニット3の吸気側(吸気側フィルタやキャブレータ側)を保護するカバー部32と、カバー部32の側面から側外方に突設される接続用短円筒部31と、を樹脂成形によって、一体に有している。
短円筒部31にフレキシブル吸込管2の基端側開口部22を接続している。具体的には、短円筒部31に、フレキシブル吸込管2の基端側に配設され開口部22を有するストレート状取付円筒部27を、外嵌状に差し込んで、締付けリング部材40にて、着脱自在に取着している。取付円筒部27をストレート状に形成していることで、短円筒部31に容易かつ確実に強く取着できる。なお、吸気側カバー30は、吸気側フィルタやキャブレータに空気(エアー)を供給するための供給路に対応している。
【0011】
フレキシブル吸込管2は、基端が、吸気側カバー30に取着されることで固定端となり、先端が自由端となる。
フレキシブル吸込管2は、先端側に吸込口21を有するストレート状の吸込円筒部26を有し、かつ、吸込円筒部26と取付円筒部27の間に可撓性の蛇腹部(関節部)23を有している。
蛇腹部23は、長手方向(軸心方向)に伸縮自在、かつ、前後左右方向及び上下方向に折曲げ自在である。
【0012】
また、フレキシブル吸込管2は、支持部材に支持されなくとも自立可能な可撓性を有している。つまり、伸縮した状態や折曲げた状態の姿勢を自己保持(維持)可能な可撓性を有し、短円筒部31の軸心方向廻りに、取付円筒部27(基端部)を除く蛇腹部23及び吸込円筒部26(中間部及び先端部)が揺動・固定自在に設けられているとも言える。
【0013】
そして、図1に示すように、フレキシブル吸込管2の自由端側吸込口21を、回転草刈部5から遠ざけるように、かつ、エンジンユニット3よりも上方位置に、配設している。また、吸込口21を、操作ハンドル部9又は作業者の近傍に配設可能にし、吸込口21の移設を容易にしているとも言える。
【0014】
次に、図3に示す第2の実施形態は、操作ハンドル部9と、操作杆8と、エンジンユニット3と、ローラ状の車輪7と、を備えた小型耕耘機(カルチベータ)の場合を示す。
また、水平状軸心廻りに回転して草を根から掘り起こすように引き抜く回転爪部材60が取着される回転草引抜き爪部6を備え、エンジンユニット3が回転草引抜き爪部6の近傍かつ上方位置に配設されている。
そして、第1の実施形態と同様に、吸気側カバー30からフレキシブル吸込管2を突設して、回転草引抜き爪部6から吸込口21を遠ざけるように構成している。
【0015】
なお、本発明において、草刈とは、草を刃体で切断すること、草を線材で払うように切断すること、の両方を包括している。したがって、回転草刈部5とは、紐状乃至棒状の可撓性の草払線材(草払刃)が取着可能な回転駆動部でもある。
草処理(除草作業)とは、回転刃で草刈りを行う草刈、回転線材で草払いを行う草刈(払)、耕耘機のように土を堀り上げながら草を引き抜く草引抜き、等である。また、駆動源としてエンジンとモータを併用しているものでも良い。
また、吸気側カバー30とは、言い換えると、吸気側フィルタにエアーを送る吸入路を形成する吸気側ケーシングカバー部材、吸気側フィルタを保護する吸気側フィルタカバー部材、キャブレータの吸込口と連通した吸込路を形成する吸気側ケーシングカバー部材、とも言える。
【0016】
次に、本発明の手動運行草処理機の使用方法(作用)について説明する。
図1及び図3に示した手動運行草処理機を、作業者が操作ハンドル部9を手押して運行(進行)させる。回転草刈部5又は回転草引抜き爪部6(以下、草処理回転部5,6と呼ぶ場合がある)によって、草処理が行われる。この際、土埃や砂埃が発生し、エンジンユニット3の周囲には、土や砂、ゴミ等が浮遊する。
【0017】
ここで、図4に示す第1の比較例と、図5に示す第2の比較例は、エンジンユニット99の吸気側カバー90に、側方開口状の吸込口91を貫設したものである。
比較例のような吸込口91の位置では、砂等の異物吸込量が非常に多く、吸気側フィルタの目詰まりが早まり、吸気量が低下して、エンジンの出力不足や不完全燃焼、故障が発生する虞があるため、吸気側フィルタの清掃や交換を短期間の周期で行わなければならない。また、キャブレータ(気化器)へ砂等の異物が浸入してキャブレータやエンジンが故障する虞がある。
【0018】
しかし、本発明は、図1及び図3に示すように、吸込口21が、第1・第2比較例にくらべて、草処理回転部5,6から大きく離れているため、砂等の異物の吸込量が少なく、目詰まりやキャブレータへの混入を防止している。
【0019】
さらに、風や周囲の環境によって砂埃の舞う位置が変化しても、例えば、矢印方向にフレキシブル吸込管2を伸縮させたり折曲げたりして、二点鎖線で示すような位置に移動させることで、砂埃等の少ない位置に吸込口21を移動できる。また、操作の邪魔にならない位置や、草木等の障害物に接触しない位置に移動可能である。
【0020】
また、フレキシブル吸込管2は自立(姿勢を自己保持)するため、操作ハンドル部9や操作管8に支持部材や固定部材を設ける必要がなく、吸込口21を移動させるための着脱操作が省略され、容易かつ迅速に位置変更が可能である。
【0021】
なお、本発明は設計変更可能であって、短円筒部31を、吸気側カバー30のカバー部32の上面から上方突出状に設けても良い。また、短円筒部31を、吸気側カバー30のカバー部32の後面から後方突出状に設けても良い。また、操作ハンドル部9や操作杆8に、フレキシブル吸込管2を支持する部材や固定する部材を設けても良い。また、図1に於て、エンジンユニット3と回転草刈部5の間に、前後左右に回転可能な自在球輪11を設けているが、省略しても良い。
【0022】
以上のように、本発明の手動運行草処理機は、エンジンユニット3の吸気側カバー30から、フレキシブル吸込管2を延伸状に付設して、回転草刈部5又は回転草引抜き爪部6からフレキシブル吸込管2の自由端側吸込口21を遠ざけるように構成したので、吸込口21を土埃や砂埃の少ない位置に自由に配設でき、土埃や砂埃等の異物吸込量を軽減して、吸気側フィルタの目詰まりやエンジンの故障を防止できる。吸込口21を風向きや地形によって変化する土埃や砂埃に迅速かつ容易に移設でき、異物の吸込を軽減できる。吸気側フィルタの清掃や交換の手間が軽減できると共に、エンジンの故障を防止できる。常に適切なエアー吸込量を確保でき、エンジンの出力や排気を安定させることができる。
【0023】
また、フレキシブル吸込管2は、自立可能な可撓性を有するので、フレキシブル吸込管2の先端部や中間部を支持する支持部材や、操作ハンドル部9や操作杆8に固定する固定部材を省略できる。また、支持部材や固定部材に対する着脱操作を省略でき、吸込口21を所望の位置に容易かつスムーズに配設できる。
【0024】
また、吸気側カバー30は、接続用短円筒部31を一体に有し、短円筒部31にフレキシブル吸込管2の基端側開口部22を接続したので、部品点数を少なくでき、容易に組立を行うことができる。既存のエンジンユニットの吸気側カバーを本発明の吸気側カバー30に取替えるのみで、容易かつ安価に製造可能である。
【符号の説明】
【0025】
2 フレキシブル吸込管
3 エンジンユニット
5 回転草刈部
6 回転草引抜き爪部
21 吸込口
22 開口部
30 吸気側カバー
31 短円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンユニット(3)の吸気側カバー(30)から、フレキシブル吸込管(2)を延伸状に付設して、回転草刈部(5)又は回転草引抜き爪部(6)から上記フレキシブル吸込管(2)の自由端側吸込口(21)を遠ざけるように構成したことを特徴とする手動運行草処理機。
【請求項2】
上記フレキシブル吸込管(2)は、自立可能な可撓性を有する請求項1記載の手動運行草処理機。
【請求項3】
上記吸気側カバー(30)は、接続用短円筒部(31)を一体に有し、該短円筒部(31)に上記フレキシブル吸込管(2)の基端側開口部(22)を接続した請求項1又は2記載の手動運行草処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217399(P2012−217399A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87564(P2011−87564)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000112934)ブイアイブイエンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】