説明

手指衛生励行システム

【課題】手指衛生行動のコンプライアンスを高める。
【解決手段】手指衛生励行システム100はPC10および加速度センサ12a〜12dを含む。加速度センサ12a〜12dは被験者に装着されてその体の動きを繰り返し検出し、PC10は、検出された動きに基づいて被験者の行動を認識して行動情報を作成し、行動情報に基づいて被験者による手指衛生行動の実行状態を評価し、そして評価結果に関連して被験者にアドバイスを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手指衛生励行システムに関し、特にたとえば、医師や看護師などの医療従事者に手指衛生行動を実行させるための、手指衛生励行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者にとって、石鹸と流水による手洗いや、アルコール消毒薬による手指消毒といった手指衛生行動(手指衛生手技)は、感染予防のために不可欠であるが、その遵守率(コンプライアンス)は高くない(米国:平均40%、日本:15−80%)。
【0003】
従来、手指衛生行動のコンプライアンス評価には、直接観察、アンケート調査、石鹸や手指消毒薬の消費量調査などの手法が用いられている。
【0004】
手指衛生行動については、たとえば非特許文献1に、米国CDCによって定められたガイドラインが開示されている。このCDCガイドラインによれば、石鹸や消毒薬を手指の適切な箇所に適切な方法で適切な時間摩擦し、適切な方法で濯ぐことが推奨されている。具体的には、石鹸や消毒薬を、両手の手掌、手背、指間、指先、母指、手首の各箇所について5回以上摩擦し、濯ぎ時にも同様に摩擦して石鹸や消毒薬を除去することが推奨されている。また、非特許文献2〜4には、詳細な手洗い手順が開示されている。
【非特許文献1】医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン.大久保憲訳,小林寛伊監訳.メディカ出版,大阪,2003.
【非特許文献2】手衛生のガイドライン.http://www.infection-control.jp/pdf/handwash.pdf
【非特許文献3】Larson EL:APIC Guideline for hand washing and hand antisepsis in health care settings, 1995. Am J Infect Control 1995;23:251-269.
【非特許文献4】衛生的手洗い手順(流水を用いる場合、および速乾性手指消毒薬を用いる場合の図解). http://www.fujita-hu.ac.jp/HOSPITAL4/iinkai/kansen/yakusenntaku.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手指衛生行動のコンプライアンスを高めるには、これを適正に評価して、評価結果に基づく的確なアドバイスを行うことが効果的である。
【0006】
しかし、直接観察では、被験者が観察者の存在を意識することで、被験者の行動に変化が生じてしまう。一方、アンケート調査や消費量調査は、自己申告に基づいて行われるため、評価結果の精度に限界がある。このように、従来手法では、客観性ないし信頼性に乏しいコンプライアンス評価しか行えず、このためコンプライアンスを高めることができなかった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な手指衛生励行システムを提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、コンプライアンスを高めることができる、手指衛生励行システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、被験者に装着されて当該被験者の体の動きを検出する動き検出手段、動き検出手段の検出結果に基づいて被験者の行動を認識して行動情報を作成する行動認識手段、行動認識手段によって作成した行動情報に基づいて被験者による手指衛生行動の実行状態を評価する評価手段、および評価手段の評価結果に関連して被験者にアドバイスを行うアドバイス手段を備える、手指衛生励行システムである。
【0011】
第1の発明に従う手指衛生励行システム(100,100A)は、動き検出手段(12a〜12d),行動認識手段(S5,S69),評価手段(S7〜S31,S35,S37,S71〜S99,S103)およびアドバイス手段(S33,S39,S101,S105)を備える。動き検出手段は、被験者に装着されて当該被験者の体の動きを検出し、行動認識手段は、動き検出手段の検出結果に基づいて被験者の行動を認識して行動情報を作成する。評価手段は、作成した行動情報に基づいて被験者による手指衛生行動の実行状態を評価し、アドバイス手段は、この評価結果に関連して被験者にアドバイスを行う。
【0012】
第1の発明によれば、被験者に装着された動き検出手段を介してその行動を認識し、認識結果に基づいて被験者による手指衛生行動の実行状態を評価するので、客観性ないし信頼性の高い評価結果が得られる。そして、このような評価結果に応じたアドバイスを被験者に対して行うので、手指衛生行動のコンプライアンスを高めることができる。
【0013】
第2の発明に従う手指衛生励行システムは、第1の発明に従属し、手指衛生行動の実行状態は摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の少なくとも1つを含む。
【0014】
第2の発明によれば、手指衛生行動の実行状態を簡単かつ的確に評価できる。
【0015】
第3の発明に従う手指衛生励行システム(100)は、第1または第2の発明に従属し、動き検出手段は、被験者の両腕に装着される加速度センサ(12a,12b)を含み、評価手段は、行動認識手段によって作成した行動情報を少なくとも加速度センサの出力に基づいて行動区間に区分する区分手段(S7)、各行動区間における手指衛生行動の実行状態を少なくとも加速度センサの出力に基づいて推定する推定手段(S19,S21)、および推定手段によって推定した各行動区間における手指衛生行動の実行状態が規定値を超えているかどうかを判断する第1判断手段(S23〜S27,S35)を含み、アドバイス手段は、第1判断手段によって規定値を超えていないと判断した行動区間に関して不十分行動を警告する第1警告手段(S39)を含む。
【0016】
第3の発明では、動き検出手段として加速度センサが被験者の両腕に装着され、評価手段は、少なくともこの加速度センサの出力に基づいて、被験者による手指衛生行動を区分手段で行動区間に区分し、各行動区間における手指衛生行動の実行状態を推定手段で推定する。そして、推定した各行動区間における手指衛生行動の実行状態が規定値を超えているかどうかを第1判断手段で判断する。アドバイス手段によるアドバイスは、第1判断手段によって規定値を超えていないと判断した行動区間に関して不十分行動を第1警告手段で警告することにより行われる。
【0017】
なお、手指衛生行動の実行状態が摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の両方を含む場合、第1判断手段による判断は摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の各々について行われ、どちらか一方でも規定値を超えていないと判断された行動区間が第1警告手段による警告の対象となる。
【0018】
第3の発明によれば、行動情報を行動区間に区分して、行動区間ごとにアドバイスを行うので、たとえば手洗い行動を“左手背洗い”,“右手背洗い”,“右母指洗い”,…のように細分して、きめ細かなアドバイスを行うことが可能となる。
【0019】
また、区分処理を両腕の加速度に基づいて行うので、各行動区間を精度よく検出できる。なお、加速度センサの装着部位を両上腕とすれば、より好ましい。また、体の他の部位たとえば胸や腰に装着される他の加速度センサをさらに備えれば、認識処理や区分処理の精度向上が見込める。
【0020】
第4の発明に従う手指衛生励行システムは、第3の発明に従属し、既定の手指衛生行動に対応する行動区間の集合および各行動区間における手指衛生行動の実行状態に関する既定値を記憶しておくデータベース(DB)をさらに備え、第1判断手段は、推定手段によって推定した手指衛生行動の実行状態の推定値とデータベースに記憶している手指衛生行動の実行状態の既定値とを比較することによって、判断する。
【0021】
第4の発明によれば、熟達者の動作から抽出したデータを既定値としてデータベースに記憶させておくことで、的確な判断が行える。
【0022】
第5の発明に従う手指衛生励行システムは、第4の発明に従属し、評価手段は、被験者による手指衛生行動が終了したかどうかを少なくとも加速度センサの出力に基づいて判断する第2判断手段(S29)、および第2判断手段によって終了を判断したとき、データベースに記憶している行動区間の集合のうち未実行の行動区間があるかどうか判断する第3判断手段(S31)をさらに含み、アドバイス手段は、第3判断手段によって未実行行動区間があると判断したとき、未実行行動区間の存在を警告する第2警告手段(S33)をさらに含む。
【0023】
第5の発明によれば、未実行行動区間について警告を行うことで、コンプライアンスを一層高めることができる。
【0024】
第6の発明に従う手指衛生励行システムは、第3ないし第5のいずれかの発明に従属し、被験者による手指衛生行動の映像を記録する映像記録手段(14)をさらに備え、アドバイス手段は、映像記録手段によって記録している映像のうち第1判断手段によって規定値を超えていないと判断した行動区間に対応する部分を再生する映像再生手段(S45)をさらに含む。
【0025】
第6の発明によれば、手指衛生行動の映像を記録しておき、不十分行動を警告する際に対応部分の映像を再生するので、被験者に不十分行動を確認させることができる。
【0026】
第7の発明に従う手指衛生励行システムは、第6の発明に従属し、映像記録手段は互いに異なる複数の視点で被験者の手指衛生行動を撮影して複数視点映像を記録するようにし、映像再生手段は複数視点映像に基づいて自由視点映像を作成して再生する。
【0027】
第7の発明によれば、手指衛生行動を複数視点で撮影し、複数視点映像に基づく自由視点映像を作成するので、手指衛生行動を好適な視点から確認させることができる。
【0028】
第8の発明に従う手指衛生励行システム(100A)は、第1の発明に従属し、被験者の現在位置を繰り返し検出して位置情報を作成する位置検出手段(16)をさらに備える。動き検出手段の動き検出処理も、繰り返し行われる。評価手段は、位置検出手段によって作成した位置情報および行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件または要衛生的条件を満足するとき、被験者の手指が清潔であるかどうかを示す手指清潔状態フラグ(hand_clean)を不潔に対応する第1状態に設定する第1状態設定手段(S75a,S81a)、行動認識手段によって作成した行動情報が被験者の手指衛生行動を示すとき手指清潔状態フラグを清潔に対応する第2状態に設定する第2状態設定手段(S87a,S95a)、および位置検出手段によって作成した位置情報および行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方に基づいて被験者の手指が清潔であるべきであるかどうか判断する判断手段(S99,S103)を含む。アドバイス手段は、判断手段が被験者の手指が清潔であるべきであると判断したにも拘わらず手指清潔状態フラグが第1状態のままであるとき、アドバイスを行う(S101,S105)。
【0029】
第8の発明では、位置検出手段が被験者の現在位置を繰り返し検出して位置情報を作成し、評価手段は、位置検出手段によって作成した位置情報および行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件または要衛生的条件を満足するとき、第1状態設定手段によって、被験者の手指が清潔であるかどうかを示す手指清潔状態フラグを不潔に対応する第1状態に設定する。評価手段はまた、行動認識手段によって作成した行動情報が被験者の手指衛生行動を示すとき、第2状態設定手段によって手指清潔状態フラグを清潔に対応する第2状態に設定する。評価手段はさらに、位置検出手段によって作成した位置情報および行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方に基づいて、被験者の手指が清潔であるべきであるかどうかを判断手段で判断する。アドバイス手段によるアドバイスは、判断手段が被験者の手指が清潔であるべきであると判断したにも拘わらず手指清潔状態フラグが第1状態のままであるとき行われる。
【0030】
第8の発明によれば、位置情報および行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件または要衛生的条件を満足するとき手指清潔状態フラグを不潔に対応する第1状態に設定する一方、行動情報が手指衛生行動を示すとき手指清潔状態フラグを清潔に対応する第2状態に設定するので、手指清潔状態フラグは、被験者の位置および/または行動を反映して的確に制御される。そして、位置情報および/または行動情報から手指が清潔であるべきであると判断されるにも拘わらず手指清潔状態フラグが第1状態のままであるときアドバイスを行うので、指衛生行動の実行を適切なタイミングでアドバイスできる。
【0031】
第9の発明に従う手指衛生励行システムは、第8の発明に従属し、評価手段は、位置検出手段によって作成した位置情報および行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件を満足するとき、手洗いが必要であるかどうかを示す手洗い要否フラグ(need_handwash)を必要に対応する第3状態に設定する第3状態設定手段(S75b)、行動認識手段によって作成した行動情報が手洗い行動を示すとき手洗い要否フラグを不要に対応する第4状態に設定する第4状態設定手段(S87b)、位置検出手段によって作成した位置情報および行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が要衛生的条件を満足するとき、消毒が必要であるかどうかを示す消毒要否フラグ(need_disinifection)を必要に対応する第5状態に設定する第5状態設定手段(S81b)、および行動認識手段によって作成した行動情報が消毒行動を示すとき消毒要否フラグを不要に対応する第6状態に設定する第6状態設定手段(S95b)をさらに含み、アドバイス手段は、手指清潔状態フラグが第1状態でありかつ手洗い要否フラグが第3状態であるとき手洗い行動の実行をアドバイスし(S101)、手指清潔状態フラグが第1状態でありかつ消毒要否フラグが第5状態であるとき消毒行動の実行をアドバイスする(S105)。
【0032】
第9の発明では、位置情報および行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件を満足するとき手洗い要否フラグを必要に対応する第3状態に設定する一方、行動情報が手洗い行動を示すとき手洗い要否フラグを不要に対応する第4状態に設定する。また、位置情報および行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件を満足するとき消毒要否フラグを必要に対応する第5状態に設定する一方、行動情報が手洗い行動を示すとき消毒要否フラグを不要に対応する第6状態に設定する。
【0033】
第9の発明によれば、手洗い要否フラグおよび消毒要否フラグは、被験者の位置および/または行動を反映してそれぞれ的確に制御される。そして、手指清潔状態フラグが第1状態でありかつ手洗い要否フラグが第3状態であれば手洗い行動の実行を、手指清潔状態フラグが第1状態でありかつ消毒要否フラグが第5状態であれば消毒行動の実行を、それぞれアドバイスするので、適切な手指衛生行動の実行を適切なタイミングでアドバイスすることができる。
【0034】
第10の発明は、被験者に装着されて当該被験者の体の動きを検出する動き検出手段(12a〜12d)を有するシステム(100,100A)のプロセッサ(22)に、動き検出手段の検出結果に基づいて被験者の行動を認識して行動情報を作成する行動認識ステップ(S5,S69)、行動認識ステップによって作成した行動情報に基づいて被験者による手指衛生行動を評価する評価ステップ(S7〜S31,S35,S37,S71〜S99,S103)、および評価ステップの評価結果に関連して被験者にアドバイスを行うアドバイスステップ(S33,S39,S101,S105)を実行させるための、手指衛生励行プログラム(42,72)である。
【0035】
第11の発明は、(a)動きを検出する動き検出手段(12a〜12d)を被験者に装着し、(b)ステップ(a)で装着した動き検出手段の検出結果に基づいて被験者の行動を認識して行動情報を作成し(図3,図14)、(c)ステップ(b)で作成した行動情報に基づいて被験者による手指衛生行動を評価し(S7〜S31,S35,S37,S71〜S99,S103)、そして(d)ステップ(c)の評価結果に関連して被験者にアドバイスを行う(S33,S39,S101,S105)、手指衛生励行方法である。
【0036】
第10および第11の各発明によっても、第1の発明と同様に、手指衛生行動のコンプライアンスを高めることができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、手指衛生行動のコンプライアンスを高めることができる。
【0038】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
この発明を実施するための形態としては、次の2つがある。第1の形態は、教育に主眼をおいたシステムであり、たとえば看護学校での実習や病院での研修などに利用される。一方、第2の形態は、実際の医療現場を想定したシステムであり、たとえばトイレや汚物処理の後に手洗いが実践されているかどうかを監視する。
【0040】
第1の形態では、加速度センサなどの運動計測装置によって医療従事者(被験者)の体の動きを計測して手指衛生行動を認識し、認識結果を示す行動情報を“左手背洗い”,“右手背洗い”,“右母指洗い”,“左母指洗い”,…といった行動区間に区分する。そして、各行動区間で適切な手指衛生動作が実施されているかを判断する。たとえば、被験者の行動情報と手指衛生手技の熟達者のそれとを、各行動区間での摩擦動作回数,摩擦動作振幅量などによって定量的に比較することにより、被験者に不十分な手技についてアドバイスを行う。
【0041】
具体的には、手指衛生行動が終了した時点で、もし未実施の行動があれば、その旨の警告を行う。また、不十分行動区間の有無を判別し、もし不十分行動区間があれば、各不十分行動区間について次の処理を行う。すなわち、複数視点の映像からその行動区間に属する部分を切り出し、複数視点のうち最もその動作が視認しやすい視点からの映像(自由視点映像)を表示する。
【0042】
なお、この自由視点映像と一緒に、またはこれと相前後して、熟達者の模範動作の映像を表示してもよい。これにより、被験者が苦手・不十分とする動作に対する教育的効果を期待できる。なお、不十分行動区間に関するアドバイスは、手指衛生行動が終了した後とは限らず、手指衛生行動と並行して行ってもよい。
【0043】
第2の形態では、医療従事者の病棟内での位置を赤外線センサなどで検知する一方、医療従事者の体の動きを運動計測装置で計測して、適切なタイミングで適切な手指衛生行動が実行されているかを監視する。監視の結果、適切なタイミングで適切な手指衛生行動が行われていないときには、医療従事者が携帯しているPHSやPDA等の携帯端末を通じてアドバイスを行う。具体的には、手指が不潔であることを警告したり、手洗いが必要であれば手洗い行動を、消毒が必要であれば消毒行動を促したりする。
【0044】
以下、第1の形態に属する第1実施例および第2の形態に属する第2実施例について説明する。
〔第1実施例〕
図1を参照して、この実施例の手指衛生励行システム100は、近距離無線通信機能を各々が有するPC10,4つの加速度センサ12a〜12d,および自由視点映像生成装置14を備える。各加速度センサ12a〜12dは、3軸の加速度を繰り返し(たとえば1/100秒周期で)検知し、検知結果を示す加速度データをPC10に送信する。送信される加速度データには、内蔵の時計(図示せず)に基づくタイムスタンプが付加される。
【0045】
なお、近距離無線通信方式としては、たとえば“ZigBee”(登録商標)もしくは“IEEE 802.11”等を用いることができる。
【0046】
自由視点映像生成装置14は、複数のカメラ(14a,14b,…:図3参照)を含み、互いに異なる複数の視点で被写体を撮影して複数視点映像を記録する。記録される複数視点映像には、内蔵の時計(図示せず)に基づくタイムスタンプが付加される。自由視点映像生成装置14はまた、PC10と協働して、複数視点映像に基づいて自由視点映像を生成し、これを図2のLCDモニタ28に表示する。なお、この自由視点映像生成手法については、本出願人による特開2006−211531号公報「映像生成装置、及びプログラム」に開示されている。
【0047】
図2を参照して、PC10は、近距離無線部20,CPU22,ROM24,RAM26,LCDモニタ28およびキー入力装置30を含む。近距離無線部20にはアンテナ20aが、CPU22には時計22Tが、それぞれ設けられる。近距離無線部20は、アンテナ20aを通じて加速度センサ12a〜12dおよび自由視点映像生成装置14の各々と近距離無線通信を行う。
【0048】
ROM24には、CPU22によって実行されるプログラム(メインプログラム,行動認識プログラムおよび通信制御プログラムなど)、およびプログラムによって参照されるデータベース(DB)などが格納されている。RAM26は、CPU22がプログラムを実行するための記憶領域を提供する。時計22Tは、加速度センサ12a〜12dおよび自由視点映像生成装置14の各々の内蔵時計(図示せず)と同期しており、プログラムの実行に必要な時間情報を生成する。キー入力装置30は、オペレータのキー操作に応じたコマンドをCPU22に入力する。
【0049】
以上のように構成された手指衛生励行システム100は、たとえば医療業務に図3に示す要領で適用される。加速度センサ12a〜12dは、被験者たとえば看護師の両上腕,胸および腰に装着される。カメラ14a,14b,…は、被験者の手指を互いに異なる複数の視点で捉えるべく、室内の壁面や天井に分散して配置される。PC10は、加速度センサ12a〜12dおよびカメラ14a,14b,…の各々と近距離無線通信を行える範囲内で、任意の位置に設置される。
【0050】
キー入力装置30によって起動操作が行われると、ROM24のプログラムがRAM26に転送され、CPU22はプログラムに従う制御処理を開始する。RAM26のメモリマップを図4に示す。図4を参照して、RAM26は、プログラム記憶領域40およびデータ記憶領域50などを含む。プログラム記憶領域40には、メインプログラム42,行動認識プログラム44および通信制御プログラム46などが格納される。
【0051】
メインプログラム42は、システム全体を制御してこの実施例の手指衛生励行処理を実現するためのプログラムであり、図5〜図7のフローチャートに対応する。行動認識プログラム44および通信制御プログラム46は、それぞれメインプログラム42によって利用されるサブプログラムの1つである。すなわち、メインプログラム42は、行動認識プログラム44を利用して手指衛生行動を認識し、また通信制御プログラム46を利用して近距離無線部20を制御することで近距離無線通信を行う。
【0052】
データ記憶領域50は、集合&既定値領域52,加速度領域54,行動区間領域56,摩擦動作回数領域58,摩擦動作振幅量領域60,不十分実行行動領域62および自由視点映像領域64などを含む。
【0053】
ROM24内のDBには、既定の手指衛生行動に対応する行動区間の集合、および各行動区間での摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の既定値が格納されており、集合&既定値領域52は、このDBから読み込まれた集合および既定値を記憶する。加速度領域54は、加速度センサ12a〜12dからの加速度データを記憶する。“行動区間”,“摩擦動作回数”,“摩擦動作振幅量”および“不十分実行行動”は、この手指衛生励行処理において利用される変数であり、行動区間領域56,摩擦動作回数領域58,摩擦動作振幅量領域60および不十分実行行動領域62は、それぞれ対応する変数を記憶する。自由視点映像領域64は、自由視点映像生成装置14によって生成された自由視点映像を記憶する。
【0054】
システム起動後、CPU22は、図5〜図7のフローチャートに従う手指衛生励行処理を実行する。図5を参照して、まずステップS1で、ROM24のDBから既定の手指衛生行動に対応する行動区間の集合、および各行動区間での摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の既定値を読み込む。ここで既定値は、熟達者の動作から抽出された値である。読み込んだ集合および既定値は、RAM26内の集合&既定値領域52に記憶される。
【0055】
加速度領域54には、加速度センサ12a〜12dからの加速度データが記憶されており、この加速度データをステップS3で取得する。そしてステップS5で、取得した加速度データに基づいて被験者の手指衛生行動を認識し、認識結果を示す行動情報を作成する。次のステップS7では、この行動情報を“行動区間”に区分する。行動区間は、その行動の属性(たとえば“左手背洗い”や“右手背洗い”など)を示す属性情報と、その行動の開始時刻および終了時刻を示す時間情報とを含み、RAM26の行動区間領域56に記憶される。
【0056】
ここで、ステップS5の認識処理には、本出願人による特願2007−311016号「行動識別システム、行動識別方法、最適センサ集合決定方法および最適パラメータ決定方法」を用いることができる。この先行技術では、看護師等の体の動きを無線加速度センサ等の運動計測センサで計測し、波形処理に基づく特徴量を用いて看護師の行動を識別する手法が提案されている。ステップS5では、この手法が、以下のようにして手指衛生行動の認識に拡張・適用される。
【0057】
すなわち、先行技術の手法では、ある一定の時間窓を各加速度波形にずらしながら掛けることで、その時間窓内の平均、標準偏差、FFTパワー、FFTエントロピ、および各加速度軸間の相関係数を求め、これらを識別特徴量として用いている。
【0058】
この実施例の認識処理ではさらに、手指衛生行動に含まれる摩擦動作などの周期性を持つ各行動を効率的に検知するため、音声処理でよく用いられる線形予測符号化(Linear Predictive Coding:LPC)に基づくパワースペクトル推定を行う。そして、このパワースペクトルの対数を逆フーリエ変換してケプストラム係数を求め、これを新たな認識特徴量として導入する。
【0059】
LPCは、過去のM個のデータサンプルx(n−1),x(n−2),…,x(n−M)の重み付け和から時刻nのデータx(n)を予測するモデルであり、次式で表現される。
【0060】
【数1】

【0061】
ここで、a_iはLPC係数と呼ばれ、全極型のフィルタ係数に対応する。また、MをLPC次数と呼ぶ。e(n)は予測誤差である。加速度データx(0), x(1),x(2),…,x(L−1) に対して、予測誤差の2乗つまり
【0062】
【数2】

【0063】
を係数a_iに関して最小化するとき、次のユール・ウォーカー方程式と呼ばれる連立方程式が導出されることが知られている。
【0064】
【数3】

【0065】
ここで、R( i ), 0 ≦ i ≦ M は、次式で表される自己相関関数である。
【0066】
【数4】

【0067】
ユール・ウォーカー方程式は、レビンソン・ダービン法と呼ばれる再帰計算によって効果的に解くことができる(文献:池原・島村・真田著「MATLABマルチメディア信号処理(下)」、pp. 28-29」)。
【0068】
ある波形について、従来のFFTによって求めたスペクトログラムと、本実施例のLPCによって求めたスペクトログラムとを図8に示す。図8を参照して、最上段に示された波形は、右上腕につけた加速度センサ12bから得られた波形(X軸分)であり、この加速度波形に対する2種類のスペクトログラム(パワースペクトルの時間推移を等高線表示したもの)、つまりFFT(従来法)によるスペクトログラムおよびLPCによるスペクトログラムが、中段および下段に示される。
【0069】
図9(A)に示す2つのグラフは、図8の上段に示す加速度波形について、時刻2秒(点線A)でのスペクトラムをFFT(従来法)およびLPCによって求めた結果であり、図8中段および下段に示す2つのスペクトログラムの点線Aでの断面に相当する。
【0070】
図9(B)に示す2つのグラフは、図8の上段に示す加速度波形について、時刻8秒(点線B)でのスペクトラムをFFT(従来法)およびLPCによって求めた結果であって、図8中段および下段に示す2つのスペクトログラムの点線Bでの断面に相当する。
【0071】
図8,図9(A)および図9(B)から明らかなように、LPCによる手法がFFTによる従来法よりも明確に基本周波数となるピークを検知できていることがわかる。これは、LPCが全極フィルタに基づくモデルである性質から、スペクトルのピークが高々LPC次数の半分に抑えられるためである(LPCによるスペクトルは、FFTによるスペクトルの包絡を形成する)。時刻2秒と8秒は、それぞれ右指先洗い動作と右母指洗い動作に相当するが、それぞれの時刻でのスペクトルを比較すると、FFTのそれは差が不明瞭であるのに対し、LPCのそれはピークの箇所に明瞭な差異が認められる。
【0072】
図10には、右上腕の加速度センサ12bについて、LPCによるスペクトログラムが加速度軸ごとに示されている。図10を参照して、最上段の3つの波形は、加速度センサ12bから得られたX,Y,Zの3軸分の波形であり、各波形についてLPCを行うことで、第2段〜第4段に示すような3軸分のスペクトログラムが得られる。図10に示すとおり、手洗いの行動ごとに各加速度軸のスペクトログラムが異なるので、3軸分のスペクトログラムを組み合わせることで、各行動区間の検出精度が向上する。
【0073】
ここではさらに、上記LPCに基づくパワースペクトルに対してケプストラム抽出処理を行う。ケプストラム抽出により、加速度波形の周期成分に関し、基本周波数と調波構造の成分とを互いに分離することができる。パワースペクトルをP(K), k=0,1,2,…,N−1とすると、ケプストラムc(n)は次式で表現される。
【0074】
【数5】

【0075】
すなわち、ケプストラムは、パワースペクトルの対数に対して、フーリエ逆変換を施したものである。n=0付近の成分が基本周波数に相当するスペクトル包絡を表し、0よりも大きいところにピークを持つ成分が調波構造を表す。調波構造を捉えることにより、似たような基本周波数を取る動作、例えば「左手背洗い」と「右指先洗い」など、右手が同じような周期で動く動作についても、相互に区別することができる。
【0076】
認識特徴量としては、先述した特願2007−311016号の手法により求めた時間窓内の平均、標準偏差、および各加速度軸間の相関係数に加え、この実施例に特有のLPCスペクトルによるパワーの総和、LPCスペクトルのエントロピ、およびケプストラムを用いる。
【0077】
この実施例では、被験者の両上腕、胸および腰の4箇所に3軸の加速度センサが装着されるので、全12軸の各々について、上記の特徴量に基づく認識を行う。LPC次数は30とし、時間窓は128サンプルのハミングウィンドウ、時間窓のずらし幅は64サンプルとした。
【0078】
特に、手洗い行動を“左手背洗い”や“右母指洗い”のように詳細に認識する場合、両上腕の加速度センサ12aおよび12bからの計6軸が重要となる。上記の特徴量を用いて被験者の手指衛生行動を詳細に認識した結果の一部を図11に示す。図11より、各行動の切れ目が明確に認識できていることがわかる。
【0079】
なお、図11は、LCDモニタ28に表示される画面の一例であり、画面内には、左右上腕からの6軸分の加速度波形(第1段および第2段)とこれに基づく認識結果(第3段左)に加え、必要に応じて自由視点映像(第3段右)も表示される。なお、自由視点映像については後述する。
【0080】
図5に戻って、こうして各行動区間が検出されると、次に、ステップS9〜S29のループ処理を通じ、各行動区間での実行状態を評価する。手指衛生行動の評価においては、摩擦動作の回数や大きさ(振幅量)が特に重要であるため、摩擦動作回数および摩擦動作振幅量を推定する。ただし、摩擦動作回数および摩擦動作振幅量のどちらか一方だけを推定してもよい。
【0081】
具体的には、まずステップS9で、検出された行動区間のうち1つを選択する。ここでは、図11の認識結果から“右指先洗い”区間を選択したとする。この“右指先洗い”区間の各軸加速度波形を図12の第1段および第2段に示す。
【0082】
次に、選択した行動区間の各軸加速度波形から最も振幅変化が大きい軸をステップS11で抽出する。たとえば、図12の第1段および第2段に示した“右指先洗い”区間の各軸加速度波形についてみると、右上腕のZ軸が最大振幅軸に該当するため、図12の第3段に示すように、右上腕のZ軸が抽出される。
【0083】
次に、最大振幅軸の加速度波形から各軸加速度波形の平均値をステップS13で差し引き、差し引き結果の波形に移動平均等のローパスフィルタ処理をステップS15で施す。次のステップS17では、こうして平滑化された波形が“0”と交差する点(零クロス点)を検出する。たとえば、図12の第3段に示した右上腕Z軸の波形は、図12の第4段に示すように平滑化され、この平滑化後の波形から白丸および黒丸で示す零クロス点が検出される。
【0084】
そしてステップS19で、検出した零クロス点を計数し、計数結果をこの行動区間での摩擦動作回数とする。たとえば、図12の第4段に示した例では、白丸および黒丸のいずれか一方を計数する。ただし、白丸および黒丸の両方の総計を求めてもよい。
【0085】
一方、摩擦動作振幅量は、次のステップS21で、次のようにして推定される。まず、この行動区間を、各零クロス点の位置で区切ることによって、摩擦動作区間に細分する。細分して得られる摩擦動作区間の個数は、上記の摩擦動作回数に相当する。次に、各摩擦動作区間について、加速度波形の変化幅(加速度振幅)を求め、これらを積算して摩擦動作振幅量とする。なお、積算結果を摩擦動作回数で除した平均値を摩擦動作振幅量としてもよい。
【0086】
ステップS19およびS21で得られた推定値、つまりこの行動区間での摩擦動作回数および摩擦動作振幅量は、図6に示すステップS23およびS25で、熟達者の動作から抽出された既定値とそれぞれ比較される。比較の結果、既定値に満たない推定値が1つでもあれば、この行動区間は、ステップS27で“不十分実行行動”として不十分実行行動領域62(図4参照)に記憶される。
【0087】
なお、摩擦動作回数および摩擦動作振幅量に代えて、またはこれらに加えて、手指衛生行動の実行状態を定量的に示す他の指標、たとえば摩擦継続時間を推定してもよい。摩擦動作継続時間は、行動区間の時間長として推定される。
【0088】
ステップS29では、全ての行動区間が選択されたか否かを判別し、NOであればステップS9に戻る。ステップS9で最後の行動区間が選択され、この行動区間についてステップS11〜S27の処理が実行されると、ステップS29でYESと判別し、ループを脱してステップS31に進む。
【0089】
ステップS31では、ステップS5の認識結果を集合&既定値領域52の記憶内容と照合して、被験者が既定の手指衛生行動を全て実行したか否かを判別し、YESであればステップS35に進む。ステップS31でNOであれば、ステップS33で未実行行動の存在をLCDモニタ28の画面を通じて警告した後、ステップS35に進む。
【0090】
図7を参照して、ステップS35では、不十分実行行動領域62を参照して、不十分実行行動区間の有無を判別し、NOであればこの手指衛生励行処理を終了する。ステップS35でYESであれば、ステップS37〜S47のループ処理を通じて、不十分と判定された各行動区間について不十分実行の警告および自由視点映像の表示を行う。
【0091】
具体的には、ステップS37で不十分実行行動区間の1つを選択し、この行動区間について、まずステップS39で不十分実行の警告を行う。自由視点映像生成装置14は、被験者の手指衛生行動を複数視点で捉えた複数視点映像を記録しており、次のステップS41では、記録された複数視点映像のうちこの不十分実行行動区間に対応する部分を自由視点映像生成装置14から読み出す。読み出すべき部分は、不十分実行行動区間の時間情報(開始時刻および終了時刻)で複数視点映像のタイムスタンプを検索することにより特定可能である。
【0092】
次に、こうして読み出した複数視点映像に基づく自由視点映像をステップS43で生成し、これをステップS45でLCDモニタ28に表示する。そして、全ての不十分実行行動区間が選択されたか否かをステップS47で判別し、NOであればステップS37に戻る。ステップS37で最後の不十分実行行動区間が選択され、この行動区間についてステップS39〜S45の処理が実行されると、ステップS47でYESと判別し、この手指衛生行動処理を終了する。
【0093】
以上から明らかなように、この実施例では、4つの加速度センサ12a〜12dが被験者の両上腕,胸および腰に装着される。PC10のCPU22は、加速度センサ12a〜12dの検出結果に基づいて、被験者の手指衛生行動を認識し(S5)、認識結果を示す行動情報を行動区間に区分し(S7)、各行動区間における摩擦動作回数および摩擦動作振幅量を推定する(S19,S21)。そして、推定した各行動区間における摩擦動作回数および摩擦動作振幅量がそれぞれ規定値を超えているかどうかを判断して(S23〜S27,S35)、摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の少なくとも1つが規定値を超えていないと判断した行動区間について不十分行動を警告する(S39)。
【0094】
このように、被験者に装着された加速度センサ12a〜12dを介してその行動を認識し、認識結果に基づいて被験者による手指衛生行動の実行状態を評価するので、客観性ないし信頼性の高い評価結果が得られる。そして、このような評価結果に応じたアドバイスを被験者に対して行うので、手指衛生行動の実行状態に基づく的確なアドバイスが行える。
【0095】
特に、行動情報を行動区間に区分して、評価およびアドバイスを行動区間ごとに行うので、たとえば手洗い行動を“左手背洗い”,“右手背洗い”,“右母指洗い”,…のように細分して、きめ細かなアドバイスを行うことが可能である。
【0096】
したがって、手指衛生行動のコンプライアンスを高めることができる。
〔第2実施例〕
図13を参照して、この実施例の手指衛生励行システム100Aは、近距離無線通信機能を各々が有するPC10,4つの加速度センサ12a〜12d,および通過センサシステム16を備える。各加速度センサ12a〜12dは、第1実施例のものと共通する。PC10は、第1実施例のものとハードウェアにおいて共通するが(図2参照)、ソフトウェアにおいては相違する(図15〜図18参照:後述)。
【0097】
通過センサシステム16は、赤外線発光器16aおよび赤外線受光器16bを含む。赤外線発光器16aはID信号で変調された赤外線を発光し、赤外線受光器16bは赤外線を受光してID信号に復調する。赤外線受光器16bには近距離無線部(図示せず)が設けられており、復調されたID信号はこの近距離無線部を通じてPC10に送信される。
【0098】
手指衛生励行システム100Aの医療業務への適用例を図14に示す。図14を参照して、加速度センサ12a〜12dは、ここでも被験者たとえば看護師の両上腕,胸および腰に装着される。赤外線発光器16aは被験者の頭部に装着され、赤外線受光器16bは病棟内の各部屋の入り口(ENT)に設置される。PC10は、加速度センサ12a〜12dおよび赤外線受光器16bの各々と近距離無線通信を行える範囲内で、任意の位置に設置される。
【0099】
PC10は、被験者の手指衛生動作を加速度センサ12a〜12dからの加速度データに基づいて第1実施例と同様の手法により認識する。
【0100】
また、PC10は、赤外線受光器16bの位置を把握しており、赤外線受光器16bからID信号を受信することによって、そのID信号に対応する赤外線発光器16aつまり被験者の現在位置を検出する。
【0101】
そして、PC10は、認識結果を示す行動情報および検出結果を示す位置情報の少なくとも一方に基づいて、被験者の手指が清潔であるか否かを示す手指清潔状態フラグ“hand_clean”,石鹸による手洗いが必要か否かを示す手洗い要否フラグ“need_handwash”,およびアルコール消毒薬による消毒が必要か否かを示す消毒要否フラグ“need_disinfection”の各々を制御する。
【0102】
具体的には、位置情報に基づいて、被験者がトイレや医療廃棄物等が存在する場所に位置すると判断される場合に、被験者の手指が不潔になったとして、手指清潔状態フラグhand_cleanを“False”とする。一方、行動情報に基づいて、手洗い動作または消毒動作が一定量以上行われたと判断される場合には、手指清潔状態フラグ hand_cleanを“True”に更新する。
【0103】
手指清潔状態フラグが「不潔状態」(hand_clean=False)のまま、手指が清潔であるべき場所に入ろうとした際には、被験者が携帯しているPHSやPDA等の携帯端末18に手指衛生行動を促すアラートを提示する。ここで、手指が清潔であるべき場所とは、病棟内の病室・診察室・与薬準備室など、医療従事者の手指が患者、検査機器、薬剤等に触れる可能性がある場所をいう。
【0104】
このように、通過センサシステム16で検知した被験者の現在位置から、その手指が不潔であることが推定されるとき、手指清潔状態フラグを「不潔状態」(hand_clean=False)に更新する。
【0105】
ただし、被験者の手指が不潔であることは、行動認識の結果からも推定できる。たとえば、被験者が汚物処理や清掃作業など行えば、この被験者の手指は不潔であると推定される。
【0106】
さらに、行動認識によって手指が清潔であるべき「行動」が検知され、かつ手指清潔状態フラグが「不潔状態」(hand_clean=False)のままである場合には、直ちに携帯端末18にアラートを提示して、適切な手指衛生行動を促すこともできる。
【0107】
上記をまとめると、位置情報および行動情報の少なくとも一方から被験者の手指が不潔であることが推定されるとき、手指清潔状態フラグを「不潔状態」(hand_clean=False)に更新する一方、行動情報から被験者が適切な手指衛生行動を行ったと推定されるとき、手指清潔状態フラグを「清潔状態」(hand_clean=True)に更新する。
【0108】
なお、適切な手指衛生行動が検知された場合には、これが継続された期間を計測して、計測結果が規定値に満たないとき、再度手指衛生動作を促すようにしてもよい。これにより、感染制御の質の向上を見込める。
【0109】
また、被験者の手指が清潔であるべき状況(被験者が要衛生的場所にいるか、被験者が要衛生的行動を行っているか)についても、位置情報および行動情報から検知する。
【0110】
手指衛生行動は、「石鹸と流水による手洗い」および「アルコール消毒薬による消毒」の2方法に大別される。「アルコール消毒薬による消毒」は、手指が比較的清潔な時や、迅速な手指消毒が必要な場合に行われるが、手指の汚染度が高い場合には、石鹸と流水による手洗いが必要となる。各方法を取るべき状況の例は、以下のようにまとめられる。
【0111】
1.石鹸と流水による手洗いが必要な状況
(1−a) 食事の前後
(1−b) トイレの使用後
(1−c) 手袋の取り外し後
(1−d) 汚物処理操作後
2.アルコール消毒薬による消毒が必要な状況
(2−a) 薬剤を用いる業務(点滴混注・作成業務)などの無菌操作の間
(2−b) ベッドメーキングの間
(2−c) 患者の検査・診察・与薬の間(病室や診察室に位置する間)
上記の各状況は、先述した特願2007−311016号の手法によって認識可能である。また、行動認識結果を用いて、「石鹸と流水による手洗い」および「アルコール消毒薬による消毒」のいずれの手指衛生行動が必要かを判別し、必要な手指衛生行動を促すことができる。
【0112】
具体的には、(1−a),(1−b),(2−a),(2−c)については、それぞれ食堂等食事を取る場所、処置室、トイレ、病室・診察室への出入りを通過センサシステム16で検知すればよい。(1−a),(1−c),(1−d),(2−a),(2−b),(2−c)に関しては、加速度センサ12a〜12dを用いた行動認識手法によって、またはこの行動認識手法と通過センサシステム16とを組み合わせることによって、検知できる。
【0113】
そして、食堂・トイレを「非衛生的領域」、処置室・病室・診察室を「要衛生的領域」のように分類して、非衛生的領域に入って出た場合には、手指清潔状態フラグを「不潔状態」(hand_clean=False)にし、かつ手洗い要否フラグを「必要状態」(need_handwash=True)にする。
【0114】
また、手指清潔状態フラグが「不要状態」(need_handwash=False)でも、要衛生的領域に入った際に手指清潔状態フラグが「不潔状態」(hand_clean=False)であり、かつ消毒動作が検知されていない場合には、消毒要否フラグ“need_disinfection”を“True”にして、アルコール消毒薬による消毒行動を促すことができる。
【0115】
さらには、(1−a),(1−b),(1−c),(1−d)を“非衛生的行動”、(2−a),(2−b),(2−c)を“要衛生的行動”と定義して、非衛生的行動が検知された際には、手指清潔状態フラグを「不潔状態」(hand_clean=False)とし、かつ手洗い要否フラグを「必要状態」(need_handwash=True)とすることで、石鹸と流水による手洗いを促すことができる。
【0116】
手洗いが必要でなくとも、手指清潔状態フラグが「不潔状態」(hand_clean=False)であり、かつ要衛生的行動が検知された場合には、消毒要否フラグを「必要状態」(need_disinfection=True)とすることで、アルコール消毒薬による消毒を促すことができる。
【0117】
以上のようなPC10の動作は、CPU22が、図15に示すRAM26内のプログラムおよびデータに基づいて、図16〜図18のフローチャートに従う処理を実行することよって、実現される。
【0118】
図15を参照して、RAM26は、プログラム記憶領域70およびデータ記憶領域80などを含む。プログラム記憶領域70には、メインプログラム72,行動認識プログラム74および通信制御プログラム76などが格納される。
【0119】
メインプログラム72は、システム全体を制御してこの実施例の手指衛生励行処理を実現するためのプログラムであり、図16〜図18のフローチャートに対応する。行動認識プログラム74および通信制御プログラム76は、第1実施例の行動認識プログラム44および通信制御プログラム46(図4参照)と同様のプログラムである。
【0120】
データ記憶領域80は、集合領域82,現在位置領域84,加速度領域86,行動領域88およびフラグ領域90などを含む。
【0121】
ROM24内のDBには、非衛生的領域の集合(Ld),要衛生的領域の集合(Lc),非衛生的行動の集合(Ad)および要衛生的行動の集合(Ac)が格納されており、集合領域82は、このDBから読み込まれた集合Ld,Lc,AdおよびAcを記憶する。現在位置領域84は、通過センサシステム16からの現在位置(L)を記憶する。加速度領域86は、加速度センサ12a〜12dからの加速度データ(a)を記憶する。行動領域88は、行動認識の結果つまり行動情報(A)を記憶する。フラグ領域90は、前述した3つのフラグ、つまり手指清潔状態フラグ“hand_clean”,手洗い要否フラグ“need_handwash”,および消毒要否フラグ“need_disinfection”を記憶する。
【0122】
図16を参照して、システムが起動されると、CPU22は、まずステップS61で、ROM24のDBから前述の集合Ld,Lc,AdおよびAcを読み込む。読み込んだ集合は、RAM26内の集合領域82に記憶される。次のステップS63では、フラグを初期化する。具体的には、手指清潔状態フラグ“hand_clean”に“True”を、手洗い要否フラグ“need_handwash”および消毒要否フラグ“need_disinfection”の各々には“False”を、それぞれセットする。
【0123】
その後、ステップS65に進んで、通過センサシステム16を介して被験者の現在位置を検出し、検出結果を示す現在位置Lを現在位置領域84に記憶する。次のステップS67では、加速度センサ12a〜12dから加速度データaを取得して加速度領域86に記憶し、そしてステップS69で、この加速度データaに基づいて被験者の手指衛生行動を認識し、認識結果を示す行動情報Aを行動領域88に記憶する。なお、認識を行う際には、加速度データaに加えて現在位置Lを考慮してもよい。
【0124】
次に、現在位置Lが非衛生的領域集合Ldに属する(L∈Ld)か否かをステップS71で判別し、ここでNOであれば、行動情報Aは非衛生的行動集合Adに属する(A∈Ad)か否かをステップS73でさらに判別する。ここでもNOであれば、ステップS77に進む。
【0125】
ステップS71でYESであるか、またはステップS73でYESであれば、ステップS75aで手指清潔状態フラグ“hand_clean”に“False”をセットし、さらにステップS75bで手洗い要否フラグ“need_handwash”に“True”をセットした後、ステップS77に進む。
【0126】
図17を参照して、ステップS77では、現在位置Lが要衛生的領域集合Lcに属する(L∈Lc)か否かを判別する。ここでNOであれば、行動情報Aは要衛生的行動集合Acに属する(A∈Ac)か否かをステップS79でさらに判別し、ここでもNOであればステップS83に進む。
【0127】
ステップS77でYESであるか、またはステップS79でYESであれば、ステップS81aで手指清潔状態フラグ“hand_clean”に“False”をセットし、さらにステップS81bで消毒要否フラグ“need_disinfection”に“True”をセットした後、ステップS83に進む。
【0128】
ステップS83では、行動情報Aが「石鹸による手洗い」であるか否かを判別し、ここでYESであれば、ステップS85で手洗い継続時間が閾値以上であるか否かを判別する。ステップS85でNOであれば、ステップS97に進む。
【0129】
ステップS85でYESであれば、ステップS87aで手指清潔状態フラグ“hand_clean”に“True”をセットし、さらにステップS87bで手洗い要否フラグ“need_handwash”に“False”をセットした後、ステップS97に進む。
【0130】
ステップS83でNOであれば、ステップS89で石鹸による手洗いが必要か否かを判別する。手洗い要否フラグ“need_handwash”が“True”であればステップS97に進む。一方、need_handwash=Faulseであれば、ステップS89でNOと判別し、ステップS91に移る。
【0131】
ステップS91では、行動情報Aが「アルコール消毒薬による消毒」であるか否かを判別し、ここでもNOであればステップS97に進む。ステップS91でYESであれば、ステップS93で消毒継続時間が閾値以上であるか否かをさらに判別する。
【0132】
ステップS93でNOであればステップS97に進む。一方、ステップS93でYESであれば、ステップS95aで手指清潔状態フラグ“hand_clean”に“True”をセットし、さらにステップS95bで消毒要否フラグ“need_disinfection”に“False”をセットした後、ステップS97に進む。
【0133】
図18を参照して、ステップS97では、被験者の手指が不潔なままか否かを判別する。手指清潔状態フラグ“hand_clean”が“True”であれば、ステップS97でNOと判別し、ステップS65に戻る。一方、hand_clean=Falseであれば、ステップS97でYESと判別し、ステップS99に移る。
【0134】
ステップS99では、石鹸による手洗いが必要か否かを判別する。手洗い要否フラグ“need_handwash”が“False”であれば、ステップS99でNOと判別してステップS103に進む。一方、need_handwash=Trueであれば、ステップS99でYESと判別してステップS101に移る。ステップS101では、携帯端末18を介して被験者に手指の不潔を警告し、「石鹸による手洗い」を促がす。その後、ステップS103に進む。
【0135】
ステップS103では、アルコール消毒薬による消毒が必要か否かを判別する。消毒要否フラグ“need_disinfection”が“False”であれば、ステップS103でNOと判別してステップS65に戻る。一方、need_disinfection=Trueであれば、ステップS103でYESと判別してステップS105に移る。ステップS105では、携帯端末18を介して被験者に手指の不潔を警告し、「アルコール消毒薬による消毒」を促がす。その後、ステップS65に戻る。
【0136】
以上から明らかなように、この実施例では、4つの加速度センサ12a〜12dが被験者の両上腕,胸および腰に装着される。PC10のCPU22は、通過センサシステム16を介して被験者の現在位置を繰り返し検出し(S65)、また、加速度センサ12a〜12dの検出結果に基づいて被験者の行動を認識する(S69)。
【0137】
そしてCPU22は、検出結果を示す位置情報および認識結果を示す行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件または要衛生的条件を満足するとき、被験者の手指が清潔であるかどうかを示す手指清潔状態フラグ(hand_clean)を不潔に対応する第1状態(False)に設定し(S75a,S81a)、行動情報が被験者の手指衛生行動を示すとき手指清潔状態フラグを清潔に対応する第2状態に設定する(S87a,S95a)。そして、位置情報および行動情報の少なくとも一方に基づいて被験者の手指が清潔であるべきであるかどうか判断し(S99,S103)、被験者の手指が清潔であるべきであると判断したにも拘わらず手指清潔状態フラグが第1状態のままであるとき、携帯端末18を通じて被験者に手指衛生行動をアドバイスする(S101,S105)。
【0138】
このように、被験者に装着された加速度センサ12a〜12dを介してその行動を認識し、認識結果に基づいて被験者による手指衛生行動の要否および実行状態を評価するので、客観性ないし信頼性の高い評価結果が得られる。そして、このような評価結果に応じたアドバイスを被験者に対して行うので、手指衛生行動要否および実行状態に応じた的確なアドバイスが行える。
【0139】
特に、CPU22は、位置情報および行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件を満足するとき手洗い要否フラグ(need_handwash)を必要に対応する第3状態(True)に設定し(S75b)、行動情報が手洗い行動を示すとき手洗い要否フラグを不要に対応する第4状態(False)に設定する(S87b)。また、位置情報および行動情報の少なくとも一方が要衛生的条件を満足するとき消毒要否フラグ(need_disinifection)を必要に対応する第5状態(True)に設定し(S81b)、行動情報が消毒行動を示すとき消毒要否フラグを不要に対応する第6状態(False)に設定する(S95b)。そして、手指清潔状態フラグが第1状態でありかつ手洗い要否フラグが第3状態であるとき手洗い行動の実行をアドバイスし(S101)、手指清潔状態フラグが第1状態でありかつ消毒要否フラグが第5状態であるとき消毒行動の実行をアドバイスする(S105)。このため、適切なタイミングで適切な手指衛生行動の実行をアドバイスすることが可能である。
【0140】
したがって、手指衛生行動のコンプライアンスを高めることができる。
【0141】
なお、各実施例では、被験者の両上腕,胸および腰に4つの加速度センサ12a〜12dを装着したが、加速度センサの個数や装着部位は適宜変更可能である。加速度センサに代えて、またはこれに加えて、たとえばジャイロセンサなど他の動きセンサを用いてもよい。
【0142】
また、各実施例では、手指衛生励行処理を実行する処理装置としてPC10を用いたが、たとえばPDAなど、他の処理装置を用いてもよい。PDAのような携帯型の処理装置を被験者本人に携行させれば、位置的な制約が緩和されるので、手指衛生励行システムの適用範囲の拡大が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】この発明の第1実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例に適用されるPCの構成例を示すブロック図である。
【図3】第1実施例の医療業務への適用例を示す図解図である。
【図4】第1実施例でPCのRAMに適用されるメモリマップを示す図解図である。
【図5】第1実施例でのPCのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図6】第1実施例でのPCのCPU動作の他の一部を示すフロー図である。
【図7】第1実施例でのPCのCPU動作のその他の一部を示すフロー図である。
【図8】ある波形と、この波形からFFT(従来法)およびLPCによってそれぞれ求めた2つのスペクトログラムとを示すグラフである。
【図9】(A)は図8の波形からFFT(従来法)およびLPCによってそれぞれ求めた時刻2秒での2つのスペクトラムを示すグラフであり、(B)は図8の波形からFFT(従来法)およびLPCによってそれぞれ求めた時刻8秒での2つのスペクトラムを示すグラフである。
【図10】右上腕の加速度センサからの波形とLPCによるスペクトログラムとを軸ごとに示すグラフである。
【図11】第1実施例による手指衛生行動の認識結果の一部(モニタ画面の表示例)を示す図解図である。
【図12】認識結果に基づいて動作量を推定する手順を説明するための図解図である。
【図13】この発明の第2実施例の構成を示すブロック図である。
【図14】第2実施例の医療業務への適用例を示す図解図である。
【図15】第2実施例でPCのRAMに適用されるメモリマップを示す図解図である。
【図16】第2実施例でのPCのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図17】第2実施例でのPCのCPU動作の他の一部を示すフロー図である。
【図18】第2実施例でのPCのCPU動作のその他の一部を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0144】
10 …PC
12a〜12d …加速度センサ
14 …自由視点映像生成装置
16 …通過センサシステム
18 …携帯端末
20 …近距離無線部
22 …CPU
22T …時計
24 …ROM
26 …RAM
28 …LCDモニタ
100,100A …手指衛生励行システム
DB …データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に装着されて当該被験者の体の動きを検出する動き検出手段、
前記動き検出手段の検出結果に基づいて前記被験者の行動を認識して行動情報を作成する行動認識手段、
前記行動認識手段によって作成した行動情報に基づいて前記被験者による手指衛生行動の実行状態を評価する評価手段、および
前記評価手段の評価結果に関連して前記被験者にアドバイスを行うアドバイス手段を備える、手指衛生励行システム。
【請求項2】
前記手指衛生行動の実行状態は摩擦動作回数および摩擦動作振幅量の少なくとも1つを含む、請求項1記載の手指衛生励行システム。
【請求項3】
前記動き検出手段は、前記被験者の両腕に装着される加速度センサを含み、
前記評価手段は、
前記行動認識手段によって作成した行動情報を少なくとも前記加速度センサの出力に基づいて行動区間に区分する区分手段、
各行動区間における手指衛生行動の実行状態を少なくとも前記加速度センサの出力に基づいて推定する推定手段、および
前記推定手段によって推定した各行動区間における手指衛生行動の実行状態が規定値を超えているかどうかを判断する第1判断手段を含み、
前記アドバイス手段は、前記第1判断手段によって規定値を超えていないと判断した行動区間に関して不十分行動を警告する第1警告手段を含む、請求項1または2記載の手指衛生励行システム。
【請求項4】
既定の手指衛生行動に対応する行動区間の集合および各行動区間における手指衛生行動の実行状態に関する既定値を記憶しておくデータベースをさらに備え、
前記第1判断手段は、前記推定手段によって推定した手指衛生行動の実行状態の推定値と前記データベースに記憶している手指衛生行動の実行状態の前記既定値とを比較することによって、判断する、請求項3記載の手指衛生励行システム。
【請求項5】
前記評価手段は、
前記被験者による手指衛生行動が終了したかどうかを少なくとも前記加速度センサの出力に基づいて判断する第2判断手段、および
前記第2判断手段によって終了を判断したとき、前記データベースに記憶している行動区間の前記集合のうち未実行の行動区間があるかどうか判断する第3判断手段をさらに含み、
前記アドバイス手段は、前記第3判断手段によって未実行行動区間があると判断したとき、未実行行動区間の存在を警告する第2警告手段をさらに含む、請求項4記載の手指衛生励行システム。
【請求項6】
前記被験者による手指衛生行動の映像を記録する映像記録手段をさらに備え、
前記アドバイス手段は、前記映像記録手段によって記録している映像のうち前記第1判断手段によって規定値を超えていないと判断した行動区間に対応する部分を再生する、映像再生手段をさらに含む、請求項3ないし5のいずれかに記載の手指衛生励行システム。
【請求項7】
前記映像記録手段は複数の異なる視点で前記被験者の手指衛生行動を撮影して複数視点映像を記録するようにし、
前記映像再生手段は前記複数視点映像に基づいて自由視点映像を作成して再生する、請求項6記載の手指衛生励行システム。
【請求項8】
前記被験者の現在位置を繰り返し検出して位置情報を作成する位置検出手段をさらに備え、
前記動き検出手段は動き検出を繰り返し行い、
前記評価手段は、
前記位置検出手段によって作成した位置情報および前記行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が非衛生的条件または要衛生的条件を満足するとき、前記被験者の手指が清潔であるかどうかを示す手指清潔状態フラグを不潔に対応する第1状態に設定する第1状態設定手段、
前記行動認識手段によって作成した行動情報が前記被験者の手指衛生行動を示すとき前記手指清潔状態フラグを清潔に対応する第2状態に設定する第2状態設定手段、および
前記位置検出手段によって作成した位置情報および前記行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方に基づいて前記被験者の手指が清潔であるべきであるかどうか判断する判断手段を含み、
前記アドバイス手段は、前記判断手段が前記被験者の手指が清潔であるべきであると判断したにも拘わらず前記手指清潔状態フラグが前記第1状態のままであるとき、アドバイスを行う、請求項1記載の手指衛生励行システム。
【請求項9】
前記評価手段は、
前記位置検出手段によって作成した位置情報および前記行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が前記非衛生的条件を満足するとき、手洗いが必要であるかどうかを示す手洗い要否フラグを必要に対応する第3状態に設定する第3状態設定手段、
前記行動認識手段によって作成した行動情報が手洗い行動を示すとき前記手洗い要否フラグを不要に対応する第4状態に設定する第4状態設定手段、
前記位置検出手段によって作成した位置情報および前記行動認識手段によって作成した行動情報の少なくとも一方が前記要衛生的条件を満足するとき、消毒が必要であるかどうかを示す消毒要否フラグを必要に対応する第5状態に設定する第5状態設定手段、および
前記行動認識手段によって作成した行動情報が消毒行動を示すとき前記消毒要否フラグを不要に対応する第6状態に設定する第6状態設定手段をさらに含み、
前記アドバイス手段は、前記手指清潔状態フラグが前記第1状態でありかつ前記手洗い要否フラグが前記第3状態であるとき手洗い行動の実行をアドバイスし、前記手指清潔状態フラグが前記第1状態でありかつ前記消毒要否フラグが前記第5状態であるとき消毒行動の実行をアドバイスする、請求項8記載の手指衛生励行システム。
【請求項10】
被験者に装着されて当該被験者の体の動きを検出する動き検出手段を有するシステムのプロセッサに、
前記動き検出手段の検出結果に基づいて前記被験者の行動を認識して行動情報を作成する行動認識ステップ、
前記行動認識ステップによって作成した行動情報に基づいて前記被験者による手指衛生行動の実行状態を評価する評価ステップ、および
前記評価ステップの評価結果に関連して前記被験者にアドバイスを行うアドバイスステップを実行させるための、手指衛生励行プログラム。
【請求項11】
(a)動きを検出する動き検出手段を被験者に装着し、
(b)前記ステップ(a)で装着した前記動き検出手段の検出結果に基づいて前記被験者の行動を認識して行動情報を作成し、
(c)前記ステップ(b)で作成した行動情報に基づいて前記被験者による手指衛生行動の実行状態を評価し、そして
(d)前記ステップ(c)の評価結果に関連して前記被験者にアドバイスを行う、手指衛生励行方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−282442(P2009−282442A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136704(P2008−136704)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/日常行動・状況理解に基づく知識共有システムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(506208908)学校法人兵庫医科大学 (12)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】