説明

手摺を固定する固定具

【課題】落下防止のためのガラスの手摺を石壁に固定する固定具において、手摺に対して作用する力を最適に吸収し石壁に力を移す機械的な手段と、手摺を鉛直に位置合わせする調整手段と、を提供する。
【解決手段】脚部8、9およびバー10の内側に充填された接着剤コーティング11によりガラスパネル3、4が固定されるU字形断面レール7を備えると共に、1つまたは複数の支持板13がU字形断面レール7に取り付けられ、個々の支持板13に割り当てられた調整装置15により、支持板13と石壁12との距離を調整して手摺2を鉛直に位置合わせする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文(プリアンブル部分、所謂おいて部分)に係る、落下防止のために手摺を石壁(石とモルタルで築かれた壁、あるいは壁全体)に固定する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
手摺を形成するために床に取り付けられたパネルに対するこの種の保持固定具は、特許文献1に開示されている。通常、パネルは、複合介在層により一緒にしっかりと接続され、それにより、安全なガラスパネルを形成する2枚のガラスからなる。手摺は、石壁、例えば、建物の中間階、外部もしくは内部のバルコニー、またはそれ自体は落下を防ぐには十分な高さではない、石壁を構成する壁部分に取り付けられ、落下を防ぐ手段として機能する。
【0003】
介在層を使用して一緒になった2枚のガラスは一緒に、U字形断面の支持レールに挿入され、接着剤のコーティングにより支持レールに固定される。支持レールは、石壁に固定されるU字形断面の保持形材内に挿入される。
【0004】
最新技術による保持固定具は、特に手摺を形成するガラスに傾斜をつけるのに効率的であることが証明されているが、保持形材ひいては手摺は、石壁の外側に固定しなければならない。その結果、石壁に対して主として外側に向かって水平に作用する力を、石壁と保持形材との間にある取り付け具で支持する必要がある。この力は多くの場合、手摺の自由になった上端部のエリアに対して作用し、それにより、水平の力の作用点と石壁への保持形材の取り付け点との距離を応力中心距離としてみなすことができるため、相当なトルクを生じさせる。更に、支持レール内のガラスは、圧縮および張力の両方に曝され、それにより、接着剤コーティングが、特に振動力プロファイルの場合に修理不可能なほど破損する恐れがある。
【0005】
更に、支持形材と石壁との間の取り付けピンは専ら、水平方向での張力および垂直方向での撓みに曝され、それにより、取り付けピンに作用する力を、追加の構造的要素、例えば、ワッシャまたはインターロック歯形材等の他の構造的手段により吸収する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 10 2006 028 766 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、確実な落下防止保護を提供し、手摺に対して機械的に作用する力を最適に吸収し、吸収した力を石壁に移すと同時に、手摺を鉛直配置に位置合わせするために調整の可能性を提供する、上記種類の固定具を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、本発明により、請求項1の特徴部分に列挙される特徴により達成される。
【0009】
本発明の他の有利な更なる実施形態が、従属請求項において開示される。
【0010】
U字形断面レールに、1つまたは複数の支持板が設けられ、支持板の長手は手摺に対して作用する力の方向に位置合わせされ、それにより、U字形断面のレールおよびレールに形成される支持板の両方が、水平方向に延びる石壁の上端部に配置されるため、これらの力を支持板で吸収し、石壁に移すことができる。その結果、それらの力は有利に支持板により支持され、厳密に予測可能な張力および圧縮力が、ガラスをU字形断面レールに取り付けられるために提供される接着剤コーティングに生じる。
【0011】
この状況では、力ベクトルに隣接して配置される接着剤コーティングは張力負荷に曝され、その一方で、外側のガラスとU字形断面レールの外側の脚部との間の逆の接着剤コーティングは、圧縮負荷に曝される。安全に関する法定規則でははっきりと、手摺ひいては接着剤コーティングが振動力プロファイルに曝される場合であっても、使用される接着剤コーティングが、長い使用期間にわたっても修理不能な破損に対する耐性を示すことが義務づけられている。そのような物理的な実証は、接着剤コーティングへの張力負荷および圧縮負荷が事前に分かり、負荷ベクトルが変化しない場合に提供することができる。
【0012】
本発明による手摺の特に有利な実施形態は、1つまたは複数の支持バーまたは保持板がU字形断面レールの外脚部と支持板の自由端部との間に設けられ、これら2つの構成要素の間に斜めに、換言すれば、外脚部と支持体に対して45°の角度で位置合わせされる場合に提供される。支持板、支持バー、および/または保持板は、長手が力ベクトルに位置合わせされるため、手摺に対して作用する力を吸収する。したがって、その結果、U字形断面レールおよび支持板は、支持バーまたは保持板により補強され、三角形の断面を形成する。
【0013】
製造物の製造の耐故障性により、設置する手摺を鉛直かつ隣接する手摺と同じ高さに位置合わせできるように、調整に対する許容性を提供する必要があり、その結果、調整装置が支持板に配置される。調整装置は、支持板と石壁との距離を調整できるようにする。調整装置は主に、支持板に作られた貫通穴および貫通穴を通り、自由端部が石壁の水平に位置合わせされた表面に接触するネジ切りピンを備える。この場合、貫通穴は、チャネルにより制限されたスペース内に開き、チャネル内にナットが挿入されて、支持板とフォームロック接続する。その結果、ネジ切りピンがナット内にねじ込まれた場合、支持板の位置が石壁に対して変化し、手摺を垂直平面に対して位置合わせできると共に、隣接する手摺に対しても位置合わせできる。
【0014】
したがって、支持板はまず、ネジ切りピンにより石壁に接触し、更に、膨張するダボまたは壁プラグにより石壁に対して保持される。膨張する壁プラグは、支持板に作られたスロットを通り、石壁にあけられた穴内に挿入される。更に、グラウト(注入モルタル)が使用されて、個々のチャネル間に配置されたスロット形の開口部を充填し、これにより補強され、ひいては、支持板の下側と石壁との接続が提供される。その結果、膨張する壁プラグおよびグラウトにより、支持板に対する局所的な保持が確立される。
【0015】
図面は、詳細に後述される本発明により構成される手摺の実施形態例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】調整装置を有し、人の落下を防ぐ手段を提供する、建物の石壁構造に取り付けられた手摺を断面図で示す。
【図2a】図1による手摺の調整装置のエリアを拡大図で示す。
【図2b】図2aによる手摺を更に拡大した図で示す。
【図3a】図1による手摺の石壁への取り付けエリアを示す。
【図3b】図3aによる手摺を拡大図で示す。
【図4】図1による手摺のU字形断面レールを斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1、図2a、および図2bは、落下防止を提供するために、バルコニーに取り付けられた手摺2を固定する固定具1を示す。固定具1は、2枚のガラス3および4が挿入されるU字形断面レール7からなる。複合介在層5が2枚のガラス3と4との間に設けられ、それにより、手摺2を形成するガラス3および4ならびに介在層5は、局所的な力の負荷に曝された場合であっても破損しない安全なガラスを呈する。
【0018】
手摺2の内側には参照番号23が提供され、手摺2の外側には参照番号24が提供される。例えば、バルコニーに立っている人が手摺2に寄りかかった場合、力Fが手摺2にかかり得る。力Fの力ベクトルは参照番号6で識別される。角度を示すαで表される概略的な図は、力ベクトル6は角度範囲α内で変化し得るが、それにも関わらず、力Fが主に内側23から外側24に水平方向に手摺2に対して作用することを示している。この力プロファイルは、U字形断面レール7に対して作用するトルクを生じさせ、このトルクは、水平方向における力成分を、加力点とU字形断面レール7の下側との応力中心距離で乗算したもので構成される。
【0019】
U字形断面レール7に使用されるガラス3および4は、接着剤コーティング11により2つの脚部8および9の内側に固定されると共に、U字形断面レール7の水平バー10に固定され、それにより、U字形断面レール7上にガラス3および4を支持するために追加の取り付け部品が必要ない。断熱マットまたはシリコーンフォイル等をガラス3および4とバー10との間に設けることも実現可能である。
【0020】
したがって、手摺2に作用する力Fは、外脚部9と外側のガラス4との間に存在する接着剤コーティング11に圧縮力を生み出し、他方で、内側脚部8と内側のガラス3との間の接着剤コーティング11は張力負荷を受ける。
【0021】
最適な機械的手段により、石壁12とは逆方向に手摺2に作用する力Fを支持するために、U字形断面レール7上に形成された支持板13が存在し、支持板13は、U字形断面レール7の全長に沿って延びてもよく、または間に指定されたギャップがあるいくつかの個々の支持板により形成されてもよい。好ましい実施形態では、U字形断面レール7および支持板13は、互いに90°の角度で延びる一体部品として製造される。
【0022】
支持板13の全長に沿って互いに平行に延びる5個の支持脚部14が、支持板13に形成される。設置された状態では、支持脚部14は、グラウト25により石壁12の水平表面から距離をおいて固定される。
【0023】
多くの場合、製造時の欠陥により、石壁12の長さにわたって不均等なエリアがあること、またはガラス3および4ならびにU字形断面レール7が、互いに正確に鉛直に延びないことがあり、それにより、支持板13ひいてはU字形断面レール7も垂直平面において位置合わせできるように、調整装置15が設けられる。
【0024】
調整装置15は主に、支持板13に作られた貫通穴20内に挿入されるネジ切りピン16からなり、ネジ切りピン16は、石壁12の水平表面に接触する自由端部17を有する。
【0025】
箱形チャネル18が、貫通穴20のエリア内に、この穴と位置合わせされて設けられ、この場合、チャネル18は大方矩形の断面を有し、支持脚部14内に延びる。ナット19がチャネル18内に押し込まれ、貫通穴20と位置合わせされて位置決めされ、それにより、ネジ切りピン16をナット19内にねじ込むことができる。この場合、ナット19は、チャネル18ひいては支持板13ともフォースまたはフォームロック接続して配置され、それにより、ネジ切りピン16がねじ込まれた場合、支持板13と石壁12との距離を調整することができる。すなわち、ネジ切りピン16が石壁12の方向においてナット19にねじ込まれる場合、手摺2は内側23の方向において内側23に隣接する支持脚部14を中心として旋回する。他方、ネジ切りピン16が対応する様式で外側から内側にねじ込まれた場合、手摺2は外側24の方向に傾斜する。その結果、ネジ切りピン16のねじ込みにより、手摺2を鉛直角に設置することができる。更に、手摺2を隣接する手摺2と位置が合うように設置することもでき、石壁12の不均等なエリアを補償することが可能である。
【0026】
したがって、支持板13はU字形断面レール7の力ベクトル6に対する延長として配置され、主にU字形断面レール7と直角をなすため、手摺2に作用する力Fは、支持板13および支持板13に取り付けられた調整装置15により吸収され、石壁12に移る。
【0027】
U字形断面レール7と支持板13との接続をより強くするために、1つまたは複数の支持バー21が設けられる。支持バー21は、U字形断面レール7の外脚部9と支持板13の自由端部との間に延び、それにより、三角形の断面が支持板13、U字形断面レール7、および支持バー21の間に確立される。対応する支持バー21は、力Fが及ぼす水平の力成分を吸収し、U字形断面レール7が安定化され、それにより、特に、U字形断面レール7の外脚部9が外側に向かって押されない。
【0028】
美観のために、U字形断面レール7の内脚部8および外脚部9は、同じ高さの寸法である。しかし、内脚部8により吸収される圧縮力は専ら脚部8の下部に作用するため、内脚部8を外脚部9より小さくすることも可能である。
【0029】
固定具1を激しい雨、太陽からの紫外線光、および他の環境の影響から保護するために、複数のカバーセクション27が設けられ、これらのカバーセクション27は、固定具1、特に外脚部9にクリップまたはネジで留めることができる。例えば、カバーセクション27は、天候から保護するための金属製のレールまたは窓枠である。
【0030】
図3aおよび図3bは、石壁12への支持板13の取り付けを示す。明確に言えば、支持板13の支持脚部14がグラウト25内に挿入され、このグラウト25により保持されている。更に、貫通穴20’のうちの1つが設けられ、それにより、グラウト25が問題となっているチャネル18内に直接充填される。
【0031】
図4は、互いに離間された個々の支持バー21も連続保持板21’として構成し得ることを示す。外部からネジ切りピン16および貫通穴20または20’に手が届くように、保持板21’に溝22を作る必要がある。
【0032】
図4は、ネジ切りピン16のための貫通穴20ならびにグラウト25を充填するための貫通穴20’の配置も示す。
【0033】
更に、図3a、図3b、および図4は、石壁12への支持板13の係留も示す。明確に言えば、膨張壁プラグ16’が支持板13に作られたスロット29内に挿入され、壁プラグ16’は、石壁12に設けられた穴内に挿入され、次に、通常通りにナットを回すことにより穴内で膨張する。更なる固定を提供するために、歯付きプロファイル28を有するワッシャ26が、ナットと支持板13の上側との間に設けられる。歯付きプロファイル28は、これらの部品が互いにフォームロック接続で接続されるように、支持板13の表面輪郭に適合する。
【符号の説明】
【0034】
1 固定具
2 手摺
3、4 ガラス
5 複合介在層
6 力ベクトル
7 U字形断面レール
8、9 脚部
10 水平バー
11 接着剤コーティング
12 石壁
13 支持板
14 支持脚部
15 調整装置
16 ネジ切りピン
16’ 壁プラグ
17 自由端部
18 チャネル
19 ナット
20、20’ 貫通穴
21 支持バー
21’ 保持板
22 溝
23 手摺の内側
24 手摺の外側
25 グラウト
26 ワッシャ
27 カバーセクション
28 歯付きプロファイル
29 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下防止のためにガラス手摺(2)を石壁(12)に固定する固定具(1)であって、安全ガラスパネル(3、4、5)を形成する少なくとも2枚のガラス(3、4)とU字形断面レール(7)とを備えて構成され、前記U字形断面レールに、ガラス(3、4)が、U字形断面レール(7)の脚部(8、9)とバー(10)の内側表面に充填された接着剤コーティング(11)を用いて固定される、固定具において、
1つまたは複数の支持板(13)が前記U字形断面レール(7)に取り付けられ、設置された状態で、前記支持板(13)が前記石壁(12)に平行に延び、ほぼ水平に前記手摺(2)に作用する力(F)に対する延長線に位置合わせされ、それぞれの前記支持板(13)に付設された調整装置(15)によって、前記支持板(13)と前記石壁(12)との距離を調整することができ、前記それぞれの支持板(13)が前記石壁(12)に対して拘束されることを特徴とする、固定具。
【請求項2】
前記調整装置(15)がネジ切りピン(16)から構成され、前記ネジ切りピン(16)の自由端部が、前記石壁(12)に直接或いは介在要素を介して接触するか、または前記石壁(12)の、好ましくはネジ付き穴(28)内にねじ込まれ、前記支持板(13)に貫通穴(20)が作られ、前記ネジ切りピン(16)が前記貫通穴(20)を通り、前記貫通穴(20)に雌ねじが作られるか、または前記貫通穴(20)に隣接して箱形チャネル(18)が設けられ、前記箱形チャネル(18)内に、ナット(19)またはネジ切りされたブロックが挿入され、前記ネジ切りピン(16)が、前記雌ねじ、前記ナット(19)または前記ネジ切りされたブロック内にねじ込まれることを特徴とする、請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
1つまたは互いに離間された複数の支持脚部(14)が前記それぞれの支持板(13)に形成され、前記支持脚部(14)が取り付け状態で、前記石壁(12)に面していて、前記調整装置(15)が2つの隣接する支持脚部(14)の間に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の固定具。
【請求項4】
前記支持板(13)と前記石壁(12)との間にグラウト(25)が充填され、前記グラウト(25)および前記支持板(13)を通る膨張壁プラグ(16’)によって、前記手摺(2)が前記石壁(12)に固定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項5】
前記それぞれの支持板(13)の自由端部と前記U字形断面レール(7)の外向き脚部(8)の自由端部との間に、傾斜して延びる少なくとも1つの支持バー(21)、または前記手摺(2)の全長にわたって延びる保持板(21’)が配置され、前記支持バー(21)または前記保持板(21’)が、前記手摺(2)に作用する前記力(F)を吸収することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項6】
前記保持板(21’)に1つまたは複数の溝(22)が作られ、前記調整装置(15)と面一に延びることを特徴とする、請求項5に記載の固定具。
【請求項7】
垂直に延びる前記U字形断面レール(7)の前記2つの脚部(8、9)が同じサイズであるか、または加えられる前記力(F)に向かう前記脚部(8)が、力ベクトル(6)とは逆に配置される前脚部(9)よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項8】
前記支持板(13)が前記U字形断面レール(7)から直角に突出し、前記石壁(12)に面する前記支持板(13)の下側が、前記U字形断面レール(7)の水平バー(10)と一平面に配置され、または前記支持板(13)から突出する前記支持脚部(14)が、前記U字形断面レール(7)の前記バー(10)と同じ平面に延びることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項9】
前記支持板(13)、前記U字形断面レール(7)、および前記支持バー(21)または前記保持板(21’)が、一体部品として構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固定具。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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