説明

手摺支柱

【課題】強度を保持しつつ、手摺支柱の取付施工やガラス部材の取付作業が極めて簡単で、製作時間を短縮でき、製作費の大幅な低減化を図ることができる手摺支柱を提供する。
【解決手段】中空角筒状の外殻部12と、その内部の長手方向にボルトねじ込み筒13と、ボルトねじ込み筒13を外殻部12の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋14とを備え、ボルトねじ込み筒13は、外殻部12の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、補強筋14は、水平断面視において、支柱横荷重方向に外殻部12の空間を略3等分する2つの仕切り壁15,16(第1の仕切り壁)と、外殻部12の4つのコーナーの夫々に均等サイズの矩形状のセルを形成する支柱連設方向の4つの仕切り壁17,18,19,20(第2の仕切り壁)とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上の周縁部やベランダの外縁部に突設された水返し用堰壁や建物室内の階段部分に突設された堰壁に設置される手摺支柱に関し、特に、強度を保持しつつ、手摺支柱の取付施工やガラス部材の取付作業が極めて簡単で、製作時間を短縮でき、製作費の大幅な低減化を図ることができるようにした手摺支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の手摺支柱の取付構造として、従来、特許文献1に記載された技術が知られている。この手摺支柱は、アンカー本体とこれの下部側に固着したアンカー鉄筋とからなる支柱アンカーを予めユニットに形成しておいて、この支柱アンカーの下部側アンカー鉄筋を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によって支柱アンカーを堰壁上に直立状態に取り付け固定される。
【0003】
この手摺支柱の取付構造によれば、支柱アンカーとして、例えば、金属製の扁平筒状体からなるアンカー本体と、これの下部に溶接により固着されて下方へ突出する一対の鉄筋とをユニットにしたものを予め形成しておく必要があり、しかもこのユニット形成した支柱アンカーの下部側アンカー鉄筋を堰壁のボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、固着立設した後、この支持アンカーに挿入した手摺支柱を、支持アンカーにビス止めする必要があることから、支持アンカーの製作及びその取付けにかなり手間がかかって、製作費が高くつくという問題があった。
【0004】
このような問題を解決すべく提案された手摺支柱の取付構造として、特許文献2に記載された技術が知られている。この手摺支柱は、中空角筒状のアルミ押出型材からなるのもので、内周側の中央部両側対称位置に一対のボルトねじ込み筒が軸方向全体に一体形成されており、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を手摺支柱の下端より突出させ、このアンカーボルトの突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定される。
【0005】
この手摺支柱によれば、従来のように支柱アンカーを特別に製作する必要がなく、またボルト埋設用凹孔へのアンカーの挿入後に手摺支柱をアンカーに固定する作業等が一切不要であるから、従来の取付構造に比べ、手摺支柱の取付施工が簡単且つ容易となって、施工費の低減化を図ることができる。
【0006】
また、手摺におけるガラス取付構造については、従来、ガラス縦枠を手摺支柱に取り付け、この手摺支柱間の手摺笠木及び横桟にガラス横枠を取り付けて、ガラス板をガラス縦枠及びガラス横枠に嵌め込んだものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−270092号公報
【特許文献2】特開2005−226376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2に記載された従来の手摺支柱は、中空角筒状のアルミ押出型材からなり、その内周側の中央部両側対称位置に一対のボルトねじ込み筒が軸方向全体に一体形成されてなるため、1つの手摺支柱を取り付けるのに、アンカーボルトを2本要するとともに、アンカーボルトのねじ込み作業を2回行う必要があった。
【0009】
これに対して、アルミ押出型材の内周側に設けるボルトねじ込み筒を1つのみにした場合、アンカーボルトは1本で、アンカーボルトのねじ込み作業も1回で済むが、水平方向からの荷重に弱いという問題があった。
【0010】
また、従来の手摺におけるガラス取付構造では、ガラス縦枠を要するとともに、手摺支柱にガラス縦枠の取り付け作業を行う必要があった。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、強度を保持しつつ、手摺支柱の取付施工やガラス部材の取付作業が極めて簡単で、製作時間を短縮でき、製作費の大幅な低減化を図ることができる手摺支柱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の手摺支柱は、中空角筒状の外殻部とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒とを備え、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を前記外殻部の下側より突出させ、このアンカーボルト突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定してなる手摺支柱であって、前記ボルトねじ込み筒は、前記外殻部の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、前記ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋を備え、前記補強筋は、水平断面視において、支柱横荷重方向に前記外殻部の空間を略3等分する2つの第1の仕切り壁と、前記外殻部の4つのコーナーの夫々に均等サイズの矩形状のセルを形成する支柱連設方向の4つの第2の仕切り壁とからなり、前記ボルトねじ込み筒は、水平断面視において、前記2つの第1の仕切り壁に内接するとともに、内接箇所において一体化しており、前記外殻部には、水平断面視において、支柱連設方向の前記セルを構成していない箇所の両方が開口されることにより、前記外殻部の長手方向全長にわたりガラス板を嵌め込むための溝が2つ形成されており、前記溝の側面には横断面T字状の突起体が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体が前記突起体に嵌着されるようにしており、水平断面視において、前記外殻部と前記4つの第2の仕切り壁とが交わるコーナーの内側に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、前記外殻部と前記ボルトねじ込み筒と前記補強筋と前記ビス孔とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されてなることを特徴としている。
【0013】
請求項1に記載の手摺支柱によれば、1つのボルトねじ込み筒が中空角筒状の外殻部の中心部に形成されており、かつ、それが補強筋によって強固に固設されているので、取付施工に使用されるアンカーボルトが1本であっても、手摺支柱の強度を保持することができる。
【0014】
また、請求項1に記載の手摺支柱によれば、1つの手摺支柱を取り付けるのに、アンカーボルトは1本で、アンカーボルトのねじ込み作業も1回で済むので、手摺支柱の取付施工の効率化及び製作費の低減化を図ることができる。
【0015】
また、請求項1に記載の手摺支柱によれば、外殻部の長手方向全長にわたりガラス板を嵌め込むための溝が2つ形成されているので、手摺支柱にガラス縦枠の取り付け作業を行わなくても、この溝を介して2枚のガラスを嵌め込むことができる。このため、ガラス部材の取付作業の効率化及び製作費の低減化を図ることができる。
【0016】
さらに、請求項1に記載の手摺支柱によれば、溝の側面には横断面T字状の突起体が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体をそこに嵌着することで、ガラス部材をしっかりと固定できるとともに、帯状弾性体が弾力性を有するので、ガラス部材が痛みにくい。
【0017】
請求項2に記載の手摺支柱は、中空角筒状の外殻部とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒とを備え、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を前記外殻部の下側より突出させ、このアンカーボルト突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定してなる手摺支柱であって、前記ボルトねじ込み筒は、前記外殻部の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、前記ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋を備え、水平断面視において、前記ボルトねじ込み筒の周縁と前記外殻部との間の空間を支柱横荷重方向と支柱連設方向とに略4等分する仕切り壁であって、支柱横荷重方向の2つを第3の仕切り壁、支柱連設方向の2つを第4の仕切り壁と定義するとき、前記補強筋は、前記2つの第3の仕切り壁と、前記2つの第4の仕切り壁のうち何れか一方と、前記2つの第4の仕切り壁の他方が、前記外殻部に開口を有する水平断面視コ字状(又は逆コ字状)の仕切り壁に代替された第5の仕切り壁とからなり、前記ボルトねじ込み筒は、水平断面視において、前記第5の仕切り壁に接するとともに、接触箇所において一体化しており、前記外殻部には、前記開口部により、前記外殻部の長手方向全長にわたりガラス板を嵌め込むための溝が1つ形成されており、前記溝の側面には横断面T字状の突起体が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体が前記突起体に嵌着されるようにしており、水平断面視において、前記第4の仕切り壁により分割された空間の夫々に1つずつ、前記外殻部の支柱連設方向の内壁に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、水平断面視において、前記外殻部と前記第5の仕切り壁とが交わるコーナーの内側に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、前記外殻部と前記ボルトねじ込み筒と前記補強筋と前記ビス孔とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されてなることを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の手摺支柱によれば、1つのボルトねじ込み筒が中空角筒状の外殻部の中心部に形成されており、かつ、それが補強筋によって強固に固設されているので、取付施工に使用されるアンカーボルトが1本であっても、手摺支柱の強度を保持することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の手摺支柱によれば、1つの手摺支柱を取り付けるのに、アンカーボルトは1本で、アンカーボルトのねじ込み作業も1回で済むので、手摺支柱の取付施工の効率化及び製作費の低減化を図ることができる。
【0020】
また、請求項2に記載の手摺支柱によれば、外殻部の長手方向全長にわたりガラス板を嵌め込むための溝が1つ形成されているので、手摺支柱にガラス縦枠の取り付け作業が必要なく、ガラス部材の取付作業の効率化及び製作費の低減化が可能な終端の手摺支柱を提供することができる。
【0021】
さらに、請求項2に記載の手摺支柱によれば、溝の側面には横断面T字状の突起体が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体をそこに嵌着することで、ガラス部材をしっかりと固定できるとともに、帯状弾性体が弾力性を有するので、ガラス部材が痛みにくい。
【0022】
請求項3に記載の手摺支柱は、中空角筒状の外殻部とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒とを備え、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を前記外殻部の下側より突出させ、このアンカーボルト突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定してなる手摺支柱であって、前記ボルトねじ込み筒は、前記外殻部の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、前記ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋を備え、前記補強筋は、水平断面視において、前記ボルトねじ込み筒の周縁と前記外殻部との間の空間を略4等分する、支柱横荷重方向の2つの第3の仕切り壁と、支柱連設方向の2つの第4の仕切り壁とからなり、水平断面視において、4分割された空間の夫々に1つずつ、前記外殻部の支柱連設方向の内壁に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、前記外殻部と前記ボルトねじ込み筒と前記補強筋と前記ビス孔とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されてなることを特徴としている。
【0023】
請求項3に記載の手摺支柱によれば、1つのボルトねじ込み筒が中空角筒状の外殻部の中心部に形成されており、かつ、それが補強筋によって強固に固設されているので、取付施工に使用されるアンカーボルトが1本であっても、手摺支柱の強度を保持することができる。
【0024】
また、請求項3に記載の手摺支柱によれば、1つの手摺支柱を取り付けるのに、アンカーボルトは1本で、アンカーボルトのねじ込み作業も1回で済むので、手摺支柱の取付施工の効率化及び製作費の低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、強度を保持しつつ、手摺支柱の取付施工やガラス部材の取付作業が極めて簡単で、製作時間を短縮でき、製作費の大幅な低減化を図ることができる手摺支柱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1における手摺の外観正面図である。
【図2】本発明の実施例1における手摺支柱の縦断側面図である。
【図3】本発明の実施例1における手摺支柱の横断側面図である。
【図4】本発明の実施例2における手摺支柱の横断側面図である。
【図5】本発明の実施例3における手摺支柱の横断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、例えば図1乃至図5に示すような構成の手摺支柱11,51,101に適用される。
【0028】
図1は、屋上やベランダ等のコンクリート製堰壁2に設置された手摺1を示しており、この手摺1は、堰壁2上に所要間隔おきに立設されるアルミ押出型材製の角筒状手摺支柱11と、これら手摺支柱11の上端部に連結されるアルミ押出型材の手摺笠木3と、各手摺支柱11,11間にあって、その下部間に取り付けられる横桟4と、各支柱11,11と手摺笠木3と横桟4との間に嵌め込まれるガラス板5とから構成される。
【実施例1】
【0029】
先ず、図2及び図3を参照して、実施例1である手摺支柱11の構成について説明する。手摺支柱11は、図2に示すように、堰壁上面2aにはアンカーボルト6を介して立設される。
【0030】
手摺支柱11は、図2及び図3に示すように、中空角筒状の外殻部12とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒13とを主要部として備え、ボルトねじ込み筒13は、外殻部12の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されている。
【0031】
そして、手摺支柱11は、ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋14を備えている。補強筋14は、水平断面視において、支柱横荷重方向に外殻部12の空間を略3等分する2つの仕切り壁15,16(第1の仕切り壁)と、外殻部12の4つのコーナーの夫々に均等サイズの矩形状のセルを形成する支柱連設方向の4つの仕切り壁17,18,19,20(第2の仕切り壁)とから構成されている。
【0032】
ボルトねじ込み筒13は、水平断面視において、2つの仕切り壁15,16(第1の仕切り壁)に内接するとともに、内接箇所において一体化している。ボルトねじ込み筒13は、アンカーボルト6をねじ込むためのもので、ボルトねじ込み筒13に内接する正八角形の頂点の位置に、アンカーボルト6のねじ山の高さに相当する長さの内方に向けた突起21が長手方向全長にわたり設けられており、突起21を除いたボルトねじ込み筒13の内径はアンカーボルト6の外径と略等しくなっている。アンカーボルト6は、鋼棒の外周面にネジが切られたネジ棒で、安価にて市販されているものである。
【0033】
ビスポケット22(ビス孔)は、水平断面視において、外殻部12と4つの仕切り壁17,18,19,20(第2の仕切り壁)とが交わるコーナーの内側に、長手方向全長にわたり形成されている。このビスポケット22は、手摺笠木3を手摺支柱11の上端部にビス止め固定する際にそのビスがねじ込まれるようになっている。
【0034】
外殻部12には、水平断面視において、開口部23,24(支柱連設方向のセルを構成していない箇所)が設けられており、この開口部23,24が外殻部12の長手方向全長にわたり形成されることで、ガラス板5を嵌め込むための従来のガラス縦枠に代替する溝25,26が形成されている。
【0035】
溝25,26の側面には横断面T字状の突起体27,28が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体29(図示省略)が突起体27,28に嵌着されるようにしている。
【0036】
ここで、外殻部12とボルトねじ込み筒13と補強筋14とビスポケット22とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されている。
【0037】
次に、前記のように堰壁2上に立設される手摺支柱11の取付手順について説明すると、先ず、各手摺支柱11のボルトねじ込み筒13にその下端部よりアンカーボルト6の一端部側を、所要長さだけ、例えばアンカーボルト6の全長の1/3程度ねじ込んで固定して、その他端部側を手摺支柱11の下端から突出させる。この時、手摺支柱11の下端から突出するアンカーボルト6の突出長さは、例えば全長の2/3となる。
【0038】
一方、図2に示すように、コンクリート製の堰壁2における支柱取付位置に1つのボルト埋設用凹孔7を図示しない穿孔具によって穿設し、この1つのボルト埋設用凹孔7に液状の速乾性硬化性充填剤8を充填する。この充填剤8の注入量は、凹孔7にアンカーボルト6を挿入した際に充填剤8が凹孔7から溢れ出ない程度の量とする。
【0039】
この速乾性硬化性充填剤8は、使用時に液状で、硬化によって硬質層を形成する材料であればよく、例えば乾燥硬化型や反応硬化型の各種接着剤、シール材、硬質合成樹脂発泡体、非発泡硬質合成樹脂、セメントモルタル等の種々のものを使用することができる。
【0040】
前記のように速乾性硬化性充填剤8を充填したボルト埋設用凹孔7に、手摺支柱11の下端から突出した1つのアンカーボルト6を挿入すれば、アンカーボルト6は、数時間後に充填剤8が硬化することによって、堰壁2上に直立状態に堅固に取り付け固定されることになる。こうして手摺支柱11,11を堰壁2上に立設した後、図1に示すように、横桟4、ガラス板5、手摺笠木3を取り付ける。
【0041】
最後に、ガラス板5の取付手順について説明すると、先ず、手摺笠木3にガラス横枠30(図1参照。)をビス止めによって取り付け、手摺支柱11の溝25,26の側面に設けられた突起体27,28に横断面略C字状の帯状弾性体29(図示省略)を嵌着しておく。そして、手摺支柱11,11を横桟4にて連結した後、溝25,26及びガラス横枠30を介して、ガラス板5を嵌め込み、手摺支柱11のシール部32の隙間をシール材33を使用してシールし、その後、手摺笠木3のガラス横枠30にガラス板5を嵌めつつ、ビスポケット22を介して手摺支柱11の上端部に手摺笠木3をビス止めして取り付ける。
【実施例2】
【0042】
続いて、図4を参照して、実施例2である手摺支柱51の構成について説明する。手摺支柱51の概略は実施例1である手摺支柱11と変わらないので、相違点については詳述するが、繰り返しとなる説明箇所については極力省略する。
【0043】
手摺支柱51は、手摺の終端に用いられる支柱であるため、溝65を1つしか備えておらず、それに伴って補強筋54の構成が以下のように手摺支柱11とは異なっている。
【0044】
図4に示す水平断面視において、ボルトねじ込み筒53の周縁と外殻部52との間の空間を支柱横荷重方向と支柱連設方向とに略4等分する仕切り壁であって、支柱横荷重方向の2つを仕切り壁55,56(第3の仕切り壁)、支柱連設方向の2つを仕切り壁57,58(第4の仕切り壁)と定義するとき、補強筋54は、2つの仕切り壁55,56(第3の仕切り壁)と、仕切り壁57(2つの第4の仕切り壁のうち何れか一方)と、仕切り壁58(2つの第4の仕切り壁の他方、図4における点線箇所)が、外殻部52に開口を有する水平断面視コ字状(又は逆コ字状)の仕切り壁に代替された仕切り壁58'(第5の仕切り壁)とから構成されている。
【0045】
ボルトねじ込み筒53は、水平断面視において、仕切り壁58'(第5の仕切り壁)に接するとともに、接触箇所において一体化している。外殻部52には、開口部64により、外殻部52の長手方向全長にわたりガラス板5を嵌め込むための溝65が1つ形成されている。
【0046】
ビスポケット62は、水平断面視において、仕切り壁57,58(第4の仕切り壁)により分割された空間の夫々に1つずつ、外殻部52の支柱連設方向の内壁に、長手方向全長にわたり形成されており、外殻部52と仕切り壁58'(第5の仕切り壁)とが交わるコーナーの内側にも長手方向全長にわたり形成されている。
【実施例3】
【0047】
最後に、図5を参照して、実施例3である手摺支柱101の構成について説明する。手摺支柱101の概略は実施例1である手摺支柱11や実施例2である手摺支柱51と変わらないので、相違点については詳述するが、繰り返しとなる説明箇所については同様に省略する。
【0048】
手摺支柱101は、ガラス板5を嵌め込むための溝を備えておらず、それに伴って補強筋54の構成が以下のように手摺支柱11とは異なっている。ガラス板5を嵌め込むためには、ガラス縦枠(図示省略)を手摺支柱101に取り付けることが必要となる。
【0049】
補強筋104は、図5に示す水平断面視において、ボルトねじ込み筒103の周縁と外殻部102との間の空間を略4等分する、支柱横荷重方向の2つの仕切り壁105,106(第3の仕切り壁)と、支柱連設方向の2つの仕切り壁107,108(第4の仕切り壁)とから構成されている。
【0050】
ビスポケット112は、水平断面視において、4分割された空間の夫々に1つずつ、外殻部102の支柱連設方向の内壁に、長手方向全長にわたり形成されている。
【0051】
以上説明したように、本発明に係る手摺支柱11,51,101によれば、1つのボルトねじ込み筒13,53,103が中空角筒状の外殻部12,52,102の中心部に形成されており、かつ、それが補強筋14,54,104によって強固に固設されているので、取付施工に使用されるアンカーボルト6が1本であっても、手摺支柱の強度を保持することができる。
【0052】
また、本発明に係る手摺支柱11,51,101によれば、1つの手摺支柱11,51,101を取り付けるのに、アンカーボルト6は1本で、アンカーボルト6のねじ込み作業も1回で済むので、手摺支柱11,51,101の取付施工の効率化及び製作費の低減化を図ることができる。
【0053】
また、本発明に係る手摺支柱11によれば、外殻部12の長手方向全長にわたりガラス板5を嵌め込むための溝25,26が形成されているので、手摺支柱11にガラス縦枠の取り付け作業を行わなくても、この溝25,26を介して2枚のガラス板5を嵌め込むことができる。このため、ガラス板5の取付作業の効率化及び製作費の低減化を図ることができる。
【0054】
また、本発明に係る手摺支柱51によれば、外殻部52の長手方向全長にわたりガラス板5を嵌め込むための溝65が1つ形成されているので、手摺支柱51にガラス縦枠の取り付け作業が必要なく、ガラス板5の取付作業の効率化及び製作費の低減化が可能な終端の手摺支柱51を提供することができる。
【0055】
さらに、本発明に係る手摺支柱11,51によれば、溝25,26(又は溝65)の側面には横断面T字状の突起体27,28(又は突起体67)が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体29(図示省略)をそこに嵌着することで、ガラス板5をしっかりと固定できるとともに、帯状弾性体が弾力性を有するので、ガラス板5が痛みにくい。
【0056】
なお、本発明は前述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 手摺
2 堰壁
2a 堰壁上面
3 手摺笠木
4 横桟
5 ガラス板
6 アンカーボルト
7 ボルト埋設用凹孔
8 速乾性硬化性充填剤
11,51,101 手摺支柱
12,52,102 外殻部
13,53,103 ボルトねじ込み筒筒
14,54,104 補強筋
15,16,17,18,19,20 仕切り壁
21 突起
22 ビスポケット
23,24,64 開口部
25,26,65 溝
27,28,67 突起体
29 帯状弾性体
30 ガラス横枠
32 シール部
33 シール材
55,56,57,58,58' 仕切り壁
105,106,107,108 仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空角筒状の外殻部とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒とを備え、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を前記外殻部の下側より突出させ、このアンカーボルト突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定してなる手摺支柱であって、
前記ボルトねじ込み筒は、前記外殻部の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、
前記ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋を備え、
前記補強筋は、水平断面視において、支柱横荷重方向に前記外殻部の空間を略3等分する2つの第1の仕切り壁と、前記外殻部の4つのコーナーの夫々に均等サイズの矩形状のセルを形成する支柱連設方向の4つの第2の仕切り壁とからなり、
前記ボルトねじ込み筒は、水平断面視において、前記2つの第1の仕切り壁に内接するとともに、内接箇所において一体化しており、
前記外殻部には、水平断面視において、支柱連設方向の前記セルを構成していない箇所の両方が開口されることにより、前記外殻部の長手方向全長にわたりガラス板を嵌め込むための溝が2つ形成されており、
前記溝の側面には横断面T字状の突起体が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体が前記突起体に嵌着されるようにしており、
水平断面視において、前記外殻部と前記4つの第2の仕切り壁とが交わるコーナーの内側に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、
前記外殻部と前記ボルトねじ込み筒と前記補強筋と前記ビス孔とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されてなることを特徴とする手摺支柱。
【請求項2】
中空角筒状の外殻部とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒とを備え、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を前記外殻部の下側より突出させ、このアンカーボルト突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定してなる手摺支柱であって、
前記ボルトねじ込み筒は、前記外殻部の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、
前記ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋を備え、
水平断面視において、前記ボルトねじ込み筒の周縁と前記外殻部との間の空間を支柱横荷重方向と支柱連設方向とに略4等分する仕切り壁であって、支柱横荷重方向の2つを第3の仕切り壁、支柱連設方向の2つを第4の仕切り壁と定義するとき、
前記補強筋は、前記2つの第3の仕切り壁と、前記2つの第4の仕切り壁のうち何れか一方と、前記2つの第4の仕切り壁の他方が、前記外殻部に開口を有する水平断面視コ字状(又は逆コ字状)の仕切り壁に代替された第5の仕切り壁とからなり、
前記ボルトねじ込み筒は、水平断面視において、前記第5の仕切り壁に接するとともに、接触箇所において一体化しており、
前記外殻部には、前記開口部により、前記外殻部の長手方向全長にわたりガラス板を嵌め込むための溝が1つ形成されており、
前記溝の側面には横断面T字状の突起体が長手方向全長にわたり形成されており、横断面略C字状の帯状弾性体が前記突起体に嵌着されるようにしており、
水平断面視において、前記第4の仕切り壁により分割された空間の夫々に1つずつ、前記外殻部の支柱連設方向の内壁に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、
水平断面視において、前記外殻部と前記第5の仕切り壁とが交わるコーナーの内側に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、
前記外殻部と前記ボルトねじ込み筒と前記補強筋と前記ビス孔とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されてなることを特徴とする手摺支柱。
【請求項3】
中空角筒状の外殻部とその内部の長手方向にボルトねじ込み筒とを備え、前記ボルトねじ込み筒にアンカーボルトの一端部側をねじ込んで固定して、その他端部側を前記外殻部の下側より突出させ、このアンカーボルト突出端部側を、堰壁の支柱取付位置に穿設したボルト埋設用凹孔に硬化性充填剤を介して挿入し、この硬化性充填剤の硬化によってアンカーボルトを堰壁上に直立状態に取り付け固定してなる手摺支柱であって、
前記ボルトねじ込み筒は、前記外殻部の水平断面視中心位置に長手方向全長にわたり1つ形成されており、
前記ボルトねじ込み筒を前記外殻部の水平断面視中心位置に固設するとともに、水平方向への強度を補強する補強筋を備え、
前記補強筋は、水平断面視において、前記ボルトねじ込み筒の周縁と前記外殻部との間の空間を略4等分する、支柱横荷重方向の2つの第3の仕切り壁と、支柱連設方向の2つの第4の仕切り壁とからなり、
水平断面視において、4分割された空間の夫々に1つずつ、前記外殻部の支柱連設方向の内壁に、ビス孔が長手方向全長にわたり形成されており、
前記外殻部と前記ボルトねじ込み筒と前記補強筋と前記ビス孔とは、長手方向全長にわたり、アルミ押出によって一体成形されてなることを特徴とする手摺支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−21441(P2011−21441A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169606(P2009−169606)
【出願日】平成21年7月18日(2009.7.18)
【出願人】(509220437)
【Fターム(参考)】