説明

手摺

【課題】階段や床の側壁への支柱取付部に意匠性と安全性を備えた手摺を提供する。
【解決手段】階段や床の側壁に支柱取付装置を用いて支柱が取付けられる手摺において、前記支柱取付装置を前記側壁に固着される取付部と前記支柱の下部を固定する固定部とを有するベースプレートと、そのベースプレートに装着され、そのベースプレート及び支柱の下部を隠蔽するカバーとから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段又は床の側壁に支柱を用いて取付けられる手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
手摺が取付けられる階段や床の有効面積を広くするため、手摺の支柱を階段や床の側壁に取付けることが提案されている(特許文献1、2)
このような手摺は、支柱が通行の邪魔にならず、階段や床に広がり感を与え、それまでにない意匠的外観を呈する長所を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−828号公報
【特許文献2】特開2006−328937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、階段や床の側壁に手摺の支柱を取付ける従来の取付装置は、階段や床の側壁にベースプレートを固着し、そのベースプレートの正面に支柱を当接し、支柱及びベースプレートに貫通したボルトをベースプレートの背面の凹溝に嵌合したナット板に螺合して支柱を固定するようにしたもの(特許文献1)、又は階段や床の側壁にブラケットを固着し、そのブラケットに設けた筒部に支柱の下端部を挿入し、筒部から支柱にビスをねじ込んで固定するようにしたもの(特許文献2)であるため、いずれもベースプレート又はブラケットが階段や床の側壁から突出して露見し、支柱取付部が見苦しく外観意匠性に問題があるとともに、ベースプレート又はブラケットの外面の鋭角部あるいは支柱の下端部切断面が露出しているため、手摺や支柱に掴まって遊ぶ幼児等がそれらの鋭角部や切断面で負傷する虞があり、安全性にも問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、階段や床の側壁への支柱取付部に安全性と意匠性を備えた手摺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、階段や床の側壁に支柱取付装置を介して支柱が取付けられる手摺において、前記支柱取付装置は、前記側壁に固着される取付部と前記支柱の下部を固定する固定部とを有するベースプレートと、そのベースプレートに装着され、そのベースプレート及び支柱の下部を隠蔽するカバーとからなることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
上記カバーは、階段や床の側壁に固着されたベースプレートに装着されたとき、そのベースプレートを被覆できるように形成され、上面壁にベースプレートに固定された支柱に嵌合する切欠孔を有することを特徴としている(請求項2)。
【0008】
上記カバーは、下面壁にカバー内に浸入した水を抜くための水抜孔が形成されていることを特徴としている(請求項3)。
【0009】
上記ベースプレートは、支柱の下端部をベースプレートの固定部の下端面から下方に突出させずに支柱を固着することを特徴としている(請求項4)。
【0010】
上記カバーがベースプレートに装着された状態で、カバーの下面壁の上面とベースプレートの固定部の下端面及び支柱の下端面との間に隙間が設けられていることを特徴としている(請求項5)。
【0011】
上記カバーは、上面壁と下面壁の背面側端部に係止爪を有し、その上下の係止爪をベースプレートの取付部の上下端部に係止してベースプレートに装着されることを特徴としている(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、支柱の下部及びベースプレートがカバーにより隠蔽されるので、支柱取付部の安全性が確保され、意匠性も向上する。
【0013】
請求項2の発明によれば、ベースプレートにより階段や床の側壁に既に取付けられている支柱に影響されずにカバーを装着することができ、施工性が向上する。
【0014】
請求項3の発明によれば、支柱に伝わってカバー内に流下する水又はカバーの上面壁の切欠孔から進入する水をカバーの水抜孔から排水することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、支柱の中を通ってカバー内に流下する水を支柱の下端部の中に溜めることなく、水抜孔から排水することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、支柱の中をもしくは支柱の外面を伝わってカバー内に流下する水又はカバーの上面壁の切欠孔からカバー内に進入する水をカバーの中に溜めることなく、水抜孔からより迅速に排水することができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、カバーをベースプレートに容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る手摺の取り付け状態を示す姿図である。
【図2】支柱取付部の拡大正面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】ベースプレートを示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(a)のC-C線断面図である。
【図6】カバーの展開図であり、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)はD-D線断 面図、(d)は右側面図、(e)はE-E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1において、1は通路の床であり、その床1の側壁2に本発明に係る支柱取付装置3を用いて支柱4が取付けられ、複数の支柱4の上端部にブラケット5を用いて手摺6が取付けられている。
【0020】
本発明に係る支柱取付装置3は、ベースプレート7と、カバー8とからなっている。
ベースプレート7は取付部71と固定部72とを一体に有する。
【0021】
取付部71は、ベースプレート7を床1の側壁2に固着するためのものであり、固定部72の左右両側に設けられて、上下に一対の貫通孔73が形成されている。
【0022】
固定部72は、支柱4の断面外輪郭形状と相似形の断面形状を有する筒状に形成されている。図示の例では、固定部72は、断面形状が支柱4の断面外輪郭形状と同じく円筒状に形成されている。支柱4の断面外輪郭形状が矩形であれば、固定部72の断面形状も矩形とされる。そして、固定部7の正面部分の上下2箇所に貫通孔74が形成されている。
【0023】
ベースプレート7は、図3に示すように、取付部71を床1の側壁2に当接し、貫通孔73の中心を側壁2に予め設けてある孔10の中心と合致させ、貫通孔73に挿通した引抜き拡張式リベット9を孔10に植込むことにより、ベースプレート4を固定部72が側壁2から突出する状態で側壁2に固着することができる。
【0024】
カバー8は、側壁2に固着されたベースプレート7にその外側から嵌合装着してベースプレート7を隠蔽することができるように、一例としてほぼ起立する船形に形成されている。さらに詳しくは、カバー8は、横断面形状が支柱4の断面外輪郭形状に対応するほぼ円弧状の正面壁81と、その正面壁81の上端部に設けられた上面壁82と、正面壁81の下端部に設けられた下面壁83とを有して、中空かまぼこ状の外観形態を有している。 そして、上面壁82にはU字状の切欠孔84が設けられている。その切欠孔84の円弧中心は正面壁81の横断面の円弧の中心線上に存在している。また、正面壁81の背面側端部と上面壁82の背面側端部は共通の垂直面上に存在する。カバー8の下面壁83には、その下面壁83の円弧中心に中心を有する水抜孔85が設けられている。支柱4の断面外輪郭形状が矩形の場合は、切欠孔84もコ字形とされる。この場合、正面壁81の横断面形状もコ字形としても良い。
【0025】
カバー8は、これを側壁2に固着されたベースプレート7の外側から嵌合装着してそのベースプレート7の全体を被覆した状態で、ビス等を用いずにベースプレート7に固定されるようになっている。
【0026】
カバー8をベースプレート7に装着する構造はとくに限定されない。図示の例について説明すると、ベースプレート7の取付部71の上下端縁を表側(側壁2と反対側)に突出するように切り起こして係止片75を形成するとともに、その係止片の裏側(側壁2側)に空所76を形成してある。また、カバー8の上面壁82と下面壁83の背面側端部にそれぞれ上方及び下方に突出して先端にテーパ面を有する係止爪86を形成してある。そして、ベースプレート7の高さ寸法とカバー8の上面壁82と下面壁83間の距離をほぼ等しくしてある。
【0027】
上記構成において、カバー8を側壁2に固着したベースプレート7に向けて接近し、そのカバー8の上下の係止爪86をベースプレート7の各係止片75に対応させてカバー8をベースプレート7側に押し付ける。これにより、係止爪86のテーパ面が係止片75の先端面に当たって上面壁下面壁間の距離が僅かに広がり、テーパ面が係止片75の先端面を乗り越え、図4に示すように、係止片75が空所76に嵌入して固定されるようになっている。
【0028】
続いて、上記の支柱取付装置3を用いて手摺用支柱4を取付ける要領を説明する。
ベースプレート7の取付部71を側壁2に当て、その取付部71の孔73に引抜き拡張式リベット9を貫通し、さらに側壁2に設けてある孔10に挿入し、ナット11を締め付けて固着する。引抜き拡張式リベット9に代えて、押し込み拡張式リベット又はコーチスクリュー等を用いても良い。続いて、支柱4の下部をベースプレート7の固定部72に挿入し、固定部72の正面からビス12をねじ孔に貫通し、支柱4にねじ込んで支柱を取り付ける。この場合、支柱4の下端面はベースプレート7の固定部の下端面から下方に突出させない。ビスのねじ込みをベースプレートの固定部の正面に行うので、側面にねじ込む場合よりも容易に行うことができる。
【0029】
次に、カバー8をベースプレート7の正面に接近し、上下の係止爪86をベースプレート7の上下の係止片75に係止させて、カバー8を装着し、支柱4の下部とベースプレート7を被覆する。
【0030】
ビスなどの固着具を用いずに係止爪75の係止によりカバー8を固定するので、固着具が外面に露出しない。また、カバー8の外面に現れる角部が全てR加工8’されて、鋭角部がない。従って、カバーの外観意匠性が向上するとともに、カバー8の外面にビスの頭が突出しないので、支柱等に掴まって遊ぶ幼児等が怪我をする虞がなく、安全性が高い。
【0031】
ベースプレート7の下端面とカバー8の下面壁の上面との間は、僅かに離間されて隙間13が形成されている。そして、水抜孔85は支柱4の軸芯の延長上に存在する。そのため、支柱の中又は支柱の外面に沿って流下する雨水あるいはカバー8の上面壁の切欠孔884からカバー8内に入る雨水は、カバー8内の底部に溜まることなく、水抜孔85から排水される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
図示の例は、支柱4を床1の側壁2に取り付ける場合のものであるが、階段の側壁に取付ける場合も同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
3 支柱取付装置
4 支柱
6 手摺
7 ベースプレート
71 取付部
72 固定部
75 係止片
8 カバー
81 正面壁
82 上面壁
83 下面壁
84 切欠孔
85 水抜孔
86 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段や床の側壁に支柱取付装置を用いて支柱が取付けられる手摺において、
前記支柱取付装置は、前記側壁に固着される取付部と前記支柱の下部を固定する固定部とを有するベースプレートと、そのベースプレートに装着され、そのベースプレート及び支柱の下部を隠蔽するカバーとからなることを特徴とする手摺。
【請求項2】
カバーは、側壁に固着されたベースプレートに装着されたとき、そのベースプレートを被覆できるように形成され、上面壁にベースプレートに固定された支柱に嵌合する切欠孔を有することを特徴とする請求項1に記載の手摺。
【請求項3】
カバーは、下面壁にカバー内に浸入した水を抜くための水抜孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の手摺。
【請求項4】
ベースプレートは、支柱の下端部をベースプレートの固定部の下端面から下方に突出させずに支柱を固着することを特徴とする請求項3に記載の手摺。
【請求項5】
カバーがベースプレートに装着された状態で、そのカバーの下面壁の上面と前記ベースプレートの固定部の下端面及び支柱の下端部との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の手摺。
【請求項6】
カバーは、上面壁と下面壁の背面側端部に係止爪を有し、その上下の係止爪をベースプレートの取付部の上下端部に係止してベースプレートに装着されることを特徴とする請求項1,2,3,4,5のいずれか1項に記載の手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236272(P2010−236272A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85533(P2009−85533)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 新日軽 2009エクステリア 新商品ダイジェスト2009年2月
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】