説明

手摺

【課題】耐風圧性能が高くて外観の体裁もよく、しかも、施工手間がかからずに、安全且つ低コストで工期短縮も図れるガラス手摺を提供する。
【解決手段】足場Gの内外を隔てる位置に起立する支柱1と、笠木2と、載置部3と、ガラスパネル部4とを備えており、支柱1は、その外側見付面1aの中間位置にガラスパネル部4を固定するブラケット8a,8bを有しており、笠木2は、支柱1の上端部に取り付けられるものであり、載置部3は、支柱1の外側見付面1aの下部に取り付けられるものであり、ガラスパネル部4は、ガラス板17と、ガラス板17の四周を囲む上枠18と下枠19と竪枠20,20とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段やベランダ、フェンス、スロープ、廊下等に取り付ける手摺に関するものであり、特に支柱間にガラスパネル部を取り付ける態様の手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルコニー手摺は、居住者の安全を守る構造であることが第一であるが、それに加えて外観の見栄えを向上させる要素も求められている。そこで、バルコニーや階段手摺の柵としてガラスパネル部を採用するものがあり、このような手摺は、現場で施工するものの他、ガラス板の四周を枠組してFiX窓のように形成されたガラスパネル部を現場に搬送し、支柱に固定したブラケットや支持金具等を介して支柱間に取り付けるものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−037589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した組み立て済みのガラスパネル部を支柱に固定するタイプの手摺は、一般的な目隠し用の桟を並べたものと比べて、耐風圧性能が要求されることから、支柱や笠木、下枠からガラスパネル部を支持するブラケットや金具等を多く使用したり、大型化せざるを得ず、これらのガラスパネル部を支持するブラケットや支持金具等がガラス板を通して屋外から見えてしまう問題点があった。特に、ガラス板と笠木と下枠との間に隙間があると、建物全体の外観の体裁が損なわれてしまう。
本発明は以上に述べた実情に鑑み、耐風圧性能が高くて外観の体裁もよく、しかも、施工手間がかからずに、安全且つ低コストで工期短縮も図れるガラス手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、足場の内外を隔てる位置に起立する支柱と、笠木と、載置部と、ガラスパネル部とを備えており、支柱は、その外側面の中間位置にガラスパネル部を固定するブラケットを有しており、笠木は、支柱の上端部に取り付けられるものであり、外側端部の下部には、ガラスパネル部の上枠を受け入れる上枠受入空間部を有しており、載置部は、支柱の外側見付面の下部に取り付けられるものであり、外側端部の上部には、ガラスパネル部の下枠を受け入れる下枠受入空間部を有しており、ガラスパネル部は、ガラス板と、ガラス板の四周を囲む上枠と下枠と竪枠とを有しており、上枠と下枠は、ガラス板の上側端面または下側端面から内側面に回り込んで、ガラス板の上側または下側端部内側のコーナー部を囲む見付片と見込片とからなるほぼL字状をなし、見付片とガラス板の内側面との間に弾性を有する構造シール部を介在して取り付けてあると共に、見込片は、ガラス板の外側面とほぼ面一となるように配設してあることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2記載の発明は、足場の内外を隔てる位置に起立する支柱と、笠木と、載置部と、ガラスパネル部とを備えており、支柱は、その外側面の中間位置にガラスパネル部を固定するブラケットを有しており、笠木は、支柱の上端部に取り付けられるものであり、外側端部の下部には、ガラスパネル部の上枠を受け入れる上枠受入空間部を有しており、載置部は、支柱の外側見付面の下部に取り付けられるものであり、外側端部の上部には、ガラスパネル部の下枠を受け入れる下枠受入空間部を有しており、ガラスパネル部は、ガラス板と、ガラス板の四周を囲む上枠と下枠と竪枠とを有しており、上枠と下枠と竪枠は、それぞれがガラス板の外周側端面から内側面に回り込んで、ガラス板の外周側端部内側のコーナー部を囲む見付片と見込片とからなるほぼL字状をなし、それぞれの見付片とガラス板の内側面との間に弾性を有する構造シール部を介在して取り付けてあると共に、それぞれの見込片は、ガラス板の外側面とほぼ面一となるように配設してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、笠木と載置部は、外側見付面が開放した上枠受入空間部と下枠受入空間部を有しており、さらに、ガラスパネル部の上枠と下枠が見付片と見込片とからなることで、屋外側から眺めたときに、ガラス板が外側見付面のほぼ一面に露出した状態となって建物外観の体裁がよくなる。しかも、ガラスパネル部が載置部の下枠受入空間部に入って下支えされると共に、笠木の上枠受入空間部に入って位置決めされることから、ガラスパネル部を載置部に落とし込めば、あとはガラスパネルをブラケットにネジ止め固定するだけで、ほぼ手摺の施工が完了するため、施工手間がかからず工期短縮が図れ、しかも、高所作業者などの設備や高所作業を要さないので安全且つ低コストで提供できる。
【0008】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、ガラス板の四周端部のすべての外側見付面を遮るものがほぼなくなり、したがって、外側見付面が上下左右に連続した外観意匠を呈することになる。また、ガラス板を上下枠と竪枠により、四周すべてを構造シール部で支持してあることから、耐風圧性能が高く、しかも、耐風圧許容面積がガラス板を四辺支持するものとして計算できるため、ガラス板のコスト抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図3(a)中A−A線を縦断面して示す本実施による手摺である。
【図2】(a)は、図3(a)中B−B線を横断面して示す本実施による手摺であり、(b)は、(a)中Cを拡大して示す横断面図である。
【図3】(a)は、本実施による手摺の全体を示す正面図であり、(b)は、(a)の一部を拡大し、ガラス板の支持構造を示す正面図である。
【図4】(a)〜(e)は、本実施による手摺の施工手順を示す簡略化した側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す正面図であり、(a)は全体図、(b)は、拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の手摺をバルコニー用としたときの実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施による手摺は、図1と図3(a)(b)のように、バルコニーの足場Gに取り付けるものであり、支柱1と笠木2と載置部3とガラスパネル部4とからなっている。
【0011】
支柱1は、バルコニーの足場Gから垂直に起立するものであり、断面ほぼ矩形状をなす中空押出形材からなっている。また、支柱1の内周側面には、図1と図2(a)(b)のように、タッピングホール5が複数箇所に設けてあり、このタッピングホール5には、笠木2やガラスパネル部4の上枠を係止するための目板6を固定するネジがネジ止めされる。また、目板6は、支柱1,1間に連続する長尺な押出形材であり、外側端部には上枠18を係止する被係止部7が設けてある。さらに、支柱1の外側見付面1aには、図2(b)のように、支柱側ブラケット8aと、その支柱側ブラケット8aにネジ止め固定されるパネル支持ブラケット8bとがネジで固定され、支柱側ブラケット8aとパネル支持ブラケット8bは、支柱1に沿って上下に長く形成してある。そして、支柱側ブラケット8aは、支柱1の外側見付面1aにネジで固定する支柱固定片9と、その支柱固定片9から外側に突出する突出片10とから断面ほぼT字状をなすものであり、突出片10にパネル支持ブラケット8bがネジ止め固定される。また、パネル支持ブラケット8bは、内外方向に延びる被取付片11と、被取付片11の外側に左右に延びる被係止片12とからなっており、被取付片11は、支柱側ブラケット8aの突出片10にネジ止め固定される。さらに、被係止片12の外側面の両側には、ガラスパネル部4の竪枠20に設けてある側部係止片32を係止する竪枠側被係止部13,13がそれぞれ設けてある。
【0012】
笠木2は、図1のように、縦断面が横長ほぼ矩形状をなす中空押出部材であり、その外側端部の下部には、外側見付面1aをほぼ開放した状態の上枠受入空間部35を有しており、その上枠受入空間部35は、笠木2の長手方向に沿って連続して設けてある。また、笠木2の内側下部には、凹溝37が設けてあり、この凹溝37には、支柱1上端部に固定してある目板6が嵌り、笠木2を載置したときに、笠木2が位置決めされてネジ止めが容易となる。
【0013】
載置部3は、図1のように、支柱1の外側見付面1aからほぼ水平に突出した下枠受片14と、下枠受片14の上側に平行して突出する下枠被係止片15と、下枠受片14と下枠被係止片15を上下につなぐ支柱取付片16とからなっており、その支柱取付片16を支柱1の外側見付面1aに当接してネジで取り付けることで、載置部3を固定している。また、下枠被係止片15は、その外側先端部にガラスパネル部4の下枠19の下側係止片26を係止するものである。さらに、下枠受片14は、下枠被係止片15よりも外側に長く突出しており、これにより、外側見付面1aと上方が開放した下枠受入空間部36が設けられている。
【0014】
ガラスパネル部4は、図1及び図2(a)(b)のように、ガラス板17と、ガラス板17の上端部に取り付ける上枠18と、ガラス板17の下端部に取り付ける下枠19と、ガラス板17の左右端部に取り付ける竪枠20とから構成するものである。具体的に、本実施によるガラスパネル部4は、SSG(ストラクチュラル・シーラント・グレーシング)と称される、ガラスパネル部4を屋外側から見たときに、ガラス板17の四周を囲む枠材やそれを支持する支持金具類などがガラス板17の屋外側面に設けられない構造をなすものである。そして、図1のように、上枠18は、ガラス板17の上側端面に対面する見込片21と、この見込片21の内側端部から下方向に延びてガラス板17の内側面と対面する見付片22とからほぼL字状をなしており、ガラス板17の上側端部内側のコーナー部RをほぼL字状に囲むものである。同様に、下枠19についても、ガラス板17の下側端面に対面する見込片23と、この見込片23の内側端部から上方向に延びてガラス板17の内側面と対面する見付片24とからほぼL字状をなしており、ガラス板17の下側端部内側のコーナー部RをほぼL字状に囲むものである。さらに、上枠18と下枠19のそれぞれの見付片22,24の内側には、上側係止片25と下側係止片26がそれぞれ設けてある。さらに、左右の竪枠20,20も同様に、図2(b)を参照すれば、ガラス板17の両側端面に対面する見込片31と、この見込片31の内側端部から左右いずれかの方向に延びてガラス板17の内側面と対面する見付片30とから、ほぼL字状をなしており、このことから、ガラス板17の四周のすべてを見付片22,24,30と見込片21,23,31と各係止片(上側係止片25、下側係止片26、側部係止片32)とからなる枠材で枠組みするものである。また、上枠18と下枠19と左右の竪枠20のそれぞれの見付片22,24,30とガラス板17の内側面との間には、サーマルボンド部33と構造シール部34が介在している。そのうちサーマルボンド部33は、低融点繊維を熱で溶かして繊維同士を溶着することでシート状に成形したものであり、また、構造シール部34は、シリコンを素材として弾性を有するものであり、耐候性や耐熱性、接着性などに優れたものである。そして、上記サーマルボンド部33と構造シール部34がガラス板17の内側面と上枠18と下枠19と左右竪枠20,20のそれぞれの見付片22,24,30との間に介在することで、外側にガラス板17を支持する手段を設けなくても十分な耐風圧性能を発揮できる構成となっている。また、本実施による手摺では、図3(a)(b)のように、上枠18と下枠19と左右の竪枠20,20のそれぞれの見込片21,23,31がガラス板17の四周側端面に当接していることで、ガラス板17の内側から構造シール部34を当接するのみの一般的なSSGガラスパネルよりも耐久性の高い構造となる。
【0015】
次に、本手摺の施工手順を以下に説明する。
図4(a)にように、第1の手順として、バルコニーの足場G上面に支柱1を起立し、支柱1の上端部に目板6をネジ止めし、さらに、支柱1の外側見付面1aの下部に載置部3をネジで固定する。
第2の手順として、図4(b)のように、ガラスパネル部4の上枠18の上側係止片25を目板6の被係止部7に、また、下枠19の下側係止片26を載置部3の下枠被係止片15に、さらに、左右の竪枠20,20の側部係止片32をパネル支持ブラケット8bの竪枠側被係止部13に、それぞれ係止してガラスパネル部4を係止し、さらに、落とし込むことにより、図4(c)のように、ガラスパネル部4の下枠19が載置部3の下枠受入空間部36に入ると共に、ガラスパネル部4が載置部3の上に乗った状態で支持される。
第3の手順として、図4(d)のように、笠木2を目板6の上に載置し、笠木2の上枠受入空間部35にガラスパネル部4の上枠18が呑み込まれるように位置をあわせ、さらに、笠木2と目板6をネジ止めすることにより、図4(e)のように、本実施による手摺が完成する。
【0016】
本発明の手摺の他の実施形態として、図5(a)(b)のように、上枠18と下枠19のみが見付片22,24と見込片21,23とからなるL字状の枠材を適用し、ガラス板17と上枠18および下枠19の間に構造シール部34(図2(b)参照)を介在しており、左右の竪枠40,40には、構造シール部34を介在しない一般的な枠材を適用したものである。このように形成したときには、図5(a)のように、笠木2や載置部3の外側見付面1aが視覚的にほとんど見えなくなってガラス板17の上下方向が連続した外観意匠となるので、既設の支柱1にガラスパネル部4を設置する場合や、あるいは、バルコニーの足場Gのスペースに制限がある場合であっても、一定の耐風圧性能を保持しつつ好適な外観意匠を呈する手摺が提供できる。また、本発明の手摺の笠木2や載置部3の形状は、ガラスパネル部4を支柱1に取り付けたときに、手摺を外側から眺めたときに外側見付面1aが見えなくなるものであれば特に限定するものではない。また、上枠18と下枠19と竪枠20は、ガラス板17の四周側端部から内側端面までのコーナー部RをほぼL字状に囲む構成部分を有していれば、パネル側支持ブラケット8bや支柱側ブラケット8aと一体の構造をなすものであってもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 支柱
1a 外側見付面
2 笠木
3 載置部
4 ガラスパネル部
8a 支柱側ブラケット(ブラケット)
8b パネル支持ブラケット(ブラケット)
17 ガラス板
18 上枠
19 下枠
20,40 竪枠
21,23,31 見込片
22,24,30 見付片
34 構造シール部
R コーナー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場の内外を隔てる位置に起立する支柱と、笠木と、載置部と、ガラスパネル部とを備えており、
支柱は、その外側見付面の中間位置にガラスパネル部を固定するブラケットを有しており、笠木は、支柱の上端部に取り付けられるものであり、外側端部の下部には、ガラスパネル部の上枠を受け入れる上枠受入空間部を有しており、載置部は、支柱の外側見付面の下部に取り付けられるものであり、外側端部の上部には、ガラスパネル部の下枠を受け入れる下枠受入空間部を有しており、
ガラスパネル部は、ガラス板と、ガラス板の四周を囲む上枠と下枠と竪枠とを有しており、上枠と下枠は、ガラス板の上側端面または下側端面から内側面に回り込んで、ガラス板の上側または下側端部内側のコーナー部を囲む見付片と見込片とからなるほぼL字状をなし、見付片とガラス板の内側面との間に弾性を有する構造シール部を介在して取り付けてあると共に、見込片は、ガラス板の外側面とほぼ面一となるように配設してあることを特徴とする手摺。
【請求項2】
足場の内外を隔てる位置に起立する支柱と、笠木と、載置部と、ガラスパネル部とを備えており、
支柱は、その外側見付面の中間位置にガラスパネル部を固定するブラケットを有しており、笠木は、支柱の上端部に取り付けられるものであり、外側端部の下部には、ガラスパネル部の上枠を受け入れる上枠受入空間部を有しており、載置部は、支柱の外側見付面の下部に取り付けられるものであり、外側端部の上部には、ガラスパネル部の下枠を受け入れる下枠受入空間部を有しており、
ガラスパネル部は、ガラス板と、ガラス板の四周を囲む上枠と下枠と竪枠とを有しており、上枠と下枠と竪枠は、それぞれがガラス板の外周側端面から内側面に回り込んで、ガラス板の外周側端部内側のコーナー部を囲む見付片と見込片とからなるほぼL字状をなし、それぞれの見付片とガラス板の内側面との間に弾性を有する構造シール部を介在して取り付けてあると共に、それぞれの見込片は、ガラス板の外側面とほぼ面一となるように配設してあることを特徴とする手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53419(P2013−53419A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190905(P2011−190905)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(301056041)宮吉硝子株式会社 (3)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】