説明

手術台の挙上器装置

【課題】 従来の手術台の挙上器においては、左右の対となるギアとラックはその精度が完全に一致しなければならず、かつ、2個のギアのシャフトに対する取付け角度が変わっていると、挙上器の左右の水平度が狂ってしまうといった問題があった。
【解決手段】 手動または駆動源によって進退可能な移動部材9,10と、該移動部材の進出によって油が排出される2個の同径の油圧シリンダ5,6と、該それぞれの油圧シリンダにパイプで接続された手術台の左右側面に固定された2個の同径の動作油圧シリンダ3,4と、該一対の動作シリンダのシリンダラムに先端に前記手術台を横断するように取付けられた挙上器Aとから構成したことを特徴とする手術台の挙上器装置である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は患者を寝かせた姿勢での手術に際し、手術部位を上方に押し上げることによって手術部位を伸長し、手術をし易くする手術台の挙上器装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の手術台の挙上器を図5に示す。aは手術台の所望位置において手術台を横切るように上下動可能に取付けられた挙上器にして、下部の両側にラックbが固定されている。そして、このラックbが手術台に対して上下動自在に支持されている。
【0003】cはハンドルにして、先端にウォームギアdが取付けられ、このウォームギアdにはウォームホイールギアeが噛合され、該ウォームホイールギアeには回転軸fが固定されると共に、該回転軸fには前記ラックbと噛合する平歯車gが固定されている。
【0004】そして、その動作は、ハンドルcを回転してウォームギアdを回転させると、該ウォームギアdに噛合されているウォームホイールギアeが回転されるので、平歯車fが回転されラックbが上下動することにより、ハンドルcの回転方向によって挙上器aが上下動する。これにより、手術台に寝ている患者の一部(患部)を押し上げて手術が行い易くできるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の手術台の挙上器においては、左右の対となるギアとラックはその精度が完全に一致しなければならず、かつ、2個のギアのシャフトに対する取付け角度が変わっていると、挙上器の左右の水平度が狂ってしまう。
【0006】また、左右のギアとラックの噛み合い精度も挙上器の左右でのガタに影響を与え、手術が行い難くなるなどの問題点もあり、部品の製作や組立に精度を要求されてコストが高くなるといった問題点があった。
【0007】本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、左右2個づつでセットとなるそれぞれの油圧シリンダと動作油圧シリンダによって挙上器の昇降高さを調整するようにしたので、如何ように変化させても挙上器が常に水平状態に維持し、しかも、上昇に力を要しない手術台の挙上器装置を提供せんとするにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の手術台の挙上器装置は前記した目的を達成せんとするもので、その手段は、手動または駆動源によって進退可能な移動部材と、該移動部材の進出によって油が排出される2個の同径の油圧シリンダと、該それぞれの油圧シリンダにパイプで接続された手術台の左右側面に固定された2個の同径の動作油圧シリンダと、該一対の動作シリンダのシリンダラムに先端に前記手術台を横断するように取付けられた挙上器とから構成しものである。
【0009】また、前記移動部材は、前記2個の油圧シリンダのシリンダラムの先端に取付けられた螺孔が形成されたスライド板と、該スライド板の前記螺孔に螺合される螺杆を有するハンドルから形成したものであり、さらに、前記2個の油圧シリンダおよび前記移動部材が1つのケース内に収容することが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明を原理的に示した図1R>1、図2について、以下に説明する。一般的に患者の手術部位の下側を支持しながら上昇させて患者の手術部位を伸長させる挙上器Aは、患者の上半身を寝かせる手術台を構成する上ベッド1と、下半身を支持する下ベッド2との略中間に設けられるものである。
【0011】この挙上器Aは左右両側において、垂直方向に設置されて油圧で動作する左右同径の2個の油圧シリンダ3,4のラム31,41に取付けられていて、油圧シリンダ3,4に同量の油圧が注入されると、油圧シリンダ3,4は同径であるために、ラム31,41は同じ高さだけ上昇する。
【0012】この油圧シリンダ3,4は前述の上ベッド1と下ベッド2との間において手術台に取付けられているので、油圧シリンダ3,4に同量のオイルが注入されると挙上器Aは初期の水平状態を維持したまま上昇することになる。
【0013】そして、手術台には任意の箇所に2個の同径の動作油圧シリンダ5,6が平行に設置されていて、それぞれ油圧パイプ7,8で油圧シリンダ3,4に接続され、そのラム51,61が押されると、シリンダ5,6内のオイルはシリンダ3、4内に移動するようになっている。
【0014】各動作油圧シリンダ5、6のラム51,61は一枚のスライド板9に取付けられ、スライド板9にはラム51とラム61の中間の位置にネジ孔が穿設され、ハンドル10が取付けられている螺杆11に螺合している。
【0015】従って、ハンドル10で螺杆11を回転させると、その回転方向によってラム51,61は動作油圧シリンダ5,6内をスライドし、動作油圧シリンダ5,6内のオイルを圧縮、若しくは減圧し、その圧縮量、減圧量に応じたオイルを油圧シリンダ3,4内に圧入し、または、吸入する。
【0016】動作油圧シリンダ5,6は同径であるために、これらの動作油圧シリンダ5,6での圧縮量、減圧量は同一となり、油圧シリンダ3,4は同じ寸法でラム31,41を伸長、あるいは、収縮するので、挙上器Aは前述のように水平な状態を保ったまま昇降するものである。
【0017】これを図3、図4に示す手術台に実施する場合においては、床面に設置する設置台12に基台13を設置し、上ベッド1と下ベッド2を一枚のマット14を載置し、その上ベッド1側のフレーム141と下ベッド側のフレーム142とを中間側で回動可能に連結する。
【0018】従って、フレーム141とフレーム151の枢着点を中心として反対側を下降させれば、フレーム141とフレーム151の間において患者の上側を延ばし下側を縮めた状態にすることができる。
【0019】そして、挙上器Aをフレーム141,142の中間に位置させるように油圧シリンダ3,4を基台13からの延長部131で支持させることで、ハンドル10の回転で挙上器Aを上昇させることができ、挙上器A上に位置する患者の手術部位は一層押し広げられて伸長されるので、手術部位が見やすくなり、手術が容易に行えるようになる。
【0020】また、動作油圧シリンダ5,6を平行な状態で一個のケース15内に固定すると共に、スライド板9をこのケース15内にスライド可能に支持させ、かつ、螺杆11をケース15で軸受けさせるようにすれば、動作油圧シリンダ5,6と、これを動作させるための部材が一個のケース15内にセットされている。
【0021】そのために、組立が容易になると同時に精度の高さが得られ、しかも手術台への取付けも簡単とすることができるもので、実施の形態では螺杆により移動部材を移動させたが、螺杆以外の手段、例えば、モーターなどで移動させても差し支えない。
【0022】
【発明の効果】本発明は前記したように、手動または駆動源によって進退可能な移動部材と、該移動部材の進出によって油が排出される2個の同径の油圧シリンダと、該それぞれの油圧シリンダにパイプで接続された手術台の左右側面に固定された2個の同径の動作油圧シリンダと、該一対の動作シリンダのシリンダラムに先端に前記手術台を横断するように取付けられた挙上器とから構成したので、それぞれのセットとなっている動作油圧シリンダのラムは移動部材の動かされた長さと同一距離だけ移動することになる。
【0023】従って、動作油圧シリンダのラムに取付けられた挙上器は、移動部材の移動距離だけ昇降することになるので、挙上器は最初にセットされた水平状態を保ったままで昇降することになる。
【0024】そして、本発明は従来のラックとギアを用いた挙上器のような加工精度や組立精度を要することなく、簡単に挙上器の水平度が維持できるので、手術台のコストの引下げができて、投資費用を逓減できるばかりでなく維持が容易となって運用コストも引き下げることが可能となる。
【0025】また、一個のケースに2つの油圧シリンダの取付けと螺杆の軸受け、移動部材のスライド支承とを行わせれば、これらの制度の高い組立や、容易な手術台への取付けなどの効果も期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理的な斜視図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】従来から知られている手術台に実施した平面図である。
【図4】同上の側面図である。
【図5】従来における挙上器装置の原理的な斜視図である。
【符号の説明】
A 挙上器
3 油圧シリンダ
31 ラム
4 油圧シリンダ
41 ラム
5 動作油圧シリンダ
51 ラム
6 動作油圧シリンダ
61 ラム
9 スライド板
10 ハンドル
11 螺杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】 手動または駆動源によって進退可能な移動部材と、該移動部材の進出によって油が排出される2個の同径の油圧シリンダと、該それぞれの油圧シリンダにパイプで接続された手術台の左右側面に固定された2個の同径の動作油圧シリンダと、該一対の動作シリンダのシリンダラムに先端に前記手術台を横断するように取付けられた挙上器とから構成したことを特徴とする手術台の挙上器装置。
【請求項2】 前記移動部材は、前記2個の油圧シリンダのシリンダラムの先端に取付けられた螺孔が形成されたスライド板と、該スライド板の前記螺孔に螺合される螺杆を有するハンドルから形成されていることを特徴とする請求項1記載の手術台の挙上器装置。
【請求項3】 前記2個の油圧シリンダおよび前記移動部材が1つのケース内に収容されていることを特徴とする請求項1記載の手術台の挙上器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−282310(P2002−282310A)
【公開日】平成14年10月2日(2002.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−84938(P2001−84938)
【出願日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】