説明

手術台位置決め装置

【課題】手術台を診断機器に対して簡易かつ迅速に位置決めする。
【解決手段】手術室の床面F上で所望方向に移動可能な手術台1を床面の定位置へと案内する案内手段を具備する。手術台が、床面上に置かれる基台2と、基台上で一方向にスライド可能なテーブル4とを有し、基台は、床面に接するキャスタ5と、基台を床面上で昇降させてキャスタを床面に接離させる伸縮ロッド6とを有し、案内手段は、床面に垂直に固定される支軸9と、支軸に旋回可能に一端が連結され、他端が基台に連結される旋回アーム10とを有し、基台が旋回アームを介して支軸の回りを上記定位置へと旋回せしめられ、伸縮ロッドによってキャスタが床面から離れると、手術台が定位置に位置決めされるようにした。支軸を支点にして手術台を旋回させるので、重い手術台であっても小さな力で簡易かつ迅速に定位置に正確に位置決めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術台を例えばMRI装置、CT装置等の診断機器に対して精度良く連結するために用いることができる手術台位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、術者は手術台上の患者に対し頭蓋内の腫瘍摘出手術を行う場合、診断機器で腫瘍の除去具合等を必要に応じて随時確認しながら手術を進行する。その場合、手術台をMRI装置、CT装置等の診断機器に対して高度な位置精度で連結する必要がある。手術台と診断機器との位置関係が不正確であると、患者を診断機器の検査部へと移動させる際に手術台の患者を乗せるテーブルが検査部に当たったり、患者が検査部内をずれて移動したりし、正確な検査を行うことができなくなるおそれがある。
【0003】
手術室の床面上には、手術用スペースと、検査用スペースとが設けられ、手術時には手術台を手術用スペース側に置いて手術が行われ、検査時には手術台を検査用スペース側へと移動させて検査が行われる。正確な検査を行うには、手術台を手術用スペースから検査用スペースへと移動させたときに手術台を床面上で正確に位置決めすることが必要である。
【0004】
従来、手術台を検査用スペースにおいて正確に位置決めするために、手術用スペースと検査用スペースとの間をガイドレールで結び、このガイドレール上で手術台を移動させたり、移動先でテーブルを手術台のコラム上で旋回させたりするようなことが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、検査用スペースの床面上に穴や当て部材を設けておき、手術台の基台に設けられた伸縮ロッドを上記穴に挿入したり、基台の端を上記当て部材に当てたりすることによって、手術台を所定の位置に位置決めするようなことも行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−232969号公報
【特許文献2】特開2007−301064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
手術台は例えば300kgあるいはそれ以上の重さを持つ重量物であるから、手術用スペースと検査用スペースとの間で移動させるのは容易ではない。手術台の基台には手術台を手で押しても容易に移動させることができるようにキャスタが設けられているが、このキャスタを利用しても手術台の移動には手間と時間がかかる。従来のように、ガイドレールを設けると手術台を比較的容易かつ正確に定位置へと移動させることができるが、手術台を一方向にしか移動させることができないので、手術用スペースや検査用スペースの位置の選択に大きな制約を受ける。また、手術室の床面を長いガイドレールが伸びることになるので、手術の邪魔になるおそれがある。検査用スペースの床面上に穴や当て部材を設ける場合は、手術用スペースと検査用スペースとの間で重い手術台を移動させなければならないという問題は依然として残る。また、検査の都度、穴を開閉したり、当て部材を出没させたりする操作を行わなければならず、手術や検査が煩雑となって遅延する。
【0008】
したがって、本発明は上記不具合を解消することができる手術台位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0010】
なお、発明の理解を容易にするため図面の参照符号をかっこ書で付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
すなわち、請求項1に係る発明は、手術室(G)の床面(F)上で所望方向に移動可能な手術台(1)を上記床面(F)上の定位置へと案内する案内手段を具備した手術台位置決め装置において、上記手術台(1)が、上記床面(F)上に置かれる基台(2)と、この基台(2)上で少なくとも一方向にスライド可能なテーブル(4)とを有し、上記基台(2)は、上記床面(F)に接するキャスタ(5)と、上記基台(2)を上記床面(F)上で昇降させて上記キャスタ(5)を上記床面(F)に接離させる伸縮ロッド(6)とを有し、上記案内手段は、上記床面(F)に垂直に固定される支軸(9)と、この支軸(9)に旋回可能に一端が連結され、他端が上記基台(2)に連結される旋回アーム(10)とを有し、上記基台(2)が上記旋回アーム(10)を介して上記支軸(9)の回りを上記定位置へと旋回せしめられ、上記伸縮ロッド(6)によって上記キャスタ(5)が上記床面(F)から離れると、手術台(1)が上記定位置に位置決めされるようにした手術台位置決め装置を採用する。
【0012】
また、請求項2に記載されるように、請求項1に記載の手術台位置決め装置において、上記手術台(1)を上記定位置に停止させる停止手段(7)を具備したものとすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載されるように、請求項1に記載の手術台位置決め装置において、上記旋回アーム(10)の他端が上記基台(2)に連結具を介して連結され、この連結具が、上記床面(F)に対し垂直方向に伸びる溝(20a)を有した雌部材(20)と、この雌部材(20)の溝(20a)に係脱可能な雄部材(21)とを有し、上記雌部材(20)が上記旋回アーム(10)と上記基台(2)のいずれか一方に固定され、上記雄部材(21)が他方に固定されたものとすることができる。
【0014】
また、請求項4に記載されるように、請求項3に記載の手術台位置決め装置において、ガイド棒(22)が上記雄部材(21)を垂直方向に相対的にスライド可能に貫通し、このガイド棒(22)の下端が上記雌部材(20)の下端に連結されたものとすることができる。
【0015】
また、請求項5に記載されるように、請求項1に記載の手術台位置決め装置において、上記定位置に位置決めされた手術台(1)のテーブル(4)がその天地方向でスライド可能であり、このテーブル(4)の天地方向に平行な中心線の延長線上に診断機器(8,27)の検査部(8a,27a)と上記支軸(9)がそれぞれ配置されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手術室(G)の床面(F)上で所望方向に移動可能な手術台(1)を上記床面(F)上の定位置へと案内する案内手段を具備した手術台位置決め装置において、上記手術台(1)が、上記床面(F)上に置かれる基台(2)と、この基台(2)上で少なくとも一方向にスライド可能なテーブル(4)とを有し、上記基台(2)は、上記床面(F)に接するキャスタ(5)と、上記基台(2)を上記床面(F)上で昇降させて上記キャスタ(5)を上記床面(F)に接離させる伸縮ロッド(6)とを有し、上記案内手段は、上記床面(F)に垂直に固定される支軸(9)と、この支軸(9)に旋回可能に一端が連結され、他端が上記基台(2)に連結される旋回アーム(10)とを有し、上記基台(2)が上記旋回アーム(10)を介して上記支軸(9)の回りを上記定位置へと旋回せしめられ、上記伸縮ロッド(6)によって上記キャスタ(5)が上記床面(F)から離れると、手術台(1)が上記定位置に位置決めされるようにしたことから、支軸(9)を支点にして手術台(1)を旋回させ、停止手段(7)によって定位置に停止させることができる。したがって、重い手術台(1)であっても小さな力で簡易かつ迅速に定位置に正確に位置決めすることができる。これにより、例えば手術室(G)の床面(F)上で手術台(1)を手術用スペースと検査用スペースとの間で速やかに移動させることができ、従って手術と検査の切換えを速やかに行ない、手術及び検査の効率を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
<実施の形態1>
図1に示すように、この手術台位置決め装置における手術台1は、手術室の床面F上に置かれる基台2と、基台2上に設置されるコラム3と、コラム3上に設置されるテーブル4とを具備する。
【0019】
テーブル4は、その上に乗る患者Aの頭側を天とし、足側を地とすると、コラム3上において天地方向に長く伸びる。テーブル4上には、その天地方向に沿うように患者Aが仰臥可能である。
【0020】
基台2は略直方体の筐体を有し、筐体の底部の四隅には手術室の床面F上を転動可能なキャスタ5がそれぞれ取り付けられる。また、基台2の筐体の底部の四隅には、キャスタ5に近接して伸縮ロッド6がそれぞれ設けられる。伸縮ロッド6は、油圧、電動モータ等により手術室の床面Fに対して垂直方向に伸縮動作するようになっている。筐体内には、図示しない油圧装置等が収納される。
【0021】
基台2上のコラム3内には、テーブル4を矢印a方向に昇降させるための図示しない昇降機構が設けられる。また、コラム3とテーブル4との間には、テーブル4を矢印bで示す方向に往復スライド運動させるための図示しないスライド機構が設けられる。昇降機構は、例えばピストン・シリンダ装置で構成される。また、スライド機構は、例えばコラム3の上端に取り付けられたレール、ガイド板等にテーブル4のフレームが摺動可能に嵌り込んだ構成とされる。昇降機構、スライド機構は上記基台2内の油圧装置により駆動するようになっている。
【0022】
なお、必要に応じてテーブル4を矢印bに直角な方向に往復スライド運動させるためのスライド機構が設けられる場合もある。
【0023】
上記伸縮ロッド6は、例えば小型のピストン・シリンダ装置として構成される。図示しないが、このピストン・シリンダ装置のシリンダが基台2の筐体に垂直に固定され、シリンダからピストンロッドが下方に突出する。上記キャスタ5が手術室の床面F上を転動することにより手術台1が所定位置まで運ばれ、ピストンロッドが伸動作すると、ピストンロッドの下端が床面Fに当たることにより手術台1が基台2やキャスタ5ごと床面F上に持ち上げられ、これにより手術台1が床面F上の定位置に固定される。床面Fの状態に応じて四隅の伸縮ロッド6は同時に伸縮動作させることもできるし、個別に伸縮動作させることも可能である。
【0024】
図7(A)又は(B)に示すように、手術室Gの床面F上には、手術用スペースP、検査用スペースQ、その他のスペースが割り当てられる。上記手術台1は、手術時には手術用スペースPに対応するように置かれる。術者等はこの手術用スペースP内においてテーブル4上の患者Aに対して手術を行う。また、上記手術台1は、検査時には検査用スペースQへと移動させられる。術者等はこの検査用スペースQ内においてテーブル4上の患者Aに対して検査を行う。
【0025】
図1及び図7(A)又は(B)に示すように、上記検査を行うために手術室Gの床面F上には、診断機器としてのMRI装置8が配置される。
【0026】
このMRI装置8によって正確な検査を行うには、手術台1を手術用スペースP側から検査用スペースQ側へと移動させたときに手術台1を床面F上で正確に位置決めすることが必要である。この位置決めを正確に行うために、手術台位置決め装置が設けられる。
【0027】
この手術台位置決め装置は、図1に示すように、手術台1を手術室G内における床面F上の手術用スペースP側の位置から所定の定位置である検査用スペースQに対応した位置へと案内する案内手段と、手術台1を上記定位置に停止させる停止手段とを具備する。
【0028】
停止手段は、手術室Gの床面F上に着脱自在に或いは床面Fに出没自在に設けられた突起7として構成される。この突起7が手術台1の基台2の側面に当たる程度の高さに設けられる。この突起7は、例えば床面Fに埋設したピストン・シリンダ装置のピストンロッド、ソレノイドのロッドとすることができる。
【0029】
なお、この停止手段である突起7は省略することも可能である。例えば、手術室Gの床面Fに所定の定位置を示す線等を描いておくことで、上記突起7が無くとも作業者が上記線等を視認することによって手術台1を所定の定位置に停止させることが可能である。
【0030】
案内手段は、図1乃至図4に示すように、手術室の床面Fに垂直に固定される支軸9と、この支軸9に旋回可能に一端が連結され、他端が手術台1の基台2に連結される旋回アーム10とを有する。
【0031】
案内手段は、例えば図7(A)に示すように、手術室Gの床面F上における一隅寄りの箇所に設置され、あるいは図7(B)に示すように、手術室Gの床面F上における一辺寄りの箇所に設置される。
【0032】
上述したように、上記定位置に位置決めされた手術台1のテーブル4はその天地方向でスライド可能であるが、図7(A)(B)に示すように、このテーブル4の天地方向に平行な中心線の延長線上に上記診断機器であるMRI装置8の検査部8aと案内手段の支軸9がそれぞれ配置される。
【0033】
案内手段の支軸9は、図2乃至図4に示すように、手術室の床面F上に固定された支持部材である三脚11上に垂直に固定される。三脚11の各脚はノブ付きネジ棒12によって床面Fに固定される。床面Fにはノブ付きネジ棒12が螺合する内ネジアンカー13が埋設される。ノブ付きネジ棒12を内ネジアンカー13に対して係脱させることにより、支軸9を三脚11と共に床面Fに対し自在に着脱することができる。支軸9の上端には取っ手14が取り付けられており、この取っ手14を持つことにより、支軸9を三脚11と一体で持ち運び可能である。
【0034】
旋回アーム10は、図2乃至図3に示すように、支軸9に回動自在に被せられた回動筒15と、この回動筒15から手術台1の基台2へと伸びて基台2に連結される二本のアーム部材16とを具備する。
【0035】
回動筒15は、図4に示すように、支軸9の下端に螺合するナット17の上に乗っている。このナット17を支軸9の回りで回すことにより、支軸9上での回動筒15の高さ位置を加減することができる。図4に示すように、回動筒15の内周面と支軸9の外周面との間と、回動筒15の下端とナット17の上端との間には、それぞれドライベアリング18a,18bが設けられる。
【0036】
また、図2及び図4に示すように、回動筒15の内周面には、周方向に一定角度で溝15aが形成され、支軸9の外周面に螺入したボルトの頭部等からなる突部9aが溝15a内に挿入される。これにより、突部9aが溝15a内でストッパとして機能し、回動筒15の回動が一定角度内に規制され、その結果、旋回アーム10の旋回角度も一定角度内に規制される。この一定角度は例えば90°とすることができる。
【0037】
二本のアーム部材16は、基台2の一端面に平行に伸びる第一と第二の補強フレーム19a,19bによって補強される。
【0038】
旋回アーム10はその他端を基台2に対しボルト・ナット等により直に連結することも可能であるが、望ましくは、図2、図3、図5及び図6に示すように、連結具を介して連結される。
【0039】
この連結具は、手術室の床面Fに対し垂直方向に伸びる溝20aを有した雌部材20と、この雌部材20の溝20aに出入り可能な凸型の雄部材21とを有する。図2に示すように、雌雄部材20、21は基台2の一側面の左右両側にそれぞれ一対ずつ設けられる。この実施の形態1では、雌部材20が基台2側に固定され、雄部材21が旋回アーム10の第一の補強フレーム19aに固定される。基台2の一側面からは二本の板状のブラケット2aが旋回アーム10側へと突出し、この各ブラケット2aに雌部材20が夫々固定される。
【0040】
なお、雌部材20を旋回アーム10側に固定し、雄部材21を基台2側に固定してもよい。
【0041】
図5に示すように、凸型の雄部材21は楔状に形成され、その左右両端面には斜面が設けられる。雌部材20の溝20aの左右両面には、雄部材21の斜面に合致するように斜面が設けられる。これにより、雌雄部材20,21が嵌合すると、旋回アーム10は基台2に正確に連結されることになる。
【0042】
図5及び図6に示すように、ノブ付きガイド棒22が上記雄部材21を垂直方向に貫通し、このガイド棒22の下端が雌部材20の下端に連結される。具体的には、雌部材20を支持する上記ブラケット2aに雌ネジ23が形成され、この雌ネジ23にガイド棒22の下端に形成された雄ネジ24が螺合するようになっている。ガイド棒22が垂直方向に貫通する雄部材21の孔21aの内周面には環状溝25が形成され、この環状溝25内にガイド棒22に植設されたボルトの頭等からなる突部26が嵌り込んでいる。上記雌雄部材20,21が嵌合した後に、ガイド棒22が孔21aに挿入され、捩じられると、その雄ネジ24がブラケット2aの雌ネジ23に螺合する。これにより、雌雄部材20,21の分離が防止され、旋回アーム10が基台2に確実に連結されることになる。また、ガイド棒22側の突部26が雄部材21の環状溝25内に入り込んでいるので、垂直方向で雄部材21が雌部材20から離脱することも確実に阻止される。
【0043】
次に、上記構成の手術台位置決め装置の作用について説明する。
【0044】
図1に示すような手術台1が手術室の床面F上に置かれ、手術台1のテーブル4上に載せた患者Aに対して例えば脳腫瘍摘出手術が行われるものとして説明する。
【0045】
図7(A)又は(B)に示すように、手術室Gの床面F上における所定の箇所に、案内手段の三脚11が設置され、ノブ付きネジ棒12が床面Fに予め埋設された内ネジアンカー13に対して螺入されることによって、三脚11の各脚が床面Fに固定される。
【0046】
三脚11には支軸9が一体的に設けられていることから、支軸9が床面Fに垂直に起立する。
【0047】
また、支軸9には回動筒15を介して旋回アーム10の一端が旋回可能に連結されており、この旋回アーム10の他端に向かって、作業者によって押される手術台1が移動して来る。手術台1は基台2に取り付けられたキャスタ5によって床面F上を自在に移動可能であり、向きも自在に変更可能である。
【0048】
作業者によって、手術台1の位置及び向きが調整され、旋回アーム10側の雄部材21が基台2側の雌部材20の溝20a内に嵌め込まれる。雌部材20の溝20aの左右両面と雄部材21の左右両面には楔状に斜面が形成されていることから、手術台1は旋回アーム10に正確かつ強固に連結される。
【0049】
雌雄部材20,21の垂直方向での嵌合位置は、支軸9のナット17をいずれかの方向に回し、回動筒15を支軸に沿って昇降させることによって調整することが可能である。
【0050】
雌雄部材20,21が嵌合した後、ガイド棒22を雄部材21の孔21aに挿入し、ガイド棒22の先端の雄ネジ24を雌部材20側のブラケット2aの雌ネジ23と螺合させる。これにより、雌雄部材20,21の離反が防止され、手術台1が支軸9に確実に連結される。
【0051】
手術の開始にあたり、手術台1のテーブル4上に患者Aが載せられる。術者等は手術台1の天側を所望の方向に押すことによって、小さな力で手術台1を図7(A)又は(B)に示す手術用スペースP側へと移動させることができる。
【0052】
手術台1は支軸9を支点にして手術室Gの床面F上を手術用スペースP側へと旋回し、手術用スペースに対応する位置に停止する。
【0053】
なお、手術用スペースPに対応する位置にも停止手段としての突起を設けておいてもよい。この突起も手術室Gの床面F上に着脱自在に或いは床面Fに出没自在に設けられる。
【0054】
そこで、伸縮ロッド6を伸動作させてその下端を床面Fに当てると、キャスタ5が床面Fから浮上する。これにより、手術台1は床面F上に固定され、患者Aに対する手術が可能となる。
【0055】
術者は手術用スペースP内において手術台1のテーブル4上に乗せられた患者Aに対して手術を開始する。
【0056】
手術中、患部を診断機器であるMRI装置8により検査する場合は、伸縮ロッド6を縮動作させて基台2のキャスタ5を床面Fに接触させる。
【0057】
術者等は手術台1の天側を検査用スペースQ側へと押すことによって、小さな力で手術台1を図7(A)又は(B)に示す検査用スペースQ側へと移動させることができる。
【0058】
手術台1は支軸9を支点にして手術室Gの床面F上を手術用スペースP側から検査用スペースQ側へと旋回し、基台2が停止手段としての突起7に当たることによって、検査用スペースQに対応する位置に正確に停止する。
【0059】
上述したように、この突起7に代えて又はこの突起7を設けると共に手術室Gの床面Fに定位置を示す線等を表示しておいてもよい。
【0060】
そこで、伸縮ロッド6を伸動作させてその下端を床面Fに当てると、キャスタ5が床面Fから浮上する。これにより、手術台1は床面F上に固定される。
【0061】
続いて手術台1のスライド機構の駆動により、テーブル4が図1中二点鎖線で示すようにMRI装置8の検査部8aへと進行し、テーブル4上の患者Aの患部に対して検査が行われる。
【0062】
検査後、テーブル4が基台2上に復帰すると、伸縮ロッド6を縮動作させてその下端を床面Fから離し、キャスタ5を床面に接触させる。
【0063】
術者等は手術台1の天側を所望の方向に押すことによって、小さな力で手術台1を図7(A)又は(B)に示す検査用スペースQ側から手術用スペースP側へと移動させることができる。
【0064】
手術台1は支軸9を支点にして手術室Gの床面F上を手術用スペースP側へと旋回する。
【0065】
そこで、伸縮ロッド6を伸動作させてその下端を床面Fに当てると、キャスタ5が床面Fから浮上する。これにより、手術台1は床面F上に固定される。
【0066】
術者は手術用スペースP内において手術台1のテーブル4上に乗せられた患者Aに対して手術を再開する。
【0067】
<実施の形態2>
図8に示すように、この実施の形態2の手術台位置決め装置では、診断機器としてCT装置27が用いられる。
【0068】
図9(A)(B)に示すように、手術室Gの床面F上には、手術用スペースP、検査用スペースQ、その他のスペースが割り当てられる。上記手術台1は、手術時には手術用スペースPに対応するように置かれる。術者等はこの手術用スペースP内においてテーブル4上の患者Aに対して手術を行う。また、上記手術台1は、検査時には検査用スペースQへと移動させられる。術者等はこの検査用スペースQ内においてテーブル4上の患者Aに対して検査を行う。
【0069】
図8及び図9(A)(B)に示すように、上記検査を行うために手術室Gの床面F上には、診断機器としてCT装置27が配置される。
【0070】
このCT装置27によって正確な検査を行うには、手術台1を手術用スペースP側から検査用スペースQ側へと移動させたときに手術台1を床面F上で正確に位置決めすることが必要である。この位置決めを正確に行うために、手術台位置決め装置が設けられる。
【0071】
この手術台位置決め装置は、実施の形態1におけるものと同様であるからその構成の詳細な説明は省略する。
【0072】
次に、手術台位置決め装置の作用について説明すると、図8及び図9(A)(B)に示すように、手術室Gの床面F上における所定の箇所に、案内手段の支軸9が垂直に設置される。この支軸9に旋回アーム10を介して手術台1が連結される。
【0073】
手術の開始にあたり、手術台1のテーブル4上に患者Aが載せられる。術者等は手術台1のテーブル4の天側に手を掛けて所望の方向に押すことによって、小さな力で手術台1を図9(A)に示すように手術用スペースP側へと移動させることができる。
【0074】
そこで、伸縮ロッド6を伸動作させてその下端を床面Fに当てると、キャスタ5が床面Fから浮上する。これにより、手術台1は床面F上に固定され、患者Aに対する手術が可能となる。
【0075】
術者は手術用スペースP内において手術台1のテーブル4上に乗せられた患者Aに対して手術を開始する。
【0076】
手術中、患部を診断機器であるCT装置27により検査する場合は、伸縮ロッド6を縮動作させて基台2のキャスタ5を床面Fに接触させる。
【0077】
CT装置27の検査部27aが図9(A)に示す位置にある時に、術者等は手術台1の天側を上記方向とは反対の方向に押すことによって、手術台1を図9(B)に示す検査用スペースQ側へと移動させる。手術台1は支軸9を支点にして旋回するので、術者等は手術台1を小さな力で図9(B)に示す検査用スペースQ側へと移動させることができる。
【0078】
手術台1は支軸9を支点にして手術室Gの床面F上を手術用スペースP側から検査用スペースQ側へと旋回し、基台2が停止手段としての突起7に当たることによって、検査用スペースQに対応する位置に正確に停止する。
【0079】
なお、この突起7に代えて又はこの突起7を設けると共に手術室Gの床面Fに定位置を示す線等を表示しておいてもよい。
【0080】
その後、CT装置27の検査部27aが図9(A)に示す位置から同図(B)に示す位置へと移動する。
【0081】
そこで、伸縮ロッド6を伸動作させてその下端を床面Fに当てると、キャスタ5が床面Fから浮上する。これにより、手術台1は床面F上に固定される。
【0082】
続いて手術台1のスライド機構の駆動により、テーブル4が図9(B)中、矢印bの方向にCT装置27の検査部27aに対して往復スライド運動を行う。これにより、テーブル4上の患者Aの患部に対して検査が行われる。
【0083】
検査後、テーブル4が基台2上に復帰し、また、検査部27aが図9(B)の位置から同図(A)の位置へと復帰する。
【0084】
テーブル4が基台2上に復帰すると、伸縮ロッド6が縮動作してその下端を床面Fから離し、キャスタ5を床面Fに接触させる。
【0085】
術者等は手術台1の天側を所望の方向に押すことによって、手術台1を図9(B)に示す検査用スペースQ側から図9(A)に示す手術用スペースP側へと移動させる。手術台1は支軸9を支点にして旋回可能であるから、小さな力で手術台1を手術用スペースP側へと移動させることができる。
【0086】
そこで、伸縮ロッド6を伸動作させてその下端を床面Fに当てると、キャスタ5が床面Fから浮上する。これにより、手術台1は床面F上に固定される。
【0087】
術者は手術用スペースP内において手術台1のテーブル4上に乗せられた患者Aに対して手術を再開する。
【0088】
なお、この実施の形態2において実施の形態1に示す部分と同じ部分には同一符号を用いて示すこととし、重複した説明を省略する。
【0089】
本発明は以上のように構成されるが、上記実施の形態1,2に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内において種々変更可能である。たとえば、上記実施の形態1、2において診断機器はそれぞれハンバーガー形状、縦型ドーナツ形状であるが、それぞれ縦型ドーナツ形状、ハンバーガー形状に変更することも可能であり、あるいはそれらとはまったく異なる形状のものを用いることも可能である。また、停止手段も床面に設けられる突起に限らず、手術台の基台側に設けられる突起としてもよく、この突起を床面に向かって出没させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1に係る手術台位置決め装置の概略を示す斜視図である。
【図2】手術台位置決め装置の要部を示す部分切欠平面図である。
【図3】手術台位置決め装置の要部を示す部分切欠正面図である。
【図4】図3中、IV部の部分拡大図である。
【図5】図2中、V部の部分拡大図である。
【図6】図3中、VI部の部分拡大図である。
【図7】(A)(B)は手術室内における手術用スペースと検査用スペースをそれぞれ異なるレイアウトで示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る手術台位置決め装置の概略を示す斜視図である。
【図9】(A)(B)は手術室内における手術用スペースと検査用スペースのレイアウトを示す平面図であり、(A)は手術台を手術用スペース側へと移動させたとき、(B)は手術台を検査用スペース側へと移動させたときをそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0091】
F…手術室の床面
G…手術室
1…手術台
2…基台
4…テーブル
5…キャスタ
6…伸縮ロッド
7…突起
8…MRI装置
8a…MRI装置の検査部
9…支軸
10…旋回アーム
20…雌部材
20a…溝
21…雄部材
22…ガイド棒
27…CT装置
27a…CT装置の検査部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術室の床面上で所望方向に移動可能な手術台を上記床面上の定位置へと案内する案内手段を具備した手術台位置決め装置において、上記手術台が、上記床面上に置かれる基台と、この基台上で少なくとも一方向にスライド可能なテーブルとを有し、上記基台は、上記床面に接するキャスタと、上記基台を上記床面上で昇降させて上記キャスタを上記床面に接離させる伸縮ロッドとを有し、上記案内手段は、上記床面に垂直に固定される支軸と、この支軸に旋回可能に一端が連結され、他端が上記基台に連結される旋回アームとを有し、上記基台が上記旋回アームを介して上記支軸の回りを上記定位置へと旋回せしめられ、上記伸縮ロッドによって上記キャスタが上記床面から離れると、手術台が上記定位置に位置決めされるようにしたことを特徴とする手術台位置決め装置。
【請求項2】
請求項1に記載の手術台位置決め装置において、上記手術台を上記定位置に停止させる停止手段を具備したことを特徴とする手術台位置決め装置。
【請求項3】
請求項1に記載の手術台位置決め装置において、上記旋回アームの他端が上記基台に連結具を介して連結され、この連結具が、上記床面に対し垂直方向に伸びる溝を有した雌部材と、この雌部材の溝に係脱可能な雄部材とを有し、上記雌部材が上記旋回アームと上記基台のいずれか一方に固定され、上記雄部材が他方に固定されたことを特徴とする手術台位置決め装置。
【請求項4】
請求項3に記載の手術台位置決め装置において、ガイド棒が上記雄部材を垂直方向に相対的にスライド可能に貫通し、このガイド棒の下端が上記雌部材の下端に連結されたことを特徴とする手術台位置決め装置。
【請求項5】
請求項1に記載の手術台位置決め装置において、上記定位置に位置決めされた手術台のテーブルがその天地方向でスライド可能であり、このテーブルの天地方向に平行な中心線の延長線上に診断機器の検査部と上記支軸がそれぞれ配置されたことを特徴とする手術台位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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