手術器具セット
【課題】使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができ、圧潰した椎体に対して、容易かつ確実に、椎体圧迫骨折整復術を施すことができる手術器具セットを提供すること。
【解決手段】手術器具セットは、椎体圧迫骨折整復術に用いられるものであり、圧潰した椎体91を処置することにより、図12の状態にすることができる。手術器具セットは、圧潰した椎体91に形成された孔93を拡径するためのガイド棒(拡径器具)と、圧潰した椎体91の前方上部をほぼ正常位置に整復するためのバーチカルエレベーター(形状整復器具)および中央上部をほぼ正常位置に整復するためのホリゾンタルエレベーター(形状整復器具)と、整復が施された椎体91内に充填材7を充填するためのインサーター(充填器具)と、充填された充填材7の密度を高めるためのインパクター(押込器具)とを有している。
【解決手段】手術器具セットは、椎体圧迫骨折整復術に用いられるものであり、圧潰した椎体91を処置することにより、図12の状態にすることができる。手術器具セットは、圧潰した椎体91に形成された孔93を拡径するためのガイド棒(拡径器具)と、圧潰した椎体91の前方上部をほぼ正常位置に整復するためのバーチカルエレベーター(形状整復器具)および中央上部をほぼ正常位置に整復するためのホリゾンタルエレベーター(形状整復器具)と、整復が施された椎体91内に充填材7を充填するためのインサーター(充填器具)と、充填された充填材7の密度を高めるためのインパクター(押込器具)とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外傷や骨粗鬆症等により椎体が潰れる、いわゆる椎体圧迫骨折の治療法の一つとして、圧潰した椎体内に、経椎弓根的に(椎弓を介して)充填材を充填する治療法がある。
【0003】
この治療法では、まず、圧潰した椎体をほぼ元の形状に戻すこと、すなわち、椎体に整復操作を施した後、かかる操作により椎体内に形成された空洞に骨補填材のような充填材を充填することが行われる。
【0004】
従来、この整復操作には、プローベのような処置具が用いられている。
しかしながら、このプローベは、直線状をなす棒状の部材であり、圧潰した椎体の十分な整復を行うことができないという問題がある。
【0005】
また、プローベを用いて行う整復操作では、椎弓(特に、細い椎弓根)を破壊しないように行うのに、細心の注意を払わなければならず、多大な労力を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができ、圧潰した椎体に対して、容易かつ確実に、椎体圧迫骨折整復術を施すことができる手術器具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 椎体圧迫骨折整復術に用いられ、少なくとも圧潰した椎体に形成された孔を拡径するための拡径器具と、圧潰した椎体の上部を、ほぼ正常位置に整復するための形状整復器具と、整復が施された椎体内に、充填材を充填するための充填器具と、整復が施された椎体内に充填された充填材の密度を高めるための押込器具とを備える手術器具セットであって、
前記拡径器具は、前記孔に、その先端側を挿入し、前記孔の径を拡大する棒状体と、
前記棒状体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記形状整復器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に、前記本体に対して傾斜して設けられ、前記椎体の上部を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部と、
前記押圧部の傾斜方向を示すマーカーとを有し、
前記押圧部と前記本体とのなす角度は、一定で、かつ、5〜15°であり、
前記充填器具は、基端から先端まで貫通する内腔を有する筒体と、
前記筒体の内腔に挿通され、前記内腔に装填された前記充填材を排出可能な押出棒と、
前記押出棒の基端部に固定された把持部とを有し、
前記押込器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に設けられ、前記充填材を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記各器具の前記把持部が異なっており、前記各把持部によって、前記各器具が特定可能とされていることを特徴とする手術器具セット。
【0008】
これにより、圧潰した椎体に対して、椎体圧迫骨折整復術を容易かつ確実に行うことができる。
【0009】
すなわち、拡径器具により、少なくとも椎体に形成された孔を、容易かつ確実に拡径することができる。
【0010】
また、把持部を把持して拡径器具の操作を行うことができるので、孔の拡径操作の操作性が向上する。
【0011】
また、形状整復器具により、圧潰した椎体の上部を、容易かつ確実にほぼ正常位置に整復することができる。
【0012】
また、把持部を把持して形状整復器具の操作を行うことができるので、椎体の整復操作の操作性が向上する。
【0013】
また、形状整復器具は、そのマーカーにより、椎体内での押圧部が向いてる方向を、容易に確認することができる。
【0014】
また、形状整復器具は、押圧部と本体とのなす角度が、一定で、かつ、5〜15°であるので、椎体の整復操作を、より容易かつ確実に行うこと、または、より広い範囲に行うことができる。
【0015】
また、充填器具により、整復が施された椎体内に、容易かつ確実に充填材を充填することができる。
【0016】
また、把持部を把持して充填器具の操作を行うことができるので、椎体内への充填材の充填操作の操作性が向上する。
【0017】
また、押込器具により、椎体内に充填された充填材の密度を、容易かつ確実に高めることができる。
【0018】
また、把持部を把持して押込器具の操作を行うことができるので、その操作性が向上する。
【0019】
また、各把持部の違いにより、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
【0020】
(2) 前記形状整復器具の前記押圧部は、平板状をなしている上記(1)に記載の手術器具セット。
これにより、椎体の整復操作を、より確実に行うことができる。
【0021】
(3) 前記形状整復器具は、前記椎体の整復位置に応じて複数種類が用意される上記(1)または(2)に記載の手術器具セット。
これにより、圧潰した椎体を、より確実に整復することができる。
【0022】
(4) 前記押出棒は、前記筒体に挿通した状態で、その先端部が前記筒体の先端から突出する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の手術器具セット。
これにより、充填材を無駄なく筒体の内腔から排出することができる。
【0023】
(5) 前記筒体の基端部に、筒体用把持部が固定されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の手術器具セット。
【0024】
これにより、筒体用把持部を把持して充填器具の操作を行うことができるので、椎体内への充填材の充填操作の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧潰した椎体に対して、容易かつ確実に、椎体圧迫骨折整復術を施すことができる。また、操作性に優れ、使いやすいので、誤操作が防止されるとともに、手術の時間を短縮することができる。
【0026】
また、本発明によれば、椎体圧迫骨折整復術を行うのに際し、安全性が高く、低侵襲で行うことができ、患者の負担も軽減される。
【0027】
また、把持部を見るだけで、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の手術器具セットの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の手術器具セットの拡径器具の構成を示す斜視図であり、図2および図3は、それぞれ、本発明の手術器具セットの形状整復器具の構成を示す斜視図であり、図4は、本発明の手術器具セットの充填器具の構成を示す斜視図であり、図5は、本発明の手術器具セットの押込器具の構成を示す斜視図であり、図6〜図11は、それぞれ、本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図であり、図12は、椎体圧迫骨折整復術が施された椎骨を模式的に示す図である。なお、図6〜図11には、上側に椎骨を斜め下から見た図(椎体の一部を切り欠いて示す)を示し、下側に椎骨を平面視した図を示す。また、以下、図1〜図5中、左側を「先端」、右側を「基端」と言う。また、以下、図6〜図11の上側の図および図12中、上側を「上部(頭側)」、下側を「下部(脚側)」、左側を「前方(腹側)」、右側を「後方(背側)」とする。
【0030】
本実施形態の手術器具セットは、椎体圧迫骨折整復術に用いられるものであり、ガイド棒(拡径器具)(手術器具)1と、バーチカルエレベーター(形状整復器具)(手術器具)2と、ホリゾンタルエレベーター(形状整復器具)(手術器具)3と、インサーター(充填器具)(手術器具)4と、インパクター(押込器具)(手術器具)5とを有している。なお、バーチカルエレベーター2とホリゾンタルエレベーター3とは、いずれも、形状整復器具の一種であるが、椎体91の整復位置に応じて使い分けられるものである。以下、各手術器具(構成要素)について、順次、説明する。
【0031】
<ガイド棒>
図1および図7に示すガイド棒1は、圧潰した椎体91を有する椎骨9に形成された孔93の径を拡大するために使用される手術器具である。なお、この孔93は、通常、両側の椎弓92から椎体91内に到達するようにして、2つ形成される。
【0032】
このガイド棒1は、横断面がほぼ円形をなす棒状体11と、棒状体11の基端部に設けられた把持部12とを有している。
【0033】
ガイド棒1は、棒状体11の先端側を、孔93内に挿入するようにして使用する。これにより、孔93を拡径することができる。
【0034】
孔93の内径(拡径操作を行った後の内径)は、個体差(個人差)もあるが、通常、4.5〜6.5mm程度とするのが好ましい。孔93の内径を前記範囲内とすることにより、後述する各手術器具による操作を行うのに際し、椎弓92(特に、椎弓根)が容易に破壊されるのを防止しつつ、これらの操作を効率よく行うことができる。
【0035】
また、このような孔93の拡径は、孔93の径を徐々に拡大するようにするのが好ましい。孔93の拡径を徐々に行うことにより、特に骨粗鬆症患者のように骨が脆弱になっている場合であっても、椎弓92の破壊を招くことなく、孔93を所望の内径とすることができる。
【0036】
かかる観点からは、棒状体11の外径の異なる複数種類のガイド棒1を用意するのが好ましい。
【0037】
この棒状体11の長さは、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。棒状体11の長さを前記範囲内とすることにより、ガイド棒1の取り扱いがより容易となる。
【0038】
棒状体11は、その先端が丸みを帯びた形状をなしている。このように、棒状体11の先端を、丸みを帯びるように形成することにより、孔93の拡径操作を行うのに際し、生体組織を不本意に傷つけてしまうのを好適に防止することができる。
【0039】
また、棒状体11には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り111が形成されている。これにより、棒状体11の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での棒状体11の先端位置を容易に確認することができる。
【0040】
このような棒状体11の構成材料としては、それぞれ、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金等の各種金属材料、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリフェリレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート等の各種樹脂材料、アルミナ、ハイドロキシアパタイト等の各種セラミックス材料等を挙げることができるが、これらの中でも、金属材料が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。これらをステンレス鋼で構成した場合、高強度で衝撃に強く、また耐熱性を有するため、器具を滅菌する際の熱に十分に耐えることができる。
【0041】
棒状体11の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部12が固定(固着)されている。この把持部12を把持してガイド棒1の操作を行う。
【0042】
この把持部12には、その長手方向に沿って、凹部121、121が形成されている。2つの凹部121は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部12の軸を介して対向して配置されている。このような凹部121、121を形成することにより、把持部12をより確実に把持することができる。
【0043】
<バーチカルエレベーター>
図2および図8に示すバーチカルエレベーター2は、椎体91の上部、特に、前方上部をぼぼ正常位置に整復するために使用される手術器具である。
【0044】
このバーチカルエレベーター2は、棒状の本体21と、本体21の先端部に設けられた押圧部22と、本体21の基端部に設けられた把持部23とを有している。
【0045】
本体21は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
【0046】
また、本体21には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り211が形成されている。これにより、バーチカルエレベーター2の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での後述する押圧部22の先端位置を容易に確認することができる。
【0047】
本体21の先端部には、平板状をなす押圧部22が本体21と一体的に形成されている。
【0048】
この押圧部22は、椎体91の上部を上方に向かって押圧する部位であり、本体21に対して傾斜して設けられている。
【0049】
このような構成のバーチカルエレベーター2は、その先端部を椎体91内に挿入した状態(図8に示す状態)で、例えば、本体21の基端側を押し下げるようにし、押圧部22の先端面221を椎体91の上部内面に当接させるとともに、押圧部22で椎体91の前方上部を押圧するようにして使用することができる。これにより、椎体91の前方上部を上方に持ち上げることができる。
【0050】
すなわち、バーチカルエレベーター2では、押圧部22の先端面221が椎体91の上部内面に当接する当接面とされている。
【0051】
押圧部22と本体21とのなす角度(図2中角度θ1)は、特に限定されないが、通常、5〜30°程度であるのが好ましく、5〜15°程度であるのがより好ましい。角度θ1を前記範囲内とすることにより、椎体91の整復操作を、椎弓根を破損することなく、より容易かつ確実に行うことができる。
【0052】
また、先端面221には、凹凸が形成されている。これにより、先端面221の椎体91の上部内面に対する滑りを防止または抑制することができるので、バーチカルエレベーター2により椎体91の整復操作を行うのに際し、この操作をより確実に行うことができる。
【0053】
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、先端面221の椎体91の上部内面に対する滑りを、より確実に防止または抑制することができる。
【0054】
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
【0055】
また、先端面221は、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
押圧部22および本体21の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0056】
また、押圧部22と本体21との全体での長さ(図2中長さL1)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、バーチカルエレベーター2の取り扱いがより容易となる。
【0057】
なお、押圧部22は、本体21と一体的に形成されているものに限らず、例えば、本体21に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
【0058】
また、本体21の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部23が固定(固着)されている。この把持部23を把持してバーチカルエレベーター2の操作を行う。
【0059】
この把持部23には、その長手方向に沿って、凹部231、231が形成されている。2つの凹部231は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部23の軸を介して対向して配置されている。このような凹部231、231を形成することにより、把持部23をより確実に把持することができる。
【0060】
また、バーチカルエレベーター2は、押圧部22の傾斜方向、すなわち、押圧部22が向いている方向を示すマーカー232を有している。このマーカー232は、例えば着色等することにより、把持部23の外周の先端面221に対応する位置(図2中上側)に形成されている。これにより、バーチカルエレベーター2の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内で押圧部22、特に、先端面221の向いている方向を容易に確認することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、このマーカー232は、把持部23に形成されていたが、これに代わり、例えば、本体21の基端部等の把持部33以外の部分に形成されていていてもよい。
【0062】
<ホリゾンタルエレベーター>
図3および図9に示すホリゾンタルエレベーター3は、椎体91の上部、特に、中央上部をほぼ正常位置に整復するために使用される手術器具である。
【0063】
このホリゾンタルエレベーター3は、棒状の本体31と、本体31の先端部に設けられた押圧部32と、本体31の基端部に設けられた把持部33とを有している。
【0064】
本体31は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
【0065】
また、本体31は、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り311が形成されている。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での後述する押圧部32の先端位置を容易に確認することができる。
【0066】
本体31の先端部には、平板状をなす押圧部32が本体31と一体的に形成されている。
【0067】
この押圧部32は、椎体91の上部を上方に向かって押圧する部位である。
このような構成のホリゾンタルエレベーター3は、その先端部を椎体91内に挿入した状態(図9に示す状態)で、例えば、本体31の基端側を下方に押し下げるようにし、押圧部32の一方の側面321を椎体91の上部内面に当接させるとともに、押圧部32で椎体91の中央上部を押圧するようにして使用することができる。これにより、椎体91の中央上部を、上方に持ち上げるようにして使用することができる。
【0068】
本実施形態では、押圧部32の対向する一対の側面321、321(図3中、紙面手前側の面および紙面奥側の面)が、それぞれ前記当接面とされている。なお、ホリゾンタルエレベーター3では、押圧部32の周面の少なくとも一部を、椎体91の上部内面に当接する当接面とするようにしてもよい。
【0069】
また、これらの側面321、321には、それぞれ、凹凸が形成されている。これにより、各側面321の椎体91の上部内面に対する滑りを防止または抑制することができるので、ホリゾンタルエレベーター3により椎体91の整復操作を行うのに際し、この操作をより確実に行うことができる。
【0070】
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、各側面321の椎体91の上部内面に対する滑りを、より確実に防止または抑制することができる。
【0071】
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
【0072】
また、各側面321は、それぞれ、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
【0073】
このような押圧部32は、本体31に対して傾斜して設けられている。これにより、押圧部32を、本体31の軸を中心として回転させて用いることにより、広い範囲で椎体91の整復操作を行うことができる(図9の下側図参照)。
【0074】
押圧部32と本体31とのなす角度(図3中角度θ2)は、一定で、かつ、5〜15°程度である。角度θ2を前記範囲内とすることにより、椎体91の整復操作を、より広い範囲で行うことができる。
【0075】
押圧部32および本体31の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0076】
また、押圧部32と本体31との全体での長さ(図3中長さL2)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の取り扱いがより容易となる。
【0077】
なお、押圧部32は、本体31と一体的に形成されているものに限らず、例えば、本体31に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
【0078】
また、本体31の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部33が固定(固着)されている。この把持部33を把持してホリゾンタルエレベーター3の操作を行う。
【0079】
この把持部33には、その長手方向に沿って、凹部331、331が形成されている。2つの凹部331は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部33の軸を介して対向して配置されている。このような凹部331、331を形成することにより、把持部33をより確実に把持することができる。
【0080】
また、ホリゾンタルエレベーター3は、押圧部32の傾斜方向、すなわち、押圧部32が向いている方向を示すマーカー332を有している。このマーカー332は、例えば着色等することにより、把持部33の外周(図3中下側)の側面321、321とほぼ90°をなす位置に形成されている。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内で押圧部32の向いている方向を容易に確認することができる。また、この場合、側面321、321は、マーカー332とほぼ90°をなす方向を向いていることが判る。
【0081】
なお、本実施形態では、このマーカー332は、把持部33に形成されていたが、これに代わり、例えば、本体31の基端部等の把持部33以外の部分に形成されていてもよい。
【0082】
<インサーター>
図4および図10に示すインサーター(充填器具)4は、形状の整復が施された椎体91内(整復により椎体91内に形成された空洞911)に、充填材7を充填するために用いられる手術器具である。
【0083】
このインサーター4は、筒体41と、筒体41の内腔に挿通される押出棒43と、筒体41の基端部に設けられた筒体用把持部42と、押出棒43の基端部に設けられた押出棒用把持部(把持部)44とを有している。
【0084】
筒体41は、その両端が開放する円管状の部材で構成されている。すなわち、筒体41は、その基端から先端まで貫通する内腔を有している。この内腔には、後述する充填材7が装填される。
【0085】
この筒体41は、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径とほぼ等しく設定されている。これにより、充填材7を椎体91内に充填する操作の際に、充填材7が筒体41の外周面と孔93の内周面との隙間から、椎骨9外に漏れ出すのを好適に防止することができる。
【0086】
また、筒体41の長さは、特に限定されないが、9〜17cm程度であるのが好ましく、11〜15cm程度であるのがより好ましい。筒体41の長さを前記範囲内とすることにより、インサーター4の取り扱いがより容易となる。
【0087】
また、筒体41には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り411が形成されている。これにより、インサーター4の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での筒体41(または後述する押出棒43)の先端位置を容易に確認することができる。
【0088】
筒体41および押出棒43の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。なお、筒体41および押出棒43は、それぞれ、特にステンレス鋼で構成するのが好ましい。これらをステンレス鋼で構成した場合、前述したような耐衝撃性(耐破損性)および耐熱性に加えて、筒体41の内周面と押出棒43の外周面との摺動性に優れる(低摩擦力)ため、押出棒43の移動操作をより容易に行うことができる。
【0089】
筒体41の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、筒体用把持部42が固定(固着)されている。この筒体用把持部42を把持してインサーター4の操作を行う。
【0090】
筒体用把持部42は、ほぼ円筒状の部材で構成されている。この筒体用把持部42の長手方向の中央部には、周方向に沿って凹部421が形成されている。また、筒体用把持部42の基端には、リング状のフランジ422が形成されている。このような凹部421およびフランジ422は、それぞれ、滑り止め手段として機能するものであり、これらを筒体用把持部42に設けることにより、筒体用把持部42をより確実に把持することができる。これにより、インサーター4の操作をより確実に行うことができる。
【0091】
また、筒体用把持部42は、その内径が基端に向かって漸増している。これにより、例えば、筒体41の内腔への充填材7を装填する操作や、筒体41の内腔への押出棒43を挿入する操作等を、より円滑かつ確実に行うことができる。
【0092】
筒体41の内腔には、この内腔に装填された充填材7を排出可能な押出棒43が挿通される。押出棒43は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が筒体41の内径とほぼ等しく設定されている。具体的には、押出棒43の外径、すなわち、筒体41の内径は、特に限定されないが、3〜6mm程度であるのが好ましい。
【0093】
この押出棒43は、その先端が丸みを帯びた形状をなしている。このように、押出棒43の先端を、丸みを帯びるように形成することにより、充填材7の充填操作を行うのに際し、生体組織を不本意に傷つけてしまうのを好適に防止することができる。
【0094】
この押出棒43は、筒体41に挿通した状態、すなわち、後述する押出棒用把持部44の先端が、筒体用把持部42の基端に当接した状態で、その先端部が筒体41の先端から突出するよう構成されている。換言すれば、押出棒43の長さは、前記状態で、その先端部が筒体41の先端から突出する程度とされている。このような構成とすることにより、充填材7を無駄なく筒体41の内腔から排出することができる。
【0095】
なお、押出棒43は、中実のものに限らず、中空のものでもよい。中空の棒状体としては、その両端のうちの少なくとも一端が閉塞しているもの、両端が開放しているもののいずれでもよい。後者の場合、例えばシース(管体)、カテーテルチューブ等が挙げられる。
【0096】
また、押出棒43の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、押出棒用把持部44が固定(固着)されている。この押出棒用把持部44を把持してインサーター4の操作を行う。
【0097】
この押出棒用把持部44には、その長手方向に沿って、凹部441、441が形成されている。2つの凹部441は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに押出棒用把持部44の軸を介して対向して配置されている。このような凹部441、441を形成することにより、押出棒用把持部44をより確実に把持することができる。
【0098】
本発明における充填材7としては、骨補填材(生体材料)として用いられる材料の粉体が好ましい。なお、ここでいう粉体とは、粉粒体、顆粒、微小な薄片または針状体等を含む広い概念であり、その形状や形態、製造方法等は特に限定されない。
【0099】
このような粉体としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等の各種セラミックスによる粉体が挙げられるが、それらの中でも、リン酸カルシウム系化合物による粉体が好ましい。リン酸カルシウム系化合物は、生体内で長期間安定に存在することができ、生体材料として特に優れている。
【0100】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、TCP(Ca3(PO4)2)、Ca2P2O7、Ca(PO3)2、Ca10(PO4)6F2、Ca10(PO4)6Cl2、DCPD(CaHPO4・2H2O)、Ca4O(PO4)2等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0101】
また、粉体の平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.1〜6.0mm程度であるのが好ましく、1.0〜5.0mm程度であるのがより好ましい。
【0102】
<インパクター>
図5および図11に示すインパクター(押込器具)5は、整復が施された椎体91内に充填された充填材7の密度を高めるために使用される手術器具である。
【0103】
このインパクター5は、棒状の本体51と、本体51の先端部に設けられた押圧部52と、本体51の基端部に設けられた把持部53とを有している。
【0104】
本体51は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
【0105】
また、本体51には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り511が形成されている。これにより、インパクター5の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、後述する押圧部52の先端位置を容易に確認することができる。
【0106】
本体51の先端部には、ほぼ円柱状をなす押圧部52が本体51と一体的に形成されている。
【0107】
押圧部52は、充填材7を押圧する部分である。このような構成のインパクター5は、図11に示すように、前方(図11の上側中左方向)に移動操作するようにし、先端面521で充填材7を押圧するようにして使用することができる。これにより、充填材7を押し固めるようにして、その密度(充填密度)を高めることができる。
【0108】
また、この先端面521には、凹凸が形成されている。これにより、先端面521は、充填材7(特に、粉状の充填材7)を保持することができるので、インパクター5により充填材7の密度を高める(緻密化)操作を行うのに際し、この緻密化操作をより確実に行うことができる。
【0109】
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、先端面521は、充填材7を、より確実に保持することができる。
【0110】
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
【0111】
また、先端面521は、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
また、押圧部52は、その外径が先端に向かって漸増している。これにより、押圧部52と充填材7との接触面積を増大させることができ、充填材7の緻密化操作をより効率よく行うことができる。
【0112】
なお、この押圧部52の先端外径は、椎骨9に形成される孔93の内径とほぼ等しく設定されている。
【0113】
押圧部52および本体51の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0114】
また、押圧部52と本体51との全体での長さ(図5中長さL3)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、インパクター5の取り扱いがより容易となる。
【0115】
なお、押圧部52は、本体51と一体的に形成されているものに限らず、本体31に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
【0116】
また、本体51の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部53が固定(固着)されている。この把持部53を把持してインパクター5の操作を行う。
【0117】
この把持部53には、その長手方向に沿って、凹部531、531が形成されている。2つの凹部531は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部53の軸を介して対向して配置されている。このような凹部531、531を形成することにより、把持部53をより確実に把持することができる。
【0118】
以上、5つの手術器具1〜5について説明したが、これらの手術器具1〜5では、各把持部12、23、33、44、53が、それぞれ異なっているのが好ましい。これにより、各把持部の違いにより、異なる手術器具であることを認識することができる。
【0119】
この場合、各把持部は、例えば、形状、寸法、材質、手触り、色彩等を変える方法、文字(数字)、記号、図形のようなマーカーを付す方法等のうちの少なくとも1つの方法により、異なるものとすることができる。
【0120】
図示の構成では、例えば、把持部12のA1で示す部分、把持部23のA2で示す部分、把持部33のA3で示す部分、把持部(押出棒用把持部)44のA4で示す部分、把持部53のA5で示す部分を、それぞれ、異なる色彩としたり、各部分A1〜A5に、それぞれ、異なる数字を付したりすることができる。
【0121】
これにより、各把持部12、23、33、44、53を見るだけで、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
【0122】
また、各部分A1〜A5に、それぞれ、異なる数字を付す場合には、椎体圧迫骨折術を行う際に使用する順序にしたがって、数字を付すようにしてもよい。この場合、数字を見ながら、使用する手術器具を順次選択していくことができ、便利である。
【0123】
また、各手術器具1〜5において、各把持部12、23、33、44、53と各先端側の部分とは、着脱自在なものであってもよい。この場合、各手術器具1〜5は、互いに、それらの把持部が共通であり、先端側を取り替えて使用するような構成のものとすることができる。
【0124】
次に、手術器具セットの使用方法の一例について説明する。
[1] まず、X線透視下に、図6に示すように、椎体圧迫骨折整復術を施す椎骨9の椎弓92、92から、椎体91に向けてプローベ(処置具)6を穿刺する。これにより、椎骨9の左右両側には、各椎弓92から椎体91内にかけて、細径の孔93、93が形成される。
【0125】
[2] 次に、ガイド棒1の把持部12を把持して、図7に示すように、その先端側を、一方の孔93に挿入する。これにより、一方の孔93が拡径される。
【0126】
なお、ガイド棒1は、その棒状体11の外径が異なるもの(例えば、φ:4mm、5mm、6mmの3種類)が用意されている。そして、これらを細径のものから、順次、使用することにより、孔93を徐々に拡径することができる。
このような孔93の拡径操作を、左右の孔93に対して行う。
【0127】
[3] 次に、バーチカルエレベーター2の把持部23を把持して、図8に示すように、その先端側(押圧部22および本体21の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入し、押圧部22を前方部分に位置させる。また、このとき、押圧部22の先端面221を上方に向けた状態としておく。
【0128】
そして、本体21の基端側を押し下げる。これにより、押圧部22は、その先端面221が椎体91の前方上部内面に当接するとともに、椎体91の前方上部を押圧し、上方に持ち上げることができる。
【0129】
次いで、バーチカルエレベーター2の先端側を、椎骨9から引き抜き、他方の孔93を介して、再度、椎体91内に挿入し、前記と同様の操作を行う。
【0130】
[4] 次に、ホリゾンタルエレベーター3の把持部33を把持して、図9に示すように、その先端側(押圧部32および本体31の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入し、押圧部32を中央部分に位置させる。また、このとき、押圧部32の一方の側面321を上方に向けた状態としておく。
【0131】
そして、本体31の基端側を押し下げる。これにより、押圧部32は、その側面321が椎体91の前方上部内面に当接するとともに、椎体91の中央上部を押圧し、上方に持ち上げることができる。
【0132】
また、押圧部32を、本体31の軸を中心に所定角度回転させ、前記と同様の操作を行う。これにより、椎体91の中央上部のより広い範囲に対して、整復操作を施すことができる。
【0133】
次いで、ホリゾンタルエレベーター3の先端側を、椎骨9から引き抜き、他方の孔93を介して、再度、椎体91内に挿入し、前記と同様の操作を行う。
【0134】
このような椎体91の整復操作[3]および[4]を、それぞれ、複数回繰り返して行うようにして、椎体91をほぼ元の形状に整復するようにする。
【0135】
なお、このとき、椎体91を整復することにより、その内部には、空洞911が形成される。
【0136】
[5] 次に、筒体41の筒体用把持部42を片手で把持して、図10に示すように、その先端側を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入する。そして、筒体41の先端を、空洞911の所望の箇所に位置させる。
【0137】
この状態を維持しつつ、筒体用把持部42の基端から、充填材7を筒体41の内腔に装填する。
【0138】
次いで、他方の手で押出棒43の押出棒用把持部44を把持して、押出棒43を筒体用把持部42の基端より、筒体41の内腔に挿入し、先端方向へ移動する。これにより、筒体41の内腔にある充填材7は、押出棒43の先端部に押圧され、筒体41内を先端方向へ移送される。
【0139】
さらに、押出棒43を先端方向へ進めると、その先端部が筒体41の先端から突出し、充填材7が空洞911に供給され、充填される。
【0140】
このような充填材7の充填操作を行うのに際しては、押出棒用把持部44の筒体用把持部42への当接により、押出棒43の筒体41の先端からの最大突出長さが規制されるため、椎体91の不要な箇所を押圧することが防止され、安全性が高い。
【0141】
[6] 次に、インパクター5の把持部53を把持して、図11に示すように、その先端側(押圧部52および本体51の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入する。
【0142】
そして、前記操作[5]で空洞911に充填された充填材7を、押圧部52で押圧する。これにより、充填材7の密度(充填密度)を高めることができる。
【0143】
このような充填材7の充填操作[5]、および、充填材7の緻密化操作[6]を、それぞれ、左右の孔93を介して、複数回繰り返して行うようにして、椎体91の空洞911に充填材7を充填するとともに、その密度を高める。
【0144】
また、このような操作[5]および[6]を行うことにより、椎体91の更なる整復も期待できる。
【0145】
[7] 次に、左右の孔93を、それぞれ、図12に示すように、例えばハイドロキシアパタイト等の生体材料で構成される栓体8で封止する。これにより、各孔93を介して、充填材7が椎体91内(空洞911)から流出するのを防止(阻止)することができる。このため、椎体91が、再度、圧潰するのをより確実に防止することができる。
【0146】
なお、各孔93は、栓体8に代わり、例えば骨セメント等により封止するようにしてもよい。
【0147】
以上のようにして、椎体91に対する椎体圧迫骨折整復術が終了したら、術部(切開部)に対し縫合、結紮等を行い、手術を終了する。
【0148】
なお、各手術器具には、目盛りが設けられているので、前記操作[2]〜[6]を行うのに際しては、それぞれ、この目盛りを見ながら、それらの操作を行うことにより、各手術器具の先端を、必要以上に椎体91内へ挿入してしまい、椎体91の不要な箇所を押圧してしまうことを防止することができ、安全性が高い。
【0149】
以上、本発明の手術器具セットを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0150】
また、本発明の手術器具セットの拡径器具、形状整復器具、充填器具、押込器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明の手術器具セットには、任意の手術器具が追加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の手術器具セットの拡径器具の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の手術器具セットの形状整復器具の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の手術器具セットの形状整復器具の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の手術器具セットの充填器具の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の手術器具セットの押込器具の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図7】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図8】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図9】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図10】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図11】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図12】椎体圧迫骨折整復術が施された椎骨を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0152】
1 ガイド棒
11 棒状体
111 目盛り
12 把持部
121 凹部
2 バーチカルエレベーター
21 本体
211 目盛り
22 押圧部
221 先端面
23 把持部
231 凹部
232 マーカー
3 ホリゾンタルエレベーター
31 本体
311 目盛り
32 押圧部
321 側面
33 把持部
331 凹部
332 マーカー
4 インサーター
41 筒体
411 目盛り
42 筒体用把持部
421 凹部
422 フランジ
43 押出棒
44 押出棒用把持部
441 凹部
5 インパクター
51 本体
511 目盛り
52 押圧部
521 先端面
53 把持部
531 凹部
6 プローべ
7 充填材
8 栓体
9 椎骨
91 椎体
911 空洞
92 椎弓
93 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外傷や骨粗鬆症等により椎体が潰れる、いわゆる椎体圧迫骨折の治療法の一つとして、圧潰した椎体内に、経椎弓根的に(椎弓を介して)充填材を充填する治療法がある。
【0003】
この治療法では、まず、圧潰した椎体をほぼ元の形状に戻すこと、すなわち、椎体に整復操作を施した後、かかる操作により椎体内に形成された空洞に骨補填材のような充填材を充填することが行われる。
【0004】
従来、この整復操作には、プローベのような処置具が用いられている。
しかしながら、このプローベは、直線状をなす棒状の部材であり、圧潰した椎体の十分な整復を行うことができないという問題がある。
【0005】
また、プローベを用いて行う整復操作では、椎弓(特に、細い椎弓根)を破壊しないように行うのに、細心の注意を払わなければならず、多大な労力を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができ、圧潰した椎体に対して、容易かつ確実に、椎体圧迫骨折整復術を施すことができる手術器具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 椎体圧迫骨折整復術に用いられ、少なくとも圧潰した椎体に形成された孔を拡径するための拡径器具と、圧潰した椎体の上部を、ほぼ正常位置に整復するための形状整復器具と、整復が施された椎体内に、充填材を充填するための充填器具と、整復が施された椎体内に充填された充填材の密度を高めるための押込器具とを備える手術器具セットであって、
前記拡径器具は、前記孔に、その先端側を挿入し、前記孔の径を拡大する棒状体と、
前記棒状体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記形状整復器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に、前記本体に対して傾斜して設けられ、前記椎体の上部を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部と、
前記押圧部の傾斜方向を示すマーカーとを有し、
前記押圧部と前記本体とのなす角度は、一定で、かつ、5〜15°であり、
前記充填器具は、基端から先端まで貫通する内腔を有する筒体と、
前記筒体の内腔に挿通され、前記内腔に装填された前記充填材を排出可能な押出棒と、
前記押出棒の基端部に固定された把持部とを有し、
前記押込器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に設けられ、前記充填材を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記各器具の前記把持部が異なっており、前記各把持部によって、前記各器具が特定可能とされていることを特徴とする手術器具セット。
【0008】
これにより、圧潰した椎体に対して、椎体圧迫骨折整復術を容易かつ確実に行うことができる。
【0009】
すなわち、拡径器具により、少なくとも椎体に形成された孔を、容易かつ確実に拡径することができる。
【0010】
また、把持部を把持して拡径器具の操作を行うことができるので、孔の拡径操作の操作性が向上する。
【0011】
また、形状整復器具により、圧潰した椎体の上部を、容易かつ確実にほぼ正常位置に整復することができる。
【0012】
また、把持部を把持して形状整復器具の操作を行うことができるので、椎体の整復操作の操作性が向上する。
【0013】
また、形状整復器具は、そのマーカーにより、椎体内での押圧部が向いてる方向を、容易に確認することができる。
【0014】
また、形状整復器具は、押圧部と本体とのなす角度が、一定で、かつ、5〜15°であるので、椎体の整復操作を、より容易かつ確実に行うこと、または、より広い範囲に行うことができる。
【0015】
また、充填器具により、整復が施された椎体内に、容易かつ確実に充填材を充填することができる。
【0016】
また、把持部を把持して充填器具の操作を行うことができるので、椎体内への充填材の充填操作の操作性が向上する。
【0017】
また、押込器具により、椎体内に充填された充填材の密度を、容易かつ確実に高めることができる。
【0018】
また、把持部を把持して押込器具の操作を行うことができるので、その操作性が向上する。
【0019】
また、各把持部の違いにより、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
【0020】
(2) 前記形状整復器具の前記押圧部は、平板状をなしている上記(1)に記載の手術器具セット。
これにより、椎体の整復操作を、より確実に行うことができる。
【0021】
(3) 前記形状整復器具は、前記椎体の整復位置に応じて複数種類が用意される上記(1)または(2)に記載の手術器具セット。
これにより、圧潰した椎体を、より確実に整復することができる。
【0022】
(4) 前記押出棒は、前記筒体に挿通した状態で、その先端部が前記筒体の先端から突出する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の手術器具セット。
これにより、充填材を無駄なく筒体の内腔から排出することができる。
【0023】
(5) 前記筒体の基端部に、筒体用把持部が固定されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の手術器具セット。
【0024】
これにより、筒体用把持部を把持して充填器具の操作を行うことができるので、椎体内への充填材の充填操作の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧潰した椎体に対して、容易かつ確実に、椎体圧迫骨折整復術を施すことができる。また、操作性に優れ、使いやすいので、誤操作が防止されるとともに、手術の時間を短縮することができる。
【0026】
また、本発明によれば、椎体圧迫骨折整復術を行うのに際し、安全性が高く、低侵襲で行うことができ、患者の負担も軽減される。
【0027】
また、把持部を見るだけで、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の手術器具セットの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の手術器具セットの拡径器具の構成を示す斜視図であり、図2および図3は、それぞれ、本発明の手術器具セットの形状整復器具の構成を示す斜視図であり、図4は、本発明の手術器具セットの充填器具の構成を示す斜視図であり、図5は、本発明の手術器具セットの押込器具の構成を示す斜視図であり、図6〜図11は、それぞれ、本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図であり、図12は、椎体圧迫骨折整復術が施された椎骨を模式的に示す図である。なお、図6〜図11には、上側に椎骨を斜め下から見た図(椎体の一部を切り欠いて示す)を示し、下側に椎骨を平面視した図を示す。また、以下、図1〜図5中、左側を「先端」、右側を「基端」と言う。また、以下、図6〜図11の上側の図および図12中、上側を「上部(頭側)」、下側を「下部(脚側)」、左側を「前方(腹側)」、右側を「後方(背側)」とする。
【0030】
本実施形態の手術器具セットは、椎体圧迫骨折整復術に用いられるものであり、ガイド棒(拡径器具)(手術器具)1と、バーチカルエレベーター(形状整復器具)(手術器具)2と、ホリゾンタルエレベーター(形状整復器具)(手術器具)3と、インサーター(充填器具)(手術器具)4と、インパクター(押込器具)(手術器具)5とを有している。なお、バーチカルエレベーター2とホリゾンタルエレベーター3とは、いずれも、形状整復器具の一種であるが、椎体91の整復位置に応じて使い分けられるものである。以下、各手術器具(構成要素)について、順次、説明する。
【0031】
<ガイド棒>
図1および図7に示すガイド棒1は、圧潰した椎体91を有する椎骨9に形成された孔93の径を拡大するために使用される手術器具である。なお、この孔93は、通常、両側の椎弓92から椎体91内に到達するようにして、2つ形成される。
【0032】
このガイド棒1は、横断面がほぼ円形をなす棒状体11と、棒状体11の基端部に設けられた把持部12とを有している。
【0033】
ガイド棒1は、棒状体11の先端側を、孔93内に挿入するようにして使用する。これにより、孔93を拡径することができる。
【0034】
孔93の内径(拡径操作を行った後の内径)は、個体差(個人差)もあるが、通常、4.5〜6.5mm程度とするのが好ましい。孔93の内径を前記範囲内とすることにより、後述する各手術器具による操作を行うのに際し、椎弓92(特に、椎弓根)が容易に破壊されるのを防止しつつ、これらの操作を効率よく行うことができる。
【0035】
また、このような孔93の拡径は、孔93の径を徐々に拡大するようにするのが好ましい。孔93の拡径を徐々に行うことにより、特に骨粗鬆症患者のように骨が脆弱になっている場合であっても、椎弓92の破壊を招くことなく、孔93を所望の内径とすることができる。
【0036】
かかる観点からは、棒状体11の外径の異なる複数種類のガイド棒1を用意するのが好ましい。
【0037】
この棒状体11の長さは、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。棒状体11の長さを前記範囲内とすることにより、ガイド棒1の取り扱いがより容易となる。
【0038】
棒状体11は、その先端が丸みを帯びた形状をなしている。このように、棒状体11の先端を、丸みを帯びるように形成することにより、孔93の拡径操作を行うのに際し、生体組織を不本意に傷つけてしまうのを好適に防止することができる。
【0039】
また、棒状体11には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り111が形成されている。これにより、棒状体11の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での棒状体11の先端位置を容易に確認することができる。
【0040】
このような棒状体11の構成材料としては、それぞれ、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金等の各種金属材料、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリフェリレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート等の各種樹脂材料、アルミナ、ハイドロキシアパタイト等の各種セラミックス材料等を挙げることができるが、これらの中でも、金属材料が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。これらをステンレス鋼で構成した場合、高強度で衝撃に強く、また耐熱性を有するため、器具を滅菌する際の熱に十分に耐えることができる。
【0041】
棒状体11の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部12が固定(固着)されている。この把持部12を把持してガイド棒1の操作を行う。
【0042】
この把持部12には、その長手方向に沿って、凹部121、121が形成されている。2つの凹部121は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部12の軸を介して対向して配置されている。このような凹部121、121を形成することにより、把持部12をより確実に把持することができる。
【0043】
<バーチカルエレベーター>
図2および図8に示すバーチカルエレベーター2は、椎体91の上部、特に、前方上部をぼぼ正常位置に整復するために使用される手術器具である。
【0044】
このバーチカルエレベーター2は、棒状の本体21と、本体21の先端部に設けられた押圧部22と、本体21の基端部に設けられた把持部23とを有している。
【0045】
本体21は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
【0046】
また、本体21には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り211が形成されている。これにより、バーチカルエレベーター2の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での後述する押圧部22の先端位置を容易に確認することができる。
【0047】
本体21の先端部には、平板状をなす押圧部22が本体21と一体的に形成されている。
【0048】
この押圧部22は、椎体91の上部を上方に向かって押圧する部位であり、本体21に対して傾斜して設けられている。
【0049】
このような構成のバーチカルエレベーター2は、その先端部を椎体91内に挿入した状態(図8に示す状態)で、例えば、本体21の基端側を押し下げるようにし、押圧部22の先端面221を椎体91の上部内面に当接させるとともに、押圧部22で椎体91の前方上部を押圧するようにして使用することができる。これにより、椎体91の前方上部を上方に持ち上げることができる。
【0050】
すなわち、バーチカルエレベーター2では、押圧部22の先端面221が椎体91の上部内面に当接する当接面とされている。
【0051】
押圧部22と本体21とのなす角度(図2中角度θ1)は、特に限定されないが、通常、5〜30°程度であるのが好ましく、5〜15°程度であるのがより好ましい。角度θ1を前記範囲内とすることにより、椎体91の整復操作を、椎弓根を破損することなく、より容易かつ確実に行うことができる。
【0052】
また、先端面221には、凹凸が形成されている。これにより、先端面221の椎体91の上部内面に対する滑りを防止または抑制することができるので、バーチカルエレベーター2により椎体91の整復操作を行うのに際し、この操作をより確実に行うことができる。
【0053】
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、先端面221の椎体91の上部内面に対する滑りを、より確実に防止または抑制することができる。
【0054】
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
【0055】
また、先端面221は、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
押圧部22および本体21の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0056】
また、押圧部22と本体21との全体での長さ(図2中長さL1)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、バーチカルエレベーター2の取り扱いがより容易となる。
【0057】
なお、押圧部22は、本体21と一体的に形成されているものに限らず、例えば、本体21に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
【0058】
また、本体21の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部23が固定(固着)されている。この把持部23を把持してバーチカルエレベーター2の操作を行う。
【0059】
この把持部23には、その長手方向に沿って、凹部231、231が形成されている。2つの凹部231は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部23の軸を介して対向して配置されている。このような凹部231、231を形成することにより、把持部23をより確実に把持することができる。
【0060】
また、バーチカルエレベーター2は、押圧部22の傾斜方向、すなわち、押圧部22が向いている方向を示すマーカー232を有している。このマーカー232は、例えば着色等することにより、把持部23の外周の先端面221に対応する位置(図2中上側)に形成されている。これにより、バーチカルエレベーター2の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内で押圧部22、特に、先端面221の向いている方向を容易に確認することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、このマーカー232は、把持部23に形成されていたが、これに代わり、例えば、本体21の基端部等の把持部33以外の部分に形成されていていてもよい。
【0062】
<ホリゾンタルエレベーター>
図3および図9に示すホリゾンタルエレベーター3は、椎体91の上部、特に、中央上部をほぼ正常位置に整復するために使用される手術器具である。
【0063】
このホリゾンタルエレベーター3は、棒状の本体31と、本体31の先端部に設けられた押圧部32と、本体31の基端部に設けられた把持部33とを有している。
【0064】
本体31は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
【0065】
また、本体31は、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り311が形成されている。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での後述する押圧部32の先端位置を容易に確認することができる。
【0066】
本体31の先端部には、平板状をなす押圧部32が本体31と一体的に形成されている。
【0067】
この押圧部32は、椎体91の上部を上方に向かって押圧する部位である。
このような構成のホリゾンタルエレベーター3は、その先端部を椎体91内に挿入した状態(図9に示す状態)で、例えば、本体31の基端側を下方に押し下げるようにし、押圧部32の一方の側面321を椎体91の上部内面に当接させるとともに、押圧部32で椎体91の中央上部を押圧するようにして使用することができる。これにより、椎体91の中央上部を、上方に持ち上げるようにして使用することができる。
【0068】
本実施形態では、押圧部32の対向する一対の側面321、321(図3中、紙面手前側の面および紙面奥側の面)が、それぞれ前記当接面とされている。なお、ホリゾンタルエレベーター3では、押圧部32の周面の少なくとも一部を、椎体91の上部内面に当接する当接面とするようにしてもよい。
【0069】
また、これらの側面321、321には、それぞれ、凹凸が形成されている。これにより、各側面321の椎体91の上部内面に対する滑りを防止または抑制することができるので、ホリゾンタルエレベーター3により椎体91の整復操作を行うのに際し、この操作をより確実に行うことができる。
【0070】
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、各側面321の椎体91の上部内面に対する滑りを、より確実に防止または抑制することができる。
【0071】
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
【0072】
また、各側面321は、それぞれ、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
【0073】
このような押圧部32は、本体31に対して傾斜して設けられている。これにより、押圧部32を、本体31の軸を中心として回転させて用いることにより、広い範囲で椎体91の整復操作を行うことができる(図9の下側図参照)。
【0074】
押圧部32と本体31とのなす角度(図3中角度θ2)は、一定で、かつ、5〜15°程度である。角度θ2を前記範囲内とすることにより、椎体91の整復操作を、より広い範囲で行うことができる。
【0075】
押圧部32および本体31の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0076】
また、押圧部32と本体31との全体での長さ(図3中長さL2)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の取り扱いがより容易となる。
【0077】
なお、押圧部32は、本体31と一体的に形成されているものに限らず、例えば、本体31に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
【0078】
また、本体31の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部33が固定(固着)されている。この把持部33を把持してホリゾンタルエレベーター3の操作を行う。
【0079】
この把持部33には、その長手方向に沿って、凹部331、331が形成されている。2つの凹部331は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部33の軸を介して対向して配置されている。このような凹部331、331を形成することにより、把持部33をより確実に把持することができる。
【0080】
また、ホリゾンタルエレベーター3は、押圧部32の傾斜方向、すなわち、押圧部32が向いている方向を示すマーカー332を有している。このマーカー332は、例えば着色等することにより、把持部33の外周(図3中下側)の側面321、321とほぼ90°をなす位置に形成されている。これにより、ホリゾンタルエレベーター3の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内で押圧部32の向いている方向を容易に確認することができる。また、この場合、側面321、321は、マーカー332とほぼ90°をなす方向を向いていることが判る。
【0081】
なお、本実施形態では、このマーカー332は、把持部33に形成されていたが、これに代わり、例えば、本体31の基端部等の把持部33以外の部分に形成されていてもよい。
【0082】
<インサーター>
図4および図10に示すインサーター(充填器具)4は、形状の整復が施された椎体91内(整復により椎体91内に形成された空洞911)に、充填材7を充填するために用いられる手術器具である。
【0083】
このインサーター4は、筒体41と、筒体41の内腔に挿通される押出棒43と、筒体41の基端部に設けられた筒体用把持部42と、押出棒43の基端部に設けられた押出棒用把持部(把持部)44とを有している。
【0084】
筒体41は、その両端が開放する円管状の部材で構成されている。すなわち、筒体41は、その基端から先端まで貫通する内腔を有している。この内腔には、後述する充填材7が装填される。
【0085】
この筒体41は、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径とほぼ等しく設定されている。これにより、充填材7を椎体91内に充填する操作の際に、充填材7が筒体41の外周面と孔93の内周面との隙間から、椎骨9外に漏れ出すのを好適に防止することができる。
【0086】
また、筒体41の長さは、特に限定されないが、9〜17cm程度であるのが好ましく、11〜15cm程度であるのがより好ましい。筒体41の長さを前記範囲内とすることにより、インサーター4の取り扱いがより容易となる。
【0087】
また、筒体41には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り411が形成されている。これにより、インサーター4の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、椎体91内での筒体41(または後述する押出棒43)の先端位置を容易に確認することができる。
【0088】
筒体41および押出棒43の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。なお、筒体41および押出棒43は、それぞれ、特にステンレス鋼で構成するのが好ましい。これらをステンレス鋼で構成した場合、前述したような耐衝撃性(耐破損性)および耐熱性に加えて、筒体41の内周面と押出棒43の外周面との摺動性に優れる(低摩擦力)ため、押出棒43の移動操作をより容易に行うことができる。
【0089】
筒体41の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、筒体用把持部42が固定(固着)されている。この筒体用把持部42を把持してインサーター4の操作を行う。
【0090】
筒体用把持部42は、ほぼ円筒状の部材で構成されている。この筒体用把持部42の長手方向の中央部には、周方向に沿って凹部421が形成されている。また、筒体用把持部42の基端には、リング状のフランジ422が形成されている。このような凹部421およびフランジ422は、それぞれ、滑り止め手段として機能するものであり、これらを筒体用把持部42に設けることにより、筒体用把持部42をより確実に把持することができる。これにより、インサーター4の操作をより確実に行うことができる。
【0091】
また、筒体用把持部42は、その内径が基端に向かって漸増している。これにより、例えば、筒体41の内腔への充填材7を装填する操作や、筒体41の内腔への押出棒43を挿入する操作等を、より円滑かつ確実に行うことができる。
【0092】
筒体41の内腔には、この内腔に装填された充填材7を排出可能な押出棒43が挿通される。押出棒43は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が筒体41の内径とほぼ等しく設定されている。具体的には、押出棒43の外径、すなわち、筒体41の内径は、特に限定されないが、3〜6mm程度であるのが好ましい。
【0093】
この押出棒43は、その先端が丸みを帯びた形状をなしている。このように、押出棒43の先端を、丸みを帯びるように形成することにより、充填材7の充填操作を行うのに際し、生体組織を不本意に傷つけてしまうのを好適に防止することができる。
【0094】
この押出棒43は、筒体41に挿通した状態、すなわち、後述する押出棒用把持部44の先端が、筒体用把持部42の基端に当接した状態で、その先端部が筒体41の先端から突出するよう構成されている。換言すれば、押出棒43の長さは、前記状態で、その先端部が筒体41の先端から突出する程度とされている。このような構成とすることにより、充填材7を無駄なく筒体41の内腔から排出することができる。
【0095】
なお、押出棒43は、中実のものに限らず、中空のものでもよい。中空の棒状体としては、その両端のうちの少なくとも一端が閉塞しているもの、両端が開放しているもののいずれでもよい。後者の場合、例えばシース(管体)、カテーテルチューブ等が挙げられる。
【0096】
また、押出棒43の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、押出棒用把持部44が固定(固着)されている。この押出棒用把持部44を把持してインサーター4の操作を行う。
【0097】
この押出棒用把持部44には、その長手方向に沿って、凹部441、441が形成されている。2つの凹部441は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに押出棒用把持部44の軸を介して対向して配置されている。このような凹部441、441を形成することにより、押出棒用把持部44をより確実に把持することができる。
【0098】
本発明における充填材7としては、骨補填材(生体材料)として用いられる材料の粉体が好ましい。なお、ここでいう粉体とは、粉粒体、顆粒、微小な薄片または針状体等を含む広い概念であり、その形状や形態、製造方法等は特に限定されない。
【0099】
このような粉体としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等の各種セラミックスによる粉体が挙げられるが、それらの中でも、リン酸カルシウム系化合物による粉体が好ましい。リン酸カルシウム系化合物は、生体内で長期間安定に存在することができ、生体材料として特に優れている。
【0100】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、TCP(Ca3(PO4)2)、Ca2P2O7、Ca(PO3)2、Ca10(PO4)6F2、Ca10(PO4)6Cl2、DCPD(CaHPO4・2H2O)、Ca4O(PO4)2等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0101】
また、粉体の平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.1〜6.0mm程度であるのが好ましく、1.0〜5.0mm程度であるのがより好ましい。
【0102】
<インパクター>
図5および図11に示すインパクター(押込器具)5は、整復が施された椎体91内に充填された充填材7の密度を高めるために使用される手術器具である。
【0103】
このインパクター5は、棒状の本体51と、本体51の先端部に設けられた押圧部52と、本体51の基端部に設けられた把持部53とを有している。
【0104】
本体51は、横断面がほぼ円形をなしており、その外径が椎骨9に形成される孔93の内径より小さく設定されている。
【0105】
また、本体51には、その外面の長手方向に沿って、挿入深さを示す目盛り511が形成されている。これにより、インパクター5の先端側が、椎骨9の孔93に挿入され、視認できない場合であっても、後述する押圧部52の先端位置を容易に確認することができる。
【0106】
本体51の先端部には、ほぼ円柱状をなす押圧部52が本体51と一体的に形成されている。
【0107】
押圧部52は、充填材7を押圧する部分である。このような構成のインパクター5は、図11に示すように、前方(図11の上側中左方向)に移動操作するようにし、先端面521で充填材7を押圧するようにして使用することができる。これにより、充填材7を押し固めるようにして、その密度(充填密度)を高めることができる。
【0108】
また、この先端面521には、凹凸が形成されている。これにより、先端面521は、充填材7(特に、粉状の充填材7)を保持することができるので、インパクター5により充填材7の密度を高める(緻密化)操作を行うのに際し、この緻密化操作をより確実に行うことができる。
【0109】
この凹凸の形状は、特に限定されないが、頂部が尖った凸部を有するものであるのが好ましい。これにより、先端面521は、充填材7を、より確実に保持することができる。
【0110】
なお、各凸部は、例えば格子状等に規則正しく配置されたもの、不規則(ランダム)に配置されたもののいずれであってもよい。
【0111】
また、先端面521は、凹凸が非常に小さいもの、すなわち、粗面であってもよい。
また、押圧部52は、その外径が先端に向かって漸増している。これにより、押圧部52と充填材7との接触面積を増大させることができ、充填材7の緻密化操作をより効率よく行うことができる。
【0112】
なお、この押圧部52の先端外径は、椎骨9に形成される孔93の内径とほぼ等しく設定されている。
【0113】
押圧部52および本体51の構成材料は、それぞれ、前記ガイド棒1の棒状体11で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0114】
また、押圧部52と本体51との全体での長さ(図5中長さL3)は、特に限定されないが、13〜21cm程度であるのが好ましく、15〜19cm程度であるのがより好ましい。これにより、インパクター5の取り扱いがより容易となる。
【0115】
なお、押圧部52は、本体51と一体的に形成されているものに限らず、本体31に対して、例えば螺合や嵌合等の方法により、固定されたものであってもよい。
【0116】
また、本体51の基端部には、例えば、螺合、螺子止め、圧入、カシメ、溶接、接着等の方法により、把持部53が固定(固着)されている。この把持部53を把持してインパクター5の操作を行う。
【0117】
この把持部53には、その長手方向に沿って、凹部531、531が形成されている。2つの凹部531は、滑り止め手段として機能するものであり、互いに把持部53の軸を介して対向して配置されている。このような凹部531、531を形成することにより、把持部53をより確実に把持することができる。
【0118】
以上、5つの手術器具1〜5について説明したが、これらの手術器具1〜5では、各把持部12、23、33、44、53が、それぞれ異なっているのが好ましい。これにより、各把持部の違いにより、異なる手術器具であることを認識することができる。
【0119】
この場合、各把持部は、例えば、形状、寸法、材質、手触り、色彩等を変える方法、文字(数字)、記号、図形のようなマーカーを付す方法等のうちの少なくとも1つの方法により、異なるものとすることができる。
【0120】
図示の構成では、例えば、把持部12のA1で示す部分、把持部23のA2で示す部分、把持部33のA3で示す部分、把持部(押出棒用把持部)44のA4で示す部分、把持部53のA5で示す部分を、それぞれ、異なる色彩としたり、各部分A1〜A5に、それぞれ、異なる数字を付したりすることができる。
【0121】
これにより、各把持部12、23、33、44、53を見るだけで、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
【0122】
また、各部分A1〜A5に、それぞれ、異なる数字を付す場合には、椎体圧迫骨折術を行う際に使用する順序にしたがって、数字を付すようにしてもよい。この場合、数字を見ながら、使用する手術器具を順次選択していくことができ、便利である。
【0123】
また、各手術器具1〜5において、各把持部12、23、33、44、53と各先端側の部分とは、着脱自在なものであってもよい。この場合、各手術器具1〜5は、互いに、それらの把持部が共通であり、先端側を取り替えて使用するような構成のものとすることができる。
【0124】
次に、手術器具セットの使用方法の一例について説明する。
[1] まず、X線透視下に、図6に示すように、椎体圧迫骨折整復術を施す椎骨9の椎弓92、92から、椎体91に向けてプローベ(処置具)6を穿刺する。これにより、椎骨9の左右両側には、各椎弓92から椎体91内にかけて、細径の孔93、93が形成される。
【0125】
[2] 次に、ガイド棒1の把持部12を把持して、図7に示すように、その先端側を、一方の孔93に挿入する。これにより、一方の孔93が拡径される。
【0126】
なお、ガイド棒1は、その棒状体11の外径が異なるもの(例えば、φ:4mm、5mm、6mmの3種類)が用意されている。そして、これらを細径のものから、順次、使用することにより、孔93を徐々に拡径することができる。
このような孔93の拡径操作を、左右の孔93に対して行う。
【0127】
[3] 次に、バーチカルエレベーター2の把持部23を把持して、図8に示すように、その先端側(押圧部22および本体21の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入し、押圧部22を前方部分に位置させる。また、このとき、押圧部22の先端面221を上方に向けた状態としておく。
【0128】
そして、本体21の基端側を押し下げる。これにより、押圧部22は、その先端面221が椎体91の前方上部内面に当接するとともに、椎体91の前方上部を押圧し、上方に持ち上げることができる。
【0129】
次いで、バーチカルエレベーター2の先端側を、椎骨9から引き抜き、他方の孔93を介して、再度、椎体91内に挿入し、前記と同様の操作を行う。
【0130】
[4] 次に、ホリゾンタルエレベーター3の把持部33を把持して、図9に示すように、その先端側(押圧部32および本体31の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入し、押圧部32を中央部分に位置させる。また、このとき、押圧部32の一方の側面321を上方に向けた状態としておく。
【0131】
そして、本体31の基端側を押し下げる。これにより、押圧部32は、その側面321が椎体91の前方上部内面に当接するとともに、椎体91の中央上部を押圧し、上方に持ち上げることができる。
【0132】
また、押圧部32を、本体31の軸を中心に所定角度回転させ、前記と同様の操作を行う。これにより、椎体91の中央上部のより広い範囲に対して、整復操作を施すことができる。
【0133】
次いで、ホリゾンタルエレベーター3の先端側を、椎骨9から引き抜き、他方の孔93を介して、再度、椎体91内に挿入し、前記と同様の操作を行う。
【0134】
このような椎体91の整復操作[3]および[4]を、それぞれ、複数回繰り返して行うようにして、椎体91をほぼ元の形状に整復するようにする。
【0135】
なお、このとき、椎体91を整復することにより、その内部には、空洞911が形成される。
【0136】
[5] 次に、筒体41の筒体用把持部42を片手で把持して、図10に示すように、その先端側を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入する。そして、筒体41の先端を、空洞911の所望の箇所に位置させる。
【0137】
この状態を維持しつつ、筒体用把持部42の基端から、充填材7を筒体41の内腔に装填する。
【0138】
次いで、他方の手で押出棒43の押出棒用把持部44を把持して、押出棒43を筒体用把持部42の基端より、筒体41の内腔に挿入し、先端方向へ移動する。これにより、筒体41の内腔にある充填材7は、押出棒43の先端部に押圧され、筒体41内を先端方向へ移送される。
【0139】
さらに、押出棒43を先端方向へ進めると、その先端部が筒体41の先端から突出し、充填材7が空洞911に供給され、充填される。
【0140】
このような充填材7の充填操作を行うのに際しては、押出棒用把持部44の筒体用把持部42への当接により、押出棒43の筒体41の先端からの最大突出長さが規制されるため、椎体91の不要な箇所を押圧することが防止され、安全性が高い。
【0141】
[6] 次に、インパクター5の把持部53を把持して、図11に示すように、その先端側(押圧部52および本体51の先端側)を、一方の孔93を介して椎体91内に挿入する。
【0142】
そして、前記操作[5]で空洞911に充填された充填材7を、押圧部52で押圧する。これにより、充填材7の密度(充填密度)を高めることができる。
【0143】
このような充填材7の充填操作[5]、および、充填材7の緻密化操作[6]を、それぞれ、左右の孔93を介して、複数回繰り返して行うようにして、椎体91の空洞911に充填材7を充填するとともに、その密度を高める。
【0144】
また、このような操作[5]および[6]を行うことにより、椎体91の更なる整復も期待できる。
【0145】
[7] 次に、左右の孔93を、それぞれ、図12に示すように、例えばハイドロキシアパタイト等の生体材料で構成される栓体8で封止する。これにより、各孔93を介して、充填材7が椎体91内(空洞911)から流出するのを防止(阻止)することができる。このため、椎体91が、再度、圧潰するのをより確実に防止することができる。
【0146】
なお、各孔93は、栓体8に代わり、例えば骨セメント等により封止するようにしてもよい。
【0147】
以上のようにして、椎体91に対する椎体圧迫骨折整復術が終了したら、術部(切開部)に対し縫合、結紮等を行い、手術を終了する。
【0148】
なお、各手術器具には、目盛りが設けられているので、前記操作[2]〜[6]を行うのに際しては、それぞれ、この目盛りを見ながら、それらの操作を行うことにより、各手術器具の先端を、必要以上に椎体91内へ挿入してしまい、椎体91の不要な箇所を押圧してしまうことを防止することができ、安全性が高い。
【0149】
以上、本発明の手術器具セットを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0150】
また、本発明の手術器具セットの拡径器具、形状整復器具、充填器具、押込器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明の手術器具セットには、任意の手術器具が追加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の手術器具セットの拡径器具の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の手術器具セットの形状整復器具の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の手術器具セットの形状整復器具の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の手術器具セットの充填器具の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の手術器具セットの押込器具の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図7】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図8】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図9】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図10】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図11】本発明の手術器具セットの使用方法を説明するための図である。
【図12】椎体圧迫骨折整復術が施された椎骨を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0152】
1 ガイド棒
11 棒状体
111 目盛り
12 把持部
121 凹部
2 バーチカルエレベーター
21 本体
211 目盛り
22 押圧部
221 先端面
23 把持部
231 凹部
232 マーカー
3 ホリゾンタルエレベーター
31 本体
311 目盛り
32 押圧部
321 側面
33 把持部
331 凹部
332 マーカー
4 インサーター
41 筒体
411 目盛り
42 筒体用把持部
421 凹部
422 フランジ
43 押出棒
44 押出棒用把持部
441 凹部
5 インパクター
51 本体
511 目盛り
52 押圧部
521 先端面
53 把持部
531 凹部
6 プローべ
7 充填材
8 栓体
9 椎骨
91 椎体
911 空洞
92 椎弓
93 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎体圧迫骨折整復術に用いられ、少なくとも圧潰した椎体に形成された孔を拡径するための拡径器具と、圧潰した椎体の上部を、ほぼ正常位置に整復するための形状整復器具と、整復が施された椎体内に、充填材を充填するための充填器具と、整復が施された椎体内に充填された充填材の密度を高めるための押込器具とを備える手術器具セットであって、
前記拡径器具は、前記孔に、その先端側を挿入し、前記孔の径を拡大する棒状体と、
前記棒状体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記形状整復器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に、前記本体に対して傾斜して設けられ、前記椎体の上部を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部と、
前記押圧部の傾斜方向を示すマーカーとを有し、
前記押圧部と前記本体とのなす角度は、一定で、かつ、5〜15°であり、
前記充填器具は、基端から先端まで貫通する内腔を有する筒体と、
前記筒体の内腔に挿通され、前記内腔に装填された前記充填材を排出可能な押出棒と、
前記押出棒の基端部に固定された把持部とを有し、
前記押込器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に設けられ、前記充填材を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記各器具の前記把持部が異なっており、前記各把持部によって、前記各器具が特定可能とされていることを特徴とする手術器具セット。
【請求項2】
前記形状整復器具の前記押圧部は、平板状をなしている請求項1に記載の手術器具セット。
【請求項3】
前記形状整復器具は、前記椎体の整復位置に応じて複数種類が用意される請求項1または2に記載の手術器具セット。
【請求項4】
前記押出棒は、前記筒体に挿通した状態で、その先端部が前記筒体の先端から突出する請求項1ないし3のいずれかに記載の手術器具セット。
【請求項5】
前記筒体の基端部に、筒体用把持部が固定されている請求項1ないし4のいずれかに記載の手術器具セット。
【請求項1】
椎体圧迫骨折整復術に用いられ、少なくとも圧潰した椎体に形成された孔を拡径するための拡径器具と、圧潰した椎体の上部を、ほぼ正常位置に整復するための形状整復器具と、整復が施された椎体内に、充填材を充填するための充填器具と、整復が施された椎体内に充填された充填材の密度を高めるための押込器具とを備える手術器具セットであって、
前記拡径器具は、前記孔に、その先端側を挿入し、前記孔の径を拡大する棒状体と、
前記棒状体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記形状整復器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に、前記本体に対して傾斜して設けられ、前記椎体の上部を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部と、
前記押圧部の傾斜方向を示すマーカーとを有し、
前記押圧部と前記本体とのなす角度は、一定で、かつ、5〜15°であり、
前記充填器具は、基端から先端まで貫通する内腔を有する筒体と、
前記筒体の内腔に挿通され、前記内腔に装填された前記充填材を排出可能な押出棒と、
前記押出棒の基端部に固定された把持部とを有し、
前記押込器具は、棒状の本体と、
前記本体の先端部に設けられ、前記充填材を押圧する押圧部と、
前記本体の基端部に固定された把持部とを有し、
前記各器具の前記把持部が異なっており、前記各把持部によって、前記各器具が特定可能とされていることを特徴とする手術器具セット。
【請求項2】
前記形状整復器具の前記押圧部は、平板状をなしている請求項1に記載の手術器具セット。
【請求項3】
前記形状整復器具は、前記椎体の整復位置に応じて複数種類が用意される請求項1または2に記載の手術器具セット。
【請求項4】
前記押出棒は、前記筒体に挿通した状態で、その先端部が前記筒体の先端から突出する請求項1ないし3のいずれかに記載の手術器具セット。
【請求項5】
前記筒体の基端部に、筒体用把持部が固定されている請求項1ないし4のいずれかに記載の手術器具セット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−155043(P2008−155043A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28184(P2008−28184)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【分割の表示】特願2001−373441(P2001−373441)の分割
【原出願日】平成13年12月6日(2001.12.6)
【出願人】(592079125)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【分割の表示】特願2001−373441(P2001−373441)の分割
【原出願日】平成13年12月6日(2001.12.6)
【出願人】(592079125)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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