説明

手術室ノイズ低減化システム

【課題】複数からなる手術機器のノイズ発生源をリアルタイムに特定・警告するだけでなく、ハード・ソフト面の両方からノイズ回避をする方法を提案することで、手術・治療中の鮮明な画像取得を目的とする。
【解決手段】種々のデータが記憶可能なデータベースと医療用診断装置と実空間周波数スペクトルを計測して表示する手段と複数の画像を同一面に重畳表示可能な画像処理機能において、データベースに手術機器毎のノイズスペクトル情報と複数条件に対する医療用診断画像を予め登録し、医療用診断装置において入力された撮像条件から画像を検索して表示する手段とノイズスペクトル成分から医療用診断画像に影響を与える周波数成分を描出して重畳表示しながら、ユーザに対して、ノイズ発生源の特定とその対処を促す機能またはノイズが混入しないような撮像条件変更を促す機能によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術室ノイズ低減化システムに関し、例えば、手術室内の医療用診断装置(例えば、X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等)に影響を与える装置に対して、ノイズが装置に混入しないようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用診断装置の一つである核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)は、連続的に被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴信号(以下、MR信号と称する)を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化するものである。現在、臨床で普及しているMRI装置の撮像対象は、被検体の主たる構成物質、プロトンである。MRIは、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0003】
このようなMRI装置を用いた心臓イメージングや、手術時の穿刺モニタリング、経皮的治療などに使用されるI−MRI装置(interventional−MRI装置、または、Intraoperative−MRI装置の略称)があり、リアルタイムで撮像する断層面を任意に設定したいという要望に応えるものである。
【0004】
このI−MRI装置における手術機器の配置は、シールドルーム内とシールドルーム外に大別される。シールドルーム内では、MRI装置のほかに、医師(または操作者)が必要に応じて手術を確認するためのモニタとしての超音波装置を備え、さらに、周辺には、電気メス、手術器具・固定具他、麻酔器、超音波治療ユニット、脈波計等が常備されている。一方、シールドルーム外では、画像情報を保持するためのサーバ・データベース、MRIユニットおよびMRI操作卓がHUBを経由して繋がっている。
【0005】
上述のように、手術室に放射線画像診断装置とMRI装置等の複数の装置が同一部屋内に設置されている。単一の診断・治療室内へX線CT装置、X線透視撮影装置やMRI装置を設置することにより、患者の病変部を効果的に画像診断でき、また画像観察下において治療することができるようになる。すなわち、体内の軟部組織、脳、血管、肺、心臓、四肢などをそれぞれのモダリティの特徴を生かして検査、治療することができる。
【0006】
しかし、両方の装置を効率的に稼動させるために放射線画像診断装置の電源をオンにして撮影スタンバイ状態にすると、放射線画像診断装置から電磁波ノイズが発生しMRI装置の動作に悪影響を及ぼすという問題が発生する。この問題を解決する方法として、検査室の一つの壁面と他の壁面間に電動式シールドカーテンを用いて部屋を区切る方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−144066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の電動式シールドカーテンは部屋を区切られてしまい、開閉に時間を要することから緊急時の対応が難しいだけでなく、手術機器の往来を自由に行うことができない問題がある。また、MRI画像に影響を与える手術機器を特定するのに複数の機器からノイズ発生機器を特定するのは難しく、一つずつ機器の確認をしなければならないことから、手術を中断することがたびたび発生していた。また、ノイズ回避をするための撮像条件を提示・表示する機能はなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数からなる手術機器のノイズ発生源をリアルタイムに特定するとともに、ハード・ソフト面の両方からノイズ回避をする方法を提案でき、ユーザは状況に応じてノイズ回避方法を選択することができ、これにより手術を中断することなく、治療中の鮮明な画像取得と手術成績向上が期待できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明にかかる手術室ノイズ低減化システムの主たるものは、複数の手術機器が配置された手術室内に置かれた医療用診断装置を用いて撮像する被検体の画像に生じるノイズを低減する手術室ノイズ低減化システムにおいて、手術室ノイズ低減化システムにデータを入力する入力手段と、データを記憶するデータベースと、データベースの情報に基づいて所定の演算を実行する演算手段と、複数の画像を同一画面上に重畳して表示可能な画像処理手段とを備え、データベースには、手術機器から発生する機器ノイズを予め測定して得られた機器ノイズスペクトル情報、および予め設定した複数の撮像条件のそれぞれに対応して作成されたデータベース医療用診断画像が登録され、演算手段は、被検体の撮像開始に際して、操作者により前記入力手段より入力された命令に基づいて、医療用診断装置の操作時撮像条件に応じた画像を、データベース医療用診断画像から検索して画像処理手段に表示を行い、手術室内の実空間における周波数スペクトルを計測し、計測結果に基づいて検索された画像に影響を与える周波数スペクトル成分を描出し、周波数スペクトル成分に基づいて仮想的なノイズを作成し検索された画像に該仮想的なノイズを前記画像処理手段に重畳表示し、周波数スペクトル成分と機器ノイズスペクトル情報に基づいて手術室内におけるノイズ発生機器を特定し、特定されたノイズ発生機器を画像処理手段に表示し、周波数スペクトル成分から検索された画像にノイズが混入しない撮像条件を算出して表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数からなる手術機器のノイズ発生源をリアルタイムに特定することができるだけでなく、ハード・ソフト面の両方からノイズ回避をする方法を提案でき、ユーザは状況に応じてノイズ回避方法を選択することができる。これより、撮像前に画像ノイズを警告することが可能となり、予め対処方法を提示することで、手術を中断することなくなり、治療中の鮮明な画像取得と手術成績向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】手術室におけるノイズを特定する機能を示すフロー図である。
【図2】本発明の治療支援システムの構成図である。
【図3】一般的な手術室内の機器配置構成を示す模式図である。
【図4】従来の超音波診断機器構成を示す模式図である。
【図5】本発明のナビゲーションガイド機能基本構成を示す模式図である。
【図6】各種手術機器のノイズスペクトルを示す模式図である。
【図7】データベースに登録する撮像条件と画像の関係を示す模式図である。
【図8】本発明のGUI表示例(ノイズスペクトル測定時)である。
【図9】本発明のGUI表示例(術中)である。
【図10】従来の治療支援機器構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の機能フローを図1に示す。手術室内の機器ノイズスペクトルを事前に計測し、データベースに登録しておく101。また、複数の撮像条件画像(例えば、図7に示すような撮像条件1〜4に対応する撮像予想画像をパターン化したもの)をデータベースに予め記録しておく102。手術時には、患者入室103から始まり、患者をベッドに固定104、操作者は撮像条件(例えば、図7に示すようなTR、TE、FAなど)を入力する105。入力された撮像条件からデータベースを経由して最も適する画像を検索し、画面上に表示する106。これより、操作者は取得予想される画像を事前に見て、手術に耐えうる画像かどうか判断し、必要に応じて条件を変更する。
【0014】
一方、手術室内部に設けられたスペクトルアナライザーを用いて画像に影響を与える特定周波数を測定し、画面上にスペクトル分布図を表示する107。ここで、ノイズスペクトルが閾値以上の値を示した場合には109、スペクトル情報とデータベースに登録した機器情報からノイズ発生源を解析し、GUI上にノイズ発生機器名称および対処方法を明示する110。さらにスペクトル情報と撮像条件から得られると予想されるノイズを仮想的に作成し111、撮像予想画像106上に仮想ノイズ画像を重畳表示する112。ユーザはノイズ発生機器の電源シャットダウン等の対処を行うことで113、スペクトル分布が変わり、仮想画像上のノイズ分布が変更される。これらの作業を繰り返すことで、撮像前にノイズ成分を除去した環境を作成することができ、撮像後の取り直しをなくすことが可能となる。
【0015】
一方、ソフト的な対処方法として、撮像条件を変更することで、ノイズが混入しない画像を得ることも可能である。具体的には、取得したノイズ成分を省いた周波数帯を利用して撮像することであり、それに値する条件を参考表示する機能も付随している114。これよりユーザはハード対応だけでなくソフト対応も組み合わせて必要に応じた対処を行うこととなる。最終的にMRI撮像環境が整ったら115、撮像が開始され116、手術が開始される。
【0016】
図2に本システム構成図を示す。図10に示したI−MRIの構成と類似しており、治療装置と一体化した超音波装置40がパーソナルコンピュータ19と連結しており、装置間の連結情報はモニタ38上に表示される。一方、超音波プローブ36に取り付けられたポインタ27を位置検出装置9が連続追随し、情報転送することで、超音波画像とMRI(またはCT)装置と治療装置の連結が可能となる。
【0017】
ここで、MRI装置1は、垂直磁場方式0.3T永久磁石MRI装置1であり、垂直な静磁場を発生させる上部磁石3と下部磁石5、これら磁石を連結するとともに上部磁石3を支持する支柱7、位置検出デバイス9、アーム11、モニタ13、モニタ支持部15、基準ツール17、パーソナルコンピュータ19、ベッド21、制御部23などを含んで構成されている。MRI装置1の図示しない傾斜磁場発生部は、領斜磁場をパルス的に発生させ、最大傾磁場強度15mT/mで、スルーレート20mT/m/msである。更に、MRI装置1は、静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器、被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備え、これらは12.8MHzの共振型コイルである。
【0018】
位置検出デバイス9は、2台の赤外線カメラ25と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され、断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。また、位置検出デバイス9は、アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され、MRI装置1に対する配置を適宜変更することができる。
【0019】
モニタ13は、操作者29が把持するポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像を表示するもので、モニタ支持部15により、赤外線カメラ25同様上部磁石3に連結されている。基準ツール17は、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の情報が、術具位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。制御部23は、ワークステーションで構成され、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。
【0020】
また、制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置から術具36を考慮してMRI装置1で利用可能な位置データに変換し、制御部23へ送信する。位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得された画像は液晶モニタに表示される。また、画像は映像記録装置34に同時記録される。例えば断層面指示デバイスであるポインタを穿刺針などにとりつけ、穿刺針のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合、モニタには針を常に含む断面が表示されることになる。その他、生体情報に同期した計測をすることも可能であり、患者24に取り付けられた同期(時相)計測装置41にて各種情報(脈波、心電、呼吸)を取得することができる。
【0021】
図3にI−MRIにおける手術機器配置図例を示す。機器配置はシールドルーム内とシールドルーム外に大別され、シールドルーム内では、MRI装置1に付属するベッド21上の対象物24に対して、医師(または操作者)29が術具36を用いて手術を行う。ここで、必要に応じて超音波装置40に写るモニタ38を見ながら手術を行うが、術具の位置は位置検出装置9にて常に位置検出が行われている。周辺には、電気メス301、手術器具・固定具他302、麻酔器303、超音波治療ユニット304、脈波計305等が常備されており、術者は必要な器具を用いて手術・治療を行っていく。一方、シールドルーム外では、超音波画像や治療状況がフィルタボックスを経由してシールドルーム外に情報を転送することができる。一般的にシールドルーム外には、画像情報を保持するためのサーバ・データベース、MRIユニット308およびMRI操作卓309がHUB 307を経由して繋がっている。
【0022】
図4に収束超音波の装置構成を示す。通常の診断用コンベックス型超音波プローブ401は放射状に超音波を発するのに対して402、収束超音波のようなプローブ403は、ある1点405に収束するように照射が行われる404。近年、収束超音波中心部に診断用プローブを取り付けた治療・診断一体型のプローブが開発されており408、超音波診断装置406と治療用ジェネレータ・アンプ407を備えたコンパクトなものが提案されている。
【0023】
図5に本システムのナビゲーションシステムガイド表示機能を説明する。患者501は手術台上に固定されており、術具または治療機器を用いて患部の治療を行う。本例では、治療機器として収束超音波プローブ502を用いており、非侵襲治療を行っている様子を示している。収束超音波プローブ502は、位置検出デバイス9に取り付けられた赤外線カメラ25にてポインタ503位置からプローブ位置を検出し、ナビゲーション画像上504~507にそれぞれ表示される。ナビゲーション画像は3軸断面504〜506の他にVolume Rendering画像507等を自由にカスタマイズでき、手術前に特定領域(治療領域等)514〜516および警告領域517〜519をそれぞれ設定しておく。ナビゲーション画像上には、超音波プローブ508〜510の位置を画像上に重畳表示することもでき、さらに術具に応じた治療予定領域511〜513を立体的に表示することができる。その他、上記条件を手術環境に応じて変更することができる。例えば、治療予定領域511〜513が警告領域517〜519内に入った場合にナビゲーション画像や治療パラメータを自動的に変更する機能も有している。
【0024】
位置検出装置と過去に撮像したボリュームデータを用いた手術ナビゲーションシステムは手術時に患者に対してポインタなどにより指定される位置を、当該位置を含む患者の直交3平面それぞれを断面とする断層画像上に表示することにより手術操作をナビゲーションするシステムであり、脳神経外科手術などの高精度の外科手術に適用されている。
【0025】
ここで、このような手術ナビゲーションシステムにおける患者の断層画像は、予め、MRI装置によって撮像した3次元のデータであるボリュームデータにより生成される。一方、ポインタによる指定位置を定めるために必要とされるポインタの位置検出の方式には、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式がある。
【0026】
図6にデータベースに登録した各種機器のノイズスペクトル成分例を示す。手術前にスペクトルアナライザーにて機器Aの周波数スペクトル601、機器Bの周波数スペクトル602、機器Cの周波数スペクトル603をそれぞれ測定し、データベースに機器情報と共に登録しておく。また、画像に影響を与える閾値604を登録することもでき、手術中に閾値604以上の周波数成分が検出されたら、警告を発するよう設定することも可能である。
【0027】
図7に撮像条件に応じた参照画像登録例を示す。ここでは、4つの撮像条件701、704、707、710を用いた例であり、各撮像条件における基本断面の撮像予想画像702、705、708、711や直交断面の撮像予想画像703、706、709、712がデータベース内部に登録されている。
【0028】
図8に撮像条件設定および取得予定(予想)画像GUI表示例を示す。患者入室後810、撮像条件入力ボタン801を用いて撮像条件(パラメータ)830を入力する。次に撮像予想画像表示ボタン802を押下することで、入力条件に最適な画像を事前に登録したデータベースから検索し、表示する821、822、823、824。ここで、スペクトル成分測定および表示ボタン803を押下することで、手術室内のノイズ測定およびスペクトル分析が行われる813。解析された周波数スペクトル成分832は別画面831に表示され、入力条件に対する画像へ影響を与える周波数帯域も付加機能として表示される833。
【0029】
また、ユーザ設定の閾値834も表示されており、閾値より高いスペクトル強度が得られた場合には、警告を発するような機能も備えている。ここで、ノイズ発生機器特定ボタン804を押下することで、周波数スペクトル情報とデータベースに事前登録された手術機器のスペクトル情報からノイズ発生機器を特定し、機器名称を明示することができる。ユーザはこの情報を用いてノイズ発生源の対処をノイズ成分がなくなるまでこの作業を繰り返す。その他、付加機能として、仮想ノイズ作成ボタン805を押下することで、測定された周波数スペクトル成分と撮像条件から混入すると予測される仮想ノイズを作成し、撮像予想画像802上に重畳表示することにより、事前に警告を促す機能も備えている825、826、827。
【0030】
また、ノイズ回避撮像条件提示ボタン806を押下することで、撮像条件変更によるソフト的な回避方法を提案する機能も備えている。ソフト的な回避方法の具体例としては、バンド幅(BW)を調整する、あるいはノイズをキャンセルするためのSAT(飽和)パルスを照射する方法がある。特にMRI装置の計測周波数帯域はBandwidth(BW)で決まることから、中心周波数帯域にノイズスペクトルが存在していなければ、バンド幅(BW)で調整が可能になる。
【0031】
図9に手術時におけるGUI表示例を示している。必要に応じてPlanningボタン901を用いて手術経路を作成(補正)しながら、手術情報・生体情報ボタン902を押下することで患者情報や術具(治療装置)等の情報詳細が表示される919。実際手術時には、超音波画像ボタン903を押下することで超音波画像がされ911、治療開始ボタン907を押下することで、治療前の特定(セグメンテーション)領域912とリアルタイム治療領域913が一目で分かるようになっている。
【0032】
また、画像情報ボタン908を押下することで、超音波装置の状態、深度や周波数等の各種パラメータを一覧表示することができる914。さらに治療経過ボタン909を押下することで、治療前の特定(セグメンテーション)領域912とリアルタイム治療領域913の差分領域(残治療領域)が計算され、残治療領域が一目で分かり治療術具を残治療領域へナビゲーションする機能も備えている。また、過去の治療経過を時系列的に見直すログボタン910も備えており、治療状況の確認に使用できる。また、ナビゲーション画像ボタン904を押下することで、ナビゲーション3軸断面921〜923の他にVolume Rendering画像924が表示され、超音波プローブ931〜933の位置を画像上に重畳表示することもでき、さらに術具に応じた治療予定領域934〜936も表示することができる。
【0033】
ここで、ナビゲーション画像は、通常時と治療用の画像を必要に応じて変更することができる940〜942。また、特定領域(治療領域等)925〜927および警告領域928〜930をそれぞれ設定しておくことで、3軸断面921〜923の他にVolume Rendering画像924上に重畳表示することができ、実空間と画像情報を用いて手術をすることなる。各種パラメータ914は適宜変更することができ、設定状況は一覧表示することも可能である。治療開始ボタン907に連動して画像情報908、治療経過909、ログ910がONとなるが、必要に応じて手動でOFFとすることもできる。この機能により、治療前情報と治療中およびその差分情報(治療経過情報、残治療領域等)が画像情報として表示される。また、ログ情報は、過去に行った治療経過内容を見直すために使用されることとなる。
【0034】
一方、手術中にMRI撮像を適宜行っていくにあたって、スペクトル計測・仮想ノイズ表示ボタン905を押下することで、手術室内のノイズ測定およびスペクトル分析が行われる。解析された周波数スペクトル成分916は別画面915に表示され、入力条件に対する画像へ影響を与える周波数帯域も付加機能として表示される918。また、ユーザ設定の閾値917も表示されており、閾値より高いスペクトル強度が得られた場合には、ノイズに関する機器の警告を発するような機能も備えている。ユーザはデータベースから検索された手術機器の対処を行うか、または発生しているスペクトル成分916を画像周波数帯域918外へシフトするような撮像条件変更906を行い対処することができる。
【0035】
本発明は手術室内に存在する手術機器全てに適用することができ、X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等の何れの撮像にも対応できる。また、本発明は術者自信(手技)による治療、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の何れにも適用可能とすることができる。
【0036】
図10に、従来の治療支援機器構成(I-MRI)を示す。図2で示す本発明によるシステム構成で用いられるMRI装置などは、同様なものを用いている。
【符号の説明】
【0037】
1…MRI装置、3…上部磁石、5…下部磁石、7…支柱、9…アーム、13…モニタ、15…モニタ支持部、17…基準ツール、19…パーソナルコンピュータ、21…ベッド、
23…制御部、24…被検体、25…赤外線カメラ、27…ポインタ、28…術具B、29…操作者、30…術者用モニタ、32…開口部、33…RSC232ケーブル、34…映像記録装置、35…反射球、36…術具(治療器具)、38…超音波診断装置モニタ・治療装置モニタ、39…MRI用画像モニタ、40…超音波診断装置・治療装置、41…同期(時相)計測装置、42…アンテナ(周波数スペクトルアナライザー用)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の手術機器が配置された手術室内に置かれた医療用診断装置を用いて撮像する被検体の画像に生じるノイズを低減する手術室ノイズ低減化システムにおいて、
前記手術室ノイズ低減化システムにデータおよび操作者の指令を入力する入力手段と、
前記データを記憶するデータベースと、
前記データベースの情報に基づいて所定の演算を実行する演算手段と、
複数の画像を同一画面上に表示可能な画像処理手段とを備え、
前記データベースには、前記手術機器から発生する機器ノイズを予め測定して得られた機器ノイズスペクトル情報、および予め設定した複数の撮像条件のそれぞれに対応して作成されたデータベース医療用診断画像が登録され、
前記演算手段は、操作者により前記入力手段より入力された命令に基づいて、前記医療用診断装置の撮像条件に応じた画像を、前記データベース医療用診断画像から検索して前記画像処理手段に表示を行い、
前記手術室内の実空間における周波数スペクトルを取得し、前記計測結果に基づいて前記検索された画像に影響を与える周波数スペクトル成分を描出し、
前記周波数スペクトル成分と前記機器ノイズスペクトル情報に基づいて前記手術室内におけるノイズ発生機器を特定し、特定されたノイズ発生機器を前記画像処理手段に表示する
ことを特徴とする手術室ノイズ低減化システム。
【請求項2】
前記周波数スペクトル成分に基づいて仮想的なノイズを作成し前記検索された画像に該仮想的なノイズを前記画像処理手段に重畳表示することを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項3】
前記周波数スペクトル成分から前記検索された画像にノイズが混入しない撮像条件を算出して表示することを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項4】
前記機器ノイズスペクトル情報は、手術室内で使用する手術機器の情報とそれに対応するノイズスペクトル成分を前記被検体の撮像開始前に測定し、それぞれを前記データベースに登録しておくことを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項5】
前記データベース医療用診断画像は、前記医療用診断装置における複数の撮像条件に対する画像を予め撮像したものであり、前記医療用診断装置に関する詳細パラメータに加えて、前記被検体の部位や疾病情報も同時に有することを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項6】
前記データベース医療用診断画像から画像を検索する方法は、前記データベース医療用診断画像の撮像条件の中から前記操作時撮像条件に最も適した条件と、該当する部位画像を表示し、操作者に対して事前に取得予定画像を表示する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項7】
撮像条件に応じた前記仮想的なノイズを前記データベース医療用診断画像に、重畳表示して、前記操作者にノイズ対処警告を発する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項8】
前記ノイズ発生源の対処を促す警告、または該ノイズ発生源からのノイズが混入しないような撮像条件に変更を促す警告を前記操作者に提示する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項9】
経時的に変化する前記周波数スペクトル成分をリアルタイムに測定し、前記仮想的なノイズを、随時、前記画像処理手段に重畳表示する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。
【請求項10】
前記被検体である患者の体内ペースメーカや生体モニタを含む安全性確保を目的とした用具から生じる特定のノイズ成分を監視し、該ノイズ成分を低減する機能を、さらに有することを特徴とする請求項1記載の手術室ノイズ低減化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−50582(P2011−50582A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202664(P2009−202664)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、「急性脳梗塞治療における経頭蓋超音波脳血栓溶解装置に関する新技術の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】