説明

打抜き刃型

【課題】打抜き速度を向上させても打抜き精度の低下を生じ難い打抜き刃型を提供し、ひいては、フードパックや発泡トレーなどといった大量消費される成形品の生産性向上を図ること。
【解決手段】熱成形された樹脂シートを打抜いて該樹脂シートから前記熱成形によって形成された成形品を切り出すべく、前記成形品の輪郭形状に相当する環形状に形成された抜き刃と、該抜き刃を支持する板状の刃台とを備え、前記刃台の表面から前記抜き刃を突出させている打抜き刃型であって、前記抜き刃の内側の空気が樹脂シートの前記打抜きにおいて圧縮された際に該空気を刃台の裏面側に逃がし得るように前記抜き刃の内側において前記刃台を表裏に貫通する貫通孔が設けられており、前記刃台を表面平坦な支持材で裏面側から支持して前記打抜きを実施させた際においても前記空気を刃台の裏面側から該刃台の周囲に放出させ得るように前記貫通孔から前記刃台の外周部に続く溝が前記刃台の裏面側に設けられていることを特徴とする打抜き刃型を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打抜き刃型に関し、より詳しくは、熱成形された樹脂シートの打抜きに用いられる打抜き刃型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂が用いられてなる発泡シートや透明フィルムといった樹脂シートを熱成形してトレーや蓋などの容器を作製することが行われている。
この種の熱成形においては、容器形状に相当する凹部が形成された成形型に加熱して軟化させた樹脂シートを覆い被せ前記凹部において開口している真空孔から真空引きを行って前記樹脂シートを前記凹部の形状にあわせて変形させる真空成形法と呼ばれる方法などが採用されている。
【0003】
なお、容器などの成形品を形成させるのに際しては、一度に複数の成形品を作製し得るように、通常、前記凹部が縦横に複数配列された多数個取りの成形型が用いられている。
そして、このような熱成形によって樹脂シートに形成させた成形品を樹脂シートから切り出すのに際しては、従来、トムソン刃型(ビク型)などの打抜き刃型が用いられている(下記特許文献1参照)。
このトムソン刃型は、成形品の輪郭形状に相当する環形状に形成された抜き刃と、合板などからなる前記抜き刃を支持するための刃台とによって構成されており、刃台の表面から突出させた前記抜き刃の刃先を樹脂シートに押し当てて該刃先で当該樹脂シートをその厚み方向に押切りすることにより前記成形品を切り出すように形成されている。
【0004】
より詳しくは、一般的なトムソン刃型においては、成形品の外周長に略等しい長さを有し、長手方向一側縁に沿って刃先が形成され、他側縁が刃元とされた板刃を成形品の輪郭形状となるように環状に折り曲げ、必要に応じて前記板刃の端部どうしを溶接するなどして前記抜き刃が形成されている。
一方で、前記刃台には前記抜き刃の環形状と同形のスリットがレーザー加工機などを用いて形成されている。
そして、トムソン刃型は、前記刃台のスリットに前記抜き刃の刃元側を埋設固定させることによって形成されている。
そのようなことからトムソン刃型は、多大な手間を要することなく簡便に作製することができ、多くの種類の型を取り揃える必要があるような製造現場において広く利用されている。
【0005】
一方でトムソン刃型によって樹脂シートから成形品を打ち抜くと打ち抜き位置がずれ易く、成形品の形状を安定させることが難しいという問題を有している。
一般的な豆腐用容器を例にすると、該豆腐用容器には、容器に矩形の開口が形成され該開口を包囲する形で所定幅のフランジ部が設けられているが、このような成形品を打ち抜く際に位置ずれを生じると、前記矩形開口の4辺からフラン部の先端までの距離に違いが生じて一容器内でフランジ部の幅を異ならせたり、フランジ部の先端によって画定される当該豆腐用容器の輪郭形状に対して前記矩形開口が斜めに歪んだ状態になってしまったりするおそれを有する。
近年の容器製造プロセスにおいては画像処理装置などが採用され、熱成形によって樹脂シートに形成された成形品と打抜き刃型との相対位置の位置決めが精度良くなされるようになってきているが、いまだ十分に打抜き精度の向上が図られていないのが実情である。
【0006】
特に、フードパックや発泡トレーなどといった大量消費される成形品においては、熱成形後の樹脂シートからこれらの製品をいち早く取り出すことが求められているが、トムソン刃型などのような打抜き刃型での打抜き速度を向上させると位置ずれを生じ易く、これらの成形品の生産性向上を図ることが難しい状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−020325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、打抜き速度を向上させても打抜き精度の低下を生じ難い打抜き刃型を提供し、ひいては、フードパックや発泡トレーなどといった大量消費される成形品の生産性向上を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記のような課題に着目して樹脂シートを打ち抜く際の挙動について鋭意検討したところ、熱成形された樹脂シートをトムソン刃型などのような環形状の抜き刃を用いて打抜く際には、樹脂シートに形成させた成形品を抜き刃の内側に収容させることになるため抜き刃の内側の空気が圧縮され易い状況になっていること、並びに、抜き刃が樹脂シートによって蓋をされるような状態になるために抜き刃の内側の空気が行き場を失って刃先と樹脂シートとの間を通り抜けて外部に漏れ出し易い状況になっていることを見出した。
【0010】
そして、本発明者は、打抜き速度を向上させるとこのような挙動が顕著になって刃先と樹脂シートとの間を空気が通り抜ける際に位置ずれを生じさせ易くなっていることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、上記課題を解決するための打抜き刃型に係る本発明は、熱成形された樹脂シートを打抜いて該樹脂シートから前記熱成形によって形成された成形品を切り出すべく、前記成形品の輪郭形状に相当する環形状に形成された抜き刃と、該抜き刃を支持する板状の刃台とを備え、前記刃台の表面から前記抜き刃を突出させている打抜き刃型であって、前記抜き刃の内側の空気が樹脂シートの前記打抜きにおいて圧縮された際に該空気を刃台の裏面側に逃がし得るように前記抜き刃の内側において前記刃台を表裏に貫通する貫通孔が設けられており、前記刃台を表面平坦な支持材で裏面側から支持して前記打抜きを実施させた際においても前記空気を刃台の裏面側から該刃台の周囲に放出させ得るように前記貫通孔から前記刃台の外周部に続く溝が前記刃台の裏面側に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、抜き刃の内側において刃台を表裏に貫通する貫通孔と、前記刃台の裏面側に前記貫通孔から該刃台の外周部に続く溝が形成されていることから樹脂シートの打抜きにおいて抜き刃の内側の空気が圧縮された場合でも前記貫通孔と前記溝とを通じて前記空気を刃台の周囲に放出させ得る。
従って、打抜き速度を向上させた場合においても刃先と樹脂シートとの間を空気が通り抜けることを防止することができ、樹脂シートに位置ずれを抑制させ得る。
即ち、本発明によれば打抜き速度を向上させても打抜き精度の低下を生じ難い打抜き刃型を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】熱成形された樹脂シートから打抜き刃型によって切り出される樹脂トレーを示した斜視図。
【図2】一実施形態の打抜き刃型を示した斜視図。
【図3】同実施形態の打抜き刃型の裏面側の様子を示した平面図。
【図4】同実施形態の打抜き刃型の使用態様を示す斜視図。
【図5】熱成形された樹脂シートを打抜き刃型で打抜く様子を図4のX−X線断面において示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の打抜き刃型とその使用方法について、樹脂発泡シートを熱成形して角型の発泡トレーを作製する場合を例に、図を参照しつつ説明する。
【0015】
まず、本実施形態の打抜き刃型を使用して樹脂発泡シートから切り出される成形品(発泡トレー)ついて説明する。
前記発泡トレーは、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂発泡シートが熱成形されて形成されたものであり、図1に示す斜視図のような形状を有している。
図1における符号“T”は、発泡トレーを示しており、この図にも示されているように、発泡トレーTは、平面視における輪郭形状が略長方形となるように形成されており、底部TBと、該底部TBの外周から外向きに広がるようにして立ち上がる周側壁TWとによって当該発泡トレーTに、収容物を収容させるための収容凹部TSが形成されている。
また、前記発泡トレーTは、前記周側壁TWの上端から外向きに突出するフランジ部TFを有しており、該フランジ部TFの先端TFaによって長方形の前記輪郭形状が画定されている。
【0016】
この発泡トレーTは、樹脂発泡シートに熱成形が施され、前記収容凹部TSに相当する凹部が前記樹脂発泡シートに形成された後に、該凹部よりも一回り大きな形状に切り出されて形成されたものであり、この樹脂発泡シートから発泡トレーTを切り出すのに本実施形態に係る打抜き刃型が使用される。
【0017】
図2は、本実施形態に係る打抜き刃型の斜視図であり、図中の符号“1”が当該打抜き刃型を表している。
この図にも示されているように、本実施形態に係る打抜き刃型1は、熱成形された樹脂発泡シートを打抜いて該樹脂発泡シートから前記熱成形によって形成された発泡トレーTを切り出すべく、前記発泡トレーの輪郭形状に相当する環形状に形成された抜き刃10と、該抜き刃10を支持する板状の刃台20とを備えている。
前記抜き刃10は、長板状の板刃が前記環形状に折り曲げられて形成されており、前記板刃の一側縁に相当する側の一端縁に刃先11が形成されており、他端側が刃元12となっている。
この抜き刃10は、平面視における形状が発泡トレーTの輪郭形状と同じ長方形となるように形成されており、前記刃元12には、刃先11の方向に向けて切り欠かれた切欠部12aが、前記長方形の各辺中央部に相当する位置に設けられている。
即ち、前記刃元12には、合計4箇所の切欠部12aが設けられている。
【0018】
前記刃台20は、前記抜き刃10を縦横に多数配列させるのに十分な面積を有する矩形合板によって形成されており、本実施形態においては、前記抜き刃10を縦方向に3個、横方向に4個、計12個配列させている。
この刃台20には、前記抜き刃10の環形状に相当するスリット23が設けられており前記抜き刃10は、該スリット23に前記刃元側を挿入させて前記刃台20に固定されている。
【0019】
なお、このスリット23は、前記抜き刃10の刃元側の端面を刃台20の裏面20bと面一になるまで前記抜き刃10を挿入させ得るように刃台20の表面20aから裏面20bにまで貫通する状態で設けられている。
ただし、前記切欠部12aに相当する位置においては裏面20bにまで貫通されていない。
従って、本実施形態に係る打抜き刃型1においては、抜き刃10の刃元側の端面を刃台20の裏面20bに露出させているものの周方向においては前記切欠部12aに相当する部分で不連続となるように露出させており、前記抜き刃10の内側の領域と外側の領域とが抜き刃10によって縁切りされてはおらず、前記切欠部12aにおいて前記領域どうしが連結された状態になっている。
また、前記刃台20は、抜き刃10の高さ(刃先から刃元までの幅)に対してその厚みが薄く前記刃元側の端面が刃台20の裏面20bに面一になるまで抜き刃10をスリット23に挿入させた場合でも、当該抜き刃10の刃先11を表面20aから突出させ得るようになっている。
【0020】
さらには、この打抜き刃型1は、図5にも示すように、前記発泡トレーTの外表面となる側から製品(発泡トレー)形状の形成された樹脂発泡シート50を打抜いた際に前記抜き刃10の内側の領域において発泡トレーTの底部TBと刃台20とが干渉しないように前記発泡トレーTの容器高さよりも前記抜き刃10の突出高さを高くさせている。
【0021】
本実施形態に係る前記打抜き刃型1は、前記抜き刃10の内側の空気が樹脂シート50の打抜きにおいて圧縮された際に前記空気を刃台20の裏面20bから逃がし得るように前記抜き刃10の内側において前記刃台20を表裏に貫通する貫通孔21が設けられている。
該貫通孔21は、刃台20の表面20aにおいて円形の開口21aを有するとともに刃台20の裏面20bにおいても同形状の開口21bを有しており、これらの開口21a,21bは、抜き刃10の略中心となる位置に配されている。
即ち、前記貫通孔21は、前記抜き刃10の略中心位置において刃台20を略垂直に貫通する状態で形成されている。
【0022】
さらに、本実施形態に係る前記打抜き刃型1は、一般的な打抜きプレスのプレスボードのような表面平坦な支持材で前記刃台20を裏面側から支持して前記打抜きを実施させた際においても刃台20の裏面側から該刃台の周囲に前記空気を放出させ得るように前記貫通孔21から前記刃台20の外周部に続く溝22が前記刃台20の裏面側に設けられている。
【0023】
なお、前記貫通孔21は、図に例示のごとくそれぞれの抜き刃10に対して1つずつ設けてもよく、要すれば、一つの抜き刃10の内側に複数の貫通孔を設けてもよい。
この貫通孔21の大きさなどは特に限定されるものではないが、過度に小さい場合には空気の通過抵抗が大きくなるため、例えば、その断面における直径を数mm〜数cmとすることができる。
また、図に例示のごとく、貫通孔21の断面形状を円形にする必要ななく、また、その貫通方向も刃台に対して斜めに形成させても良い。
【0024】
また、前記溝22もその幅、深さ、延在する方向などが特に限定されるものではなく、通常、幅数mm〜十数mm、深さ数mmの溝を前記貫通孔21から刃台20の外周部まで直線的に設けるようにすればよい。
ただし、本実施形態に係る打抜き刃型1のように複数の成形品が形成された樹脂シートから該成形品を一度に切り出し得るように前記刃台20に抜き刃10が複数配列されているような打抜き刃型1においては、該打抜き刃型1の裏面側における空気の流れに偏りが形成されないように一つの貫通孔21に対して複数の溝を設け貫通孔に流入された空気をこれらの内のいずれかからでも刃台20の周囲に放出させ得るようにしておく方が好ましく、また、一つの貫通孔と別の貫通孔との間を連通させる溝を設けることが好ましい。
【0025】
このことに関し、本実施形態に係る打抜き刃型1の裏面側の様子を示した図3を参照しつつ説明すると、前記刃台20において複数の抜き刃10が縦横に配列されているような場合であれば、該抜き刃10の内側に設けられた貫通孔21を交点とした格子状となるように前記溝22を設けることが好ましい。
この図3に例示の溝22は、図にも示されているように、前記抜き刃10の切欠部12aにおいて前記刃台20が抜き刃10の内外を連結させている連結部24を通る形で格子状(碁盤目状)に配されており、その終端を、刃台20の外周部、より詳しくは、刃台20の側端面20eにおいて開口させている。
このような形で溝22を設けることで、熱成形された樹脂発泡シートの打抜き時において抜き刃10の内側領域の空気が圧縮された場合でも、該空気を種々の経路を辿って刃台20の外周部に到達させることができる。
従って、より速い速度での打抜きにおいても効果的に空気を外部に放出させることができ、発泡トレーTの打抜きズレを防止することができる。
即ち、図3に例示のごとく溝22を設けることで、打抜き速度を向上させても打抜き精度の低下を生じ難いという本発明の効果をより顕著に発揮させ得る。
【0026】
次いで、このような打抜き刃型1の用い方について説明すると、一般的に樹脂発泡シートによる発泡トレーを製造する場合のみならず、樹脂シートを熱成形して成形品を作製するような場合には、長尺帯状の樹脂シートを用いて、この樹脂シートに対して熱成形の工程と打抜き工程とが連続的に実施されている。
例えば、この連続プロセスの概要を示した斜視図である図4を参照しつつ説明すると、樹脂発泡シート50は、該樹脂発泡シート50を成形加工が可能な程度に軟化させるための加熱ゾーン(図示せず)、製造する発泡トレーTの形状に相当する凹部41が縦横に配列された成形型40で前記樹脂発泡シート50を熱成形する成形ゾーンA1、該成形ゾーンA1における熱成形で形成され、該樹脂発泡シートと未分離の発泡トレー51(以下「打抜前製品51」ともいう)を前記打抜き刃型1で打抜いて前記樹脂発泡シート50から最終製品となる発泡トレーTを切り出す打抜きゾーンA2、該打抜きゾーンA2において発泡トレーが打抜かれた残りの端材52を処理する端材処理ゾーン(図示せず)を順に通過する形で発泡トレーの製造に利用され消費される。
【0027】
この打抜きゾーンA2における工程を、図4におけるX−X線断面図である図5を参照しつつ説明する。
本実施形態においては、発泡トレーTの内面となる側を上向きにして樹脂発泡シート50が水平に保持された状態で成形ゾーンA1から打抜きゾーンA2に導入される。
この打抜きゾーンA2においては、上下動可能なプレスボード6を有するプレス装置が備えられており、前記プレスボード6は、本実施形態に係る打抜き刃型1よりも一回り大きな板状体でありその板面を水平方向に配した状態でプレス装置に設けられている。
該プレス装置には、前記プレスボード6の上方において前記プレスボードと対向するように固定配置された第二のプレスボード7(以下、「上プレスボード7」ともいう)が備えられており、該上プレスボード7と、上下動可能な下側のプレスボード6(以下、「下プレスボード6」ともいう)とは、その間の距離を前記打抜き刃型1の抜き刃10の厚み以下に接近させ得るように前記プレス装置に備えられている。
【0028】
前記打抜きゾーンA2においては、前記上プレスボード7と前記下プレスボード6との間に前記成形ゾーンA1で熱成形された樹脂発泡シート50を導入して打抜前製品51の外表面側、即ち樹脂発泡シート50の下面側から前記打抜き刃型1による打抜きを実施し得るように、前記打抜き刃型1は、前記抜き刃10を突出させた表面側を上に向けて前記下プレスボード6の上面側に配置されている。
【0029】
すなわち、前記打抜き刃型1は、前記刃台20を下プレスボード6で裏面側から支持させて前記打抜きを実施させ得るように前記プレス装置にセットされており、該打抜き刃型1を打抜き時に支持するための支持材となる下プレスボード6とともに上下動し得るように前記プレス装置にセットされている。
【0030】
本実施形態に係る打抜き刃型1は、前記成形型40における凹部41の配列と同じ配列で前記抜き刃10を配列させており、前記成形型40で形成させた複数の打抜前製品51を前記プレス装置でのワンショットの打抜きによって個別の発泡トレーTとして樹脂発泡シート50から一度に切り出しうるようになっている。
【0031】
この打抜き時の挙動について図5を参照しつつ説明すると、前記成形ゾーンA1から打抜きゾーンA2に導入させた樹脂発泡シート50は、前記打抜前製品51の底部及び周側壁に相当する部分を下面側に膨出させた状態となっており、この膨出部分を前記抜き刃10の内側に収容させる形で打抜き刃型1の上に載置される(図5(a))。
その後、該打抜き刃型1を裏面側から支持する下プレスボード6を上方に移動させることにより前記樹脂発泡シート50が前記抜き刃10の刃先11で下側から持ち上げ、この樹脂発泡シート50の上面側が前記上プレスボード7の下面側に当接するまで下プレスボード6を上方に移動させる。
さらに、樹脂発泡シート50の厚みに相当する分だけ下プレスボード6を上方に移動させると抜き刃10の刃先11が上プレスボード7の下面側に当接し樹脂発泡シート50を下面側から切断することになる。
【0032】
この時、抜き刃10の刃先11が樹脂発泡シート50の下面側から侵入し始めて上プレスボード側に貫通するまでの時間は、通常、1秒以下の瞬間的なものである。
また、樹脂発泡シート50の膨出部分を前記抜き刃10の内側に収容し始めてから、切り出された発泡トレーを抜き刃10の内側から取り除くまでの時間は、通常、成形ゾーンA1での熱成形に要する時間と略同じとされ、数秒の間に実施されることになる。
【0033】
そのため、本実施形態に係る打抜き刃型1のように貫通孔21を設けていないと、前記膨出部分の収容時や打抜きが始まる瞬間における樹脂発泡シート50の変形によって抜き刃10の内側領域10xの空気が圧縮される際に、この空気が行き場を失って刃先11と樹脂発泡シート50との間を通って外部に漏出しようとするため発泡トレーTの形状を正確に切り出すことが難しくなる。
また、単に貫通孔21のみを設けただけでは、本実施形態に係る打抜き刃型1を刃台20の裏面側から支持させるための支持材として、前記下プレスボード6に表面平坦な板状体を採用した際に、前記貫通孔21が裏面側から前記下プレスボード6で裏面側から閉塞されてしまうことになるため前記溝22を刃台の裏面側に設けることが樹脂発泡シート50から発泡トレーTの形状を正確に切り出す上において重要である。
【0034】
即ち、図5(b)に示すように、樹脂発泡シート50を打抜く際には、刃台の表面20aにおける開口から抜き刃10の内側領域10xの空気が貫通孔21に流入する気流F1が形成されるとともに刃台20の側端面20eを取り巻く空間と前記貫通孔21とを刃台20の裏面20bにおいて連通する溝22を通じて前記空気を刃台20の周囲に放出する気流F2が形成される。
このことによって刃先11と打抜前製品51との相対位置が打抜き時にずれてしまうことを防止することができる。
【0035】
なお、打抜き工程において樹脂発泡シート50から切り出された発泡トレーTは、抜き刃10の内側に収容されることになるが、この発泡トレーTを抜き刃10の内側から取り出す際にも前記貫通孔21並びに前記溝22が有効に作用することになる。
即ち、貫通孔21などを有していないと、発泡トレーTを抜き刃10の内側から取り除こうとした際に発泡トレーTと刃台20との間の空間が広がることで当該空間が減圧され、抜き刃10の内側に引き戻すような力が発泡トレーTに作用することになるが、本実施形態の打抜き刃型1においては、前記溝22及び前記貫通孔21を通じて抜き刃10の内側領域10xに空気を流入させ得ることから発泡トレーTを容易に取り出しうる。
【0036】
即ち、本発明によれば、打抜き速度を向上させても打抜き精度の低下を生じ難いばかりでなく、打抜かれた成形品の取り出し速度の向上を図ることもできる。
従って、得られる成形品の品質の低下を抑制しつつ打抜き工程のタクトタイムを短縮させることができ、ひいては、成形品の製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
なお、前記発泡トレーTは、一般的に大量消費されており、より生産性の向上が要望されている。
従って、本発明の効果を顕著に発揮させやすい点において、本実施形態においては、樹脂発泡シートから発泡トレーを切り出す場合を例に本発明の打抜き刃型の使用態様を説明しているが、本発明の打抜き刃型は、このような形状の発泡トレーのみならず、例えば、丼形状等のトレー以外の容器形状の形成された樹脂発泡シートから成形品を切り出すのにも利用され得る。
また、容器以外の発泡成形品の打ち抜きにも利用可能なものである。
さらには、本実施形態においては、打抜きを行う樹脂シートとして樹脂発泡シートを例示しているが、例えば、フィルム状の樹脂シートを熱成形して豆腐用容器などの成形品を作製する場合や、食品収容用容器の透明蓋やフードパックなどの成形品を作製する場合などにおいても本発明の打抜き刃型を用いうる。
その他、打抜き刃型において従来公知の事項を本発明の打抜き刃型にも、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において適宜採用が可能なものである。
【符号の説明】
【0038】
1 打抜き刃型
6 下プレスボード
7 上プレスボード
10 抜き刃
10x 内側領域
11 刃先
12 刃元
12a 切欠部
20 刃台
21 貫通孔
22 溝
40 成形型
50 樹脂発泡シート
A1 成形ゾーン
A2 打抜きゾーン
T 発泡トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形された樹脂シートを打抜いて該樹脂シートから前記熱成形によって形成された成形品を切り出すべく、前記成形品の輪郭形状に相当する環形状に形成された抜き刃と、該抜き刃を支持する板状の刃台とを備え、前記刃台の表面から前記抜き刃を突出させている打抜き刃型であって、
前記抜き刃の内側の空気が樹脂シートの前記打抜きにおいて圧縮された際に該空気を刃台の裏面側に逃がし得るように前記抜き刃の内側において前記刃台を表裏に貫通する貫通孔が設けられており、前記刃台を表面平坦な支持材で裏面側から支持して前記打抜きを実施させた際においても前記空気を刃台の裏面側から該刃台の周囲に放出させ得るように前記貫通孔から前記刃台の外周部に続く溝が前記刃台の裏面側に設けられていることを特徴とする打抜き刃型。
【請求項2】
複数の成形品が形成された樹脂シートから該成形品を一度に切り出し得るように前記刃台には前記抜き刃が複数配列されており、該複数の抜き刃の内側に設けられた貫通孔を交点とした格子状となって前記溝が設けられている請求項1記載の打抜き刃型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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