説明

打撃用電子パッド

【課題】打撃感触や静穏性を損なうことなく、専用部材を要することなくポールに対する回転止め機能及び緩衝機能を有すると共に、カバー部材とフレームとの固着状態を強固にする。
【解決手段】ポール12に支持される電子パッドPDは、フレーム40にカバー部材20が組み付けられてなる。フレーム40のカップ対応部42には、平面視で正三角形の貫通穴47が形成されている。カバー部材20は、ポール12が挿通されるポール挿通穴31が形成された軸部30を有し、軸部30が貫通穴47に挿通嵌合される。カバー部材20は、軸部30、カップ部23、主打面部22及び外縁部21を含んで、フレーム40よりも軟質の弾性材料で一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子打楽器に好適な電子シンバル等の打撃用電子パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子打楽器においては、アコースティックシンバル等に代わって電子シンバル等の電子パッドが備えられる。電子パッドへの打撃が検出されて、その検出出力に基づいて楽音が発生する。この種の電子パッドは、スタンドのポールに支持されるのが通常である。例えば、下記特許文献1では、硬質のフレームに設けられた貫通穴にポールを挿通し、上下からクッション材を介して締め込むことでパッドがポールに取り付けられる。また、打撃感触の向上や、打撃時の静穏性を確保するために、打撃される面にゴム材等でなるカバー部材が被せられるものも一般的である(下記特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−207451号公報
【特許文献2】特開2009−128800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の電子パッドでは、パッドへの打撃振動がポールに直接伝わらないように、貫通穴とポールとの間には間隙が設けられることもあってパッドが回転しやすい。そのため、ポールに対するパッドの回転を止めるために、回転止め具として専用の部材を設けている。また、パッドへの打撃振動がポールに直接伝わることの回避は、ポールへの取り付け部における上下のクッション材に依存している。
【0005】
また、上記特許文献1、2の電子パッドでは、軟質のカバーが硬質のフレームに対して接着等で固着される。しかし、両者は接着によってのみ固着状態が維持されるため、接着状態のバラツキによっては、演奏打撃が繰り返されることによって両者が剥離したり、カバーがフレームから浮き上がったりするおそれが考えられる。そのため、良好な接着状態を確実なものとするために、製造工程簡略化やコスト低減の観点では不利となる。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、打撃感触や静穏性を損なうことなく、専用部材を要することなくポールに対する回転止め機能及び緩衝機能を有すると共に、カバー部材とフレームとの固着状態を強固にすることができる打撃用電子パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の打撃用電子パッドは、ポール(12)に支持される打撃用電子パッド(PD)であって、貫通穴(47)を有するフレーム(40)と、前記フレームよりも軟質の材料で構成され、前記フレームに固着されるカバー部材(20)とを有し、前記カバー部材は、前記フレームの表側を覆うと共に打撃される部分となる打面部(22)と、前記ポールが挿通されるためのポール挿通穴(31)が形成され且つ前記フレームの前記貫通穴に挿通嵌合される軸部(30)とを有し、前記打面部及び前記軸部が一体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記貫通穴の周りにおける前記フレームの裏面(42ab)に沿って、前記軸部から延設片(32)が連接して形成されている(請求項2)。
【0009】
好ましくは、前記カバー部材のうち、前記貫通穴の周りにおける前記フレームの表面(42aa)に沿い前記軸部に連接した部分(23a)と、前記延設片(32)とに、前記フレームが表側と裏側とから挟まれるように構成される(請求項3)。
【0010】
好ましくは、前記カバー部材には、前記フレームの外縁部(41)を覆って裏側に折り返される折り返し部(24)が、前記打面部及び前記軸部と共に一体に形成されている(請求項4)。
【0011】
好ましくは、前記貫通穴と前記ポール挿通穴とは相似形でない。また、前記軸部の断面外郭形状及び前記貫通穴(47)は、同じ多角形である。
【0012】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によれば、打撃感触や静穏性を損なうことなく、専用部材を要することなくポールに対する回転止め機能及び緩衝機能を有すると共に、カバー部材とフレームとの固着状態を強固にすることができる。
【0014】
請求項2によれば、軸部が貫通穴から抜けにくくして、カバー部材とフレームとの固着状態をより強固にすることができる。
【0015】
請求項3によれば、ポールへの締め付け固定時に、カバー部材の肉部を介してフレームを共締め状態で固定できるので、カバー部材とフレームとを確実に固着状態にすることができる。
【0016】
請求項4によれば、軸部から外縁部にかけての全領域でカバー部材の浮きを防止し、カバー部材とフレームとの固着状態をより強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の形態に係る打撃用電子パッドの構成部品のうちフレームの平面図、裏面図である。
【図2】同打撃用電子パッドの構成部品のうちカバー部材の平面図、裏面図である。
【図3】図2(a)のA−A線に沿う打撃用電子パッドの断面図である。
【図4】図3のB−B線に沿う部分断面図(図(a))、カバー部材の軸部周りの模式的な裏面図(図(b))である。
【図5】軸部及び延設片の変形例の模式的な裏面図である。
【図6】変形例の打撃用電子パッドの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)、(b)は、本発明の一実施の形態の形態に係る打撃用電子パッドの構成部品のうちフレームの平面図、裏面図である。図2(a)、(b)は、同打撃用電子パッドの構成部品のうちカバー部材の平面図、裏面図である。図3は、図2(a)のA−A線に沿う打撃用電子パッドの断面図である。
【0020】
本実施の形態の打撃用電子パッドPD(以下、「電子パッドPD」という)は、一例としてシンバルとして構成されるが、ハイハットシンバルとして構成してもよい。基本構成が同様の電子パッドPDが複数集まって、電子打楽器が構成される。電子パッドPDは、主に、カバー部材20、フレーム40及び裏カバー16から構成される。
【0021】
図3に示すように、この電子パッドPDは、スタンド支柱10に支持される。特に、シンバルとして用いられる場合は、若干斜めに支持される。しかし、いずれにしても電子パッドPDは概ね水平に近い状態で保持されるので、保持状態における上側を表側、下側を裏側と呼称する。スタンド支柱10の上部には支持部11が固定され、支持部11において上方に延びる筒部内にポール12が固定されている。電子パッドPDは、ポール12を介してスタンド支柱10によって支持される。
【0022】
固定状態に関して図3では模式的に示されているが、電子パッドPDのポール挿通穴31(詳細は後述する)にポール12が挿通され、電子パッドPDの上下にクッション材13、14が介装される。ポール12の上端部には雌ねじが形成されている。上方から蝶ネジ15をポール12に螺合し、締め付けることで、蝶ネジ15の羽に相当する部分(図3に表れていない)がクッション材13を押圧する。これにより、クッション材13、14を介して電子パッドPDが蝶ネジ15と支持部11との間に上下から挟持固定される。
【0023】
フレーム40はPP(ポリプロピレン)等の硬質材でなる。カバー部材20はゴム等の弾性材料で一体に形成され、フレーム40よりも軟質である。裏カバー16は樹脂等で構成される。
【0024】
図1(a)に示すように、フレーム40は平面視略円形に構成される。フレーム40の表側において、段差を形成して高い部位となる弓状部43が形成される。弓状部43以外の領域が、カバー部材20によって覆われる領域となる。図1(a)において、弓状部43が奏者からみて後側であり、フレーム40の外縁部41のうち弓状部43でない側が奏者側(前側)となる。フレーム40の後半部であって弓状部43の前方は上方に盛り上がったカップ対応部42となっており、当該カップ対応部42の中央には、平面視で正三角形の貫通穴47が形成されている。
【0025】
フレーム40の表面の前半部であって、貫通穴47より前方で外縁部41の内側は平坦な接着面40aとなっている。フレーム40の前半部における外縁部41の上面には、第1シートセンサ44が接着等によって配設されている。貫通穴47の周囲の前半部において、平坦となっている領域には、第2シートセンサ45が接着等によって配設されている。フレーム40における弓状部43の前側には3つの係合穴46が弓状部43に連接して形成されている。各シートセンサ44、45は、フィルム状センサであるが、圧力変化を感知して独立して検出信号を出力するものであればよく、圧電型、キャパシタ型等、その種類は問わない。
【0026】
図1(b)、図3に示すように、フレーム40の裏面40bであって裏カバー16内には、ピエゾセンサ48が配設されている。ピエゾセンサ48は、圧電素子で構成されるが、振動を感知できる構成であれば、種類は問わない。裏カバー16内にはさらに、信号出力部17が配設される。
【0027】
図2(a)、(b)、図3に示すように、カバー部材20の後半部において、カップ部23が、上方に盛り上がって形成される。カップ部23から、エッジ部に相当する外縁部21までの領域が主打面部22となっている。これら、カップ部23、主打面部22及び外縁部21は、フレーム40を覆い、演奏操作によりスティックで打撃される。外縁部21においては、打撃だけでなく、指によって上下から挟むように摘む操作(ミュート操作)もなされる。
【0028】
カバー部材20の後部には、フレーム40の係合穴46に対応する3つの係合爪26が突設形成される。カバー部材20の前側の外縁部21には、フレーム40の外縁部41を覆って裏側に折り返される折り返し部24が形成されている(図3参照)。カップ部23の下部の前半部には、突条部25が突設形成されている(図2(b)、図3)。
【0029】
図4(a)は、図3のB−B線に沿う部分断面図である。図3、図4(a)に示すように、カップ部23の中心には、上下方向に沿う中空の軸部30が形成され、軸部30の内径が円形のポール挿通穴31となっている。軸部30の断面外郭形状は、貫通穴47と同じ正三角形である。貫通穴47が成す正三角形の各内角の頂部は若干丸く(R形状に)なっており、軸部30の断面外郭形状が成す正三角形の内角の頂部30x、30y、30zも、貫通穴47と同様に丸くなっている。従って、軸部30の断面外郭形状は、貫通穴47に対して嵌合的なサイズ及び形状となっている。
【0030】
図4(b)は、カバー部材20の軸部30周りの模式的な裏面図である。軸部30の上部はカップ部23に連接し、軸部30の下部からは延設片32(32A、32B、32C)が延設形成されている(図3も参照)。延設片32A、32B、32Cを各々みると、軸部30の断面外郭形状が呈する三角形の各辺に相当する辺相当部30A、30B、30Cから、それぞれが連接して延設形成される。これらを全体としてみると、すべての延設片32A、32B、32Cから一体に認識される平面視形状の外郭32outが円形となっている。外郭32outは、軸部30の頂部30x、30y、30zで繋っており、すなわち、延設片32と軸部30とは、外郭位置が一致点Px、Py、Pzで一致している。
【0031】
図3に示すように、フレーム40とカバー部材20との組み付け状態においては、フレーム40のカップ対応部42のうち、延設片32に対して形状が対応している内縁部42aが延設片32に接する。延設片32は、内縁部42aの裏面42abに沿っている。ポール12への電子パッドPDの取り付け状態においては、カップ部23のうち、内縁部42aの表面42aaに沿い軸部30に連接した部分である内縁部対応部23aと、延設片32とに、内縁部42aが表側と裏側とから挟まれる状態となる。内縁部42a、軸部30及び延設片32が、実質的にポール12への取り付け部となる。
【0032】
ところで、フレーム40とカバー部材20との組み付け状態においては、カバー部材20の係合爪26が、それぞれ対応するフレーム40の係合穴46に係合する。また、突条部25は第2シートセンサ45の直上に位置し、カップ部23が打撃されると第2シートセンサ45を押圧する。外縁部21が打撃されると第1シートセンサ44が押圧される。主打面部22を含む打撃領域に対する打撃によるフレーム40の振動は、ピエゾセンサ48で検出される。
【0033】
ピエゾセンサ48は、主に主打面部22への打撃による振動を検出し、打撃の有無及びその強さを示す検出信号を出力する。第2シートセンサ45は、カップ部23に対する打撃を検出し、打撃の有無及びその強さを示す検出信号を出力する。第1シートセンサ44は、外縁部21に対する打撃と上下から押圧するミュート操作とを検出し、打撃及びミュート操作の各有無と、打撃強さとを示す検出信号を出力する。これらの検出信号は、信号出力部17を介して本電子パッドPDの外部に出力される。
【0034】
フレーム40への打撃により、ピエゾセンサ48とシートセンサ44、45のうち複数が同時に検出信号を出力することがあり得るが、どのセンサの信号をどのように楽音制御に用いるかは任意に設定可能である。例えば、単純に、最も大きな値を示す信号を出力したセンサの信号を楽音制御に用いるようにしてもよい。また、第1シートセンサ44については、外縁部21における打撃操作の検出専用に用いるようにしてもよい。あるいは、シートセンサ44、45がピエゾセンサ48と協働して打撃を検出すると共に、打撃位置の判断のためにシートセンサ44、45の検出信号を用いるようにしてもよい。
【0035】
本電子打楽器には、図示はしないが、CPU、記憶装置、各種インターフェイス、楽音発生部が備えられる。一例として、不図示のCPUが次のように楽音制御する。まず、各センサの出力信号から、総合的に、打撃の有無(タイミング)及び打撃位置を判断する。そして打撃位置によって、発音する音色を異ならせる。
【0036】
カバー部材20は、次のようにしてフレーム40に組み付けられる。まず、フレーム40の表側から、3つの延設片32を1つずつ貫通穴47に通す。従来、貯金箱の底に取り付けられるゴム底蓋等にみられるように、延設片を有した蓋部材を貫通穴に装着する構成のものは、貫通穴と延設片とが共に円形であることが多い。延設片の外径は貫通穴より大きいので、延設片を撓ませながら任意の位置から貫通穴に通すことになる。延設片が十分に柔らかければその作業に支障はない。
【0037】
しかし、本実施の形態におけるカバー部材20は、打撃感触や打撃時の静穏性を重視して材質や硬さを決定しているので、上記の貯金箱の蓋部材のように柔らかくはできない。そのため、仮に、上記の貯金箱の蓋部材のような従来の形状(円形)をそのまま本実施の形態のフレーム40とカバー部材20との組み付け部の構成に採用すると、延設片32が硬いため、無理な変形を生じさせないと貫通穴に通しにくく、また、ある部分を通す際に、既に通っている部分が抜けてしまうこともあって、作業は難しくなる。
【0038】
ところが、本実施の形態では、貫通穴47及び軸部30が三角形であって、延設片32A、32B、32Cは、一致点Px、Py、Pzで分かれてそれぞれ独立した延設片となっている(図4(b))。そのため、まず、1つ目の延設片32(例えば、延設片32A)を貫通穴47に通すことは容易である。次の延設片32(例えば、延設片32B)を通す際には、延設片32Bの先端を少し下方に折り曲げ、上方から押し込むか、下方から引っ張る等すれば、既に貫通している延設片32Aが抜けることなく延設片32Bが容易に通る。3つ目の延設片32Cについても同様にして通す。
【0039】
このように、既に挿通されている延設片32の挿通状態を維持しつつ延設片32を1つずつ順に通すことができ、作業性がよい。特に、延設片32全体としての外郭32outが、頂部30x、30y、30zで繋っているので、作業時に延設片32が破れにくい。外郭32outは円形であるので、成形による製造も容易である。3つの延設片32が挿通されると、軸部30が貫通穴47に挿通嵌合された状態となる。
【0040】
次に、フレーム40の3つの係合穴46に、カバー部材20の対応する3つの係合爪26を差し込んで係合させる。次に、フレーム40の接着面40aに両面テープや接着剤を施し、カバー部材20を貼り付ける。なお、第1シートセンサ44、第2シートセンサ45については、カバー部材20が接着面40aに接着されるより前の適当な段階で配設しておく。次に、カバー部材20の外縁部21を前方に引っ張りながら、折り返し部24をフレーム40の外縁部41に嵌めて、折り返し部24が外縁部41の裏側を覆うようにする。これによりカバー部材20がフレーム40に固着される。裏カバー16及びその内装部品のフレーム40への配設時期については、カバー部材20の固着の前後を問わない。
【0041】
カバー部材20がフレーム40に固着され、電子パッドPDが完成すると、その使用時においては、ポール12に固定される。図3に示すように、支持部11にクッション材14を装着してポール挿通穴31にポール12及び支持部11の筒部を挿通し、その上からクッション材13を配置して、蝶ネジ15をポール12に螺合する。
【0042】
カバー部材20の内縁部対応部23aと延設片32とにフレーム40の内縁部42aが挟まれた状態で、これらがクッション材13、14を介して蝶ネジ15と支持部11との間に挟持される。これにより、カバー部材20の肉部を介してフレーム40が共締め状態で固定されるので、カバー部材20とフレーム40とを確実に固着状態にすることができる。
【0043】
また、軸部30は弾性を有するので、蝶ネジ15を締め付けるとポール挿通穴31が内側に縮んで支持部11の筒部を介してポール12に密着する。これにより、ポール12に対する電子パッドPDの回り止め機能が果たされると共に、振動伝達が抑制されて緩衝機能が果たされる。特に、軸部30の断面外郭形状は三角形であって、ポール12の断面形状とは相似形でないので、軸部30の弾性変形によるポール挿通穴31の縮み方は円周方向において均一でなく、ポール12を3箇所において強く締め付ける箇所が生じる。これは、ポール12の締め付け効果を高めて回転止め機能を向上させることに寄与する。この観点に限れば、軸部30の断面外郭形状とポール12の断面形状とは、相似形でなければよく、三角形と円形という組み合わせに限られない。
【0044】
本実施の形態によれば、カバー部材20が、ポール挿通穴31が形成された軸部30、カップ部23、主打面部22及び外縁部21を含んで、フレーム40よりも軟質の弾性材料で一体に形成され、軸部30が貫通穴47に挿通嵌合された状態でポール12に固定される。これにより、カバー部材20の適当な弾性によって打撃感触や静穏性が確保されると共に、回り止め部材や、ポール挿通穴31の外周に接する箇所の緩衝部材を専用に設ける必要がなく、ポール12に対する回転止め機能及び緩衝機能を確保することができる。さらに、接着面40aだけでなく、弾性のある軸部30が貫通穴47に嵌合されるので、カバー部材20とフレーム40との固着状態を強固にすることができる。また、カバー部材20が一体に形成されるので、構成が簡単で製造も容易である。
【0045】
しかも、軸部30と貫通穴47とは円ではなく同じ三角形で嵌合的であるので、カバー部材20とフレーム40との回転方向及び水平方向の位置決めを精度良く行える。さらに、延設片32A、32B、32Cが、内縁部42aの裏面42abに沿って、軸部30が呈する三角形の辺相当部30A、30B、30Cから連接して延設形成された。これらにより、カバー部材20のフレーム40への取り付け作業性が向上する。特に、延設片32全体としての外郭32outが、頂部30x、30y、30zで繋がっているので、作業時に延設片32が破れにくく、作業性が向上する。それだけでなく、仮に、接着面40aにおいて接着状態に多少のバラツキがあったとしても、カバー部材20がフレーム40から剥離したり浮き上がったりするおそれが小さくなる。この効果は、フレーム40の外縁部41を包むように設けられる折り返し部24との協働によってさらに助長される。すなわち、フレーム40の外縁部41を包むように設けられる折り返し部24が、軸部30、カップ部23、主打面部22及び外縁部21と共に一体に形成されているので、軸部30から外縁部21にかけての全領域でカバー部材20の浮きを抑制でき、カバー部材20とフレーム40との固着状態をより強固にすることができる。製造工程簡略化やコスト低減の観点でも有利となる。
【0046】
また、軸部30の下部からは、内縁部42aの裏面42abに沿って延設片32が連接して形成されたので、軸部30が貫通穴47から抜けにくく、カバー部材20とフレーム40との固着状態をより強固にすることができる。
【0047】
また、軸部30の断面外郭形状及び貫通穴47は、同じ三角形であって嵌合しているので、カバー部材20のフレーム40に対する回転方向のずれを防止して固着状態をより強固にすることができる。
【0048】
なお、打撃感触や静穏性を損なうことなく、専用部材を要することなくポール12に対する回転止め機能及び緩衝機能を有することに限って言えば、軸部30及び貫通穴47が三角形であることや、延設片32を設けることは必須でない。
【0049】
また、カバー部材20のフレーム40への取り付け作業性を向上させることに限って言えば、軸部30及び貫通穴47の形状は、三角形に限られず、また、延設片32の外郭形状も円形に限られない。図5にこれらの変形例を示す。
【0050】
図5(a)〜(e)は、軸部30及び延設片32の変形例の模式的な裏面図である。いずれの変形例においても、貫通穴47の形状は、軸部30と同じ多角形で嵌合的な形状であるとする。延設片32を貫通穴47に通す回数を最少として作業を容易にする観点からは、軸部30の断面外郭形状は三角形が理想であるが、それ以外の多角形であってもよい。
【0051】
例えば、図5(a)に示すように、軸部30の断面外郭形状を四角形とし、これの4つの内角の頂部を通るように、延設片32の平面視形状の外郭32outを円形に設計してもよい。なお、図5(a)には模式図であるので表現されていないが、軸部30の四角形の内角の頂部は、図4(b)の例と同様に丸くするのがよく、他の変形例においても同様である。
【0052】
また、軸部30の断面外郭形状を五角形とし、これの内角の頂部を通るように延設片32の平面視形状の外郭32outを円形に設計してもよい(図5(b)参照)。あるいは、軸部30の断面外郭形状を菱形とし、これの内角の頂部を通るように延設片32の平面視形状の外郭32outを楕円形に設計してもよい(図5(c)参照)。
【0053】
また、外郭32outは円形に限るものではなく、延設片32A、32B、32Cが、軸部30が呈する多角形の辺相当部30A、30B、30Cから連接して延設形成されていればよい。例えば、図5(d)に示すように、三角形の辺相当部30A、30B、30Cから延設片32A、32B、32Cを延設形成する。そして、延設片32A、32B、32Cの全体から認識される外郭32outは、頂部30x、30y、30zで繋がっていて、延設片32と軸部30とは、外郭位置が一致点Px、Py、Pzで一致している。
【0054】
また、作業時に延設片32が破れにくいという効果を求めない場合は、図5(e)に示すように、外郭32outの形状を、頂部30x、30y、30zで繋がらない形状とすることも可能である。逆に、作業時に延設片32が破れにくいという効果を得る観点に限れば、少なくとも、隣接する延設片の外郭同士が繋がっている部分の平面視における外郭形状が、円弧であることが望ましい。図4(b)や図5(a)〜(c)の例はこれを満たしている。
【0055】
なお、打撃感触や静穏性を損なうことなく、専用部材を要することなくポール12に対する回転止め機能及び緩衝機能を有することに限って言えば、図6に変形例を示すように、軸部30及び貫通穴47が多角形でなく円形であってもよい。
【0056】
図6は、変形例の打撃用電子パッドの部分断面図である。この変形例では、ハイハットシンバルを例にとっている。貫通穴47は円形である。また、軸部30は断面外郭形状が円形で、くびれ部分30aも断面外郭形状が円形である。くびれ部分30aが貫通穴47に嵌合されている。ただし、図3で示した構成に比し、軸部30の上下方向の長さが長くなっていて、延設片32に相当する部分が上下に厚くなっている。従って、ポール挿通穴31が、長い領域で、支持部11の筒部を介してポール12に嵌め合わせ状態となっている。これらにより、電子パッドPDがポール12に対して回りにくくなっていると共に、フレーム40にかかる打撃による負荷が低減され、耐久性が維持される。
【0057】
なお、本電子パッドPDをハイハットシンバルとして構成するときは、ペダル操作される不図示のハイハットコントローラを併用することが考えられる。その場合、踏み込み操作を検出して検出信号によって打撃音を制御するようにすれば、電子パッドPD自体は上下動する構成とする必要はない。
【符号の説明】
【0058】
PD 電子パッド(打撃用電子パッド)、 12 ポール、 20 カバー部材、 22 主打面部(打面部)、 23a 内縁部対応部、 24 折り返し部、 30 軸部、 31 ポール挿通穴、 32 延設片、 40 フレーム、 41 外縁部、 42aa 表面、 42ab 裏面、 47 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポールに支持される打撃用電子パッドであって、
貫通穴を有するフレームと、
前記フレームよりも軟質の材料で構成され、前記フレームに固着されるカバー部材とを有し、
前記カバー部材は、前記フレームの表側を覆うと共に打撃される部分となる打面部と、前記ポールが挿通されるためのポール挿通穴が形成され且つ前記フレームの前記貫通穴に挿通嵌合される軸部とを有し、前記打面部及び前記軸部が一体に形成されていることを特徴とする打撃用電子パッド。
【請求項2】
前記貫通穴の周りにおける前記フレームの裏面に沿って、前記軸部から延設片が連接して形成されていることを特徴とする請求項1記載の打撃用電子パッド。
【請求項3】
前記カバー部材のうち、前記貫通穴の周りにおける前記フレームの表面に沿い前記軸部に連接した部分と、前記延設片とに、前記フレームが表側と裏側とから挟まれるように構成されたことを特徴とする請求項2記載の打撃用電子パッド。
【請求項4】
前記カバー部材には、前記フレームの外縁部を覆って裏側に折り返される折り返し部が、前記打面部及び前記軸部と共に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の打撃用電子パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−197525(P2011−197525A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65984(P2010−65984)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】