説明

打楽器

【課題】複合的な振動から楽音発生用の信号を得て、多彩な楽音を発生させる。
【解決手段】第1の打片100Aにおいて、本体10の口腔13、内側中心穴14、内側開口穴16A〜16D、中間穴15、センサホルダ30の接続穴31、カバー20の外側中心穴21により、本体10の内側と外側とに貫通する連通路が形成される。圧電振動板40はセンサホルダ30の突部32A〜32Dに固定支持され、第1、第2の連通路R1、R2に介在する。両打片の対向面同士を衝突させると、打片100Aの機械振動が、本体10、突部を通じて圧電振動板40に伝わるのと並行して、口腔13内の空気振動が第2の連通路R2を通じて圧電振動板40に到達する。圧電振動板40のピエゾ素子42がこれら機械及び空気の複合的な振動を検出して楽音発生用の電気信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの打片を互い衝突させて演奏する打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの打片を互い衝突させ、打ち鳴らして演奏する打楽器が知られている。そのうち、打撃による振動を検出し、楽音発生用の信号を得るものも知られている。例えば、下記特許文献1の打楽器は、2つの可動体(打片)を有するカスタネットとして構成され、打撃(衝突)時の機械的振動をピックアップ、あるいはオン、オフするスイッチで検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−178695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の打楽器では、検出される振動は、あくまで可動体に生じる機械振動のみであるので、得られる信号に基づき発音される楽音は画一的である。また、奏法に多少の変化を加えたとしても、音色の変化は乏しいものである。従って、カスタネットのような演奏操作をする打楽器において、多彩な楽音を発生させる観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、複合的な振動から楽音発生用の信号を得て、多彩な楽音を発生させることができる打楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の打楽器は、第1の打片(100A)及び第2の打片(100B)の互いの対向部(11、111)を衝突させて演奏する打楽器であって、前記第1の打片の内部に形成され、前記第1の打片の前記対向部に開口する内側開口部(14、16)から前記対向部の反対側に開口する外側開口部(21)まで連通した連通路(R1、R2)と、前記第1の打片の内部に固定的に設けられた支持部(32)と、前記支持部に支持された振動板(40)と、前記振動板に設けられ、振動に応じた楽音発生用の電気信号を出力する振動センサ(42)とを有し、前記振動板(40)は、その少なくとも一部分が前記連通路の途中に介在するように配設され、前記第1の打片及び前記第2の打片の衝突による前記第1の打片の機械振動が前記支持部を介して前記振動板に伝達されると共に、前記連通路内の空気振動が前記振動板に伝達されるように構成されたことを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記内側開口部として、第1の内側開口部(14)と第2の内側開口部(16)の少なくとも2つが存在すると共に、前記連通路は、前記第1の内側開口部に繋がる第1の連通部(14、31、R1)と前記第2の内側開口部に繋がる第2の連通部(16、R2)とを有し、前記振動板の縁部(41a)を含まない領域(41b)が前記第1の連通部の側に介在すると共に、前記振動板の縁部(41a)を含む領域が前記第2の連通部の側に介在する(請求項2)。好ましくは、前記支持部(32)は、前記第1の連通部と前記第2の連通部との間に位置し、前記振動板は、前記支持部を挟んで前記第1の連通部と前記第2の連通部とに介在する(請求項3)。好ましくは、前記支持部(32A〜32D)は複数設けられ、前記振動板は円形に構成され、その半径方向における複数の中間位置にて前記複数の支持部に支持される(請求項4)。
【0008】
好ましくは、前記支持部は突部(32)でなり、前記振動板は、前記突部の先端(32a)に支持される(請求項5)。
【0009】
好ましくは、前記第1の打片の前記対向部(11)には凹部(13)が形成され、前記内側開口部(16)は前記凹部に開口している(請求項6)。好ましくは、前記第2の打片の前記対向部(111)には、前記第1の打片の前記凹部に対向する対向凹部(113)が形成されている(請求項7)。
【0010】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1によれば、複合的な振動から楽音発生用の信号を得て、多彩な楽音を発生させることができる。
【0012】
請求項2によれば、各連通部で異なる空気振動を生じさせることで、楽音を一層多彩なものにすることができる。
【0013】
請求項3、4によれば、1枚の振動板で2つ連通部の振動を検出でき、構成が簡単である。
【0014】
請求項5によれば、空気振動の検出感度を高めることができる。
【0015】
請求項6によれば、連通路を含む空間の体積を凹部の形状によって自由に設定することができる。
【0016】
請求項7によれば、衝突時の凹部同士の位置関係によって空気振動を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る打楽器のうち1つの打片の内面図(図(a))、図1(a)のA−A線に沿う断面図(図(b))である。
【図2】本打楽器を構成する一対の打片の側面図(図(a))、センサホルダの斜視図(図(b))、変形例を示す図(図(c))である。
【図3】変形例の打片の側面図(図(a)、(b))、内面図((c)、(d))である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係る打楽器のうち1つの打片の内面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A線に沿う断面図である。図2(a)は、本打楽器を構成する一対の打片の側面図である。
【0020】
図2(a)に示すように、本打楽器は、第1の打片100Aと第2の打片100Bとからなる。第1の打片100Aと第2の打片100Bとをそれぞれ片手に持ち、両打片100同士を衝突させることで演奏される。両打片100は分離しているが、一部を紐やゴム等で連結し、カスタネットのように打ち鳴らすようにしてもよい。
【0021】
本打楽器は、カスタネットと同様に打撃によりメカ音を発生させることができる。しかし、それだけでなく、第1の打片100Aにおける振動を検出して楽音発生用の電気信号を出力し、その出力を、不図示の楽音発生装置に供給して楽音を電子的に発生させることもできる。楽音発生装置と共に専ら電子楽器として扱ってもよい。
【0022】
第1の打片100Aと第2の打片100Bとは外郭形状が同じであるが、内部構成は異なる。両打片100の、演奏時に互いに対向する側の面を対向面と呼称する。典型的な打撃演奏は、第1の打片100Aの対向面11と第2の打片100Bの対向面111とを平行に当接させるように衝突させる。しかし、両者を当接させればよく、一方が傾いていてもよいし、対向面11に平行な方向の位置関係をずらしてもよい。
【0023】
まず、楽音発生用の信号を出力する側の打片である第1の打片100Aについて、その構成を説明する。図1(b)に示すように、第1の打片100Aは、本体10及びカバー20で筐体が構成され、該筐体の内部にセンサホルダ30及び圧電振動板40が配設される。本体10及びカバー20は木製乃至樹脂製であり、センサホルダ30は樹脂製であるが、これらに限るものではない。
【0024】
図1(a)、(b)に示すように、本体10は、対向面11が側面視で平坦で、対向面11の反対側の面である外側面12は、カバー20の部分を除いて凸曲面となっている。本体10は、対向面11側からみて四角形の角柱形状に構成され、対向面11には口腔13が形成されている。口腔13は、対向面11側からみてドーナツ状で、A−A線に沿う縦断面においては、2箇所に生じる凹曲面となっている。対向面11に平行な口腔13の水平断面の面積は、外側面12の側に近いほど小さくなっている。
【0025】
本体10には、中央の肉部17を残して外側面12の方向から3段階に座繰りがなされていて、外側面12から最も深い座繰り面が、外側面12の側の肉部17の端面である座面17aとなっている。座面17aにセンサホルダ30が配設される。また、座繰りによる外側面12から最も浅い穴がカバー配設穴18であり、カバー配設穴18にカバー20が配設される。2段階目の座繰りにより中間穴15が形成される。
【0026】
肉部17の中心には、内側中心穴14が形成される。内側中心穴14、中間穴15及びカバー配設穴18は、ドーナツ状の口腔13と同心である。また、内側中心穴14よりも半径方向外側において、中間穴15と口腔13とに連通する4つの内側開口穴16(16A〜16D)が形成されている。従って、各内側開口穴16は、口腔13に開口することで、間接的に対向面11の側に開口している。
【0027】
カバー20は、カバー配設穴18内において、座繰り面である座面18aに配設固定される。固定は接着等でなされるが、方法は問わない。内側中心穴14の軸方向視によるカバー20の外郭形状は、カバー配設穴18に嵌合的な円形であるが、配設後のカバー20の外側面12の側の面である外側面20aは、外側面12と一体に凸曲面を構成する。従って、外側面12及び外側面20aで、対向面11の反対側に第1の打片100Aの外側面が構成される。
【0028】
カバー20には、配設状態において内側中心穴14と同心の外側中心穴21が貫通して形成される。従って、外側中心穴21は、中間穴15に繋がると共に、外側面20aに開口している。また、カバー20の外縁の一部は欠切され、当該欠切部分がカバー配設穴18との間に線材挿通穴22を形成している。
【0029】
図2(b)は、センサホルダ30の斜視図である。センサホルダ30は、接続穴31を有してドーナツ状に形成された基部から4つの突部32(32A〜32D)が突設されて一体に形成される。突部32は、基部の外縁に沿って、円周方向の4箇所に等間隔に設けられる(図1(a))。センサホルダ30は、その外周面と突部32の反対側の端面とが、本体10の座繰りにより形成される内周面と座面17aとに対して、接着等で配設固定される。ただし、センサホルダ30は、本体10に固定されればよく、その配設方法は問わない。配設状態において、各突部32は、外側面12の方向に突出している(図1(b))。また、センサホルダ30の接続穴31は、内側中心穴14と同心となる。
【0030】
このように、本体10の口腔13、内側中心穴14、内側開口穴16及び中間穴15、センサホルダ30の接続穴31、並びにカバー20の外側中心穴21により、本体10の内側(図1(b)の左側;対向面11の側)と外側(図1(b)の右側;外側面12乃至外側面20aの側)とに貫通する連通路が形成されることになる。
【0031】
まず、圧電振動板40を除いて考えると、図1(b)に示すように、いずれも同心の内側中心穴14、接続穴31、中間穴15、外側中心穴21により、第1の連通路R1が構成される。また、口腔13、4つの内側開口穴16、中間穴15、外側中心穴21により、第2の連通路R2が構成される。中間穴15及び外側中心穴21は、第1の連通路R1の一部と第2の連通路R2の一部を兼ねる。第1の連通路R1と第2の連通路R2とは突部32で分岐している。
【0032】
ところで、圧電振動板40は、センサホルダ30の4つの突部32の先端32aに接着等で固定支持され、内側中心穴14の軸方向に直交するように水平に配設される。圧電振動板40は、ピエゾ素子42が黄銅板41に貼られてなり、アース線及び信号線(いずれも図示せず)が半田付けされている。ピエゾ素子42は、振動を検出して電気信号を出力し、その出力信号が信号線によって取り出される。この信号線は、線材挿通穴22(図1(b))を通って外部に導出される。
【0033】
ピエゾ素子42及び黄銅板41はいずれも円形で同心であり、ピエゾ素子42よりも黄銅板41の方が、外径が大きい。ピエゾ素子42の外径はセンサホルダ30の外径とほぼ同じであり、黄銅板41の外径は、センサホルダ30の外径より大きく中間穴15の内径より小さい。圧電振動板40の外縁部でもある黄銅板41の外縁部41aが、中間穴15と内側開口穴16との連通する部分において内側開口穴16の側にせり出している。4つの内側開口穴16のいずれにおいても同様の態様となっている。
【0034】
すなわち、圧電振動板40の半径方向における中心領域41b(図1(b))が第1の連通路R1の側に介在する。中心領域41bは外縁部41aを含まない領域でもある。一方、圧電振動板40のうち外縁部41aを含む領域が第2の連通路R2の側に介在している。特に、圧電振動板40は、センサホルダ30の突部32の先端32aを介してのみ支持されるので、それ以外の部分は浮揚状態となっており、空気圧変化を感受しやすい構造となっている。
【0035】
一方、図2(a)に示すように、第2の打片100Bの対向面111には、第1の打片100Aの口腔13に対向する対向口腔113が形成されている。対向口腔113は、口腔13と同じ形状である。しかし、第2の打片100Bに設けられる凹部はこれ以外になく、内蔵、固定される別部品もない中実部材である。従って、カバー20、センサホルダ30、圧電振動板40も存在しない。
【0036】
かかる構成において、第1の打片100Aと第2の打片100Bとを打ち鳴らして演奏する。典型的な奏法として、両打片100の側面をほぼ面一にして、対向面11と対向面111とを、平行に衝突させる。すると、まず、両者の衝突により、第1の打片100Aが機械的に振動する。その機械振動は、本体10の肉部17、センサホルダ30の突部32を通じて圧電振動板40に伝わる。圧電振動板40では、圧電効果により、振動に応じた電気信号が出力される。
【0037】
それと並行して、第1の打片100Aの内部における空気的な振動も圧電振動板40に伝わる。すなわち、両打片100の口腔13と対向口腔113とが対向して合わさると、口腔13内の空気が瞬間的に圧縮されるように作用し、第2の連通路R2における内側開口穴16を通じて圧電振動板40の外縁部41a付近に空気振動が到達する。また同時に、内側中心穴14の開口においても、口腔13ほど程度は大きくないものの、空気振動が生じてそれが第1の連通路R1における内側中心穴14、接続穴31を通じて圧電振動板40の中心領域41bに到達する。
【0038】
圧電振動板40は、半径方向中間位置にてセンサホルダ30の突部32の先端32aに浮設されており、受ける空気振動によって曲げ変形を起こし、圧電効果により電気信号を出力する。特に、第1の連通路R1から受ける空気振動と第2の連通路R2から受ける空気振動とによって複合的な曲げ変形が生じるため、両者の空気振動の状態の相対的な関係(大きさやタイミング)によって、出力される信号は多彩に変化する。特に、圧電振動板40において、外縁部41aを含む部分は中心領域41bとは異なり片持ち状態であり、中心領域41bとは振動の態様が異なる。
【0039】
従って、例えば、口腔13と対向口腔113との位置を適当にずらして打撃すると、圧縮される空気の体積が変わり、第2の連通路R2における共鳴状態が変化して音色変化がもたらされる。空気振動による音色変化は、打撃によるメカ音色や機械振動による音色の変化とは異なる独特なものでもある。しかも、上記した機械振動と空気振動の複合的な振動から、楽音発生用の1系統の出力信号が得られるので、従来にはない音色や多彩な音色変化を実現することができる。さらに、第2の連通路R2は4箇所にあり、それぞれにおける空気振動は同じになるとは限らない。この点でも、多彩な音色変化に繋がる。
【0040】
本打楽器は、第1の打片100Aと第2の打片100Bとが分離しているため、打撃時の両者の位置関係や姿勢を色々変化させることができる。例えば、ひねる、擦る、エッジを当てる等により、生じる機械振動が変化するだけでなく、口腔13や内側中心穴14を通じて伝わる空気振動も大きく変化する。従って、奏法による音色変化の多彩さは、従来の電子カスタネットとは比べものにならないほど豊かである。
【0041】
本実施の形態によれば、圧電振動板40は、本体10の内側と外側とに貫通する連通路の途中に介在するように配設され、機械振動が突部32を通じて圧電振動板40に伝達されると共に、連通路内の空気振動が圧電振動板40に伝達されるので、複合的な振動から楽音発生用の信号を得て、多彩な楽音を発生させることができる。
【0042】
しかも、圧電振動板40のうち、中心領域41bと外縁部41aを含む領域とは、それぞれ、第1の連通路R1の側、第2の連通路R2の側に介在するので、それぞれの連通路で異なる空気振動を生じさせることで、楽音を一層多彩なものにすることができる。
【0043】
また、突部32は、両連通路Rの間に位置し、圧電振動板40は、突部32を挟んで両連通路Rに介在するので、1枚の圧電振動板40にて複数の連通路の振動を検出でき、構成が簡単である。
【0044】
また、圧電振動板40は、センサホルダ30の突部32の先端32aに浮揚保持されるので、空気振動の検出感度を高めることができる。
【0045】
また、口腔13は凹状に形成されるので、第2の連通路R2を含む本体10の内部空間の体積を、口腔13の凹形状によって自由に設定することができ、音色設定の一手段となる。また、このドーナツ状の口腔13は、従来のカスタネットに形成される凹部を踏襲したものでもあるので、打撃によるメカ音を従来のカスタネットのような切れのある音に近づけることができる。
【0046】
また、第2の打片100Bにも、口腔13に対向する対向口腔113が形成されたので、衝突時の口腔13、対向口腔113の位置関係によって空気振動を変化させることができ、奏法に広がりを与える。しかも、口腔13の開口が内側開口穴16の内径に比し大きいので、口腔13、対向口腔113の位置をずらして音色を微妙に変えるような演奏操作が行いやすい。
【0047】
ところで、本実施の形態では、第1の連通路R1と第2の連通路R2とは、中間穴15及び外側中心穴21の部分が共通であったが、これに限られない。すなわち、中間穴15及び外側中心穴21に相当する穴を両連通路R毎に別々に設けて独立させると共に、両連通路Rに圧電振動板40の一部分をそれぞれ介在させる構成であってもよい。また、内側開口穴16乃至第2の連通路R2の数は4個に限られず、1個でもよい。さらに、位置関係においても、第1の連通路R1が本体10の中心で第2の連通路R2が中心から離間した位置にあることは必須でない。
【0048】
なお、圧電振動板40は、センサホルダ30を介して間接的に本体10に配設されたが、本体10の内部空間に固定的に配設されればよく、本体10に直接固定される構成でもよい。また、製造容易化のためカバー20を別体で設けて固定したが、別体とすることは必須でなく、カバー20を廃止し、外側中心穴21に相当する開口を本体10に形成してもよい。
【0049】
なお、第2の打片100Bは第1の打片100Aと全く同じ構成としてもよい。その場合、第2の打片100Bに配設された圧電振動板40で検出される信号は、楽音発生に用いないようにしてもよいし、第1の打片100Aの圧電振動板40で検出される信号との両方を用いて楽音を制御するようにしてもよい。あるいは、第2の打片100Bのうち、本体10の構成のみを第1の打片100Aと同一として、部品を共通化することも考えられる。
【0050】
なお、本体10は、その内側と外側とに貫通する連通路を有すればよく、口腔13は必須でない。口腔13を廃止し、内側開口穴16を対向面11に直接開口させてもよい。
【0051】
ところで、異なる複数の連通路に圧電振動板40を介在させる上で、圧電振動板40のうち外縁部41aを含む領域が介在する第2の連通路R2は4箇所であったが、1箇所以上であればよい。また、圧電振動板40は円形であったが、形状もそれに限定されない。
【0052】
例えば、図2(c)に変形例を示すように、圧電振動板40を長方形等の矩形に構成ししてもよい。この変形例では、内側開口穴16乃至第2の連通路R2の数は2つとしている。中心領域41bが介在する第1の連通路R1は1つである。センサホルダ30の突部32は2つとし、これら2つの突部32が両連通路Rの間に位置する。なお、内側中心穴14乃至第1の連通路R1は複数であってもよい。
【0053】
いずれの形状を採用するにしても、圧電振動板40の曲げ変形を、側面視で振幅が最小となる「節」と振幅が最大となる「腹」を有する定常波と見なしたとき、「節」の部分が突部32で支持されるようにするのが、感度向上の観点で好ましい。
【0054】
なお、本実施の形態では、振動検出用の振動板として圧電振動板40を採用したが、振動を検出してそれに応じた電気信号を出力するよう構成された振動板であればよく、振動センサとしてピエゾ素子を用いた振動板に限られない。例えば、振動センサとしてホール素子等を用いたものであってもよいし、マイクロフォンを用いたものであってもよい。
【0055】
また、振動板に採用する振動センサの構成によっては、機械振動に対する感度が高いもの、逆に空気振動に対する感度が高いものがあり得る。上述した例のように両打片100の口腔13と対向口腔113とが対向して合わさるときの口腔13内の空気の瞬間的な圧縮の度合いが高過ぎて、空気振動の感度が高い振動センサにとっては不適切となる場合も想定される。そのような場合は、図3に変形例を示すように、空気の圧縮傾向を緩和するような形状的な工夫を施すのが望ましい。
【0056】
図3(a)、(b)は、変形例の第1の打片100Aの側面図(一部断面図)、図3(c)、(d)は、変形例の第1の打片100Aの内面図である。これらの内容は第2の打片100Bにも適用される。
【0057】
まず、一例としては、図3(a)に示すように、本体10の内面側(対向面11の側)において、口腔13に連接して面取り51を全周(四角形の4辺全て)に施す。これにより、口腔13は、側面の側において外気に連通する。そのため、口腔13が第2の打片100Bの対向口腔113と正対して正面から合わさった場合でも、側方に隙間ができ、密閉状態が低下するので、強い圧縮状態にならないで済む。
【0058】
あるいは、図3(b)に示すように、面取り51に代えて、対向面11よりも1段低い段差部52を形成してもよい。これによっても図3(a)の例と同様の効果を奏する。なお、この場合において、段差部52を全周に施すのではなく、図3(c)に示すように、本体10が呈する四角形の四隅に対向面11を残すように段差部52を設けてもよい。このようにすれば、両打片100を正対させて衝突させたとき、四隅においても対向面11と対向面111とが当接するので、両打片100の姿勢が安定する。
【0059】
あるいは、図3(d)に示すように、本体10が呈する四角形の4つの辺に、口腔13に連接して溝部53を形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 本体、 11 対向面(対向部)、 13 口腔(凹部)、 14 内側中心穴(第1の内側開口部、第1の連通部)、 16 内側開口穴(第2の内側開口部、第2の連通部)、 21 外側中心穴(外側開口部)、 31 接続穴(第1の連通部)、 32 突部(支持部)、 32a 先端、 40 圧電振動板、 41a 外縁部、 41b 中心領域、 42 ピエゾ素子(振動センサ)、 100A 第1の打片、 100B 第2の打片、 111 対向面(対向部)、 113 対向口腔(対向凹部)、 R1 第1の連通路(連通路、第1の連通部)、 R2 第2の連通路(連通路、第2の連通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の打片及び第2の打片の互いの対向部を衝突させて演奏する打楽器であって、
前記第1の打片の内部に形成され、前記第1の打片の前記対向部に開口する内側開口部から前記対向部の反対側に開口する外側開口部まで連通した連通路と、
前記第1の打片の内部に固定的に設けられた支持部と、
前記支持部に支持された振動板と、
前記振動板に設けられ、振動に応じた楽音発生用の電気信号を出力する振動センサとを有し、
前記振動板は、その少なくとも一部分が前記連通路の途中に介在するように配設され、前記第1の打片及び前記第2の打片の衝突による前記第1の打片の機械振動が前記支持部を介して前記振動板に伝達されると共に、前記連通路内の空気振動が前記振動板に伝達されるように構成されたことを特徴とする打楽器。
【請求項2】
前記内側開口部として、第1の内側開口部と第2の内側開口部の少なくとも2つが存在すると共に、前記連通路は、前記第1の内側開口部に繋がる第1の連通部と前記第2の内側開口部に繋がる第2の連通部とを有し、前記振動板の縁部を含まない領域が前記第1の連通部の側に介在すると共に、前記振動板の縁部を含む領域が前記第2の連通部の側に介在することを特徴とする請求項1記載の打楽器。
【請求項3】
前記支持部は、前記第1の連通部と前記第2の連通部との間に位置し、前記振動板は、前記支持部を挟んで前記第1の連通部と前記第2の連通部とに介在することを特徴とする請求項2記載の打楽器。
【請求項4】
前記支持部は複数設けられ、前記振動板は円形に構成され、その半径方向における複数の中間位置にて前記複数の支持部に支持されることを特徴とする請求項3記載の打楽器。
【請求項5】
前記支持部は突部でなり、前記振動板は、前記突部の先端に支持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の打楽器。
【請求項6】
前記第1の打片の前記対向部には凹部が形成され、前記内側開口部は前記凹部に開口していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の打楽器。
【請求項7】
前記第2の打片の前記対向部には、前記第1の打片の前記凹部に対向する対向凹部が形成されていることを特徴とする請求項6記載の打楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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