説明

打錠用糖アルコール粉末組成物

【課題】造粒等の処理を必要とせず、低圧による直接打錠が可能で、且つ錠剤に配合される滑沢剤の量を低減することが可能な、新規な打錠用糖アルコール粉末組成物、および該粉末組成物を打錠して得られた錠剤または錠菓およびその製造方法を提供する。
【解決手段】結晶質成分と非晶質成分とからなる打錠用糖アルコール粉末組成物であって、非晶質ソルビトールを2〜12重量%含有することを特徴とする打錠用糖アルコール粉末組成物を提供する。本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物は、錠剤または錠菓の賦形剤として用いられる。本発明はまた、本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物、滑沢剤および、食品材料または医薬活性成分を混合し、該混合物を打錠することを特徴とする錠剤または錠菓の製造方法、および該方法により得られる錠剤または錠菓を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接打錠に適した打錠用糖アルコール粉末組成物に関する。本発明はさらに、該粉末組成物を打錠して得られる錠剤または錠菓、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から錠剤や錠菓などの打錠成形品にはソルビトールやマンニトール等の糖アルコール粉末が使用されている。
【0003】
これら糖アルコール粉末は結着力が弱いため直接打錠して成形品を製造しても容易に崩壊するという問題があった。そこで特許文献1に記載されるように、糖アルコール粉末を使用して錠剤や錠菓を製造する場合、糖アルコール粉末を一旦造粒して所定粒子径の集合体を形成し、この集合体を打錠する顆粒圧縮法と呼ばれる方法により製造されている。しかしながら、糖アルコール粉末を一旦造粒した後打錠に供する方法は、製造工程が複雑になると共に製造コストが上昇するという問題を有していた。
【0004】
また、錠剤や錠菓を製造するには一定以上の圧力で打錠する必要があるが、打錠圧が高圧になると打錠機本体や金型に大きな負担が掛かるため、錠剤硬度や摩損度に影響を及ぼさない範囲で、可能な限り低圧で打錠される傾向にある。
【0005】
しかし、従来の糖アルコール粉末において低圧で打錠を行うと、錠剤の一部あるいは全体が欠けて杵へ付着するピッキングやスティッキングといった打錠障害が発生しやすいという問題点を有していた。
【0006】
そのため造粒工程を必要とせず、直接打錠による成形が可能であり、低圧で打錠した場合でも十分な硬度を有する錠剤が製造可能な糖アルコール粉末が望まれていた。そこで特許文献2に記載されるように、マンニトール及び/または乳糖を含有する製剤に、嵩比重60g/100ml未満のソルビトール粉粒体を配合したことを特徴とする固形製剤組成物が提案されている。しかし、マンニトールは味質が必ずしも良いとはいえず、使用できる食品にも制限があるという問題点があった。また特許文献2で使用するソルビトールは直接打錠用に特殊加工されたものを用いる必要があるためコスト高となるものであった。
【0007】
一方、錠剤や錠菓の製造には賦形剤としての糖アルコール粉末以外の成分として滑沢剤、結合剤、崩壊剤等がその目的に応じて使用されている。その中でも滑沢剤は打錠機の杵に錠剤が付着することを防止する目的で添加されるものであり、杵に付着し易い糖アルコール粉末を用いた打錠においては必要不可欠なものとなっている。しかしながら、多量の滑沢剤の添加は製造コストの上昇、錠剤の硬度低下の原因となるほか、錠菓においては味質への影響が大きいため、滑沢剤の添加量を低減させることが可能な打錠用糖アルコール粉末組成物が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−10979号
【特許文献2】特開平5−310558号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、錠剤もしくは錠菓を製造するための賦形剤として用いられる粉末組成物であって、造粒等の前処理をせず、比較的少量の滑沢剤と混合した上で比較的低圧で直接打錠した場合も十分な硬度の錠剤もしくは錠菓を提供することができる、打錠用糖アルコール粉末組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、該粉末組成物を打錠して得られる錠剤または錠菓、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究の結果、糖アルコール粉末へ非晶質ソルビトールを一定の割合で配合すると、打錠に際しての圧力によって非晶質ソルビトールが結合剤として働き、これによって粒子同士が強く結合して錠剤の硬度が高められることを見いだし、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、結晶質成分と非晶質成分とからなる打錠用糖アルコール粉末組成物であって、非晶質ソルビトールを2〜12重量%含有することを特徴とする打錠用糖アルコール粉末組成物に関する。
【0011】
発明はまた、前記打錠用糖アルコール粉末組成物、滑沢剤、および食品材料または医薬活性成分を混合し、該混合物を打錠することを特徴とする錠剤または錠菓の製造方法に関する。さらに本発明は、前記製造方法により製造される錠剤または錠菓に関する。
【0012】
本明細書および請求の範囲において、「結晶質成分」とは、マルチトール等の結晶性糖アルコールが結晶化したものである。また「非晶質成分」とは、非結晶性の成分、ならびにマルチトールおよびソルビトール等の結晶性成分の一部が非晶質状態であるものをいう。
【0013】
また本明細書および請求の範囲において、「直接打錠」とは単一の粉末、あるいは複数種の粉末材料の混合物を予め造粒することなく打錠装置の金型へ導入し、圧縮打錠して錠剤を得る工程をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、錠剤の賦形剤として用い得る糖アルコール粉末組成物が得られる。本発明の糖アルコール粉末組成物を賦形剤として含有する混合物を直接打錠することによって、良好な錠剤または錠菓を製造することができる。該打錠用糖アルコール粉末組成物を用いて得られる錠剤または錠菓は錠剤硬度が高い。このため、打錠圧の低圧化、打錠前の粉末の造粒工程の省略、および滑沢剤の添加量の低減化という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物は、非晶質ソルビトールを2〜12重量%、好ましくは3〜11重量%、より好ましくは4.2〜10重量%含有するものである。非晶質ソルビトールの割合が2重量%未満の場合は、粉体の結合力が低下して得られる錠剤の硬度が低くなり、12重量%を超える場合は、打錠用糖アルコール粉末組成物の流動性が低下し、錠剤金型への投入量が不均一となるため生産効率が低下する。
【0016】
本発明の糖アルコール組成物に含まれる結晶質糖アルコールとしては、単糖または二糖類の糖アルコールの結晶が用いられる。例えば、マルチトール、還元イソマルツロース、ラクチトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール等が挙げられる。
【0017】
本発明の糖アルコール粉末組成物は非晶質ソルビトール以外にも1または複数の非晶質成分を含んでいてもよい。非晶質成分の合計量は組成物全体の35重量%以下、特に30重量%以下であることが好適である。非晶質成分としては上記結晶質糖アルコールとして例示した糖アルコールの非晶質状態のもの、および非晶質の三糖以上の糖アルコール、例えばマルトトリイトールが例示される。本発明の糖アルコール組成物中、三糖以上の糖アルコールの含有量は好適には10重量%未満である。
【0018】
本発明の糖アルコール粉末組成物としては特に、マルチトールを主成分とするものが好適に用いられる。係るマルチトールを主成分とする糖アルコール組成物としては、デンプンを酵素分解し、生じた糖液を水素添加して得られた糖アルコール水溶液を固化させ、得られる固化物を粉砕して得られた糖アルコール粉末組成物が好適に用いられる。デンプンから酵素分解により糖アルコールを得る際、通常はデンプンの酵素分解後および/または得られる糖液への水素添加後において二糖類のみが得られるよう、クロマトグラフィー分離により不純物と共に単糖類やオリゴ糖類の分離が行われている。しかしながら、本願発明に用いられる糖アルコール粉末組成物としては、デンプンの酵素分解後および糖液の水素添加後いずれにおいても、クロマトグラフィー分離を行わないで糖アルコール水溶液を得、該糖アルコール水溶液を濃縮、固化、粉砕、分級したものがより好適に用いられる。クロマトグラフィー分離を行わないことによって、単糖類が糖液および糖アルコール水溶液へ残留し、このため該調製工程を経た糖アルコール粉末組成物に比べて非晶質ソルビトールの割合が多くなる。
【0019】
デンプンの酵素分解に際して用いられる酵素としては特に限定的ではなく、市販の各種アミラーゼが使用可能である。例えばα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ等が例示される。これらの酵素は2種類以上を併用してもよい。また酵素分解工程は2段階以上に分けて、段階的に行ってもよい。
【0020】
酵素分解で得られた糖液は好適には、イオン交換処理や活性炭処理等により精製処理して不純物を除去する。次いで該糖液を水素と、ラネーニッケル等の触媒の存在下で高温高圧処理することで水素添加して糖アルコール水溶液を得る。水素添加工程により得られた糖アルコール溶液は、所望によりイオン交換処理や活性炭処理等により精製し、次いで濃縮工程、結晶化工程および粉砕工程を経て糖アルコール粉末組成物が得られる。
【0021】
本発明において好適に用いられる糖アルコール粉末組成は、マルチトールを88〜98重量%含有し、且つ非晶質ソルビトールを2〜12重量%、好ましくは4.2〜10重量%含有する。マルチトールの含有量が88〜95.8重量%、特に89〜92重量%であればより好ましい。なお、マルチトールは非晶質のものを含んでいてもよいが、本発明の糖アルコール組成物中、非晶質成分の合計は35重量%以下、特に30重量%以下であるのが好ましい。
【0022】
本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物の粒子径は特に限定されず、目的に応じて分級したものが採用できる。例えば、高い硬度の錠剤または錠菓を得ることに主眼を置いた場合には、粒子径が1〜295μm程度の打錠用糖アルコール粉末組成物を採用することにより高い硬度の錠剤または錠菓を得ることができる。
【0023】
本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物、滑沢剤および、医薬活性成分または食品材料を混合し、得られる混合物を打錠することによって、本発明の錠剤または錠菓を得ることができる。
【0024】
打錠される混合物における本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物の配合量、即ち錠剤もしくは錠菓に含まれる本発明の糖アルコール粉末組成物の含有量は特に限定されず、得られる錠剤または錠菓の目的とする性状に応じて適宜調整すればよい。典型的には20〜99重量%程度、特に50〜99重量%程度配合するのが好適である。
【0025】
本発明の錠剤または錠菓を製造する際に採用可能な滑沢剤は特に限定されず、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびグリセリン脂肪酸エステル等の食品添加物に指定されている一般的なものが挙げられる。その中でもショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムが滑沢性に優れる点で好ましい。打錠される混合物中の滑沢剤の量は特に限定されず、得られる錠剤または錠菓の目的とする性質に応じて適宜調整すればよいが、混合物の10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%程度が硬度の点で好ましい。
【0026】
本発明により調製される錠菓としては、ミント、フルーツ等のフレーバーを有したもの、口臭予防、虫歯予防の機能を有したもの等が例示される。錠菓は舐めて味わうものでも、噛んで食べるものであってもかまわない。
【0027】
本発明の錠菓の製造において用いられる食品材料は特に限定されず、従来より錠菓として提供されているものであれば制限無く使用することができる。例えば、乾燥餡、粉末茶、粉末果汁および乾燥果実等が挙げられる。
【0028】
本発明の錠剤の製造において用いられる、医薬活性成分としては特に制限はなく、従来より錠剤として提供されている成分のいずれを用いてもよい。本発明において提供される錠剤において、医薬活性成分は単独で含まれていても2以上の成分の組合せが含まれていても良い。
【0029】
本発明の錠剤に含まれる医薬活性成分の量としては、該成分の種類、治療対象疾患、治療対象者の年齢や体重、治療期間および目的とする治療効果等に基づき適宜定めればよい。
【0030】
本発明において、打錠される混合物には、さらに1以上の添加物が配合されていてもよい。打錠に際して配合される添加物としては特に限定的ではなく、従来より錠剤の製造に用いられてきたものがいずれも好適に配合される。添加物の例としては結晶セルロース、結晶セルロース誘導体、化工デンプン等の崩壊剤、α化デンプン、プルラン等の結合剤、乳糖、ショ糖、ブドウ糖等の糖アルコール以外の賦形剤、香料、着色料、酸味料などが例示される。添加物の配合量は、目的とする錠剤、錠菓の性状に応じて適宜定めればよい。
【0031】
本発明において、打錠される混合物に含まれる本発明の糖アルコール組成物および滑沢剤以外の成分の配合量は、79.9重量%以下、好ましくは0.1〜50重量%である。
【0032】
本発明の錠剤または錠菓の製造方法においては、直接打錠によって高い硬度の錠剤が得られるため、打錠に先駆けて造粒する必要はないが、目的に応じて粉末組成物を一旦造粒した後、打錠に供してもよい。
【0033】
なお、本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物を使用して錠剤または錠菓を製造する場合、特別な装置や設備は必要なく、従来から一般的に使用されている単発式または連続式の打錠機が使用可能である。本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物を用いることにより、比較的低い打錠圧での製剤化が可能である。
【0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0035】
実施例1および比較例1
打錠用糖アルコール組成物は次の操作により得られたものである。すなわち、タピオカデンプンスラリーに市販のα−アミラーゼを添加し、酵素分解して得られた液化液を冷却し、β−アミラーゼおよびプルラナーゼの混合酵素液を添加して糖化し、さらに糖化型α−アミラーゼを添加して糖化を進行させた。得られた糖化液を活性炭によりろ過した後、イオン交換樹脂により脱塩し精製した。精製された糖化液を濃縮した後、水素とラネーニッケルの存在下で90〜140℃、20〜100barの条件で水素添加処理し、糖アルコール水溶液を得た。得られた糖アルコール水溶液を活性炭およびイオン交換樹脂により精製した後、その全量を濃縮、結晶化、粉砕、乾燥を順次行い、実施例1の打錠用糖アルコール粉末組成物を得た。表1にその組成及び粒径分布、平均粒径を示す。なお、糖アルコール粉末組成物の粒子径、非晶質ソルビトール量および結晶量:非結晶量は下記方法により測定した。また、比較例1としては東和化成工業(株)製のアマルティMR50を用いた。
【0036】
(粒子径)
JIS篩を使用し、乾式粒度測定法にて測定した。
測定には目開き106μm、149μm、180μm、210μm、250μmおよび300μmのJIS篩を使用し、試料粉末50gを温度25℃、相対湿度50%の環境下で振とう機にて10分間分級した。各篩上の試料の重量を測定し、ロージン−ラムラープロットを用いて粒度分布を求め、粒度分布から打錠用糖アルコール粉末組成物の粒子径を求めた。
【0037】
(非晶質ソルビトール量)
予め真空デシケーター(室温)内で1時間乾燥した試料約10mgをアルミケースに入れ、示差走査熱量計(DSC6200:セイコーインスツルメンツ製)にて、走査温度範囲30〜180℃、昇温速度4℃/分の条件により、60〜100℃に出現するピークの面積から溶融熱量(mJ/mg)を求めた。それを試料中のソルビトール結晶の溶融熱量とした。下記計算式によりソルビトール結晶量および非晶質ソルビトール量を求めた。
【0038】
ソルビトール結晶量(wt% on DS)=溶融熱量/純粋なソルビトール結晶の溶融熱量(200)×100
なお本明細書において「wt% on DS」は乾燥固形分量に対する重量%を意味する。
【0039】
非晶質ソルビトール量(wt% on DS)=[打錠用糖アルコール粉末組成物中のソルビトール量(wt% on DS)]−[ソルビトール結晶量(wt% on DS)]
【0040】
(非晶質マルチトール量)
予め真空デシケーター(室温)内で1時間乾燥した試料約10mgをアルミケースに入れ、示差走査熱量計(DSC6200:セイコーインスツルメンツ製)にて、走査温度範囲30〜180℃、昇温速度4℃/分の条件により、120〜160℃に出現するピークの面積から溶融熱量(mJ/mg)を求めた。それを試料中のマルチトール結晶の溶融熱量とした。下記計算式によりマルチトール結晶量および非晶質マルチトール量を求めた。
【0041】
マルチトール結晶量(wt% on DS)=溶融熱量/純粋なマルチトール結晶の溶融熱量(165)×100
【0042】
非晶質マルチトール量(wt% on DS)=[打錠用糖アルコール粉末組成物中のマルチトール量(wt% on DS)]−[マルチトール結晶量(wt% on DS)]
【0043】
(結晶量:非結晶量)
下記の計算式により、結晶量と非結晶量を求めた。
結晶量(wt% on DS)=[ソルビトール結晶量(wt% on DS)]+[マルチトール結晶量(wt% on DS)]
非結晶量(wt% on DS)=100−[結晶量(wt% on DS)]
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示す実施例1および比較例1それぞれの糖アルコール粉末組成物に滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、太平化学産業(株)製)を0.5重量%の割合で添加し、連続式打錠機(AQU3 0512SW2AIII、(株)菊水製作所製)を用い下記の打錠条件で直接打錠したところ、本発明の打錠用糖アルコール粉末組成物ではピッキングやスティッキング等の打錠障害を起こさず打錠が可能であった。また得られた錠剤の硬度を木屋式デジタル硬度計((株)藤原製作所製)にて測定したところ、本発明の錠剤は高い硬度を有していることが確認された。比較例の組成物ではピッキングが発生し、完全な錠剤は得られなかった。結果を表2に示す。
【0046】
(打錠条件)
金型:φ8mm、R12mm
1錠あたりの重量:250mg
回転盤の回転数:10rpm
打錠圧:0.5t
【0047】
(滑沢剤添加量0.5重量%)
【表2】

打錠性
○:打錠可
×:打錠不可(スティッキングの発生)
−:硬度測定不可
【0048】
実施例2および比較例2
表1に示す実施例1および比較例1の糖アルコール粉末組成物に、脂肪酸エステル滑沢剤(DKエステルH−5423、第一工業製薬(株)製)を2重量%、3重量%、5重量%および7重量%の割合で添加して、実施例2および比較例2の打錠用混合物群を得た。得られた混合物を単発式打錠機(早川製作所製)を用いて下記の打錠条件で直接打錠したところ、実施例2においてはいずれの量の滑沢剤を配合した場合でもピッキングやスティッキング等の打錠障害を発生することなく打錠が可能であった。一方、比較例2においては滑沢剤の添加量に関わらず錠剤が杵に付着し、錠剤の一部が欠けたものしか得られなかった。結果を表3に示す。
【0049】
(打錠条件)
金型:φ8mm、R6.5mm
1錠あたりの重量:300mg
打錠圧:通常圧
【0050】
【表3】

打錠性
○:打錠可
×:打錠不可(スティッキングの発生)
【0051】
実施例3および比較例3ならびに実施例4および比較例4
実施例1及び比較例1の糖アルコール粉末組成物に脂肪酸エステル滑沢剤(DKエステルF−20W、第一工業製薬(株)製)を5重量%の割合で添加(それぞれ実施例3および比較例3)し、また8重量%の割合で添加(それぞれ実施例4および比較例4)し、連続式打錠機(AQU3 0512SW2AIII、(株)菊水製作所製)を用い、打錠圧を0.3t、0.5tおよび0.8tに設定し下記の打錠条件で直接打錠した。
【0052】
実施例3の5重量%滑沢剤を配合した打錠用糖アルコール粉末組成物では0.5t以上の打錠圧においてピッキングやスティッキング等の打錠障害を発生することなく打錠が可能であった。また得られた錠剤の硬度を木屋式デジタル硬度計((株)藤原製作所製)にて測定したところ、十分な硬度を示すことが確認された。一方、比較例3においては、混合物が杵に付着しピッキングやスティッキングが発生し、完全な錠剤が得られなかった。
【0053】
実施例4の滑沢剤添加量が8重量%である場合には、打錠圧0.3t以上でピッキングやスティッキング等の打錠障害を発生することなく打錠が可能であった。一方、比較例4においては、0.5t以上の打錠圧にて打錠は可能であったものの実施例4で得た錠剤と比して低い硬度の錠剤しか得られなかった。結果を表4および表5に示す。
【0054】
(打錠条件)
金型:φ8mm、R12mm
1錠あたりの重量:250mg
回転盤の回転数:10rpm
打錠圧:0.3t,0.5tおよび0.8t
【0055】
(滑沢剤添加量5重量%)
【表4】

打錠性
○:打錠可
×:打錠不可(スティッキングの発生)
−:硬度測定不可
【0056】
(滑沢剤添加量8重量%)
【表5】

○:打錠可
×:打錠不可(スティッキングの発生)
−:硬度測定不可
【0057】
実施例5〜7および比較例5〜8
実施例1と同様の方法により表6に示す実施例5の打錠用糖アルコール組成物を得た。また、結晶マルチトール(レシス、東和化成工業(株)製)とD−ソルビトール(メルク・ジャパン(株)製)とを所定の組成比になるように水に溶解させ、この水溶液を順次濃縮、結晶化、粉砕、乾燥させて、打錠用糖アルコール組成物表6に示す実施例6〜7および比較例5の糖アルコール組成物を得た。さらに結晶マルチトール(レシス、東和化成工業(株)製)を粉砕し60M篩下に調製したものと、結晶ソルビトール(Neosorb P60W、ロケットジャパン(株)製)を粉砕して60M篩下に調製したものとを準備し、所定の組成比になるように粉体混合して、表6に示す比較例6〜8の糖アルコール組成物を得た。
【0058】
(粒子径)
マスターサイザー2000E(マルバーン社)を使用し、湿式粒度測定法により測定した。溶媒にはイソプロパノールを使用した。平均粒径は体積平均径で表した。
【0059】
非晶質ソルビトール量、および結晶量:非結晶量の重量比は実施例と同様にして測定、算出した。
【0060】
【表6】

【0061】
表6に示す実施例5〜7および比較例5〜8の糖アルコール粉末組成物に脂肪酸エステル滑沢剤(DKエステルF−20W、第一工業製薬(株)製)を2重量%、乾燥あん(香りFR、上野製薬(株)製)を28重量%の割合で添加し、連続式打錠機(PiccolaB−10、RIVA社製)を用い、下記の打錠条件で直接打錠し、得られた錠剤の硬度を木屋式デジタル硬度計((株)藤原製作所製)にて測定した。実施例の糖アルコール粉末組成物を用いて得られた本発明の錠剤は比較例のものに比べ高い硬度を有していた。結果を表7に示す。
【0062】
(打錠条件)
金型:φ8mm、R12mm
1錠あたりの重量:300mg
回転盤の回転数:10rpm
打錠圧:0.5tおよび1.0t
【0063】
【表7】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質成分と非晶質成分とからなる打錠用糖アルコール粉末組成物であって、非晶質ソルビトールを2〜12重量%含有することを特徴とする打錠用糖アルコール粉末組成物。
【請求項2】
非晶質ソルビトールを4.2〜10重量%含有することを特徴とする、請求項1記載の打錠用糖アルコール粉末組成物。
【請求項3】
マルチトールを88〜98重量%含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の打錠用糖アルコール粉末組成物。
【請求項4】
糖アルコール組成物が、デンプンを酵素分解し、生じた糖液を水素添加する工程を有する方法にて製造されたものであり、デンプンの酵素分解後および糖液の水素添加後に、クロマトグラフィーによる精製を行わないで製造したものである、請求項1〜3のいずれかに記載の打錠用糖アルコール粉末組成物。
【請求項5】
非晶質成分の含量が35重量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の打錠用糖アルコール粉末組成物。
【請求項6】
粒子径が1〜295μmの範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の打錠用糖アルコール粉末組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の打錠用糖アルコール粉末組成物、滑沢剤、および食品材料または医薬活性成分を混合する工程、および
該混合物を打錠する工程
を含む、錠剤または錠菓の製造方法。
【請求項8】
混合物が打錠用糖アルコール粉末組成物を20〜99重量%、滑沢剤を0.1〜5重量%含有する、請求項7記載の錠剤または錠菓の製造方法。
【請求項9】
直接打錠により打錠を行う、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の打錠用糖アルコール粉末組成物、滑沢剤、および食品材料または医薬活性成分を含有する混合物を調製し、該混合物を打錠することにより製造した錠剤または錠菓。
【請求項11】
直接打錠により製造した請求項10記載の錠剤または錠菓。

【公開番号】特開2007−39441(P2007−39441A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178457(P2006−178457)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000146423)株式会社ウエノテクノロジー (30)
【Fターム(参考)】