説明

抄紙機における用紙の自動サンプリング装置

【課題】 抄紙機において抄造される巻取紙の正確な用紙特性(すき入れ模様の鮮明度、用紙の伸縮率等)及び抄造条件(用紙の坪量、水分量、紙厚)を測定するため、抄造工程中の用紙を自動的にサンプリングすることができる装置を提供する。
【解決手段】 抄紙機上の少なくとも一箇所に、抄造工程中の巻取用紙をサンプリングする装置であって、前述のサンプリング装置は、抄紙工程中の巻取用紙に対してレーザマーカを線状に照射することで、用紙を部分的に切出し、切り出した用紙をサンプリング装置に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機によって抄造される巻取用紙の一部を、抄造工程中にサンプリングする自動サンプリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等において、真正物か偽造物であるかを真偽判別するための技術として、古くからすき入れ等の偽造防止技術が施された用紙が用いられている。これらの用紙は、抄紙機によって巻取用紙を抄造し、所定の寸法の枚葉紙に断裁されて印刷工程へと移行するが、用紙に付与されたすき入れ等の偽造防止技術と印刷工程によって付与される模様位置を設定するため、用紙の坪量、水分量、紙厚及び伸縮度合い等の品質管理を行い、安定した用紙を製造する必要がある。
【0003】
抄紙機上の用紙特性を測定する方法としては、ドライヤ入口において坪量及び水分量の測定を行い、平均水分率をオンラインで連続入手し、ドライヤ工程の熱収支計算式に代入することで、用紙の水分量及び坪量を調整する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、すき入れ模様の鮮明度、用紙の伸縮率及びピンホール等の諸特性を検出する方法として、抄紙機の複数箇所に画像入力手段を設け、用紙に施されたトンボマークの位置及びすき入れ模様領域の透過率によって、用紙の諸特性を測定する検査装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−107208号公報
【特許文献2】特開2002−342745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、抄造条件を調整することを目的としているため、用紙の諸特性を正確に測定するためには、巻取紙から用紙の一部をサンプリングして、諸特性の測定を行う必要があることから、巻取紙前後の巻替え時のみの測定しかできないという課題が残されていた。
【0007】
また、引用文献2の発明では、用紙の撮影画像から諸特性を求めるものであるため、巻取後の用紙伸縮を測定するためには、前述の特許文献1と同様に巻取紙から用紙の一部をサンプリングして、伸縮率の測定を行う必要があることから、巻取紙前後の巻替え時のみの測定しかできないという課題が残されていた。
【0008】
本発明は、上記事情にかんがみなされたもので、抄紙機上の少なくとも一箇所に、抄造工程中の用紙の諸特性を正確に測定するため、巻き取られる前の用紙をサンプリングする装置として、レーザマーカを線状に照射することで、用紙を部分的に切り出す抄紙機における用紙の自動サンプリング装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自動サンプリング装置は、抄紙機上で抄造される用紙のサンプリングを行う自動サンプリング装置であって、前述の自動サンプリング装置を稼働するために必要な情報を入力する操作機構と、操作機構に入力された情報を基に、用紙のサンプリングを行うサンプリング機構と、自動サンプリング装置のすべての動作を制御する制御機構を少なくとも有する自動サンプリング装置であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の自動サンプリング装置における操作機構は、自動サンプリング装置の稼働に必要な情報を入力する操作部と、操作部に入力した稼働条件及び自動サンプリング装置の稼働状態を表示する表示部と、サンプリング機構におけるサンプリングの完了及び装置異常の発生を報知する警報部を有する自動サンプリング装置であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の自動サンプリング装置におけるサンプリング機構は、抄造中の湿紙及び用紙の切り出しを行う切り出し部と、操作部に入力された情報を基に、切り出し部位の上下、左右及び前後の移動を行う移動部と、切り出し部位の上下、左右及び前後の移動に合わせて、切り出したサンプリング用紙の採取を行うサンプリングボード部を有する自動サンプリング装置であることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の自動サンプリング装置における制御機構は、自動サンプリング装置の動作の制御を行う制御部と、操作機構に入力された情報、サンプリングタイミング及びサンプリング回数等の記憶を行う記憶部と、各機構への指示を行う指示部を有する自動サンプリング装置であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の自動サンプリング装置における切り出し部は、レーザマーカを用いる自動サンプリング装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抄紙機における用紙の自動サンプリング装置を用いることで、抄造中の用紙特性を段階的に測定及び管理することができることから、安定した用紙を抄造することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明の抄紙機における用紙の自動サンプリング装置を用いることで、抄造中の用紙を段階的にサンプリングすることが可能となり、抄紙機上の用紙特性を正確に把握することができることから、抄紙機の設定等を正確に調整し、作業性を向上することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明の抄紙機における用紙の自動サンプリング装置を用いることで、抄造中の用紙特性を迅速に把握することにより、抄造条件を迅速、かつ、適正に調整することができることから、損紙の発生を大幅に低減することができるため、コストの低減が図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の装置(抄紙機を含む)の全体図
【図2】自動サンプリング装置の拡大図・用紙をサンプリングした状態を示す図
【図3】レーザマーカから照射されるレーザ光の切り出し方法を示す図
【図4】本発明のサンプリング装置のブロック図
【図5】サンプリング工程の一例を示すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0019】
図1は、本発明の自動サンプリング装置を有する長網抄紙機の一例を示す図であり、プレス部(2)、乾燥部(3、3´)の中間及びリール部(6)の前に自動サンプリング装置を設けたものである。また、本発明のサンプリング装置に用いるレーザマーカについては、レーザ光を利用して非接触で紙や湿紙の切り出しを行うものであり、表面にインクジェットによる文字や記号等の印字を行う装置についても、マーキング機器メーカから製造・販売されているため、特に限定されるものではない。
【0020】
まず、図1を用いて長網抄紙機における抄造工程を説明する。長網抄紙機は、大きく分けて、準備部(5)、ワイヤー部(4)、プレス部(2)、乾燥部(3、3´)、カレンダ部(7)、リール部(6)で構成されており、準備部(5)については、用紙となる紙料のもつれ又は固まり等の大きな異物を除去し、繊維を分散させる。
【0021】
次に、ワイヤー部(4)については、幅方向の坪量バランス及び繊維の分散を促し、シート状に形成し、プレス部(2)にて、湿紙に圧力をかけて脱水する。脱水された湿紙は、乾燥部(3、3´)にて乾燥させるとともに、用紙伸縮の調整も行う。
【0022】
カレンダ部(7)については、7段のカレンダーロールの間を通し、圧力をかけることにより、表面を平滑にするとともに、紙厚の調整を行う。リール部(6)については、湿紙から用紙になったものを巻取り、次工程に送付する。
【0023】
次に、本発明の自動サンプリング装置について図2を用いて説明する。図2(a)は、図1におけるプレス部(2)以降に設置した自動サンプリング装置(1)であり、図2(b)は、図1におけるカレンダ部(7)とリール部(6)の中間に設置した自動サンプリング装置(1´´)を拡大して示したものである。
【0024】
図2(a)は、プレス部(2)を通過して送り毛布(9)方向に進行する湿紙をレーザマーカ(8)から照射されるレーザー光(11)によって巻取紙をサンプリングし、サンプルボード(10)上に湿紙サンプルが採取された状態を示すものである。
【0025】
また、図2(b)は、カレンダ部からリール部(6)に巻き取られる前の領域をレーザマーカ(8)から照射されるレーザー光(11)によってサンプリングし、サンプルボード(10)上に用紙サンプルが採取された状態を示すものである。
【0026】
前述のサンプリング装置は、用紙の進行方向と直行する方向に複数台設置することが可能であり、それぞれの自動サンプリング装置におけるレーザマーカを単独に移動させることが可能である。この複数台の自動サンプリング装置を用いることで、用紙の幅方向に対する特性を正確に把握することが可能である。
【0027】
次に、レーザマーカから照射されるレーザ光の切り出し方法について図3を用いて説明する。図3は、図2(a)のプレス部(2)以降に設置した自動サンプリング装置(1)及び図2(b)のカレンダ部(7)とリール部(6)の中間に設置した自動サンプリング装置(1´´)を示した図であり、湿紙の搬送速度に合せて並列配置されたレーザマーカ(8)を用紙の搬送方向と直行する方向に移動させ、照射される二つのレーザ光(11)によって用紙をひし形状に切り抜き、サンプルボード(10)上に用紙サンプルが採取された状態を示すものである。
【0028】
次に、本発明の自動サンプリング装置について、図4のブロック図を用いて説明する。まず、用紙のサンプリングに関する必要な情報を操作機構に入力し、入力された情報は、制御機構の記憶部に記憶され、記憶された情報を基にサンプリング機構への指示を行う。前述の指示を受けたサンプリング機構は、指示された情報通りに移動部によってレーザマーカの移動を行い、用紙のサンプリングを行う。このサンプリングを行った情報は、制御機構における記憶部に送信され、あらかじめ入力された情報と次のサンプリングのタイミングを調整して再度サンプリングの指示を行う。このときに記憶部に記憶されたサンプリング情報によって、巻取紙におけるどの箇所がサンプリングによって欠落しているかの情報を記憶し、次工程の巻取紙の断裁時に反映する。
【0029】
前述の操作機構は、サンプリングタイミング、巻取紙のどの領域からサンプリングを行うか、又はサンプリングする用紙の形状等の情報を入力し、それらの情報は、表示部によって表示される。
【0030】
また、制御機構については、自動サンプリング装置の動作を制御する制御部と、操作機構に入力された情報、サンプリングタイミング及びサンプリング回数等を記憶する記憶部と、各機構への指示を行う指示部を少なくとも有している。
【0031】
サンプリング機構については、抄造中の湿紙をサンプリングするレーザマーカと、前述のレーザマーカの上下、左右及び前後の移動を行う移動部と、サンプリングされた用紙を採取するサンプルボードを有している。このサンプルボードは、レーザマーカの左右及び前後の移動に合わせて移動するものである。また、サンプリングされた用紙がサンプルボード上に採取されたことを確認する光学センサを設け、サンプリングがされたタイミングを正確に計測することも可能である。
【0032】
次に、本発明の自動サンプリング装置を用いて抄紙機上でサンプリングを行う手順について、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、本発明の自動サンプリング装置を稼働するため、操作機構の操作部にサンプリングを行う位置、形状、サンプリング回数及びサンプリングタイミング等の必要な情報を入力する(S1)。
【0033】
操作部に入力された情報を基に、サンプリング機構の移動部により、レーザマーカの移動(S2)を行い、制御機構の記憶部に記憶された情報を基にレーザマーカの移動及びレーザーの照射(S2)を行う。巻取紙から切り取られたサンプルは、サンプルボードに排出(S4)され、一回のサンプリング工程は終了となる。このサンプリング工程は、自動サンプリング装置が設置されるそれぞれの箇所で実施されるとともに、操作機構の操作部に入力された情報にしたがって実施される。
【0034】
前述のサンプリングの際に、レーザマーカ付近にインクジェットによる印刷部を設け、サンプリング用紙に対して、サンプリング箇所及びサンプリング時間等の必要な情報を印刷することも可能であり、これらの印刷情報をバーコード等のコード情報又は記号等に変換して印刷することも可能である。
【0035】
また、前述のサンプリングを行った箇所を、巻取紙の側面から確認するため、巻取紙の両端の少なくとも一箇所にサンプリングマークを付与する方法又は、サンプリング情報をすべて記憶し、巻取紙を断裁する工程に反映させることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1、1´、1´´ サンプリング機構
2 プレス部
3、3´ 乾燥部
4 ワイヤー部
5 準備部
6 リール部
7 カレンダ部
8 レーザマーカ
9 送り毛布
10 サンプルボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機上で抄造される用紙のサンプリングを行う自動サンプリング装置であって、
前記自動サンプリング装置は、前記サンプリング装置を稼働するために必要な情報を入力する操作機構と、
前記操作機構に入力された情報を基に、用紙のサンプリングを行うサンプリング機構と、
前記操作機構と前記サンプリング機構の動作を制御する制御機構を少なくとも有することを特徴とする自動サンプリング装置。
【請求項2】
前記操作機構は、前記自動サンプリング装置の稼働に必要な情報を入力する操作部と、
前記操作部に入力した稼働条件及び前記自動サンプリング装置の稼働状態を表示する表示部と、
前記サンプリング機構におけるサンプリングの完了及び装置異常の発生を報知する警報部を有することを特徴とする請求項1記載の自動サンプリング装置。
【請求項3】
前記サンプリング機構は、抄造中の湿紙及び用紙の切り出しを行う切り出し部と、
前記操作部に入力された情報を基に、前記切り出し部位の上下、左右及び前後の移動を行う移動部と、
前記切り出し部位の上下、左右及び前後の移動に合わせて、切り出したサンプリング用紙の採取を行うサンプリングボード部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の自動サンプリング装置。
【請求項4】
前記制御機構は、自動サンプリング装置の動作の制御を行う制御部と、
前記操作機構に入力された情報、サンプリングタイミング及びサンプリング回数等の記憶を行う記憶部と、
各機構への指示を行う指示部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の自動サンプリング装置。
【請求項5】
前記切り出し部に、レーザマーカを用いる請求項3記載の自動サンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122890(P2011−122890A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279663(P2009−279663)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】