説明

把持ユニットおよびリフター

【課題】重量物の取り扱いに用いる把持ユニットに関し、より詳細には重量物の被梱包物を梱包箱に収納または取り出しの際に被梱包物と梱包箱の隙間にアームを差し込んで重量物の出し入れを行う把持ユニットおよびリフターに関する。
【解決手段】把持ユニット100は、ベース部110と、ベース部の下面に配置されて対象物の上面の第1方向の長さよりも大きな間隔で配置され、ベース部より垂直に突出する1対のアーム部120と、アーム部の各々に設けられて対象物の高さ以上にベース部から離間し、対象物を保持して第1の位置および第2の位置に可動する1対のハンド部130とを備え、ハンド部が第1の位置にあるときは、1対のハンド部の相互の距離が第1方向の長さよりも長く、第2の位置にあるときは、1対のハンド部の相互の距離が第1方向の長さよりも短い、よう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重量物の取り扱いに用いる把持ユニットに関し、より詳細には重量物の被梱包物を梱包箱に収納または取り出しの際に被梱包物と梱包箱の隙間にアームを差し込んで重量物の出し入れを行う把持ユニットおよびリフターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ製品や家電製品などの機器は、ダンボール等の梱包箱に梱包されて出荷される。梱包箱には輸送中に外力が加わったとき、その外力の衝撃を吸収して緩衝するための緩衝材が製品と共に入れられるのが一般的である。緩衝材には種々のものがあるが、発泡スチロール等の発泡樹脂を成型した緩衝材が多く用いられる。
【0003】
発泡樹脂を成型した緩衝材を用いた梱包作業は、まず梱包箱内の底部にこの緩衝材を配置してその上に被梱包物を置き、更に被梱包物の上から緩衝材を被せ、梱包箱の蓋を締めて梱包作業は完了する。一般に被梱包物の外形が大きい場合は、成型した緩衝材を梱包箱の四隅または四隅と辺の位置に配置し、被梱包物は四隅の緩衝材に被梱包物の角部が納まるよう置かれる。緩衝材を梱包箱と被梱包物との隙間に充填しないのは、緩衝材の使用量を抑えることで、コスト低減と環境への配慮による。このような緩衝材の配置は梱包箱と被梱包物の間に空間(スペース)を形成することになるが、梱包作業においてはこの空間が利用される。即ち、梱包作業において被梱包物の底部を手で支えながら腕ごと梱包箱に差し入れ、被梱包物の角部が緩衝材に置かれたことを確認して底部から手を離し、この空間から手を引き抜くという動作がなされる。空間がないと被梱包物を支えた状態で梱包箱に収納することはできない。
【0004】
近年ではTV受像機の大型化に見られるように、機器の重量が増大し数十kgになることも珍しくなく、上述した手作業での梱包作業は難しくなってきている。このような重量物に対しては、一般には被梱包物にIボルトを取り付けてクレーンを用いて被梱包物を吊り下げ、梱包箱に収納することが行われている。
【0005】
また、重量物に対する昇降、移動にリフターが多く使用されるが、梱包箱に被梱包物を収容したり、梱包箱から被梱包物を取り出したりする場合にリフターの使用は不適である。図8はよく用いられる手動式のリフターの一例を示すもので、図8(a)に示すリフター10は昇降ハンドル12を操作してワイヤロープ13を巻き取り、フォーク11を昇降する。リフター10にはキャスター14、15や把手16を備えており、重量物をこのフォーク11に乗せて昇降、あるいは移動が可能である(図8(b))。しかしながら、この状態で被梱包物20を梱包箱に収容しようとすると、被梱包物20を乗せたフォーク11を含めて梱包箱に入れる必要があり、仮にフォーク11ごと梱包箱に入ったとしてもフォーク11を引き抜くことができないためリフターの使用は困難である。リフターを使用する場合は、リフターまたは梱包箱に何らかの工夫が必要である。
【0006】
被梱包物を梱包箱からの取り出し作業にリフターを使用する方法として、リフターにリフターアームとリフターアタッチメントを取り付け、被梱包物の底にもっこ状の吊り具をまわして吊り下げ、梱包箱への出し入れを行う方法が知られている。この方法ではIボトルを使用せずに被梱包物を吊り下げることができる(特許文献1)。
【0007】
また、リフターの使用と梱包作業とを考慮した梱包箱が知られている。この梱包箱は上箱と下箱に分け、下箱はリフターのフォークの挿入を可能とし、下箱に被梱包物を載置してから上箱を被せるものである。下箱に被梱包物を載置する際に緩衝材を容易に被梱包物の周りに配置でき、梱包の作業性は高いものと考えられる(特許文献2)。
【特許文献1】特開平06−32594号公報
【特許文献2】特開2005−289490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように製品重量が重くなると人手による梱包作業は複数人の作業となる。また、同じ重量でも製品の形状が大きくなるとその作業は困難を伴い、多大の時間を要すると共に災害の恐れもある。クレーンを用いる方法はこのような梱包作業に適しているが、上述したように製品にIボルトを装着する構造を設ける必要があり問題である。また、特許文献1に提案されたリフターを用いる方法は、簡便ではあるものの梱包物の底に吊り具をまわすことが容易でない場合の考慮がなされていない。例えば、梱包箱から被梱包物を取り出す場合において、被梱包物の底部に吊り具をまわす必要があるが、被梱包物の底部と梱包箱との間のスペースがあったとしても吊り具を底部にまわすことは困難を伴う。最近ではコストダウン、あるいは保管スペースの観点から、製品サイズに極力近い梱包箱を使用することが求められ、梱包箱と被梱包物の間のスペースが充分得られない状況にある。
【0009】
本発明は、梱包箱と被梱包物の間のスペースが少ない場合であっても、被梱包物を梱包箱に容易に収納できる把持ユニットおよびリフターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の把持ユニットは、ベース部とアーム部およびハンド部とを備え、アーム部はベース部の下面に配置され、対象物の上面の第1方向の長さよりも大きな間隔で配置され、ベース部より垂直に突出し1対で構成する。ハンド部は、アーム部の各々に設けられ、対象物の高さ以上にベース部から離間し、対象物を保持し、第1の位置および第2の位置に可動し1対で構成する。そして、ハンド部が第1の位置にあるときは、1対のハンド部の相互の距離が第1方向の長さよりも長く、第2の位置にあるときは、1対のハンド部の相互の距離が第1方向の長さよりも短いことを特徴とするものである。
【0011】
本発明により、対象物である被梱包物の梱包箱への収納においては、ハンド部を被梱包物の底部を支える位置に可動させ、被梱包物をハンド部とベース部の間に抱えた状態でアーム部ごと梱包箱に差し入れ、被梱包物を梱包箱に配置した後にハンド部を可動して被梱包物の底部から外し、昇降部によりアーム部を被梱包物と梱包箱の間から引き抜くことで収納ができる。また、逆の手順で梱包箱から被梱包物を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0012】
1対のアーム部に可動するハンド部を備えるようにしたので、ハンド部を可動させて対象物(被梱包物)を抱えた状態でアーム部ごと梱包箱に差し入れができ、またハンド部を可動させてアーム部の引き抜きができ、対象物が重量物であっても一人の作業者で安全に梱包箱への収納および取り出しの作業が可能となる。
【0013】
また、アーム部とハンド部の出し入れができる梱包箱と対象物との最小の空間(スペース)を確保するだけで、対象物より僅か大きな梱包箱の使用ができる。
【0014】
また、梱包作業において吊り下げ用のIボルトを不要にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図1〜図7を用いて説明する。
【0016】
まず、図1から図4を用いて本発明の把持ユニット100の構成とハンド130の動きを説明する。図1に示すように、把持ユニット100はベース110とアーム120、ハンド130および回転機構140〜164から構成する。
【0017】
図1では4本のアーム120の例を示しており、その4本のアーム120(図1では1本のアーム120がベース110に隠れて見えない)はベース110の下面に上端を固定し、吊り下げらるように設ける。ハンド130はアーム120の最下部に設けられ、水平に回転可能である。この回転は後述する回転機構140〜164により回転し、図1のハンド130の実線で示される位置は被梱包物20を支持しない状態における回転位置である。被梱包物20を支持するときは実線の位置から矢印に示す方向に90°回転させる。この回転によって被梱包物20は底部を複数のハンド130で支えられ、ハンド130とベース110の間に抱き抱えられることになる。
【0018】
アーム120は中空をなし(即ち、パイプ状)、その中空の中をハンド130の回転軸131が通っている。その回転軸131は下部においてハンド130と、上部においてピニオン160と繋がっている(図2参照)。
【0019】
次に回転機構140〜164について説明する。レバー140はオペレータによって操作され、レバー140を図1に示す矢印の直線方向に動かすことが可能である。レバー140はレバー台座141と繋がっており、レバー台座141はレバー滑り台座142上を滑りレバー140の直線移動を可能にしている。
【0020】
レバー台座141はパンタグラフ形状をなすリンク150と係合ピン143により係合(リンク150に形成したガイド穴152と係合ピン143が係合)しており、レバー台座141の動きに対応してリンク150はリンク支軸151を中心にして可動する。リンク150は端部にもガイド穴153を形成しており、このガイド穴153はラック台座162に立設した係合ピン163により係合している。ラック台座162はラック161を搭載し、ラック滑り台座164上を直線方向に可動する。そして、ラック161は図2に示すようにピニオン160と噛合して、ラック161の直線運動はピニオン160の回転運動に変換される。前述のようにピニオン160は回転軸131を介してハンド130に繋がっており、ハンド130はピニオン160の回転がそのままハンド130の回転になる。結局、オペレータがレバー140を動かすと(引っ張ると)それにつれてハンド130は回転することになる。なお、図2に示す矢印は、ハンド130を実線で示す回転位置から点線で示す回転位置に回転させるときの、ラック161とピニオン160およびハンド130の可動方向を示している。
【0021】
レバー台座141に係合されるリンク150の端部には4箇所のラック台座162と係合しており、4個のハンド130が同時に回転する。しかも、それぞれの回転方向は図1の実線で示される位置から点線に示される回転位置に、あるいは点線に示される回転位置から実線で示される回転位置に回転する。
【0022】
上記に示した動きを模式的に示したのが図3である。図3(a)はレバー140をオペレータが引く前の状態を示し、図3(b)はオペレータがレバー140を引いた後の状態を示している。オペレータがハンド140を右方向に引っ張るとレバー140は図3(b)の(1)の矢印に方向に動き、それにつれてレバー台座141上の係合ピン143がガイド穴152を動くためリンク150は図3(a)から図3(b)に拡がる。リンク150の拡がりによりガイド穴153と係合する係合ピン163によって4つのラック161はそれぞれ図3(b)の(2)の矢印の方向に動く。このため、ラック161に噛合するピニオン160は図3(b)の(3)の矢印の方向に回転し、結局ハンド130は縦方向から横方向に回転することになる。
【0023】
ベース110上に設けた回転機構140〜164を保護するためにカバー111をかけた状態を図4に示す。また、昇降機構に本把持ユニット100を取り付け、リフター200として一体構成した例を図5に示す。図5では、被梱包物20を持ち抱えた状態を示している。オペレータは図5に示す状態で、被梱包物20を移動したり昇降させたりすることができる。
【0024】
本実施形態におけるアーム120の長さは600mm、外径寸法は35mmφで材質はSUSである。ハンド130の外形寸法は200×50×7mmで材質は同様にSUSである。また、アーム120間の間隔は長手方向で500mm、短手方向で300mmである。このリフター200を用いて、外形寸法700×450×200mm、重量20kgの被梱包物20を持ち抱え、梱包箱に収納、あるいは梱包箱からの取り出しが可能である。
【0025】
次に、本発明のリフター200を用いて、梱包箱30に被梱包物20を収納する例を図6と図7を用いて説明する。
【0026】
図6(a)は、既にリフター200が被梱包物20を持ち抱え梱包箱30の真上まで移動してきており、オペレータの昇降機構の操作によって把持ユニット101を下降している状態を示している。なお、ここでは把持ユニット101を、市販のリフター10のフォーク11に取り付けた例を示している(把持ユニットはフォーク取り付け用の機構(図示せず)を備えているので、符号を100から101に変えている)。
【0027】
梱包箱30には緩衝材40が予め配設されているものとする。緩衝材40には被梱包物20の角部が来る位置に段差が形成されており、被梱包物20が緩衝材40上に置かれたとき、被梱包物20の底部と梱包箱30の底面との間にスペースが形成されるようになっている。
【0028】
図6(b)は、把持ユニット101の下降がさらに進んで把持ユニット101のアーム120ごと梱包箱30に差し込まれ、被梱包物20の角の底部は緩衝材40の段差上にある状態を示している。図に示すように、被梱包物20と梱包箱30の内壁側面との間は少なくともハンド130を備えたアーム120が差し込まれるスペースを備えている(このスペースができるように梱包箱30と緩衝材40が設計されている)。この状態で、オペレータはレバー140を操作してハンド130を回転させ、被梱包物20の底部からハンド130を外してハンド130に近い梱包箱30の側面と並行になるようにする。
【0029】
ハンド130が被梱包物20の底部で梱包箱30の側面と並行になったところで、昇降機構を上昇させる。図7(c)は、昇降機構によって上昇したアーム120が梱包箱30から引き抜かれた状態を示している。ハンド130の向きは回転により図に示す向きにある。
図7(d)は、被梱包物20が梱包箱30に収納された状態を示している。この後、被梱包物20の上から緩衝材を被せ、梱包箱30の蓋(図示せず)をして梱包終了となる。ここまで示した方法は、一人の作業者で充分梱包作業を行うことができる。また、図6、図7に示した方法と逆の手順で、梱包箱30から被梱包物20を取り出すことができる。
【0030】
種々の外形寸法の被梱包物20に対応するためは、アーム120の間隔を変えれるようにすればよい。例えば、ベース110に2〜3種類のアーム120の間隔に対応した取り付けネジ穴を形成しておき、被梱包物20の大きさによって取り付けネジ穴を選択してアーム120を装着する。
【0031】
また、ハンド130を回転させるタイミングをオペレータが知ることは重要である。このために、把持ユニット100、101あるいはリフター200はハンド130と床面、あるいはハンド130と梱包箱の底面からの高さを検知してオペレータに報知する検知装置を備えてもよい。例えば、ハンド130の底部に近接センサやマイクロスイッチを装着し、パトライト等を用いて検知したことをオペレータに報知する。
【0032】
なお、リフター200の昇降機構はワイヤロープを巻き取る手動式の例を示したが、電動式であってもよい(油圧式は手動式に含むものとする)。リフター200は上述した把持ユニット100と昇降機構とが一体として構成されるところに特徴がある。
【0033】
本実施形態における梱包箱内壁側面と被梱包物との間のスペースはアーム120の径およびハンド130の幅寸法を考慮して50数mm程度、梱包箱内壁底面と被梱包物底部との間のスペースは10mm程度あればよく、被梱包物に近いサイズの梱包箱30の使用ができる。
【0034】
なお、本実施形態では4本のアームの例を示したが、アームは少なくとも2本あることが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の把持ユニット例(その1)である。
【図2】本発明の把持ユニット例(その2)である。
【図3】本発明の把持ユニット例(その3)である。
【図4】本発明の把持ユニット例(その4)である。
【図5】本発明の把持ユニットを昇降機構に取り付けた例である。
【図6】本発明のリフターを用いた被梱包物の梱包箱への収納例(その1)である。
【図7】本発明のリフターを用いた被梱包物の梱包箱への収納例(その2)である。
【図8】従来の手動リフタと被梱包物の載置の例である。
【符号の説明】
【0036】
10 リフター
11 フォーク
12 昇降ハンドル
13 ワイヤロープ
14 キャスター
15 キャスター
16 把手
20 被梱包物
30 梱包箱
40 緩衝材
100 把持ユニット
101 把持ユニット
110 ベース
111 カバー
120 アーム
130 ハンド
131 回転軸
140 レバー
141 レバー台座
142 レバー滑り台座
143 係合ピン
150 リンク
151 リンク支軸
152 ガイド穴
153 ガイド穴
160 ピニオン
161 ラック
162 ラック台座
163 係合ピン
164 ラック滑り台座
200 リフター
300 フォーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部の下面に配置され、対象物の上面の第1方向の長さよりも大きな間隔で配置され、前記ベース部より垂直に突出する1対のアーム部と、
前記アーム部の各々に設けられ、前記対象物の高さ以上に前記ベース部から離間し、前記対象物を保持し、第1の位置および第2の位置に可動する1対のハンド部とを備え、
前記第1の位置にあるときは、1対の前記ハンド部の相互の距離が前記第1方向の長さよりも長く、前記第2の位置にあるときは、1対の前記ハンド部の相互の距離が前記第1方向の長さよりも短いこと
を特徴とする把持ユニット。
【請求項2】
1対の前記アーム部の外寸幅は、前記対象物の梱包部材内の前記第1方向の内寸幅より小さい
ことを特徴とする請求項1記載の把持ユニット。
【請求項3】
前記ベース部の下面以外に設けられ、1対の前記ハンド部の前記第1の位置および前記第2の位置への可動を操作する操作部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の把持ユニット。
【請求項4】
本体と、
前記本体に対して上下方向に移動し、請求項1乃至3いずれか1項に記載の把持ユニットが設けられた昇降部と
を備えることを特徴とするリフター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−126298(P2010−126298A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302481(P2008−302481)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】